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明細書 :回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3968634号 (P3968634)
公開番号 特開2003-175897 (P2003-175897A)
登録日 平成19年6月15日(2007.6.15)
発行日 平成19年8月29日(2007.8.29)
公開日 平成15年6月24日(2003.6.24)
発明の名称または考案の名称 回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼
国際特許分類 B64C  27/78        (2006.01)
B64C  27/20        (2006.01)
FI B64C 27/78
B64C 27/20
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2001-378867 (P2001-378867)
出願日 平成13年12月12日(2001.12.12)
審査請求日 平成13年12月12日(2001.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】丹羽 良之
【氏名】飛永 佳成
【氏名】渡辺 隆司
【氏名】村重 敦
【氏名】西村 宏貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100075557、【弁理士】、【氏名又は名称】西教 圭一郎
審査官 【審査官】早野 公惠
参考文献・文献 特開平04-237697(JP,A)
特開平07-069295(JP,A)
特許第2662838(JP,B2)
特開平04-190655(JP,A)
特開平07-156890(JP,A)
特開平06-335204(JP,A)
調査した分野 B64C 27/78
B64C 27/20
特許請求の範囲 【請求項1】
回転翼航空機のテールブームの後端部及び垂直尾翼内に、2個のダクテッド・ファン型回転翼が上下に埋め込まれ、その2個のダクテッド・ファン型回転翼における複数の羽根が、回転中心部のハブにピッチ角のみ変更できるように取り付けられ、
ダクテッド・ファン型回転翼には、テールブームの上部に設けられる駆動回転軸の回転駆動力が下方の回転翼のギヤボックスに伝えられ、前記下方の回転翼のギヤボックスからの回転駆動力が上方の回転翼のギヤボックスに駆動軸を介して伝えられ、
各ギヤボックスは、前記回転中心部に設けられることを特徴とする回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
【請求項2】
2個のダクテッド・ファン型回転翼の回転数が異なることを特徴とする請求項1記載の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
【請求項3】
2個のダクテッド・ファン型回転翼の羽根の枚数が異なることを特徴とする請求項1(又は2)記載の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
【請求項4】
2個のダクテッド・ファン型回転翼の回転数が異なり、且つ羽根の枚数が異なることを特徴とする請求項1記載の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
【請求項5】
2個のダクテッド・ファン型回転翼のコントロールが1個のアクチュエータで制御されるようになされていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
【請求項6】
2個のダクテッド・ファン型回転翼のコントロールが、それぞれ独立して制御されるようになされていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
【請求項7】
2個のダクテッド・ファン型回転翼の一方の回転翼が、前進飛行時には推力を出さず、ホバリング時にのみ推力を発生するようになされていることを特徴とする請求項6記載の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転翼航空機の尾部回転翼に係り、特にツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼に関する。
【0002】
【従来の技術】
図16に示すように、従来の全備重量7トン以上の大型回転翼航空機31は、主回転翼32と尾部回転翼33を備えており、尾部回転翼33は、主回転翼32と同様形式の、むき出し複数枚の羽根34a,34b,34c,34dから成るプロペラ型のものを採用している例が殆んどである。
