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明細書 :スダチチンおよびノビレチンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5119397号 (P5119397)
公開番号 特開2008-208064 (P2008-208064A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成20年9月11日(2008.9.11)
発明の名称または考案の名称 スダチチンおよびノビレチンの製造方法
国際特許分類 C07D 311/30        (2006.01)
C09K  15/08        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
FI C07D 311/30
C09K 15/08
A23L 1/30 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2007-045931 (P2007-045931)
出願日 平成19年2月26日(2007.2.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年8月29日 社団法人日本食品科学工学会主催の「日本食品科学工学会第53回大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成21年12月27日(2009.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
【識別番号】592197108
【氏名又は名称】徳島県
発明者または考案者 【氏名】河村 保彦
【氏名】津嘉山 正夫
【氏名】市川 亮一
【氏名】山本 幹二
【氏名】佐々木 貴啓
【氏名】辻 めぐみ
個別代理人の代理人 【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】三上 晶子
参考文献・文献 特開平05-095773(JP,A)
特開平04-258268(JP,A)
米国特許第05002784(US,A)
特開2002-104982(JP,A)
HORIE,T. et al,The structure and synthesis of sudachiin A, a new flavone glucoside from Citrus sudachi,Bulletin of the Chemical Society of Japan,1982年,Vol.55, No.9,pp.2928-2932
TSUKAYAMA,M. et al,Improved, rapid and efficient synthesis of polymethoxyflavones under microwave irradiation and their inhibitory effects on melanogenesis,Heterocycles,2003年,Vol.60, No.12,pp.2775-2784
調査した分野 C07D309/00-315/00
A61K 31/33- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A23L 1/27- 1/308
C09K 15/00- 15/34
特許請求の範囲 【請求項1】
スダチを、マイクロ波を照射しながらアルコールで抽出処理する第一の工程と、該第一の工程で得られる抽出液をヘキサンで抽出処理する第二の工程と、該第二の工程で得られる水層をエーテルで抽出処理し、得られる水層にメタノールおよび塩酸を加えて、マイクロ波を照射しながら加水分解処理して、スダチチンを含有する溶液を得る第三の工程と、を有することを特徴とするスダチチンの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のスダチチンの製造方法で得られるスダチチンを含有する溶液をメトキシ化して得ることを特徴とするノビレチンの製造方法。
【請求項3】
硫酸ジメチルまたは炭酸ジメチルを用いてメトキシ化することを特徴とする請求項2記載のノビレチンの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スダチチンおよびノビレチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘類の果皮に含まれているフラボノイド成分であるポリメトキシフラボンは、抗酸化作用、発ガン抑制作用、抗菌抗ウイルス作用、抗アレルギー作用、メラニン生成抑制作用など、様々な機能性を有しており、医薬品、食品添加物や化粧料等の幅広い用途への応用が期待されている。
【0003】
