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明細書 :2波長赤外線画像処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4016113号 (P4016113)
公開番号 特開2006-162369 (P2006-162369A)
登録日 平成19年9月28日(2007.9.28)
発行日 平成19年12月5日(2007.12.5)
公開日 平成18年6月22日(2006.6.22)
発明の名称または考案の名称 2波長赤外線画像処理方法
国際特許分類 G01J   5/48        (2006.01)
G01J   5/60        (2006.01)
FI G01J 5/48 A
G01J 5/60 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2004-352501 (P2004-352501)
出願日 平成16年12月6日(2004.12.6)
審査請求日 平成16年12月6日(2004.12.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】岡村 壽洋
【氏名】長嶋 満宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開平02-078906(JP,A)
特開2004-170350(JP,A)
特開2000-111409(JP,A)
浅沼 市男 外4名,“NOAA・AVHRR熱赤外波長帯域の大気補正”,日本写真測量学会年次学術講演会発表論文集,1984年 5月,pp.135-138
調査した分野 G01J5/00-5/62
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
2波長赤外線カメラで撮像する目標までの大気が同一温湿度で均一で、赤外線放射強度が大気中を指数関数的に減少し、かつ2波長それぞれの赤外線大気減衰率が異なるとともに、それぞれの赤外線大気減衰率の比が一定の既知の値であると仮定して下記(1)式、(2)式、(3)式を導き、
=Aexp(-kL) (1)
=Aexp(-kL) (2)
a=k/k (3)
{但し、A:目標から放射された直後の第1の波長の赤外線放射強度、A:目標から放射された直後の第2の波長の赤外線放射強度、S:大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラに入射する直前の前記第1の波長の赤外線放射強度、S:大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラに入射する直前の前記第2の波長の赤外線放射強度、L:伝搬距離、k:前記第1の波長の赤外線大気減衰率、k:前記第2の波長の赤外線大気減衰率(k≠k
上記(1)式、(2)式、(3)式から伝搬距離L、減衰率k、kを消去して
/(A)=S/(S) (4)
を導き、
前記2波長赤外線カメラで撮像した目標画像の画素又は画素群毎に得た上記(4)式の右辺の観測値と、前記赤外線放射強度A及びAについての目標温度T(絶対温度)を含むプランクの式から、前記目標温度Tを算出する2波長演算処理を行うことにより、前記目標の温度分布を算出することを特徴とする2波長赤外線画像処理方法。
【請求項2】
前記2波長演算処理において、前記2波長のうちの少なくとも一方の赤外線大気減衰率に基づいて、前記目標までの距離を算出する請求項1記載の2波長赤外線画像処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、距離が不明な目標から放射され、大気を伝搬して減衰した2波長赤外線を2波長赤外線カメラで撮像し、2波長赤外線画像処理を行うことで、1波長では不可能な、目標の正確な温度分布を求めることが可能な2波長赤外線画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、赤外線画像センサを用いて赤外線放射率が既知の目標の温度分布を測定するためには、目標からの赤外線を赤外線センサで捉え、センサの各画素が捉えた目標の赤外線放射量を測定するとともに、大気の減衰率及び目標までの距離から赤外線の減衰量を算出し、測定した赤外線放射量にその減衰量を加算して、目標の放出する正確な赤外線放射量から目標の温度分布を求めなければならない。つまり、大気の赤外線減衰率及び目標までの距離が既知でなければ、目標の温度分布を正確に測定することができない。
【0003】
しかしながら、野外測定においては、大気の赤外線減衰率及び目標までの距離を正確に求めることが困難な場合が多く、その場合には、赤外線減衰率及び目標までの距離を概略値に設定することで、目標の温度を測定していた。しかしながら、この方法では誤差が大きく目標の温度並びに温度分布を正確に求めることは困難であった。
【0004】
なお、2波長赤外線画像を取得する装置としては、下記特許文献1などが知られているが、距離が不明な目標から放射された2波長赤外線の画像処理により、目標の正確な温度分布を求めることを目的としたものは見当たらない。
【0005】

