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明細書 :光酸発生材料、これを用いたフォトリソグラフィー材料、光パターニングまたは光リソグラフィー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4631059号 (P4631059)
公開番号 特開2007-269853 (P2007-269853A)
登録日 平成22年11月26日(2010.11.26)
発行日 平成23年2月16日(2011.2.16)
公開日 平成19年10月18日(2007.10.18)
発明の名称または考案の名称 光酸発生材料、これを用いたフォトリソグラフィー材料、光パターニングまたは光リソグラフィー
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
C08F   2/50        (2006.01)
G03F   7/004       (2006.01)
G03F   7/028       (2006.01)
H01L  21/027       (2006.01)
FI C09K 3/00 K
C08F 2/50
G03F 7/004 503A
G03F 7/028
H01L 21/30 502R
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2006-093877 (P2006-093877)
出願日 平成18年3月30日(2006.3.30)
審査請求日 平成19年3月26日(2007.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】高原 茂
【氏名】鈴木 昭太
審査官 【審査官】藤原 浩子
参考文献・文献 特開2004-163800(JP,A)
特開平09-222725(JP,A)
特開2002-236360(JP,A)
特開2000-056458(JP,A)
調査した分野 C09K 3/00
C08F 2/50
G03F 7/004-7/115
H01L 21/027
CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ピロメテン系色素からなる増感剤とオキシム系光酸発生剤を含み、
光励起された前記ピロメテン系色素からなる増感剤から前記オキシム系光酸発生剤への電子移動によって前記オキシム系光酸発生剤のラジカルアニオンを発生させ、反応が開始されるフォトリソグラフィー材料。
【請求項2】
前記オキシム系光酸発生剤は、下記式で示される請求項1記載のフォトリソグラフィー材料。
JP0004631059B2_000005t.gif
【請求項3】
前記増感剤は、下記式で示される請求項1又は2記載のフォトリソグラフィー材料。
JP0004631059B2_000006t.gif
【請求項4】
請求項1に記載のフォトリソグラフィー材料を用いる光パターニング方法
【請求項5】
請求項1に記載のフォトリソグラフィー材料を用いる光リソグラフィー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な光硬化材料や光記録材料、印刷版及びプリント基板製造の応用分野、例えば、レーザーダイレクトイメージングによるパターン形成、または光リソグラフィーの応用分野、例えば、半導体加工、配線用レジスト、印刷用感光材料に最適なフォトリソグラフィー材料および光パターン形成への応用などに広く用いられる光を吸収することによって酸を発生する材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像形成技術である光リソグラフィー材料とその加工プロセスは、半導体加工、配線用レジスト、印刷製版などにおいて広く実用化に供されている。これらのフォトリソグラフィーのプロセスでは、感光性樹脂材料を用いて目的に応じた膜をシリコン基板や陽極酸化したアルミニウム板などの上に形成する。これにマスクなどを用いることや、レーザー光の走査によりパターンを光照射し、感光性樹脂膜の光照射された領域で光重合または光架橋反応、脱保護反応などを起こすことによって膜材料の溶解度の差を生じさせ、現像によってパターン形成を行っているのが一般的である。これらのプロセスでは、光ラジカル発生剤や光酸発生剤、光塩基発生剤を膜中に用い、光照射した部位においてラジカルや酸、塩基など化学的活性種を生成させる。さらに引き続き、モノマーの重合反応または架橋剤の分子間の架橋、保護基の脱離など共有結合の形成や開裂により、感光性樹脂材料の現像液に対する溶解度差を得るものである。
