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明細書 :バベシア・ギブソニ(Babesiagibsoni)の分泌抗原1タンパク質及びこのタンパク質をコードするDNA、並びにそれらの利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4752054号 (P4752054)
公開番号 特開2007-053987 (P2007-053987A)
登録日 平成23年6月3日(2011.6.3)
発行日 平成23年8月17日(2011.8.17)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
発明の名称または考案の名称 バベシア・ギブソニ(Babesiagibsoni)の分泌抗原1タンパク質及びこのタンパク質をコードするDNA、並びにそれらの利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   7/00        (2006.01)
C07K  14/44        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
G01N  33/569       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/21
C12N 7/00
C07K 14/44
C07K 19/00
G01N 33/569 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 15
出願番号 特願2005-244508 (P2005-244508)
出願日 平成17年8月25日(2005.8.25)
審査請求日 平成20年7月1日(2008.7.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人帯広畜産大学
発明者または考案者 【氏名】玄 学南
【氏名】買 洪林
【氏名】周 金林
【氏名】鈴木 宏志
【氏名】藤崎 幸蔵
【氏名】五十嵐 郁男
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】千葉 直紀
参考文献・文献 特開2002-300882(JP,A)
J.Clin.Microbiol., 2001, Vol. 39, No. 7, p. 2603-2609
Mol.Biochem.Parasitol., 2003, Vol. 131, No. 2, p. 129-136
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus(JDreamII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq


特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(A)または(B)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質をコードするDNA。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【請求項2】
以下の(C)または(D)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質の成熟タンパク質をコードするDNA。
(C)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【請求項3】
以下の(a)または(b)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質をコードするDNA。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番であるDNA
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番からなる塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNA
【請求項4】
以下の(c)または(d)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質の成熟タンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の121~1686番であるDNA
(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の121~1686番からなる塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNA
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のDNA及びプラスミドDNAを含む組換え体DNA。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のDNAを含む組換えウイルス。
【請求項7】
請求項に記載の組換え体DNAまたは請求項に記載の組換え体ウイルスを含む宿主。
【請求項8】
宿主が細菌である請求項に記載の宿主。
【請求項9】
以下の(A)または(B)に示す、シグナルペプチド及び成熟タンパク質を含むバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【請求項10】
以下の(C)または(D)に示す、成熟タンパク質であるバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質。
(C)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【請求項11】
請求項に記載のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質または請求項10に記載のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質とグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)リーダータンパク質とからなる融合タンパク質。
【請求項12】
請求項に記載のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、請求項10に記載のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または請求項11に記載の融合タンパク質を用いた犬の原虫感染症の診断方法。
【請求項13】
