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明細書 :放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4701458号 (P4701458)
公開番号 特開2007-263449 (P2007-263449A)
登録日 平成23年3月18日(2011.3.18)
発行日 平成23年6月15日(2011.6.15)
公開日 平成19年10月11日(2007.10.11)
発明の名称または考案の名称 放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ
国際特許分類 F24F   7/06        (2006.01)
B01L   1/00        (2006.01)
FI F24F 7/06 C
B01L 1/00 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 17
出願番号 特願2006-088690 (P2006-088690)
出願日 平成18年3月28日(2006.3.28)
審査請求日 平成19年12月14日(2007.12.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】鈴木 和年
【氏名】中尾 隆士
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
【識別番号】100111545、【弁理士】、【氏名又は名称】多田 悦夫
審査官 【審査官】河野 俊二
参考文献・文献 特開昭52-126281(JP,A)
特開2001-141273(JP,A)
特開2004-245458(JP,A)
特開平01-243357(JP,A)
特開2004-031928(JP,A)
特開平05-157302(JP,A)
特開2003-022115(JP,A)
特開2006-038644(JP,A)
特開2005-296889(JP,A)
特開2000-356642(JP,A)
調査した分野 F24F 7/06
B01L 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に形成された放射性薬剤を取り扱う作業空間を有する筐体と、
前記作業空間の底面であり作業が行われる作業台と、
前記作業空間の前面に、鉛直方向に開閉自在なシャッタが設けられた開口部と、
前記作業空間に前面視方向に沿って設けられ、前記作業空間を区画する区画手段と、
前記作業空間に送られる空気を濾過して清浄化するフィルタと、
前記作業空間にフィルタを介して清浄な空気を供給する送風機とを備え
前記作業空間は、前記放射性薬剤から検査試料の分注が行われる分注領域と、前記放射性薬剤を取り扱う作業のうち分注以外の作業が行われる追加作業領域とが、前記区画手段によって区画することが可能なことを特徴とする放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項2】
前記区画手段は、前記作業台の上部に垂設された仕切板、または、前記作業空間の上面である内上壁から垂下された仕切板を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項3】
前記区画手段は、前記作業台上に示された区画線を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項4】
前記仕切板に、前記放射性薬剤、該放射性薬剤より分注された検査試料および作業器具のうち、少なくとも一つを通過させる窓部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項5】
前記仕切板は、前記作業台の前部を除いて設けられることを特徴とする請求項2に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項6】
前記区画手段が一つ以上設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項7】
前記追加作業領域は、前記放射性薬剤の品質検査作業および前記放射性薬剤を外部へ移送する作業のうち少なくとも一つの作業が行われることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項8】
前記追加作業領域に、前記放射性薬剤を品質検査する品質検査機器および前記放射性薬剤を外部へ移送する移送手段のうち少なくとも一つが設置されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項9】
前記品質検査機器は、電子天秤、液体クロマトグラフィー、pHメータ、エンドトキシン試験装置およびキュリーメータのうち、少なくとも一つを含んでなることを特徴とする請求項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項10】
前記品質検査機器が複数の構成ユニットから構成される場合に、
前記追加作業領域には少なくとも前記放射性薬剤が直接供される構成ユニットが配され、
前記複数の構成ユニットのうち、前記追加作業領域に配される構成ユニット以外の構成ユニットが、前記筐体の外部に配されることが可能なことを特徴とする請求項または請求項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項11】
前記追加作業領域に配される構成ユニットと、前記筐体の外部に配される構成ユニットとが、前記追加作業領域の壁面、作業台および内上壁のうち、少なくとも一つに設けられた貫通孔を介して連絡されることを特徴とする請求項10に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項12】
前記キュリーメータは、前記作業台に形成された収容孔に鉛で遮蔽された構造で埋設されることを特徴とする請求項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
【請求項13】
