TOP > 国内特許検索 > 気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置 > 明細書

明細書 :気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4078432号 (P4078432)
登録日 平成20年2月15日(2008.2.15)
発行日 平成20年4月23日(2008.4.23)
発明の名称または考案の名称 気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置
国際特許分類 G01F   1/34        (2006.01)
G01F   1/42        (2006.01)
FI G01F 1/34 A
G01F 1/42 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2007-510551 (P2007-510551)
出願日 平成18年3月22日(2006.3.22)
国際出願番号 PCT/JP2006/306370
国際公開番号 WO2006/104176
国際公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
優先権出願番号 2005095570
優先日 平成17年3月29日(2005.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年10月15日(2007.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】荒木 幹也
【氏名】志賀 聖一
【氏名】石間 経章
【氏名】小保方 富夫
【氏名】藤原 康裕
【氏名】中村 壽雄
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100122884、【弁理士】、【氏名又は名称】角田 芳末
【識別番号】100133824、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 仁恭
審査官 【審査官】森 雅之
参考文献・文献 特開2004-170187(JP,A)
調査した分野 G01F 1/34
G01F 1/42
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に電磁弁を備え、気体燃料が注入される気体燃料インジェクタと、
該電磁弁の開閉を制御するインジェクタ駆動手段と、
前記気体燃料インジェクタに接続され、前記気体燃料インジェクタからの気体燃料ガスが供給される計測部細管と、
該計測部細管内に設けられ、前記気体燃料インジェクタ側から計測部細管の下流側に向けて断面積が小から大に変化するノズルと、
前記計測部細管の下流側端部に設けられた延長細管と、
前記計測部細管に設けられた小孔に密接配置された圧力計測手段と、
該圧力測定手段により計測した前記計測部細管内の圧力を所定の変換式に基づいて、前記計測部細管内に流れる気体燃料の流量に変換する手段と
からなる気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置。
【請求項2】
前記延長細管の下流側端部には、さらに背圧弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置。
【請求項3】
前記計測部細管に設けられているノズルはテーパ状ノズルであることを特徴とする請求項1または2に記載の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置。
【請求項4】
前記計測部細管に設けられているノズルは、前記下流側に行くにしたがって、階段状に変化する異なる径の複数の円筒状部材から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置。
【請求項5】
前記圧力計測手段は前記計測部細管に設けた小孔からの前記計測部細管内の圧力を検出する圧電素子を有する圧力変換器であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置。
【請求項6】
前記圧力計測手段によって計測した前記計測部細管内の圧力を、前記計測部細管内を流れる気体燃料の流量M(t)に変換する変換式は、次式であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置。
JP0004078432B1_000015t.gif(ただし、Aは計測部細管の断面積(m)、ρ(t)は気体燃料の密度(kg/m)、u(t)は気体燃料の流速(m/sec)、κは比熱比(無次元の断熱係数)、P(t)は計測部細管内の圧力(Pa)、P=P(0)、ρ=ρ(0)である。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射システム、特に気体燃料インジェクタから噴出する気体燃料の各時刻における流量を計測する気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置、あるいは急激な流量変動を伴う各種気体配管等の瞬間流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用燃料として、ガソリン、軽油等の液体燃料のほか、水素、圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)のような気体燃料も広く使われるようになった。特に、CNGは、(i)単位CO排出量当りの発熱量が大きい、(ii)硫黄分をほとんど含まないため硫黄酸化物の排出がないといった利点から、クリーンなエネルギー源として注目されている。このCNGを自動車エンジンに適用する場合は、従来のガソリン・軽油と同様に、吸気ポートあるいはシリンダー内へ、燃料インジェクタから噴射されることになる。
