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明細書 :単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法、単結晶炭化ケイ素基板の製造方法、及び単結晶炭化ケイ素基板

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5213095号 (P5213095)
公開番号 特開2008-230944 (P2008-230944A)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発行日 平成25年6月19日(2013.6.19)
公開日 平成20年10月2日(2008.10.2)
発明の名称または考案の名称 単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法、単結晶炭化ケイ素基板の製造方法、及び単結晶炭化ケイ素基板
国際特許分類 C30B  33/12        (2006.01)
C30B  29/36        (2006.01)
FI C30B 33/12
C30B 29/36 A
請求項の数または発明の数 16
全頁数 17
出願番号 特願2007-077256 (P2007-077256)
出願日 平成19年3月23日(2007.3.23)
審査請求日 平成22年2月10日(2010.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】金子 忠昭
【氏名】西谷 滋人
個別代理人の代理人 【識別番号】100118784、【弁理士】、【氏名又は名称】桂川 直己
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開2005-097040(JP,A)
調査した分野 C30B1/00-35/00
H01L21/208
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
単結晶炭化ケイ素基板を、10-2Pa以下の減圧下、又は、10-4Pa以下に減圧後に不活性ガスを導入して10-2Pa以下の減圧下とした真空環境において加熱処理することにより、当該単結晶炭化ケイ素基板の表面及びその近傍を炭化して炭化層を形成する第1工程と、前記単結晶炭化ケイ素基板をシリコンの飽和蒸気圧下で加熱処理することにより、前記炭化層の部分にアモルファス炭化ケイ素からなる犠牲成長層を形成するとともに、この犠牲成長層を昇華させて熱エッチングする第2工程と、を含むことを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、前記第2工程において、前記犠牲成長層が熱エッチングされた後に、露出した単結晶炭化ケイ素の表面が熱エッチングされることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、前記第1工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は1500℃以上2300℃以下の温度で加熱処理され、
前記第2工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させるようにして備える上下が嵌合した収納容器に収納され、この収納容器の内部圧力が外部圧力よりも高くなるようにして容器内の真空環境をシリコンの飽和蒸気圧で保った状態で1500℃以上2300℃以下の温度で加熱処理されることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項4】
請求項3に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
前記第1工程又は第2工程の少なくとも何れか一方において、
前記加熱処理は、予め減圧下で1500℃以上2300℃以下の温度に調整された本加熱室で行われるものとし、
前記加熱処理の前に、前記単結晶炭化ケイ素基板を収納した収納容器を、加熱処理時の温度より低い温度で加熱する予備加熱が行われ、
前記加熱処理は、前記予備加熱を行う予備加熱室から前記本加熱室へ前記収納容器を移動することにより行われることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
前記第1工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は1800℃以上2300℃以下の温度で加熱処理され、
前記第2工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は1800℃以上2300℃以下の温度で加熱処理されることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項6】
請求項3から5までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
前記第2工程において、前記収納容器の内部圧力は加熱処理時において10-2Pa以下の減圧下とされることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項7】
