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明細書 :位相共役鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4649614号 (P4649614)
公開番号 特開2007-171552 (P2007-171552A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
発明の名称または考案の名称 位相共役鏡
国際特許分類 G02F   1/355       (2006.01)
FI G02F 1/355
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2005-369037 (P2005-369037)
出願日 平成17年12月22日(2005.12.22)
審査請求日 平成19年3月12日(2007.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】尾松 孝茂
審査官 【審査官】瀬川 勝久
参考文献・文献 古谷泰司、後藤正人、尾松孝茂,応用物理学会学術講演会講演予稿集,日本,2009年 9月 7日,vol.66, no.3, 10p-H-12,p.935
T. Omatsu 他,Applies Physics B,ドイツ,2002年 9月25日,vol.75,pp.493-495
S. Mailis 他,Optics Letters,米国,1999年 7月15日,vol.24, no.14,pp.972-974
A. Bribnon 他,Applied Physics B,ドイツ,1999年 6月24日,vol.69,pp.159-162
C. Maunier 他,Journal of the Optical Society of America. B. Optical Physics,米国,2002年 8月,vol.19, no.8,pp.1794-1800
調査した分野 G02F 1/00-7/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
Nd:Gd1-xVO(0.4≦x≦0.6)、Nd:LuGd1-xVO0.4≦x≦0.6)またはNd:LaGd1-xVO0.4≦x≦0.6)を含むバナデート混晶を用いる位相共役鏡。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、位相共役鏡に関し、特に、超短波パルスレーザーの制御に好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
位相共役波は、空間反転性を示す光であり、位相共役波を発生する位相共役鏡を用いると光が伝播中に受ける様々な位相歪を自動補償することができる。例えば、これを高出力レーザー装置に適用すると、レーザー装置に発生するいかなる熱収差も自動補償し、高いビーム品質を維持したまま高出力レーザーを発生させることができる。
【0003】
そしてこの位相共役鏡を実現する物質として、近年、無秩序結晶(バナデート結晶)が注目を集めている。このレーザー結晶が示す飽和増幅効果と呼ばれる三次非線形光学効果を利用すると、高い反射率と高速応答を同時に満たす高機能な位相共役鏡を構築することができるのではないかと考えられている。
【0004】
しかしながら、バナデート結晶のレーザー遷移の線幅は、1nm程度と狭く、サブピコ秒以下の超短波パルスレーザーのような広帯域レーザーでは極端な反射率の低下やスペクトル狭窄に伴うパルスブロードニングが起こってしまうため、現状では実用的な超短波パルスレーザー用の位相共役鏡は提供されていない。
【0005】
なおパルスレーザー用の位相共役鏡としてRh:BaTiO結晶を用い、このRh濃度、結晶方位、屈折率格子間隔を最適化し、ピコ秒領域で50%を超える位相共役波反射率を達成したとする報告がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記位相共役鏡を用いた場合であっても、波長帯域幅と応答速度がトレードオフの関係にあること、また、BaTiO結晶の屈折率波長分散が大きいことから、近赤外のサブピコ秒からフェムト秒パルスに対して時間応答性、反射率が低く、更には、光吸収を伴う非線形現象であるため光損傷閾値が低い、といった課題が残ってしまう。実際、フォトリフラクティブ位相共役鏡を用いた高出力レーザーはピコ秒領域でも平均出力50W、パルスエネルギー1mJが限界である。ましてやサブピコ秒以下の超短波パルスレーザーに適用することは非常に難しい。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、より高反射率、広帯域、高速応答、高光損傷閾値を示す位相共役鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、非線形光学効果の一つである利得飽和効果を利用することでより高反射率、広帯域、高速応答、高光損傷閾値を示す位相共役鏡を提供するには、バナデート結晶を複数用いて混晶とすることで上記性能を満たす位相共役鏡を提供できることに鑑み、発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、位相共役鏡において、バナデート混晶を用いてなることを特徴とする。
【0010】
また、この場合においてバナデート混晶は、Nd:YVO、Nd:GdVO、Nd:LuVO及びNd:LaVOのうちの少なくともいずれか二つを含有してなることも望ましく、更には、バナデート結晶は、Nd:Gd1-xVO、Nd:LuGd1-xVO(0<x<1)、または、Nd:LaGd1-xVO(0<x<1)であることも望ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明は、上記課題を解決し、より高反射率、広帯域、高速応答、高光損傷閾値を示す位相共役鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本実施形態に係る位相共役鏡について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の位相共役鏡は様々な態様での実施が可能であり、もちろん、以下に示す実施形態に限定されるわけではない。
