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明細書 :水耕栽培装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4759734号 (P4759734)
公開番号 特開2007-089489 (P2007-089489A)
登録日 平成23年6月17日(2011.6.17)
発行日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
発明の名称または考案の名称 水耕栽培装置
国際特許分類 A01G  31/00        (2006.01)
FI A01G 31/00 601B
A01G 31/00 601D
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2005-283931 (P2005-283931)
出願日 平成17年9月29日(2005.9.29)
審査請求日 平成20年9月25日(2008.9.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 卓
【氏名】丸尾 達
【氏名】篠原 温
【氏名】アレハンドロ ラウル プエルタ
個別代理人の代理人 【識別番号】100121658、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 昌義
審査官 【審査官】小島 寛史
参考文献・文献 特開平4-23927(JP,A)
特開平8-336337(JP,A)
特開昭64-74939(JP,A)
特開平2-27930(JP,A)
特開平1-191623(JP,A)
調査した分野 A01G 31/00 -31/02
特許請求の範囲 【請求項1】
植物体を保持し、該植物体の根系へ培養液を供給する、長手方向に形成した一次傾斜と、幅方向に形成された二次傾斜の少なくとも二方向以上の傾斜面を有する栽培ベッドと
該栽培ベッドの傾斜面に該培養液を供給する培養液供給手段と、
該栽培ベッドから、培養液を排出する培養液回収手段を有し、
前記培養液供給手段は、培養液タンクに接続された培養液供給パイプと、栽培ベッドの長手方向に配置されたドリップイリゲーションホースと、を有し、更に、
前記栽培ベッド上に配置されるキャピラリーマットと、を有する水耕栽培装置。
【請求項2】
前記培養液供給手段は、栽培ベッドの長手方向に配置して、該記栽培ベッドの側面から、前記培養液を供給することを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記栽培ベッドの長手方向に配置された培養液回収手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記培養液回収手段は、前記栽培ベッドから培養液を回収する該排水チャンネルと、該排水チャンネルで回収された培養液を蓄積する上記培養液タンクを有して構成されたことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置
【請求項5】
前記培養液回収手段により回収した培養液を、前記培養液供給手段へ循環させる手段を有すること特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
前記栽培ベッドへの前記培養液の供給は、薄膜状に行うことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培装置、特に複数の植物体を育成する長大な栽培ベッドへ最適な培養液の供給を可能にする水耕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水耕栽培装置の一つにNutrient Film Technique (以下,NFTとする。)があり、植物体の栽培に用いられている。水耕栽培装置の利点としては、植物体へ供給する培養液を任意の濃度・量・時間に施用できることがあげられるが、地下部への酸素の供給が難点とされてきた。そこで、NFTは培養液の層を薄くフイルム状にすることによりこの難点を解消したものであり、近年、注目されている。(特許文献1)
【0003】
