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明細書 :運転訓練システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4985098号 (P4985098)
公開番号 特開2008-292772 (P2008-292772A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年12月4日(2008.12.4)
発明の名称または考案の名称 運転訓練システム
国際特許分類 G09B   9/052       (2006.01)
A61B   5/022       (2006.01)
G09B   9/042       (2006.01)
FI G09B 9/052
A61B 5/02 332Z
G09B 9/042 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2007-138382 (P2007-138382)
出願日 平成19年5月24日(2007.5.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成2006年11月25日~26日 システム制御情報学会(幹事学会)、計測自動制御学会、日本機械学会、化学工学会、精密工学会、日本航空宇宙学会主催の「第49回自動制御連合講演会」に文書をもって発表
審査請求日 平成22年3月23日(2010.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】510108951
【氏名又は名称】公立大学法人広島市立大学
発明者または考案者 【氏名】小野 貴彦
【氏名】猪岡 光
個別代理人の代理人 【識別番号】100091605、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 敬
審査官 【審査官】植田 泰輝
参考文献・文献 特開2005-329754(JP,A)
特開2005-87486(JP,A)
特開2005-128631(JP,A)
藤原 奈央,直線加速度負荷時の生体情報解析,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,1999年 3月19日,信学技報Vol.98No.672,P.123-130
小野 貴彦,救急車輌用回転式アクティブ制御ベッドの開発-適合原理に基づく制御系設計-,計測自動制御学会論文集,日本,社団法人計測自動制御学会,2005年 3月31日,第41巻第3号,P.202-209
調査した分野 B60R 16/02,22/48
G09B 9/00-9/56,19/00
G01P 7/00
A61B 5/022,5/18
特許請求の範囲 【請求項1】
車両の前後方向の加速度を検出する手段と、
検出した前記前後方向の加速度から、運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去する手段と、
前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去した加速度を血圧変化量に変換する手段と、
前記血圧変化量が予め定めた閾値を超えた場合に報知する手段とを具備することを特徴とする運転訓練システム。
【請求項2】
前記検出した前記前後方向の加速度から、運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去する手段では、前記前後方向の加速度に対応する各周波数成分の血圧増幅率を求め、前記血圧増幅率の変動の小さい範囲の前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去することを特徴とする請求項1に記載の運転訓練システム。
【請求項3】
0.01Hz以下の前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去することを特徴とする請求項1に記載の運転訓練システム。
【請求項4】
車両の前後方向の加速度を検出する手段と、
検出した前記前後方向の加速度から、運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去する手段と、
前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去した加速度を血圧変化量に変換する手段と、
前記血圧変化量が予め定めた閾値を超えた場合に報知する手段と、 前記車両の左右方向の加速度を検出する手段と、
検出した前記左右方向の加速度から運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去する手段と、
前記運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去した加速度を筋負担量に変換する手段と、
前記筋負担量が予め定めた閾値を超えた場合に報知する手段とを具備し、
前記血圧変化量、前記筋負担量のどちらか一方が各前記予め定めた閾値を超えると報知することを特徴とする運転訓練システム。
【請求項5】
前記検出した前記左右方向の加速度から運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去する手段では、記左右方向の加速度に対応する各周波数成分の筋負担量増幅率を求め、前記筋負担量増幅率の変動が小さい範囲の前記運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去することを特徴とする請求項4に記載の運転訓練システム。
【請求項6】
0.1Hz以下の前記運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去することを特徴とする請求項4に記載の運転訓練システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の加速度を計測し、加速度から運転操作に直接起因しない低周波成分を除去して血圧変化量を求め、閾値を超えた場合に報知する運転訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの高齢者等を病院や老人ホームへ搬送するための手段として、寝台付き福祉車両を利用するケースが増えている。寝台付き福祉車両の場合、搭乗者は頭を前にして仰向けの姿勢で搬送されるが、この搭乗姿勢では、搬送中に前後方向と横方向の加速度を受ける。前後加速度は、車両の加減速で生じる慣性力や坂道走行時に受ける重力に起因しており、顔面の鬱血や急激な血圧変動を招く。また、横加速度は、カーブ走行時や交差点右左折時に生じる遠心力に起因しており、身体の横揺れを招く。
【0003】
この前後方向及び横方向の加速度により、仰向け姿勢での搬送時には、通常の乗車姿勢以上に負担がかかり、強い不快感を感ずるとともに、血圧上昇による容態の悪化を招くおそれがある。
【0004】
このため、搭乗者の負担を軽減すべく、車両の走行加速度に応じて搭乗者の姿勢を変化させるアクティブ制御方式のベッドが開発されている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
また、搭乗者の不快感を抑制するように、運転者のブレーキ操作やハンドル操作を改善するシステムがある(例えば、非特許文献2)。
【0006】
図8は車両の前後加速度(A)と、この前後加速度に対する血圧の変化量(B)の関係を示している。個々の人間によって平均血圧値は異なるが、加速度と血圧変化量(平常時の平均血圧との差)との関係は、個々人によらずほぼ同じとなる。
【0007】
非特許文献1では、これらの関係を利用し、車両の前後方向の加速度に応じてベッドの傾斜角を変化させることで、血圧変化量ができるだけ変動しないようにしている。搭乗者が車両の進行方向に頭を向けて仰向けでいる状態では、下り坂を走行している場合や運転手がブレーキを踏んだ場合には、頭に血が昇り血圧が上昇する。このときは、下肢に対して、相対的に頭部が高くなるようにベッドを傾けて、血圧の上昇を抑えている。
【0008】
非特許文献2では、被験者を搭乗させて運転を行い、運転中の不快レベルを連続的に5段階評価してもらい、これと車両の加速度と対応させたシステムを構築している。そして、不快指数の閾値を定めておき、運転中の加速度に対応する不快指数が閾値を超えた場合にブザー等による警告をすることで、運転者に認知させて運転技術の改善を図っている。