請求項6に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
前記第2工程において、前記収納容器の内部圧力は加熱処理時において10-4Pa以下の減圧下とされることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の製造方法であって、
前記第1工程は10-3Pa以下の減圧下で行われることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項9】
請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素基板の製造方法であって、
前記第1工程は10-5Pa以下の減圧下で行われることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
平坦化後の前記単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦度がサブナノオーダーであることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項11】
請求項1から9までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
平坦化後の前記単結晶炭化ケイ素基板の表面平均粗さが1.0nm以下であることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
この表面平坦化により、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面に存在する不純物の原子レベルでの除去を併せて行うことを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法であって、
平坦化後の前記単結晶炭化ケイ素基板の表面は、ステップの高さが結晶多形の積層順位方向に対するユニットセル長以下である面形状であることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法により表面を平坦化する工程を含むことを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の単結晶炭化ケイ素基板の製造方法であって、表面を平坦化する工程の前に化学機械研磨工程が行われないことを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の単結晶炭化ケイ素基板の製造方法により製造された単結晶炭化ケイ素基板であって、
結晶多形が3C-SiCであり、その(111)Si面又は(-1-1-1)C面が平坦化されていることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良して表面平坦化を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、耐熱性及び機械的強度に優れ、放射線にも強く、不純物の添加によって電子や正孔の価電子制御も容易にできるとともに、広い禁制帯幅(6H型の単結晶SiCで約3.0eV、4H型の単結晶SiCで約3.3eV)を有するという特徴を備えている。従って、炭化ケイ素は、ケイ素(Si)やガリウムヒ素(GaAs)等の既存の半導体材料では実現できない高温、高周波、耐電圧・耐環境性を実現することが可能であるとされ、次世代のパワーデバイス、高周波デバイス用半導体の材料として期待が高まっている。
【0003】
この単結晶SiC基板の表面及びその近傍には、結晶欠陥を含む不安定サイトや、基板表面の研磨時に発生した研磨傷及びストレス等を含むダメージ層が存在しているのが一般である。そして、この不安定サイトやダメージ層が、単結晶SiC基板の表面に結晶をエピタキシャル成長させる際にその品質を低下させる原因となっている。従って、単結晶SiC基板から半導体デバイス等を製造する際のスループット向上の観点から、この不安定サイト及びダメージ層の問題を克服することが強く望まれている。
【0004】
この点に関し、非特許文献1は、エピタキシャル成長用のCVD(化学気相堆積)装置を用いて、エピタキシャル成長前にH2ガスで単結晶SiC基板のエッチングを行い、これにより基板の研磨ダメージをクリーニングできることを開示する。

【非特許文献1】A.Nakajima,H.Yokoyama,Y.Furukawa,and H.Yonezu:J.Appl.Phys.97(2005),104919
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記に示すような水素ガスによるエッチングは、CVD以外の方法あるいは装置への転用が困難であり、様々なエピタキシャル成長法に対応が容易な表面平坦化方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、CVD以外のエピタキシャル成長法にも適用が容易であり、単結晶炭化ケイ素基板の不安定サイト及びダメージ層を除去して極めて良好な平坦度の表面を得ることが可能な表面平坦化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【符号の説明】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下のような単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法が提供される。即ち、単結晶炭化ケイ素基板を、10-2Pa以下の減圧下、又は、10-4Pa以下に減圧後に不活性ガスを導入して10-2Pa以下の減圧下とした真空環境において加熱処理することにより、当該単結晶炭化ケイ素基板の表面及びその近傍を炭化して炭化層を形成する第1工程と、前記単結晶炭化ケイ素基板をシリコンの飽和蒸気圧下で加熱処理することにより、前記炭化層の部分にアモルファス炭化ケイ素からなる犠牲成長層を形成するとともに、この犠牲成長層を昇華させて熱エッチングする第2工程と、を含む。なお、本明細書において「高真空環境」とは10-2Pa以下の真空環境を意味する。