【0013】
まず図1に本実施形態に係る位相共役鏡1及びこれを用いた光学系の概略を示す。本実施形態に係る位相共役鏡1は、レーザー増幅器2が増幅したレーザー光を反射すべく設けられている。ここで本位相共役鏡1は、バナデート混晶を用いてなることを特徴の一つとする。バナデート混晶とは、希土類元素とバナジウムの複合酸化物からなる結晶が複数混在したものをいう。このバナデート混晶の例としては、特段に限定されるわけではないが、例えばNd:YVO、Nd:GdVO、Nd:LuVO及びNd:LaVOで示されるバナデート結晶群うちの少なくともいずれか二つを含有してなるものが該当する(なおここで「Nd:」とあるのは、Ndイオンがドープされていることを示す。)。なお、必要である限りにおいて、これら光学系に他の必要な構成を追加することは当然に可能である。
【0014】
図2は、本位相共役鏡1の一態様の斜視概略図である。図2に示す位相共役鏡1は、レーザー素子11と、レーザー素子の下面から光を導入する光供給手段の一例であるダイオード12と、を有して構成されてなる。レーザー素子にはレーザー光が入射され、これらを反射することで位相共役鏡を実現する。
【0015】
本位相共役鏡1は、バナデート混晶を利用することにより利得飽和効果を最大限利用し、サブピコ秒~フェムト秒に至る近赤外超短波パルス光に対する究極的な性能(高反射率、超広帯域、超高速応答、高光損傷閾値)を示すことができる。利得飽和効果とは、レーザー素子中で誘導放出を介して起こるレーザー利得の飽和が起源となる非線形光学効果である。位相共役鏡に十分広い利得帯域幅さえあれば、利得飽和効果によって形成される位相共役鏡は、潜在的に応答速度が桁違いに速く(1ピコ秒より小さく)、また、レーザー増幅を受けるため位相共役反射率が極端に大きくなる(100%より大きくなる)。更には、吸収を殆ど伴わないため損傷閾値が高い(GW/cm程度)など従来の位相共役鏡を遥かに凌駕する性能を示す。従って、高出力レーザーにこの位相共役鏡を適用すれば、平均出力100W、パルスエネルギー10mJを超える高品位超短波パルスレーザーも可能になる。
【0016】
なお上記を考慮すると、バナデータ混晶のうち、Nd:GdVO結晶とNd:YVO結晶の混晶(Nd:Gd1-xVO)であることもより好ましい。これら両者の蛍光スペクトルの中心波長は1063nm、1064nmとわずかに異なるため、その混晶が広い利得帯域を得ることができるためである。また、熱伝導率が高く、高平均出力化に好適である。また、Nd:LuVO結晶とNd:GdVO結晶との混晶(Nd:LuGd1-xVO)、Nd:LaVO結晶とNd:GdVO結晶との混晶(Nd:LaGd1-xVO)であることも好ましい。これらの混晶では蛍光スペクトルの中心波長が1066nmと長波長側にずれているため、10nm程度の広い利得低域幅を得ることができる。なお、下記表1に、各バナデート結晶における誘導放出断面積と発振波長について示しておく。
【表1】
JP0004649614B2_000002t.gif

【0017】
なお、本バナデート混晶は、上記列挙し多結晶の組み合わせ、混晶比率を適宜調節することで、誘導放出断面積、蛍光スペクトル、熱伝導率を適宜調節することが可能であり、使用する超短波パルス光の性能に合わせた位相共役鏡を適宜実現することができるようになる。例えば上記列挙したNd:Gd1-xVO、Nd:LaGd1-xVO、Nd:LaGd1-xVOの場合、xは0より大きく1より小さいが、これらを適宜調整することで最適化することができる。
【0018】
また、本バナデート混晶は、様々な製法を採用することができ、特に限定されるわけではないが、バナデート混晶の物理定数は添加されるイオン濃度、混晶比率などのパラメータに大きく依存するため、制御性の高いフローティングゾーン法(FZ法)で製造することがのぞましい。FZ法としては周知の方法を採用することができるが、この方法の概要図を図3に示しておく。
【0019】
以上のとおり、本位相共振鏡によると、より高反射率、広帯域、高速応答、高光損傷閾値を示す位相共役鏡を提供することができる。
【実施例】
【0020】
実際にバナデート混晶を用いて利得帯域幅の計測を行った。具体的に計測を行ったバナデート混晶は、Nd:Gd0.60.4VOと、Nd:Gd0.40.6VOの2種類である。これら混晶の蛍光スペクトルを図4に示す。本結果によると、計測した蛍光スペクトルはいずれも4nmより大きく、Nd:YVO、Nd:GdVO結晶それぞれの場合に比べ数倍に広がっており、フーリエ変換限界パルスに換算すると500fsを切っていることが確認できた。

【0021】
また、実際にCW、Qスイッチ動作においてレーザー発振させた。バナデート混晶を用いた出力のQスイッチ動作における結果を図5に示す。本結果によると、励起光パワー41Wに対してQスイッチ時は17Wの出力を観測した。これは光-光変換効率にして50%に迫る高い効率であり、レーザー結晶として実用できることが確認できた。なおQスイッチ時の最大繰返し周波数は700kHzであり、実用化できる可能性も確認できた。なお、CW動作においても同様に実施し、CW時は励起光パワー41Wに対して19Wの出力を観測することができ、同様の効果を確認した。
【0022】
以上のとおり、本位相共振鏡によると、より高反射率、広帯域、高速応答、高光損傷閾値を示す位相共役鏡を提供することができることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】位相共役鏡1及びこれを用いた光学系の概略を示す図。
【図2】位相共役鏡の斜視概要図。
【図3】FZ法の概要を示す図。
【図4】バナデート混晶の蛍光スペクトルを示す図。
【図5】バナデート混晶を用いたQスイッチ動作を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4