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明細書 :熱電素子の特性評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4474550号 (P4474550)
公開番号 特開2007-059462 (P2007-059462A)
登録日 平成22年3月19日(2010.3.19)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
発明の名称または考案の名称 熱電素子の特性評価方法
国際特許分類 H01L  35/28        (2006.01)
FI H01L 35/28 C
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2005-239958 (P2005-239958)
出願日 平成17年8月22日(2005.8.22)
審査請求日 平成19年3月12日(2007.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】東崎 健一
【氏名】スー カリヤン
審査官 【審査官】▲高▼橋 英樹
参考文献・文献 特開平07-245425(JP,A)
特開平01-161140(JP,A)
特開2003-014804(JP,A)
特開平04-125458(JP,A)
調査した分野 H01L 35/28
特許請求の範囲 【請求項1】
熱電素子の二つの接点の一方を一定温度に保ちながら前記二つの接点の間に交流電流を流すステップ、更に、前記二つの接点の間に直流電流を重畳させて前記二つの接点の温度差を0にするステップ、を有する熱電素子の特性評価方法。
【請求項2】
前記直流電流を重畳させるステップは、前記交流電流を流すステップの後、前記熱電素子における二つの接点の間の温度差が定常状態に達した後に行われることを特徴とする請求項1記載の熱電素子の特性評価方法。
【請求項3】
前記熱電素子における二つの接点の温度差を検出するのに同熱電素子に生ずるSeebeck効果による熱起電力を用いる請求項1記載の熱電素子の特性評価方法。
【請求項4】
前記交流電流の電流値をI(A)、前記直流電流の電流値をI(A)、熱電素子の抵抗をR(Ω)、とし、下記式(1)によりPeltier係数Πを求める請求項1記載の熱電素子の特性評価方法。
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【請求項5】
前記交流電流の電流値をI(A)、前記直流電流の電流値をI(A)、熱電素子の抵抗をR(Ω)、熱電素子における絶対温度をT(K)とし、下記式(2)によりSeebeck係数ηを求める請求項1に記載の熱電素子の特性評価方法。
JP0004474550B2_000013t.gif
【請求項6】
前記二つの接点の間に直流電流を重畳させて前記二つの接点の温度差を0にするステップの後、交流電流の電流値を0にし、前記熱電素子における絶対温度をT(K)、定常状態における熱起電力をΔVs(V)とし、下記式(3)により熱抵抗Zを求める請求項4記載の熱電素子の特性評価方法。
JP0004474550B2_000014t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は熱電素子の特性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電素子はCPU等の冷却装置や熱を利用する発電素子として広範に使用されている。素子性能向上のための研究開発や製品の品質検査のために信頼性が高く簡便な評価方法が求められている。また熱流センサーとして熱分析装置に使用されている。
【0003】
熱電素子の特性パラメータ(Peltier係数、Seebeck係数、熱抵抗)を決定する従来の技術として、(1)素子に一定の温度差をつけて熱起電力を測定し(Seebeck係数を決定し)、(2)素子に一定の熱流を流した条件で温度差を測定する(熱抵抗の決定)方法がある。
【0004】
しかし、この測定方法は安定した条件で行うことが困難であったため、測定者や使用装置によって結果が異なるという大きな問題があった。また、材質自身の特性と実用に供される熱電素子に組み上げた状態での特性が大きく異なるという問題もあった。
【0005】
そしてこれに対し上記のような個々の定数ではなく熱電素子の効率係数(通称Z値)を1回の測定で直接求める方法が例えば下記非特許文献1に記載されており、またこの原理を利用する装置も市販されるに至っている。