請求項に記載のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、請求項10に記載のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または請求項11に記載の融合タンパク質に対する抗血清あるいは抗体を用いる犬の原虫感染症の診断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、犬のバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)(以下、B. gibusoniと表記する) の分泌抗原1(BgSA1)をコードするDNA、組換えBgSA1タンパク質或いはBgSA1合成ペプチド等に関し、さらにこれらを用いた原虫感染症の診断方法並びに原虫感染症の治療・予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
B. gibsoniはダニにより媒介される赤血球内寄生原虫であり、本原虫による犬の感染症(B. gibsoni感染症)はアジア、アフリカ、ヨーロッパ及び北アメリカなど世界中に広く認められている。日本においても九州から北海道まで全国的にほとんどの地域で発生例が報告されているが、特に西日本においてその被害が深刻である。
【0003】
B. gibsoni感染犬は、食欲不振、睡眠傾向、元気消失、発熱、貧血、嘔吐、血尿、血色素尿、脾腫、黄疸、ヘモグロビリン血症、血小板減少症、全身性リンパ節腫大などの症状を示す。発熱は溶血時や単球食細胞系と感染赤血球・原虫との応答時に放出される発熱物質によって惹起される。血小板の減少は、骨髄での産生抑制、肝臓や脾臓での血小板隔離、血小板の消費増大、免疫介在性の血小板破壊などに起因すると考えられている。また、B. gibsoni感染犬は手術や免疫抑制療法実施中に進行性の貧血をもたらして原疾患の回復や円滑な治療を妨げたりもする。
【0004】
犬B. gibsoni感染症の治療は、主としてジミナゼン製剤により行われているが、本製剤は小脳出血に起因する神経症状や肝障害、腎障害を惹起するなど副作用があるために、その使用が制限されている。
【0005】
本原虫感染症の診断は、現在主に血液塗抹標本における原虫の確認により行われているが、この方法は慢性期の感染犬に対する検出感度が低い問題点がある。一方、蛍光抗体法による血清学的診断法も用いられているが、他の赤血球内寄生原虫(B. canis)との交叉反応が認められ、その特異性に問題点がある。
【0006】
犬B. babesia感染症の有効なワクチンは未だ開発されていない。その大きな要因として感染防御に関わる有効抗原の検索が遅れていることが挙げられる。このような背景から、B. gibsoniの主要抗原の検索、組換えタンパク質を抗原とした感度と特異性が高い診断法の確立と有効な組換えワクチンの開発が強く望まれている。

【非特許文献1】Fukumoto, S., Xuan, X., Nishikawa, Y., Inoue, N., Igarashi, I., Nagasawa, H., Fujisaki, K., and Mikami, T.: Identification and expression of a 50-kilodalton surface antigen of Babesia gibsoni and evaluation of its diagnostic potential in an enzyme-linked immunosorbent assay. J. Clin. Microbiol. 39:2603-2609, 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、B. gibsoni原虫の主要抗原遺伝子の検索とクローニングを行い、B. gibsoni原虫の主要抗原遺伝子及び主要抗原タンパク質を提供すること、さらには、この遺伝子を用いて犬B. gibsoni感染症の診断用抗原と予防用ワクチン等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では、B. gibsoni原虫のcDNAライブラリーを構築し、B. gibsoni感染犬血清を用いたイムノスクリーニングにより、主要分泌抗原BgSA1をコードする遺伝子を同定・クローニングした。さらに、BgSA1遺伝子を大腸菌で発現させ、その発現産物の抗原性と免疫原性を検討して、本発明のバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質をコードするDNAを見いだした。
【0009】
本発明は、以下のとおりである。
[]
以下の(A)または(B)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質をコードするDNA。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
[]
以下の(C)または(D)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質の成熟タンパク質をコードするDNA。
(C)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
[]
以下の(a)または(b)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質をコードするDNA。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番であるDNA
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番からなる塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNA
[]
以下の(c)または(d)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質の成熟タンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の121~1686番であるDNA
(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の121~1686番からなる塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNA
[]
[1]~[]のいずれか1項に記載のDNA及びプラスミドDNAを含む組換え体DNA。
[]
[1]~[]のいずれか1項に記載のDNAを含む組換えウイルス。
[]
[]に記載の組換え体DNAまたは[]に記載の組換え体ウイルスを含む宿主。
[]
宿主が細菌である[]に記載の宿主。
[]
以下の(A)または(B)に示す、シグナルペプチド及び成熟タンパク質を含むバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
[10]
以下の(C)または(D)に示す、成熟タンパク質であるバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質。
(C)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
[11]