【0009】
これにより、前記第1工程で、単結晶炭化ケイ素基板の表面及びその近傍にある、結晶欠陥を含む不安定サイトや、表面の研磨傷及びストレスを含むダメージ層を、炭化層の形成過程で破壊ないし分解することができる。そして、前記第2工程で、この炭化層の部分にアモルファス炭化ケイ素からなる犠牲成長層を形成することで、単結晶炭化ケイ素の表面の不安定サイトが自己修復され、その後に前記犠牲成長層が除去されることで、自己修復された極めて安定な基板表面を得ることができる。以上により、様々なエピタキシャル成長法に適用が容易な、単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法を提供できる。また、本発明はエピタキシャル成長用前処理技術に留まらず、単結晶炭化ケイ素基板の表面改良及び表面形状制御技術として幅広い用途に適用が可能である。
【0010】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、前記第2工程において、前記犠牲成長層が熱エッチングされた後に、露出した単結晶炭化ケイ素の表面が熱エッチングされることが好ましい。
【0011】
これにより、前記犠牲成長層を残らず熱エッチングすることができ、基板表面を確実に平坦化できる。また、単結晶炭化ケイ素基板は、前記のように自己修復された安定な露出表面からエッチングされるので、熱エッチング速度の不均一が生じず、良好に平坦化された表面を得ることができる。
【0012】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は1500℃以上2300℃以下の温度で加熱処理される。前記第2工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させるようにして備える上下が嵌合した収納容器に収納され、この収納容器の内部圧力が外部圧力よりも高くなるようにして容器内の真空環境をシリコンの飽和蒸気圧で保った状態で1500℃以上2300℃以下の温度で加熱処理される。
【0013】
これにより、第1工程での炭化層の形成を良好に且つ効率良く行うことができる。また、第2工程では、収納容器の炭化タンタル層へ炭素分子が選択的に吸蔵されることにより、収納容器の内部空間に高純度なSi雰囲気を作り出すことができるとともに、他の不純物の収納容器内への侵入を防止できる。従って、犠牲成長層の形成及び熱エッチングによる除去を良好に且つ効率良く行うことができる。
【0014】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1工程又は第2工程の少なくとも何れか一方において、前記加熱処理は、予め減圧下で1500℃以上2300℃以下の温度に調整された本加熱室で行われるものとする。前記加熱処理の前に、前記単結晶炭化ケイ素基板を収納した収納容器を、加熱処理時の温度より低い温度で加熱する予備加熱が行われる。前記加熱処理は、前記予備加熱を行う予備加熱室から前記本加熱室へ前記収納容器を移動することにより行われる。
【0015】
このように、単結晶炭化ケイ素基板を収納容器に収容して事前に予備加熱しておき、予備加熱室から本加熱室へ移動させることで急速に昇温させて加熱処理を行うので、第1工程又は第2工程を短時間で効率良く行うことができるとともに、その制御も容易になる。
【0016】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は1800℃以上2300℃以下の温度で加熱処理される。前記第2工程において、前記単結晶炭化ケイ素基板は1800℃以上2300℃以下の温度で加熱処理される。
【0017】
これにより、第1工程での炭化層の形成、及び、第2工程での犠牲成長層の形成及び熱エッチングによる除去を、一層良好に且つ効率良く行うことができる。
【0018】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、前記第2工程において、前記収納容器の内部圧力は加熱処理時において10-2Pa以下の減圧下、好ましくは10-4Pa以下の減圧下とされることが好ましい。
【0019】
また、前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、前記第1工程は10-3Pa以下の減圧下、好ましくは10-4Pa以下の減圧下で行われることが好ましい。
【0020】
これにより、それぞれの工程において他の不純物が単結晶炭化ケイ素基板(又は収納容器)に侵入することを防止でき、品質の良好な単結晶炭化ケイ素基板を得ることができる。
