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明細書 :光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3947791号 (P3947791)
公開番号 特開2005-206873 (P2005-206873A)
登録日 平成19年4月27日(2007.4.27)
発行日 平成19年7月25日(2007.7.25)
公開日 平成17年8月4日(2005.8.4)
発明の名称または考案の名称 光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法
国際特許分類 C23C  16/448       (2006.01)
C23C  16/40        (2006.01)
C23C  16/452       (2006.01)
H01L  21/316       (2006.01)
FI C23C 16/448
C23C 16/40
C23C 16/452
H01L 21/316 X
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2004-014439 (P2004-014439)
出願日 平成16年1月22日(2004.1.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年8月30日 (社)応用物理学会発行の「2003年(平成15年)秋季 第64回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊」第1025頁に発表
審査請求日 平成16年1月22日(2004.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】大越 昌幸
【氏名】井上 成美
【氏名】高尾 寛弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】繁田 えい子
参考文献・文献 特開平09-059765(JP,A)
特開平10-096083(JP,A)
特開2002-249869(JP,A)
調査した分野 C23C 16/00~16/56
JSTPlus(JDream2)
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
減圧した容器内に設置したSi-O-Si結合を含む化合物とC-F結合を含む化合物を、波長170nm以下の光を含む光源により露光するとともに、基体に前記光源又は別の光源からの波長170nm以下の光を照射し、前記化合物から放出される気体を利用して、フッ素が添加された酸化ケイ素膜を前記基体上に化学蒸着することを特徴とするフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項2】
前記フッ素添加酸化ケイ素膜を、常温の任意の前記基体上に形成する請求項1記載のフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項3】
前記フッ素添加酸化ケイ素膜を、所定のパターンに形成する請求項1又は2記載のフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項4】
前記フッ素添加酸化ケイ素膜を、外部から気体を供給することなく形成する請求項1,2又は3記載のフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項5】
前記化合物を露光する光エネルギー密度及び前記基体に照射する光エネルギー密度の両方を変化させることで、屈折率の異なる前記フッ素添加酸化ケイ素膜を形成する請求項1,2,3又は4記載のフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項6】
前記化合物を露光する光エネルギー密度及び前記基体に照射する光エネルギー密度の両方を変化させることで、誘電率の異なる前記フッ素添加酸化ケイ素膜を形成する請求項1,2,3又は4記載のフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス用絶縁材料やフォトニクスを目的とした、Si-O-Si結合を含む化合物とC-F結合を含む化合物への光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法に係り、特にSi-O-Si結合を含む化合物(例、ポリシロキサン)とC-F結合[例、テフロン(商品名)]を含む化合物を、波長170nm以下の光を含む光源により露光し、同化合物から放出される気体を利用して、フッ素添加酸化ケイ素膜を化学蒸着する膜形成法に関するものであり、従来困難とされてきた熱影響を受けやすい基板(高分子材料や生体材料、低融点材料、熱拡散しやすい材料等)への膜形成も可能となり、また気体を外部から導入する必要がないことから、その用途は電気、電子のみならずあらゆる分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
フッ素添加酸化ケイ素膜を形成する方法は、主に減圧容器内に種々の反応ガスを外部から導入し、加熱した基板上で熱分解させ膜形成する。
【0003】
従来の方法では、フッ素添加酸化ケイ素膜形成のために高温を必要とするため、その基体使用に制限があった。つまり、熱影響を受けやすい基体(高分子材料や生体材料、低融点材料、熱拡散しやすい材料等)への膜形成は困難であった。また基板の加熱とともに多くのガス供給路を確保する必要があり、装置が複雑であった。さらに、任意のパターンに膜形成を行うためには、化学的あるいは物理的エッチングの工程を必要としていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑み、良質のフッ素添加酸化ケイ素膜を室温(常温)でかつ外部からの気体の導入なしで、形成可能なSi-O-Si結合を含む化合物とC-F結合を含む化合物への光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願請求項1の発明に係るSi-O-Si結合を含む化合物とC-F結合を含む化合物への光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法は、減圧した容器内に設置したSi-O-Si結合を含む化合物とC-F結合を含む化合物を、波長170nm以下の光を含む光源により露光するとともに、基体に前記光源又は別の光源からの波長170nm以下の光を照射し、前記化合物から放出される気体を利用して、フッ素が添加された酸化ケイ素膜を前記基体上に化学蒸着することを特徴としている。