【0003】
また、ガソリンや軽油等の液体燃料は、燃料噴射弁から高圧力をかけて噴射させ、液体燃料を小さな粒状にして供給することで蒸発を促進するようにしている。ここで、噴射弁を置く場所は、多くのガソリン機関の場合、シリンダーの入り口付近の吸気管の部分であり、このポート部分の燃料噴射圧力は3気圧程度となる。
【0004】
最近は、ガソリンをエンジン内へ直接噴射する方式、すなわち、GDI(Gasoline Direct Injection)と呼ばれる方式のエンジンも考えられている。この方式はシリンダーの中にガソリンと空気の薄い混合気を形成するもので、この方式によると少ない燃料で自動車を動かすことができるが、シリンダーの中は圧力が高いので、それ以上の圧力、例えば100気圧程度の噴射圧力でガソリンを噴霧化してシリンダー内に供給することが必要となっている。この場合の、一回あたりの燃料噴射期間は数msec~数十msec程度であり、その際にソレノイドで開閉される電磁弁の開弁・閉弁に要する時間は数百nsec~数msec程度と極めて短時間となる。
【0005】
この電磁弁を開閉して液体燃料をシリンダー内に供給する場合の、単位時間当たりの燃料流量(m/sec)を噴射率といい、この噴射率の正確な測定が要求されている。一般に、噴射率は、噴射弁が開状態になると、開時間が増加するにつれて放物線状に増加していき、一定値(飽和状態)に収斂する。そして噴射弁が閉じると、時間経過と共に減少して元の状態に戻るという傾向を有する。この液体燃料インジェクタからの噴射率(「瞬間流量」と同義)を測定する機器(瞬間流量計)としては、ボッシュ式と呼ばれる方式(ボッシュ式噴射率計)が広く利用されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0006】
このボッシュ式噴射率計は、液体燃料インジェクタから噴射された燃料を,一定断面積のパイプ内に噴射し,パイプ内の圧力上昇から燃料の流量を求める方法である。これは、燃料ノズルから細管の中に燃料を噴射した場合、噴射率(m/sec)が管の断面積(m)に流速(m/sec)を乗じたものであるという原理を利用している。すなわち、噴射ノズルから噴射された燃料が細い管を流れる場合、それによるパイプ内の圧力上昇が生じ、この圧力上昇を測定して燃料の瞬間的な流量を求める方式である。
【0007】
しかしながら、ボッシュ式噴射率計は、液体燃料の測定には用いることができるものの、水素、圧縮天然ガス(CNG)のような気体燃料に用いることはできなかった。すなわち、このボッシュ式装置を気体燃料インジェクタに適用した場合、気体特有の圧縮性、つまり圧力変化とともに密度が変化する性質、及びレイノルズ数の増大による管摩擦の増大等のため、流量の測定が不可能となるという問題があった。今まで、瞬間的な気体燃料の噴射率を測定した例はない。
【0008】
ここでレイノルズ数Reとは、流体密度ρ(kg/m)に流体速度U(m/sec)及び細管の直径D(m)を乗じた値ρ*U*D(kg/(m・sec))を、粘性係数μ(Pa・sec=kg/(m・sec))で割った無次元の値である。流体のρ*U*Dは流れの勢いを表す慣性力に関係し、粘性係数μは、粘り気を表す粘性力に関係している。このレイノルズ数Reが小さいと粘り気が支配するため、乱れのない層流となり、噴射率の測定が可能であるが、レイノルズ数が大きいと、気体の流れが乱れ(乱流となり)、管摩擦によって気体が流れづらくなることで噴射率の測定が不能となる。実際にはレイノルズ数Reが約2500以上になると乱流状態になり、約2500以下では層流になることが知られている。
【0009】
通常気体燃料の噴射においては、レイノルズ数Reが数十万にもなり、管の中の流れは乱れているので、管の上流と下流との圧力差(これを「圧力損失」という。)が大きくなり噴射率の測定ができなくなる。
【0010】
一般に、燃料インジェクタの特性は,エンジン性能と直結するため,非常に重要である。そして、燃料インジェクタ特性の最も重要な要素として,時々刻々と変化する噴射率(瞬間流量:単位時間当たりの燃料流量)を測定することが求められている。しかし、気体燃料インジェクタに関しては,上述したように、その噴射率を計測する手段が確立されていない。このため,インジェクタを開弁状態に保ち定常噴射を行いながら流量データを取得し,実際の噴射時の噴射率を類推しているのが現状であった。
【0011】
また、気体燃料インジェクタを燃料容器に固定し、このインジェクタから容器内に、例えば1000回の噴射(1回の「噴射期間」は例えば2msecとする。)を行って、容器内の圧力増加を測定する方法も考えられる。すなわち、1000回分の噴射で生じた圧力増加から、1回噴射当たりの圧力増加を計算で求め、その平均値としての1回当たりの平均噴射率を求めることはできる。しかし、この方法でも気体燃料の瞬間的な噴射率を測定することはできない。現在まで、気体燃料インジェクタからの瞬間噴射率を計測した例は報告されていない。
【0012】

