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明細書 :交流駆動電気化学発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4366505号 (P4366505)
公開番号 特開2007-134143 (P2007-134143A)
登録日 平成21年9月4日(2009.9.4)
発行日 平成21年11月18日(2009.11.18)
公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
発明の名称または考案の名称 交流駆動電気化学発光素子
国際特許分類 F21K   2/08        (2006.01)
FI F21K 2/08
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2005-325476 (P2005-325476)
出願日 平成17年11月9日(2005.11.9)
審査請求日 平成19年3月28日(2007.3.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】小林 範久
【氏名】森本 太郎
審査官 【審査官】莊司 英史
参考文献・文献 特開2006-339117(JP,A)
特開昭52-002192(JP,A)
特開2001-187883(JP,A)
特開平05-081878(JP,A)
特開2005-302332(JP,A)
調査した分野 F21K 2/08
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の電極と、該一対の電極の間に挟持される発光材料を含有する発光層と、を有する電気化学発光素子であって、
前記発光層は、発光する駆動周波数が互いに異なる2種以上の発光材料を含み、
前記一対の電極間に周波数50Hz以上の交流電圧を、周波数を異ならせて印加することにより前記発光層を多色発光させる電気化学発光素子。
【請求項2】
前記発光層において含有されている前記2種以上の発光材料は、互いに平均粒径が異なる請求項1記載の電気化学発光素子。
【請求項3】
前記一対の電極間に様々な周波数の交流電圧を印加する電源装置を有することを特徴とする請求項1記載の電気化学発光素子。
【請求項4】
前記発光層は、高分子が含有されていることを特徴とする請求項1記載の電気化学発光素子。
【請求項5】
一対の電極と、該一対の電極の間に挟持される2種以上の発光材料を含有する発光層と、前記一対の電極間に様々な周波数の交流電圧を印加できる電源装置と、を有し、
前記発光層における前記2種以上の発光材料は、発光する周波数範囲が互いに異なり、
前記一対の電極間に、周波数を異ならせて交流電圧を印加することで多色発光させることができる電気化学発光素子。
【請求項6】
前記発光層において含有されている前記2種以上の発光材料は、互いに平均粒径が異なる請求項記載の電気化学発光素子。
【請求項7】
前記発光層は、高分子が含有されている請求項記載の電気化学発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は交流駆動電気化学発光素子に関し、例えば光源や表示装置に好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は正極、負極、これら正極と負極との間に挟持され蛍光性分子を含有する有機層とを有し、正極からは正孔を、負極からは電子を、それぞれこの蛍光性分子に注入し再結合させることにより発光させる素子であって、光源や表示装置をはじめとする様々な装置に応用が期待されている。
【0003】
有機電界発光素子の特徴としては、電荷を直接注入するためnsecレベルでの応答が可能であること、蛍光性分子を含む有機層がサブμmレベルの厚さであるため薄型で軽量となること、が挙げられる。
【0004】
しかしながら有機電界発光素子は、電荷注入が電極のフェルミレベルに依存するため正極、負極の材料が限定されてしまうこと、有機層をμm以上の膜厚としたい場合これが困難であること、高電界が駆動に必要であること、といった課題も有する。
【0005】
一方、有機電界発光素子の上記課題を補う素子として電気化学発光素子が考えられている。電気化学発光素子は、陽極と、陰極と、この陽極及び陰極との間に挟持された発光分子を含有する溶液層とを有しており、陽極と陰極との間に電界を印加して陽極側から酸化反応を、陰極側から還元反応をそれぞれ進行させ、酸化された発光分子(以下「酸化体」という)と還元された発光分子(以下「還元体」という)との界面を接触させることにより発光を行う素子である。