【0003】
一方、半導体加工、配線用レジスト、印刷製版のパターンの微細化や高速化、多様なパターニングの必要性に伴い、露光は、可視光源、紫外光ランプ以外にも、例えば、アルゴンイオンレーザーや半導体レーザーを走査させ、エキシマーレーザーにより感光させるようになっている。
【0004】
そこで、特に印刷製版などの感光性を高めるために、増感色素、例えば、クマリン系増感色素とオキシエーテル系光ラジカル発生剤を用いた高感度2分子光ラジカル発生材料とそれを用いた光重合性組成物が用いられている。(特許文献1)
【0005】

【特許文献1】特許第3672126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来の光パターニング材料、光リソグラフィー材料は、以下のような課題があり、アルゴンイオンレーザーや半導体レーザーなど可視光レーザー、エキシマーレーザー等の露光では、未だ、不充分であった。
(1)高感度光開始系
半導体加工、配線用レジスト、印刷製版に用いられるフォトポリマーの使用光源に対する高感度化は常に求められている課題である。特に印刷版及びプリント基板製造分野においては、レーザーダイレクトイメージング技術の普及加速化に伴い、可視光レーザー対応高感度光開始系の構築が切望されている。特に高感度の光酸発生剤が求められている。
(2)自由度の高い高感度光酸発生系による反応開始材料
従来のレーザーダイレクトイメージング技術などに用いられている光開始系は、ラジカル重合開始系が主である。しかしながら、ラジカル重合開始系では、大気中の酸素による反応進行の妨害、すなわち酸素阻害と呼ばれる特性がある。実際は感光層の上に酸素遮断層を塗布して使用する必要がある。このため、酸素阻害の影響がなく、ネガおよびポジ型のリソグラフィー材料をつくれる自由度のある高感度光酸発生系による反応開始材料が求められていたが、十分な感度をもつ光酸発生剤がなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであって、これらの課題を解決する高感度増感光酸発生材料、これを用いたフォトリソグラフィー材料、光パターニング、光リソグラフィーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を続けており、下記のように多数の成果を発表している。そして、以下の点に着目して、本発明を創出するに至った。
(着目点)
増感剤とさまざまな酸発生剤についてその増感機構やフォトリソグラフィー材料としての感度を研究したところ、光励起された増感剤からの電子移動によって生成するオキシム系光酸発生剤のラジカルアニオンからの酸発生が異様に高いことを見出し、これに着目し、この課題の解決に結びついた。
【0008】
(参考文献)
4.1)
S. Noppakundilograt, S. Suzuki, T. Urano, N. Miyagawa, S. Takahara, T. Yamaoka,
Polym. Adv. Technol. 13 (2002) 527.
4.2)
S. Suzuki, T. Urano, K. Ito, T. Murayama, I. Hotta, S. Takahara, T. Yamaoka, J. Photopolym. Sci. Tech. 17 (2004) 125.
4.3)
J. Iwaki, S. Suzuki, C. Park, N. Miyagawa, S. Takahara, T. Yamaoka, J. Photopolym. Sci. Tech. 17 (2004) 123.
4.4) S. Suzuki, X. Allonas, J.P. Fouassier, T. Urano,
S. Takahara, T. Yamaoka, J.
Photochem. Photobiol. A: Chem. in press.
4.5)
S. Suzuki, X. Allonas, J. P. Fouassier, T. Urano, S. Takahara, T. Yamaoka, in Photochemistry and UV curing: new trends, J. P. Fouassier Ed,
Research Signpost, Trivandrum, India, in press.
4.6)
鈴木昭太 博士論文 千葉大学(2006).
