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明細書 :補正装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4729706号 (P4729706)
公開番号 特開2007-185242 (P2007-185242A)
登録日 平成23年4月28日(2011.4.28)
発行日 平成23年7月20日(2011.7.20)
公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
発明の名称または考案の名称 補正装置
国際特許分類 A61B   8/00        (2006.01)
FI A61B 8/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 16
出願番号 特願2006-003862 (P2006-003862)
出願日 平成18年1月11日(2006.1.11)
審査請求日 平成20年10月30日(2008.10.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】野方 文雄
【氏名】森田 浩之
【氏名】宇野 嘉弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】右▲高▼ 孝幸
参考文献・文献 特開昭54-13688(JP,A)
特開昭55-16632(JP,A)
特開昭62-243541(JP,A)
特開2004-275682(JP,A)
調査した分野 A61B 8/00
特許請求の範囲 【請求項1】
内中膜厚、プラークサイズ、動脈径等が異なる疾患部位を備えた人工の頚動脈モデルである頚動脈ファントムと、
頸動脈ファントムの形状データを記憶した形状データ記憶手段と、
前記頸動脈ファントムを医用超音波装置によって画像として測定した測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記測定データ取得手段により取得した測定データに対応する疾患部位の頸動脈ファントムの形状データを前記形状データ記憶手段から部分形状データとして抽出する形状データ抽出手段と、
前記抽出した部分形状データに基づいて前記測定データに対する補正値を算出する補正値算出手段と、
を備えていることを特徴とする補正装置。
【請求項2】
超音波測定装置により得た被検体の頸動脈の実測データを、前記補正値に基づいて補正する実測データ補正手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の補正装置。
【請求項3】
前記頸動脈ファントムと超音波装置のプローブとを相対移動させる移動装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の補正装置。
【請求項4】
前記移動装置は、超音波装置のプローブを固定した状態で頸動脈ファントムを被検体の頸動脈に対する相対回転又は相対送り移動に伴う頸部の移動軌跡と同じ軌跡上を回転又は送り移動させるものであることを特徴とする請求項3に記載の補正装置。
【請求項5】
前記頸動脈ファントムには、前記測定データ取得手段により取得した測定データを頸動脈ファントムの位置に関連づける基準点が超音波装置にて読み取り可能に形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の補正装置。
【請求項6】
前記頸動脈ファントムには、頚動脈部位に疾患部位であるプラークファントムが形成されており、
該プラークファントムは、種々の形状をしていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の補正装置。
【請求項7】
前記プラークファントムは、内部に金属粉末、ゴム、高分子粉末、あるいは油製液体を分布乃至混入させることにより超音波装置による測定において被検体のプラークと同等の超音波特性を有するようにして成ることを特徴とする請求項6に記載の補正装置。
【請求項8】
前記プラークファントムは、頸動脈ファントム内周面に対して頸動脈ファントムに一体に形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の補正装置。
【請求項9】
前記頸動脈ファントムは円筒形状をなし、内中膜厚、プラークサイズ、動脈径等が異なる疾患部位が内周面上に均等な間隔をもって形成されており、各疾患部位は頸動脈ファントムの軸方向に亘って疾患の状態が変化するものであることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の補正装置。
【請求項10】