【0003】
このプロペラ型の尾部回転翼33は、細いテールブーム35上に搭載されているため、空力弾性上の問題が多く、横風時にはボルテックス・リング状態と呼ばれる推力低下現象も発生し、しばしば事故が発生した。さらに、構造疲労による破壊も、数多く報告されている。しかし、大型回転翼航空機31には、上記従来のプロペラ型の尾部回転翼33以外のものは採用されたことがなく、前記の事故や破壊は、回転翼航空機にとって解決しなければならない大きな課題の一つであった。
【0004】
一方、全備重量5トン以下の小型回転翼航空機には、前記のプロペラ型尾部回転翼の他に、図17に示すダクテッド・ファンと呼ばれる型式の尾部回転翼36が使用されることが多い。この尾部回転翼36は、回転翼組み立て37とその周囲を筒状に覆うダクト38とよりなる。このダクテッド・ファン型の尾部回転翼36は、通常のプロペラ型の尾部回転翼33に比べて、回転翼組み立て37の外周がダクト38で覆われているため、地上では整備員や乗務員が誤って羽根39に接触する事故を防止できるので、きわめて安全である。空中においても電線や木に接触する事故を防止でき、安全である。また、性能面では、吹き出し速度が高く、ダクト38に囲まれていることにより、横風時にボルテックス・リング状態に入らないという優れた利点がある。このダクテッド・ファンの騒音低減に関連する従来技術として、特許公報特許第2662838号(登録日平成9年6月20日)に開示される回転翼航空機の尾部回転翼がある。
【0005】
ところで、従来、ダクテッド・ファン型の尾部回転翼36が全備重量7トン以上の大型回転翼航空機に採用されなかった理由は、以下に述べるような問題があったからである。
【0006】
(1)大直径なので、尻擦り角が小さく、地上高を高くとれない。
従来のダクテッド・ファン型回転翼を尾部用に設計すると、機体の大きさに比較して大直径となり、図18に示すように車輪接地点Tからテールブーム35の後端部下端を結ぶ線Lと通常の着陸時の地面Gの成す角度、即ち尻擦り角αが小さくなり、着陸時に速度を下げるためのフレアと呼ばれる引き起こし操作ができなくなる。これはキャビンの大きさが、ほぼ人間の背の高さによって決められており、大型機でも小型機でも大差ないのに対し、尾部回転翼36の大きさは機体の全備重量に比例して大きくなるからである。
また、図16に示す従来のプロペラ型尾部回転翼33では、テールブーム35を途中で上方に折り曲げて、尾部回転翼33の取り付け位置を高くして地面Gとの距離を大きくするので、尻擦り角αも大きく取れ、地上高を高くとれるが、ダクテッド・ファン型尾部回転翼36では、図18に示されるように尾部回転翼駆動回転軸40の延長上に設置することが多いため、尻擦り角αが小さくなり、地上高が低くなる。
(2)垂直尾翼厚さが厚く、抵抗が大きい。
ダクテッド・ファン型尾部回転翼36では、回転翼組み立て37の外周のダクト38の厚さは、回転翼直径の40%程度必要である。このため、回転翼直径が大きくなると、ダクト38の厚さ、即ち垂直尾翼41の厚さが非常に厚くなり、空気抵抗が増大して性能が悪くなる。
(3)機体構造の重量が大きくなる。
大直径のため、垂直尾翼41が大型となり、構造重量が大きくなる。即ち、ダクテッド・ファン型尾部回転翼は、回転翼外周部を囲むダクトが必要であるが、大型であれば、ダクト部分の重量が増大し重くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、全備重量7トン以上の大型回転翼航空機に、ダクテッド・ファン型の尾部回転翼を適用できるように改善して、性能や安全性に優れた回転翼航空機を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼は、回転翼航空機のテールブームの後端部及び垂直尾翼内に、2個のダクテッド・ファン型回転翼が上下に埋め込まれ、その2個のダクテッド・ファン型回転翼における複数の羽根が、回転中心部のハブにピッチ角のみ変更できるように取り付けられ、
ダクテッド・ファン型回転翼には、テールブームの上部に設けられる駆動回転軸の回転駆動力が下方の回転翼のギヤボックスに伝えられ、前記下方の回転翼のギヤボックスからの回転駆動力が上方の回転翼のギヤボックスに駆動軸を介して伝えられ、
各ギヤボックスは、前記回転中心部に設けられることを特徴とするものである。
【0009】
上記の各回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼において、2個のダクテッド・ファン型回転翼は、回転数が異なること好ましい。
【0010】
また、2個のダクテッド・ファン型回転翼は、羽根の枚数が異なることも好ましい。