[]に記載のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質または[10]に記載のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質とグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)リーダータンパク質とからなる融合タンパク質。
[12]
[]に記載のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、[10]に記載のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または[11]に記載の融合タンパク質を用いた犬の原虫感染症の診断方法。
[13]
[]に記載のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、[10]に記載のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または[11]に記載の融合タンパク質に対する抗血清あるいは抗体を用いる犬の原虫感染症の診断方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、B. gibsoni原虫の主要抗原遺伝子であるBgSA1タンパク質をコードするDNAを提供することができ、さらに、この遺伝子を用いて犬B. gibsoni感染症の診断用抗原と予防用ワクチン等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質をコードするDNAに関する。このDNAは、B. gibsoni原虫のcDNAライブラリーを構築し、B. gibsoni感染犬血清を用いたイムノスクリーニングにより同定し、クローニングして配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番であるDNAが、BgSA1タンパク質をコードするDNAであることを見いだした。尚、塩基配列の52~1686番の内、52~120番は、シグナルペプチドをコードするDNAであり、121~1686番が、成熟ペプチドをコードするDNAである。
【0012】
さらに、本発明は、バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質に関する。このタンパク質は、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質及び配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質である。配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番の内、1~23番のアミノ酸配列はシグナルペプチドに相当し、24~544番は、BgSA1タンパク質の成熟ペプチドに相当する。
【0013】
本発明は、バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質をコードするDNAであるが、このDNAは、具体的には、以下の(A)または(B)に示すタンパク質をコードするDNAであることができる。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【0014】
タンパク質(A)は、シグナルペプチド及び成熟タンパク質を含むバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質である。
【0015】
タンパク質(B)は、タンパク質(A)と実質的に同一のタンパク質であり、本発明のDNAは、コードされるBgSA1タンパク質としての活性、すなわち抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうる性質が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むタンパク質をコードするものであってもよい。
【0016】
さらに本発明のバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質をコードするDNAは、具体的には、以下の(C)または(D)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質をコードするDNAであることができる。
(C)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【0017】
タンパク質(C)は、シグナルペプチド及び成熟タンパク質を含むバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質である。
【0018】
タンパク質(D)は、タンパク質(C)と実質的に同一のタンパク質であり、本発明のDNAは、コードされるBgSA1タンパク質としての活性、すなわち抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうる性質が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むタンパク質をコードするものであってもよい。
【0019】
さらに本発明のバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質をコードするDNAは、具体的には、以下の(a)または(b)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質をコードするDNAであることができる。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番であるDNA
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の52~1686番からなる塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNA
【0020】
DNA(a)は、シグナルペプチド及び成熟タンパク質を含むバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質をコードするDNAである。
【0021】
DNA(b)は、DNA(a)と実質的に同一のDNAであり、本発明のDNAは、DNA(a) の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNAであってもよい。
【0022】
さらに本発明のバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)の分泌抗原1(BgSA1)タンパク質をコードするDNAは、具体的には、以下の(c)または(d)に示す、バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質をコードするDNAであることもできる。
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の121~1686番であるDNA