【0021】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、平坦化後の前記単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦度がサブナノオーダー(即ち、1nm未満)であることが好ましい。
【0022】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、この表面平坦化により、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面に存在する不純物の原子レベルでの除去を併せて行うことが好ましい。
【0023】
以上により、良好な表面品質の単結晶炭化ケイ素基板を提供することができる。
【0024】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法においては、平坦化後の前記単結晶炭化ケイ素基板の表面は、ステップの高さが結晶多形の積層順位方向に対するユニットセル長以下である面形状であることが好ましい。
【0025】
これにより、単結晶炭化ケイ素基板表面の良好なモホロジーを実現することができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、前記の表面平坦化方法により表面を平坦化する工程を含む単結晶炭化ケイ素基板の製造方法が提供される。
【0027】
これにより、例えば発光ダイオードや各種ダイオード、電子デバイス等として好適な単結晶炭化ケイ素基板を提供できる。
【0028】
前記の単結晶炭化ケイ素基板の製造方法においては、表面を平坦化する工程の前に化学機械研磨工程が行われても良いし、行われなくても良い。
【0029】
即ち、化学機械研磨工程を省略した場合でも本発明の平坦化方法を行えば良好な基板表面を得ることができるので、単結晶炭化ケイ素基板の製造コスト及び工数を低減できる。
【0030】
本発明の第3の観点によれば、前記の製造方法により製造された単結晶炭化ケイ素基板が提供される。具体的には、結晶多形が3C-SiCのものであって、その(111)Si面又は(-1-1-1)C面を平坦化の対象とすることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る単結晶炭化ケイ素基板の表面平坦化方法の一実施形態を説明する。まず、本実施形態の表面平坦化方法を行うのに好適な熱処理装置としての加熱炉の一例を、図1の模式断面図を参照して説明する。
【0036】
図1に示すように、加熱炉1は、本加熱室2と、予備加熱室3と、この予備加熱室3から前記本加熱室2に続く部分にある前室4とを主要部分として備える。この構成で、単結晶SiC基板15等が収納された容器(熱処理容器)16が予備加熱室3から前室4、本加熱室2へと順次移動することで、単結晶SiC基板15を短時間で所定の温度(1500℃以上2300℃以下、好ましくは1800℃以上2300℃以下、例えば1800℃)で加熱できるようになっている。
【0037】
この加熱炉1では、図1に示すように、本加熱室2と前室4との接続部分及び、前室4と予備加熱室3との接続部分が、それぞれ連通部を有して仕切られている。このため、上記の各室2,3,4は予め所定の圧力下に制御することが可能である。また、必要な場合には、各室毎にゲートバルブ7を設けることによって、単結晶SiC基板15等を収納した容器16の移動時において、外気に触れることなく、所定圧力下の炉内を適宜の移動手段(図略)によって移動させることができ、不純物の混入を抑制することができる。
【0038】
予備加熱室3には、予備加熱手段としてのハロゲンランプ6が設けられている。この構成により、約10-2Pa以下の減圧下で所定の範囲の温度(例えば、約800℃以上1000℃以下の範囲内)に急速に加熱することができる。また前述したように、予備加熱室3と前室4との接続部分にはゲートバルブ7が設けられて、予備加熱室3及び前室4の圧力制御を容易なものにしている。
【0039】
単結晶SiC基板15等が収納された容器16は、この予備加熱室3で、テーブル8上に載置された状態で約800℃(後述の本加熱時の温度より低い温度)に予め加熱される。その後、予備加熱室3と前室4との間で圧力調整が行われ、その調整が完了すると前記容器16は図略の搬送装置によって搬送されて、前室4に設けられている昇降式のサセプタ9に載置される。
【0040】
前室4に移動した容器16は、昇降式の移動装置10によって、サセプタ9とともに前室4から本加熱室2へ移動する。本加熱室2は、真空ポンプによって予め約10-4Paの減圧下に調整され、また、加熱ヒータ11によって所望の温度(例えば、1800℃)となるように温度調節されている。
【0041】
なお、前記本加熱室2の圧力環境は、上記のように約10-4Pa以下の真空とするのが好ましいが、例えば約10-2Pa以下の真空としても良い。また、例えば約10-2Pa以下の真空、好ましくは約10-4Pa以下の真空とした後に、若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であっても良い。
【0042】
上記本加熱室2の状態をこのように設定しておき、容器16を前室4から本加熱室2内へ前記移動装置10によって高速で移動させることによって、容器16を前記の所望の温度に急速に短時間で加熱することができる。
