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明細書 :船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4016115号 (P4016115)
公開番号 特開2006-224836 (P2006-224836A)
登録日 平成19年9月28日(2007.9.28)
発行日 平成19年12月5日(2007.12.5)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法及び装置
国際特許分類 B63G   8/38        (2006.01)
H03H  21/00        (2006.01)
FI B63G 8/38
H03H 21/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2005-041649 (P2005-041649)
出願日 平成17年2月18日(2005.2.18)
審査請求日 平成17年2月18日(2005.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】草田 健太郎
【氏名】木村 利治
【氏名】寺西 陽子
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】出口 昌哉
参考文献・文献 特開2004-050970(JP,A)
特開2003-026088(JP,A)
特開2000-304533(JP,A)
特開平05-315894(JP,A)
特開平07-134061(JP,A)
調査した分野 B63G 8/38
H03H 21/00
特許請求の範囲 【請求項1】
船舶の探知を行うため、水中での船舶の腐食や防食に起因する交流水中電界信号又は交流磁気信号を探知信号として抽出する船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法であって、
界センサによって検出された交流水中電界信号又は磁気センサによって検出された交流磁気信号を、所定のサンプリング周波数で離散測定データとして得する取得ステップと、
取得された前記離散測定データを離散ウェーブレット変換で周波数帯域分割することにより、前記探知信号の存在する周波数帯域と測定環境下での有色雑音の周波数帯域とを分離する分離ステップと、
前記離散ウェーブレット変換による周波数帯域分割後の前記離散測定データに対して、白色雑音除去のためのディジタルフィルタであるノイズキャンセラを適用して、前記探知信号を抽出する抽出ステップと、
を含むことを特徴とする船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法。
【請求項2】
前記ノイズキャンセラは、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データが入力されるFIRフィルタ及びカルマンフィルタを有し、
前記抽出ステップは、
前記FIRフィルタのフィルタ係数を状態変数として前記カルマンフィルタによりデータ点毎に最適フィルタ係数を逐次求める導出ステップと
求められた前記最適フィルタ係数により構成される前記FIRフィルタによって、前記周波数帯域分割後の離散測定データから白色雑音除去後離散データを得る白色雑音除去ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1記載の船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法。
【請求項3】
前記ノイズキャンセラは適応フィルタをさらに有し、
前記導出ステップに先だって、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データを前記適応フィルタにかけ、所定の適応アルゴリズムにより一度フィルタ係数を求め、該フィルタ係数を正規化したものを、前記状態変数である前記FIRフィルタのフィルタ係数の初期値に設定する処理を実行することを特徴とする請求項2記載の船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法。
【請求項4】
船舶の探知を行うため、水中での船舶の腐食や防食に起因する交流水中電界信号又は交流磁気信号を探知信号として抽出する船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置であって、
交流水中電界信号を検出する電界センサ又は交流磁気信号を検出する磁気センサと、
検出された前記交流水中電界信号又は前記交流磁気信号を所定のサンプリング周波数で離散測定データとして取り込み、この離散測定データを離散ウェーブレット変換で周波数帯域分割して前記探知信号の存在する周波数帯域と測定環境下での有色雑音の周波数帯域とを分離する離散ウェーブレット変換手段と、