前記測定データ取得手段は、超音波装置の使用周波数及びゲインを異ならせた複数パターンの測定データを取得するものであることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の補正装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、医用超音波装置の測定データを超音波診断用ファントムを用いて補正する補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、被検体である人体に対して高周波(超音波)を発信し、人体内部の臓器等に当たって跳ね返ってくる反射波(エコー)の強さ、周波数や時間を基として画像に変換し、同画像を通して人体内部の臓器や組織或いは胎児等の状態を確認する医用超音波測定装置(以下、単に「超音波装置」という。)が広く活用されている。
【0003】
この超音波装置は、超音波画像表示用モニタ(以下、モニタという。)と所定域の周波数及びゲインの超音波を選択・調整可能な操作部とを備えた超音波装置本体と、人体に向けて超音波を発信し超音波が被検体の内部所定域にあたって跳ね返ってきたエコーを受信するためのプローブを備えており、プローブにて受信されたエコーは超音波装置本体にて画像に変換されてモニタに表示される。測定者はプローブを被検体表面に当ててプローブと人体表面とを相対的に移動させながら、モニタを通して人体内部の状態を観察・測定することができる。
【0004】
超音波装置ではプローブから発信される超音波が指向性を持っており、また確認しようとする人体内の臓器等の位置(プローブ先端と目的物との距離)に応じてプローブから発信する超音波の周波数やゲイン等を適宜調整しなければならず、超音波装置の使用にあたっては相当の経験を必要とする。
【0005】
このため、超音波装置の使用初心者に対するトレーニング用、また超音波装置の校正用として、超音波に対して人体の臓器や組織等と同等の反応を示す超音波用人体模型として超音波ファントムが知られている(特許文献1)。

【特許文献1】特開2005-118187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載した医療用ファントムは、人体の臓器等の形状や位置を高精度に抽出し、超音波測定のトレーニングとして有効に用いることができるが、人体の一般的な臓器形状を模したものに止まり、例えば臓器に腫瘍等の異常があった場合にそれがどの程度の大きさであるか等の判断は測定者の経験に委ねられることとなる。
【0007】
特に、人体に対する超音波を用いた測定の一つとして頸動脈超音波測定がある。これは、図13に示すように人体の頸部の左右両側を通っている頸動脈(一本部分の総頸動脈、二股に分岐した内頸動脈と外頸動脈から構成される)の血管の内中膜厚や血管内壁に形成されているプラークの大きさ、更には血管径等を超音波装置によって測定するものである。この頸動脈超音波測定によって、動脈硬化性疾患、脳梗塞等の脳血管疾患、頸動脈狭窄症等の頸部血管疾患のスクリーニングが可能となるため、これらの疾患の早期発見には有効な手法である。
【0008】
しかしながら、頸動脈の血管壁(内中膜厚)の厚みや血管径を測定するのは容易ではなく、超音波装置の周波数やゲインを変更すればモニタに表示される血管壁(内中膜厚)の厚みや血管径は異なるものとなるため、正確な測定を行うのは困難である。また、医療機関等にて使用されている超音波装置は他種類のものが存在しており、その性能は必ずしも共通ではないことから超音波装置ごとのいわゆるくせを考慮する必要がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みて、形状データと該データで作成された頸動脈ファントムを指標として用いることにより超音波装置の性能やゲインなどの計測設定条件にかかわらず測定データとの誤差(差異)を補正する補正値を算出する補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、内中膜厚、プラークサイズ、動脈径等が異なる疾患部位を備えた人工の頚動脈モデルである頚動脈ファントムと、頸動脈ファントムの形状データを記憶した形状データ記憶手段と、前記頸動脈ファントムを医用超音波装置によって画像として測定した測定データを取得する測定データ取得手段と、前記測定データ取得手段により取得した測定データに対応する疾患部位の頸動脈ファントムの形状データを前記形状データ記憶手段から部分形状データとして抽出する形状データ抽出手段と、前記抽出した部分形状データに基づいて前記測定データに対する補正値を算出する補正値算出手段と、を備えていることを特徴とする補正装置を要旨とする。
【0011】
この補正装置を用いることにより頸動脈ファントムの測定データと形状データとに基づいて超音波装置の測定データに対する補正値を求めることができる。
また、請求項2の発明では、超音波測定装置により得た被検体の頸動脈の実測データを、前記補正値に基づいて補正する実測データ補正手段を備えていることを特徴とする。これにより、前記補正値に基づいて超音波装置にて被検体を測定した際の実測データを補正し、測定誤差を減少させることができる。
【0012】