【0011】
さらに、2個のダクテッド・ファン型回転翼は、回転数が異なり、且つ羽根の枚数が異なることも好ましい。
【0012】
上記の各回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼において、2個のダクテッド・ファン型回転翼のコントロールは、1個のアクチュエータで制御されるようになされていることも好ましい。
【0013】
また、2個のダクテッド・ファン型回転翼のコントロールは、夫々独立して制御されるようになされていることも好ましい。この場合、2個のダクテッド・ファン型回転翼の一方の回転翼は、前進飛行時には推力を出さず、ホバリング時のみ推力を発生するようになされていることが一層好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の回転翼航空機の尾部回転翼の実施形態を図によって説明する。図1において、1は回転翼航空機、2は主回転翼である。回転翼航空機1の機体3の後方に延長したテールブーム4の後端部及び垂直尾翼5の中に、2個の同一構造のダクテッド・ファン型回転翼6,6′を埋め込んで、ツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼を構成している。図2はそのツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼を左前方から見た斜視図で、この場合、風は矢印の方向に吹出される。図3はその尾部回転翼を右前方から見た斜視図である。図2,図3中の7は、テールブーム4の後端部下部に取り付けられている水平尾翼である。
【0015】
上記構成のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼は、2個のダクテッド・ファン型回転翼6,6′の直径が小さいので、地上高Hが高い。従って、キャビン後方からの荷物の積み込みが容易である。また、車輪接地点Tからテールブーム4の後端部下端を結ぶ線Lと通常の着陸時の地面Gの成す角度、即ち尻擦り角αが大きいので、着陸時に速度を下げるためのフレアと呼ばれる引き起こしの操作に十分な余裕が生まれ、安全性が高くなる。その上、着陸に要する距離や時間が少なくて済む。さらに、回転翼6,6′がダクトに覆われているので、樹木や電線等への衝突を防止でき、安全性が高い。
また、回転翼6,6′の直径が小さいため、それに応じてダクトの厚さが薄くてよいので、垂直尾翼5の厚さも薄くてよい。従って、空気抵抗が少なく、性能がよくなる。さらに、回転翼6,6′が小型であるので、吹き出し速度を大きくとることができる。このため、ボルテックス・リング状態に入ることがなく、強い横風の状態における飛行においても安全性が高くなる。
【0016】
上記実施形態のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼の2個の回転翼6,6′は、図4に示されるようにテールブーム4の上部に取り付けた駆動回転軸8からの回転駆動力により回転させられるようになっている。即ち、駆動回転軸8の回転駆動力は、下方の回転翼6′のギヤボックス9′内で回転方向を変換して、先ず下方の回転翼6′を回転させ、次にギヤボックス9′から斜め上方に延設して上方の回転翼6のギヤボックス9内に連繋した駆動軸10を介して上方の回転翼6を回転させる。このように駆動回転軸8の回転駆動力により回転させられる上下2個の回転翼6,6′における羽根11,11′は図5,図6に示すようにギヤボックス9,9′内に取り付けられている回転中心部のハブ12,12′にピッチ角のみ変更可能に取り付けられている。羽根11,11′のピッチ角の変更は、パイロットがペダルを操作することにより、図示せぬコントロール系統を介してその一部を構成する図5に示されるリンク13を移動することで達成され、2個の回転翼6,6′の推力が変動せしめられる。尚、ペダルとリンク13の中間には、図示せぬが、人力を補い、コンピュータからの制御信号をリンク13の作動量に変換させるためのアクチュエータが装着されている。
【0017】
上下2個の回転翼6,6′の推力は常に同一である必要はない。従って、前記アクチュエータ以降のコントロール系統は、上方の回転翼6と下方の回転翼6′で分岐して、夫々個別に独立して制御されることも、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0018】