前記移送手段は、気送管、コンベアおよびトロッコのうち、いずれか一つを含んでなることを特徴とする請求項に記載の放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は作業空間を清浄な環境に保つクリーンベンチに関し、特に、放射性薬剤の取り扱いに好適なクリーンベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
PET(Positron Emission Tomography)検査は、ポジトロン核種(以下、核種という)で標識されたポジトロン標識薬を被検者の体内に静脈注射や吸入により投与し、ポジトロン標識薬が体内を移動して心臓・脳等の臓器やがん組織に集まる様子を断層像として画像化する検査方法である。
PET検査に利用される核種は主に18F、15O、13N、11Cであって、それぞれの核種は、例えば、ブドウ糖の類似体である18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)、15O-CO、13N-NH11Cで標識された神経伝達物質等のポジトロン標識薬として被検者に投与される。特に最近は、FDGをポジトロン標識薬に用いたPET検査による悪性腫瘍の診断等に健康保険の適用が認められるようになり、PET検査が普及しつつある。さらに、PET検査の応用範囲を拡大すべく新たなポジトロン標識薬の研究開発も盛んに行われている。
【0003】
一般に、ポジトロン標識薬の製造工程は、サイクロトロンにより核種を生成する工程と、核種で標識されたポジトロン標識薬を合成する工程(製剤処理等も含む)と、ポジトロン標識薬の品質を検査する工程と、品質検査されたポジトロン標識薬をPET装置を保有する診断室や施設外の検査機関(以下「PET診断室等」という)に移送する工程とを含んでいる。ポジトロン標識薬に用いられるいずれの核種も半減期が2分~2時間程度と極めて短いため、いずれの工程においてもクリーンな環境下での迅速な作業が要求される。また、核種やポジトロン標識薬は、非常に強いγ線やβ線等の放射線を放出するため、作業者が被ばくしないように放射線を遮蔽した環境での作業が要求される。
【0004】
前記した製造工程のうち、ポジトロン標識薬の品質を検査する工程は、バイアル瓶等に充填されているポジトロン標識薬から品質検査に必要な分量を検査試料として分注する作業と、ポジトロン標識薬(例えば、分注した検査試料)に対して品質検査を行う作業とに大別される。
ポジトロン標識薬から検査試料を分注する作業は、ポジトロン標識薬に微生物や塵埃が混入しないように、無菌的な環境で行われる。一般に、外部環境から試料への微生物や塵埃の混入、または、試料から外部環境への微生物の漏洩を防ぐために、クリーンベンチが使用される。
一般的なクリーンベンチは、作業台と、該作業台上に清浄な空気を送気するための送気部とを備えて概略構成されている。このうち送気部は、例えば、送気ファンと、この送気ファンより送気された空気を濾過するエアフィルタと、このエアフィルタによって濾過されることによって清浄化された空気を作業台上に向けて吹き出す吹出部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。このようなクリーンベンチは、通常、非放射性物質の取り扱いを想定して構成されていることが多い。
【0005】
このようなクリーンベンチを用いて、ポジトロン標識薬等の放射性薬剤を取り扱う場合には、作業空間とその前面に着座する作業者との間に放射線の遮蔽部材を設置する。遮蔽部材は、例えば、鉛ガラスや鉛衝立等の鉛部材である。
【0006】
そして、分注した検査試料に対して、重量試験・放射線量試験・純度試験・pH試験・エンドトキシン試験等の品質検査が適宜行われる。なお、従来では、分注した検査試料を品質検査する作業は、検査試料をクリーンベンチから取り出した後にクリーンベンチ外部に備えられた品質検査機器を用いて行われていた。
すなわち、分注された検査試料は品質検査のためのものであって、将来的に被検者に投与されるものではないため、従来では、特に無菌的環境下で扱われていなかった。

【特許文献1】特開平2004-245458号公報(段落0002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポジトロン標識薬の品質を検査する工程において、ポジトロン標識薬から検査試料を分注する作業を行う場所と、分注した検査試料の品質検査を行う作業をする場所とが異なることによって、放射性薬剤を複数の場所へ移動する必要が生じ、移動先でも放射性薬剤からの放射線の遮蔽が必要になる等、半減期の短いポジトロン標識薬を扱うのに効率的とはいえなかった。また、クリーンベンチの内部から外部への放射性薬剤の移動やクリーンベンチの外部での品質検査にともなって、作業者の被ばくが増加する虞があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、無菌的な放射性薬剤の取り扱いにおいて、作業者の被ばくを低減させつつ、効率的に作業を行うことができるクリーンベンチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係るクリーンベンチは、内部に形成された放射性薬剤を取り扱う作業空間を有する筐体と、前記作業空間の底面であり作業が行われる作業台と、前記作業空間の前面に、鉛直方向に開閉自在なシャッタが設けられた開口部と、前記作業空間に前面視方向に沿って設けられ、前記作業空間を区画する区画手段と、前記作業空間に送られる空気を濾過して清浄化するフィルタと、前記作業空間にフィルタを介して清浄な空気を供給する送風機とを備えた構成となっている。
【0010】
このような構成によって、作業者が主に作業を行う作業空間の前面からクリーンベンチを視たときに作業空間が区画されているので、作業者は、この区画された作業空間を用途に応じて使い分けることができる。すなわち、従来ではクリーンベンチの内部と外部とで別々に行われていた作業が、全てクリーンベンチの内部で行われることとなり、作業効率
が向上し、作業時間が短縮される。
【0011】