請求項3の発明では、前記頸動脈ファントムと超音波装置のプローブとを相対移動させる移動装置を備えていることを特徴とする。これにより測定者がプローブを把持して頸動脈ファントムとの間で相対移動させる必要がなく補正値算出の作業が容易となる。
【0013】
請求項4の発明では、前記移動装置は、超音波装置のプローブを固定した状態で頸動脈ファントムを被検体の頸動脈に対する相対回転又は相対送り移動に伴う頸部の移動軌跡と同じ軌跡上を回転又は送り移動させるものであることを特徴とする。これにより、実際の超音波頸動脈測定と同様の環境の下で補正値を算出することが可能となる。
【0014】
請求項5の発明では、前記頸動脈ファントムには、前記測定データ取得手段により取得した測定データを頸動脈ファントムの位置に関連づける基準点が超音波装置にて読み取り可能に形成されていることを特徴とする。これにより疾患部位の形状等について基準点からの角度や長さに関連づけることが可能となり位置の特定が容易となる。
【0015】
請求項6の発明では、前記頸動脈ファントムには、頚動脈部位に疾患部位であるプラークファントムが形成されており、該プラークファントムは、種々の形状をしていることを特徴とする。これにより、断面半円形の基本的な形状のみならず種々の形状に関するプラークの補正値を算出することができる。
【0016】
請求項7の発明では、前記プラークファントムは、内部に金属粉末、ゴム、高分子粉末、あるいは油製液体を分布乃至混入させることにより超音波装置による測定において被検体のプラークと同等の超音波特性を有するようにして成ることを特徴とする。これにより、内部が石灰化した或いは出血しているような種々の性状に関するプラークの補正値を算出することができる。
【0017】
請求項8の発明では、前記プラークファントムは、頸動脈ファントム内周面に対して頸動脈ファントムに一体に形成されていることを特徴とする。これにより、プラークファントムを内膜と同様の材質で同時に形成することができ、頸動脈ファントムの製造が容易となる。
【0018】
請求項9の発明では、前記頸動脈ファントムは円筒形状をなし、内中膜厚、プラークサイズ、動脈径等が異なる疾患部位が内周面上に均等な間隔をもって形成されており、各疾患部位は頸動脈ファントムの軸方向に亘って疾患の状態が変化するものであることを特徴とする。これにより、頸動脈ファントムの測定データを取得する際に、頸動脈ファントムの角度を決定した後は頸動脈ファントムを軸方向にのみ送り移動させればよく制御が容易となる。
【0019】
請求項10の発明は、前記測定データ取得手段は、超音波装置の使用周波数及びゲインを異ならせた複数パターンの測定データを取得するものであることを特徴とする。これにより、超音波装置を使用する際に周波数やゲインを選択して測定を行う場合にも、選定した周波数やゲインに対応した補正値を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波装置の性能、ゲインなどの計測測定条件にかかわらず測定データとの誤差(差異)を補正する補正値を算出することができ、被検体に対する頸動脈の測定において測定誤差を補正させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した超音波装置の補正装置に関する一実施形態を図1~図12にしたがって説明する。
図1は、本発明の一実施形態である補正装置の概念図である。同補正装置1は、コンピュータ2と通信回線を介してこれに電気的に接続されているファントム部3とから構成される。なお、補正装置1は超音波装置4とも通信回線を介して電気的に接続されている。ファントム部3は、図2にその模式図を示すように頸動脈ファントム5と頸動脈ファントム5を流動体に浸責させるとともに超音波装置4のプローブ41を固定する矩体6、および頸動脈ファントム5を回転(頸部の周方向における回転を意味する)、送り移動(頸部の軸方向における移動を意味する。)させる移動装置としての駆動装置7とから構成される。
【0022】
頸動脈ファントム5は、人体の頸部の左右を走行している頸動脈のうち、超音波にて測定すべき部分を人工的に形成した超音波測定用の頸動脈モデルであるが、図3に示すように形状を単純化し外形を円筒形状として形成している。頸動脈ファントム5は超音波に対して人体の頸動脈と同じ或いは近似する超音波特性を有する素材を用いて作られており、具体的には寒天、ゼラチン、天然ゴムその他の高分子ゲルを材料として用いている。
【0023】
なお、頸動脈ファントム5の少なくとも一方の端部に前記頸動脈ファントム5に用いる材料とは明らかに超音波特性が異なる微細な部材からなるマーカー8を埋め込んでおくことによりマーカー8を頸動脈ファントム5の測定時における回転および送り移動の際の駆動開始位置(基準点)とすることができる。
【0024】
すなわち、同マーカー8が超音波にて補足可能な所定位置を頸動脈ファントム5の駆動開始位置とすることにより、頸動脈ファントムの状態を駆動開始位置からの回転角度および送り移動の長さと関連づけることにより正確に算出することができる。なお、図示しないが異なる超音波特性を有する複数のマーカーを頸動脈ファントムに埋め込むことにより使用目的に応じた任意のマーカーを駆動開始位置とすることも可能である。