例えば下記式で示される構造をもつ、5,6,7,8,3’,4’-ヘキサメトキシフラボン(以下、これをノビレチンということがある。)は、抗潰瘍剤、アトピー性皮膚炎治療剤、美白化粧料、色素沈着症改善剤あるいは消臭剤等の成分として使用されている。
【0004】
【化1】
JP0005119397B2_000002t.gif

【0005】
柑橘類からこれらポリメトキシフラボンを得るには、例えばメタノールに柑橘類の果皮等を浸漬して得る場合、数日乃至数十日を必要とする。
【0006】
これに対して、工業的に柑橘類からポリメトキシフラボンを得る方法として、例えば、柑橘類をエタノールで抽出した後、抽出液を多孔性吸着樹脂に通液して樹脂にノビレチンを吸着した後、エタノール溶液等でノビレチンを溶出させて回収する方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法によれば、ノビレチンを高効率で回収することができ、工業的生産に適するとされている。

【特許文献1】特開2005-145824公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の方法は、高効率でノビレチンを回収するには、必ずしも十分ではないように思われる。また、回収操作に実質的に数時間以上を必要としているようであり、工業的生産を実現するうえでの生産性の面でも必ずしも十分ではないように思われる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、効率的にノビレチンを得ることができるノビレチンの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、効率的にノビレチンを得るのに好適なノビレチンの前駆物質であるスダチチンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスダチチンの製造方法は、スダチを、マイクロ波を照射しながらアルコールで抽出処理する第一の工程と、該第一の工程で得られる抽出液をヘキサンで抽出処理する第二の工程と、該第二の工程で得られる水層をエーテルで抽出処理し、得られる水層にメタノールおよび塩酸を加えて、マイクロ波を照射しながら加水分解処理して、スダチチンを含有する液を得る第三の工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るノビレチンの製造方法は、上記のスダチチンの製造方法で得られるスダチチンを含有する溶液をメトキシ化して得ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るノビレチンの製造方法は、好ましくは、硫酸ジメチルまたは炭酸ジメチルを用いてメトキシ化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るスダチチンの製造方法は、スダチを、マイクロ波を照射しながらアルコールで抽出処理し、得られる抽出液をヘキサンで抽出処理し、得られる水層をエーテルで抽出処理し、得られる水層にメタノールおよび塩酸を加えて、マイクロ波を照射しながら加水分解処理して、スダチチンを含有する液を得るため、ノビレチンを得るのに好適なノビレチンの前駆物質であるスダチチンを効率的に得ることができる。
また、本発明に係るノビレチンの製造方法は、上記のスダチチンの製造方法で得られるスダチチンをメトキシ化して得るため、ノビレチンを効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0015】
先に説明したように、生理活性物質としての有用性の高い、下記式で表されるノビレチンは、柑橘類を溶剤で抽出処理することにより得る方法が種々検討されているが、いずれも必ずしも効率的な方法ではないように思われる。
【0016】
【化2】
JP0005119397B2_000003t.gif

【0017】
ところで、徳島県の豊富な産物である柑橘類のうちのひとつに、特産物であるスダチがある。
スダチは、年間およそ7,000トン程度生産されるうちの半分が青果で直接食品として消費され、残り半分が搾汁されて果汁として加工され、販売されている。
搾汁の際に大量に発生する搾汁かす(果皮)は、堆肥としてリサイクル利用されているものの、全量を利用するまでには至っていない。このため、搾汁かすの処分は、生産農家や加工業者にとって多大な負担となっている。
【0018】
本発明者等は、上記スダチの搾汁かすにスダチ固有の有用成分ポリフェノール化合物であり、下記式で表されるスダチチンが含まれていることに着目して鋭意検討した結果、本発明を完成したものである。
【0019】
【化3】
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【0020】
