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明細書 :光触媒酸化チタン膜およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5273700号 (P5273700)
公開番号 特開2008-297184 (P2008-297184A)
登録日 平成25年5月24日(2013.5.24)
発行日 平成25年8月28日(2013.8.28)
公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
発明の名称または考案の名称 光触媒酸化チタン膜およびその製造方法
国際特許分類 C01G  23/07        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01D  53/86        (2006.01)
C23C  14/00        (2006.01)
C23C  14/08        (2006.01)
C23C  24/08        (2006.01)
FI C01G 23/07
B01J 35/02 J
B01J 37/02 301A
B01J 37/02 301C
B01D 53/36 J
C23C 14/00 Z
C23C 14/08 E
C23C 24/08 C
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2007-147634 (P2007-147634)
出願日 平成19年6月4日(2007.6.4)
審査請求日 平成22年6月1日(2010.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】福本 昌宏
【氏名】山田 基宏
審査官 【審査官】山田 貴之
参考文献・文献 特開平10-194740(JP,A)
特開平09-225302(JP,A)
特開2003-261330(JP,A)
特開2005-218957(JP,A)
調査した分野 C01G 1/00-23/08
B01D 53/86,53/94
B01J 21/00-38/74
Science Direct
JSTPlus(JDreamII)


特許請求の範囲 【請求項1】
アナターゼ型二酸化チタン粒子を高温・高圧で吹きつけることにより成膜する光触媒酸化チタン膜の製造方法、において、前記、アナターゼ型ニ酸化チタン粒子が、一次粒径が0.1nm~1μmのアナターゼ型二酸チタンを凝集させた粒径1μm~100μmの二次粒子であり、かつ高温・高圧ガス発生部からの供給ガス圧力が0.3MPa~1.0MPaであり、かつ高温・高圧ガス発生部からの供給ガスの温度が200℃以上800℃以下、であることを特徴とする製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の排気ガス等に含まれる有害物質である窒素酸化物の分解や防汚、防食特性が要求される高速道路の防音壁、建築物外壁および橋梁などの被覆に好適な光触媒酸化チタン膜、それを被覆した部材及びそれらの製造方法にかかわるものである。

【背景技術】
【0002】
光触媒酸化チタンはその有害物質除去、防汚、殺菌、防食に優れる物性を持つため、従来から建造物の外壁などへの表面塗布に用いられている。光触媒酸化チタンはこのように優れた物性を有する材料であることから、より幅広く利用するために、安価で大面積への厚膜形成技術の確立が要求されている。
【0003】
これまでに報告されている光触媒酸化チタン膜作製技術としては、化学的手法としてチタンのアルコキシドを溶媒中に溶解させ、酸化雰囲気中で焼成する方法(例えば特許文献1参照)や二酸化チタン粉末のゾルから成膜する方法(例えば特許文献2参照)があり、建築物の外壁への塗布などで利用されている。
【0004】
物理的手法としてスパッタリングによる皮膜形成(例えば特許文献3参照)、溶射法による成膜(例えば特許文献4、非特許文献1参照)、エアロゾルデポジション法による成膜(例えば特許文献5参照)があるが実用的にはほとんど用いられていない。コールドスプレー法による成膜の報告(例えば非特許文献2参照)もあるが実用的な膜を得るには至っていない。
【0005】