また、前記区画手段は、前記作業台から垂設された仕切板、前記作業台上に示された区画線および前記作業空間の上面である内上壁から垂下された仕切板のうち、少なくとも一つを設けた構成となっている。
【0012】
このような構成によって、区画手段の具体的な構成を提供することができる。
そして、区画手段が仕切板である場合には、作業空間の区画にともなって、作業空間内の空気の流れを制限することができる。これにより、相対的に清浄度の高い作業空間と、相対的に清浄度の低い作業空間とを分けることができる。さらに、仕切板という特定される部材により作業空間が区画されるため、区画手段を隔てた放射性薬剤、検査試料、作業器具等の、作業者が意図しない移動を防止することができる。
【0013】
また、区画手段が区画線である場合には、作業空間の区画にともなって、作業空間の空気の流れが制限されないために、作業空間全体をほぼ均一な清浄度とすることができる。さらに、区画線という特定の部材を用いない区画手段により作業空間が区画されるため、作業者の意図に応じて作業空間の広さをある程度融通して使用することができる。
【0014】
また、前記仕切板に、前記放射性薬剤、該放射性薬剤より分注された検査試料および作業器具のうち、少なくとも一つを通過させる窓部を形成した構成となっている。
このような構成によって、仕切板を隔てた放射性薬剤、検査試料、作業器具等の移動を、クリーンベンチの外部に出さずに窓部を介して行うことができる。
【0015】
また、前記仕切板は、前記作業台の前部を除いて設けられる構成となっている。
このような構成によって、仕切板を隔てた放射性薬剤、検査試料、作業器具等の移動を、クリーンベンチの外部に出さずに作業台の前部を介して行うことができる。
【0016】
また、前記区画手段は、一つ以上設けられる構成となっている。
このような構成によって、作業空間が二つ以上に区画されることとなり、二つ以上の異なる作業をクリーンベンチの内部で行うことができる。
【0017】
また、前記作業空間は、前記放射性薬剤から検査試料の分注が行われる分注領域と、前記放射性薬剤を取り扱う作業のうち分注以外の作業が行われる追加作業領域とが、前記区画手段によって区画することが可能な構成となっている。
このような構成によって、作業者は、放射性薬剤をクリーンベンチの外部に出さずに分注の作業を行い、分注にひきつづいて分注以外の作業も行うことができる。その結果、放射性薬剤の品質検査の工程以降において、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。また、常に放射性薬剤が放射線遮蔽壁の内側にあるため、作業者の被ばくの虞を減少させることができる。また、細菌等による汚染の虞も低下させることができる。
【0018】
また、前記追加作業領域は、前記放射性薬剤の品質検査作業および前記放射性薬剤を外部へ移送する作業のうち少なくとも一つの作業が行われる構成となっている。
このような構成によって、作業者は、放射性薬剤をクリーンベンチの外部に出さずに品質検査やPET診断室等への移送を行うことができる。その結果、放射性薬剤の品質検査から移送までの工程において、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。また、常に放射性薬剤が放射線遮蔽壁の内側にあるため、作業者の被ばくの虞を減少させることができる。また、細菌等による汚染の虞も低下させることができる。
【0019】
また、前記追加作業領域に、前記放射性薬剤を品質検査する品質検査機器および前記放射性薬剤を外部へ移送する移送手段のうち少なくとも一つが設置される構成となっている。
このような構成によって、放射性薬剤をクリーンベンチの外部に出すことなく、試験項目に対応した品質検査を行ったり、放射性薬剤をPET診断室等に移送したりすることができる。
【0020】
また、前記品質検査機器は、電子天秤、液体クロマトグラフィー、pHメータ、エンドトキシン試験装置およびキュリーメータのうち、少なくとも一つを含んでなる構成となっている。
このような構成によって、放射性薬剤をクリーンベンチの外部に出すことなく、重量試験、純度試験、pH試験、エンドトキシン試験および放射線量測定の少なくとも一つの試験項目を行うことができる。
【0021】
また、前記品質検査機器が複数の構成ユニットから構成される場合に、
前記追加作業領域には少なくとも前記放射性薬剤が直接供される構成ユニットが配され、
前記複数の構成ユニットのうち、前記追加作業領域に配される構成ユニット以外の構成ユニットが、前記筐体の外部に配されることが可能な構成となっている。
このような構成によって、品質検査機器の構成ユニットを追加作業領域の内部と筐体の外部とに分配して設置した場合に、クリーンベンチを小さく製造することができ、製造コストを低減させることができる。
【0022】
また、前記追加作業領域に配される構成ユニットと、前記筐体の外部に配される構成ユニットとが、前記追加作業領域の壁面、作業台および内上壁のうち、少なくとも一つに設けられた貫通孔を介して連絡される構成となっている。
このような構成によって、品質検査機器の構成ユニットを追加作業領域の内部と筐体の外部とに分配して設置した場合に、貫通孔を介してお互いの構成ユニットを連絡させることができる。
【0023】
また、前記キュリーメータは、前記作業台に形成された収容孔に鉛で遮蔽された構造で埋設される構成となっている。
このような構成によって、キュリーメータで放射性薬剤の放射線量を測定する際に、作業空間に存在する他の放射性物質由来の放射線の影響による測定誤差を低減させることができる。また、放射性薬剤を作業台面に沿って移動してキュリーメータにセットすることが可能となるため、より効果的な放射線遮蔽が可能となる。
【0024】
また、前記移送手段は、気送管、コンベアおよびトロッコのうち、いずれか一つを含んでなる構成となっている。
このような構成によって、移送手段の具体的な構成を提供することができる。いずれの移送手段によっても、放射性薬剤をクリーンベンチの外部に出さずにPET診断室等への移送を行うことができる。
