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明細書 :シンクロトロン加速器の制御方法、シンクロトロン加速器、並びに、シンクロトロン加速器を制御するためのコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4742328号 (P4742328)
公開番号 特開2008-159284 (P2008-159284A)
登録日 平成23年5月20日(2011.5.20)
発行日 平成23年8月10日(2011.8.10)
公開日 平成20年7月10日(2008.7.10)
発明の名称または考案の名称 シンクロトロン加速器の制御方法、シンクロトロン加速器、並びに、シンクロトロン加速器を制御するためのコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
国際特許分類 H05H  13/04        (2006.01)
FI H05H 13/04 Q
H05H 13/04 M
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2006-343490 (P2006-343490)
出願日 平成18年12月20日(2006.12.20)
審査請求日 平成21年10月20日(2009.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】古川 卓司
【氏名】佐藤 眞二
【氏名】野田 耕司
【氏名】取越 正巳
個別代理人の代理人 【識別番号】100080458、【弁理士】、【氏名又は名称】高矢 諭
【識別番号】100076129、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 圭佑
【識別番号】100089015、【弁理士】、【氏名又は名称】牧野 剛博
審査官 【審査官】木下 忠
参考文献・文献 特開平05-109499(JP,A)
特開2003-282300(JP,A)
特開平07-014699(JP,A)
特開平11-176596(JP,A)
調査した分野 H05H3/00-15/00
G21K5/04
特許請求の範囲 【請求項1】
荷電粒子ビームを出射するシンクロトロン加速器の制御方法であって、
前記荷電粒子ビームの加速器軌道上のシンクロビーム軸と前記加速器からの出射ビーム取り出し位置において直交する平面と、前記シンクロビーム軸及び前記出射ビームの軸を含む平面との交線がなす軸方向における出射ビームのずれを検出し、
該検出された出射ビームの軸方向のずれに基づき、前記加速器内に設けられた電磁石により前記出射ビームの軸方向のずれを補正することを特徴とするシンクロトロン加速器の制御方法。
【請求項2】
前記調整を、前記加速器内に設けられた四極電磁石により行うことを特徴とする請求項1に記載のシンクロトロン加速器の制御方法。
【請求項3】
荷電粒子ビームを出射するシンクロトロン加速器であって、
前記荷電粒子ビームの加速器軌道上のシンクロビーム軸と前記加速器からの出射ビーム取り出し位置において直交する平面と、前記シンクロビーム軸及び前記出射ビームの軸を含む平面との交線がなす軸方向における出射ビームのずれを検出するビーム検出手段と、
前記加速器内に設けられた電磁石と、
前記ビーム検出手段により検出された出射ビームの軸方向のずれに基づき、前記電磁石により前記出射ビームの軸方向のずれを補正する手段と、
を備えたことを特徴とするシンクロトロン加速器。
【請求項4】
前記電磁石が四極電磁石であることを特徴とする請求項3に記載のシンクロトロン加速器。
【請求項5】
前記ビーム検出手段がビームプロファイルモニタであることを特徴とする請求項3又は4に記載のシンクロトロン加速器。
【請求項6】
シンクロトロン加速器から出射される荷電粒子ビームを制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記荷電粒子ビームの加速器軌道上のシンクロビーム軸と前記加速器からの出射ビーム取り出し位置において直交する平面と、前記シンクロビーム軸及び前記出射ビームの軸を含む平面との交線がなす軸方向における出射ビームのずれを得るステップと、
該出射ビームの軸方向のずれに基づき、前記加速器内に設けられた電磁石により前記出射ビームの軸方向のずれを補正するステップと、