しかし、従来のNFTでは、長大な栽培ベッドにした場合、栽培ベッドの上流と下流における作物の生育速度に差が生じ安く、均一な大きさの植物体を栽培することが困難であった。この原因は、培養液を供給する栽培ベッドの上流と下流で、培養液に濃度差が生じ、作物の生育に違いがでるといった問題が顕著に影響するためである。つまり,培養液タンクから供給された直後の栽培ベッド上流では、植物体の生育は促進される一方、栽培ベッドを下流に流れて行くにしたがい,培養液中の無機成分が植物に吸収されて、培養液の濃度が低下するために、下流では植物が吸収できる培養液が少なく、植物体の生育に差が生じ、商品価値を損なうことになる。
【0004】
一方、培養液の濃度低下を防ぐ水耕栽培装置としては、例えば、中空導管状の栽培ベッドを傾斜させて培養液を充分に供給する水耕栽培装置や、(特許文献2)、培養液に対して浮力を有する栽培ベッドを育成棚に傾斜して配置する水耕栽培装置が提案されている。(特許文献3)しかし、この種の水耕栽培装置では、培養液が多量に必要となり、培養液回収、循環のため大型装置を要する。植物体によっては、培養液の過剰供給による根腐れ等の問題が生じ安い。

【特許文献1】特開2000-50754号
【特許文献2】特表2000-510706号
【特許文献3】特開2004-344086号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、鋭意研究の結果、栽培ベッド上を移動する培養液の移動距離を短くして、植物体の根系を通過することによる培養液濃度の低下を小さくすれば、上記課題が解決できることに着目した。本発明は、簡易な構成で、従来の水耕栽培装置に比べ、長大な栽培ベッドでも、均一な濃度の培養液を全栽培ベッドの上流・下流に供給して、上流と下流における作物の生育速度の差が解消し、しかも、培養液を循環あるいは他の栽培ベッドへ供給できるので、均一な大きさの植物体を大規模に栽培できる水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本件発明は、植物体を保持し、該植物体の根系へ培養液を供給する、長手方向に形成した一次傾斜と、幅方向に形成された二次傾斜の少なくとも二方向以上の傾斜面を有する栽培ベッドと、該栽培ベッドの傾斜面に該培養液を供給する培養液供給手段と、該栽培ベッドから、培養液を排出する培養液回収手段を有し、前記培養液供給手段は、培養液タンクに接続された培養液供給パイプと、栽培ベッドの長手方向に配置されたドリップイリゲーションホースと、を有し、更に、前記栽培ベッド上に配置されるキャピラリーマットと、を有する水耕栽培装置とする。なお本発明において、前記培養液供給手段は、栽培ベッドの長手方向に配置して、該記栽培ベッドの側面から、前記培養液を供給することを特徴とすることが好ましい。また、本発明において、前記栽培ベッドの長手方向に配置された培養液回収手段を備えたことも好ましい。また、本発明において、前記培養液回収手段は、前記栽培ベッドから培養液を回収する該排水チャンネルと、該排水チャンネルで回収された培養液を蓄積する上記培養液タンクを有して構成されたことが好ましい。また本発明において、前記培養液回収手段により回収した培養液を、前記培養液供給手段へ循環させる手段を有することが好ましい。また、本発明において、前記栽培ベッドへの前記培養液の供給は、薄膜状に行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成された本発明では、以下の効果を奏する。
(1)請求項1に係る発明の効果
本請求項に係る本発明では、従来的な一次傾斜に加え、横方向の傾斜(二次傾斜)を加えたので、栽培ベッドに保持されたぞれぞれの植物体の根系に、斜め方向から均一な濃度の培養液を供給できる。その結果、従来の栽培装置での栽培ベッドの上流と下流における作物の生育速度の差が解消し、均一な大きさの植物体を栽培する水耕栽培装置が可能となる。また、前記培養液供給手段が、ドリップイリゲーションホースであるので、長大な栽培ベッドにおいても、栽培ベッドの上流と下流における作物の生育速度の差が解消し、均一な大きさの植物体を栽培できる水耕栽培装置が可能となる。また、上記培養液を、最短距離で供給する位置に配置できるので、培養液の濃度変化が少なく、均一な大きさの植物体を栽培する水耕栽培装置が可能となる。
(2)請求項2に係る発明の効果
本請求項に係る発明は、培養液供給手段を、栽培ベッドの長手方向に配置して、該記栽培ベッドの側面から、培養液を供給する。その結果、従来の栽培装置での栽培ベッドの上流と下流における作物の生育速度の差が解消し、長大な栽培ベッドでも、上流と下流における作物の生育速度の差が解消し、均一な大きさの植物体を栽培する水耕栽培装置が可能となる。
(3)請求項3に係る発明の効果
