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明細書 :自閉症の診断薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4677556号 (P4677556)
公開番号 特開2006-300844 (P2006-300844A)
登録日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発行日 平成23年4月27日(2011.4.27)
公開日 平成18年11月2日(2006.11.2)
発明の名称または考案の名称 自閉症の診断薬
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/53 D
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2005-125770 (P2005-125770)
出願日 平成17年4月22日(2005.4.22)
審査請求日 平成19年3月12日(2007.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 謙二
【氏名】伊豫 雅臣
【氏名】森 則夫
【氏名】武井 教使
【氏名】三辺 義雄
【氏名】中村 和彦
【氏名】岩田 泰秀
【氏名】関根 吉統
【氏名】土屋 賢治
【氏名】辻井 正次
審査官 【審査官】淺野 美奈
参考文献・文献 特表2006-519391(JP,A)
国際公開第2004/029624(WO,A1)
特開2001-235470(JP,A)
Kaoru Miyazaki,Serum neurotrophin concentrations in autism and mental retardation: a pilot study,Brain & Development,NL,Elsevier,2004年 8月,Vol.26/No.5,292-295
清水栄司, 橋本謙二, 伊豫雅臣,うつ病とBDNF(脳由来神経栄養因子),日本神経精神薬理学雑誌,日本,日本神経精神薬理学会,2004年 6月25日,Vol.24/No.3,147-150
調査した分野 G01N 33/48-98
CA/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)

特許請求の範囲 【請求項1】
抗脳由来神経栄養因子抗体を主成分とする高機能自閉症の診断薬。
【請求項2】
患者の血液中の脳由来神経栄養因子の濃度を測定するための請求項1記載の高機能自閉症の診断薬。
【請求項3】
抗脳由来神経栄養因子抗体および標識化抗脳由来神経栄養因子抗体からなる高機能自閉症の診断薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自閉症の診断薬に属する。さらに詳しくは抗脳由来神経栄養因子抗体を主成分とする自閉症の診断薬に関する。
【背景技術】
【0002】
自閉症は、アメリカのカナー博士により、1943年に“情緒接触の自閉的障害”として、最初に記載された障害である。発症は人生の極めて早期であり、主要症状として周囲からの極端な孤立と自閉化、特異な言語症状、強迫的な同一性保持が指摘されている。自閉症は、人生の早い時期に障害が現れ、発達の過程によって状態が変わっていく発達障害であり、未だ特定できない高次の中枢神経系の障害であると推測されている。
【0003】
一方、高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。自閉症の罹病率は、子供1万人あたり7~16人であり、高機能自閉症は自閉症のおおよそ11~34%であると報告されている(非特許文献1)。高機能自閉症の原因は現在のところ明らかでないが、脳の機能障害および発達障害を基盤とする生物学的要因と発達段階における環境からの心理学的要因が複雑に絡み合っているものと推測されている。
【0004】
自閉症の診断は、米国精神医学会の診断基準(DSM-IV)、世界保健機構WHOのICD-10、ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)を用いた面接で行なわれている。自閉症の研究では、自閉症患者の血液中のセロトニンの量が増加していることが報告されているが、自閉症の生物学的マ-カ-は未だ確立されていない。一方、セロトニンの再取り込みを阻害する抗うつ薬は、自閉症の治療薬として使用されていることより、自閉症におけるセロトニン神経系の関与が示唆されている。また、セロトニン受容体およびドーパミン受容体の拮抗薬である非定型抗精神病薬リスペリドンも自閉症に有効であることが示唆されている。自閉症の病態の特殊性から早期診断、早期治療、社会復帰活動、予防といった包括的な治療体系の確立が望まれている。
【0005】
ところで脳由来神経栄養因子(BDNF)は、脳内で発見された神経栄養因子の一つであり、脳内神経回路網の形成や発達、さらにはその生存維持に重要な役割を果たしていることが判明している。さらに1990年代後半には、脳由来神経栄養因子はシナプスの可塑性にも関与し、記憶や学習にも重要な役割を果たしていることが知られており、また神経細胞死に対して神経保護作用も有することが報告されている。セロトニン取り込み阻害薬などの抗うつ薬の慢性投与により、ラット海馬における脳由来神経栄養因子の量が増加することが示唆されており、脳由来神経栄養因子とセロトニン神経系との関係も指摘されている。最近の遺伝子改変動物を用いた研究より、脳由来神経栄養因子の減少はセロトニン神経系の低下を引き起こし、攻撃性などの精神症状との関連が報告された(非特許文献2)。しかしながら、自閉症患者の血液中における脳由来神経栄養因子の濃度を測定した報告があるが(非特許文献3)、比較する健常者の年齢が異なり、病態による変化であるか、年齢に伴う変化であるかは明らかでない。
