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明細書 :ガス放射型発光剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4017931号 (P4017931)
公開番号 特開2004-053156 (P2004-053156A)
登録日 平成19年9月28日(2007.9.28)
発行日 平成19年12月5日(2007.12.5)
公開日 平成16年2月19日(2004.2.19)
発明の名称または考案の名称 ガス放射型発光剤
国際特許分類 F42B   5/15        (2006.01)
F42B  12/70        (2006.01)
FI F42B 5/15
F42B 12/70
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2002-212183 (P2002-212183)
出願日 平成14年7月22日(2002.7.22)
審査請求日 平成17年7月12日(2005.7.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
発明者または考案者 【氏名】清水 俊彦
【氏名】横山 英明
【氏名】上本 進
【氏名】中島 真司
【氏名】甲斐 光男
【氏名】水内 陽造
個別代理人の代理人 【識別番号】100094709、【弁理士】、【氏名又は名称】加々美 紀雄
【識別番号】100089299、【弁理士】、【氏名又は名称】旭 宏
【識別番号】100078994、【弁理士】、【氏名又は名称】小松 秀岳
【識別番号】100116713、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 正己
【識別番号】100117145、【弁理士】、【氏名又は名称】小松 純
【識別番号】100094709、【弁理士】、【氏名又は名称】加々美 紀雄
【識別番号】100116713、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 正己
【識別番号】100117145、【弁理士】、【氏名又は名称】小松 純
審査官 【審査官】杉山 悟史
参考文献・文献 国際公開第00/021908(WO,A1)
国際公開第99/011587(WO,A1)
特表2001-505865(JP,A)
特開2000-055598(JP,A)
特開2000-028299(JP,A)
特開平06-050698(JP,A)
調査した分野 F42B 3/00 - 15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
赤外線誘導飛しょう体が飛来した際、自己防衛のために放出される飛しょう性の発光装置に使用される発光剤において、該発光剤が酸素成分と炭素成分を含む燃焼性の化合物又は混合物のうち一つ以上を主成分とした固体系からなり、且つ、補助燃料として金属燃料を該固体系中に含有する組成物であって、該金属燃料の粒径が4μm以下であることを特徴とするガス放射型発光剤。
【請求項2】
補助燃料としての金属燃料の含有量が20重量%以下であることを特徴とする請求項1のガス放射型発光剤。
【請求項3】
補助燃料としての金属燃料がアルミニウム、マグネシウムの一種類以上であることを特徴とする請求項1又は2のガス放射型発光剤。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は航空機の飛行中において、他の航空機等の赤外線誘導飛しょう体から追尾を受けた際に、自己の航空機を防御するために放出される赤外線放射発光装置に用いられる発光剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、航空機の発生する赤外線を誘導装置で捉えて追尾する赤外線誘導飛しょう体は赤外線検知センサーの技術が高度化し、航空機エンジンのジェットプルームが主として発する4~5μmを捉えるために3~5μmの中間赤外線帯が利用されつつある。更に近い将来には受信波長帯を4~5μmと検出感度を向上させた上に航空機が移動物体であるかどうかの判断機能を備え、且つ飛行物体とそれに伴うジェットプルームを一体として捉えて判断する画像処理機能を備えた方向へ発展していくものと予想されている。(株式会社防衛年鑑刊行会「赤外線技術講座」1998.4.20記載)