【非特許文献1】「福祉車両での使用を想定したアクティブ制御ベッドの効果予測」第48回自動制御連合講演会、2005年11月25日、26日
【非特許文献2】「乗心地向上を目指した運転支援システムとアクティブベッド」自動車技術、Vol.60、No.7、pp.56-61、2006年7月1日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
加減速時や旋回時の慣性力に起因する前後左右方向の加速度は、数秒~数十秒と比較的長い時間にわたり一定方向に作用する。また、前後左右方向の加速度は運転の仕方に大きく依存している。したがって、非特許文献1における、寝台の角度による制御だけでは、搭乗者の血圧上昇を抑えることは困難である。
【0010】
非特許文献2に示す、不快指数は被験者の主観的な評価に基づいているため、個人差が大きく、客観的な評価指数とはならない。このため、運転技術の改善を確実に行う基準にはできない。
【0011】
また、福祉車両等では乗り心地よりも身体的な負担が重要である。乗り心地が悪くないと評価された場合でも、実際には血圧上昇等、身体的な負担が生じている場合があり、生体反応に基いて搭乗者の負担を抑制できる運転技術の改善システムとはなっていない。
【0012】
本願発明は、上記事情に鑑み、福祉車両等を迅速に、且つ、搭乗者の容態悪化を招くことなく車両を運転できるよう、運転技術を段階的に改善しうる運転訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両の前後方向の加速度を検出する手段と、検出した前記前後方向の加速度から、運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去する手段と、前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去した加速度を血圧変化量に変換する手段と、前記血圧変化量が予め定めた閾値を超えた場合に報知する手段とを具備することを特徴とする。

【0014】
また、本発明は、前記検出した前記前後方向の加速度から、運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去する手段では、前記前後方向の加速度に対応する各周波数成分の血圧増幅率を求め、前記血圧増幅率の変動の小さい範囲の前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去することを特徴とする

【0015】
更に、本発明は、0.01Hz以下の前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去することを特徴とする。

【0016】
更に、本発明は、車両の前後方向の加速度を検出する手段と、検出した前記前後方向の加速度から、運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去する手段と、前記運転操作に直接起因しない道路状況による重力加速度に起因する低周波成分を除去した加速度を血圧変化量に変換する手段と、前記血圧変化量が予め定めた閾値を超えた場合に報知する手段と、前記車両の左右方向の加速度を検出する手段と、検出した前記左右方向の加速度から運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去する手段と、前記運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去した加速度を筋負担量に変換する手段と、前記筋負担量が予め定めた閾値を超えた場合に報知する手段とを具備し、前記血圧変化量、前記筋負担量のどちらか一方が各前記予め定めた閾値を超えると報知することを特徴とする。