を含むことを特徴とするシンクロトロン加速器を制御するためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記請求項6に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクロトロン加速器の制御方法、シンクロトロン加速器、並びに、シンクロトロン加速器を制御するためのコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。特に、様々な影響を受けて変化するビーム輸送系内でのビームのずれを、簡易な設備により補正するのに好適な、シンクロトロン加速器の制御方法、シンクロトロン加速器、並びに、シンクロトロン加速器を制御するためのコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図1に示される如く、がん治療等のための粒子線照射システム10において、シンクロトロン加速器12から照射装置14に供給される荷電粒子ビーム(以下、ビームと称する)2の軸に、ビーム輸送系20の各構成要素の形状又は寸法公差等により、若干のずれが生じる。このために、ビーム輸送系20内に設置されている多数のステアリング電磁石22、四極電磁石24、及び、ビームモニタ(ビーム位置モニタ)26、28とを用いてビーム軸を補正していた。例えば、特許文献1には、ビームの通過位置を検出する第1ビーム位置モニタ及び第2ビーム位置モニタと、第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石とを設けた粒子線照射システムが記載されている。
【0003】

【特許文献1】特開2003-282300号公報(段落[0008]、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビームは一旦補正しても時間と共にずれが発生するので、その度に補正する必要がある。特に、特許文献1に記載の粒子線照射システム10のように、ビーム輸送系20における多数のステアリング電磁石22やビームモニタ26によりシンクロトロン加速器12から出射されたビームを補正する方法では、補正に多数の電磁石の調整が必要となるので調整方法も複雑となり、維持管理の手間やコストが増えるといった問題があった。
【0005】
又、粒子線照射システム10では、多数の電磁石を時間的に変化させてシステムを運転するが、これらの磁場を完全に再現するように制御することは実質上不可能である。例えば、時間的に変化する磁場を10-5台で測定し、かつフィードバックなどの制御を多数の電磁石に対して行うのは現実的でない。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、様々な影響を受けて変化するビーム輸送系内でのビームのずれを、簡易な設備により補正することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、荷電粒子ビームを出射するシンクロトロン加速器の制御方法であって、前記荷電粒子ビームの加速器軌道上のシンクロビーム軸と前記加速器からの出射ビーム取り出し位置において直交する平面と、前記シンクロビーム軸及び前記出射ビームの軸を含む平面との交線がなす軸方向における出射ビームのずれを検出し、該検出された出射ビームの軸方向のずれに基づき、前記加速器内に設けられた電磁石により前記出射ビームの軸方向のずれを補正することで、前記課題を解決したものである。
【0008】
本発明は、又、荷電粒子ビームを出射するシンクロトロン加速器であって、前記荷電粒子ビームの加速器軌道上のシンクロビーム軸と前記加速器からの出射ビーム取り出し位置において直交する平面と、前記シンクロビーム軸及び前記出射ビームの軸を含む平面との交線がなす軸方向における出射ビームのずれを検出するビーム検出手段と、前記加速器内に設けられた電磁石と、前記ビーム検出手段により検出された出射ビームの軸方向のずれに基づき、前記電磁石により前記出射ビームの軸方向のずれを補正する手段と、を備えたことで、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明は、又、シンクロトロン加速器から出射される荷電粒子ビームを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記荷電粒子ビームの加速器軌道上のシンクロビーム軸と前記加速器からの出射ビーム取り出し位置において直交する平面と、前記シンクロビーム軸及び前記出射ビームの軸を含む平面との交線がなす軸方向における出射ビームのずれを得るステップと、該出射ビームの軸方向のずれに基づき、前記加速器内に設けられた電磁石により前記出射ビームの軸方向のずれを補正するステップと、を含むことで、前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明は、又、前記コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供するものである。
【0011】
前記調整を、前記加速器内に設けられた四極電磁石により行うことができる。
【0012】
又、前記電磁石は四極電磁石とすることができる。
【0013】