なお、追加作業領域に設置される移送手段とは、必ずしも目的地まで連設された移送手段全体を含む必要はなく、その端末のみでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、無菌的な放射性薬剤の取り扱いにおいて、作業者の被ばくを低減させつつ、効率的に作業を行うことできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、本実施形態においては、放射性薬剤取り扱い用のクリーンベンチの一例として、作業空間内において二つの追加作業領域が前面側からみて左右に配され、左側の追加作業領域を品質検査領域として利用し、右側の追加作業領域を品質作業領域(放射線量を測定する領域)および移送作業領域として利用する場合を説明する。
参照する図面において、図1は、本実施形態に係るクリーンベンチの概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1の正面図である。また、図3は、図2の内部構成を示すA-A縦断面図であり、図4は、図2の内部構成を示すB-B縦断面図であり、図5は、図2の内部構成を示すC-C横断面図である。
【0027】
なお、本実施形態において、「ポジトロン標識薬(放射性薬剤)」とは、合成された後に、適宜製剤処理されて無菌のバイアル瓶等に充填されたものを示し、品質検査を受けた後に被検者に投与されるものである。そして、ポジトロン標識薬のうち、特に、ポジトロン標識薬の品質検査のために、バイアル瓶等に充填されたポジトロン標識薬から一部分注されたものを「検査試料」という。
【0028】
図1ないし図4に示すように、クリーンベンチ1は、例えば直方体状の筐体2の内部に形成された作業空間3と、作業空間3の底面である作業台4と、作業空間3に送られる空気を濾過して清浄化するために内上壁11に設置される高性能フィルタ5と、作業空間3に高性能フィルタ5を介して清浄な空気を供給する送風機6とを主に含んで構成される。
【0029】
作業空間3は、前記作業台4と、一対の対向する側壁7,7と、筐体2の背壁8から所定間隔離れて設置される内後壁9と、筐体2の上壁10から所定間隔離れて設置される内上壁11と、放射線遮蔽壁12の前面部12aとにより包囲されて形成される。
【0030】
そして、作業空間3は、前面上方に開口部3aを有し、開口部3aにはガラス扉(シャッタ)13が上下に開閉自在に設置されている。作業者は、ガラス扉13を上方に持ち上げて前壁14の裏面側に収納後、開口部3aから作業空間3内部に腕を挿入し、ポジトロン標識薬の品質検査等の作業を行うことができる。
【0031】
なお、図1および図5に示すように、前記した放射線遮蔽壁12は、前面部12aと、側壁7,7に沿って形成される側面部12b,12bとによって、全体として上面視コ字状に形成されており、クリーンベンチ1の前方だけでなく側方で作業する作業者の被ばく量を低減させることができる。そして、作業者は、主に開口部3aのあるクリーンベンチ1の前方に着座して作業することが多いため、放射線遮蔽効果が充分に満たされる範囲で、放射線遮蔽壁12の側面部12b,12bの厚さを前面部12aの厚さよりも薄く形成してもよい。このように構成することによって、クリーンベンチ1の製造コストを低減させることができる。
また、放射線遮蔽壁12が配置される高さは、作業者の安全性を考慮して、作業中の作業者の胸部および腹部の位置に対応されることが特に好ましい。
【0032】
図3および図4に示すように、作業台4は、底壁16から所定間隔離れて水平に設置されている。そして、図1および図2に示すように、作業台4の上部に、区画手段17である2枚の仕切板17a,17bが、側壁7,7と平行に垂設される。すなわち、仕切板17a,17bは作業空間3の前面視方向に沿って設けられ、仕切板17a,17bによって作業空間3は水平(横)方向に3つに区画される。
【0033】
仕切板17a,17bは、例えば、ステンレス等の、所定の剛性を備えつつ作業中に扱われる放射性物質由来の放射線および作業空間3内の微生物を殺菌するために適宜照射される紫外線によって腐蝕されにくい材料で構成されることが好ましい。また、作業台4の上部に仕切板17a,17bを垂設する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、溶接やねじ等の、慣用の固定手段を用いることができる。
【0034】
そして、仕切板17a,17bによって、作業台4は、図5に示すように、中央作業台41、第一側方作業台42および第二側方作業台43に区画される。また、作業台4の区画にともなって、作業台4上方の作業空間3も、図1および図2に示すように、中央作業空間31、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33に区画される。このように、仕切板17a,17bを用いて作業空間3を区画することによって、例えば、特に高い清浄度を必要とする分注作業等を行う中央作業空間31を、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33に比べて清浄度の高い作業空間3として維持することができる。
なお、区画された前記作業空間31~33は、その空間だけでなく、それぞれを囲う壁面(側壁7、内後壁9、放射線遮蔽壁12、ガラス扉13、仕切板17a,17b等)、作業台4および内上壁11も含むものとする。
【0035】
また、仕切板17a,17bには、開閉可能な窓部(図示せず)を形成し、仕切板17a,17bを隔てたポジトロン標識薬、検査試料、作業器具等の移動を、窓部を介して行う構成としてもよい。あるいは、仕切板17a,17bを作業台4の前部にのみ設けない構成とすることによって、仕切板17a,17bを隔てたポジトロン標識薬、検査試料、作業器具等の移動を作業台4の前部を介して行う構成としてもよい。
このような構成とすることによって、ポジトロン標識薬や検査試料を一旦クリーンベンチ1の外部に取り出すことなく、各作業空間31~33の間で移動させることができる。
【0036】