【0006】
しかし一方、電気化学発光素子は、上記のとおり電極反応で酸化体と還元体とを生成し、それらが接触する界面で発光させるものであるため、電圧印加から発光まで時間がかかってしまう、イオン伝導性を高くする即ちイオン化した発光材料(酸化体及び還元体)を安定化させる必要がある、という課題を残す。なお、高輝度、高速応答という観点からは一対の電極間距離が小さいことが極めて望ましいが、電極間距離が小さい場合は電極間距離の誤差が輝度及び応答速度に大きく影響を及ぼしてしまう虞があるため、一対の電極の距離の自由度は大きく確保されていることが望ましい。
【0007】
なお電気化学発光素子に関する従来の技術として、一対の電極と、この電極の間に挟まれた発光材料、溶媒、及び発光材料を安定化する非イオン性化合物からなる発光助長性添加物が含有されている発光溶液と、を有し、電極から電荷が注入されイオン化した発光材料を安定化させ、発光を安定化させる電気化学発光素子に関する技術が下記特許文献1に記載されている。
【0008】

【特許文献1】特開2002-324401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、イオン性化合物からなる支持電解質を用いた系では支持電解質と発光材料の副反応や電荷の偏りによる消光等素子としての安定性において課題を有していることに着目してなされたものであって、高速応答を意識したものではなく、また一対の電極の距離の自由度の確保についても課題を残している。
【0010】
そこで本発明は、高速応答が可能であって、一対の電極の距離の自由度を確保した高輝度な電気化学発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための手段として、本発明は具体的には下記に記載の手段を採用する。
【0012】
本発明にかかる電気化学発光素子は、一対の電極と、この一対の電極の間に挟持される発光材料を含有する発光層と、を有する電気化学発光素子であって、一対の電極間に周波数50Hz以上の交流電圧を印加する電源装置と、を有する電気化学発光素子とする。
【0013】
先述したとおり有機電界発光素子は、一対の電極の間に電圧を印加して酸化体及び還元体をそれぞれの電極近傍で生成し、酸化体及び還元体を電極側から成長させその界面同士を接触させることにより発光を行うと考えられている。しかしながら、一対の電極間に50Hz以上の交流電圧を印加すると、片側の電極で酸化体の生成、還元体の生成の両方を行い、酸化体及び還元体を衝突させることができるようになる。これにより、一対の電極間隔に大きく依存せず、電極間隔に対し大きな自由度を確保することができる。ここで交流電圧の波形として矩形波、三角波、正弦波等様々な波形が考えられ、1周期の中においてプラスとマイナスが逆転する波形であれば特段に限定は無い。交流電圧の電圧値に関しては電極間隔及び電極間に配置される発光層との関係で適宜調整可能である。
【0014】
またこの電気化学発光素子において、発光層は、発光材料が2種以上含有されていることも望ましい。発光材料を2種類以上含有させることにより、一つの電気化学発光素子において多色の発光を可能とすることができるようになる。またこの場合において、発光材料の平均粒径は互いに異なることも望ましい。これにより、発光材料が発光する周波数領域を異ならせることができ、一対の電極間で定められる範囲において多色発光が可能となる。なお本明細書でいう「異ならせる」または「異なる」とは、一部重複する領域を有している場合も含まれる。また、上記を達成するためには、一対の電極間に様々な周波数の交流電圧を印加できる電源装置を設けることによって実現することができる。
【0015】
またこの電気化学発光素子において、発光層は、発光材料を含有し、一対の電極上に形成される薄膜を有することも望ましい。これにより薄膜における発光材料が発光する周波数領域と薄膜以外の発光層に含有される発光材料が発光する周波数領域とを異ならせることができ、一対の電極間で定められる範囲において多色発光が可能となる。
【0016】
またこの電気化学発光素子において、発光層は、支持電解質が含有されていること、高分子が含有されていること、が望ましい。
【0017】
