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明細書 :塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5223085号 (P5223085)
公開番号 特開2008-222499 (P2008-222499A)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法
国際特許分類 C22B   5/16        (2006.01)
C22B   7/00        (2006.01)
C22B  59/00        (2006.01)
C01G   1/06        (2006.01)
C01G  37/04        (2006.01)
C01G  35/02        (2006.01)
C01G  23/02        (2006.01)
FI C22B 5/16
C22B 7/00 D
C22B 59/00
C01G 1/06
C01G 37/04
C01G 35/02
C01G 23/02 E
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2007-063963 (P2007-063963)
出願日 平成19年3月13日(2007.3.13)
審査請求日 平成22年1月21日(2010.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
発明者または考案者 【氏名】菅原 勝康
【氏名】菅原 拓男
【氏名】野中 利瀬弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100110537、【弁理士】、【氏名又は名称】熊谷 繁
審査官 【審査官】池ノ谷 秀行
参考文献・文献 特開2000-144276(JP,A)
特公昭38-004052(JP,B1)
特開昭62-256930(JP,A)
特開2005-240170(JP,A)
調査した分野 C22B 5/16
C22B 59/00
C22B 7/00
C01G 23/02
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のレアメタル化合物を含む原料へカルシウム化合物を添加した後、不活性雰囲気下で加熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程を経て得られる原料粉末を塩素気流中で加熱し、該原料粉末からタングステン、ニオブ、ニッケル及び/又はコバルトを金属塩化物として揮発分離するとともに、タンタル、クロム及び/又はチタンの高濃度固体化合物を作製する第1の塩化揮発処理工程と、
前記高濃度固体化合物に対して固体炭素を混合した後に、塩素雰囲気下で加熱して前記タンタル、クロム及び/又はチタンを金属塩化物として揮発分離する第2の塩化揮発処理工程と、
前記第1の塩化揮発処理工程もしくは前記第2の塩化揮発処理工程において揮発分離した金属塩化物を冷却区間の温度調整により沈積させ、各元素の単体分離を行う分離濃縮工程と
を組み合わせてなることを特徴とする塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レアメタル化合物を含む原料、すなわち鉱石などに含まれる有用元素を金属塩化物に転換して分離する方法であって、カルシウム化合物や固体炭素の添加処理を併用した塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンタルやニオブを含む鉱石の製錬は、湿式法が主たる技術として使用されている。一般的な液処理方法としては、フッ化水素酸による溶解と溶媒抽出を組み合わせた手法がある。
具体的には、原料をふっ化水素酸で溶解した後に硫酸を加えて濃度調製し、その後MIBK(メチルイソブチルケトン)によりタンタル及びニオブのみを抽出するが、原料溶液中には不純物が残留する。次に、希硫酸でニオブを逆抽出し、MIBK中に残留したタンタルを精製した後に水で逆抽出して回収する。
この方法ではタンタルとニオブの分離効率が低く、工程を多く繰り返す必要があるためにMIBKの損失や排水処理コストの増大が問題である。
特許公開公報によれば、抽出溶媒としてホスホリル基を有する有機溶媒を用いて、タンタルを優先的に抽出し、ニオブとの分離率向上に関する方法が開示されている(特許文献2を参照)。
しかしながら、いずれの方法も数種の抽出工程を必要とするものであり、また原料の多様化に伴うプロセスの多段階化や廃液処理コストの増大は不可避の課題である。
一方、塩素化剤及び還元剤を併用した塩化揮発反応を利用したレアメタルの乾式分離について、いくつか研究報告がなされているが、その殆どが酸化物を対象としたモデル実験であり、また鉱石に関する実験も単純な揮発挙動の追跡に留まっている。
そのため、乾式プロセスによるレアメタルの効率的な分離精製方法は未だ実用化に至っていないのが現状である。
【0003】

【特許文献1】特開2000-266893号公報
【特許文献2】特開2002-193622号公報