中央作業空間31は、主に、バイアル瓶等に充填されたポジトロン標識薬から、品質検査用の検査試料の分注が行われる分注領域である。従って、ポジトロン標識薬が充填されたバイアル瓶等の内部に塵埃や微生物が混入しないように、中央作業空間31は、少なくともクラス100(所定粒径の微粒子数が1ft(立法フィート)あたり100個以下)の清浄度に保たれることが好ましい。中央作業空間31を含む作業空間3の清浄度を高めるための詳細な構成については、後記する。
また、中央作業空間31の底面である中央作業台41(図5参照)は、少なくとも平面を確保できれば充分であるが、例えば、ポジトロン標識薬の載置台、分注器具、計量器具、遮蔽部材、検査試料を収容する容器等、分注に必要な簡易な器具が適宜持ち込まれる。また、中央作業空間31では、pH試験紙等を使った簡単な品質検査も行われる場合がある。言い換えると、中央作業台41は一般的なクリーンベンチの作業台に相当するものであって、前記した検査試料の分注作業に用途が限定されるものではない。
【0037】
図1および図2に示すように、第一側方作業空間32は、主に、ポジトロン標識薬(例えば、分注された検査試料)の品質検査が行われる品質検査領域である。もちろん、この第一側方作業空間32に、後記するキュリーメータや放射性薬剤の移送手段を設置してもよいことは言うまでもない。第一側方作業空間32には、実施される品質検査の試験項目に対応した品質検査機器が設置される。例えば、重量試験、純度試験、pH試験およびエンドトキシン試験の試験項目に対応して、それぞれ、電子天秤、液体クロマトグラフィー、pHメータおよびエンドトキシン試験装置(トキシノメータ)が第一側方作業空間32に設置される。なお、品質検査機器の設置方法は、作業台4への載置に限定されるものではなく、第一側方作業空間32に対応する壁面や内上壁11(図3および図4参照)に固定することも含む。また、品質検査機器の設置のために、慣用の固定手段や支持手段を適宜利用できることは言うまでもない。
【0038】
このように、品質検査領域(第一側方作業空間32)を、分注領域(中央作業空間31)と同様にクリーンベンチ1の内部に構成したことで、作業者は、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1の外部に出さずに品質検査を行うことができる。その結果、ポジトロン標識薬の品質検査工程において、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。また、常にポジトロン標識薬が放射線遮蔽壁12の内側にあるため、作業者の被ばくの虞を減少させることができる。
【0039】
なお、品質検査機器が複数の構成ユニットにより構成されている場合、全ての構成ユニットを第一側方作業空間32内に設置する必要はなく、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1の外部に出さずに品質検査を行うことができる範囲で、適宜構成ユニットの配置を変更することができる。
例えば、分析装置を構成する複数の構成ユニットのうち、少なくとも直接ポジトロン標識薬が供される構成ユニットのみを第一側方作業空間32に設置する構成としてもよい。その場合には、その他の構成ユニットはクリーンベンチ1の外部に設置し、壁面、作業台4、内上壁11等に設けられた貫通孔18(図1および図5参照)を介して接続する構成となる。
このとき、第一側方作業空間32の内部に設置する構成ユニットの数を減らせば減らすほど、クリーンベンチ1全体の大きさを小さくすることができ、クリーンベンチ1の製造コストを低減させることができる。
【0040】
図1および図5に示す貫通孔18は、品質検査機器の構成ユニットを第一側方作業空間32の内部とクリーンベンチ1の外部とに分けて設置したときに、それぞれの構成ユニットを連絡させる配線や配管を通すためのものである。貫通孔18に通す配線や配管の種類は、品質検査機器を有効に機能させるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、貫通孔18に通す配線や配管は、電源コード、電気配線、供されたポジトロン標識薬や試薬や廃液が流れるチューブ等である。また、貫通孔18の数も、品質検査機器の数や構成ユニットの数に応じて、適宜変更される。また。貫通孔18を設ける場所も、図1および図5に示した作業台4や側壁7に限定されるものではなく、各構成ユニットの配置等に応じて適宜変更することができる。
【0041】
第二側方作業空間33は、主に、ポジトロン標識薬の放射線量の測定や、PET診断室等へのポジトロン標識薬の移送が行われる領域である。
第二側方作業空間33には、ポジトロン標識薬の放射線量を測定するために、例えば、図4に示すように、キュリーメータ50が設置される。第二側方作業空間33の底面である第二側方作業台43には、有底の収容孔431が形成されており、収容孔431の外周部431aには図示しない放射線遮蔽部材が配置されている。この収容孔431の底部431bにキュリーメータ50が載置されることにより、放射線量の測定中に作業者の被ばくを減らすことができる。すなわち、キュリーメータ50は、第二側方作業台43に形成された収容孔431に埋設される構成となっている。また、このような構成によって、作業空間3に存在する他の放射性物質由来の放射線の影響による測定誤差を低減させることができる。さらに、キュリーメータ50が作業台4よりも低い位置に設けられることによって、ポジトロン標識薬のように大量の放射線物質を含む試料を持ち上げて移動する必要がなくなるので、作業者の被ばくを減らすことができる。
なお、収容孔431に配置される放射線遮蔽部材は、外周部431aだけでなく底部431bに配置されてもよい。
【0042】
このように、ポジトロン標識薬の放射線量の測定が行われる領域(第二側方作業空間33)を、分注領域(中央作業空間31)と同様にクリーンベンチ1の内部に構成したことで、作業者は、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1の外部に出さずに放射線量の測定を行うことができる。その結果、ポジトロン標識薬の品質検査工程において、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。また、常にポジトロン標識薬が放射線遮蔽壁12の内側にあるため、作業者の被ばくの虞を減少させることができる。