また、本発明に係る電気化学発光素子は、一対の電極と、一対の電極の間に挟持される2種以上の発光材料を含有する発光層と、一対の電極間に様々な周波数の交流電圧を印加できる電源装置と、を有し、発光層における前記2種以上の発光材料は、発光する周波数範囲が互いに異なる電気化学発光素子とする。
【0018】
先述したとおり有機電界発光素子は、一対の電極の間に電圧を印加して酸化体及び還元体をそれぞれの電極近傍で生成し、酸化体及び還元体を電極側から成長させその界面同士を接触させることにより発光を行うと考えられている。しかしながら、一対の電極間に交流電圧を印加することで片側の電極で酸化体の生成、還元体の生成の両方を行い、酸化体及び還元体を衝突させるとともに、発光する周波数領域が異なる2種以上の発光材料を用いることで一対の電極間で定められる範囲において多色発光が可能となる。なおこの多色発光は一対の電極間に様々な周波数の交流電圧を印加できる電源装置を設け、これにより印加する交流電圧を調整することによって実現できる。
【0019】
またこの電気化学発光素子において、発光層は発光材料の少なくとも一種を含有し、かつ前記一対の電極上に形成される薄膜を有することが望ましく、また、発光材料は、平均粒径が互いに異なることも望ましく、更には発光層に支持電解質が含有されていること、高分子が含有されていることものぞましい。
【0020】
また、本発明に係る電気化学発光素子は、一対の電極と、一対の電極の間に挟持される発光材料を含有する発光層と、を有する電気化学発光素子であって、発光層は、発光材料を含有し、かつ一対の電極上に形成される薄膜を有する電気化学発光素子とする。
【発明の効果】
【0021】
以上により、高速応答が可能であって、一対の電極の距離の自由度を確保した高輝度な電気化学発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る電気化学発光素子の概略斜視図を示す。本実施形態に係る電気化学発光素子は、少なくとも一方が透明な一対の基板と、該一対の基板の対抗する面に夫々形成される少なくとも一方が透明な一対の電極と、この一対の電極の間に配置される発光層と、を有して構成されており、発光層には少なくとも発光材料が含有されてなる。 また本実施形態に係る電気化学発光素子は、一対の電極に接続された電源装置を有しており、電源装置から一対の電極の間に交流電圧を印加することによって表示が行われる。なおこの電気化学発光素子の概略断面図を図2に示す。
【0024】
本実施形態に係る少なくとも一方が透明な一対の基板は、一対の電極及びこの一対の電極の間に発光層を挟持するための部材であって、少なくとも一方が発光層から発せられる光を観測できる程度に透明であれば材質には特段の制限は無く、例えばガラス、プラスチック等が採用可能である。また基板の厚さについては、特段に制限は無く、強度、重量、透明性等を考慮して適宜調整可能である。
【0025】
本実施形態に係る少なくとも一方が透明な一対の電極は、一対の基板の対向する面に形成されるものであって、導電性を有し、少なくとも一方が透明な部材で構成されていれば特段に制限は無く、透明な導電性部材としてITOやIZO等の導電性酸化物が採用可能であって、不透明な導電性部材であればアルミニウム等の金属等が採用可能である。また一対の電極の組が表示素子のいわゆる画素に相当するものであるため、表示装置として機能させるためには、一対の基板上に一対の電極の組を複数配置することが望ましい。一対の電極の配置の方法としては、複数の行からなる行電極を対向する基板同士直角になるよう配置する単純マトリクス方式などが採用可能であるが、各対の電極毎に電圧印加が可能である限りにおいて特段形状に制限は無い。なお照明装置や光源として用いる場合は一対の電極は一つであっても十分に可能である。
【0026】
また、本実施形態に係る電気化学発光素子一対の電極は、スペーサーによって一定の距離に保たれている。スペーサーとしては、非導電性の物質であって、所望の強度を有して一定に距離を保つことができる限りにおいて特段制限は無く、様々なものを用いることができる。本電気化学発光素子の電極間の距離としては、1μm~10mmが可能であり、望ましくは10μm~1mmである。
【0027】