【0003】
一方、赤外線誘導飛しょう体より自己の航空機を防御するために放出する赤外線放射発光装置では、これまでマグネシウムとテフロン(登録商標)を主成分とした発光剤が用いられてきた。該発光装置は航空機から放出後、自然落下状態で燃焼させることで黒体放射に準じた赤外線を放射し、赤外線誘導飛しょう体を欺瞞する方法であるが、近年の赤外線検知センサーの高度化に伴い、放射する赤外線が航空機のジェットプルームが主として発する4~5μmで最大放射強度を示し、赤外線画像として捉えた場合の燃焼プルーム形状が航空機ジェットプルームに酷似し、且つ航空機と同様の飛行軌道を模擬できる推進機能を備えた赤外線発光装置が研究されるようになってきた。発光装置に用いられる発光剤組成物としては基本的に酸素成分を含む酸化剤と炭素成分を含む燃料からなり、更により高い赤外線放射強度を得るには発光剤の燃焼温度を高める金属燃料を補助燃料として配合する。そのような赤外線放射発光装置が特開2000-28299に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、放射する赤外線が航空機のジェットプルームが主として発する4~5μmで最大放射強度を示し、赤外線画像として捉えた場合の燃焼プルーム形状が航空機ジェットプルームに酷似し、且つ航空機と同様の飛行軌道を模擬できる推進機能を備えた赤外線発光装置に用いられる発光剤として酸素成分を含む酸化剤と炭素成分を含む燃料からなり、更により高い赤外線放射強度を得るために金属燃料を補助燃料として配合される組成物では、燃焼ガスとして4~5μmに最大放射強度を示す一酸化炭素/二酸化炭素が生成される。しかし、赤外線放射発光装置の燃焼プルームをノズルの真後ろ方向より眺めた場合、燃焼プルームから発する4~5μm帯域の赤外線は実際には発光剤の燃焼時間を一とした場合にその十分の一の時間しか検知されない。
【0005】
本発明は、こうした問題を解決して発光剤として酸素成分を含む酸化剤と炭素成分を含む燃料からなり、補助燃料として金属燃料を含有する組成物において、燃焼プルームをノズルの真後ろ方向より眺めた場合に、4~5μm帯域の赤外線の放射時間が上記欺瞞効果を得るに十分長い発光剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記4~5μm帯域の赤外線の放射が発光剤の燃焼時間を一とした場合にその十分の一の時間しか検知されない原因につき鋭意検討した結果、その原因が燃焼ガス中に補助燃料として使用する金属燃料の酸化物が微細粒子として存在し、この粒子によって赤外線が散乱されることにより減衰することにあることを究明した。そして、この知見に基づきさらに検討を重ねて、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち本発明は、
(1)赤外線誘導飛しょう体が飛来した際、自己防衛のために放出される飛しょう性の発光装置に使用される発光剤において、該発光剤が酸素成分と炭素成分を含む燃焼性の化合物又は混合物のうち一つ以上を主成分とした固体系からなり、且つ、補助燃料として金属燃料を該固体系中に含有する組成物であって、該金属燃料の粒径が4μm以下であることを特徴とするガス放射型発光剤、
(2)補助燃料としての金属燃料の含有量が20重量%以下であることを特徴とする前記(1)のガス放射型発光剤、
(3)補助燃料としての金属燃料がアルミニウム、マグネシウムの一種類以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)のガス放射型発光剤、
に関する。更にその詳細を以下に説明する。
【0008】
赤外線が空気中を伝搬する時には、空気中に存在する水蒸気・炭酸ガスのような3原子分子による吸収と、塵・水滴等による散乱による減衰を生じる。吸収による減衰は空気中に存在する水分及び炭酸ガスの単位体積当たりの含有量により、決まるもので、大気の温度、湿度、高度などで定まる。一方、散乱による減衰は空気中に存在する塵・水滴等の粒子によるもので、存在する粒子径により最大に減衰される赤外線の波長が決まる。散乱は存在する粒子径と赤外線波長との関係により、粒子径が赤外線波長に比較して十分小さい場合はレイリー散乱と呼ばれ、減衰の影響を無視できる。粒子径が赤外線波長と同程度であればミー散乱と呼ばれ、粒子径と赤外線波長が同じ時に減衰が最大となる。
