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明細書 :高域信号補間方法及び高域信号補間装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4972742号 (P4972742)
公開番号 特開2008-102206 (P2008-102206A)
登録日 平成24年4月20日(2012.4.20)
発行日 平成24年7月11日(2012.7.11)
公開日 平成20年5月1日(2008.5.1)
発明の名称または考案の名称 高域信号補間方法及び高域信号補間装置
国際特許分類 G10L  21/04        (2006.01)
FI G10L 21/04 130A
G10L 21/04 130B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2006-282830 (P2006-282830)
出願日 平成18年10月17日(2006.10.17)
審査請求日 平成21年9月25日(2009.9.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 寧
【氏名】龍 敦子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査官 【審査官】毛利 太郎
参考文献・文献 特開2004-266358(JP,A)
特開平02-311006(JP,A)
特許第3538122(JP,B2)
特開2004-184472(JP,A)
特開2007-025480(JP,A)
調査した分野 G10L 21/00-21/06
G10L 19/00-19/14
特許請求の範囲 【請求項1】
原信号のピーク値を検出し、
前記検出されたピーク値を保持して得られる矩形波を生成し、
前記生成された矩形波の高調波部分を取り出して前記原信号に加算する
ことを特徴とする高域信号補間方法。
【請求項2】
入力端子に供給される原信号のピーク値を検出する手段と、
前記検出されたピーク値を保持して得られる矩形波を生成する手段と、
前記生成された矩形波の高調波部分を取り出す手段と、
前記取り出された高調波部分を前記入力端子に供給される原信号に加算する手段と
を有することを特徴とする高域信号補間装置。
【請求項3】
請求項2記載の高域信号補間装置において、
前記ピーク値を検出する手段は、サンプリングされた連続する3点の値の中央の値が直前の値と等しいかより大きく、かつ直後の値より大きいときに前記中央の値を前記ピーク値として検出する
ことを特徴とする高域信号補間装置。
【請求項4】
請求項2記載の高域信号補間装置において、
前記入力端子に供給される原信号は前記高調波部分が含まれないように帯域制限を行う手段を介して前記加算する手段に供給される
ことを特徴とする高域信号補間装置。
【請求項5】
請求項2記載の高域信号補間装置において、
前記入力端子に供給される原信号には予め前記高調波部分が含まれないように帯域制限が施されている
ことを特徴とする高域信号補間装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばMP3のような圧縮を伴うデジタルオーディオ機器や、電話機等に使用して好適な高域信号補間方法及び高域信号補間装置に関する。詳しくは、圧縮等によって欠落している高域信号を擬似的に補間するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、音楽等の音声を表す音声データを、インターネット等のネットワークを介して配信したり、MD(Mini Disk)等の記録媒体に記録したりして利用することが、盛んになっている。このように、ネットワークで配信されたり記録媒体に記録されたりする音声データでは、帯域が過度に広くなることによるデータ量の増大や占有帯域幅の広がりを避けるため、一般に、供給する対象の音楽等のうち一定の周波数以上の成分を除去している。
【0003】
すなわち、例えば、MP3(MPEG1 audio layer 3)形式の音声データでは、約16キロヘルツ以上の周波数成分が除去されている。また、ATRAC3(Adaptive TRansform Acoustic Coding 3)形式の音声データでは、約14キロヘルツ以上の周波数成分が除去されている。
【0004】
このように高域の周波数成分が除去されるのは、人間の聴覚との関係から可聴域を超える周波数成分は不要と考えられているからである。しかしながら、上述のように高域の周波数成分が完全に除去された信号では、音質が微妙に変化し、オリジナルの音楽等に比べて音質が劣化していることが指摘されるようになってきた。
【0005】
従来の高域信号補間では、被補間信号を周波数変換することにより補間用信号を生成するものや(例えば、特許文献1参照。)、原信号に相関のない高周波信号を加算しているものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の技術は、高域信号補間において、被補間信号を周波数変換することにより補間用信号を生成している。また、特許文献記載2の技術は、ホワイトノイズ発生器からの信号の高域成分の抽出を行って、原信号に相関のない高周波信号を加算している。

【特許文献1】特開2004-184472号公報
【特許文献2】特開平2-311006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、いずれも除去された高域信号を補間するものであるが、特許文献1に記載の技術では、周波数変換のためにDSP(Digital Signal Processor)を用いるなど、複雑な回路構成が必要とされる。また、特許文献2に記載の技術では、相関のない高周波信号であるために充分な効果は得ることができないものであった。