本実施形態に係る発光層は、溶媒と、この溶媒に含まれる発光材料を有して構成されている。発光材料としては、電圧を印加することにより発光することができる限りにおいて特段の制限は無いが、例えばRuPF、RuCl、PVB(ポリビニルブチラール)、DPA(9,10-ジフェニルアントラセン)、TBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)等を好適に用いることができる。また溶媒としては、上記発光材料を含ませることができる限りにおいて特段に制限はないが、例えばNMP溶液等を好適に用いることができる。また、これら発光材料の濃度については、特に限定されるわけではないが、5M以下であることが望ましく、より望ましくは1mM~1M、さらに望ましくは10mM~100mMである。
【0028】
また、本実施形態に係る交流駆動電気化学発光素子は、一対の電極間に周波数50Hz以上の交流電圧を印加することにより前記発光層を発光させることを特徴の一つとしている。この周波数以下である場合、発光が目に見えて劣化してしまい、あまりに高すぎると酸化還元反応による発光が生ずる前に電極の反転が起こり、発光材料の拡散が追いつかず発光が妨げられてしまう虞があるためである。なお、本実施形態に係る交流駆動電気化学発光素子の望ましい周波数としては、50Hz以上1500Hz以下、より望ましくは50Hz以上1200Hz以下、更に望ましくは50Hz以上700Hz以下、更に望ましくは50Hz以上600Hzである。
【0029】
また、電極の間に印加される電圧としては、電極間の距離にもよるが、電極間の距離が1μm~10mm程度の範囲にあるとした場合、概ね5V~20Vであることが好ましく、電界の強さとしては0.001V/μm~10V/μmである。
【0030】
本実施形態に係る交流駆動電気化学発光素子の発光層は、複数の異なる発光材料を有してなることが好ましい。発光材料を2種類以上含有させることにより、一つの電気化学発光素子において多色の発光を可能とすることができるようになる。本交流駆動の電気化学発光素子の発光材料はそれぞれ発光する駆動周波数が異なるため、複数の材料を導入した場合、そのそれぞれの発光材料は独立に個別の周波数で発光することとなる。したがって、周波数を選択することにより、そのそれぞれの発光材料の発光を制御し、色を調節することができるようになる。またこの場合において、発光材料の平均粒径は互いに異なることも望ましい。これにより、発光材料が発光する周波数領域をより異ならせることができ、一対の電極間で定められる範囲において多色発光が可能となるのである。
【0031】
(実施例1)
上記実施形態に係る交流駆動電気化学発光素子の具体的な例として、以下を作成した。表を用いて具体的に説明する。
【0032】
作成した電気化学発光素子は4種とした。それぞれ厚さを異ならせた以外はほぼ同じものを作成した。本実施例における電極材料としては、双方の電極にITOを用い、発光層の発光材料としてはRuPF(20mM)を、溶媒としてはNMPを用いた。なお作成した電気化学発光素子の電極間の距離はそれぞれ10μm、50μm、200μm、1mmであった。
【0033】
そしてこれら作成したセルに対し、各々10Vの交流の電圧を印加し、周波数を異ならせた結果を下記表1に示す。なお図3に、本実施例において作成したセルにおける発光の状態を示す。図中、(A)は明るい状態における発光素子のON状態(電圧印加状態)、OFF状態(電圧無印加状態)を、(B)は暗い状態における発光素子のON状態、OFF状態をそれぞれ示す。


【表1】
JP0004366505B2_000002t.gif

【0034】
以上の結果、交流駆動電気化学発光素子は一対の電極間に周波数50Hz以上の交流電圧を印加することにより電気化学発光を行うことが確認できた。
【0035】
(実施例2)
本実施例は実施例1とほぼ同じとし、同様な実験を行ったが、発光材料を異ならせた点が異なる。溶媒及び発光材料及びこの結果を以下の表2に示す。
【表2】
JP0004366505B2_000003t.gif

【0036】
以上の結果、交流駆動電気化学発光素子は一対の電極間に周波数50Hz以上の交流電圧を印加することにより電気化学発光を行うことができ、さらに、複数の発光材料を発光層に含ませることで一つの電気化学発光素子において多色の発光色を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る電気化学発光素子の分解斜視図。
【図2】本実施形態に係る電気化学発光素子の断面概略図。
【図3】実施例に係る電気化学発光素子の発光状態を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2