【非特許文献1】林 洋「ボッシュ式噴射率計」(内燃機関7巻12号58~64頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題点に艦みて為されたものであり、管の上流と下流の圧力が極力一定になるように設計することにより、気体燃料の瞬間的な噴射率を測定できるようにした気体燃料インジェクタの瞬間流量噴射率計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置は、内部に電磁弁を備え、気体燃料が注入される気体燃料インジェクタと、該電磁弁の開閉を制御するインジェクタ駆動手段と、気体燃料インジェクタに接続され、気体燃料インジェクタからの気体燃料が供給される計測部細管と、この計測部細管内に設けられ、気体燃料インジェクタ側から計測部細管の下流側に向けて断面積が小から大に変化するノズルと、計測部細管の下流側端部に設けられた延長細管と、計測部細管に設けられた小孔に密接配置された圧力計測手段と、この圧力測定手段により計測した計測部細管内の圧力を所定の変換式に基づいて、計測部細管内に流れる気体燃料の流量に変換する手段で構成されることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置の好ましい形態として、上記のノズルはテーパ状ノズル、または階段状に気体燃料インジェクタ側から計測部細管の下流側に変化することを特徴としている。
さらに、本発明の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置の好ましい形態として、圧力計測手段は計測部細管に設けた小孔からの同細管内の圧力を検出する圧電素子を有し、この圧力を電気信号に変換して計測部細管内の圧力を測定することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の気体燃料インジェクタの瞬間流量計測装置における、計測部細管内の圧力を計測部細管内に流れる気体燃料の流量に変換する変換式は、
JP0004078432B1_000002t.gif
に従うことを特徴とする。
ここで、Aは計測部細管の断面積(m)、ρ(t)は気体燃料の密度(kg/m)、u(t)は気体燃料の流速(m/sec)、κは比熱比(無次元の断熱係数)、P(t)は計測部細管内の圧力(Pa)、P1=P(0)、ρ1=ρ(0)である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来実現できなかった、気体燃料瞬間流量の計測装置、すなわち気体燃料インジェクタの噴射率計を提供することが可能となる。これにより、水素、CNG等の気体燃料を用いたエンジンの設計等が容易に行えるようになる。また、自動車エンジン分野のみならず、急激な流量変動を伴う各種気体配管等の瞬間流量計測装置としても利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態である気体燃料の瞬間流量計測装置について説明するが、その前に本発明の気体燃料噴射ガスの流量計測を行うに必要な基本的な原理となる数式について説明する。
【0019】
本発明の基本的な構成は、上述した液体燃料用のボッシュ式燃料噴射率計と類似している。すなわち、本発明の方式でも、一次元の流れを仮定し噴射率を求めるという点でボッシュ式燃料噴射率計と共通点を有するからである。
【0020】
しかしながら、上述したように、気体燃料を直接ボッシュ式噴射率計に噴射した場合、パイプ内流れのレイノルズ数は数十万に達するため、大きな管摩擦が生じて流量の測定が不可能となる。実際、気体燃料の場合、管の上流と下流とで大きな圧力差が生じ、管の上流に圧力センサを置いて圧力を測定した場合に、管の中央部または下流部分の圧力より大きな圧力を測定してしまう。このため、管の上流と下流でこのような大きな圧力差がある場合には、流量の測定は不可能となるのである。これは、気体燃料の場合、1回噴射当りの噴射体積が液体燃料よりはるかに大きいこと、そして、液体燃料に比べて噴出速度が大きいことに起因している。
【0021】
本発明では、レイノルズ数を低くおさえるため、パイプ内径を従来の直径4mmφから直径8mmφに拡大し、パイプ内流速を低くおさえるようにした。
このパイプ内径の拡大に伴い、燃料インジェクタ出口径とパイプ内径の差が大きくなるため、噴射直後の気体燃料が脈動する現象が現れる。本発明では、これを回避するために、燃料インジェクタ出口に末広ノズルを設け、流れの安定化を図るようにしている。
【0022】
また、本発明では、測定部細管内の圧力変動から、気体燃料の瞬間流量を算出するという基本原理を利用している。液体燃料用のボッシュ式噴射率計においても、測定部細管内の圧力変動から液体燃料の瞬間流量を算出する。しかしながらボッシュ式噴射率計においては、液体燃料を前提としているため流れの圧縮性を考慮していない。このため、ボッシュ式噴射率計で用いられている変換式(例えば、非特許文献1を参照。)をそのまま用いても、気体燃料の噴射率を求めることは不可能である。
【0023】
以下、本発明の実施形態で用いられる気体燃料の瞬間流量の導出方法について数式を用いて説明する。
【0024】
本発明における瞬間流量の導出方法を説明するため、以下の理論では、一次元・圧縮性・非粘性であり、かつ断熱的な流れであると仮定する。
断面積一定A(m)の管内に、気体が速度du(m/sec)にて流入する場合を考える。この気体の流入により前方の気体は圧縮され、圧力波を生じる。この圧力波が音波となって音速a(m/sec)で伝播する。いま、圧力波の波面(音の届く範囲の先端の波面)と断面積Aの円筒状のパイプで囲まれる検査体積を考え、その上流と下流において、気体の温度、圧力、密度、速度の変化を見る。
【0025】
まず、圧力波の波面の前後において、質量保存則が成立することから、
【数1】
JP0004078432B1_000003t.gif