【非特許文献1】T.C.Harman、A.Appl.Phys.、29巻、1959年、1373頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術では、Pertier係数、Seebeck係数、熱抵抗といった個々の定数が分からないといった課題が依然残っており、熱流センサーの較正に用いることができない。
【0007】
更に上記の方法においては、圧力媒体に周囲を囲まれた高圧下で特性パラメータを決定しようとする場合、より困難となり、結果が大きな誤差を含んでしまうといった課題も生じる。そのため高圧下で使用できる機器は市販されておらず、また、研究レベルの実施例も殆ど無い。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決し、Pertier係数、Seebeck係数、熱抵抗といった個々の定数を1回の測定で求めることが可能な熱電素子の特性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち上記課題を解決するための手段として、本発明に係る熱電素子の特性評価方法は、熱電素子の二つの接点の一方をほぼ一定温度に保ちながらこの二つの接点の間に交流電流を流すステップ、更に、この二つの接点の間に直流電流を重畳させるステップ、を有する。
【0010】
また直流電流を重畳させるステップは、交流電流を流すステップの後、前記熱電素子における二つの接点の間の温度差がほぼ定常状態に達した後に行われること、また、直流電流を重畳させるステップは、熱電素子における二つの接点の温度差をほぼ0にすることも望ましい。
【0011】
前記熱電素子における二つの接点間の温度差を検出するのに同熱電素子に生ずる熱起電力(ゼーベック効果)を用いる。
【0012】
また、本発明に係る熱電素子の特性評価方法は、交流電流の電流値をI(A)、前記直流電流の電流値をI(A)、熱電素子の抵抗をR(Ω)、とした場合、下記式(1)によりPeltier係数Πを求めることができる。
【数1】
JP0004474550B2_000002t.gif

【0013】
また、本発明に係る熱電素子の特性評価方法は、交流電流の電流値をI(A)、前記直流電流の電流値をI(A)、熱電素子の抵抗をR(Ω)、熱電素子における温度をT(K)とした場合、下記式(2)によりSeebeck係数ηを求めることができる。
【数2】
JP0004474550B2_000003t.gif

【0014】
また、本発明に係る熱電素子の特性評価方法は、交流電流の電流値を0とし、前記直流電流の電流値をID(A)、熱電素子の抵抗をR(Ω)、熱電素子における温度をT(K)、定常状態における熱起電力をΔVs(V)とし、Peltier係数をΠとした場合、下記式(3)により熱抵抗ZTを求めることができる。
【数3】
JP0004474550B2_000004t.gif

【0015】
また、本発明に係る熱電素子の特性評価方法は、Peltier係数をΠ、熱電素子における温度をT(K)、熱抵抗をZとした場合、下記式(4)により熱流センサーの係数Kを求める請求項1乃至3のいずれかに記載の熱電素子の特性評価方法。
【数4】
JP0004474550B2_000005t.gif

【発明の効果】
【0016】
以上により、Pertier係数、Seebeck係数、熱抵抗といった個々の定数を求める熱電素子の特性評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
まず図1に、本発明の利用する原理を説明するための回路図を示す。
【0019】
図1における回路図において、A、Bは熱電素子の二つの接点を、I、IIは二つの接点A、Bを電気的に接続する腕を、それぞれ示す。なお腕IIは途中で切断されており、切断の端部C、Dにおいて電源1及び第一の電圧計2に接続されている。また、一方の端部Dと電源1との間には抵抗3が配置されており、その抵抗3の両端には更に第二の電圧計4が接続されており、この両端に流れる交流電圧、直流電圧を測定する。なお、電源1は直流電流、交流電流のいずれも流すことが可能であって、この限りにおいて様々なものが使用できる。
【0020】
本実施形態に係る熱電素子の特性評価方法(以下「本特性評価方法」)は、まず、熱電素子の一方(例えばA)の接点を一定温度に保ちながら交流電流Iを流す。するとジュール発熱によって他方の接点Bの温度が上昇する。そして電流を流した後十分な時間が経過するとこの系が定常状態となり、接点Aと接点Bとの間にはほぼ一定の温度差が生じることとなる。
【0021】
そして次に、本特性評価方法では、この状態において更に、直流電流Iを重畳させ接点A、Bの間の温度差がほぼ0となるようにIの値を調整する。この温度調整は、Peltier効果による熱輸送により達成される。本特性評価方法では、これらの各段階における物理量を測定することにより、熱電素子の特性評価を行う。
【0022】
より具体的に説明すると、点A、Bの温度が定常的にほぼ等しい条件ではPeltier効果により輸送した熱量はジュール熱の半分に等しいため、この熱量について計算を行うことによりまず熱電素子のPeltier係数を求めることができる。Peltier効果により輸送した熱量がジュール熱の半分である理由は、接点A、Bの間で発生したジュール熱は接点A、Bの双方に等しく対称に流れているためである。即ち、Peltier係数Πは、以下の式により求めることができる。なおここでI(A)は交流電流の電流値を、I(A)は直流電流の電流値を、Rは熱電素子の抵抗値(Ω)を、それぞれ表す。
【数5】
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【0023】
そして更に、この求めたPeltier係数に基づき、Seebeck係数ηを求めることができる。Seebeck係数ηは、トムソンの第2関係式により求めることができ、下記式により求めることができる。なおここでTは絶対温度(K)である。
【数6】
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【0024】
更に、熱電素子の熱抵抗Zは、Zは下記式で定義される。ここで下記ΔT=ΔV/ηで求めることができ、Jは伝導熱流である。特に本実施形態に係る熱電素子の特性評価方法においてはΔVは熱起電力であって交流電流を0とし、直流電流Iのみを流して定常状態にすることにより測定することができる。この結果、接点A、Bの間の熱抵抗Zは、下記式により求めることができる。
【数7】
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【数8】
JP0004474550B2_000009t.gif

