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明細書 :光学活性アルコール類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3159661号 (P3159661)
公開番号 特開平10-236986 (P1998-236986A)
登録日 平成13年2月16日(2001.2.16)
発行日 平成13年4月23日(2001.4.23)
公開日 平成10年9月8日(1998.9.8)
発明の名称または考案の名称 光学活性アルコール類の製造方法
国際特許分類 C07B 41/02      
B01J 31/22      
B01J 31/28      
C07B 53/00      
C07B 61/00      
C07C 29/136     
C07C 33/042     
C07C271/18      
C07F  7/08      
C07M  7:00      
FI C07B 41/02 Z
B01J 31/22
B01J 31/28
C07B 53/00
C07B 61/00
C07C 29/136
C07C 33/042
C07C 271/18
C07F 7/08
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願平09-038241 (P1997-038241)
出願日 平成9年2月21日(1997.2.21)
審判番号 不服 1999-009621(P1999-009621/J1)
審査請求日 平成9年4月8日(1997.4.8)
審判請求日 平成11年6月9日(1999.6.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】碇屋 隆雄
【氏名】松村 和彦
【氏名】橋口 昌平
【氏名】野依 良治
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
参考文献・文献 特開 平8-225466(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
アセチレン結合を持つカルボニル化合物を、遷移金属錯体と塩基と光学活性含窒素化合物の三成分系触媒の存在下、あるいはこれら光学活性含窒素化合物を配位子とする不斉金属錯体と塩基とからなる二成分系触媒の存在下、または遷移金属錯体とこれら光学活性含窒素化合物および塩基とから形成される不斉金属錯体のみからなる触媒の存在下に、水素供与性の有機または無機化合物の存在下に水素移動型不斉還元してアセチレン結合を持つ光学活性アルコール類を製造することを特徴とする光学活性アルコール類の製造方法。

【請求項2】
次の一般式(I)
【化1】
JP0003159661B2_000002t.gif(式中R1 ,R2 は、同じかもしくは異なる基であり、置換基を有してもよい芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基、置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状または環状炭化水素基、もしくは置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状または環状炭化水素基および芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基から選択される1種以上の置換基を有するシリル基、または異種原子を含む複素単環または複素多環式基を示す。)で表されるカルボニル化合物を不斉還元し、一般式(II)
【化2】
JP0003159661B2_000003t.gif(R1 およびR2 は上記と同じ有機基を示す)で表される光学活性アルコール類を製造することを特徴とする請求項1記載の方法。

【請求項3】
遷移金属錯体が第VIII族金属の金属錯体である請求項1または2記載の方法。

【請求項4】
塩基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、あるいはそれらの塩もしくは4級アンモニウム塩である請求項1または2記載の方法。

【請求項5】
光学活性含窒素化合物が光学活性アミン誘導体である請求項1または2記載の方法。

【請求項6】
水素供与性の有機、または無機化合物がアルコール化合物、炭化水素化合物、複素環化合物、ギ酸、ギ酸塩、ヒドロキノンあるいは亜リン酸である請求項1または2記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、光学活性アルコール類の製造方法に関するものである。さらに詳しくはこの出願の発明は、医薬品および生理活性物質の合成中間体や、液晶材料等の各種用途において有用な分子中にアセチレン結合を持つ光学活性アルコール類の実用性に優れた新しい製造法に関するものである。

【10】

【化3】
JP0003159661B2_000004t.gif【0011】(式中R1 ,R2 は、同じかもしくは異なる基であり、置換基を有してもよい芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基、置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状または環状炭化水素基、もしくは置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状または環状炭化水素基および芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基から選択される1種以上の置換基を有するシリル基、または異種原子を含む複素単環または複素多環式基を示す。)で表されるカルボニル化合物を遷移金属錯体と塩基と光学活性含窒素化合物の三成分系触媒の存在下、あるいはこれら光学活性含窒素化合物を配位子とする不斉金属錯体と塩基とからなる二成分系触媒の存在下、または遷移金属錯体とこれら光学活性含窒素化合物および塩基とから形成される不斉金属錯体のみからなる触媒の存在下に、水素源となりうる有機または無機化合物の存在下に不斉還元し、一般式(II)