【0017】
更に、本発明は、前記検出した前記左右方向の加速度から運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去する手段では、記左右方向の加速度に対応する各周波数成分の筋負担量増幅率を求め、前記筋負担量増幅率の変動が小さい範囲の前記運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去することを特徴とする。

【0018】
更に、本発明は、0.1Hz以下の前記運転者のハンドル操作に起因する低周波成分を除去することを特徴とする。

【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、計測した前後方向の加速度から、0.01Hz以下の運転操作に直接起因しない重力加速度等による低周波成分を除去して血圧変化量を求め、血圧変化量が予め定めた閾値を越えた場合に報知させている。坂等における車両の重力加速度成分に対応する低周波成分が除去されるので、ブレーキやアクセルの乱雑な操作のみを抽出して、運転者にそれを認知させられる。このため、訓練初期段階では急ブレーキ等のみを重点的に運転者に認知させることができ、運転操作を段階的に改善できる利点を有する。
【0020】
また、本発明によれば、血圧変化量を評価指数として用いているので、生体反応に基いて客観的に血圧を上昇させてしまう運転操作を評価することができ、搭乗者に負担をかけない運転操作の習得を促進できる。
【0021】
更に、本発明によれば、左右方向の加速度から0.1Hz以下の低周波成分を除去し、この低周波成分を除去した加速度から筋負担量を求め、予め定めた閾値を超えた場合に報知している。丁寧なハンドル操作では現れない急ハンドル操作のみに起因する周波数成分を抽出できるため、訓練初期段階では急ハンドル操作のみに対して報知するができ、段階的に運転操作の改善を行うことができる。
【0022】
更に、本発明によれば、筋負担量を評価指数としているので、生体反応に基いて客観的に筋力に負担がかかる運転操作を評価している。このため、搭乗者にとって筋力的な負担がかからない運転操作の習得が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1を参照して、本発明による運転訓練システムの概要について説明する。本発明は、車両の前後方向の加速度を血圧変化量に変換し、また、左右方向の加速度を筋負担量に変換し、それぞれ設定した閾値を越えると運転者に報知するシステムである。報知によって運転者にそれを認知させ、運転操作の改善を促進することができる。血圧変化量、及び筋負担量と、生体反応に基いた評価指数を用いているので、搭乗者の負担を客観的に考慮した運転訓練システムといえる。
【0024】
前後方向を検出する加速度センサによって、車両走行時の前後方向の加速度を検出する。その前後方向の加速度データをADコンバータを介し、サンプリング周波数100Hzで収集する。そして加速度信号をローカットフィルタ通過させ、重力加速度成分等、運転操作に直接起因しない低周波成分を除去する。ローカットフィルタは、デジタルフィルタを用いており、入力信号として加速度信号を入力すると、加速度に対応する周波数成分のうち、低周波成分が除去された加速度が出力される。低周波成分を除去した前後方向の加速度データを用い、これを血圧変動シミュレータで搭乗者の血圧変化量に変換する。予め任意の閾値を定めておき、血圧変化量がこの閾値を超えた場合、報知装置に信号が送られ、運転手に報知を行う。
【0025】
また、左右方向を検出する加速度センサによって、車両走行時の左右方向の加速度を検出する。その左右方向の加速度データをADコンバータを介し、サンプリング周波数100Hzで収集する。そして、加速度信号を前述同様、ローカットフィルタで低周波成分を除去する。この低周波成分を除去した左右方向の加速度データより、筋負担シミュレータで搭乗者の筋負担を評価する。筋負担が予め定めた閾値を超えた場合に、報知装置に信号が送られ、運転手に報知を行う。
【0026】
このように、血圧変化量、筋負担のどちらか一方でも閾値を超えたら、DAコンバータを通じて報知装置に信号を送り、報知することで運転技術の改善を促進している。