【特許文献1】特開平9-166400号公報「2波長分離光学系による2波長赤外線画像ホーミング装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の様な課題を解決するためになされたものであり、異なった2波長帯域の赤外線を用いることで、大気の赤外線減衰率及び目標までの距離が不明であっても、2波長赤外線帯域の減衰率の比が既知であれば、目標の温度、さらには温度分布を正確に求めることが可能な2波長赤外線画像処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る2波長赤外線画像処理方法は、2波長赤外線カメラで撮像する目標までの大気が同一温湿度で均一で、赤外線放射強度が大気中を指数関数的に減少し、かつ2波長それぞれの赤外線大気減衰率が異なるとともに、それぞれの赤外線大気減衰率の比が一定の既知の値であると仮定して下記(1)式、(2)式、(3)式を導き、
=Aexp(-kL) (1)
=Aexp(-kL) (2)
a=k/k (3)
{但し、A:目標から放射された直後の第1の波長の赤外線放射強度、A:目標から放射された直後の第2の波長の赤外線放射強度、S:大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラに入射する直前の前記第1の波長の赤外線放射強度、S:大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラに入射する直前の前記第2の波長の赤外線放射強度、L:伝搬距離、k:前記第1の波長の赤外線大気減衰率、k:前記第2の波長の赤外線大気減衰率(k≠k
上記(1)式、(2)式、(3)式から伝搬距離L、減衰率k、kを消去して
/(A)=S/(S) (4)
を導き、
前記2波長赤外線カメラで撮像した目標画像の画素又は画素群毎に得た上記(4)式の右辺の観測値と、前記赤外線放射強度A及びAについての目標温度T(絶対温度)を含むプランクの式から、前記目標温度Tを算出する2波長演算処理を行うことにより、前記目標の温度分布を算出することを特徴としている。
【0009】
また、前記2波長演算処理において、前記2波長のうちの少なくとも一方の赤外線大気減衰率に基づいて、前記目標までの距離を算出する構成とすることも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る2波長赤外線画像処理方法によれば、目標までの距離が不明で、かつ大気の赤外線減衰率が不明であっても2波長の赤外線帯域のそれぞれの大気の減衰率の比が既知であれば、2波長赤外線カメラで撮像した目標の各画素毎(又は各画素群毎)に温度を求めることにより、目標の温度分布を正確に求めることができる。また大気の減衰率が既知の場合は、目標までの距離を求めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、2波長赤外線画像処理方法の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1及び図2は本発明に係る2波長赤外線画像処理方法の実施の形態であって、図1は目標1から放射された2波長帯域の赤外線4,5が、大気2により減衰を受け、2波長赤外線カメラ3に入射されるときの説明図、図2は目標1から放射された直後と赤外線カメラ3に入射する直前の2波長の赤外線4,5の放射強度を示す説明図である。なお、説明を簡略化するために目標1の赤外線放射率を1(黒体)と仮定する。また、2波長赤外線カメラ3は2波長帯域の赤外線画像を同一画角、同一画素数で取得するものである。2波長赤外線カメラ3の後段には、該カメラ3からの出力画像を取り込んで、2波長赤外線カメラのそれぞれの帯域における対応画素毎に(2波長出力画像のそれぞれの対応画素毎に)それぞれの出力値と2波長赤外線の大気減衰率の比から、目標の温度分布(画素に対応した目標部分の温度)を求める2波長演算処理手段6が設けられている。
【0013】
図1において目標1から波長λ01の赤外線4及び波長λ23の赤外線5が放射されているものとする。それぞれの赤外線は、伝搬距離Lだけ伝搬し、2波長赤外線カメラ3で検出するものとする。大気2を伝搬中に、それぞれの大気減衰率k及びkにより、赤外線が減衰するものとする。
【0014】
図2に減衰前後の赤外線放射強度を示す。Aを目標1から放射された直後の波長λ01の赤外線放射強度、Aを目標1から放射された直後の波長λ23の赤外線放射強度、Sを大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラ3に入射する直前の波長λ01の赤外線放射強度、Sを大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラ3に入射する直前の波長λ23の赤外線放射強度とする。
【0015】
大気が同一温湿度で均一と仮定すれば、減衰率k及びkは一定であり、赤外線が距離Lだけ伝搬したとすると、(1)式及び(2)式が成立する。
【数1】
JP0004016113B2_000002t.gif

【数2】
JP0004016113B2_000003t.gif

(1)式及び(2)式は赤外線放射強度が大気中を指数関数的に減少することを示している。
【0016】
(1)式及び(2)式における減衰率kとkの比をaとおくと
【数3】
JP0004016113B2_000004t.gif

(1)式、(2)式、(3)式から伝搬距離L、減衰率k、kを消去すると
【数4】
JP0004016113B2_000005t.gif

【0017】
(4)式において、2波長赤外線カメラに入射する直前の赤外線放射強度S、Sは2波長赤外線カメラを用いて測定可能な値である。また(3)式の減衰率k及びkは大気の状態(温度・湿度等)で変動する値であるが、それぞれの変動率は経験的に等しいと考えられるため、その比aは一定の既知の値と考えられる。そこで
【数5】
JP0004016113B2_000006t.gif