【12】

【化4】
JP0003159661B2_000005t.gif【0013】(R1 およびR2 は上記と同じ有機基を示す)で表される光学活性アルコール類を製造することを特徴とする光学活性アルコール類の製造方法を提供する。そしてまた、この発明は、その触媒構成成分である上記の遷移金属錯体が第VIII族の遷移金属、光学活性化合物を不斉配位子とする金属錯体であることや、含窒素光学活性化合物が光学活性アミン誘導体であることなどをその態様の一つとしている。

【14】

【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記のとおりの特徴を持つ光学活性アルコール類の製造方法を提供するものであるが、以下にさらに詳しく発明の実施の形態について説明する。まず、この発明の原料であるカルボニル化合物は、一般式(I)で表わされるものがその代表例であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。一般式(I)に沿って説明すると、式中のR1 およびR2 は、各々、同じかもしくは別異に置換基を有してもよい芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基、置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状または環状炭化水素基、もしくは置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状または環状炭化水素基、および芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基から選択される1種以上の置換基を有するシリル基、または窒素、酸素、硫黄原子等異種原子を含む複素単環または複素多環式基であり、具体的にはR1 としては、フェニル、2-メチルフェニル、2-エチルフェニル、2-イソプロピルフェニル、2-tert-ブチルフェニル、2-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、2-ビニルフェニル、3-メチルフェニル、3-エチルフェニル、3-イソプロピルフェニル、3-メトキシフェニル、3-クロロフェニル、3-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、4-イソプロピルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ビニルフェニル、クメニル、メシチル、キシリル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントリル、フェナントリル、インデニル基等の芳香族単環または多環式基、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ベンジル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ビニル、アリルなどの不飽和炭化水素基、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリペンチルシリル、トリヘキシルシリル、トリヘプチルシリル、トリベンジルシリル、tert-ブチルジメチルシリル等のアルキル基、あるいは、ジメチルビニルシリル、アリルジメチルシリル等の不飽和炭化水素基、またはトリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル等の芳香族基等々で置換されたシリル基、チエニル、フリル、ピラニル、キサンテニル、ピリジル、ピロリル、イミダゾリニル、インドリル、カルバゾイル、フェナントロニリル等のヘテロ単環または多環式基、フェロセニル基等が例示できる。

【15】
これらの例のように、置換基としては各種任意のものを有していてもよく、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル等の炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基等の含酸素基、ニトロ基、シアノ基等々であってよい。さらにR2 は前記R1 と同じ基であってもよく、特に、置換基を有していてもよい飽和あるいは不飽和の鎖状、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基であってよく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ベンジル、ビニル、アリルなどの不飽和炭化水素基等を好例として例示することができる。さらにβ位に官能基を有する例えばβ-ケト酸誘導体なども例示できる。

【16】
そして、この発明では、前記の遷移金属錯体と塩基及び光学活性アミン誘導体の三成分からなる還元触媒のうち、遷移金属錯体は、各種の遷移金属錯体が配位子を持つものとして使用される。特に好適には、例えば、次の一般式(III)
MXm n (III)
(Mは鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの第VIII族の遷移金属であり、Xは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、Yは中性配位子である芳香族化合物やオレフィン化合物配位子を示す。m、nは整数を示す)で表すことができる遷移金属錯体を、塩基として、一般式(IV)
1 Z (IV)
(M1はアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を示し、Zはヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、ナフチル基を示す。)で表される金属塩あるいは4級アンモニウム塩と光学活性アミン誘導体とともに使用して還元触媒を構成したものが例示される。一般式(III)で示される遷移金属錯体におけるMは、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金などの第VIII族の遷移金属であることが好ましいが、さらにはルテニウムが望ましいものの一つである。

【17】
さらにこの発明で用いることができる中性配位子である芳香族化合物は一般式(V)で表すことができる単環式芳香族化合物がその好適なものとして例示される。

【18】

【化5】
JP0003159661B2_000006t.gif【0019】この式(V)においては、R3 ~R8 は同じかもしくは異なる置換基からなり、水素、飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリル基、異原子を含む官能基を示すことができる。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ベンジル、ビニル、アリルなどの不飽和炭化水素等の基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等の異原子を含む官能基を示すことができる。置換基はその数は1~6の任意の数であり、場所は任意の場所を選ぶことができる。