【0027】
前後方向及び左右方向の加速度をそれぞれ検知するため、2つの加速度センサを用いるか、或いは2チャンネル計測可能な加速度センサを用いる。報知装置として、警告音を鳴らすブザー等、警告表示を行うアナログやデジタル表示装置等、様々な装置を用いることができる。
【0028】
次に、図2を参照して、車両の前後方向の加速度の低周波数成分の除去について説明する。図2(A)は、丁寧に300秒間運転した場合の加速度データを周波数変換した成分分布図であり、(B)は(A)と同じコースを、急ブレーキ等を含む一般的な運転を行った場合の加速度データを周波数変換した成分分布図である。また、図2(C)は、各周波数成分における人体の血圧増幅率を示している。
【0029】
図2(A)の丁寧に運転した場合、周波数は低周波側に多く分布している。一方、(B)の乱雑な運転の場合、高周波側の周波数成分が増加する傾向にある。
【0030】
一般的な運転の場合、アクセルやブレーキ操作等が行われるので、これらの急動作による周波数成分が高周波側に現れることがわかる。また、丁寧な運転の場合、これらの急動作が少なく、現れる低周波成分は、主として運転操作に直接起因しない道路状況による加速度成分、例えば下り坂等の勾配による重力加速度成分が現れていると判断できる。よって、この低周波成分を除くと、急ブレーキ等の改善したい運転操作を抽出できることになる。
【0031】
一方で、搭乗者の容態を悪化させる周波数までも除去しては、生体反応に基いた運転技術の改善につながりにくい。このため、どの範囲で低周波成分を除去するかが重要である。
【0032】
図2(C)は、各周波数成分に対応する血圧増幅率であるが、0.01Hz以下の低周波側では血圧増幅率はほぼ一定と、変動が小さい。すなわち、この低周波側では大きな血圧上昇はさほど起こらない。一方、0.01Hz以上の周波数では血圧増幅率の変動が大きくなっており、この変動の大きい範囲を評価しなければ、生体反応に基いた運転操作の改善につながらない。
【0033】
したがって、ローカットフィルタのカットオフ周波数は、血圧変化量の変動が小さい0.01Hz以下で設定することが好ましい。
【0034】
荒い運転操作のみを集中的に改善したい場合には、カットオフ周波数を高く設定し、荒い操作が起こった時のみ運転者に報知することで、早期に運転操作の改善を図ることができる。
【0035】
なお、低周波成分を除去せずに、閾値だけを高めに設定することで、運転操作を段階的に向上させることも考えられる。しかしながら、閾値だけを高く設定するだけでは、改善したいブレーキやアクセルの急動作の他、下り坂等における重力加速度に起因するものまで報知されてしまう。
【0036】
このような、運転操作に直接起因しない加速度成分が検出されると、訓練初期段階では、どのような運転操作が悪いのか、運転者が判断しにくくなり、効率的に運転操作の向上を図ることが困難となる。このため、訓練初期段階では、運転操作に直接起因しない低周波成分を取り除いた方が、運転操作の向上を効率的に図ることができる。
【0037】
そして、訓練を重ねるごとに、徐々にカットオフ周波数を下げていくことで、効率的に運転操作の上達を促すことになる。
【0038】
また、加速度センサから得られる加速度信号をローカットフィルタに通し、低周波成分を除去すると、上述の道路の勾配に起因する重力加速度成分の他、加速度センサ自体の傾きによる重力加速度成分、同乗者の座席配置のアンバランスによる車両の傾きに伴う重力加速度成分等も除去される。加速度センサは通常水平に取り付けなければ正確な検出ができないものであるが、多少水平に取り付けられていなくても正確に加速度を検出することができる。また、同乗者が車両内にいる場合でも、同乗者によって加速度の検出が不正確になることもない。
【0039】
次に、図3を参照して、車両の左右方向の加速度の低周波成分の除去について説明する。
【0040】
ハンドル操作によって、車両には遠心力が加わるので、搭乗者は足を踏ん張ったり、何かを掴んだりしてその体勢を保とうとする。健常者では自力で対応することができるが、老人等の体力がない人々は自力で対処できず、身体が振られ、車両内壁等にぶつかってしまい、身体を傷つけることにもつながる。特に、福祉車両等、寝台上に仰向け状態で搬送される場合では、運転者の急ハンドル操作の際に、搭乗者は力を入れることができず、寝台から落下して怪我をするおそれがある。