(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列の121~1686番からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNA
【0023】
DNA(c)は、バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質をコードするDNAである。
【0024】
DNA(d)は、DNA(c)と実質的に同一のDNAであり、本発明のDNAは、DNA(c)の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質をコードするDNAであってもよい。
【0025】
本発明のBgSA1遺伝子は、組換えBgSA1タンパク質あるいはBgSA1合成ペプチドの調製に使用すれことができ、さらにはこの遺伝子をターゲットにしたDNA診断にも使用することができる。
【0026】
本発明は、以下の(A)または(B)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質に関する。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【0027】
前述のように、タンパク質(A)は、シグナルペプチド及び成熟タンパク質を含むバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質である。さらに、タンパク質(B)は、タンパク質(A)と実質的に同一のタンパク質であり、本発明のBgSA1タンパク質は、BgSA1タンパク質としての活性、すなわち抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうる性質が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むタンパク質であってもよい。
【0028】
本発明は、さらに以下の(C)または(D)に示すバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質に関する。
(C)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の24~544番において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうるタンパク質
【0029】
前述のように、タンパク質(C)は、バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)のBgSA1タンパク質の成熟タンパク質である。さらに、タンパク質(D)は、タンパク質(C)と実質的に同一のタンパク質であり、本発明のBgSA1タンパク質は、BgSA1タンパク質としての活性、すなわち抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうる性質が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むタンパク質であってもよい。
【0030】
さらに本発明は、上記BgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質またはBgSA1タンパク質の成熟タンパク質とグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)リーダータンパク質とからなる融合タンパク質を包含する。グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)リーダータンパク質は、BgSA1タンパク質を発現させるに、安定した高発現を可能にし、かつ発現したタンパク質を可溶性のものとすることができる。
【0031】
配列番号1に示す塩基配列を有するDNAは、本発明によりその塩基配列が明らかにされたので、該塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCRにより、B. gibsoni原虫のcDNAライブラリーから増幅することによって、あるいは通常の固相法DNA合成技術によって、取得することができる。PCRに用いるプライマーは特に制限されない。
【0032】
本発明のDNAは、コードされるBgSA1タンパク質としての活性、すなわち抗BgSA1タンパク質抗体と反応しうる性質が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むタンパク質をコードするものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なる。それは、イソロイシンとバリンのように、アミノ酸によっては、類縁性の高いアミノ酸が存在し、そのようなアミノ酸の違いが、タンパク質の立体構造に大きな影響を与えないことに由来する。
【0033】
上記のようなBgSA1タンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、BgSA1タンパク質をコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びBgSA1タンパク質をコードするDNAを保持する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
【0034】
上記のような変異を有するDNAを適当な細胞で発現させ、抗BgSA1タンパク質抗体との反応性を調べることにより、BgSA1タンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。また、変異を有するBgSA1タンパク質をコードするDNAまたはこれを保持する細胞から、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号121~1686からなる塩基配列を有するDNAの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、抗BgSA1タンパク質抗体との反応性を有するタンパク質をコードするDNAを単離することによっても、BgSA1タンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。
【0035】
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
【0036】
このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性を失ったものも含まれるが、それらについては、抗BgSA1タンパク質抗体との反応性試験によって容易に取り除くことができる。上記のようなBgSA1タンパク質の改変は、BgSA1タンパク質としての活性を損なわないものであってもよいが、該タンパク質を認識する抗BgSA1タンパク質抗体との反応性がより高いものであることが好ましい。
【0037】
本発明は、本発明のDNA及びプラスミドDNAを含む組換え体DNAに関する。プラスミドDNAとしては、例えば、公知のプラスミドpUC、pTV、pGEX、pKK、pTrcHisなどに本発明のDNAを導入した組換えプラスミドを挙げることができる。