4.7) S. Suzuki,
T. Urano, S. Takahara, T. Yamaoka, Polymer 46 (2005) 2238.
【0009】
上記に着目した本発明は、以下のように構成する。
請求項1の発明は、増感剤とオキシム系光酸発生剤が光電子移動を起こし、オキシム系光酸発生剤のラジカルアニオンから反応が開始される光酸発生材料である。
請求項2の発明は、ピロメテン系色素を増感剤とし、オキシム系光酸発生剤とした光酸発生材料である。
請求項3の発明は、光電子移動反応などによってオキシム系光酸発生剤分子から生成するラジカルアニオンが、N-O結合付近にラジカルスピン密度が局在化し、それにより、結合開裂が高効率で生じるオキシム系光酸発生剤である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3項いずれか1項に記載の光酸発生材料を組み込んだフォトリソグラフィー材料である。
請求項5の発明は、請求項4項に記載のフォトリソグラフィー材料を用いる光パターニングである。
請求項6の発明は、請求項4項に記載のフォトリソグラフィー材料を用いる光リソグラフィーである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成された本発明は、以下のように、上記課題を解決することができる。
(1)高感度光開始系の実現
増感剤とオキシム系光酸発生剤による組み合わせにより、大きな酸発生効率が得られることを見出し、これを用いて高感度なリソグラフィー材料をこの光開始系を用いて構築した。オキシム系光酸発生剤を直接光励起した場合の酸発生効率は他の酸発生剤よりも比較的低く、これまで注目されなかったものと考えられる。すなわち、該オキシム系光酸発生剤分子の直接光励起による酸発生効率より、増感剤とオキシム系光酸発生剤による組み合わせは、およそ10倍以上の酸の発生を示した。これは、電子移動反応、ここでは増感剤による光電子移動反応によってオキシム系光酸発生剤分子から生成するラジカルアニオンが特異的に高効率で酸を発生するものと認められる。理論的な分子モデリングからN-O結合付近にラジカルスピン密度が局在化することにより、結合開裂が高効率で生じると考えられる。これは分子モデリング技術によって、増感光電子移動反応による特異的な高効率酸発生が予想できることになり、その汎用的な波及効果は大きい。
【0011】
(2)自由度の高い高感度光酸発生系による反応開始材料
従来、高感度のリソグラフィー材料としては、ラジカル重合系が多用され、これらは非常に有用な系である。しかし、大気中の酸素によって、生成したラジカル種が消失してしまうという欠点も有している。従って、実際は感光層の上に酸素遮断層を塗布して使用され、また、主に光があたったところが硬化するラジカル重合を用いるためネガ型が主であった。本発明では、開始剤としてラジカル発生剤は使用せず、フォトレジスト分野ですでに必要不可欠である材料、光酸発生剤(PAG)を色素により増感するというコンセプトに基づいたもので、酸素遮断層は不要となる。また、ポリマーや架橋剤との組み合わせにより、高感度のポジ型にもネガ型リソグラフィー材料を設計できることになり、その波及効果は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図に示す本発明の実施形態(以下、単に本発明という)を説明する。
【実施例】
【0013】
(実施例1)
ピロメテン色素のひとつである2,6-diethyl-8-phenyl-1,3,5,7-tetramethylpyrromehene BF3
complex(EPP)は、文献Garcia-Morenoら,J.Phy.Chem.A.108,3315(2004)記載の方法により合成した。増感色素EPPとオキシム系光酸発生剤であるPAIOTos(みどり化学製 PAI-101 CAS No.82424-53-1)の化学構造を、式1および式2に示す。
【化1】
JP0004631059B2_000002t.gif
【化2】
JP0004631059B2_000003t.gif
EPPに光を吸収させて酸の発生の量子収率を測定したところ、0.660であった。これは比較例で示すように特異的に高い値である。酸の発生の量子収率については、文献S. SuzukiらJ. Photochem. Photobiol. A: Chem. in press.の方法に従った。
【0014】
(比較例1)
従来から使われている酸発生剤であり実施例で用いられたPAIOTosと同じp-トルエンスルホン酸を発生するN-(trifluoromethanesulfonyloxy)-1,8-naphthalimide (NIOTos)を文献C. IwashimaらJ.Photopolym.Sci.Tech.,16,