本請求項に係る発明は、栽培ベッドの長手方向に、濃度変化の少ない培養液を回収する培養液回収手段を備えたので、再度、栽培ベッドへ供給することができる。
(6)請求項4および5に係る発明の効果
本請求項に係る発明は、培養液回収手段へ回収した培養液を、培養液供給手段へ循環させる手段を有するので、長大な栽培ベッドにおいて経済的であり、環境負荷も少ない。
(7)請求項6に係る発明の効果
本請求項に係る発明は、栽培ベッドへの前記培養液の供給を薄膜状に行うことで、長大で栽培面積の大きい栽培ベッドで、経済的かつ低環境負荷下に、均一な大きさの植物体を大規模に栽培する水耕栽培装置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態(以下、単に本発明という)について、以下に図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0009】
(1)本発明の全体構造
図1は、本発明に係る水耕栽培装置(以下、本水耕栽培装置とする)の図である。本水耕栽培装置は、図1に示すように、例えば、支柱を有する培養液を供給する方向に傾斜した栽培ベッド3を有する。この栽培ベッド3は、少なくとも、2方向以上の傾斜面を有しており、単独、あるいは複数を平面あるは立体に連結できる。該栽培ベッド3には、図2に示すように、植物体を保持する栽培パネル14が配置されている。該植物体の根系が、栽培ベッド3に接するように、栽培パネル14は設置される。本実施例では、植物体としては、レタスを用いた。栽培パネル14で保持される植物体11の根系には、該栽培ベッド3の上流から、培養液を供給する。栽培パネル14で保持される植物体は、植物体の生育を考慮して、単位面積当たりの保持数が決められる。しかも、下記に述べる培養液供給手段10から最短距離にあり、培養液の流れが他の植物体と重ならない位置に配設するのが望ましい。以下にさらに、詳細に説明する。
【0010】
(2)本発明の栽培ベッド
図3は、本水耕栽培装置の栽培ベッド3の断面図である。本体は、長さ18m x 幅46cmである。図1、2および3に示すように、栽培ベッド3の長手方向に形成された一次傾斜1および栽培ベッド3の幅方向に形成された二次傾斜2によって、培養液の流れを規制する。培養液は、育成する植物体によって、適宜、調整される。本実施例では、レタス(Lectuca sativa L. cv L-2, 株式会社みかど種苗)育成のため、園芸試験場処方の1/4単位を用いた。
【0011】
(3)培養液供給手段
本実施例では、上記培養液の適切な供給のため、上記栽培ベッド3の長手方向に形成された一次傾斜1を1%、栽培ベッド3の幅方向に形成された二次傾斜2を3%にした。少なくとも二方向以上の傾斜面を有する栽培ベッド3上には、その長手方向に、培養液タンク6(56.5 x 72 x 60 cm)から、ポンプ7(Hitachi, C-P60J)により、培養液供給パイプ4(PVC 13)に連結された複数の培養液供給孔を有するドリップイリゲーションホース10(Evaflow A, Netafim)が接続および配設されている。
【0012】
(4)栽培ベッド
栽培ベッド3上には、保水性の優れたキャピラリーマット9が敷設されており、ドリップイリゲーションホース10から供給された培養液は、該ピラリーマット8上を流れ、キャピラリーマット8上に配設された栽培パネル14(発砲スチロール板 90 x 180 cm)の植物体保持穴または該栽培パネルにおいて保持された植物体の根系の位置12に該培養液を供給する。
【0013】
(5)栽培パネル
なお、上記栽培パネル14には、長手方向に向かって15cm、幅方向に向かって18cmの間隔で植物体が保持されている。本実施例では、240本の植物体を育成することができる。なお、栽培ベッドの傾斜に合わせて、栽培パネルも配置される。
【0014】
(6)培養液回収手段
さらに、栽培ベッド3のドリップイリゲーションホース10の対向する位置に、供給した培養液を回収するため、栽培ベッド3の長手方向に排水チャンネル5(幅5.5cm,深さ2.0cm)が配置されている。なお、図1,2に示すように栽培パネル組み合わせる場合、排水チャンネル5は、栽培ベッド3の中央に配置することが望ましい。
【0015】
該排水チャンネル5は、図1に示すように、栽培ベッド下流端部で集めた上、培養液タンク6に接続する。望ましくは、ファイルター9(Arkal3/4”, Arkal
Filtration Systems)を介して、ポンプ7により再びドリップイリゲーションホース10供給されに、栽培ベッドに培養液が供給・循環させる。なお、本実施例では、同一の栽培ベットユニットで循環させているが、他の栽培ベッドユニットに供給できる。