【0008】
これに対して、本発明者は、先に、原信号の包絡成分の高調波部分を取り出し、欠落した高周波成分を補間する「高域補間方法及び装置」を特願2005-210124号として出願している。この先願発明では、高調波部分を取り出すために信号を実部と虚部に分解するヒルベルト変換を用いており、その実部と虚部の二乗平方根演算を行って、高域成分を形成するものである。この結果、先願発明は、極めて高音質の補間を行うことができるようになり、市販の音響製品にも採用されるなど高い評価を受けている。
【0009】
ところが、この先願発明においては、高調波部分を取り出すためのヒルベルト変換や平方根の演算に比較的多くの計算処理が必要とされることも事実である。このため、特に小型の機器において、処理回路(CPU)を同機器が行う他の機能(映像表示等)と併用する場合などに、処理回路の負荷が増大する問題が生じる。また、この負荷増大のためだけに処理回路の能力を強化することは、要求される回路装置が高価になるので、経済的に好ましいことではない。
【0010】
この発明、はこのような問題点に鑑みて成されたものであって、本発明の目的は、より簡単な構成で、良好な高域信号の補間が行われるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、原信号のピーク値を検出し、検出されたピーク値を保持して得られる矩形波を生成し、生成された矩形波の高調波部分を取り出して原信号に加算することを特徴とする高域信号補間方法である。
【0012】
また、請求項2に記載された発明は、入力端子に供給される原信号のピーク値を検出する手段と、検出されたピーク値を保持して得られる矩形波を生成する手段と、生成された矩形波の高調波部分を取り出す手段と、取り出された高調波部分を入力端子に供給される原信号に加算する手段とを有することを特徴とする高域信号補間装置である。
【0013】
請求項3に記載の高域信号補間装置においては、ピーク値を検出する手段は、サンプリングされた連続する3点の値の中央の値が直前の値と等しいかより大きく、かつ直後の値より大きいときに中央の値をピーク値として検出することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の高域信号補間装置においては、入力端子に供給される原信号は高調波部分が含まれないように帯域制限を行う手段を介して加算する手段に供給されることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の高域信号補間装置においては、入力端子に供給される原信号には予め高調波部分が含まれないように帯域制限が施されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高域信号補間方法及び高域信号補間装置によれば、原信号のピーク値を保持して生成される矩形波の高調波部分を取り出して補間を行うようにしたので、極めて簡単な構成で良好な高域信号が形成され、処理回路の負荷を増加せずに実用的な高域信号補間を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。
図1は本発明による高域信号補間方法及び高域信号補間装置を適用した装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示されるように、本例の高域信号補間装置は、入力端子1と、ピーク値を検出して保持する回路2と、ハイパスフィルタ(HFP)3と、遅延回路4と、ローパスフィルタ5と、加算回路6と、出力端子7とからなる極めて簡単な回路で構成されている。
【0019】
図1において、入力端子1には、例えばMP3やATRAC3のような圧縮処理を伴う機器から再生されたデジタルオーディオ信号が原信号として供給される。この入力端子1に供給された原信号が、ピーク値を検出保持して矩形波信号を生成するピーク値検出保持回路2に供給される。ここで生成される矩形波信号には入力される信号の高調波成分が含まれている。この矩形波信号は、ハイパスフィルタ(HPF)3に供給されて高調波成分が取り出される。
【0020】
一方、入力端子1からの原信号は、上述のピーク値検出保持回路2での処理時間に相当する遅延回路4に供給され、遅延時間の揃えられた信号がローパスフィルタ(LPF)5に供給されて高域成分の除かれた信号が取り出される。そしてこれらのハイパスフィルタ3とローパスフィルタ5の出力信号が加算回路6で加算されて出力端子7に出力される。これにより、出力端子7からは、高域信号が重畳(強調)された信号が得られる。
【0021】
このようにして、例えばMP3やATRAC3のような圧縮を伴う機器から再生されたデジタルオーディオ信号に対して、高域信号の補間が行われる。これにより、ピーク値保持回路2で形成される矩形波信号の高調波部分を、高域成分の除かれた原信号に加えることで、高域信号の補間を行うことができる。
【0022】
以上の動作を図2に示すレスポンス波形図を用いて説明する。入力端子1に供給された原信号が、例えば図2に実線で示すような波形であった場合に、この原信号のピーク値は図中に○印で示すように検出される。そこでこのピーク値が保持されると、図中に点線で示すような矩形波信号が形成されることになる。この矩形波信号は、入力信号に含まれている高調波成分が強調された状態で形成される信号であるから、この矩形波信号から高調波部分を取り出すことにより、入力信号の高域の信号を取り出すことができる。したがって、このようにして取り出した高調波信号を原信号に加えることで、高域信号の補間を行うことができるのである。
【0023】