【特許文献1】特許2849177
【特許文献2】特許2900307
【特許文献3】特許2995250
【特許文献4】特許公開公報 特開平11-47609
【特許文献5】特許公開公報 特開2006-130703
【非特許文献1】福本、鄭、鈴木、熱田、安井、溶接学会論文集、第22巻、第1号、 47-52、(2004)
【非特許文献2】C.-J. Li, G.-J. Yang, X.-C. Huang, W.-Y. Li and A. Ohmori: Formation of TiO2 photocatalyst through cold spraying, Proceedings of International Thermal Spray Conference 2004, CD
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶媒を用いる方法やゾルを用いる方法では廃液が出ることから環境負荷が大きい、結合剤の種類によっては経年劣化するという問題がある。スパッタリングは制御雰囲気で成膜するため、対象物の寸法が制限されることや薄膜しかできないという問題がある。溶射法では大面積に厚膜の作製が可能であるが、熱影響によってアナターゼ型二酸化チタンからより光触媒特性の低いルチル型二酸化チタンに相変態するという問題がある。エアロゾルデポジション法は非加熱であるが減圧チャンバー内での成膜になるため、対象物の寸法が制限されるという問題がある。コールドスプレー法は軟質金属粒子を塑性変形させて付着させる技術であるため、硬脆材料である酸化チタンの成膜では厚膜の作製は従来困難であった。
【0007】
本発明の目的は、光触媒酸化チタン膜作製において新規な方法を提案することにより、アナターゼ型二酸化チタンのみからなる厚膜及び厚膜を被覆した部材を提供することと同時に、その簡便な製造方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述のような現状に鑑み、鋭意検討を行った結果、従来法に対して比較的低圧力域である0.3~1.0MPaのガスを高圧ガス発生部より発生させ、ガス加熱ヒーターにより200℃~800℃程度にガスを過熱し、ガス加速部において加速したガス流に原料粉末を投入し、原料粉末を衝突、成膜するコールドスプレー法において、その原料粉末として、一次粒径が0.1nm~1μmのアナターゼ型二酸化チタンを凝集させた粒径1μm~100μmの二次粒子を用いることによってアナターゼ型二酸化チタンのみからなる皮膜が得られることを見出した。さらに本発明で得られたアナターゼ型二酸化チタンを基材上に被覆した部材は、空気中の窒素酸化物分解能力に優れ、極めて高特性な光触媒酸化チタン膜であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明の光触媒酸化チタン膜はコールドスプレー法によって成膜してなる厚膜であり、従来のスパッタ法やCVD法で得られる薄膜とは異なるものである。その膜厚は1μm以上3mm以下が好ましく、さらに、100μm以上1mm以下であることが好ましい。1μmより薄い膜では摩耗等による耐久性に問題があり、一方3mmを超えてつけることは、本発明の膜を用いる技術領域では一般的に要求されない上に、経済的でない。
【0010】
本発明の光触媒酸化チタン膜はアナターゼ型二酸化チタンのみからなる膜であり、他の成分は含有しない。ただし、これらの原料中に不純物が存在し、その不純物に起因して本発明の光触媒酸化チタン皮膜と同等の性能を有するものは、本発明から除外されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光触媒酸化チタン膜は、アナターゼ型二酸化チタンのみからなる膜であるため、高い光触媒特性を有し、部材に被覆した場合、高い窒素酸化物分解特性を発揮できる。
本発明の光触媒酸化チタン膜の製造方法は、コールドスプレー法だけでアナターゼ型二酸化チタンのみからなる膜が製造可能であるため、製造工程が簡便である。
【0012】
本発明の光触媒酸化チタン膜の組織構造は特に限定されず、緻密な膜から多孔質の膜まであらゆるモルホロジーをとり得る。
【0013】
さらに本発明は、上述の光触媒酸化チタン膜を基材の上に形成した部材を提供するものである。部材は特に限定されず、金属、セラミックス、プラスチック等が利用できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示す装置の一例により本発明のアナターゼ型二酸化チタンのみからなる光触媒酸化チタン膜の製造方法を説明する。
【0015】
本発明の方法は、高温・高圧ガスを発生させる部位、ガス加速部位、基材を保持する部位を有する装置に基材を装着して成膜する。
【0016】
本発明の成膜条件の高温・高圧ガス発生部におけるガス温度としては200℃以上、800℃以下であることを特徴とする。これより温度が低い場合は粒子が基材に付着せず、温度が高い場合はアナターゼ型二酸化チタンからより光触媒特性の低いルチル型二酸化チタンに相変態する上に、経済的でない。
【0017】
本発明の成膜条件の高温・高圧ガス発生部におけるガス圧力としては0.3MPa~1.0MPaであることを特徴とする。これより圧力が低い場合は粒子が十分に加速されず、基材に付着せず、圧力が高い場合は基材表面近傍で発生する衝撃波によって粒子が基材に衝突しない。
【0018】
本発明で用いるガス加速部位には加速ノズルを用いるが、その形状や構造は特に限定されるものではない。
【0019】
本発明で用いる光触媒酸化チタン膜を形成する基材は特に限定しないが、例えばステンレスや炭素鋼等の金属基材、グラファイト、石英、セラミックス、プラスチック等を図1の基材108として用いることができる。用いる基材は光触媒酸化チタン膜との密着性を向上するために、表面をブラスト法等により粗くした後、基材ホルダー109に装着することが好ましい。
【0020】
本発明のコールドスプレー法は高温ガスを利用するものである。高温ガスの発生方法は特に指定しないが、高周波、電気炉等によって生成することが可能である。
【0021】
本発明のコールドスプレー法は高圧ガスを利用するものである。高圧ガスの発生方法は特に指定しないが、コンプレッサー、高圧ガスボンベ等によって生成することが可能である。
【0022】
本発明の溶射における基材の位置は、高温・高圧ガス流に曝される位置、すなわち光触媒酸化チタン膜を形成する部分が高温・高圧ガス流に接触する位置であれば良い。基材は固定されていても良いが、基材108を上下左右に移動させて、基材全体に高温・高圧ガス流に曝し、均一成膜することが好ましい。この基材の移動は、成膜部位に高温・高圧ガス流が接触する条件であれば良く、例えば図1の成膜距離106で5~100mmが維持できる範囲として例示できる。
【0023】
本発明で用いるガス種は特に限定しないが、例えば圧縮空気、窒素、ヘリウム等を用いることができる。特にヘリウムを用いるとガス流がより高速となるため、好ましい。
【0024】
本発明の方法は、高温・高圧ガス流中にアナターゼ型二酸化チタン粉末を投入することによって光触媒酸化チタン膜を形成する。投入するアナターゼ型二酸化チタン粉末としては、一次粒径が0.1nm~1μmのアナターゼ型二酸化チタン粒子を凝集させた粒径1μm~100μmの二次粒子を用いることを特徴とする。光触媒酸化チタン粉末の平均粒径の測定方法は、一般的な粒度測定装置、例えば光透過型の粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0025】
本発明では粉末の投入部は特に限定しない。図1は、アナターゼ型二酸化チタン粉末を加速ノズル部分に供給する方法を例示している。粉末供給器109にキャリアガス110を導入し、アナターゼ型二酸化チタン粉末を供給し、高温・高圧ガス流中に投入するが、この時のアナターゼ型二酸化チタンの供給速度は均一であることが好ましい。