【0006】

【非特許文献1】マッキントッシュ KEら著、Annotation: The similarilities and differences between autistic disorder and Aspergar’s disorder: a review of the empirical evidence. Journal of Child Psychology and Psychiatry (2004) 45: 421-434)
【非特許文献2】ライオンズ,WEら著、 Brain-derived neurotrophic factor-deficient mice develop aggressiveness and hyperphagia in conjunction with brain serotonergic abnormalities. Proc Natl Acad Sci USA (1999) 96: 15239-15244)
【非特許文献3】ミヤザキ,Kら著、Serum neurotrophin concentrations in autism and mental retardation: a pilot study. Brain Dev (2004) 26: 292-295.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自閉症は、前述したとおり間敏な生物学的マ-カ-が確立されておらず、その診断が困難であり、早期に適切な処置を講じることができず、そのことが症状をさらに悪化させる原因になっている。従って、医療の現場から自閉症の早期に診断するような診断薬および診断方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、自閉症の患者の血清中脳由来神経栄養因子のレベルが、健常者のそれと比較して有意に低下していることを見出し、その違いを利用することにより、抗脳由来神経栄養因子抗体を用いて自閉症の診断が可能となることを知った。本発明にかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は;
1.抗脳由来神経栄養因子抗体を主成分とすることを特徴とする自閉症診断薬;
2.患者の血液中の脳由来神経栄養因子の濃度を測定するための上記1に記載の自閉症診断薬;
3.抗脳由来神経栄養因子抗体および標識化抗脳由来神経栄養因子抗体を含む上記1または2に記載の自閉症診断薬;
4.抗脳由来神経栄養因子抗体および標識化剤を主成分とすることを特徴とする自閉症の診断キット;
5.患者の血液中の脳由来神経栄養因子の濃度を測定するための上記4に記載の自閉症の診断用キット;
6.抗脳由来神経栄養因子抗体および標識化抗脳由来神経栄養因子抗体を含む上記4または5に記載の自閉症の診断キット;
7.抗脳由来神経栄養因子抗体を用いることを特徴とする自閉症の検定方法;
8.抗脳由来神経栄養因子抗体を用いることを特徴とする自閉症の治療薬の検定方法;
9.動物の血液中の脳由来神経栄養因子の濃度を測定する上記7に記載の自閉症の検定方法;
10.抗脳由来神経栄養因子抗体および標識化抗脳由来神経栄養因子抗体を含む上記8または9に記載の自閉症の検定方法;
11.自閉症の治療薬としての脳由来神経栄養因子を増加させる化合物;等に関する。
【0010】
以下、本明細書における用語の意味あるいは定義について述べる。「抗脳由来神経栄養因子抗体」とは、脳由来神経栄養因子を抗原として用いて精製された抗体をいう。該抗体は、脳由来神経栄養因子に結合する能力があればよく、ポリクロ-ナル抗体、モノクロ-ナル抗体を含む。また好ましいものとしては、特異的に脳由来神経栄養因子に結合するポリクロ-ナル抗体、モノクロ-ナル抗体等が挙げられる。
【0011】
「標識化抗脳由来神経栄養因子抗体」とは、脳由来神経栄養因子抗体をペルオキシダ-ゼ、β-D-ガラクトシダ-ゼ、アルカリフォスファタ-ゼ、グルコ-ス-6-リン酸脱水素酵素等の酵素、デルフィニウム等の蛍光標識、放射性同位元素標識または同位元素標識、ビオチン等を結合させ、脳由来神経栄養因子を定量化できるように工夫された抗体をいう。更に、「標識化抗脳由来神経栄養因子抗体」には、ビオチン、2,4-ジニトロフェノ-ル等で修飾した抗脳由来神経栄養因子も含まれる。この際には、該標識化抗脳由来神経栄養因子抗体に標識化したアビジン、標識化抗2,4-ジニトロフェノ-ル抗体を更に用いて定量化できる。
【0012】
「自閉症」は、主要症状として周囲からの極端な孤立と自閉化、特異な言語症状、強迫的な同一性保持があげられており、人生の早い時期に障害が現れ、発達の過程によって状態が変わっていく発達障害である。「高機能自閉症」とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。
【発明の効果】
【0013】