【0041】
車両の左右加速度は、主として運転者のハンドル操作に起因するので、運転操作の違いで搭乗中にどのような負担が生じているか検証を行う。そして、左右方向の加速度から丁寧な運転に起因する周波数成分を除去すれば、急ハンドル操作等のみが抽出されるので、運転操作の改善をスムーズに行うことができる。筋負担は、搭乗者の筋電図測定から計測し、左右方向の加速度を変換した周波数と筋負担の関係を見出すことで、生体反応に基いた運転訓練システムとなる。
【0042】
図3(A)は、丁寧に300秒間運転した場合の左右方向の加速度データを周波数変換した周波数成分分布図であり、(B)は(A)と同じコースを、急ハンドル等含む一般的な運転を行った場合の加速度データを周波数変換した周波数成分分布図である。また、図3(C)は、各周波数成分における人体の筋負担量を示している。
【0043】
丁寧に運転した場合、前後方向の加速度と同様に、周波数は低周波側に多く分布している。一方、一般的な運転の場合、高周波側の周波数成分が増加する傾向にある。
【0044】
左右方向の加速度は、主として運転者のハンドル操作に依存するが、丁寧な運転の場合、急ハンドルが少ないことから、低周波成分は適切なハンドル操作に伴う加速度から変換された周波数と判断される。
【0045】
また、図3(C)は、各周波数成分に対応する筋負担増幅率であるが、0.1Hz以下の低周波成分では筋負担増幅率はほぼ一定であり、変化が小さい。一方、0.1Hz以上の周波数側では筋負担増幅率の変動が大きくなっており、人体の筋負担が過度に大きくなることがわかる。図3(A)では、0.1Hz以上の周波数成分がほとんど無いので、低周波側に現れている周波数成分は適切なハンドル操作で人体に負担がかからないものと判断できる。一方、(B)では0.1Hz以上の周波数も多く現れていることから、搭乗者は過度の負担を強いられるハンドル操作と判断できる。
【0046】
0.1Hz以下の低周波成分の除去により、適切なハンドル操作に起因し、且つ、生体反応に基く筋負担を考慮した運転訓練システムとなる。
【0047】
したがって、運転操作が荒く急ハンドルの多い運転者の場合には、低周波成分を除去すれば、急ハンドル等、乱雑なハンドル操作が抽出でき、これを報知することで運転操作の改善が望める。
【0048】
低周波成分の除去率は、カットオフ周波数によって調整できる。訓練初期段階の、急ハンドル動作のみを集中的に改善したい場合には、カットオフ周波数を高めに設定しておけば、急ハンドル操作をした時のみ運転者に報知でき、重点的に改善することができる。
【0049】
例えば、0.1Hz以下の周波数を除去し、次に0.05Hz以下の周波数を除去するというように、徐々に除去する周波数を下げていくことで、段階的にハンドル操作の改善がスムーズに行える。
【0050】
図4及び図5を参照して、車両の前後加速度を変換した周波数から低周波成分を除去した血圧変化量と、除去しなかった血圧変化量を比較して説明する。
【0051】
図4(A)は、前後方向の加速度センサによって検出された車両の前後方向の加速度データである。100Hz、すなわち0.01秒毎にサンプリングしたデータである。これをカットオフ周波数0.005Hzとして、ローカットフィルタに通し、低周波成分を除去した加速度データが図4(B)となる。
【0052】
なお、図4(D)に、前後方向の加速度である(A)をそのまま周波数変換した周波数分布図を示し、図4(E)に、0.005Hz以下の低周波成分を除去した(B)の周波数分布図を示す。これらは運転した300秒間サンプリングした全周波数の分布を示している。ローカットフィルタを通したため、低周波成分が除去されていることがわかる。
【0053】
図4(C)は、この0.005Hz以下の周波数を除去した加速度から求めた血圧変化量(mmHg)である。加速度データから血圧変化量を求めるには数1~数3による数理モデルを用いている。
【数1】
JP0004985098B2_000002t.gif