となる。ここで、ρは密度(kg/m)であり、dρは密度の増加分である。二次の微小項であるdρ*duは、ρaに比べてはるかに小さいので、これを省略すると、(2)式が成立する。
【数2】
JP0004078432B1_000004t.gif

【0026】
また、圧力波の波面の前後の運動量の変化と力積は等しいことから、(3)式が成立する。すなわち、圧力波の波面から見て噴射口よりの圧力を(P+dP)(Pa)とし、波面からみて噴射口と反対側の圧力をPとすると、(3)式の左辺は、単位時間当たりの波面を押す力積(N・sec)となる。一方、(3)式の右辺は、単位時間当たりの質量ρaA((kg/m)*(m/sec)*(m)*sec=kg)と波面前後における速度の変化の積(運動量変化)である。
【0027】
【数3】
JP0004078432B1_000005t.gif

となる。この結果、(4)が成立する。
【数4】
JP0004078432B1_000006t.gif

【0028】
この(4)式において、速度aと密度ρを時間の関数として考えると、各時刻での速度変化duは、
【数5】
JP0004078432B1_000007t.gif

とおくことができ、圧力変化dPと、音速a、密度ρとで記述できることが分かる。
【0029】
したがって、音速と密度が分かれば,圧力測定のみで流速が求まることになる。ここでは断熱変化を仮定しているので,密度ρと圧力Pの間には,(6)式が成立している。
【数6】
JP0004078432B1_000008t.gif

【0030】
したがって、この(6)式から、密度ρは、圧力のみで記述できる。また,音速は一般に、(7)式のように記述することができるので、
【数7】
JP0004078432B1_000009t.gif

と表される。ここで(6)式より密度ρを計算すると、(8)式のようになる。
【数8】
JP0004078432B1_000010t.gif

【0031】
この(8)式において、ρとPはそれぞれ、密度と圧力の初期値であり、ρ(0)=ρ、P(0)=Pである。このρ(t)も圧力のみで記述することができる。
ここで、上記(7)式及び(8)を(5)式に代入し整理すると、(9)式が成立する。
【数9】
JP0004078432B1_000011t.gif

【0032】
この(9)式を積分すると、速度u(t)は、(10)式で表すことができる。
【数10】
JP0004078432B1_000012t.gif

【0033】
この(10)式において、初期条件 t = 0 においてP(0) = P ,u(0) = 0 を導入すると、(11)式が成立する。
【数11】
JP0004078432B1_000013t.gif

【0034】
上述した(8)式、(10)式、(11)式から求めた各瞬間における気体の質量流量M (t)は(12)式のようになる。なお、(12)式においてMにドットが付いているのは、単位時間当たりの質量流量を意味している。
【数12】
JP0004078432B1_000014t.gif