【0043】
本加熱室2には、加熱ヒータ11の周囲に反射鏡12が設置されている。この反射鏡12は、加熱ヒータ11からの熱を反射して、当該加熱ヒータ11の内部に位置する単結晶SiC基板15側に熱が集中するようにしている。この反射鏡12は、金メッキしたW、Ta、Mo等の高融点金属や、WC、TaC、MoC等の高耐熱炭化物で形成されていることが好ましい。
【0044】
また、本加熱室2には窓17が設けられており、本加熱室2の外部に設置された赤外線放射温度計18によって本加熱室2の内部温度を計測できるようになっている。
【0045】
前記移動装置10は凸状の段付き部21を備える一方、本加熱室2は凹状の段付き部22を備えている。そして、移動装置10を駆動して容器16を前室4から本加熱室2へ移動させたときは、凸状の段付き部21が凹状の段付き部22に嵌合して、嵌合部25を形成するようになっている。前記凸状の段付き部21の各段部には図略のシール部材(例えば、Oリング)が設けられており、容器16を本加熱室2へ移動させたときに嵌合部25をシールして、本加熱室2を密閉できるように構成されている。
【0046】
本加熱室2の加熱ヒータ11の内側には、汚染物除去機構29が設けられている。この汚染物除去機構29は、熱処理中に単結晶SiC基板15等から容器16の外に排出される不純物を、加熱ヒータ11と接触しないように除去する。これによって、加熱ヒータ11が上記不純物と反応して劣化することを防止できる。なお、この汚染物除去機構29は、単結晶SiC基板15等から排出される不純物を吸着するものであれば、特に限定されない。
【0047】
加熱ヒータ11は、W又はTa等の金属製の抵抗加熱ヒータであり、前記サセプタ9側に設置されたベースヒータ11aと、本加熱室2側に設けられた上部ヒータ11bとで構成されている。前記移動装置10によって容器16がベースヒータ11aとともに本加熱室2側へ上昇移動すると、鎖線で図示するように容器16が加熱ヒータ11によって取り囲まれる形となる。このような加熱ヒータ11のレイアウトにより、前述の反射鏡12ともあいまって、加熱領域の温度分布を高精度で均一になるよう制御することができる。この結果、容器16を均一に加熱でき、内部に配置された単結晶SiC基板15の表面改良のバラツキやムラを低減できる。なお、本加熱室2の加熱方式としては、抵抗加熱ヒータに限定せず、例えば高周波誘導加熱式のものを採用することができる。
【0048】
次に、図2を参照しつつ、本実施形態の単結晶SiC基板15の表面平坦化を行う際に用いられる容器16について説明する。図2は容器の上容器と下容器とを取り外した状態の斜視図である。
【0049】
前述の容器16は、図2に示すような上容器16aと下容器16bと、を備えている。容器16の形状は図示されるようにほぼ六面体状とされているが、これは一例であって、例えば円筒状に構成されていても良い。上容器16a及び下容器16bは、タンタル金属から構成されており、その表面全体を炭化タンタル層で覆った構成になっている。
【0050】
次に、図3を参照しつつ、単結晶SiC基板15の表面平坦化の工程について順を追って説明する。
【0051】
図3(a)には表面平坦化を行う前の単結晶SiC基板15が示される。本実施形態では、この単結晶SiC基板15の結晶多形は4H-SiCとされるが、これに限定されない。この単結晶SiC基板15の表面及びその近傍には、結晶欠陥を含む不安定サイトや、基板表面の研磨時に発生した研磨傷及びストレス等を含むダメージ層が存在しているのが一般である。この不安定サイト及びダメージ層を図3(a)において符号15aで示す。
【0052】
本実施形態の表面平坦化方法では、最初に、図3(a)に示す単結晶SiC基板15を高真空環境で加熱する(第1工程)。具体的には、図4に示すように、単結晶SiC基板15を容器16の内部に配置する。単結晶SiC基板15は、下容器16bの内底面に設置されたスペーサ(支持体)13の上に載置される。なお、図4の符号31は、上容器16a及び下容器16bの表面を覆っている前記炭化タンタル層である。そして容器16は、下容器16bと上容器16aとを嵌合させた状態で、加熱炉1にセットして加熱処理される。
【0053】
この加熱処理の温度制御例が図5に示される。この図5に示すように、前記加熱炉1の予備加熱室3の温度を予め約800℃まで上昇させておき、また、本加熱室2の温度を予め約1800℃まで上昇させておく。そして、単結晶SiC基板15を図4のように容器16内に配置した状態で予備加熱室3に挿入し、数分から数十分程度加熱する(予備加熱)。その後、前述のように容器16を単結晶SiC基板15とともに本加熱室2に移動し、約1800℃の温度で数十分程度加熱する(本加熱)。このとき、本加熱室2は、約10-3Pa以下の真空、好ましくは約10-4Pa以下の真空に保たれる。その後、加熱が停止された予備加熱室3へ容器16及び単結晶SiC基板15を戻し、自然冷却して取り出す。
【0054】
以上の加熱処理により、SiCの昇華系中で、以下の式[1]~[3]で示す3つの基本的な反応が起こる。
[1] SiC(s) → Si(v)I + C(s)
[2] 2SiC(s) → Si(v)II + SiC2(v)
[3] SiC(s) + Si(v)I+II → Si2C(v)
【0055】