前記離散ウェーブレット変換手段による周波数帯域分割後の前記離散測定データから白色雑音を除去して前記探知信号を抽出するディジタルフィルタであるノイズキャンセラと
を備えたことを特徴とする船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置。
【請求項5】
前記ノイズキャンセラは、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データが入力されるFIRフィルタ及びカルマンフィルタを有し、
前記カルマンフィルタは、前記FIRフィルタのフィルタ係数を状態変数としてデータ点毎に最適フィルタ係数を逐次求め
前記FIRフィルタは、前記カルマンフィルタによって求められた前記最適フィルタ係数により構成され、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データから白色雑音除去信号を得ることを特徴とする請求項4記載の船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置。
【請求項6】
前記ノイズキャンセラは適応フィルタをさらに有し、
前記周波数帯域分割後の前記離散測定データを前記適応フィルタにかけ、所定の適応アルゴリズムにより一度フィルタ係数を求め、そのフィルタ係数を正規化したものを、前記状態変数である前記FIRフィルタのフィルタ係数の初期値とすることを特徴とする請求項5記載の船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の探知に関して、雑音中に埋もれた探知信号である船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号を抽出する信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
航行している船舶は、その船体の腐食や防食に起因して水中に電流が流れ、電磁界を発生している。この電磁界は船舶の有するプロペラの回転等により周期的(極低周波)に変化する性質がある。
【0003】
従来、本出願人において、前記航行している船舶の腐食や防食に起因する交流水中電界信号又は交流磁気信号の検出による探知方法として、電界又は磁界のセンサシステムから得られた離散測定データに対して、自己相関処理を行うことにより雑音を取り除き、フーリエ解析を用いて周波数解析を行う方法が採られていた。
【0004】
また、白色雑音除去のためのノイズキャンセラとしては、適応フィルタを用いたものがある。適応フィルタとは信号、雑音ともに定常性があるという仮定の下、観測信号を入力として抽出したい信号(所望信号)との平均2乗誤差を最小にするようにフィルタ係数を少しずつ自己調整し、最適推定値を出力するフィルタである。この最適フィルタ係数を求めるアルゴリズムを適応アルゴリズムといい、代表的なもとのとして、LMSアルゴリズムやSDMアルゴリズムがある。その適応フィルタを利用したノイズキャンセラの一例として、白色雑音によって乱された正弦波を観測信号とし、その観測信号から原信号、この場合正弦波、を抽出する適応ラインエンハンサと呼ばれるものがある。図5に適応ラインエンハンサの構成図を示す。
【0005】
図5の適応ラインエンハンサは、FIR(有限インパルス応答)フィルタ30と適応アルゴリズム(LMSアルゴリズム等)31とを備え、FIRフィルタ30はN個(N:整数)の遅延演算子30aとN個のフィルタ係数部30bを有している。yk-1,yk-2,…,yk-Nは離散時刻kでの1段目~N段目の遅延演算子30aの出力信号、h1,k,h2,k,…,hN,kは離散時刻kでの1段目~N段目のフィルタ係数部30bのフィルタ係数である。フィルタ係数h1,k,h2,k,…,hN,kはFIRフィルタ30の入力信号yと出力z^との誤差eに応じて所定の適応アルゴリズムで変化させる。
【0006】
この場合、例えば、白色雑音vによって乱された正弦波信号zを入力信号yとしたとき、その入力信号から白色雑音の抑圧された原信号(正弦波)を出力z^として抽出することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上の従来技術によっては、自己相関性のある有色雑音は自己相関処理では除去できず、また、探知信号(船舶の腐食や防食に起因する交流水中電界信号又は交流磁気信号)のような時間局所的に存在する非定常信号は、時間積分するフーリエ解析では積分時間間隔に対して探知信号の存在する時間間隔が短い場合、必ずしも探知信号の周波数スペクトルが抽出できるとは言えない。また、図5のような従来の適応ラインエンハンサを用いたノイズキャンセラでは、信号と雑音に定常性が仮定されており、探知信号のように時間局所的に存在する交流水中電界信号又は交流磁気信号では、観測信号のパワースペクトルが時間に伴って変化し、必ずしも適応アルゴリズムにより最適フィルタ係数が求められるとは言えない。