91(2003)に従って合成した。NIOTosの構造を式3に示す。
【化3】
JP0004631059B2_000004t.gif
実施例1と同じ方法で酸の発生の量子収率を測定したところ0.007であった。これは実施例1の増感剤とオキシム系光酸発生剤との組み合わせが、同じ増感剤とNIOTosとの組み合わせよりも特異的に高効率で酸を発生していることを示している。
【0015】
(比較例2)
実施例1において増感剤EPPを用いずにPAIOTosを355nmの光で励起して、実施例1と同じ方法で酸の発生の量子収率を測定したところ0.07であった。これは実施例1の増感剤とオキシム系光酸発生剤との組み合わせが、PAIOTos単独での直接光分解よりも特異的に高効率で酸を発生していることを示している。
【0016】
(まとめ)
実施例1と比較例1,2とから、オキシム系光酸発生剤であるPAIOTosは直接光励起した場合よりもピロメテン色素と組み合わせた光増感反応によって、10倍近く酸発生効率が大きくなり、ピロメテン色素とフタルイミド系の酸発生剤ピロメテン色素と組み合わせた光増感反応よりも100倍近く酸発生効率が大きくなることがわかる。すなわち、ピロメテン色素増感剤とオキシム系光酸発生剤との組み合わせのみが、特異的に高効率で酸を発生していることを示している。
【0017】
(実施例2)
ピロメテン色素増感剤であるEPPとオキシム系光酸発生剤PAIOTosこれらと2-methyl-1-propyloxypropylmethacrylate,methylmethacrylate,2-hydroxyethylmethacrylateの共重合体アセタール保護基含有ポリマー(P-8003)(Mw=12500, Mn/Mw=2.2, AV=80, Tg=90℃)(協和発酵化学製)からなるフォトポリマーを調製した。
具体的にはP-8003の18wt%シクロヘキサノン溶液を調製し、そこに固形分に対して重量比でEPP1部、オキシム系光酸発生剤4部となるように感光液を調製した。これを陽極酸化したアルミ板上にスピンコート法により製膜した後、100℃で5分間加熱乾燥したところ、1.1μmの厚さの感光膜が得られた。これにステップタブレットを通して、アルゴンイオンレーザー(514.5nm,
1.1mJ/cm2s, Spectra Physics, Model 2016)を照射し、つづいて120℃、2分間加熱後、2.38 wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液とイソプロパノールを重量比7:3で混合した現像液を用いて90秒間現像した。
これによって求められた感度は18μJ/cm2であった。これは光酸発生剤を用いるリソグラフィー材料としては極めて高感度な値である。
【0018】
(比較例3)
一般的に使用されている光酸発生剤
N-(trifluoromethanesulfonyloxy)-1,8-naphthalimide
(NIOTf)
(みどり化学製 NAI-105 CAS No.85342-62-7)を用いる以外は実施例2と同様なプロセスで感度を評価すると1.6mJ/cm2であった。この値も実用上十分なものではあるが、実施例2が特異的に高い感度(小さな露光エネルギー)でパターンを形成することがわかる。
【0019】
(まとめ)
実施例2と比較例3から、ピロメテン色素増感剤であるEPPとオキシム系光酸発生剤PAIOTosを用いたリソグラフィー材料が超強酸を発生するナフタルイミド系の酸発生剤を用いた場合よりも十分の一程度の露光量でパターン形成可能であることを示している。
【0020】
(効果についてのまとめ)
以上説明したように、本発明は、直接光励起では酸発生効率がそれほど高くないオキシム系酸発生剤が光増感反応による電子移動によりラジカルアニオンになることによって、ラジカルアニオンからの特異的な高効率な酸発生をすることを見出しことにより、これを用いて高感度のリソグラフィー材料を得ているものである。この材料設計指針により比較例3にみられるような超強酸を発生する酸発生系よりも強酸の実施例1の方が高感度が得られており、多くの応用分野で酸素阻害のない、より高感度のリソグラフィーが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
拡大している光リソグラフィーの応用分野において、半導体加工、配線用レジスト、スクリーン印刷などの印刷材料の微細なパターニング材料として利用可能であり、さらに、ドライフィルムレジストを用いるレーザーダイレクトイメージングなど光パターニングなど応用分野が広く、有用性が極めて高い。