【2】

【従来の技術】従来より、多くの遷移金属錯体が有機金属反応の触媒として使用されており、特に、貴金属錯体は、高価であるが、活性が高く安定で取扱いが容易であるため、これを触媒として使用する多くの合成反応が開発され、とりわけ不斉錯体触媒を用いる不斉合成反応の進展は目覚ましく、これまでの手段では効率の悪い有機合成反応の高効率化を実現した報告が数多くなされている。

【20】
前記の第VIII族の遷移金属錯体の使用量は反応容器、形式あるいは経済性によっても異なるが、反応基質であるカルボニル化合物に対してモル比で1/10~1/100,000用いることができ、好ましくは1/100~1/5,000の範囲とする。また、この発明に用いられる一般式(IV)として前記のとおりM1Zで示される塩基において、M1はアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、Zはヒドロキシ基あるいはアルコキシ基、メルカプト基、ナフチル基を示し、具体的にはKOH、KOCH3 、KOCH(CH3)2 、KC108 、LiOH、LiOCH3 、LiOCH(CH3)2 、NaOH、NaOCH3 、NaOCH(CH3)2、NaC108 、NaOH、NaOCH3 、NaOCH(CH3)2 等が例示される。さらに塩基としては、4級アンモニウム塩も利用できる。

【21】
これらの塩基の使用量は、第VIII族遷移金属錯体に対して0.5~50当量であり好ましくは2~10当量である。この発明で用いる光学活性アミン化合物については、たとえば一般式(VI)

【22】

【化6】
JP0003159661B2_000007t.gif【0023】(R9 ,R10,R15,R16は、水素あるいは飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリール基、ウレタン基、およびスルフォニル基のうちの1種であり、R11,R12,R13,R14はこれら置換基が結合している炭素が不斉中心となるように、同じかもしくは異なる基であり、水素あるいはアルキル基、芳香族単環または多環式基、飽和あるいは不飽和の炭化水素基、または環式炭化水素基を示す。)で表わされる光学活性ジアミン化合物である。このような化合物として、例えば光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘプタンジアミン、2,3-ジメチルブタンジアミン、1-メチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジフェニルエチレンジアンミン、1-メチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-ベンジル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、などの光学活性ジアミン化合物およびR9 ないしR15の置換基のうち1つないし2つともスルフォニル基、アシル基あるいはウレタン基である光学活性ジアミン化合物を例示することができる。好ましくはスルフォニル基を一つ有する光学活性ジアミン化合物を用いることができる。さらに用いることのできる光学活性ジアミンは、例示した光学活性エチレンジアミン誘導体に限るものでなく、光学活性プロパンジアミン、ブタンジアミン、フェニレンジアミン誘導体等も用いることができる。

【24】
光学活性アミン化合物としては、次の一般式(VII)で表される光学活性アミノアルコール化合物を用いることができる。

【25】

【化7】
JP0003159661B2_000008t.gif【0026】この式(VII)においては、R17,R18は少なくても1つが水素基であり残りの1つは水素あるいは飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリル基、ウレタン基、スルフォニル基であり、R19~R22はこれら置換基が結合している炭素が不斉中心となるように同じかもしくは異なる基であり、水素あるいはアルキル基、芳香族単環または多環式基、飽和あるいは不飽和の炭化水素基、または環式炭化水素基であり、R23は水素あるいはアルキル基、芳香族単環または多環式基、飽和あるいは不飽和の炭化水素基、または環式炭化水素基を示す。さらに、R19とR20のいずれか一つの基とR21とR22のいずれか一つの基とが結合して環を形成してもよいし、R17とR18のいずれか一つの基とR20とR21のいずれか一つの基とが結合して環を形成してもよい。具体的には実施例に示す光学活性アミノアルコール類を用いることができる。さらに光学活性アミン化合物としては、次の一般式(VIII)で表されるアミノホスフィン化合物を用いることができる。

【27】

【化8】
JP0003159661B2_000009t.gif【0028】ここでR24,R25は、水素あるいは飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリル基、ウレタン基、スルフォニル基、またはアシル基であり、(CR226)nはこれら置換基が結合している炭素が不斉中心となるように同じかもしくは異なる基であり、水素あるいはアルキル基、芳香族単環または多環式基、飽和あるいは不飽和の炭化水素基、または環式炭化水素基であり、R27,R28は水素あるいは飽和あるいは不飽和炭化水素基、またはアリル基を示す。