【0007】
本願請求項2の発明に係るフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1において、前記フッ素添加酸化ケイ素膜を、常温の任意の前記基体上に形成することを特徴としている。
【0009】
本願請求項の発明に係るフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1又は2において、前記フッ素添加酸化ケイ素膜を、所定のパターンに形成することを特徴としている。
【0010】
本願請求項の発明に係るフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1,2又は3において、前記フッ素添加酸化ケイ素膜を、外部から気体を導入することなく形成することを特徴としている。
【0011】
本願請求項の発明に係るフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1,2,3又は4において、前記化合物を露光する光エネルギー密度及び前記基体に照射する光エネルギー密度の両方を変化させることで、屈折率の異なる前記フッ素添加酸化ケイ素膜を形成することを特徴としている。
【0012】
本願請求項の発明に係るフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1,2,3又は4において、前記化合物を露光する光エネルギー密度及び前記基体に照射する光エネルギー密度の両方を変化させることで、誘電率の異なる前記フッ素添加酸化ケイ素膜を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法によれば、熱の制限を受けることなく任意の基体上に所望のパターンで容易に良質のフッ素添加酸化ケイ素膜が形成できる。このフッ素添加酸化ケイ素膜を利用して、微細な電子デバイスの絶縁層や光学素子等が形成可能であるため、現在のより高速な電子デバイスの製作や将来の光デバイスへ移行するために必要不可欠な技術となり、本発明はこれら電子及び光学分野に多大に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
図1は本発明に係る光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法の実施の形態を示す。この図において、1は減圧した容器としての真空容器であり、真空ポンプ2で真空排気されるようになっている。真空容器1にはMgFの光透過窓3が形成されている。真空容器1内にはSi-O-Si結合を含む化合物として有機ポリシロキサン10(例えば板状をなしている)及びC-F結合を含む化合物としてポリテトラフルオロエチレン11(例えば板状をなしている)が配置されるとともにケイ素基板20(フッ素添加酸化ケイ素を堆積させるための基体)が配置されている。前記MgFの光透過窓3の外側には光源30(波長170nm以下の光を含むもの)が設けられており、そのレーザー光が光透過窓3を通して有機ポリシロキサン10及びポリテトラフルオロエチレン11に照射されるとともにケイ素基板20にも照射される配置とする。
【0016】
有機ポリシロキサン10及びポリテトラフルオロエチレン11に照射する光として、波長170nm以下の光を含む必要があるのは、170nmを越える波長ではSiOを形成するための気体を生成させ、選択的にフッ素のみを添加させることができないからであり、光源30はポリシロキサンを構成している側鎖を光開裂により完全に除去し、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖を選択的にSiOに添加できる170nm以下の波長の光を含む必要がある。例えば、真空紫外のレーザー光を発生可能なレーザー装置が好適に使用できる。
【0017】
図1の構成において、光源30としてFレーザー装置を用い、実質的に真空(0.2Torr程度)に減圧した真空容器1内に有機ポリシロキサン10及びポリテトラフルオロエチレン11を設置し、その表面に真空紫外Fレーザー光(波長157nm)をアブレーションしきい値(有機ポリシロキサンに対して約140mJ/cm、ポリテトラフルオロエチレンに対して約90mJ/cm)以下で照射した。そのときの基板20上でのレーザーエネルギー密度は約18mJ/cm、パルス繰り返し周波数20Hz及び照射時間15分であった。これにより、有機ポリシロキサン10及びポリテトラフルオロエチレン11の露光部分から気体が放出され、この気体を利用して前記レーザー光の光路中に置かれたケイ素基板20上にフッ素添加酸化ケイ素膜を化学蒸着した。つまり、前記気体のケイ素基板20付近での光分解によりフッ素添加酸化ケイ素を膜堆積させた。この化学蒸着に際して前記ケイ素基板20の加熱や冷却は不要であり、室温(常温)で実施できる。また、外部から気体を導入する必要もない。
【0018】
図2は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による形成膜の分析結果であり、フーリエ変換赤外吸収スペクトル図である。1080cm-1付近にSi-O-Si結合を示す吸収ピークは観測された。したがって、形成された膜は酸化ケイ素膜であることがわかった。
【0019】
図3は、X線光電子分光法による形成膜の分析結果であり、X線光電子分光スペクトルの図である。ケイ素(Si)、酸素(O)及びフッ素(F)に関するピークのみが観測された。また、炭素等の不純物が混入していないことがわかった。したがって、形成された膜はフッ素のみが添加されていることがわかった。
【0020】
図4は、X線光電子分光法による形成膜の分析結果であり、フッ素(F 1s)のピークのみを詳細に分析したX線光電子分光スペクトルの図である。ピーク位置が686.1eVであった。このピーク位置はSi-F結合のピーク位置とよく一致する。したがって、添加されているフッ素は、Si-F結合として存在していることがわかった。