【0038】
さらに本発明は、本発明のDNAを含む組換えウイルスに関する。本発明のDNAを含むことができるウイルスには特に制限はないが、例えば、公知のワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、センダイウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、バキュロウイルスベクターなどを挙げることができる。
【0039】
さらに本発明は、上記本発明の組換え体DNAまたは本発明の組換え体ウイルスを含む宿主に関する。宿主は、特に制限はないが、例えば、細菌であることができる。細菌としては、例えば、大腸菌、BCG菌、乳酸菌などを挙げることができる。また、組換え体ウイルス感染用細胞として、例えば、公知のVero細胞、MDCK細胞、CA1細胞、COS細胞、SF9細胞などを挙げることができる。
【0040】
本発明のDNAを、適当な発現ベクターに接続し、これによって形質転換されたBCG菌やエシェリヒア属細菌等の細胞を培養することによって、BgSA1タンパク質を製造することができる。本発明のDNAとして配列番号1に示す塩基配列を有するDNAを用いれば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するBgSA1タンパク質が得られる。また、上述の改変された本発明のDNAを用いれば、改変されたBgSA1タンパク質が得られる。
【0041】
本発明は、上記本発明の組換え体DNAまたは本発明の組換え体ウイルスを有効成分として含有する原虫感染症治療用または予防用ワクチンに関する。本発明は、組換えBgSA1タンパク質あるいはBgSA1合成ペプチドを用いた予防用ワクチン製剤;BgSA1遺伝子を組み込んだ組換えウイルスワクチン;BgSA1遺伝子を組み込んだプラスミドワクチン(DNAワクチン)を含む。投与量、投与法は通常の種痘やBCGワクチン等と同様であることができる。
【0042】
さらに、本発明は、上記本発明のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、BgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または融合タンパク質を有効成分として含有する原虫感染症治療剤または予防剤に関する。即ち、本発明の組換えBgSA1タンパク質あるいはBgSA1合成ペプチドを抗原とした治療または予防用製剤を提供できる。本発明のタンパク質又はペプチドを治療、予防剤として用いる場合は、該タンパク質を、1)そのまま、又は2)医薬的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに、3)更に必要ならば、下記のような補助剤も加えて、注射器で投与することもできるし、噴霧などの方法で粘膜からの経皮吸収などで投与してもよい。尚、ここで言う担体とは、例えば、ヒト血清アルブミンであり、又、希釈剤とは例えばPBS、蒸留水等である。
【0043】
本発明は、本発明のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、BgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または融合タンパク質を用いた原虫感染症の診断方法に関する。本発明の組換えBgSA1タンパク質あるいはBgSA1合成ペプチドを抗原として用いた原虫感染症の診断方法を提供できる。原虫感染症の診断は、検体、例えば、血清と上記タンパク質との反応性を検査することにより実施することができる。
【0044】
さらに、本発明は、本発明のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、BgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または融合タンパク質に対する抗体を有効成分とする原虫感染症の治療剤及び予防剤を提供できる。さらに本発明によれば、本発明のBgSA1タンパク質のシグナルペプチド及び成熟タンパク質、BgSA1タンパク質の成熟タンパク質、または融合タンパク質に対する抗血清あるいは抗体を用いた原虫感染症の診断方法を提供できる。即ち、本発明の組換えBgSA1タンパク質とBgSA1合成ペプチドに対する抗血清あるいは抗体を用いた治療または予防剤、及び診断方法である。本発明の組換えBgSA1タンパク質とBgSA1合成ペプチドに対する抗血清は、本発明の組換えBgSA1タンパク質またはBgSA1合成ペプチドをFreund's complete adjuvant(Difco社)とともにマウス、ウサギ等の動物に複数回投与し、その後採血することで得られる。さらに、抗体は、得られた抗血清を適宜精製して得られる。
【0045】
抗体を原虫感染症の治療剤及び予防剤として使用する場合、BgSA1を動物に頻回免疫して得られた抗血清からIgG分画を精製し(生理食塩水を溶媒にする)、B. gibsoni感染犬に投与することにより治療及び予防を行うことができる。また、BgSA1に対する単クローン抗体作製した後IgG分画を精製し(生理食塩水を溶媒にする)、B. gibsoni感染犬に投与することにより治療及び予防を行うこともできる。
【0046】
抗血清あるいは抗体を用いた診断方法については、BgSA1に対するウサギ又はマウスポリクローナル抗体或いは単クローン抗体を作出し、サンドイッチ法ELISA或いはイムノクロマトグラフィック法にてB. gibsoni感染犬の血液中の虫体から分泌されたBgSA1を検出することができる。
【実施例】
【0047】
以下本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
なお、発明にあたっては、各種分子生物学、原虫学、免疫学及び生化学的な技術を用いた。これらの技術は、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harber Laboratory Press やその他の関連書を参考にした。DNA解析ソフトはMacVector(Oxford Molecular社)を使用した。
【0048】
実施例1
本発明におけるB. gibsoni BgSA1遺伝子の同定・クローニング・塩基配列解読を記載する。