【29】
これら光学活性アミン化合物の使用量は遷移金属錯体に対し、0.5~20当量で、好ましくは1~2当量の範囲である。また、前記のアレーン基を持つ遷移金属錯体と前記した光学活性アミン誘導体とから形成される不斉金属錯体と塩基からなる還元触媒を用いても以上と全く同じ効果が得られる。この不斉金属錯体は、例えばAの一般式(IX)
MX1p YL (IX)
(Mは鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの第VIII族の遷移金属であり、X1はハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシ基、またはアルコキシ基、Yは中性配位子である芳香族化合物やオレフィン化合物配位子を示し、Lは光学活性アミン誘導体を示す。pは1または2を示す)で表すことができる不斉金属錯体を、前記の一般式(III)(MおよびX、Yは上記と同じ金属および有機基を示す)で表される遷移金属錯体と一般式(VI)(R9 ,R10,R15,R16およびR11,R12,R13,R14は上記と同じ有機基を示す)、一般式(VII)(R17,R18,R23およびR19,R20,R21,R22は上記と同じ有機基を示す)、一般式(VIII)(R24,R25,R27,R28およびR26は上記と同じ有機基を示す)等で表される光学活性アミン誘導体とから合成される錯体を不斉金属錯体として用いることができる。

【3】
その中でも、とりわけ、光学活性なホスフィン配位子をもつ不斉金属錯体を触媒とする不斉反応は非常に多く開発され、工業化されているものもある(Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis,Ed., R.Noyori (1994))。ルテニウム、ロジウム、イリジウム等の遷移金属に光学活性な窒素化合物を配位させた錯体には、カルボニル化合物の不斉還元による光学活性アルコールへの不斉合成反応の触媒として優れた性能を有するものが多く、この触媒の性能を高めるために、これまでに特殊な構造の光学活性な窒素化合物が数多く開発されてきた(Chem.Rev.,Vol.92,1051-1069頁(1992))。

【30】
さらに、前記のアレーン基を持つ遷移金属錯体と前記した光学活性アミン誘導体および塩基とから合成した不斉金属錯体のみを還元触媒として用いても全く同じ効果が得られる。この場合の不斉金属錯体は、例えば次の一般式(X)
MHq YL (X)
(Mは鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの第VIII族の遷移金属であり、Yは中性配位子である芳香族化合物やオレフィン化合物配位子を示し、Lは光学活性アミン誘導体を示す。qは0または1を示す)で表すことができる不斉金属錯体を、前記の一般式(III)(MおよびX、Yは上記と同じ金属および有機基を示す)で表される遷移金属錯体と一般式(VI)(R9 ,R10,R15,R16およびR11,R12,R13,R14は上記と同じ有機基を示す)、一般式(VII)(R17,R18,R23およびR19,R20,R21,R22は上記と同じ有機基を示す)、一般式(VIII)(R24,R25,R27,R28およびR26は上記と同じ有機基を示す)等で表される光学活性アミン誘導体、および前記の一般式(IV)(MおよびZは上記と同じ金属および有機基を示す)で表される塩基とから合成された錯体を不斉金属錯体として用いることができる。

【31】
この発明において不斉還元反応が円滑に進行し、高い不斉収率を達成するためには、前記の一般式(III)で示される遷移金属錯体と一般式(IV)で示される塩基と光学活性アミン誘導体の三成分を触媒として使用する場合、あるいは、前記の一般式(IX)で示される不斉金属錯体と一般式(IV)で示される塩基の二成分を触媒として使用する場合のいずれにおいても、その三成分、あるいは二成分はいずれも必要不可欠な成分であり、1成分たりとも不足すると充分な反応活性で高い光学純度のアルコール体は得られない。また、前記の一般式(X)で示される不斉金属錯体の場合には、それ自身不斉還元触媒として用いることができ、還元反応において塩基を必要としない利点がある。