【0043】
なお、本来、ポジトロン標識薬の放射線量の測定は、品質検査の試験項目の一つに含まれるものであるが、このように他の試験項目の品質検査が行われる領域(第一側方作業空間32)とは異なる領域(第二側方作業空間33)で放射線量の測定が行われる構成としたことによって、品質検査中のポジトロン標識薬由来の放射線の影響による測定誤差をより低減させることができる。
【0044】
また、第二側方作業空間33には、図5に示すように、ポジトロン標識薬をPET診断室等に移送する移送手段60を設けてもよい。この移送手段60は、例えば、気送管、コンベア、トロッコ等を目的地まで連設することにより実現することができる。
【0045】
このように、ポジトロン標識薬をPET診断室等に移送する移送手段60を備えた領域(第二側方作業空間33)を、分注領域(中央作業空間31)と同様にクリーンベンチ1の内部に構成したことで、作業者は、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1から取り出さずにPET診断室等に移送することができる。その結果、ポジトロン標識薬の品質検査工程(およびPET診断室等への移送工程)において、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。また、常にポジトロン標識薬が放射線遮蔽壁12の内側にあるため、作業者の被ばくの虞を減少させることができる。
【0046】
また、図1に示すように、筐体2の前壁14に、キュリーメータ50や移送手段60を操作する操作パネル14aを設置することが好ましい。なお、操作パネル14aは、図示しない機器制御用の基板やコンピュータに電気的に接続しており、作業者の入力に応じてキュリーメータ50や移送手段60へ制御信号が出力される。このような構成とすることによって、作業者がクリーンベンチ1の前方に着座して作業している間に、あまり体を動かさずにキュリーメータ50や移送手段60を操作することができる。
【0047】
ここで、作業空間3の清浄度を高めるための構成について詳細に説明する。
図3および図4に示すように、高性能フィルタ5は、作業空間3に送られる空気を濾過して清浄化するためのものであって、内上壁11に形成された吹出口11aを封止するように取り付けられている。高性能フィルタ5は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタによって実現することができる。なお、吹出口11aは、少なくとも中央作業空間31に対応する内上壁11に形成されていれば充分であるが、3つの作業空間31~33に対応する内上壁11に跨って形成されていてもよい。また、吹出口11aは、清浄空気を作業空間3の前部にエアカーテン状に吹き出させるために、内上壁11において少なくとも前部を含んで形成されていることが好ましい。
【0048】
送風機6は、筐体2の後方に設けられ、作業空間3に高性能フィルタ5を介して清浄な空気を供給するものである。具体的には、送風機6は、クリーンベンチ1の内部において主に背壁8側に形成された空気の連通路19に設置され、連通路19、作業空間3および中空部20に存在する空気を所定方向に流動させるものである。
【0049】
連通路19は、作業台4、背壁8、奥壁15、底壁16および側壁7,7で囲まれた中空部19aと、内後壁9、背壁8および側壁7,7で囲まれた中空部19bと、上壁10、内上壁11、前壁14および側壁7,7で囲まれた中空部19cとが連通して形成されている。また、作業台4は、上面形成部材4c、下面形成部材4dおよび前部形成部材4eとによって構成されており、内部に中空部20を有している。言い換えると、中空部20は、上面形成部材4c、下面形成部材4d、前部形成部材4e、内後壁9および側壁7,7で囲まれた空間であって、中央作業台41においては前部から後部にかけて形成されており(図3参照)、第一側方作業台42および第二側方作業台43においては主に後部に形成されている(図4参照)。
そして、作業台4の上面形成部材4cには一面に渡って排気口4aが形成されており、作業空間3と中空部20とが連通する構成となっている。なお、中央作業台41における排気口4aは、前記した吹出口11aとともに作業空間3の前部に清浄空気によるエアカーテンを形成させるために、少なくとも前部を含んで設けられていることが好ましい。
また、作業台4の下部形成部材4dの後部にも排気口4fが形成されており、中空部20と連通路19とが連通する構成となっている。排気口4fはプレフィルタ4bで封止されている。
また、作業台4の下方に設けられた奥壁15には空気の吸気口15aが形成され、この吸気口15aはプレフィルタ15bで封止されている。
【0050】
このように構成されたクリーンベンチ1の送風機6が運転されると、空気は、奥壁15に形成された吸気口15aを介して送風機6まで吸引される。そして、送風機6から圧送された空気は連通路19を通って高性能フィルタ5で濾過された後、作業空間3に吹き出される。そして、作業空間3に吹き出された空気は、作業台4の上面形成部材4cに形成された排気口4aを介して作業台4の中空部20に排出される。そして、中空部20に流入した空気は排気口4fを介して連通路19に排出される。そして、連通路19に排出された空気は、送風機6まで吸引された後、前記した経路に従って循環する。
【0051】
なお、前記したように、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33には、所定の機器が常設されるために、中央作業空間31に比べ、空気が滞留しやすく、塵埃が堆積しやすい構成となっている。
そこで、分注領域である中央作業空間31は、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33に比べて高い清浄度が要求されるために、相対的に陽圧であることが好ましい。このように構成することによって、中央作業空間31から第一側方作業空間32および第二側方作業空間33へ、仕切板17に設けられた窓部等を介して空気が流出しうる一方で、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33から中央作業空間31への空気の流入を防止することができる。