【特許文献3】特開2005-15250号公報
【非特許文献1】F.Yung, V.Hlavacek: Powder Technology 102(1999)177-183
【非特許文献2】N.V.Manukyan, V.H.Martirosyan: Journal of Materials Processing Technology 142(2003)145-151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塩化揮発法によるレアメタルの抽出効率と収率を高めるために、カルシウム化合物や固体炭素の添加及び熱処理を組み合わせることで、かつて無い分離効率を出すことが可能なプロセスを提供する塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数のレアメタル化合物を含む原料へ、カルシウム化合物を添加した後、不活性雰囲気下で加熱処理する、熱処理工程と、前記熱処理工程を経て得られる原料粉末を塩素気流中で加熱し、該原料粉末からタングステン、ニオブ、ニッケル及び/又はコバルトを金属塩化物として揮発分離するとともに、タンタル、クロム及び/又はチタンの高濃度固体化合物を作製する第1の塩化揮発処理工程と、前記高濃度固体化合物に対して固体炭素を混合した後に、塩素雰囲気下で加熱して前記タンタル、クロム及び/又はチタンを金属塩化物として揮発分離する第2の塩化揮発処理工程と、前記第1の塩化揮発処理工程もしくは前記第2の塩化揮発処理工程において揮発分離した金属塩化物を冷却区間の温度調整により沈積させ、各元素の単体分離を行う分離濃縮工程と、を組み合わせてなることを特徴とする塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法である。

【発明の効果】
【0006】
発明によれば、種々のレアメタル化合物を含む原料(鉱石などに対して、塩素を含むガスを反応させる際に、カルシウム化合物を用いた前処理や固体炭素粉末を併用することで、種々のレアメタルを選択的に分離精製することができる。これによりプロセス数が少なくなり、種々の原料からレアメタルを製造する際の設備コストの削減や、多様な未利用資源を活用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者は、前述の課題を解決することを目的として、種々の方法について検討を行った。
その結果、(1)カルシウム化合物と共に不活性雰囲気下で熱処理することでレアメタルをそれぞれのカルシウム化合物に転換させることで、塩素化剤に対する反応性を変化させ得ること、
(2)前記原料粉末を塩素気流中で加熱した場合、各元素は熱力学的にはその揮発形態がオキシ塩化物であり、その反応が高温領域で進行すること、揮発速度がレアメタルの種類により異なり、加熱条件によっては分離できること、
(3)原料粉末へ固体炭素を添加して塩素雰囲気下で加熱することにより、種々のレアメタル塩化物の生成および揮発反応の開始温度を低下できること、
(4)揮発した金属塩化物が冷却区間の温度分布調整により単離できるとの知見を得て、本発明に到達したものである。
【0008】
レアメタル化合物からレアメタルを効率良く抽出することを特徴とする本発明において必要な条件を以下に記載する。
(1)鉱石や試薬を含む、種々の化合物形態で存在するほぼ全てのレアメタルを対象とし、とくにタンタル、ニオブ、チタン、タングステン、ニッケル、コバルト、クロムの分離精製に利用できる。
(2)塩素化剤として用いる塩素ガスの純度は高いことが望ましいが、窒素ガスとの混合ガスも使用できる。
(3)固体炭素として、グラファイトや石炭・石油コークスなど、種々の炭素源を用いることが出来る。ただし、炭素種により塩素化の促進効果は異なり、安定な炭素では反応性が低下することがある。
【実施例1】
【0009】
以下に記載の実施例により、本発明をより具体的に説明する。ここでは、レアメタルを鉱石などから選択的に抽出するときに、効率が良く抽出率が高い実施例として、成分がわかりやすいものを例とした。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明全体のフローの一例を図1に示す。第一工程は原料へカルシウム化合物を添加し、不活性雰囲気下で加熱処理することで、試料中の化合物形態を変化させ、各種レアメタルの塩素源に対する反応性を変える熱処理工程、第二工程は前記カルシウム処理試料を塩素気流中で加熱し、タングステン、ニオブ、ニッケル、コバルトの揮発分離を行い、タンタル、クロム、チタンの高濃度固体化合物を作製する塩化揮発処理工程、第三工程は前記高濃度固体化合物に対して固体炭素を混合し、塩化揮発反応が生じる温度領域を低下させ得る状態とした後に、塩素雰囲気下で加熱して含有レアメタルであるタンタル、クロム及びチタンなどを揮発分離する塩化揮発処理工程、第四工程は沸点の変化を利用して塩化物として放出されたレアメタル元素を単離するものであって、原料粉体もしくは高濃度固体化合物から分離した金属塩化物を冷却区間の温度調整により沈積させ、各元素の単体分離を行う分離濃縮工程である。
【0010】
ステップ1、2では、原料のカルシウム化合物添加処理及び熱処理を行う。