上方の回転翼6は、垂直尾翼5の中に埋め込まれているが、垂直尾翼5の厚さが図6に示すように薄く、下方の回転翼6′に比べれば性能が低い。これはダクテッド・ファン型の回転翼では、ダクトの厚さは回転翼直径の40%程度が必要であるからであって、この厚さが薄くなると性能が低下する。また、巡航時(前進飛行時)に推力を出すと、垂直尾翼周りの圧力分布が変化し、大きな捻じりモーメントが垂直尾翼に発生する。巡航時(前進飛行時)には垂直尾翼自体が揚力を発生して主回転翼の発生するトルクを打ち消すことができる。従って、上方の回転翼6は、巡航時(前進飛行時)には推力を出さないようにする方が好ましい。しかし逆に、ホバリング時には垂直尾翼の揚力がなくなるため、尾部回転翼の推力だけで主回転翼のトルクと釣り合う必要がある。従って、この場合、上方の回転翼6にも最大の推力を発生させるように制御することが好ましい。このように上,下のダクテッド・ファン型の回転翼6,6′の推力を運用条件に適するように、それぞれ個別に制御することは本発明の最も好ましい実施形態である。
【0019】
図7は図4のC-C線断面矢視図で、上,下のダクテッド・ファン型回転翼6,6′が駆動軸10で連結されているが、ギヤボックス9,9′の減速比を異ならせることにより、上下の回転翼6,6′の回転数(回転速度)を異ならせることができる。このようにすると、尾部回転翼から発生する騒音の周波数パターンが変化して、人間の耳にはうるさく聞えないようになる効果が期待できる。このことは、上下の回転翼6,6′の羽根11,11′の枚数を異ならせることでも達成できる。勿論、上下の回転翼6,6′の回転数を異ならせ、且つ羽根11,11′の枚数を異ならせれば、より一層効果が上がる。
【0020】
上下のダクテッド・ファン型回転翼6,6′の構成は共通していて、その組立状態を図8に、分解状態を図9に示す。羽根11はギヤボックスから延長する出力軸22に取り付けられたハブ金具16上の2重のフランジ部に、それぞれ2個のベアリング17で、ピッチ軸18周りに回転可能に取り付けられている。羽根11のピッチ角は、ピッチホーン19を移動させることにより変化させることができる。このピッチホーン19は、コントロール系統のスパイダー20に取り付けられたスタッド21と結合されており、スパイダー20は出力軸22と同軸内に配置されたプッシュロッド23の先端部に結合されている。プッシュロッド23は図5に示すリンク13に結合されている。このように構成されてるため、パイロットとコンピュータによる自動制御されたコントロール操舵量はリンク13から羽根11のピッチ角変化量に変換され、回転翼の推力が変化せしめられる。
【0021】
前述の下方の回転翼6′のギヤボックス9′の詳細を図10によって説明すると、メインギヤボックスからの入力回転力は、駆動回転軸8を介して下方のギヤボックス9′に伝達される。伝達された回転力はこのギヤボックス9′によりほぼその1/2を90度方向を変えて下方の回転翼6′に伝達し、残りを斜め上方に方向を変換し、駆動回転軸8′を介して上方の回転翼6に伝達する。図中、25は温度センサーである。通常、回転翼航空機のギヤボックスは、寸法の割に大きな馬力を伝達するが、ギヤやベアリングの伝達馬力損失が小さくなるよう、極めて精密に調整されている。しかし、伝達馬力損失は零にはできず、最終的には全て熱エネルギーに変換されるので、効率も良く熱を排出しなければ、たちまち焼き付いてしまうことになる。図16に示される従来の回転翼航空機では、尾部回転翼33の中間ギヤボックス42には冷却装置が取り付けられていた。ところが、本発明の場合には、この中間ギヤボックス42の位置が、下方の回転翼6′となっているので、回転翼6′で発生させられた風によって十分な冷却風が得られるので、特別な冷却装置は不要である。
【0022】
図11は、図10のD-D線断面矢視図である。駆動回転軸8より伝達された回転力は、インプットピニオンのスパイラル・ベベルギヤ26から下方の回転翼6′の駆動ギヤ27に伝達され、回転翼6′を回転させる。さらにスパイラル・ベベルギヤ26は上方の回転翼6の駆動ギヤ28とも噛み合い、回転力を上方の回転翼6にも伝えて回転翼6を回転させる。図16に示される従来の回転翼航空機の尾部回転翼33の中間ギヤボックス42の場合には、インプットピニオンのスパイラル・ベベルギヤ26から、直接上方の回転翼6の駆動ギヤ28と噛み合うことになるが、本発明では単に下方の回転翼6′の駆動ギヤ27が追加されただけであり、重量の増加は僅かである。しかも先に述べたように冷却装置が不要になったので、軽量化する要素もあり、全体としての重量増加は僅かである。さらに、上方の回転翼6では約50%の馬力消費であるから、上方のギヤボックス9は小型になる。従って、ギヤボックスに関しては、総合的に軽量となる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明で判るように本発明の回転翼航空機のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼によれば、全機特性、性能面、ロータ系統の設計、駆動系統の設計、機体構造設計、装備設計、安全性、製造コスト、運用コスト等において、以下に述べるような効果が得られる。