【0008】
そこで、本発明は、広帯域雑音中の非定常信号である交流水中電界信号又は交流磁気信号を効果的に抽出可能な船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法は、船舶の探知を行うため、水中での船舶の腐食や防食に起因する交流水中電界信号又は交流磁気信号を探知信号として抽出する場合において、
界センサによって検出された交流水中電界信号又は磁気センサによって検出された交流磁気信号を、所定のサンプリング周波数で離散測定データとして得する取得ステップと、
取得された前記離散測定データを離散ウェーブレット変換で周波数帯域分割することにより、前記探知信号の存在する周波数帯域と測定環境下での有色雑音の周波数帯域とを分離する分離ステップと、
前記離散ウェーブレット変換による周波数帯域分割後の前記離散測定データに対して、白色雑音除去のためのディジタルフィルタであるノイズキャンセラを適用して、前記探知信号を抽出する抽出ステップと、
を含むことを特徴としている。
【0011】
前記交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法において、
前記ノイズキャンセラは、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データが入力されるFIRフィルタ及びカルマンフィルタを有し、
前記抽出ステップは、
前記FIRフィルタのフィルタ係数を状態変数として前記カルマンフィルタによりデータ点毎に最適フィルタ係数を逐次求める導出ステップと
求められた前記最適フィルタ係数により構成される前記FIRフィルタによって、前記周波数帯域分割後の離散測定データから白色雑音除去後離散データを得る白色雑音除去ステップと、
を含むとよい。
【0012】
前記ノイズキャンセラは適応フィルタをさらに有し、
前記導出ステップに先だって、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データを前記適応フィルタにかけ、所定の適応アルゴリズムにより一度フィルタ係数を求め、該フィルタ係数を正規化したものを、前記状態変数である前記FIRフィルタのフィルタ係数の初期値に設定する処理を実行するとよい。
【0013】
本発明に係る交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置は、船舶の探知を行うため、水中での船舶の腐食や防食に起因する交流水中電界信号又は交流磁気信号を探知信号として抽出する構成において、
交流水中電界信号を検出する電界センサ又は交流磁気信号を検出する磁気センサと、
検出された前記交流水中電界信号又は前記交流磁気信号を所定のサンプリング周波数で離散測定データとして取り込み、この離散測定データを離散ウェーブレット変換で周波数帯域分割して前記探知信号の存在する周波数帯域と測定環境下での有色雑音の周波数帯域とを分離する離散ウェーブレット変換手段と、
前記離散ウェーブレット変換手段による周波数帯域分割後の前記離散測定データから白色雑音を除去して前記探知信号を抽出するディジタルフィルタであるノイズキャンセラと
を備えたことを特徴としている。
【0014】
前記交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置において、
前記ノイズキャンセラは、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データが入力されるFIRフィルタ及びカルマンフィルタを有し、
前記カルマンフィルタは、前記FIRフィルタのフィルタ係数を状態変数としてデータ点毎に最適フィルタ係数を逐次求め
前記FIRフィルタは、前記カルマンフィルタによって求められた前記最適フィルタ係数により構成され、前記周波数帯域分割後の前記離散測定データから白色雑音除去信号を得るとよい。
【0015】
前記交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出装置において、
前記ノイズキャンセラは適応フィルタをさらに有し、
前記周波数帯域分割後の前記離散測定データを前記適応フィルタにかけ、所定の適応アルゴリズムにより一度フィルタ係数を求め、そのフィルタ係数を正規化したものを、前記状態変数である前記FIRフィルタのフィルタ係数の初期値とするとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広帯域雑音の中から非定常信号である船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号を船舶探知のために抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法及び装置の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態に係る信号抽出装置の概略構成図、図2はその信号抽出手順の説明図、図3は図1のノイズキャンセラ本体47bの構成図、図4は信号抽出手順の内部データ(フィルタ係数等)の流れを含むフローチャートである。