【32】
さらに、この発明における水素移動型不斉還元による光学活性アルコール類の製造法に用いる水素供与性の有機または無機化合物は、熱的作用によって、あるいは触媒作用によって水素を供与することのできる化合物を意味している。このような水素供与性の化合物については特にその種類に限定はないが、好適なものとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール化合物、ギ酸およびその塩、例えばアミンの組み合わせからなるもの、テトラリンやデカリン等の部分的に飽和炭素結合を持つ不飽和炭化水素や複素環化合物、ヒドロキノンあるいは亜リン酸等がある。なかでもアルコール系溶媒が好適であり、より好ましくは2-プロパノールが例示される。用いる水素源となる水素供与性化合物の量は反応基質の溶解度および経済性により判断される。通常、基質濃度は、基質の種類によっては0.1~30重量%で用いることができるが、好ましくは0.1~10重量%で用いることが望ましい。なお、ギ酸およびギ酸とアミンの組み合わせからなるものを水素源として用いる場合は、溶媒を用いなくてもよいし、用いる場合はトルエン、キシレン等の芳香族化合物、ジクロロメタン等ハロゲン化物、THF、DMSO、DMFあるいはアセトニトリル等の有機化合物を用いることができる。

【33】
この発明では、水素加圧は本質的に必要とされていないが、反応基質によっては水素加圧してもよい。ただ、水素加圧する場合でも、本触媒系が極めて高活性であることから1気圧で十分であるが、反応速度、反応選択性および経済性を考慮すると1~100気圧の範囲で、好ましくは3~50気圧の範囲が望ましいが、プロセス全体の経済性を考慮して10気圧以下でも高い活性を維持することも可能である。

【34】
反応温度は経済性を考慮して-20度から100度で行うことが好ましいが25~40度の室温付近で反応を実施することができる。反応時間は反応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが数分から100時間で反応は完結する。

【35】

【実施例】以下実施例を示し、さらに詳しくこの発明方法について説明するが、この発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、代表例として用いる反応基質、遷移金属錯体、および不斉配位子としての光学活性アミン化合物については表1、表2および表3にまとめて例示した。

【36】
又、本実施例中で用いる略号は次の通りである。
η:不飽和配位子のうちで、金属と結合している炭素原子の数を表わすのに用い、ヘキサハプト(金属と炭素原子が6個結合したもの)はη6 と表わす。

【37】

【表1】
JP0003159661B2_000010t.gif【0038】
【表2】
JP0003159661B2_000011t.gif【0039】
【表3】
JP0003159661B2_000012t.gif【0040】また、機器分析は次の表4の各機種によった。

【4】
例えば、(1)Tetrahedron Asymmetry ,Vol . 6,705-718頁(1995)に記載されている光学活性な1,2-ジフェニル-エチレンジアミン類又はシクロヘキシルジアミン類を配位子とするロジウム-ジアミン錯体、(2)Tetrahedron ,Vol.50,4347-4354頁(1994)に記載されている光学活性なビスアリールイミノシクロヘキサン類を配位子とするルテニウム-イミド錯体、(3)特開昭62-281861及び特開昭63-119465に記載されているピリジン類を配位子とするイリジウム-ピリジン錯体、(4)特開昭62-273990に記載されている光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミン類又はシクロヘキシルジアミン類を配位子とするイリジウム-ジアミン錯体などが報告されている。

【41】

【表4】
JP0003159661B2_000013t.gif【0042】得られた光学活性プロパルギルアルコール類の絶対配置は施光度、HPLCにより決定した。なお、一般式(IX)および(X)で示される不斉金属錯体については、その代表的な合成法を以下に参考例として例示するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
参考例1
RuCl[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 ](η6 -p-cymene)(クロロ((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)の合成;あらかじめ、真空乾燥、アルゴン置換したシュレンク反応器に、[RuCl2(η6 -p-cymene)]2 (テトラクロロビス(η6 -p-シメン)二ルテニウム)1.53g(2.5mmol)と(1S,2S)-p-TsNHCH(C65 )CH(C6 5 )NH2 ((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)1.83g(5.0mmol)及びトリエチルアミン1.4mL(10mmol)を2-プロパノール50mLで溶解する。反応液を80℃で一時間攪拌した後、濃縮して得られた結晶を濾別し、少量の水で結晶を洗浄し、減圧下で乾燥して、2.99gのオレンジ色の結晶を得た。収率は94%である。

【43】

【表5】
JP0003159661B2_000014t.gif【0044】参考例2
RuCl[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 ](η6 -mesitylene)(クロロ((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -メシチレン)ルテニウム)の合成;[RuCl2 (η6 -p-cymene)]2 (テトラクロロビス(η6 -p-シメン)二ルテニウム)の代わりに[RuCl2 (η6 -mesitylene)]2 (テトラクロロビス(η6 -メシチレン)二ルテニウム)を用いて、RuCl[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 ](η6 -p-cymene)(クロロ((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)の合成の場合と同様に操作して上記の錯体をオレンジ色の結晶として得た。収率は64%である。