なお、各作業空間31~33の気圧の差は、それぞれの作業空間31~33における吹出口11aと排気口4aとの比率を調整することによって容易に実現することができる。
【0052】
<<第一側方作業空間32に関する実施形態例>>
ここで、第一側方作業空間32に品質検査機器として液体クロマトグラフィーを設置する場合の実施形態例について、図面を参照して説明する。図6は、実施形態例のクリーンベンチ1を説明するための図であって、放射線遮蔽壁12の前面部12aを取り外したクリーンベンチ1の正面図である。なお、図6において、液体クロマトグラフィーの各構成ユニットを連絡(接続)する配線や配管は図示を省略している。
一般に、液体クロマトグラフィーは、ポンプ、インジェクタ、カラム、検出器、記録計という複数の構成ユニットを含んで構成される。図6に示すように、クリーンベンチ1の第一側方作業空間32には、インジェクタ321、カラム322および検出器323を設置し、クリーンベンチ1の側方に設置された実験台T上には試薬瓶324、ポンプ325および記録計326を設置し、クリーンベンチ1前部の下方の空間には廃液瓶327を設置する。なお、第一側方作業空間32には、内部を放射性物質が通過する構成ユニットが設置されているが、カラム322や検出器323は、鉛部材等の放射線遮蔽部材で遮蔽することができれば、クリーンベンチ1の外部に設置してもよい。また、廃液瓶327には放射性物質が貯留されるために、鉛部材等の放射線遮蔽部材で囲むことによって遮蔽する。
そして、通常使用される液体クロマトグラフィーと同様に、それぞれの構成要素を所定の配線や配管により連絡させる。このとき、第一側方作業空間32に設置されるインジェクタ321、カラム322および検出器323と、実験台Tに設置された試薬瓶324、ポンプ325および記録計326とは、側壁7に設けられた貫通孔18aを介して接続することができる。また、第一側方作業空間32に設置されるカラム322および検出器323と、廃液瓶327とは、作業台4に設けられた貫通孔18bを介して接続することができる。
なお、品質検査機器の構成ユニットの配置はこの実施形態例に限定されることはなく、本発明の技術思想を満たす範囲で適宜変更することができる。例えば、インジェクタ321のように、特に中央作業空間31の清浄度を低下させない構成ユニットであれば、第一側方作業空間32ではなく中央作業空間31に設置することも可能である。この場合には、作業性がさらに向上することが期待される。
【0053】
<<第二側方作業空間33に関する実施形態例>>
ここで、第二側方作業空間33に移送手段60として気送管が設置される場合の実施形態例について、図面を参照して説明する。
一般的な気送管は、移送対象物を内部に収容した気送子とほぼ同径の配管60a(図6参照)を含んで構成されるものである。この配管60aの一端側は、気送子を送信する送信部であって、他端側は、気送子を受信する受信部である。そして、気送管内部の気圧を制御する気圧制御手段によって、受信部と送信部との配管60a内の気圧に差異を生じさせ、この差圧によって、配管60a内にほぼ密着して挿入されている気送子を移送するものである。
【0054】
そして、本実施形態においては、気送子には移送対象物としてのポジトロン標識薬が収容されている。また、気送管の送信部はクリーンベンチ1内部の第二側方作業空間33に設けられており(図6参照)、受信部はPET診断室等(図示せず)に設けられている。
図6に示すように、第二側方作業空間33に設けられた送信部において、配管60aの末端は開口して挿入口60bが形成されている。この挿入口60bは、ポジトロン標識薬が収容された気送子が挿入されるものである。そして、配管60aは、挿入口60bを基端として第二側方作業空間33内を側壁7に沿って上方に延設されている。配管60aは、さらに、クリーンベンチ1の内上壁11(図6参照)および上壁10を貫通し、クリーンベンチ1が設置される部屋の天井に到達すると、天井の上方を経由して、配管60aの他端側である受信部にまで延設される構成となっている。受信部は前記したように、PET診断室等に設けられている。
【0055】
そして、配管60aには、図示しない気圧制御手段が備えられる。この気圧制御手段は、真空ポンプ、コンプレッサ、排風機等、従来公知のものを利用することができる。また、配管60a内から作業空間3への塵埃等の流入を防ぐために、受信部の配管60a内を送信部に比べて相対的に陰圧に制御することによって、気送子を移送することが好ましい。
なお、クリーンベンチ1の上壁10と、クリーンベンチ1が設置される部屋の天井との間に化粧板を設置することによって、クリーンベンチ1の上部に塵埃が堆積しないようにしてもよい。このような構成とすることによって、作業中に開口部3aから作業空間3に流入する塵埃が減少し、ポジトロン標識薬の汚染を低減させることができる。
【0056】
以上によれば、本実施形態において、次のような効果を得ることができる。
クリーンベンチ1の作業台4に区画手段17を設けたことで、作業空間3を区画し、区画された作業空間3を用途に応じて使い分けることができる。そして、品質検査領域を、分注領域と同様にクリーンベンチ1の内部に構成したことで、作業者は、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1の外部に出さずにクリーンな環境下で品質検査を行うことができる。
【0057】
また、ポジトロン標識薬の放射線量の測定が行われる領域を、分注領域と同様にクリーンベンチ1の内部に構成したことで、作業者は、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1の外部に出さずにクリーンな環境下で放射線量の測定を行うことができる。
【0058】
また、ポジトロン標識薬をPET診断室等に移送する移送手段を備えた領域を、分注領域と同様にクリーンベンチ1の内部に構成したことで、作業者は、ポジトロン標識薬をクリーンベンチ1から取り出さずにクリーンな環境下でPET診断室等に移送することができる。
【0059】