本実施の形態に係るスダチチンの製造方法は、スダチを、マイクロ波を照射しながら水または有機溶剤のうちのいずれか一方または双方で抽出処理し、スダチチンを含有する抽出液を得るものである。
スダチチンは、ノビレチンの前駆物質として好適に用いることができる。本実施の形態で得られる、スダチチンを含有する抽出液は、そのままノビレチンを製造するための原料として用いることができる。また、スダチチンを含有する抽出液を適宜分離、濃縮処理し、あるいはまた、さらに高純度化処理した後で、ノビレチンを製造するための原料として用いてもよい。以下の他の実施の形態においても同様である。
ここで、原料としてのスダチは、搾汁かすを用いると、上記のように有用性が特に高いが、これに限らず、果皮(ここでは、種子を除いた、内皮を含む果実全体をいう。)を用いてもよい。原料は、未乾燥の状態であるいはまた乾燥状態で適宜の細かさに粉砕して用いると好適である。
【0021】
有機溶剤は、特に限定するものではなく、例えば、メチルアルコ-ル、エチルアルコ-ル、プロピルアルコ-ル、ブチルアルコ-ル等のアルコ-ル、ジエチルエ-テル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル等の脂肪族エ-テル、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素を例示することができる。これらの中でも、アルコ-ルとしてはメチルアルコ-ル、エチルアルコ-ルがより好ましく、エ-テルとしてはジメチルエ-テルがより好ましく、脂肪族炭化水としては、ヘキサンがより好ましい。また、アルコールを用いることが、目的物であるスダチチンをより多量に抽出できるので、さらに好ましい。
アルコール類は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が使用でき、好ましくは、メタノール、エタノールを使用する。
アルコールの使用量は、例えば、スダチ1質量部に対して、アルコ-ル0.5~100質量部、好ましくは、2~50質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0022】
スダチを、単に有機溶剤で抽出処理だけでは、スダチチンの抽出に例えば4日間~10日間程度の長時間を要する。ところが、この抽出時に、マイクロ波を照射することで、短時間でスダチチンを高い収率で抽出することができる。
このとき使用するマイクロ波の周波数は、例えば800MHz~20GHzであり、好ましくは300MHz~20GHzである。また、抽出温度は、例えば60℃~70℃であり、マイクロ波の照射時間は、例えば10分~15分程度である。マイクロ波の照射は、連続的に行ってもよく、また、短時間に分けて断続的に繰り返して行ってもよい。
そして、例えば、抽出液と抽出残渣をろ過することで得られるスダチチンを含有する抽出液(アルコール)を、適宜の方法で、濃縮し、あるいはアルコールとは別の抽出剤で再抽出することで、スダチチンをより高濃度で抽出することができる。
【0023】
また、本実施の形態に係るスダチチンの製造方法は、スダチを、マイクロ波を照射しながらアルコールで抽出処理する第一の工程と、該第一の工程で得られる抽出液をヘキサンで抽出処理する第二の工程と、該第二の工程で得られる水層をエーテルで抽出処理して、スダチチンを含有する抽出液を得る第三の工程と、を有するものである。
このときに用いるアルコールは、特に限定するものではないが、メタノールを好適に用いることができる。また、エーテルは、エーテルの総称(エーテル類)であり、特に限定するものではないが、ジエチルエーテルを好適に用いることができる。
これにより、効率的にスダチチンを抽出することができる。
【0024】
また、本実施の形態に係るスダチチンの製造方法は、上記第三の工程でエーテルで抽出処理して得られる水層を、マイクロ波を照射しながら加水分解処理して、スダチチンを含有する溶液(加水分解液)を得る第四の工程をさらに有する。
ここで、マイクロ波を照射する条件は、例えば、上記アルコールによる抽出の際のマイクロ波照射条件と同様とすることができる。
また、加水分解処理は、上記の水層に例えばメタノールとともに例えば濃塩酸を加えた溶液を調製することで行うことができる。
【0025】
例えばスダチの乾燥果皮(ここでは、果実の表面を覆う皮をいう。)には、およそ0.1質量%程度のスダチチンが含まれるが、これとともに、およそスダチチンの6倍量程度のスダチチン配糖体が含まれる。
上記第三の工程においてエーテルで抽出処理するときに、スダチチンは抽出液(エーテル)側に移行するが、スダチチン配糖体は、水層側に存在し、そのままでは回収されない。
本実施の形態では、スダチチン配糖体が抽出された水層を、マイクロ波を照射しながら加水分解処理することで、スダチチンを効率的に抽出することができる。
【0026】