【0019】
図1に示すように、信号抽出装置は、電界又は磁気センサ41と、センサ41の検知出力信号を増幅するアンプ42と、AD変換器43と、測定データ用バッファ(Data Buffer)としてのメモリ(RAM)44と、離散ウェーブレット変換手段としての離散ウェーブレット変換用DSP(Digital Signal Processor)45と、離散ウェーブレット変換用DSP45による帯域分割後データ用バッファ(Data Buffer)としてのメモリ(RAM)46と、ノイズキャンセラ(Noise Canceller)としてのノイズキャンセル部用DSP(Digital Signal Processor)47と、処理波形表示のためのディスプレイ48とを備えている。
【0020】
ノイズキャンセル部用DSP47は、適応ラインエンハンサとしての適応フィルタ(Adaptive Filter)47aと、雑音を除去するディジタルフィルタとしてのFIRフィルタ及びカルマンフィルタ(Kalman Filter)とを含むノイズキャンセラ本体47bとを有している。ノイズキャンセラ本体47bは探知信号のような非定常信号用に適用範囲を拡張するため、前記FIRフィルタのフィルタ係数を状態変数とする前記カルマンフィルタを内蔵するものである。また、カルマンフィルタは状態変数の初期値を必要とする。前記適応フィルタ47aはノイズキャンセラ本体47b内のFIRフィルタの各フィルタ係数(カルマンフィルタの状態変数)の初期値設定のための設けられている。このノイズキャンラ本体47bの詳細は図3で後述する。
【0021】
前記電界又は磁気センサ41は、航行している船舶の探知を行うため、水中での船舶の腐食や防食に起因する探知信号としての交流水中電界信号又は交流磁気信号を検知するものであり、電界センサの場合には交流水中電界信号を、磁気センサの場合には交流磁気信号を検知する。この検知出力信号はアンプ42で増幅される。AD変換器43はアンプ42で増幅されたセンサ出力信号(アナログ信号)を所定のサンプリング周波数で取り込みディジタル信号として出力し、ディジタル信号の測定データがメモリ44に記憶される。これが、センサ41~AD変換器43により所定のサンプリング周波数で取り込まれた図2の交流水中電界信号又は交流磁気信号の離散測定データ10であり、離散ウェーブレット変換用DSP45による離散ウェーブレット変換11により周波数帯域のオクターブ等分割が行われ、帯域分割後離散データ12となる。
【0022】
この離散ウェーブレット変換11により探知信号と有色雑音を分離できる。例えば、有色雑音が、目的とする探知信号とは周波数帯域が異なる場合、その周波数帯域は除去できる。仮にサンプリング周波数が20Hzの場合、オクターブ等分割により、Level-1は5Hzから10Hzまでの帯域、Level-2は2.5Hzから5Hzまでの帯域、Level-3は1.25Hzから2.5Hzまでの帯域といったように分割される。
【0023】
次に、図2において、各帯域分割後離散データ12はノイズキャンセル部13(図1のノイズキャンセル部用DSP47)に入力され、各帯域におけるノイズキャンセル部13にて白色雑音の除去が行われる。
【0024】
図1に示したように、前記ノイズキャンセル部用DSP47は、ノイズキャンセラ本体47bとそれの初期値設定のための適応フィルタ47aとを有している。まず、白色雑音除去対象データである帯域分割後離散データ12に適応フィルタ47aを適用し、そのデータにおける適応アルゴリズム(LMSアルゴリズム等)が算出するフィルタ係数を求める。そしてそのフィルタ係数をL1ノルムによりスケーリング(正規化)したものをノイズキャンセラ本体47b内部で使われているカルマンフィルタの状態変数の初期値(つまり、後述する図3のFIRフィルタ20のフィルタ係数の初期値)として設定し、再度、帯域分割後離散データ12をノイズキャンセラ本体47bに適用することにより、各帯域において白色雑音除去後離散データ(交流信号抽出)14が得られる。また、ここで用いる適応フィルタ47aは図5に示す従来技術としてある適応ラインエンハンサを使用している。以上に示した信号抽出手順の内部データ(フィルタ係数等)の流れを含むフローチャートを図4に示す。
【0025】
図3は、図1におけるノイズキャンセラ本体47bの構成図である。このノイズキャンセラ本体47bおいて、FIRフィルタ20が雑音を除去するディジタルフィルタであり、N個(N:整数)の遅延演算子20aとN個のフィルタ係数部20bとを有している。これらのフィルタ係数部20bのフィルタ係数値をカルマンフィルタ21により観測データ毎に逐次最適な値に調整する。このようにカルマンフィルタ21を適用するためには、状態方程式と観測方程式と呼ばれる2つの方程式で構成される状態モデルを構築する必要がある。