Sを(5)式のように定義するとSは観測値であり、既知である。そこで(4)式は
【数6】
JP0004016113B2_000007t.gif

とおくことができる。
【0018】
次に2波長赤外線カメラ3の感度を図3の様に仮定する。2波長赤外線カメラにおいて、短波長側の感度は波長λ0~λ1の範囲にある。また長波長側の感度は波長λ2~λ3の範囲にある。この波長範囲において、それぞれの赤外線大気減衰率k、kは一定とする(変動する場合は、平均をとる)。また波長λに対する赤外線カメラの感度をw(λ)とする。目標温度をT(絶対温度)とおくと、大気減衰が無い場合(L=0)の2波長赤外線カメラが測定する赤外線放射強度は、それぞれA及びAと一致するので、プランクの式から、
【数7】
JP0004016113B2_000008t.gif

【数8】
JP0004016113B2_000009t.gif

【0019】
(7)式及び(8)式を計算の簡略化のためTの多項式で近似すると、
【数9】
JP0004016113B2_000010t.gif

【数10】
JP0004016113B2_000011t.gif

ここで、A及びAはそれぞれm1次数(m1:正整数)、m2次数(m2:正整数)のTの多項式関数となるが、(9)式及び(10)式の係数a及びbは、実験室内(L=0と見なすことができる)で温度Tを変えながら目標を2波長赤外線カメラで撮像し、その時の温度に対応するA及びAを測定し、最小二乗法から決定することができる。またm1及びm2は十分満足な近似が可能な値として設定するものとする。
【0020】
(9)式及び(10)式を(6)式に代入すると
【数11】
JP0004016113B2_000012t.gif

(11)式において、a、b、a、Sは既知であるから、(11)式は非線形方程式を解くためのアルゴリズムとして知られるニュートン法または二分法を用いて目標温度Tに関して解くことができる。つまり、目標を撮像した2波長赤外線カメラの2波長出力画像における対応する画素同士の出力値を処理することにより、目標の正確な温度分布(各画素に対応した目標部分の温度)を求めることができる。
【0021】
なお、目標の赤外線放射率εが既知であり1より小さい場合は、プランクの式等を用いて黒体の温度から目標の温度に容易に換算することができる。
【0022】
図1及び図2の実施の形態においては、2波長演算処理手段6が2波長赤外線カメラ3の観測値S、Sを取り込み、(5),(6),(11)式を演算することで、目標画像の画素毎に目標温度Tを求めることができる。なお、1画素毎に目標温度Tを演算する代わりに、隣接する複数画素を1つの画素群と考えて、画素群毎に目標温度Tを演算するようにしてもよい。
【0023】
以上の方法で目標温度Tを求めることができるが、(9)式からAが求まり、kが大気伝搬中一定で既知であれば、(1)式を変形して、
【数12】
JP0004016113B2_000013t.gif

(12)式から目標までの距離Lを求めることができる。本実施の形態においては、2波長演算処理手段6で減衰率kを既知として(12)式を演算することで距離Lを得ることができる。なお、減衰率kが既知であれば、A,S,kの代わりにA,S,kを用いて距離Lを求めることができる。
【0024】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0025】
(1) 2波長赤外線カメラ3で撮像した目標画像の画素又は画素群毎に、2波長演算処理手段6によって2波長演算処理(観測値S、Sを用いた(5),(6),(11)式の演算)を行うことにより、目標1までの距離L及び2波長それぞれの赤外線大気減衰率k,kが不明でも、前記2波長の赤外線大気減衰率の比aを一定の既知の値として、目標1の温度分布を算出することが可能である。
【0026】
(2) 前記2波長演算処理において、前記2波長のうちの少なくとも一方の赤外線大気減衰率k又はkが既知である場合、目標1までの距離Lを算出することが可能である。
【0027】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る2波長赤外線画像処理方法の実施の形態であって、目標から放射された2波長帯域の赤外線が、大気により減衰を受け、2波長赤外線カメラに入射される場合の説明図である。
【図2】本実施の形態において、目標から放射された直後と赤外線カメラに入射する直前の2波長の赤外線の放射強度を示す説明図である。
【図3】2波長赤外線カメラのそれぞれの波長帯域における感度曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
1 目標
2 大気
3 2波長赤外線カメラ
4,5 赤外線
6 2波長演算処理手段
L 伝搬距離
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2