又、前記出射ビームの軸方向のずれをビームプロファイルモニタにより検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加速器のベータトロン振動数を補正することにより、出射ビームのずれを補正するようにしたので、一旦ビームを補正しておくと、その後ビームのずれが発生した場合に、ビーム輸送系内のステアリング電磁石等が無くても、加速器内の電磁石の調整のみで元の補正後の状態に復元することがきるので、維持管理の手間やコストの軽減を図ることができる。
【0015】
又、ビーム輸送系内のステアリング電磁石等が不要になり、簡易な設備によりビームを補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図2は、本発明に係る実施形態の粒子線照射システムを示す構成図である。
【0018】
図2に示される如く、粒子線照射システム30は、ビーム2を加速して出射するシンクロトロン加速器(以下、加速器と称する)40と、該加速器40から出射されたビーム2を輸送するビーム輸送系50と、該ビーム輸送系50を経たビーム2を患者(照射対象)4の腫瘍部6に照射する照射装置52と、ビーム2の位置を制御するビーム制御装置60等から構成されるビーム制御システム70とを備えている。
【0019】
前記加速器40は、ビーム2を加速する高周波加速空洞42と、ビーム2を偏向する偏向電磁石44と、ビーム2を収束・発散させる四極電磁石46とを備え、ビーム2の荷電粒子を加速器40軌道上のシンクロビーム軸A1で加速させ、出射ビーム軸A2方向に出射させるようになっている。前記四極電磁石46は、図3に示される如く、シンクロビーム軸A1に向いた鉄芯等に巻かれたコイル48を有し、シンクロビーム軸A1に対して対向した磁極同士が、X軸及びZ軸に対してほぼ45°になるように設置されている。ここで、Xは加速器40のビーム軌道面上においてシンクロビーム軸A1に対して垂直方向の座標、Zは鉛直方向の座標である。
【0020】
前記ビーム輸送系50は、加速器40から出射されたビーム2のビーム中心位置等のビーム位置から出射ビームのずれを検出するビームモニタ54を備えている。なお、図1に示したステアリング電磁石22及びその下流に対になってあるビームモニタ26は設置されていない。
【0021】
前記ビームモニタ54は、オンラインモニタリング可能な準非破壊型ビームプロファイルモニタで、図4に例示される如く、内部にワイヤ52Aがほぼ等間隔に張られ、ビーム2を構成する荷電粒子の位置を検出するマルチワイヤ比例計数管である。
【0022】
前記ビーム制御装置60は、図2に示した如く、ビームモニタ54により検出されたビーム位置の情報に基づき、加速器40内に設けた四極電磁石46により、ビーム輸送系50におけるビーム2のずれを補正するようになっている。具体的には、四極電磁石電源62を介して、四極電磁石46のコイル48に流す電磁石電流を変えて、電磁石間隙の磁場(ビームが通るところの磁場)を制御するようになっている。
【0023】
又、ビーム制御装置60は、コンピュータのCPU60Aと制御用のプログラム等を保持するメモリ60Bと、記憶媒体60Cとを備えている。
【0024】
本実施形態のビーム制御システム70は、前記ビームモニタ54と、ビーム制御装置60と、四極電磁石電源62と、四極電磁石46とを備え、簡易にビームのずれを補正するようになっている。
【0025】
図5は、前記シンクロビーム軸A1、出射ビーム軸A2方向等の位置関係を示した図である。本発明では、ビーム2の加速器40軌道上のシンクロビーム軸A1と、加速器40からの出射ビーム取り出し位置Cにおいて直交する平面P1と、前記出射ビームの軸A2と出射ビーム取り出し位置Cにおけるシンクロビーム軸A1とを含む平面P2との交線がなす軸A3方向のベータトロン振動数を、シンクロビーム軸A1上で調整することにより、出射ビームの軸A2方向のずれを補正するようになっている。軸A3は、出射ビーム取り出し位置CにおけるX軸である。
【0026】
なお、図5では、シンクロビーム軸A1全体が平面P2に含まれているが、本発明は、これに限定されず、出射ビーム取り出し位置Cで交差する以外は、シンクロビーム軸A1が平面P2に含まれない場合も含む。
【0027】
次に、図6に基づき、前記ビーム制御システム70におけるビームのずれの補正方法について説明する。
【0028】
まず、ビームモニタ54により加速器40から出射されたビーム2のビーム位置、例えばビーム2の中心位置を検出し、ビーム位置情報とする。そして、このビーム位置情報をビーム制御装置60に送る。
【0029】
次に、ビーム制御装置60において、検出したビーム位置情報に基づき、四極電磁石46により前記軸A3方向のベータトロン振動数を調整するための操作量を算出する。ここで、粒子線照射システム30におけるビームのエネルギー情報や、ビーム輸送系50が複数ある場合のビームコース情報や、ビーム輸送系50におけるビームモニタ54の設置位置での光学系等の影響も加味して、CPU60Aにおいて、前記操作量が算出される。