【0009】
本発明は、赤外線放射発光装置において発光剤組成中に補助燃料として金属燃料を含有する場合、燃焼後にノズルより排出される生成ガス中にはその金属の酸化物が粒子として存在し、この金属酸化物についても同様に、その粒子径に応じた赤外線の波長にミー散乱による減衰作用を生じさせることに着目したものである。
【0010】
発光剤に補助燃料として配合される金属粒子の粒子径としては例えばアルミニウムでは、一般的に数~数十μmの粒度分布をもつものが用いられる。この金属燃料の粒度分布ではこれが燃焼して生成する金属酸化物粒子により上述した赤外線の伝搬特性の原理より、数~数十μmの広い範囲に渡って減衰作用を生じる。特に、赤外線放射発光装置の燃焼プルームをノズルの真後ろ方向より眺めた場合、補助燃料より生成した金属酸化物煙の散乱により、燃焼プルームからの4~5μm帯域の赤外線放射強度を低下させる。
【0011】
本発明者はこの課題を解決するため鋭意努力を重ねた結果、生成ガス中に存在する金属酸化物粒子径と減衰が最大となる赤外線波長が同一であるという赤外線の伝搬特性の基本原理に着目し、ノズルの真後ろ方向よりながめた時の4~5μm帯域の赤外線放射強度を高くするために、金属粒子径を4μm以下とする方策を見いだした。
【0012】
本発明のガス放射型発光剤は基本的に酸素成分を含む酸化剤と炭素成分を含む燃料とを主成分とし、且つ補助燃料として金属粒子成分を含有する組成物である。主成分の形態としては機械的に混合されている混合物形態或いは酸素成分と炭素成分が同一分子内に含まれている酸化剤と燃料の両機能を備えた化合物形態の二つであるが、化合物形態には複数の該化合物が含まれてもよく、また混合物形態には化合物形態を加えてもよく、例えばオクトーゲン、ヘキソーゲン、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン等を添加させる場合もある。補助燃料としての金属粒子成分は主成分に混合形態にて添加される。
【0013】
主成分が混合物から成る発光剤は、酸化剤と燃料の主成分と補助燃料を結合剤で混合させる。その他に硬化剤、架橋剤、可塑剤、燃焼触媒などを適宜添加させる。燃料と結合剤は結合機能を兼ね備えたものとして合成樹脂でもよく、このようなものとしては例えばグリシジルアジドポリマー、3,3-ビス(アジドメチル)オキセタンとエーテルの共重合物、末端水酸基ポリブタジエン、末端カルボシキル基ポリブタジエン、ポリウレタン等である。また、燃料のみの機能を有する剤料としては、グラファイト、アモルファスカーボン、炭素成分からなる環状化合物等であるが、分解温度が高く、また燃焼後の固系成分が多い等の理由により金属酸化物は好ましくない。塩を構成する物質としては、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、セシウム、ストロンチウムが挙げられるが、比較的低温で分解して酸化作用を呈するアンモニウム、カリウム、ナトリウムが好ましい。より具体的には過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、塩素酸カリウム、アンモニウムジナイトレイト等である。
【0014】
補助燃料としてはアルミニウム、マグネシウム、マグナリウム、ジルコニウム、チタン、ベリリウム、ボロン等の他、希土類金属である酸化ユーロピウム、ふっ化セリウム等が挙げられるが、入手性などよりアルミニウム、マグネシウムが好ましい。
【0015】
酸化剤と燃料及び補助燃料の基本的な配合は、燃料及び補助燃料を酸化させるために必要なだけの酸化剤が加えられる。この場合、燃料中の炭素成分が酸化し、発生する一酸化炭素は二酸化炭素に比較して、放射された赤外線の大気による吸収減衰が小さいため、4~5μm波長帯域を得るには好ましい燃焼生成物である。従って、配合比を酸素バランスにおいて負側にすることも適宜用いることが出来る。
【0016】
本発明において、酸化剤と燃料と補助燃料の配合は、発光剤を基準として酸化剤が40~95重量%、好ましくは60~75重量%、燃料が5~40重量%、好ましくは10~30重量%、補助燃料が0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは5~20重量%である。