ここで、真空中での単結晶SiC基板表面上での分圧は、温度が1600℃のとき、Siが約1Pa、Si2Cが約10-1Pa、SiC2が約10-2Paであり、シリコンの分圧は炭化シリコンより1桁から2桁程度高い値を示す。これを別の見方で比較すると、単結晶SiC基板表面上での分圧が1Paとなるために必要な温度は、Siが約1600℃、Si2Cが約1800℃、SiC2が約2000℃である。即ち、シリコンは低い温度で蒸発を開始する一方、炭化シリコンはシリコンより200℃~400℃高い温度で蒸発を開始することを意味する。この蒸発のタイムラグにより、単結晶SiC基板15の表面においてシリコンは優先的に昇華する一方、炭素は残留する。この結果、単結晶SiC基板15の表面及びその近傍を炭化することができるのである。
【0056】
以上の反応により、図3(b)に示すように、単結晶SiC基板15の表面に炭化層15bが形成される。この炭化の過程で、前述の不安定サイト及びダメージ層15aを破壊ないし分解することができる。形成される炭化層15bの厚みは、加熱炉1による加熱処理時間によって調整することができる。本実施形態において、炭化層15bの厚みは例えば数μmとされるが、1μm未満であっても良いし、数十μmであっても良い。
【0057】
次に、単結晶SiC基板15をSi雰囲気で加熱する(第2工程)。具体的には、前述のようにして炭化層15bが形成された単結晶SiC基板15を、図6に示すように容器16の内部に配置する。この容器16は第1工程(図4)の場合と異なり、下容器16bの側壁内面、及び、上容器16aの天井面に、Si供給源としてのシリコン14を固着させてある。この構成により、加熱処理時に前記シリコン14が蒸発し、容器16内部にSi雰囲気を形成することができる。単結晶SiC基板15と下容器16bの内底面との間にはスペーサ13が介在されている。以上の収納状態で、単結晶SiC基板15を前記第1工程と同じ加熱炉1にセットして加熱する。
【0058】
この第2工程での加熱処理の温度制御例が図7に示される。この図7に示すように、前記加熱炉1の予備加熱室3の温度を予め約800℃まで上昇させておき、また、本加熱室2の温度を予め約1800℃まで上昇させておく。そして、単結晶SiC基板15を図4のように容器16内に配置した状態で予備加熱室3に挿入し、数分から数十分程度加熱する(予備加熱)。その後、前述のように容器16を単結晶SiC基板15とともに本加熱室2に移動し、約1800℃の温度で数分から数十分程度加熱する(本加熱)。このとき、本加熱室2は、約10-2Pa以下の真空、好ましくは約10-4Pa以下の真空に保たれる。その後、加熱が停止された予備加熱室3へ容器16及び単結晶SiC基板15を戻し、自然冷却して取り出す。
【0059】
なお、上容器16aと下容器16bとを図6に示すように嵌め合わせたときの嵌合部分の遊びは、約2mm以下であることが好ましい。これによって、実質的な密閉状態が実現され、前記本加熱室2での加熱処理において容器16内のSi圧力を高めて外部圧力(本加熱室2内の圧力)よりも高い圧力とし、不純物がこの嵌合部分を通じて容器16内に侵入するのを防止することができる。
【0060】
また、本実施形態の容器16は上述したように、その表面が炭化タンタル層31に覆われており、炭化タンタル層31が容器16の内部空間に露出する構成になっている。従って、上述のように真空下で高温処理を続ける限りにおいて、容器16は炭化タンタル層31の表面から連続的に炭素分子を吸着して取り込む機能を奏する。この意味で、本実施形態の容器16は炭素分子吸着イオンポンプ機能(イオンゲッター機能)を有するということができる。これにより、加熱処理時に容器16内の雰囲気に含まれているシリコン蒸気及び炭素蒸気のうち、炭素蒸気だけが容器16に選択的に吸蔵されるので、容器16内を高純度のSi雰囲気に保つことができる。
【0061】
以上のSi雰囲気での加熱処理により、まず前記炭化層15bの部分の炭素に過飽和シリコンが再結合し、下記の式[4]に示すような炭化還元による成長反応が起こる。なお、この式[4]の反応は、上記の式[1]で示した昇華反応と逆の反応である。
[4] C(s) + Si(v) → SiC(s)
【0062】
上記の反応により、図3(c)に示すようにアモルファスSiC層15cが形成される。また、このアモルファスSiCの形成と同時に、単結晶SiCの表面(アモルファスSiC層15cと単結晶SiCとの境界)で前述の不安定サイトの自己修復が行われる。なお、本明細書では、前記アモルファスSiC層15cを、将来的に取り除かれる成長層という意味で「犠牲成長層」と称することがある。
【0063】
このSiC再結晶層(犠牲成長層)としての前記アモルファスSiC層15cは熱的に不安定であるので、加熱処理が継続されるとアモルファスSiC層15cは熱エッチングにより分解され、除去される。この昇華反応は以下の式[5]で表される。
[5] SiC(s) + Si(v) → Si2C(v)↑
【0064】
この結果、図3(d)のように、不安定サイトが自己修復された平坦な単結晶SiC表面を露出させることができる。そして、アモルファスSiC層15cが完全に除去された後、単結晶SiC基板15の表面を更に若干量熱エッチングすることで、図3(e)に示すように非常に平坦化(安定化)された単結晶SiC基板15を得ることができる。
【0065】