【0035】
この(12)式から明らかなように、気体の質量流量M(t)は、圧力P(t)のみの関数となっていることが分かる。したがって、測定部細管内圧力の時間変化を測定して、その値を(12)式に代入することにより、各瞬間の気体の質量流量を算出することが可能となることが分かる。
【0036】
以下、計算式(12)を用いて、気体の質量流量を測定する際に必要な瞬間的な圧力の測定装置に係る本発明の実施の形態の例について図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は、気体燃料瞬間流量計の概略を示す図である。本発明の実施の形態例としての気体燃料流量計は、ガスボンベ1と、このガスボンベ1に接続されるバッファチャンバ2と、バッファチャンバ2を介して燃料ガスが導かれる気体燃料インジェクタ3と、圧力計測器4と、気体が流入する計測部細管5と延長細管6から主として構成される。また、本例の気体燃料流量計は、上記構成のほかに、気体燃料を計測部細管5に供給するための気体燃料インジェクタ3の開閉弁(不図示)をソレノイドで開閉制御するインジェクタドライバ7と、このインジェクタドライバ7に矩形波パルスを供給するファンクションジェネレータ8と、ファンクションジェネレータ8から発生する波形を観察するとともに圧力計測器4で計測される細管内の圧力を観察するためのデジタルオシロスコープ9を備えている。このオシロスコープ9は特にデジタル用である必要はなく、アナログ用のものであっても差し支えない。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に用いられる気体燃料インジェクタ3と圧力計測器4の部分をより詳細に示した図である。図2Aは、気体燃料インジェクタ3と圧力計測部4の全体構成を示す概略図であり、図2Bは、図2Aの側断面図(図2CのB-B断面図)、図2Cは、図2BのA-Aで示す部分の断面図である。
【0039】
気体燃料インジェクタ3は、燃料注入部31、電磁弁開閉部32、燃料噴射部33から構成されている。また、計測部細管5にはその内部にテーパ状ノズル10が形成されている。また、計測部細管5には小孔(静圧孔)42が設けられており、この小孔42に密接して圧力計測部4の圧力変換器41が配置されている。圧力変換器41の内部には、圧電素子43が設けられている。気体燃料インジェクタ3はフランジ11により、また、圧力変換器41はフランジ12aによって不図示の基台に固定されている。
【0040】
次に、図1及び図2に基づいて、本発明の実施の形態の動作を説明する。
図1において、ガスボンベ1からの気体燃料は,図の矢印Aにそってバッファチャンバ2に導かれる。バッファチャンバ2は、ガスボンベ1から供給される気体燃料の脈動を除去するために設けられたものであり、バッファチャンバ2から供給される気体燃料の圧力はほぼ一定とされて、気体燃料インジェクタ3に供給される。
【0041】
気体燃料インジェクタ3の電磁弁開閉部32内には、不図示の電磁弁が設けられており、この電磁弁がインジェクタドライバ7からの制御信号に基づいて開閉される。ここで、1回の噴射における電磁弁の開弁期間は、数msec~数十msecであるとされる。そして、バッファチャンバ2から気体燃料インジェクタ3に供給される気体燃料は、燃料噴射部33から計測部細管5内に噴射される。計測部細管5の内径は8mmφ(断面積は一定)とされ、長さは100mm程度とされる。計測部細管5の内部には燃料噴射部33の噴射口の直径2mmφから細管の内径8mmφにテーパ状に広がるノズル10が設けられている。このノズル10を設けた理由は、ノズル10を設けないで、直径2mmφの噴射口から直径8mmφの細管に気体燃料を噴射させると、噴射ガスが蛇行を始めて乱流状態になってしまうからである。計測部細管5内の圧力を正確に測定するためには、管内の乱れを抑える必要があり、このためにノズル10が設けられている。ただし、このノズル10は、必ずしもテーパ状である必要はなく、段階的に開口が大きくなるような階段状のものであってもよい。
【0042】
また、計測部細管5には、直径1mmφ程度の小孔(静圧孔)42が設けられており、この小孔42に密接配置された圧力変換器41によって計測部細管5内の圧力が計測される。すなわち、気体燃料が計測部細管5内に噴射されることにより、計測部細管5内に圧力波が生じ、計測部細管5内の圧力は変動する。またこれ以外にも、圧力変動に伴う計測部細管5のわずかな変形を歪ゲージで捉えて圧力を計測する、あるいは計測部細管5内壁面と同一面上に設置した圧力変換器によって圧力を計測する、などの方法も可能である。ただし、小孔42を用いた場合、極めて小さな範囲の圧力を計測することが可能となり、空間・時間分解能の高い計測が可能となる。
【0043】