つぎに、本実施の形態に係るノビレチンの製造方法は、上記のスダチチンの製造方法で得られるスダチチンを含有する抽出液をメトキシ化して得るものである。
なお、ここでは、スダチチン生成反応がOH基をCHO基に置換したものとしてメトキシ化と表現したが、これに限らず、OH基のHをCHに置換したものとしてメチル化と表現してもよい。
メトキシ化して得られるノビレチンを含有する溶液は、適宜濃縮処理し、さらに高純度化処理して利用に供される。
【0027】
メトキシ化に用いるメトキシ化剤は、特に限定するものではなく、硫酸ジメチルや炭酸ジメチル等を挙げることができ、低価格で一般的な硫酸ジメチルをより好適に用いることができる。
【0028】
本実施の形態によれば、比較的短時間の処理により、ノビレチンを高い収率で得ることができる。
【実施例】
【0029】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0030】
(スダチチンの抽出)
実施例1
二口丸底フラスコに乾燥スダチ果皮粉末10gとメタノール100mlを入れ、撹拌しながらマイクロ波(出力300W 周波数2.45GHz)を10分照射還流させた。メタノール抽出物(抽出液)を除いた後、再び同一フラスコにメタノール100mlを加え、同様にマイクロ波照射してメタノール抽出物を除いた。この操作を4~5回繰り返した後、合計400~500mlのメタノール抽出物から減圧下でメタノールを留去してスダチチンを含む残留物得た。この間の処理時間は、およそ60分であった。
上記残留物を高速液体クロマトグラフィーで定量分析して、スダチチンが乾燥果皮の0.10質量%含有されていることを確認した。
【0031】
実施例2
二口丸底フラスコに乾燥スダチ果皮粉末50gとメタノール100mlを入れ、撹拌しながらマイクロ波(出力300W 周波数2.45GHz)を10分照射還流させて、ろ過した後、メタノール抽出物(抽出液)を減圧濃縮して、その残渣をヘキサンで抽出してヘキサン層と水層に分離した。得られた水層をエーテル(ジエチルエーテル)抽出した後濃縮して、シリカゲルカラムによりスダチチンとデメトキシスダチチンの混合物(スダチチン:デメトキシスダチチン=36:64)43mg(果皮粉末からの収率0.09質量%)が得られた。この間の処理時間は、およそ60分であった。
【0032】
実施例3
メタノール1800mlに乾燥果皮630gを入れ、80℃で10分マイクロ波(出力800W 周波数2.45GHz)を照射した後、ろ過して得たメタノール抽出物(抽出液)を減圧濃縮し、さらにその残渣をヘキサンで抽出してヘキサン層と水層に分離した。その水層をエーテル抽出した後、この水層を870mlに減圧濃縮した。870mlから50mlをとり、それにメタノール50mlを加えて、濃塩酸で4Mの溶液に調製した。この溶液にマイクロ波(出力650W 周波数2.45GHz)を4分間照射して加水分解した。
得られた加水分解液を高速液体クロマトグラフィー分析したところ、この加水分解液にはスダチチンが0.59質量%含有されていることが確認できた。なお、硫酸でも同様に加水分解できた。
【0033】
実施例4
二口丸底フラスコに乾燥スダチ果皮粉末10gと水100mlを入れ、撹拌しながらマイクロ波(出力300W 周波数2.45GHz)を10分照射還流したのち、抽出液と果皮粉末を分離した。得られた抽出液を高速液体クロマトグラフィーで定量分析して、乾燥果皮からスダチチンが0.04質量%の収率で抽出されたことを確認した。この間の処理時間は、およそ20分であった。
【0034】
参考例
スダチ生果皮20kgをエーテル25L(リットル)に約10日間浸し、この浸出液から水層を分離したのち、エーテル層からエーテルを留去した。このとき、リモネンなどを含有する緑色沈殿物が得られた。この沈殿物をろ過して分けとり、エーテルついでメタノールで洗って得られる結晶を酢酸エチル-メタノール混液から再結晶してmp239.5-240.5℃のスダチチン2.6g(生果皮からの収率0.013%)を得た。
【0035】
(ノビレチンの抽出および高純度化)
実施例5
実施例2の抽出方法で得たスダチチン混合物を4回再結晶して得られたスダチチン120mg(mp140-141℃)でそれぞれクロマト分取して得たスダチチン混合物を等量混合したもの120mgをアセトン5mlに溶かし、硫酸ジメチル0.32ml(3.3mmol)、炭酸カリウム0.92g(6.6mmol)を加え、マイクロ波(出力650W 周波数2.45GHz)の5分間の照射を断続的に6回繰り返し還流・撹拌した後、アセトンを留去してシリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘキサン=2:1)分離して、ノビレチン(5,6,7,8,3’,4’-ヘキサメトキシフラボン=5,7,4’-トリメチルスダチチン)を116mg(mp
137.5-138.5℃; スダチチンからの収率97%)得た。