【45】

【表6】
JP0003159661B2_000015t.gif【0046】参考例3
Ru[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](η6 -p-cymene)(((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)の合成;あらかじめ、真空乾燥、アルゴン置換したシュレンク反応器に、[RuCl2(η6 -p-cymene)]2 (テトラクロロビス(η6 -p-シメン)二ルテニウム)306.2mg(0.5mmol)と(1S,2S)-p-TsNHCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 ((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)366.4mg(1.0mmol)及び水酸化カリウム400mg(7.1mmol)を塩化メチレン7mLで溶解する。反応液を室温で5分間攪拌した後、反応液に水7mlを加えることにより、反応液の色がオレンジから深紫へと変化した。有機層を分離し、水7mLで洗浄した。水素化カルシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、減圧下で乾燥して、522mgの深紫色の結晶を得た。収率は87%である。

【47】

【表7】
JP0003159661B2_000016t.gif【0048】参考例4
Ru[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](η6 -mesitylene)((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -メシチレン)ルテニウム)の合成;[RuCl2 (η6 -p-cymene)]2 (テトラクロロビス(η6 -p-シメン)二ルテニウム)の代わりに[RuCl2 (η6 -mesitylene)]2 (テトラクロロビス(η6 -メシチレン)二ルテニウム)を用いて、Ru[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](η6 -p-cymene)(((1S,2S)-N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)の合成の場合と同様に操作して上記の錯体を紫色の結晶として得た。収率は80%である。

【49】

【表8】
JP0003159661B2_000017t.gif【0050】実施例1
凍結脱気した乾燥2-プロパノール5mLに、光学活性ジアミン(1S,2S)-p-TsNHCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 ((1S,2S)-N-p-トルエンスルフォニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)1.83mg(5.0μmol)と、ルテニウムアレーン錯体[RuCl2 (η6 -mesitylene)]2 (テトラクロロビス(η6 -メシチレン)二ルテニウム)1.46mg(10.0μmol)を加えて、アルゴン下28℃で20分攪拌したのち、凍結脱気した乾燥2-プロパノール5mL、脱気蒸留した4-フェニル-3-ブチン-2-オン144mg(1.0mmol)、0.4Mの水酸化カリウム2-プロパノール溶液27.5μL(11.0μmol)の順に加えて18時間攪拌した。反応終了後、2-プロパノールを減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル:ヘキサン=1:3)にて精製して無色のオイル状の(S)-4-フェニル-3-ブチン-2-オール132mgを得た。収率は90%である。

【5】
しかし、これらの錯体を用いる従来の方法においては、対象とする反応またはその反応基質によって触媒活性、持続性、不斉収率が不十分である等の実際の工業化に当たっては問題のある場合があった。一方、光学活性2級アルコール類、とりわけ分子中にアセチレン結合を持つ光学活性プロパルギルアルコール類等は医薬、液晶化合物、天然物合成の不斉合成等において有用な中間体である。従来より、これら化合物を製造する方法としては、1)リパーゼなど酵素を用いてラセミ体のアルコールを光学分割する方法や、2)光学活性な還元試薬や金属水素化物、あるいは光学活性な配位子の存在下にボランを用いてカルボニル化合物を不斉還元する方法などが知られている。例えば1)の方法においては(1)Tetrahedron Asymmetry ,Vol.7,1485-1488頁(1996)、(2)J.Am.Chem.Soc., 6129-6139頁(1991)、(3)特開平3-259094に記載されているリパーゼによるラセミ体のアルコールの光学分割による方法などが知られている。また2)の方法においては(1)J.Am.Chem.Soc., 8339-8341頁(1977)、(2)J.Am.Chem.Soc., 6717-6725頁(1984)に記載されている光学活性な金属水素化物を用いる方法、(3)Tetrahedron ,Vol.40,1371-1380頁(1984)、(4)J.Org.Chem. ,2379-2386頁(1992)に記載されている光学活性な還元試薬を用いる方法、(5)J.Org.Chem. ,3214-3217頁(1996)に記載されている光学活性な配位子の存在下にボランを用いてカルボニル化合物を化学量論的に不斉還元する方法などが一般的な方法として知られている。また、触媒的に不斉還元する方法としては(6)J.Am.Chem.Soc.,10938-10939頁(1996)に記載されている光学活性なオキサザボロリジン触媒の存在下にカテコールボランを用いて還元する方法が知られている。