【0030】
この算出された操作量に基づき、ビーム位置が所望の値になるように、四極電磁石46の各コイル48に流す電磁石電流を、四極電磁石電源62を介して制御し、加速器40のベータトロン振動数を調整し、ビーム輸送系50内でのビーム位置を補正する。
【0031】
ここで、図7に示される如く、ベータトロン振動数ΔQとビーム出射角ΔX’とは相関があるので、ベータトロン振動数を調整することで、ビーム位置を補正できる。ここで、X’は、dX/dsで、ビーム軌道の傾きを表わし、sは基準点からビームの軌道方向に沿った長さである。
【0032】
次に、本発明の原理について説明する。
【0033】
従来は、ビーム位置のずれの原因が不明であったため、図1に示した如く、患者4の腫瘍部6におけるアイソセンタ(照射中心位置)でのビーム位置が変化しないように、ビーム輸送系20内にステアリング電磁石22を多数設置し、補正を行っていた。
【0034】
しかし、本発明者らは、鋭意研究の結果、加速器12、40内でのベータトロン振動数の微妙な変化が、ビーム輸送系20、50におけるビーム位置のずれに大きく影響を及ぼしていることを見出した。
【0035】
一般的に、電磁石は、温度変化やヒステリシスなどの影響によって、同じ電流値であっても異なる磁場を発生させてしまう。この磁場の微小変化が、ベータトロン振動数の微小変化をもたらす。特に、シンクロトロン加速器からの遅い取り出し法(ビームのパルス幅が広いビーム制御)において、ビーム2の出射角がベータトロン振動数の微小変化の影響を大きく受けてしまう。
【0036】
具体的には、図7に示した如く、ビーム出射角ΔX’は、ベータトロン振動数ΔQに依存し、図8に示される如く、ベータトロン振動数の微小変化によって、図8中矢印Aで示すように荷電粒子群がずれ、ビーム2の出射角度が変化してしまう。これにより、図2に示した如く、ビーム輸送系50内や腫瘍部6のアイソセンタでのビーム位置が変化してしまう。ここで、図8中のESDgapとは、加速器40の出射口付近に設けられた静電デフレクタの電極間隙であり、おおよそ13mmである。
【0037】
そして、加速器40内の四極電磁石46は、通常、荷電粒子ビームに対するレンズ用として使用されるが、四極電磁石46内の各コイル48を流れる電流の量やバランスを変化させ、ベータトロン振動を調整することで、ビーム輸送系50内のビーム位置のずれを補正できることを見出した。
【0038】
以上の原理により、粒子線照射システム30を構成したので、従来の粒子線照射システム10は、図1に示した如く、多数のステアリング電磁石22や、ビームモニタ26を有していたが、本発明に係る実施形態の粒子線照射システム30は、図2に示した如く、ビーム輸送系50におけるステアリング電磁石と、これと対になったビームモニタ26とが不要となり、ビームモニタ54を備えたビーム制御システム70によりビーム位置を補正することができる。
【0039】
又、多数のステアリング電磁石等が不要になったので、粒子線照射システム30を小型化することができる。又、多数のステアリング電磁石等の制御対象が減ったため、制御がしやすく、しかも、安定した制御を図ることができる。
【0040】
なお、本実施形態のように四極電磁石46の他に多極電磁石等といった加速器40内に設けられた電磁石により、ビーム位置を補正してもよい。
【0041】
又、ビームモニタ54として、マルチワイヤ比例計数管の他に、ビーム軌道上に出入れ可能な蛍光スクリーンに発生した蛍光をCCDカメラでモニタする装置でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の粒子線照射システムを示す構成図
【図2】本発明に係る実施形態の粒子線照射システムを示す構成図
【図3】前記粒子線照射システムの加速器の四極電磁石を示す断面図
【図4】前記粒子線照射システムのビームモニタの例を示す斜視図
【図5】前記加速器における軌道上の軸、出射ビームの軸等の関係を示す図
【図6】前記実施形態のビーム制御システムの構成を示す説明図
【図7】本発明の原理を説明するための、ビーム出射角のベータトロン振動数依存性を示す線図
【図8】同じく位相空間上での取り出しビームを示すプロット図
【符号の説明】
【0043】
2…荷電粒子ビーム
30…粒子線照射システム
40…加速器
44、46…電磁石
54…ビームモニタ
60…ビーム制御装置
60A…CPU(コンピュータ)
60B…メモリ(プログラム)
60C…記憶媒体
62…四極電磁石電源
70…ビーム制御システム
A1…シンクロビーム軸
A2…出射ビーム軸
A3…軸
C…出射ビーム取り出し位置
P1、P2…平面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7