B. gibsoni NRCPD株[Fukumoto et al., J Parasitol 84: 954-959 (2000)] 感染犬赤血球よりAcid Guanidinium-Phenol-Chloroform 法[Chomczynski et al., Anal Biochem 162: 156-159 (1987)]にてTotal RNAを抽出した。Total RNA よりmRNA Isolation Kit (Oligotex-dT30, Takara社) を用い、メーカーの推奨する方法に従いpoly A+ RNAを精製した。以下に述べるcDNA libraryの構築とイムノスクリーニング及びcDNAクローンのプラスミド化(in vivo Excision)はすべてStratagen社の試薬Kitを用い、当社の推奨する方法に従い実施した。約5 μg のB. gibsoni mRNAを鋳型とし、ZAP-cDNA Synthesis Kit を用いてcDNAを合成した。得られたcDNAをSepharose CL-2Bゲルカラムにてサイズ分画した後にUni-ZAP XR Vector armsに挿入し、GigapackIII Gold packaging extractにてパッケージングを行った。パッケージング産物をE. coli XL1-Blue MRF'株に感染させ、約50万個のcDNA クローンを含むlibraryを得た。B. gibsoni感染犬血清(虫体由来の分泌抗原を含有していると考えられる)を正常犬に頻回投与(2週間間隔で5回投与、投与量5ml/回)して得られた血清を用いて、cDNA libraryをイムノスクリーニングし、約数十個のオーバラップする陽性クローンを得た。これらの陽性クローンをin vivo Excision法にてプラスミド化(pBluescriptへ変換)した。cDNA断片を含むプラスミドをプラスミド精製キット(Qiagen社)にて精製した後に、Dye Primer Cycle Sequencing Kit (Perkin Elmer社)を用い、メーカーの推奨する方法に従いPCRを行った。ABI PRISM 377 DNA sequencer (Perkin Elmer社)を用いてPCR産物を解析しcDNA断片の塩基配列を決定した。その結果、これら全てのクローンが同一遺伝子由来であることが判明した。その中で長い断片を持つクローンを以後の解析に供した。cDNAの全長は1880bpであり、1635bpのOpen Reading Frame (ORF)を有していることが確認された(配列番号1)。推測されるタンパク質は544残基のアミノ酸からなり、推定分子量は62約kDaであった(配列番号2)。推測されるアミノ酸配列についてシグナルペプチド検索(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を行ったところ、N末端の23残基のアミノ酸がシグナルペプチドであることが想定された。以下、この遺伝子をBgSA1遺伝子と称する。BgSA1遺伝子より予想されるアミノ酸配列をNational Center for Biotechnology InformationのBLAST法にて相同性検索を行ったところ、これまでに報告されている原虫及び他の生物種の何れの遺伝子とも有意な相同性を示さなかった。
【0049】
実施例2
B. gibsoni BgSA1タンパク質を大腸菌で発現させるための組換えベクタープラスミドの構築を記載する。
B. gibsoni BgSA1cDNA断片(23残基のシグナルペプチドを取り除いた配列)が挿入されているpBluescriptプラスミドを制限酵素EcoRIとXhoIで消化することによりBgSA1cDNA断片を切り出し、大腸菌発現用ベクターpGEX-4T-3(Amersham Biosciences社)のEcoRIとXhoIサイトに挿入した。プラスミド精製キット(Qiagen社)にて組換えプラスミドpGEX/ BgSA1を精製した。
【0050】
実施例3
大腸菌におけるB. gibsoni BgSA1タンパク質の作出及び作出したタンパク質の性状を記載する。
実施例2で得た組換えプラスミドにて大腸菌DH5α株を形質転換させた後、37℃でアンピシリンを含んだLB培地で培養し、培養液のOD600nmが0.3-0.5に達した時点でIPTGを最終濃度0.5 mMになるように添加し、さらに37℃で4時間培養を続けた。組換えタンパク質の発現は10%SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動[Laemmli et al., Nature 227: 680-685 (1970)]を実施した後、クマーシー染色で確認した。その結果、約85kDaの組換えタンパク質の発現が認められ、GST リーダータンパク質(26kDa)とB. gibsoni BgSA1タンパク質 (59kDa)の融合タンパク質であることが確認された(図1)。
【0051】
実施例4
本発明における大腸菌からの組換えBgSA1タンパク質の精製、及び精製した組換えタンパク質に対する抗体生成を記載する。
実施例3で記述した方法により大腸菌で発現させた組換えBgSA1タンパク質をAmersham Biosciences社の推奨する方法に従い精製した。精製後の組換えBgSA1融合タンパク質の電気泳動像を図1に示した。100 μg 組換えBgSA1融合タンパク質を含む溶液200μlとFreund's complete adjuvant(Difco社)200 μlを混合した後にBALB/cマウス(8週齢、雌)に腹腔内接種した。2週間後と4週間後にそれぞれ100μgの組換えBgSA1融合タンパク質をFreund's incomplete adjuvant(Difco社)と混合し、追加接種を行った。最終接種後2週目に採血し、血清を-20℃に保存した。
【0052】
実施例5
イムノブロット法によるネイティブ(天然型)BgSA1タンパク質の同定を記載する。
実施例4で得た抗組換えBgSA1融合タンパク質マウス血清を用い、イムノブロット法[Towbin et al., Proc Natl Acad Sci USA 76: 4350-4354 (1979)]にて天然型BgSA1タンパク質の同定を行った。図2に示すように、B. gibsoni感染赤血球ライセートにおいて59kDaの特異的バンドが検出された。天然型BgSA1タンパク質の分子量は推定理論値(59kDa)と同様であった。
【0053】
実施例6
本発明における組換えBgSA1タンパク質に対する免疫血清の反応性を記載する。
イムノブロット法を用いて組換えBgSA1タンパク質に対するB. gibsoni感染犬血清の反応性を検討した。図3に示すように、組換えBgSA1タンパク質はB. gibsoni感染犬血清と強く反応することが確認された。このことから、組換えBgSA1タンパク質は犬B. gibsoni感染症の診断とワクチン候補分子の一つであることが示された。なお、正常犬血清と組換えBgSA1タンパク質との反応は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、犬B. gibsoni感染症の診断用抗原及び予防用ワクチン等の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の発現生成物である組換えBgSA1融合タンパク質を示す電気泳動図。レーン1:分子量マーカー。レーン2:精製した組換えBgSA1融合タンパク質。レーン3:精製したGSTタンパク質。
【図2】組換えBgSA1融合タンパク質免疫血清による天然型BgSA1タンパク質の検出を示すイムノブロット像。レーン1:B. gibsoni感染赤血球。レーン2:正常犬赤血球。
【図3】組換えBgSA1融合タンパク質とB. gibsoni感染犬血清との反応性を示すイムノブロット像。レーン1:精製した組換えBgSA1融合タンパク質。レーン2:精製したBgSA1タンパク質。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2