すなわち、ポジトロン標識薬の品質検査工程および移送工程において、各作業が行われる場所を全てクリーンベンチ1の内部としたことで、作業効率を向上させ、作業時間を短縮させ、全ての作業をクリーンな環境下で遂行することができる。また、常にポジトロン標識薬が放射線遮蔽壁12の内側にあるため、作業者の被ばくの虞を減少させることができる。
なお、追加作業領域に設置される移送手段とは、必ずしも目的地まで連設された移送手段全体を含む必要はなく、その端末のみでもよい。
【0060】
また、区画手段17として仕切板17a,17bを用いたことによって、分注領域である中央作業空間31を、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33に比べて高い清浄度で維持することができる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想のおよぶ範囲で様々の変更実施を行うことができる。
【0062】
本実施形態においては、仕切板17a,17bは、作業台4の上部に垂設される構成としたが、内上壁11から垂下させる構成としてもよい。また、作業台4および内上壁11の両方に固定させる構成としてもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、区画された作業空間3を説明するために仕切板17a,17bを用いたが、本発明は、クリーンベンチ1の作業空間3を区画する技術思想に基づいて創作されたものであって、作業空間3を区画することができれば、区画手段17として特に仕切板17a,17bを用いる必要はない。例えば、区画手段17として、描画や刻設によって作業台4に区画線を示すことで、作業台4および作業空間3を区画することができる。ただし、区画手段17として、仕切板17a,17bを用いた方が、分注領域の清浄度をより高く維持できることは前記したとおりである。
【0064】
また、本実施形態においては、作業空間3(および作業台4)を三つに区画したが、少なくとも二つ以上に区画できれば充分である。例えば、作業空間3を二つに区画した場合には、一つは検査試料が分注される作業空間(本実施形態において中央作業空間31に相当する)であって、一つは品質検査、放射線量測定および移送のうち、少なくともいずれか一つ以上の作業が行われる作業空間(本実施形態において第一側方作業空間32および第二側方作業空間33に相当する)とすることができる。この場合においても、検査試料が分注される作業空間の清浄度が、他の作業空間に比べて相対的に高く維持されることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態においては、仕切板17a,17bを側壁7,7と平行に設置し、前面視で水平(横)方向に作業空間3が区画される構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、仕切板17a,17bを作業台4と平行に設置し、前面視で鉛直(縦)方向に作業空間3が区画される構成とすることもできる。なお、この場合には、作業空間3が清浄に保たれるように、高性能フィルタ5、送風機6、連通路19等の空気の流路が適宜変更される。
【0066】
また、本実施形態においては、作業空間3全体が所定の清浄度を満たす構成としたが、少なくとも分注作業が行われる中央作業空間31が所定の清浄度を満たしていれば充分である。従って、作業空間3に清浄空気を供給する吹出口11aおよび作業空間3の空気を排気する排気口4aは、区画された全ての作業空間3に跨って設ける必要はなく、中央作業台41のみに対応する内上壁11および作業台4(中央作業台41)に設ける構成としてもよい。このように構成することによって、少なくとも分注作業が行われる中央作業空間31を清浄な環境に保つことができるため、ポジトロン標識薬に微生物等が混入する虞を低減させるには充分である。
【0067】
また、本実施形態においては、ガラス扉を作業空間31~33の全ての開口部に跨って設置する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。作業者は、中央作業空間31から仕切板17に設けられる窓部等を介して、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33における作業を行うことができる。すなわち、第一側方作業空間32および第二側方作業空間33においては、開口部およびガラス扉は必ずしも必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係るクリーンベンチの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るクリーンベンチの概略構成を示す正面図である。
【図3】図2のA-A縦断面図である
【図4】図2のB-B縦断面図である
【図5】図2のC-C横断面図である。
【図6】本実施形態に係るクリーンベンチの実施形態例を説明するための図であって、放射線遮蔽壁の前面部を取り外した場合の正面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 クリーンベンチ
2 筐体
3 作業空間
3a 開口部
4 作業台
4a,4f 排気孔
4b,15b プレフィルタ
5 高性能フィルタ
6 送風機
7 側壁
8 背壁
9 内後壁
10 上壁
11 内上壁
11a 吹出口
12 放射線遮蔽壁
13 ガラス扉(シャッタ)
14 前壁
14a 操作パネル
15 奥壁
15a 吸気孔
16 底壁
17 区画手段
17a,17b 仕切板(区画手段)
18 貫通孔
19 連通路
19a,19b,19c,20 中空部
31 中央作業空間(分注領域)
32 第一側方作業空間(追加作業領域)
33 第二側方作業空間(追加作業領域)
41 中央作業台
42 第一側方作業台
43 第二側方作業台
431 収容孔
431a 外周部
431b 底部
50 キュリーメータ
60 移送手段
60a 配管
60b 挿入口
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5