1)全機特性
(1)ツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼の直径が小さく、尻擦り角が大きく取れる。従って、着陸時の引き起こしの操作にも十分な余裕が生まれ、安全性が高くなる。その上、着陸に要する距離や時間も少なくて済む。
(2)ツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼の直径が小さく、地上高が高く取れるから、キャビン後方からの荷物積み込みも容易である。
(3)回転翼がダクトで覆われており、樹木や電線等への衝突が防止でき、安全性が高い。
(4)1個の大直径回転翼を2個に分割すれば、合計の回転翼面積は同一となるように設計するから、それぞれの回転翼の直径は1/√2となる。一方、重量は直径の3乗に比例するから、直径が1/√2の回転翼が2個あれば、合計重量は1/√2となり、重量を軽減できる。
2)性能面
(1)尾部回転翼直径が小さいため、ダクト厚さが薄くてよく、垂直尾翼の厚みも薄くてよい。従って、空気抵抗が少なく、性能がよくなる。
(2)小型の回転翼であるので、吹き出し速度を大きくとることができる。従って、ボルテックス・リング状態に入ることがなく、強い横風の状態でも、安定性が高い。
(3)2個のダクテッド・ファン型尾部回転翼の組み合わせにより、騒音低下させる事ができる。例えば、2個の尾部回転翼の回転数を、それぞれわずかに変えることにより、騒音が和音で聞こえるようになる。このようなチューニングにより人間の耳にはうるささが減少したように聞こえる。このような効果は、尾部回転翼の羽根の枚数を上下で変えたり、取り付け角度を変えたりすることで、さらに向上する。勿論、2個の尾部回転翼の回転数を変え、且つ羽根の枚数を変えれば、より一層効果が上がる。
(4)本発明のようにダクテッド・ファン型尾部回転翼を2つ並べて使用することによる性能への影響に関しては、数値流体力学を用いた解析およびモデル・ロータによる風洞試験により問題の無いことを確認している。図12は、数値流体力学による解析に用いた解析モデルの例である。図13のa,bは図12の解析モデルを用いた解析結果であり、ダクテッド・ファン単体での推力および必要パワーと、ツイン・ダクテッド型とした時の片方のダクテッド・ファンの推力および必要パワーとの比較を示したものである。図13のa,bで判るように、ツイン・ダクテッド型とすることによる性能への影響はない。また、ダクテッド・ファンでは回転する羽根の影響によりダクトから吹き出す空気が回転することによるエネルギー損失が避けられないが、このエネルギー損失についても数値流体力学を用いた解析によってツイン・ダクテッド型とすることによる影響が無いことを確認している(図14)。図14に示されるように、2つのファンの回転方向を同方向と逆方向に変えても推力に変化が無いことから、それぞれのファンから吹き出す空気はお互いに干渉していないことが判る。さらに、図15は、本発明の尾部回転翼を模擬した風洞試験の結果を示したものである。この図15から本発明のようにツイン・ダクテッド型としても、従来のダクテッド・ファン1個の場合と比較して同じ推力を得るのに必要な駆動トルクは等しく、2個のダクテッド・ファン型尾部回転翼の空力干渉による性能低下は無いことが判る。
3)ローター系統の設計
(1)従来使用実績のある、小型ヘリコプタ用のダクテッド・ファン型尾部回転翼を2個搭載することは、開発リスクが少ない。また、小型機の開発で取得した新しい技術も直ちに採用できる。従って、小型機と大型機の技術を共通化することにより、開発費と期間を大幅に減らすことができる。航空機においても、繰り返して設計することは、洗練された設計に到達することのできる優れた方法である。結果として、コストが安く、軽量で、安全性が高く、高性能な尾部回転翼を提供することが可能になる。
(2)従来のプロペラ型尾部回転翼に比較して、ダクテッド・ファン型尾部回転翼は剛性が高く、疲労・空弾性の問題が小さい。従って、安全性が高く、軽量で信頼性が高い。
4)駆動系統の設計
(1)従来のプロペラ型の尾部回転翼では、取り付け位置を高くするため、垂直尾翼の上端部に取りつけることが多かった。このため、中間ギヤボックスを設置して、尾部回転翼駆動軸を折り曲げる必要があった。本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼では、ちょうど中間ギヤボックスに相当する位置に下方の尾部回転翼を設置するため、この中間ギヤボックスと兼用でき、従来のプロペラ型の尾部回転翼に比較して重量増加はほとんどない。