【0016】
(7)本発明の栽培ベッドにおける培養液の流れ
上記のように構成された本水耕栽培装置における培養液の流れを、図1および図4に示す。
即ち、図1に示すように、上記にように構成された栽培ベッドに配置された培養液供給手段および培養液回収手段により、培養液は、培養液タンク6からフィルタ9を介して接続されたポンプ7により、培養液供給パイプ4を通り、ドリップイリゲーションホース10から、栽培ベッド3に供給される。図4に示すように、培養液13は層状に供給されるが、該キャピラリーマット8上を、栽培パネル14で保持された植物体の根系の位置12へ、最短距離かつ他の植物体の根系と重ならないように供給できる。下流における培養液の濃度低下が少ない。供給された培養液は、排水チャンネル5で回収され、培養液タンク6へ送られる。このようにして、植物体の生育に影響を与えない程度の濃度を回避しつつ、培養液を、効率的に循環させることができる。
【0017】
上記のように構成することによって、栽培パネルで保持された植物体の育成に影響を与えないまで、上流と下流での培養液の濃度差を解消して培養液の層を薄くフィルム状に供給することができる。
【0018】
(8)従来の水耕栽培装置と本発明による栽培結果の比較
従来の水耕栽培装置(図5)と本水耕栽培装置によるレタスの育成結果(図6)を示す。従来の水耕栽培装置とは一般に普及しているNFT栽培装置であり,培養液供給方法以外の育成条件は同一である。その結果、一株あたり平均新鮮重は従来型栽培装置で118.6gで、栽培ベッドの上流と下流で、最大78.2gの差がある、これに対して、本水耕栽培装置では平均で132.7gとなり従来型よりも有意に大きくなった(0.05レベル).さらに本水耕栽培装置ではの上流と下流で、最大13.8gの差に止まり、育成差が極めて小さい。生育差が本水耕栽培装置で小さいことは標準偏差が4.98と従来の水耕栽培装置の20.96に対して極めて小さいことでも示された。
【0019】
以上説明したように本発明によると、極めて簡易な構成により、培養液供給パイプから排出された培養液は、栽培ベッド上を移動する距離が短く、植物体の根系を通過することによる培養液濃度の低下が無視できるまでに小さくなる。従って、培養液濃度の管理のため複雑な制御装置を用いることなく、作物の生育速度の差が解消し、均一な大きさの植物体を大規模に栽培することが可能になる。なお、上記実施例では、2方向の傾斜であったが、これに限らず、栽培ベッドの中間部で変更し、植物体の生育に合わせて変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の利用可能性として、上記のような培養液の層を薄くフイルム状に供給する水耕栽培装置(Nutrient Film Technique)
に最適であるがこれに限定されるものではない。本発明においては、培養液濃度の低下が無視できるまでに小さくなるので、培養液を循環させて栽培する循環式の水耕栽培装置に実施することができる。また、長大な栽培ベッドを有するその他の水耕栽培装置においても実施可能であり、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る水耕栽培装置。
【図2】本発明に係る水耕栽培装置の断面図。
【図3】本発明に係る水耕栽培装置の栽培ベッドの断面図。
【図4】本発明に係る水耕栽培装置の栽培ベッドへの培養液の流れを説明する図。
【図5】従来の水耕栽培装置によるレタスの生育結果。
【図6】本発明に係る水耕栽培装置によるレタスの生育結果。
【符号の説明】
【0022】
1…一次傾斜(1%)
2…二次傾斜(3%)
3…栽培ベッド(長さ18m x 幅46cm)
4…培養液供給パイプ(PVC 13)
5…排水チャンネル(幅5.5cm,深さ2.0cm)
6…培養液タンク(56.5 x 72 x 60 cm)
7…ポンプ(Hitachi, C-P60J)
8…キャピラリマット
9…フィルタ(Arkal3/4”, Arkal Filtration Systems)
10…ドリップイリゲーションホース(Evaflow A, Netafim)
11…植物体(レタス,Lectuca sativa L. cv L-2, 株式会社みかど種苗)
12…植物体保持穴または植物体根系の位置
13…培養液の流れ
14…栽培パネル:発砲スチロール板 90 x 180 cm
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5