さらに、本発明の実施の形態においては、計測部細管5の下流には延長細管6が取り付けられている。この延長細管6の直径は計測部細管5と同じ8mmφであり、長さは4mと長いものである。このように、延長細管6の長さを長いものとしているのは、計測部細管5の圧力計測部における反射波の影響を無くすためである。つまり、燃料噴射に伴う圧力波は、細管の下流端で反射し計測部細管5の圧力計測部分に反射波として戻ってくる。この反射波が燃料噴射にともなう通常の圧力波に重畳すると測定が不可能となるので、反射波到達までの時間を稼ぐため、延長細管6が設けられるのである。延長細管6は、コイル状に巻いておくことで装置の小型化が可能である。通常、この延長細管6の下流端は大気に開放されているが、延長細管6の下流端に背圧弁13を設けて流れを絞ることも有効である。この背圧弁13の開度を減少させ流れを絞った状態で気体燃料を繰返し噴射すると、計測部細管5及び延長細管6内の圧力は一様に上昇する。この場合、管摩擦による細管内の圧力上昇と異なり、計測部細管5及び延長細管6内で一様に圧力が増大するため、計測上問題とならない。また、圧力の高まった細管内に気体燃料を噴射することで、実際のエンジンシリンダー内(高圧になっている)への燃料噴射条件を模擬した計測も可能となる。
【0044】
以下の実験では、計測部細管5内の圧力変動は、一次元・圧縮性・非粘性とされ、さらに断熱的な流れが生じていると想定している。そして、気体流量と圧力変化の関係をあらかじめ調べておき、実際の管内圧力の時間変化を測定することにより、時々刻々と変化する気体燃料の流量を測定することができるようにしている。
【0045】
(実験例)
図3は、図1及び2に示した装置により、計測部細管5内の圧力を測定した実験結果を示す図である。図3Aは、ファンクションジェネレータ8からインジェクタドライバ7に与えられる矩形信号である。また、図3Bは、この矩形信号が気体燃料インジェクタに供給されたときの、圧力計測部分の圧力変化をデジタルオシロスコープ9で見た波形図である。
【0046】
ここでは、天然ガス自動車用燃料インジェクタとして、株式会社ケーヒン(以下、「ケーヒン社」という。)製のインジェクタ(KEIHIN 06164 PDN J00)とインジェクタドライバ(KEIHIN 37815 PDN J01)を購入して実験に使用した。なお、安全性の観点から実際のCNGではなく模擬燃料として窒素を用いた。また、模擬燃料の噴射圧力を0.255MPaとした。なお本発明では、気体の種類が変わっても、その物性値(密度ρ、比熱比κなど)を(12)式に代入することで、あらゆる気体(例えば水素燃料など)の瞬間流量の計測が可能である。
【0047】
図3は、噴射期間を10msecとしたときの、インジェクタドライバ7に与えられる駆動信号(図3A)と、計測部細管5内の計測部位(圧力計測器4の位置)の圧力の時間変化(履歴)示す図(図3B)である。図3Bにおいて、横軸は時間(msec)、縦軸は計測部細管5内の圧力(kPa)が示してある。
【0048】
この図3Bから明らかなように、インジェクタドライバ7への開弁信号の入力時刻(0秒)から、所定の時間差(2msec程度)を持って、計測部細管5内の圧力が上昇し、同インジェクタ3への電磁弁を閉じる制御信号(10msec後)から、同じく所定時間差(2ms程度)を経て、細管5内の圧力が減少していることが分かる。この時間差(タイムラグ)は、時刻ゼロにて開弁信号が入力されても、所定の時間遅れの後に気体燃料インジェクタ3の電磁弁が開弁するからである。
【0049】
この開弁信号により、計測部細管5内に模擬燃料(窒素ガス)が流入し、その圧力は時間とともに増大する。そして、気体燃料インジェクタ3が全開となると流量は一定となり、圧力も一定値を取る。そして、気体燃料インジェクタ3の閉弁とともに圧力は減少して初期値に戻り、1回の噴射サイクルが終了する。時刻約25~27msにおいて、圧力の減少が見られるのは、延長細管6の下流端で反射した圧力波が測定位置まで戻ってくるためである。反射波が戻ってくるまでの期間が、計測可能期間となる。この反射波が戻ってくる時刻は、延長細管6の長さを変更することにより調整することができる。図3の例では、気体燃料インジェクタ3の開弁期間を10msecとしているが、この開弁期間を3.4~20msecの範囲で変化させても同様な結果を示した。
【0050】
図4は、図3と同様に、ファンクションジェネレータ8からインジェクタドライバ7に10msecの矩形波の駆動信号を供給したときの、気体燃料噴射率(単位はmg/sec:単位時間あたりの燃料噴射量)の時間変化を示した図である。図4Aはインジェクタドライバ7へ供給する駆動信号、図4Bは気体燃料噴射率を示している。横軸は時間である。
【0051】