【実施例1】
【0026】
図1に示す装置を用い、鉄鋼(SS400)基材上に光触媒酸化チタン膜を成膜した。ブラスト処理し表面を粗面化した100×50×2mmのSS400基材108を、基材ホルダー109に装着した。成膜距離106は10mmに予め調整した。高圧ガス発生部101としてガスボンベを使用し、ガス種としてHeを使用した。ガス圧力は0.6MPaに調整し、ヒーター102による加熱を行わず、室温で行った。ガス加速部位105には先細末広円筒形状の加速ノズルを使用した。SS400基材108は20mm/秒の速度で上下左右に動かし、基材101に均一に溶射膜を堆積させた。
【0027】
次に、粉末供給器110にテクノサーブ社製微粉末供給器を用い、圧縮空気を1L/分の流量でキャリアガス111として導入し、平均粒径20μmのアナターゼ型二酸化チタン凝集粉末を約10g/分で高温・高圧ガス流中に供給した。上記条件で基材を移動させながら成膜を繰り返し、2層の成膜層を堆積させた。
【0028】
得られた皮膜は厚み約30μmで、供給粉末の堆積率は約10%であった。エックス線回折により結晶構造を分析したところアナターゼ型二酸化チタンのピークのみが観察された。
【0029】
得られた皮膜を切断し、断面を研磨して電子顕微鏡で観察した像を図2に示す。緻密な膜組織が形成されている様子がわかる。

【実施例2】
【0030】
ガス温度を400℃とした以外は、実施例1と同様の方法で皮膜を作製した。
【0031】
得られた皮膜は厚み約200μmで、供給粉末の堆積率は約25%であった。エックス線回折により結晶構造を分析したところアナターゼ型二酸化チタンのピークのみが観察された。また、皮膜の断面観察を行った結果、実施例1と同様に緻密な膜となっていた。

【0032】
(比較例)
原料粉末として凝集させていない粒径180nmのアナターゼ型二酸化チタン粉末を用いた以外は実施例1と同様の方法で皮膜を作製した。
【0033】
若干の粒子付着はみられたが、皮膜形成には至らなかった。

【実施例3】
【0034】
実施例1、2で作製した皮膜の光触媒特性を窒素酸化物ガスの除去率で測定した。測定器にはボンベから供給される100ppmのNOガスを空気と混合した1ppmの模擬汚染空気を3~4L/分の流量で連続的に流入させ、同時に測定器の上部より内部の皮膜表面へブラックライトによる紫外線を照射し、光触媒反応を発現させ、反応後の窒素酸化物濃度を測定した。除去率は実施例1の皮膜で約90%、実施例2の皮膜で約80%であった。アナターゼ型二酸化チタンのみからなる本発明の実施例では高い窒素酸化物ガス除去特性が得られた。

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は屋内ならびに屋外の構造物等への光触媒酸化チタン皮膜形成手法としての利用が可能である。

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明における光触媒膜を製造するためのコールドスプレー装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の手法で作製した皮膜断面の電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0037】
101: 高圧ガス発生部
102: ガス加熱用ヒーター
103: ガス温度センサー
104: ガス圧力センサー
105: ガス加速部位
106: 成膜距離
107: 皮膜
108: 基材
109: 基材保持部
110: 粉末供給器
111: キャリアガス
図面
【図1】
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【図2】
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