以上の手段により、自閉症の診断薬を提供することができる。特に、抗脳由来神経栄養因子抗体と標識化抗脳由来神経栄養因子抗体とを用いて患者血液中の脳由来神経栄養因子の濃度を測定することによって自閉症の診断を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による自閉症の診断は、例えば次のようにして行なうことが出来る。ヒトの血液から血清を調製し、血清中の脳由来神経栄養因子の量を種々の方法により定量する。望ましくは脳由来神経栄養因子に対して特異性の高い抗体を用いたサンドイッチELISAによって脳由来神経栄養因子を検出・定量する。自閉症の血清中の脳由来神経栄養因子の濃度が、健常者の値より有意に低いことを利用し、自閉症を診断することができる。
【0015】
具体的な血清中の脳由来神経栄養因子を測定する方法としては、例えば
1. ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバ-、セファロ-ス等の固相に抗脳由来神経栄養因子抗体を固定する工程;
2. 診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
3. 固相を洗浄する工程;
4. 標識化された抗脳由来神経栄養因子抗体を加える、または接触させる工程;
5. 該標識を用いて、脳由来神経栄養因子の量を測定する工程からなる方法等が挙げられる。
【0016】
更に、具体的な血清中の脳由来神経栄養因子を測定する方法としては、例えば、
1. ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバ-、セファロ-ス等の固相に抗脳由来神経栄養因子抗体を固定する工程;
2. 診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
3. 固相を洗浄する工程;
4. ビオチンまたは2,4-ジニトロフェノ-ルで修飾した抗脳由来神経栄養因子抗体を加える、または接触させる工程;
5. 標識化アビジンまたは標識化2,4-ジニトロフェノ-ル抗体を加える、または接触させる工程;
6. 該標識を用いて、脳由来神経栄養因子の量を測定する工程;
からなる方法等が挙げられる。
【0017】
更に、具体的な血清中の脳由来神経栄養因子を測定する方法としては、例えば、
1. ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバ-、セファロ-ス等の固相に抗脳由来神経栄養因子抗体を固定する工程;
2. 診断する患者の血液を固相に加える、または接触させる工程;
3. 固相を洗浄する工程;
4. ビオチンで修飾した抗脳由来神経栄養因子抗体を加える、または接触させる工程;
5. 標識化アビジンを加える、または接触させる工程;
6. 該標識を用いて、脳由来神経栄養因子の量を測定する工程;
からなる方法等が挙げられる。固相の形状として小球、ウェル、試験管等が挙げられる。
【0018】
抗原またはELISAのスタンダ-ドとして用いられる脳由来神経栄養因子は市販されているか、または以下の方法で調製することができる。遺伝子工学的手法を用いる場合、脳由来神経栄養因子をコードする遺伝子を適切なベクタ-に組み込み、これを適切な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換の培養上清から目的とする組換え脳由来神経栄養因子を得ることができ、均質な多量の脳由来神経栄養因子の生産に好適である。上記宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、植物または動物細胞を用いることができる。
【0019】
抗脳由来神経栄養因子抗体は、脳由来神経栄養因子を抗原として、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウなどに免疫することにより、調製される。標識化抗脳由来神経栄養因子抗体は、抗脳由来神経栄養因子抗体をビオチン化試薬や架橋剤付きペルオキシダ-ゼの市販されているキットを用いて、反応させ、調製することができる。
【0020】
本方法は、また自閉症の治療薬の判定にも有用である。すなわち、脳由来神経栄養因子を増加させる作用を有する化合物は、自閉症の治療薬として有用である可能性がある。また、脳由来神経栄養因子の量が低いモデル動物(マウスやラットなど)は、自閉症の動物モデルとしても有用である。従って、この検定方法を利用することにより、新しい自閉症の治療薬のスクリ-ニングも行なうことが可能である。
【0021】
このような方法で見出される治療薬には、非経口的または経口的に投与できる薬物が含まれ得る。その治療薬の正確な投与量および投与計画は、個々の治療対象毎の所要量、治療方法、疾病または必要性の程度、および、当然医師の判断によることが必要である。非経口的投与する場合の投与量、投与回数は症状、年齢、体重、投与形態等によって異なるが、例えば注射剤として皮下または静脈に投与する場合、成人の患者の体重1kg、一日当たり約0.1mg~約2500mgの範囲、好ましくは約1mg~約500mgの範囲から投与量が選択され、例えば噴霧剤として気管に投与する場合、成人の患者の体重1kg、一日当たり約0.1mg~約2500mgの範囲、好ましくは約1mg~約500mgの範囲から投与量が選択される。投与計画としては、連日投与または間欠投与またはその組み合わせがある。経口的投与する場合の投与量、投与回数は症状、年齢、体重、投与形態等によって異なるが、例えば、成人の患者の体重1kg、一日当たり約0.5mg~約2500mgの範囲、好ましくは約1mg~約1000mgの範囲から投与量が選択される。