【0026】
まず、離散時刻kにおける観測値(入力信号)yは下記(1)式のように表される。
【0027】
= z + v …(1)
ここで、zは原信号(換言すれば探知信号:交流水中電界信号又は交流磁気信号)、vは広帯域雑音(白色雑音)である。
【0028】
さらに、観測値yk-1,yk-2,…,yk-Nから、FIRフィルタ20によりzを抽出したものをz^とすると下記(2)式のようになり、(1)式は(2)式を用いて下記(3)式のように表される。
【0029】
【数1】
JP0004016115B2_000002t.gif
但し、h1,k,h2,k,…,hN,kは離散時刻kでの1段目~N段目のフィルタ係数部30bのフィルタ係数である。
【0030】
次に(3)式を状態方程式と観測方程式からなる状態空間モデルで表現する。本発明のカルマンフィルタ適用の目的は、白色雑音を除去し原信号を抽出するための最適フィルタ係数を推定することであるから、hi,k を状態変数X(ベクトル量)とし、状態方程式として下記(4)式、観測方程式として下記(5)式のような状態空間モデルが構築される。
【0031】
【数2】
JP0004016115B2_000003t.gif

【0032】
この状態空間モデルにカルマンフィルタ21を適用し、推定された状態変数Xを用いて、(2)式により時刻kにおける原信号データを抽出する。抽出された原信号データ(処理波形)はディスプレイ48で表示される。
【0033】
このようにして、ノイズキャンセル部用DSP47は、前記探知信号のような雑音に埋もれた時間局所的に存在する非定常信号を抽出するために、FIRフィルタ20のフィルタ係数を状態変数としてカルマンフィルタ21によりデータ点毎(離散時間k毎)に最適フィルタ係数を逐次求め、当該最適フィルタ係数により構成されるFIRフィルタ20によって、白色雑音中に埋もれた所望の探知信号を出力することができる。
【0034】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0035】
(1) 所定のサンプリング周波数で電界センサより交流水中電界信号を、又は磁気センサより交流磁気信号を取り込み、離散ウェーブレット変換11で周波数帯域分割することにより、探知信号の存在する周波数帯域と測定環境下での有色雑音の周波数帯域を分離して、有色雑音を除去することができる。
【0036】
(2) さらに前記周波数帯域分割後の離散測定データに対して、白色雑音除去のためのディジタルフィルタであるノイズキャンセル部用DSP47を適用して、白色雑音中に埋もれた前記探知信号を抽出することができる。
【0037】
(3) 前記ノイズキャンセル部用DSP47は、FIRフィルタ20のフィルタ係数を状態変数としてカルマンフィルタ21によりデータ点毎に最適フィルタ係数を逐次求め、当該最適フィルタ係数により構成される前記FIRフィルタ20によって、白色雑音を効果的に抑圧して前記探知信号のような雑音に埋もれた時間局所的に存在する非定常信号を抽出可能である。
【0038】
なお、図3のノイズキャンセル部用DSP47において、適応フィルタ47aを適用し、そのデータにおける適応アルゴリズムが算出するフィルタ係数を求め、それらのフィルタ係数をL1ノルム(各フィルタ係数値の絶対値の和)によりスケーリング(正規化)したものをノイズキャンセラ本体47b内部で使われているカルマンフィルタの状態変数の初期値としたが、L1ノルム以外の所定値で正規化してもよい。
【0039】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る船舶に伴う交流水中電界信号又は交流磁気信号抽出方法及び装置の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に示した信号抽出手順の説明図である。
【図3】図1のノイズキャンセル部中のノイズキャンセラ本体の構成図である。
【図4】実施の形態に示した信号抽出手順の内部データの流れを含むフローチャートである。
【図5】従来技術の適応ラインエンハンサの構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 離散測定データ
11 離散ウェーブレット変換
12 帯域分割後離散データ
13 ノイズキャンセル部
14 白色雑音除去後離散データ
20,30 FIRフィルタ
20a,30a 遅延演算子
20b,30b フィルタ係数部
21 カルマンフィルタ
41 電界センサ又は磁気センサ
42 アンプ
44 メモリ(測定データ用バッファ)
45 離散ウェーブレット変換用DSP
46 メモリ( 帯域分割後データ用バッファ)
47 ノイズキャンセル部用DSP
47a 適応フィルタ(適応ラインエンハンサ)
47b ノイズキャンセラ本体
48 ディスプレイ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4