【0054】

【数2】
JP0004985098B2_000003t.gif

【0055】

【数3】
JP0004985098B2_000004t.gif

【0056】
ここで、xは血圧(mmHg)、aは加速度、yが血圧変化量(mmHg)であり、kはサンプリング周期T(秒)に対して、時刻t=kTに対応するサンプリング時刻を表す。数1は加速度が正の値の場合、数2は加速度が負の値の場合に用いられる。搭乗者の血圧変化量は、その瞬時の加速度のみではなく、搭乗中のそれまでに受けた加速度にも依存する。このため、過去の経過も加味するため、数3にて連続的にし、血圧変化量を求めている。
【0057】
図5は、低周波成分を除去した血圧変化量(A)と、低周波成分を除去しなかった血圧変化量(B)の対比を示している。下部に運転した道路状況を示しており、下り坂の部分で低周波成分を除去した方は、血圧変化量が顕著に小さくなっている。破線で変化量の閾値を5mmHgとした場合を示しており、超えた場合に報知を行っている。(B)では、重力加速度成分が評価されてしまい、頻繁に報知されることになる。このため、運転者は自己の運転操作のどこが悪いのか認識しづらく、どのように運転操作を改善すればよいかわからず、効率的な改善が難しい。
【0058】
一方、(A)では、運転操作に直接起因しない重力加速度成分が除去され、主にアクセルやブレーキの急動作に伴う加速度が抽出される。そして、この急動作によって血圧変化量が閾値5mmHgを超えた場合のみ報知される。このように、主として運転者が荒い運転操作をした場合に報知されることから、運転操作がどのように悪かったのか容易に認識することができるので、運転操作の改善ポイントが明らかとなり、運転技術の向上が効率良く促進される。
【0059】
図6及び図7を参照して、車両の左右方向の加速度を変換した周波数から低周波成分を除去した筋負担量と、除去しなかった筋負担量を比較して説明する。
【0060】
図6(A)は、左右方向の加速度センサによって検出された車両の左右方向の加速度データである。100Hz、すなわち0.01秒毎にサンプリングしている。これを周波数変換し、カットオフ周波数を0.05Hzとするローカットフィルタに通し、低周波成分を除去した加速度データが図6(B)となる。
【0061】
なお、図6(D)に、左右加速度をそのまま周波数変換した周波数分布図を示し、図6(E)に、カットオフ周波数0.05Hzで低周波成分を除去した周波数分布図を示す。図6(E)では、ローカットフィルタを通しているため、(D)に比べて低周波成分のほとんどが除去されていることがわかる。
【0062】
図6(C)は、この0.05Hz以下の周波数を除去した加速度から求めた筋負担量である。加速度データを筋負担量に変換するには数4による数理モデルを用いている。
【数4】
JP0004985098B2_000005t.gif

【0063】
ここで、yは筋負担量、aは左右方向の加速度であり、kはサンプリング周期T(秒)に対して、時刻t=kTに対応するサンプリング時刻を表す。
【0064】
図7は、低周波成分を除去した筋負担量(A)と、低周波成分を除去しなかった筋負担量(B)の対比を示している。破線で閾値を0.05とした場合を示しているが、(B)では、全てのハンドル操作に起因するものが評価されてしまい、頻繁に報知されることになる。特に、下り坂では車両の重力加速度成分が加わり遠心力が加わって、遠心力が大きくなるので顕著に現れている。
【0065】
このため、運転者は自己の運転操作のどこが悪いのか認識しづらくなり、どのように運転操作を改善すればよいかわからず、効率的な改善につながりにくい。
【0066】
一方、(A)では、適切なハンドル操作に伴う加速度成分や重力加速度成分が除去され、主に急ハンドル操作に伴う加速度が抽出されている。そして、この急ハンドル操作に伴う筋負担量が閾値を超えた場合に報知される。このように、主として運転者が荒い運転操作をした場合に報知されることから、運転操作がどのようにハンドル操作が悪かったのか認識し、それを改善に努めやすくなるので、運転技術の向上が効率良く促進される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明では、車両の加速度を血圧変化量及び筋負担量に変換し、これを評価指数として用いているので、搭乗者に身体的負担をかけず、且つ、迅速に搬送し得る運転操作の習得が可能となる。また、加速度から運転操作に直接起因しない重力加速度等による低周波成分を除去できるので、段階的に運転操作の改善を図ることができる。このため、身体の安全、且つ、迅速な搬送が求められる福祉車両等の運転訓練に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明による運転訓練システムの構成図である。
【図2】本発明による前後方向の加速度と血圧変化量との関係を示すグラフである。
【図3】本発明による左右方向の加速度と筋負担との関係を示すグラフである。
【図4】本発明による前後方向の加速度から低周波成分を除去して求めた血圧変化量の測定図である。
【図5】本発明による低周波成分を除去した血圧変化量の対比を示す測定図である。
【図6】本発明による左右方向の加速度から低周波成分を除去して求めた筋負担量の測定図である。
【図7】本発明による低周波成分を除去した筋負担量の対比を示す測定図である。
【図8】従来のアクティブベッドの制御に使用された加速度と血圧変化量の関係を示すグラフである。
図面
【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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