(2)従来のプロペラ型の尾部回転翼では、中間ギヤボックスに冷却装置が必要であったが、本発明のツイン・ダクテッド・ファン型では尾部回転翼自身がギヤボックスを空冷するため、冷却器が不要である。このため、馬力消費が少なく、性能上有利である。また、構造が単純で整備性が良い。
(3)従来のプロペラ型の尾部回転翼では、ギヤボックスは100%の馬力を伝達しなければならないが、本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼の場合には、上方のギヤボックスは50%の馬力で良い。したがって、ギヤボックスが軽量化できる。
5)機体構造設計
本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼では、テールブームに従来のプロペラ型尾部回転翼のような空弾性上の要求がなく、設計が容易である。また、従来の小型機用の垂直尾翼設計を踏襲できるので、設計効率がよく、軽量化できる。
6)装備設計
上下2個のダクテッド・ファン型尾部回転翼のコントロールを共用とすることにより、コストダウンできる。
7)安全性
上下2個のダクテッド・ファン型尾部回転翼のコントロールを個別に制御することにより、飛行中の故障時や軍用における被弾時の安全性を向上させることができる。
8)製造コスト
同一寸法の回転翼を多数生産することにより、コストを低減することができる。
9)運用コスト
可動部分の少ないダクテッド・ファン型尾部回転翼を採用することにより、整備が容易になり、運用コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼を備えた回転翼航空機を示す側面図である。
【図2】 本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼を左前方から見た斜視図である。
【図3】 本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼を右前方から見た斜視図である。
【図4】 本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼の左側正面から見た構造図である。
【図5】 図4のA-A線断面矢視図である。
【図6】 図4のB-B線断面矢視図である。
【図7】 図4のC-C線断面矢視図である。
【図8】 ダクテッド・ファン型回転翼の組立状態を示す一部破断正面図である。
【図9】 ダクテッド・ファン型回転翼の分解状態を示す斜視図である。
【図10】 本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼における下方の回転翼のギヤボックスの詳細を示す側面図である。
【図11】 図10のD-D線断面矢視図である。
【図12】 ダクテッド・ファンを並べて使用することによる性能への影響に関して、数値流体力学による解析に用いた解析モデルの例を示すものである。
【図13】 a、bは図12の解析モデルを用いた解析結果で、ダクテッド・ファン単体での推力および必要パワーと、ツイン・ダクテッド・ファン型とした時の片方のダクテッド・ファンの推力および必要パワーとの比較を示すものである。
【図14】 ツイン・ダクテッド型の2つのファンの回転方向を同方向と逆方向に変えても推力に変化が無いことを示すものである。
【図15】 本発明のツイン・ダクテッド・ファン型尾部回転翼を模擬した風洞試験の結果を、従来のダクテッド・ファン1個の場合と比較したものである。
【図16】 プロペラ型尾部回転翼を備えた従来の全備重量7トン以上の大型回転翼航空機を示す側面図である。
【図17】 ダクテッド・ファン型尾部回転翼を備えた従来の5トン以下の小型回転翼航空機を示す左前方上方から見た斜視図である。
【図18】 大型回転翼航空機用に設計したダクテッド・ファン型尾部回転翼を備えた場合の大型回転翼航空機を示す側面図である。
【符号の説明】
1 回転翼航空機
2 主回転翼
3 機体
4 テールブーム
5 垂直尾翼
6,6′ ダクテッド・ファン型回転翼
7 水平尾翼
8 駆動回転軸
9,9′ ギヤボックス
10 駆動軸
11,11′ 羽根
12,12′ ハブ
13 リンク
14 スリット
15 出力軸
16 ハブ金具
17 ベアリング
18 ピッチ軸
19 ピッチホーン
20 スパイダー
21 スタッド
22 出力軸
23 プッシュロッド
25 温度センサー
26 スパイラル・ベベルギヤ
27,28 駆動ギヤ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17