【0022】
本方法で得られる自閉症の治療薬を薬学的に許容しうる非毒性の担体と混和することにより医薬組成物を製造することができる。このような組成物を、非経口投与用(皮下注射、筋肉注射、または静脈注射)に調製する場合は、特に溶液剤形または懸濁剤形がよく、膣または直腸投与用の場合は、特にクリ-ムまたは坐薬のような半固形型剤形がよく、経鼻腔投与用の場合、特に粉末、鼻用滴剤、またはエアロゾル剤形がよい。
【0023】
組成物は一回量投与剤形で投与することができ、また例えばレミントンの製薬科学(マック・パブリッシング・カンパニ-、イ-ストン、PA、1970年)に記載されているような製薬技術上良く知られているいずれかの方法によって調製できる。注射用製剤は医薬担体として、例えば、アルブミン等の血漿由来蛋白、グリシン等のアミノ酸、マンニト-ル等の糖を加えることができる。注射剤形で用いる場合には更に緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。また、水溶製剤、凍結乾燥製剤として使用する場合、凝集を防ぐためにTween80(登録商標)、Tween20(登録商標)などの界面活性剤を添加するのが好ましい。また注射剤以外の非経口投与剤形は、蒸留水または生理食塩液、ポリエチレングリコ-ルのようなポリアルキレングリコ-ル、植物起源の油、水素化したナフタレン等を含有してもよい。例えば坐薬のような膣または直腸投与用の製剤は、一般的な賦形剤として例えばポリアキレングリコ-ル、ワセリン、カカオ油脂等を含有する。膣用製剤では、胆汁塩、エチレンジアミン塩、クエン酸塩等の吸収促進剤を含有しても良い。吸入用製剤は固体でも良く、賦形剤として例えばラクト-スを含有してもよく、また経鼻腔滴剤は水または油溶液であってもよい。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
(実施例1)
(1)被験者
後記表1に示す高機能自閉症の男性患者18名(平均年齢:21.3歳(標準偏差2.2)、年齢範囲:18歳~26歳)、ならびに同一年齢層の健康者18名(平均年齢:23.2歳(標準偏差2.2)、年齢範囲:20歳~26歳)も正常対照として被験者に選んだ。すべての患者は高機能自閉症の診断基準ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)に従って診断した。
【0026】
(2)実験方法
被験者の血清検体を採取し、測定まで-80℃で保存した。BDNFの血清レベルは脳由来神経栄養因子測定キット(プロメガ社、米国)を用い、製造者の指示に従って測定した。すなわち、抗脳由来神経栄養因子モノクロナル抗体を96穴プレートにコ-ティングし、4℃で18時間インキュベーションした。プレートをブロッキング緩衝液にて室温で1時間ブロッキング処理した。緩衝液で洗浄した後、希釈した血清100μLを添加した。定量用のスタンダ-ドとして、ヒト脳由来神経栄養因子(78-5000 pg/mL)を添加したものを用いた。室温で2時間反応させた後、緩衝液で5回洗浄し、抗ヒト脳由来神経栄養因子抗体を添加し室温で2時間反応させた。緩衝液で5回洗浄した後、抗ワサビペルオキシダ-ゼ標識IgY抗体(100μL)を添加し、室温で1時間反応させた。次に、緩衝液で5回洗浄した後、TMB溶液(100μL)を添加し、室温で10分間反応させた後、停止液(1M塩酸:100μL)を添加して反応を止め、30分以内に450nm波長での吸光度を自動マイクロプレートリーダー(Emax、モレキュラーデバイス、米国)で測定した。検体中の脳由来神経栄養因子の含量をサンドイッチ型ELISA法にて測定し、検量線からその脳由来神経栄養因子の濃度を算出した。
【0027】
(3)統計分析
データは平均値±標準偏差で示した。2群間の統計分析はマンホイットニ U-テストで解析した。0.05以下のp値は統計的に有意とした。
【0028】
(4)結果
i)全被験者における血清BDNFの濃度
正常対照、および高機能自閉症の被験者における血清BDNF濃度の散布状態を図1に示す。
【0029】
上記実験結果に見られるように、高機能自閉症患者の血清BDNF濃度(平均値:27.1ng/ml)は同一年齢層の正常対照の濃度(平均値:61.6ng/ml)と比べて有意に低いことがわかった。BDNFは脳の発達過程において極めて重要な役割を果たしていることより、減少した血清BDNF値は高機能自閉症の病態生理学に寄与しているものと考えられる。例えば、患者さんの血清BDNF値が、健常者の血清BDNF値の平均値-標準偏差の値(50.8 ng/ml)より低い場合、高機能自閉症と診断される。
【0030】
要するに、本実験により、BDNFは自閉症の病態生理学において極めて重要な役割を果たし、血液BDNFは自閉症の生物学的マーカーとして有用であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】正常対照、自閉症の患者における血清BDNF濃度の散布図である。
図面
【図1】
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