【51】
[α]D 23=-35.0°(c=1.00,クロロホルム)
得られた(S)-4-フェニル-3-ブチン-2-オールを高速液体クロマトグラフィーにて分析を行った結果、光学純度は97%eeであった。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件>
カラム:Chiralcel OD
(ダイセル化学工業株式会社製)
展開溶媒:2-プロパノール:ヘキサン=20:80
液量:0.5mL/分
保持時間:(S)-4-フェニル-3-ブチン-2-オール 19.5分
(R)-4-フェニル-3-ブチン-2-オール 11.8分
実施例2~5
実施例1の方法に準じて、反応基質として表1に示すケトン類に対して表2に示すルテニウムアレーン錯体、表3に示す光学活性配位子、反応時間の反応条件下にて反応を行い、それぞれ対応する光学活性2級アルコールを高収率で得た。表9にまとめてその結果を示した。

【52】

【表9】
JP0003159661B2_000018t.gif【0053】実施例6
凍結脱気した乾燥2-プロパノール25mLに、光学活性ルテニウム錯体RuCl(η6 -mesitylene)[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 ](クロロ((1S,2S)-N-p-トルエンスルフォニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -メシチレン)ルテニウム)15.6mg(25.0μmol)を加えて、アルゴン下28℃で20分攪拌したのち、凍結脱気した乾燥2-プロパノール25mL、脱気蒸留した1-フェニル-1-ペンチン-4-オン791mg(5.0mmol)、0.4Mの水酸化カリウム2-プロパノール溶液125.0μL(50.0μmol)の順に加えて12時間攪拌した。反応終了後、2-プロパノールを減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル:ヘキサン=1:3)にて精製して無色のオイル状の(S)-1-フェニル-1-ペンチン-3-オール777mgを得た。収率は97%である。

【54】
[α]D 23=-20.5°(c=2.05,ジエチルエーテル)
得られた(S)-1-フェニル-1-ペンチン-3-オールを高速液体クロマトグラフィーにて分析を行った結果、光学純度は97%eeであった。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件>
カラム:Chiralcel OD
(ダイセル化学工業株式会社製)
展開溶媒:2-プロパノール:ヘキサン=10:90
液量:0.5mL/分
保持時間:(S)-1-フェニル-1-ペンチン-3-オール 27.8分
(R)-1-フェニル-1-ペンチン-3-オール 14.4分
実施例7~14
実施例6の方法に準じて、反応基質として表1に示すケトン類に対して表2に示す光学活性ルテニウム錯体、反応時間の反応条件下にて反応を行い、それぞれ対応する光学活性2級アルコールを高収率で得た。表10にまとめてその結果を示した。

【55】

【表10】
JP0003159661B2_000019t.gif【0056】実施例15
脱気蒸留した4-(トリメチルシリル)-3-ブチン-2-オン701mg(5.0mmol)凍結脱気した乾燥2-プロパノール50mL溶液に、光学活性ルテニウム錯体Ru(η6 -p-cymene)[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](((1S,2S)-N-p-トルエンスルフォニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)15.6mg(25.0μmol)を加えて、アルゴン下28℃で12時間攪拌した。反応終了後、2-プロパノールを減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル:ヘキサン=1:6)にて精製して無色のオイル状の(S)-4-(トリメチルシリル)-3-ブチン-2-オール704mgを得た。収率は100%である。

【57】
[α]D 23=-27.6°(c=2.97,クロロホルム)
得られた(S)-4-(トリメチルシリル)-3-ブチン-2-オールを(S)-2-(3,5-ジニトロベンゾイロキシ)-4-(トリメチルシリル)-3-ブチンに変換した後、高速液体クロマトグラフィーにて分析を行った結果、光学純度は98%eeであった。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件>
カラム:Chiralcel OD-H(ダイセル化学工業株式会社製)
展開溶媒:2-プロパノール:ヘキサン=5:95
液量:0.5mL/分
に示す光学活性ルテニウム錯体、反応時間の反応条件下にて反応を行い、それぞれ対応する光学活性2級アルコールを高収率で得た。表11にまとめてその結果を示した。