原料として、超硬工具のスクラップ中に含まれるタングステン及びコバルトのリサイクル工程から排出される浸出滓を用いた。原料中にはレアメタルとしてW、Ti、Ta、Nbのほか、CrやCo、Niが含まれている。
これにカルシウム化合物の炭酸カルシウムを同重量比で混合し、不活性雰囲気下、1000℃で3h加熱保持した。これにより、種々の複合化合物として存在していた各種レアメタルを一様なカルシウム化合物へと転換した。原料に含まれるレアメタルをカルシウム化合物へ転換した結果の一例を図2に示す。図2の下段グラフが原料の化合物で、上段のグラフが転換したカルシウム化合物である。
ステップ3、4では、転換した化合物の塩素化処理及び高濃度固体化合物生成を行う。
これら前記試料を塩素ガス気流中、800~1000℃で加熱保持することで、例えばW、Ni、Coの大部分を気相中へ揮発分離できた。
熱力学的には、気相中へ放出される各元素の揮発形態はオキシ塩化物であり、その揮発は高温で緩やかに進行する。また、事前処理を経て生成したタンタルやニオブのカルシウム化合物の塩素に対する反応性は極めて小さいため、前処理による選択率の向上、すなわちいくつかのレアメタルの固相への濃縮を促進することができた。ここで、カルシウム化合物添加処理工程を経た試料を塩素気流中で加熱したときのW、Nb及びTaの揮発挙動の一例を図3に示す。
なお、ステップ1のカルシウム化合物の添加処理工程を経ずに塩素化処理を行った場合には、例えばタンタルの74%は固相中へ濃縮するが、残りの24%はニオブなどのレアメタル元素と共に気相中へ放出されるため、最終的に分離精製するタンタル量は最大でも原料の74%に留まる。
これに対して、ステップ1の炭酸カルシウム添加処理を経てレアメタルをカルシウム化合物へと転換した場合には、高濃度固体化合物中へのタンタルの移行割合は、加熱条件により5 ~ 15%近く向上する。
これにより、最終的に分離精製可能なタンタルの最大値も増大する。加えて、タングステンと揮発温度域が近いニオブも固相に濃縮されることから、本実施例の第二工程において得られるレアメタル元素、すなわちニッケル、コバルト、そしてタングステンの分離精製効率も向上できる。
【0011】
ステップ5では、固体炭素を添加することで反応を促進した塩素化処理を行う。
ステップ3の操作によりレアメタルが濃縮された固体化合物に対して、炭素粉末を反応に十分足る量を加えて混合した後に、再び塩素気流中で加熱する。固体炭素の添加により、試料中に含まれるタンタル、クロムおよびチタンの揮発分離は比較的低い温度領域、すなわち300 ℃から600 ℃までに完了でき、炭素を添加することで揮発温度が低下した。
【0012】
ステップ6では、レアメタル塩化物の分離濃縮を行う。
ステップ3及びステップ5の塩素化処理で気相中へ放出された各レアメタルの塩化物は、ガスの冷却過程において粒子を析出して沈積する。各塩化物の沈積温度は元素により異なるため、冷却温度を調整することでCr塩化物、Ta塩化物そしてTi塩化物を単離できる。
すなわち冷却区間において、例えばクロムはCrClとして単体で沈積し、またチタン塩化物は沸点が低いことから、タンタル塩化物と分離可能である。以上の操作を経ることにより、原料粉体に含まれるタンタルの少なくとも70%以上を塩化物として選択的に分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上のように、本発明によれば、種々のレアメタル化合物を含む鉱石などに対して、塩素を含むガスを反応させる際に、カルシウム化合物を用いた前処理や固体炭素粉末を併用することで、種々のレアメタルを選択的に分離精製することができる。本発明は、塩化揮発法によるレアメタルの分離精製方法に適用するものである。詳しく述べると、本発明はカルシウム化合物や固体炭素粉末を併用した塩素化処理工程を含む方法であり、鉱石などに含まれるレアメタル化合物を金属塩化物に転換して分離精製するための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る原料からのレアメタルの塩化揮発による分離精製方法の代表的な実施形態を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施例1において、原料に含まれるレアメタルをカルシウム化合物へ転換した結果の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1において、カルシウム化合物添加処理工程を経た試料を塩素気流中で加熱したときのW、Nb及びTaの揮発挙動の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1 種々のレアメタル化合物を含む鉱石などの原料
2 カルシウム化合物を用いた前処理工程
3 塩素化処理工程
4 任意のレアメタルが濃縮された固体化合物
5 固体炭素粉末を併用した塩化揮発工程
6 冷却温度場を利用した金属塩化物の分離濃縮工程
7 第四工程によりそれぞれ単離されたレアメタル塩化物
8 カルシウム源
9 種々の固体炭素
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2