なお、この図2において、符号aで示す期間のように、原信号(実線)が一定振幅の場合には高調波成分は発生しないことになる。しかしながらこのような信号は、もともと高域成分が少ないものと考えられ、本発明がそのような信号にも忠実であることが分かる。この符号aの期間においては、入力端子1に供給される原信号は、ローパスフィルタ5を通じて加算回路6に供給されているが、HPF3から加算回路6に高調波成分が供給されないから、加算回路6からは原信号が高域強調されることなく出力される。
【0024】
上述したように、入力信号のピーク検出保持を行って得られる矩形波の保有する高調波成分は、原信号が有する高域成分特性に極めて近似している。したがって、この高調波成分で原信号を補間すれば、極めて良好な高域信号の補間を行うことができる。なお、図3Aには補間前の信号を示し、図3Bに補間後の信号を示している。この図3からわかるように、本発明によれば極めて良好な高域信号の補間が行われている。
【0025】
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、本例の高域補間装置、特に図1のピーク値検出保持回路2の動作について説明する。
図4に示されるように、処理がスタートすると、まず、変数nが「n=1」に初期化され(ステップS1)、デジタルオーディオ信号の3つのサンプリング値An-1、An、An+1が取り出される(ステップS2)。
【0026】
そして、これら3つのサンプリング値An-1、An、An+1が比較され、ここで値An-1=Anかつ値An>An+1であるかどうかが判断される(ステップS3)。この判断ステップS3の判断がYesであれば、続いて値Anがピーク値として取り出される(ステップS4)。また、判断ステップS3で、値An-1=Anかつ値An>An+1ではない(No)とき、つまりAn-1≠Anまたは値An<An+1のときは、値An-1<Anかつ値An>An+1であるかどうかが判断される(ステップS5)。この判断ステップS5の判断がYesであれば、同様にステップS4に進み、値Anがピーク値として取り出される。このようにして原信号のピーク値が検出保持される。
【0027】
すなわち、Anが判断ステップS3と判断ステップS5の関係のいずれかを満たしていれば、つまり原信号のサンプリング値が図5AまたはBに示すような関係を満たしていれば、ピークが生じたときの値Anが保持される。一方、Anが判断ステップS3と判断ステップS5のいずれの関係も満たしていない(No)と判断された場合は、nをn+1にしてステップS2に戻る(ステップS6)。このようにして原信号のピーク値を検出保持する処理が、デジタルオーディオ信号のサンプリング周期ごとに繰り返し行われる。
【0028】
さらに図6には、フローチャートの他の例を示す。この例では、ステップS2のあと、3つのサンプリング値An-1、An、An+1が比較され、ここで値An-1>Anであるかどうかが判断される(ステップS3′)。この判断ステップS3′の判断でNoと判断された場合は、続いて値An>An+1であるかどうかが判断される(ステップS5′)。そしてこの判断ステップS5′の判断でYesと判断された場合は、値Anがピーク値として取り出される(ステップS4)。
【0029】
この場合も、原信号のサンプリング値が図5AまたはBに示すような関係を満たしていれば、ピークが生じたときの値Anが保持される。一方、判断ステップS3′でYesと判断されたとき、または判断ステップS5′でNoと判断された場合は、nをn+1にしてステップS2に戻る(ステップS6)。このようにして原信号のピーク値を検出保持する処理が、デジタルオーディオ信号のサンプリング周期ごとに繰り返し行われる。
【0030】
以上説明したように、本例の構成においては、ピーク値検出保持回路2を簡単な比較処理だけで実現することができ、このようなピーク値検出を処理回路(CPU)の負担を少なくして実施することができる。これにより、例えば映像表示を伴う機器などにおいても、映像表示のための処理と共に本発明による高域信号補間を実施することが可能になる。
【0031】
さらにハイパスフィルタ3とローパスフィルタ5も、FIR(Finit-duration Impulse Response)等のデジタルフィルタによって容易に形成できる。なお、図1においては、原信号の高域部分を除くローパスフィルタ5を設けているが、入力端子1に供給されるデジタルオーディオ信号が予めローパスフィルタを介して供給される場合には、ローパスフィルタ5は省いてもよい。
【0032】
このように、本発明の高域信号補間方法及び高域信号補間装置によれば、原信号のピーク値を検出し、検出されたピーク値を保持して得られる矩形波を生成し、生成された矩形波の高調波部分を取り出して原信号に加算することにより、極めて簡単な構成で良好な高域信号が形成され、実用的な高域信号補間を実施することができるものである。
【0033】
なお本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による高域信号補間方法及び高域信号補間装置を適用した装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】その説明のための波形図である。
【図3】その効果の説明のための波形図である。
【図4】ピーク値検出保持回路の処理を示す一例のフローチャート図である。
【図5】その説明のための波形図である。
【図6】ピーク値検出保持回路の処理を示す他の例のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0035】
1…入力端子、2…ピーク値検出保持回路、3…ハイパスフィルタ、4…遅延回路、5…ローパスフィルタ、6…加算回路、7……出力端子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5