【58】

【表11】
JP0003159661B2_000020t.gif【0059】実施例23
(S)-N-ベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オン(98.4%ee)307mg(1.0mmol)の凍結脱気した乾燥2-プロパノール10mL溶液に、光学活性ルテニウム錯体Ru(η6 -p-cymene)[(1R,2R)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](((1R,2R)-N-p-トルエンスルフォニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)6.0mg(10.0μmol)を加えて、アルゴン下28℃で2時間攪拌した。反応終了後、2-プロパノールを減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル:ヘキサン=1:3)にて精製して(3S,4S):(3R,4R):(3R,4S):(3S,4R)=97.2:0.0:1.4:1.4の異性体比のN-ベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オール309mgを得た。この粗成物をジエチルエーテル-ヘキサンから再結晶して、白色結晶の(3S,4S)-Nーベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オールを270mg得た。収率は87%であった。

【6】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の酵素を用いる方法は比較的高い光学純度のアルコール類を得ることができるものの反応基質の種類に制約があり、しかも得られるアルコール類の絶対配置も特定のものに限られるという欠点がある。また、カルボニル化合物を化学量論的に不斉還元する方法は基質や反応によって反応速度や立体選択性の面で満足できない場合があり、しかも反応基質に対して当量以上の光学活性な反応剤や還元剤を用いる必要があること、反応後中和処理が必要であることなど光学活性アルコール類の大量合成方法として実用的でないという欠点をもっている。

【60】

【表12】
JP0003159661B2_000021t.gif【0061】得られた(3S,4S)-Nーベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オールを高速液体クロマトグラフィーにて分析を行った結果、光学純度は>99%eeであった。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件>
カラム:Chiralpak AS-Chiralpak AD×2(ダイセル化学工業株式会社製)
展開溶媒:2-プロパノール:ヘキサン=10:90
液量:0.5mL/分
JP0003159661B2_000022t.gif実施例24
光学活性ルテニウム錯体Ru(η6 -p-cymene)[(1R,2R)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](((1R,2R)-N-p-トルエンスルフォニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)6.0mg(10.0μmol)の代わりに、光学活性ルテニウム錯体Ru(η6 -p-cymene)[(1S,2S)-p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH](((1S,2S)-N-p-トルエンスルフォニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(η6 -p-シメン)ルテニウム)12.0mg(20.0μmol)を用いて実施例23と同様に操作して(3S,4S):(3R,4R):(3R,4S):(3S,4R)=1.6:1.1:97.3:0.0の異性体比のN-ベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オール307mgを得た。この粗成物を酢酸エチル-ヘキサンから再結晶して白色結晶の(3R,4S)-Nーベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オールを250mg得た。収率は81%であった。

【62】

【表13】
JP0003159661B2_000023t.gif【0063】得られた(3R,4S)-N-ベンジロキシカルボニル-4-アミノ-1-フェニル-1-ペンチン-3-オールを高速液体クロマトグラフィーにて実施例23と同様の条件で分析を行った結果、光学純度は>99%eeであった。

【64】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明により高い合成収率で、しかも高い光学純度の光学活性アルコール類が製造可能とされる。

【7】
このため、従来より、光学活性アルコール類を製造するための一般性の高い、しかも高活性な触媒を用いての新しい合成方法の実現が望まれていた。そこで、この出願の発明は、医薬、生理活性物質等の合成中間体として重要な分子中にアセチレン結合を持つ光学活性アルコール類の、触媒的不斉還元法による高効率な製造方法を提供することにある。

【8】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するものとして、この出願の発明は、アセチレン結合を持つカルボニル化合物を、遷移金属錯体と塩基と光学活性含窒素化合物の三成分からなる触媒、あるいはあらかじめ遷移金属錯体と光学活性含窒素化合物から合成した不斉金属錯体と塩基の二成分からなる触媒、もしくはあらかじめ遷移金属錯体と光学活性含窒素化合物および塩基とから形成される不斉金属錯体のみからなる触媒を使用して、水素供与性の有機または無機化合物の存在下に、水素移動型不斉還元してアセチレン結合を持つ光学活性アルコール類を製造することを特徴とする光学活性アルコール類の製造方法を提供する。

【9】
さらにこの発明は、上記方法において次の一般式(I)