【0025】
また更に、この熱電素子を熱流JNの熱流センサーとして使用する場合の係数Kは、下記式で定義されるため(式中ΔVは接点A、B間の温度差ΔTによって生じた熱起電力を示す)、結果Kは更に下記式で求めることができる。
【数9】
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【数10】
JP0004474550B2_000011t.gif

【0026】
このように、本実施形態によると、熱電素子のPertier係数、Seebeck係数、熱抵抗といった個々の定数を求める方法が提供可能となる。特に、この方法においては、加熱機構等の他の構成要素を必要とせず簡易な系とすることができ、測定系における温度差を例えば0.1K以下の小さい値とすることが可能となり、正確な測定が可能となる。もちろん、本法は圧力媒体に周囲を囲まれた圧力容器内においても真空や大気中と同様に適用が可能である。
【0027】
(実施例)
上記の実施形態の具体的な例について説明する。本実施例では、対数N=31で示される熱電素子TM(Feero Tec Co.9502/031/012、内部抵抗値R:2.723Ω)を用い、この熱電素子の一方は一定温度(T=308.2K)の温度基盤(熱浴)に取り付けた。なおこの温度基盤の温度安定度は1mK以下とした。また、熱電素子の両端の接点に接続する第一の電圧計としてはDVM2(K2000)を、第二の電圧計としてはDVM1(AG3458A)を用い、電源にはAG33120を用いた。なおここで抵抗3は99.85Ωであった。ここで、本実施例で用いた測定系のブロック図を図2に示す。
【0028】
そして図3に、本実施例において直流電流IDを変えて定常熱起電力ΔVSを測定した結果を示す。なおここで交流電流は周波数1kHzで、電流IAの値が41.65mAであった。図3より直流電流IDの値が0.614mAの場合、点A、Bの温度差がほぼ0になっている。
【0029】
これに基づきPeltier係数Π、Seebeck係数ηを求めたところ、Π=R(I+I)/(2NI)=0.124(W/A)、η=Π/T=0.403mV/Kであった。これらの値は従来の方法で求めたものと一致する。(参考文献:S. Wang, K.Tozaki, H. Hayashi, S. Hosaka and H. Inaba: Thermochimica
Acta, 408 (2003) 31.

【0030】
そして更に、交流電流を0として直流電流IDを0.614mAとし、定常状態に達した場合において熱起電力ΔVsは1.190mVであった。これに基づき熱抵抗ZT、熱流センサーとしての係数Kをそれぞれ求めたところ、ZT=T・ΔVS/(N2Π2ID)=40.3K/W、K=1/(NηZT)=1.984W/Vであった。


【0031】
以上、本実施例により、Pertier係数、Seebeck係数、熱抵抗といった個々の定数を求める熱電素子の特性評価方法を提供可能であることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の利用する原理を説明するための回路図。
【図2】実施例における熱電素子の特性評価装置のブロック図。
【図3】実施例において直流電流Iを変えて定常熱起電力ΔVを測定した結果を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1・・・電源、2・・・第一の電圧計、3・・・抵抗、4・・・第2の電圧計
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2