【0021】
図5は、X線光電子分光法による形成膜の深さ方向の分析結果を示す図である。基板はケイ素基板を用いている。図5の横軸はアルゴンガスによるスパッタ時間(スパッタは形成膜を削った時間;つまり深さ)、縦軸は原子濃度である。形成膜中の酸素、ケイ素及びフッ素の原子濃度は、深さ方向にほぼ一様で、フッ素濃度は、約2%であった。したがって、形成膜の化学組成は深さ方向にも一様であることが判明した。またC 1sのX線光電子分光スペクトルから、形成膜中への炭素の混入は認められなかった。
【0022】
図6は、エリプソメータによる形成膜の屈折率の測定結果を示す図である。レーザーエネルギー密度を増加すると屈折率が減少することが判明した。したがって、適当なレーザーエネルギー密度を用いることにより、所望の屈折率をもつフッ素添加酸化ケイ素膜を得ることができることがわかった。
【0023】
図7は、形成膜の比誘電率の測定結果を示す図である。レーザーエネルギー密度を増加すると比誘電率が減少することが判明した。したがって、適当なレーザーエネルギー密度を用いることにより、所望の比誘電率をもつフッ素添加酸化ケイ素膜を得ることができることがわかった。
【0024】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0025】
(1)実質的に真空に減圧した真空容器1内に設置した有機ポリシロキサン10とポリテトラフルオロエチレン11を、波長170nm以下の光を含む光源30により露光し、有機ポリシロキサン10とポリテトラフルオロエチレン11から放出される気体を利用することにより、光源30の光路中に置かれた基板上に良質のフッ素添加酸化ケイ素を化学蒸着することができる。
【0026】
(2)前記フッ素添加酸化ケイ素を化学蒸着する際に、基板の加熱や冷却は不要であり、室温(常温)の基板上に成膜できる。したがって、従来困難とされてきた熱影響を受けやすい基板(高分子材料や生体材料、低融点材料、熱拡散しやすい材料等)への膜形成も可能となる。
【0027】
(3)前記フッ素添加酸化ケイ素を化学蒸着する際に、外部からの気体の導入は不要であり、複雑な配管設備なしで成膜できる。したがって、場所の制約を受けることなく非常に簡単かつ容易な成膜が可能となる。
【0028】
(4)光源30からの光が照射された場所のみに成膜されることから、光を整形や走査することにより、所望のパターンのフッ素添加酸化ケイ素膜を基板上に形成できる。したがって、電子デバイス等の絶縁膜や光集積回路等を製作するための容易なかつ精密なパターンニングが可能となる。
【0029】
(5)光エネルギー密度を変化させることによって屈折率の異なるフッ素添加酸化ケイ素膜を形成可能である。
【0030】
(6)光エネルギー密度を変化させることによって誘電率の異なるフッ素添加酸化ケイ素膜を形成可能である。
【0031】
なお、本発明の実施の形態においては、図1にフッ素添加酸化ケイ素膜を堆積させる基板20として平板状のものを図示したが、平板状に限定されず、湾曲面等を有する基体状にもフッ素添加酸化ケイ素膜を所定パターンで堆積させることが可能である。
【0032】
また、図1の構成では、Si-O-Si結合を含む化合物としての有機ポリシロキサン10とC-F結合を含む化合物としてのポリテトラフルオロエチレン11とケイ素基板20に同時に光源30の光を照射したが、別々の光源の光を照射してもよい。この場合を図8に本発明の他の実施の形態として示す。
【0033】
図8において、板状をなした有機ポリシロキサン10に対してケイ素基板20を例えば略直交配置として、有機ポリシロキサン10及びポリテトラフルオロエチレン11に波長170nm以下の光を照射する光源30とは別方向(例えば略直交方向)から別の光源31により波長170nm以下の光を基板20に照射する構成である。
【0034】
なお、その他の構成は前述した実施の形態と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
この図8では、ケイ素基板20の面積が大きい場合にも有機ポリシロキサン10やポリテトラフルオロエチレン11への光照射が妨げられることが少ないため、大きな基板面へのフッ素添加酸化ケイ素膜を能率的に化学蒸着可能な利点がある。
【0036】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る光照射によるフッ素添加酸化ケイ素膜の形成法の実施の形態を示す模式的な構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る形成膜について、波数と透過率との関係を示すフーリエ変換赤外吸収スペクトル図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る形成膜について、結合エネルギーと強度との関係を示すX線光電子分光スペクトル図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る形成膜について、結合エネルギーと強度との関係を示すF 1sピークのみを詳細に解析したX線光電子分光スペクトル図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る形成膜について、スパッタリング時間と形成膜中の原子濃度との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る形成膜について、レーザーエネルギー密度と屈折率との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る形成膜について、レーザーエネルギー密度と比誘電率との関係を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態を示す模式的な構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 真空容器
2 真空ポンプ
3 光透過窓
10 有機ポリシロキサン
11 ポリテトラフルオロエチレン
20 ケイ素基板
30,31 光源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7