こうして得られた単結晶SiC基板15は、結晶欠陥や研磨傷等がなく、その表面平坦度がサブナノオーダー(1nm未満)即ち原子レベルであり、表面平均粗さが1.0nm以下を実現することができる。また、単結晶SiC基板15の表面は、ステップの高さが0.5nm(即ち、結晶多形が4H-SiCの場合の積層順位方向に対するユニットセル長)以下である面形状を実現することができる。また、上記の表面平坦化により、単結晶SiC基板15の表面に存在する不純物を原子レベルでクリーニングして除去することもできる。
【0066】
従って、この平坦化処理後の単結晶SiC基板15は、例えば化学気相堆積(CVD)や液相エピタキシー(LPE)等をはじめとした種々のエピタキシャル成長法のための種基板として用いることで、極めて高品質なエピタキシャル成長結晶を得ることができる。また、本実施形態の表面平坦化方法は、エピタキシャル成長前の基板表面改良の用途に留まらず、単結晶炭化ケイ素基板の一般的な表面改良技術及び表面形状制御技術として幅広い用途に適用が可能である。
【0067】
また、平坦化処理前の単結晶SiC基板15(図3(a))は、化学機械研磨工程(CMP工程)が行われたものであっても良いし、この化学機械研磨工程を省略しても良い。即ち、化学機械研磨を行わなくても、本実施形態の平坦化処理によって単結晶SiC基板15の表面仕上げを良好に行うことができるので、単結晶SiC基板15の製造コスト及び工数を低減できる。ただし、化学機械研磨を行った後の単結晶SiC基板表面に対しても、当該化学機械研磨工程では除去が困難な表面内部の欠陥及び歪等の不安定領域を破壊して平坦化できるという意味で、本発明の平坦化方法を行うことは有効である。
【0068】
次に、本実施形態の表面平坦化方法によって4H型の単結晶SiC基板の(0001)Si面及び(000-1)C面を改良した実験結果を示す。図8には、Si面及びC面のそれぞれにおいて、本実施形態の表面平坦化過程の基板表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果の画像が示される。図8の上側の画像がSi面のものであり、下側がC面のものである。また、図8の各写真に付されているカッコ付きの英字(a)~(e)は、図3で説明したそれぞれの工程(a)~(e)に対応している。
【0069】
具体的には、平坦化処理前の単結晶SiC基板15(化学機械研磨済)を撮影したものが図8(a)であり、この単結晶SiC基板15を高真空、1800℃で60分加熱処理した後の状態が図8(b)である。また、単結晶SiC基板15を高真空、1800℃で60分加熱処理した後、Si雰囲気、1800℃で1分、3分、15分加熱処理した後の写真が、それぞれ図8(c)、図8(d)、図8(e)である。
【0070】
図8(a)に示すように、平坦化処理前では、単結晶SiC基板15の表面に研磨傷が残っていることが判る。一方、高真空、1800℃で60分加熱処理した後は、図8(b)に示すように、炭化した表面形状が観察される。そして、更にSi雰囲気、1800℃で1分加熱した状態では、図8(c)に示すように、炭化還元による成長反応後の表面形状が認められ、アモルファスのSiCが形成されていると考えられる。また、同様に3分、15分加熱した状態では、図8(d)及び図8(e)に示すように、前記アモルファスSiCが消失するとともに、単結晶SiC基板表面のステップが分解され、微細なステップが観察される。
【0071】
次に、Si面及びC面のそれぞれにおいて、本実施形態の表面平坦化過程の基板表面を光学顕微鏡で観察した写真を図9に示す。図9の上側の写真がSi面のものであり、下側がC面のものである。また、図9の各写真に付されているカッコ付きの英字(b)~(e)は、図3の(b)~(e)及び図8の(b)~(e)と対応している。
【0072】
図9(b)に示すように、高真空、1800℃で60分加熱処理した後は、炭化による均一な表面荒れが観察される。そして、更にSi雰囲気、1800℃で1分加熱した状態では、図9(c)に示すように、炭化還元による成長反応後の表面形状が認められ、アモルファスのSiCが形成されていると考えられる。また、同様に3分加熱した状態では、図9(d)に示すように、アモルファスのSiCがエッチングされ、表面が平坦化されていることが判る。ただし、図9(d)の写真では部分的に盛り上がった構造が観察され、これはアモルファスSiCのエッチングの残りであると考えられる。Si雰囲気、1800℃で15分加熱した状態では、図9(e)に示すように、基板の表面が非常に良好に平坦化されている。
【0073】
次に、本実施形態の平坦化処理に伴う基板の厚み変化を測定する実験の結果を図10に示す。このグラフにおいて、横軸は加熱時間(累計)を表し、縦軸は、平坦化処理前を基準とした厚みの変化分Δdを表す。
【0074】
なお、横軸の0分~60分が、高真空環境における1800℃での加熱処理(第1工程)を表し、60分~75分が、Si雰囲気における1800℃での加熱処理(第2工程)を表す。また、グラフの上側の(a)~(e)で示す時点が、図3(a)~(e)に対応している。
【0075】
この図10のグラフに示すように、単結晶SiC基板15を高真空環境において1800℃で60分間加熱すると、基板から主にSiが昇華して炭化層15bを形成するため、単結晶SiC基板15の厚みが減ることが判る。その後、Si雰囲気において1800℃で1分加熱した段階では、基板の厚みが増加していることが判った。これは、アモルファスSiC層15c(犠牲成長層)が形成されたためと考えられる。Si雰囲気で計3分間及び15分間加熱した段階では、基板の厚みは再び減少した。これは、アモルファスSiC層15cが熱エッチングされ、また、露出した単結晶SiC基板15の表面が熱エッチングされたためと考えられる。