この噴射率は、計測部細管5内の計測した圧力の時間変化を(12)式に代入することにより、求めることができる。
このように、気体燃料の噴射率の時間変化の測定が可能となったことにより、例えば、気体燃料インジェクタ開弁・閉弁時の過渡特性や、燃料配管内での圧力波の伝播による流量変動などの気体燃料インジェクタ3の特性の詳細を知ることができるようになると考えられる。
【0052】
図5は、較正試験に用いた装置の概略図である。この装置を用いて気体燃料噴射率計によって測定された噴射率の精度を確認するための較正試験を行った。この較正試験に用いた装置において、図1の実験装置と同じ装置には同一番号を付している。図5の装置を用いた較正試験では、図1の実験装置のように燃料インジェクタ3から圧力計測器4に向けて燃料を噴射させるのではなく、燃料インジェクタ3を圧力容器14に接続してこの圧力容器14の中に燃料を噴射するようにした。
【0053】
ここで、燃料インジェクタ3より上流の配管内の圧力脈動が噴射率に影響を及ぼす可能性があるので、ガスボンベ1から燃料インジェクタ3に至るまでの配管は、図1に示した実験装置と同一のものを使用した。
【0054】
そして、圧力容器14内を真空にしておき、ファンクションジェネレータ8とインジェクタドライバ7を作動させて燃料インジェクタ3から圧力容器14に気体燃料を噴射させる試験を行った。そして、噴射期間τを固定し、1,000~2,000回の繰返し噴射を行った。圧力容器14には、U字形をしたガラス管で形成される圧力計15(水銀マノメータ)が設置されている。
【0055】
この実験により、圧力容器14内の圧力上昇から気体の総質量流量を求め、それを噴射回数で除することで噴射1回当たりの質量流量を求めた。一方、図1の実験装置における気体燃料噴射率計で求めた各時刻における噴射率を積分し、噴射1回当りの質量流量を求めて両者を比較した。この比較結果を図6に示した。
【0056】
図6は、本発明の実施形態例に用いられる気体燃料噴射率計を用いた測定結果と,較正試験の結果の比較を示した図である。縦軸は、1ストローク当り(噴射1回当り)の燃料噴射量(質量流量)を示し、横軸は噴射期間τ(ms)を示している。
【0057】
なお、本研究で行った較正試験については、熱線式流量計、層流型流量計を用いたクロスチェックを実施しており、信頼性は比較的高いと考えている。この図6に示すように、気体燃料噴射率計を用いた測定結果(○印)と較正試験の結果(●印)は,噴射期間τに応じて若干変化するが、最大でも約10%程度の相違にとどまっていることがわかる。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、従来不可能であった気体燃料の瞬間流量計測が可能となる。このため、本発明は、気体燃料を用いた自動車用内燃機関あるいはその他の機関の燃料インジェクタ及びエンジンの設計等に、非常に大きな作用効果をもたらすと考えられる。
【0059】
なお、本発明は、図1~図2に示した実施の形態について説明したが、上記実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様の実施形態を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の気体燃料インジェクタの流量計測装置の実施の形態の一例を示す図である。
【図2】本発明の気体燃料インジェクタの流量計測装置の実施の形態例の要部を示す図である。
【図3】本発明の気体燃料インジェクタの電磁弁を開閉する駆動信号と計測部細管内の圧力の時間変化を示す図である。
【図4】本発明の気体燃料インジェクタの電磁弁を開閉する駆動信号と噴射率の時間変化を示す図である。
【図5】本発明の気体燃料インジェクタの較正試験(キャリブレーションテスト)を行うための概略図である。
【図6】本発明の実施の形態における図1の実験装置で求めた1ストローク(1回噴射)当たりの質量噴射量と、図5の較正試験で求めたデータを比較した図である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・気体燃料のガスボンベ、2・・・バッファチャンバ(バッファ室)、3・・・気体燃料インジェクタ、4・・・圧力計測器、5・・・計測部細管、6・・・延長細管、7・・・インジェクタドライバ、8・・・ファンクションジェネレータ、9・・・デジタルオシロスコープ、10・・・テーパ状ノズル、11、12・・・フランジ、13・・・背圧弁、14・・・圧力容器、15・・・圧力計(水銀マノメータ)
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3A】
4
【図3B】
5
【図4A】
6
【図4B】
7
【図5】
8
【図6】
9