【0017】
実際の配合においては成型後の機械的性質などを考慮して、さらに具体的に言えば、例えば過塩素酸アンモニウムと末端水酸基ポリブタジエンとアルミニウムの場合は全体の60重量%から75重量%の過塩素酸アンモニウムと10重量%から30重量%の末端水酸基ポリブタジエンと20重量%以下のアルミニウムを有する配合が好ましい。
【0018】
これら混合形態の発光剤を製造する方法は、一般的に用いられる機械的混合方法で良く、また成型においても基本的には通常の注型方法で良いが、混合時の発光剤の粘度が高い場合は適宜圧填成型などの方法を用いることも出来る。
【0019】
もう一つの形態である主成分が酸化剤と燃料の両機能を備えた化合物形態の場合は酸素成分と炭素成分を含む物質としては、入手性やその分解温度から硝酸エステルが好ましく。硝酸エステルの中でも特にニトロセルロース、ニトログリセリン、ニトログアニジン、ジエチレングリコールジナイトレート、トリメチロールエタントリナイトレートが前記と同様な理由により好ましいが、ニトログリコールは揮発性が高いなどの理由により主成分として用いることは好ましくない。
【0020】
本発明において、酸化剤と燃料を化合物形態で使用する場合においては、発光剤基準で該化合物を40~95重量%、好ましくは50~90重量%、補助燃料を0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%より好ましくは5~20重量%とする。
【0021】
化合物形態の一例として硝酸エステル系を使用した場合の製造実施様態を以下に記載するが、この製造方法に限定されるものではない。
【0022】
ニトロセルロース、ニトログリセリン、アルミニウム、不揮発性溶剤、膠化剤及び安定剤等の添加剤を基本配合とし混合するが、その他推進性、放射強度等の性能向上或いは調整するためにグラファイト、カーボンブラック、過塩素酸アンモニウム等の酸化剤、ヘキソーゲンやオクトーゲン等の化合物を加えて混合してもよい。得られたスラリー状のものを型に注型し、硬化させる。ニトロセルロースとニトログリセリンを主成分とした組成の場合はニトロセルロースとニトログリセリンとを合わせた量が全体の50重量%から90重量%とし、アルミニウムは20重量%以下の配合が好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例に基づいて詳細の説明を記載する。
【0024】
【実施例1】
過塩素酸アンモニウム68重量%、末端水酸基ポリブタジエン14重量%を主成分とし、1~4μm(平均2μm)の粒度分布をもつアルミニウム18重量%を補助燃料として加えた発光剤組成を混合成型し、製作した。該発光剤をモーターケース内、燃焼圧力6MPaで燃焼させ、開口比1のノズルにて得られる燃焼プルームの4~5μm帯域赤外線放射強度を測定した。放射赤外線の分光特性は、赤外線放射特性測定装置(市販商標RSA-1000)、距離100m、計測方位はノズル真後ろ方向、屋外で計測した。その結果、ノズル真後ろ方向における4~5μm帯域の赤外線放射が発光剤の燃焼時間とほぼ同等の時間継続して検知された。
【0025】
【比較例1】
アルミニウムの粒度分布が4~20μm(平均8μm)である以外の配合組成、成型形状は実施例1と同一である。該発光剤をモーターケース内、燃焼圧力6MPaで燃焼させ、開口比1のノズルにて得られる燃焼プルームの4~5μm帯域赤外線放射強度を測定した。放射赤外線の分光特性は、赤外線放射特性測定装置(市販商標RSA-1000)、距離100m、計測方位はズル真後ろ方向、屋外で計測した。その結果、ノズル真後ろ方向における4~5μm帯域の赤外線放射が発光剤の燃焼時間の約十分の一の時間だけ検知された。
【0026】
【発明の効果】
本発明のガス放射型発光剤によれば、生成ガス中に含有する金属粒子酸化物の粒子径が4μm以下となるため、発光装置のノズル後方領域における金属粒子酸化物による赤外線の散乱による減衰が小さくなり、従来技術に比較して4~5μm帯域における赤外線放射の持続時間が長くなる。その結果、ノズル真後ろ方向より追尾してきた赤外線誘導飛しょう体を欺瞞する効果がある。