【0076】
次に、比較実験として、前述の第1工程を省略して加熱処理する実験を行った。具体的には、図3(a)の状態の単結晶SiC基板15を図6のように容器16に収納し、加熱炉1により図7の温度制御に従って加熱処理した。なお、比較実験では4H-SiCを用いることとし、その処理対象面は(0001)Si面とした。
【0077】
この比較実験では、単結晶SiC基板15の不安定サイト及びダメージ層15aが熱エッチングされたが、熱エッチング後の基板表面に、不安定サイトの部分を中心に鉢状の斜面(マウンド構造)が形成され、マクロ的な凹凸が生じていることが観察された。これは、当該不安定サイト及び研磨傷等のダメージ部分において熱エッチングの速度が大きくなり、熱エッチングの速度が不均一となっていることが原因と考えられる。この比較実験の結果は、不安定サイト及びダメージ層15aを分解ないし破壊した上でアモルファスSiC層15cを成長させて熱エッチングする、本実施形態の表面平坦化方法の優位性を証するものと考えられる。
【0078】
また、他の比較実験として、前記第1工程を行って炭化層15bを形成した後の単結晶SiC基板15を、Si雰囲気ではなく酸素雰囲気下で加熱処理して炭化層15bを除去する実験を行った。この場合、不安定サイト及びダメージ層15aを除去することはできたものの、処理後の基板表面の平坦度は本実施形態に比べて良好とは言えなかった。この比較実験の結果も、本実施形態の表面平坦化方法の優位性を証するものと考えられる。
【0079】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、以上の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0080】
平坦化対象としての単結晶SiC基板15の結晶多形としては、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiCを何れも用いることができる。結晶多形が4H-SiC又は6H-SiCの場合は、例えば、その(0001)Si面又は(000-1)C面を平坦化することが考えられる。結晶多形が3C-SiCの場合は、例えば、その(111)Si面又は(-1-1-1)C面を平坦化することが考えられる。また、いわゆるジャスト面を平坦化することに代えて、所定のオフ角を有する面を平坦化することが考えられる。
【0081】
第2工程で容器16内にSi雰囲気を形成する方法としては、容器16の内面にシリコン14を固着することに代えて、例えば容器16の適宜位置にシリコンペレットを配置することが考えられる。
【0082】
第1工程及び第2工程において、予備加熱室3の温度は、800℃とすることに代えて、それより高い温度又は低い温度で予備加熱するように変更することができる。
【0083】
第1工程及び第2工程の加熱処理は、図1に示す構成の加熱炉1に限定されず、他の構成の熱処理装置で行うことができる。特に、予備加熱室3から本加熱室2へ単結晶SiC基板15及び容器16を移動することで急速昇温させる構成をとらない熱処理装置を用いることも原理的には可能である。ただし、炭化層15bやアモルファスSiC層15cの形成過程の制御、及び熱エッチング過程の制御を容易に行う観点からは、上記の急速昇温が可能な装置構成とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面平坦化方法を行う加熱炉の一例を示す模式断面図。
【図2】加熱炉にセットされる容器の構成を示す斜視図。
【図3】本実施形態の表面平坦化方法の過程を示す説明図。
【図4】表面平坦化方法の第1工程を行う場合の容器内の基板配置例を示す断面図。
【図5】第1工程を行う場合の加熱炉の温度制御例を示すグラフ図。
【図6】表面平坦化方法の第2工程を行う場合の容器内の基板配置例を示す断面図。
【図7】第2工程を行う場合の加熱炉の温度制御例を示すグラフ図。
【図8】単結晶SiC基板のSi面及びC面を平坦化する過程における、図3(a)~図3(e)に対応する基板表面のAFM写真。
【図9】単結晶SiC基板のSi面及びC面を平坦化する過程における、図3(b)~図3(e)に対応する基板表面の光学顕微鏡写真。
【図10】単結晶SiC基板のSi面及びC面を平坦化する過程における、基板の厚みの変化を示すグラフ図。
【0085】
1 加熱炉(熱処理装置)
2 本加熱室
3 予備加熱室
4 前室
5 単結晶SiC基板
6 ハロゲンランプ
7 ゲートバルブ
8 テーブル
9 サセプタ
10 移動手段
11 加熱ヒータ
12 反射鏡
13 スペーサ
14 シリコン
15 単結晶SiC基板
15a 不安定サイト及びダメージ層
15b 炭化層
15c アモルファスSiC層(犠牲成長層)
16 容器
29 汚染物除去機構
31 炭化タンタル層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図10】
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【図8】
8
【図9】
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