【0025】
頸動脈ファントム5は、図4にその断面図を示すように頸動脈部位における血管壁と同様に外側から外膜51、中膜52、内膜53の三層構造として形成されている。
また、頸動脈ファントム5には、超音波装置4において測定対象となる疾患部位が形成されている。その疾患部位とは具体的には、血管の中膜と内膜の厚みである内中膜厚(IMTともいう)54が変位する部位(この部分を「内中膜厚変位部位」という。)55、内膜に形成された種々のプラークファントムP1~P6が形成された部位(この部分を「プラークファントム形成部位」という。)56、血管内膜間の内径が変位する部位(この部分を「狭窄変位部位」という。)57である。
【0026】
内中膜厚変位部位55は円筒状をなす頸動脈ファントム5の周方向の一部(図4において時計にいう4時の位置)において長手方向に沿って形成されており、図5aに示すように内中膜厚変位部位55は頸動脈ファントムの長手方向に沿って順次内中膜厚が変位するように形成されている。なお、超音波装置4を用いた測定では外膜51、中膜52および内膜53の三層はそれぞれ外側から相対的に高輝度、低輝度、高輝度の画像として把握することができ、頸動脈ファントム5の作成にあたっては前記外膜51、中膜52および内膜53の三層構造の輝度の相対的相違を考慮して材料選択を行う必要がある。
【0027】
次に、プラークファントム形成部位56は、頸動脈ファントム5の周方向の一部(内中膜厚変位部位55とは周方向に角度を異ならせた部分であって、図4では時計にいう12時の位置)において長手方向に沿って形成されている。図5bに示すようにプラークファントム形成部位56には頸動脈ファントム5の長手方向に沿って内膜の内周面(血液が流れる側の面)に形状や大きさを異ならせた複数のプラークファントムP1~P6が形成されている。
【0028】
超音波測定にあたってはプラーク(単に「プラーク」という場合には実際の疾患としてのプラークを意味する)の高さは内中膜厚を含めた高さとして測定し、かつその高さが1.1mm以上となるものを超音波スクリーニングの基準としている。このことから、プラークファントムP1等の形成にあたっても内中膜厚を含めた高さが1.1mmを基準として設定する必要がある。なお、頸動脈に形成されるプラークには異形のものも多く存在している。このため、プラークファントムでも基本形状のプラークファントムP1、P3以外に、内部が石灰化したプラークファントムP2、内部破壊等して窪みが形成されたプラークファントムP4、内部が出血したプラークファントムP5、円弧状に盛り上がったのち直線的に高さを変えるプラークファントムP6など多種類のものが形成されている。
【0029】
また、頸動脈に形成されるプラークの輝度は基本的には内膜と同様に高輝度であるため、プラークファントムP1~P6の輝度もこれと同様であることを基本とするが、プラークの形成原因によっては必ずしも内膜同様の輝度率とはならない。例えば、プラーク内部に内出血がある場合、プラークが局部的或いは全体に石灰化しているものなどでは輝度が異なる場合がある。これに対応するプラークファントム(P2,P5)において、前者ではプラークファントムP2内部に高分子粉末、油製液体あるいは蒸留水等の液体を内包させ、また後者ではプラークファントムP5内部に金属の微細粉末を局部的或いは全体に混入させることにより輝度を調整して実際のプラーク同様の超音波特性を得ることが可能となる。
【0030】
また、狭窄変位部位57は頸動脈ファントム5の周方向の一部(前記の内中膜厚変位部位55及びプラークファントム形成部位56とは周方向にさらに角度を異ならせた部分、図4では時計にいう8時の位置)において長手方向に沿って形成されている。狭窄変位部位57は図5cに示すように頸動脈ファントム5の長手方向に沿って順次血管内面が肥厚され、内腔が狭くなった狭窄部位59が内膜53と一体に形成されている。なお、狭窄とは頸動脈の血管内壁にコレステロール等が付着して動脈硬化を起こすようなことをいうが、本実施形態の頸動脈ファントム5では内膜53上にコレステロールと同等の超音波特性を有する材質を貼り付けることによって狭窄部位59を形成することも可能である。
【0031】
被検体に対する頸動脈超音波測定は血管壁のうちプローブ41から遠い側の血管壁部分を測定することが基本となっているため、頸動脈ファントム5を用いた超音波測定にあっても同様の手法を用いることが好ましい。この場合、頸動脈ファントム5にそれぞれ周方向に角度を異ならせた場所において軸方向に沿って形成した内中膜厚変位部位55、プラークファントム形成部位56、狭窄変位部位57をそれぞれ周方向に120度角度を異ならせて形成することにより、超音波測定時において互いの干渉を最小にすることができる(図4)。
【0032】
上記した構造の頸動脈ファントム5は水(蒸留水)61を満たした矩体6に浸責されて、駆動装置7により回転及び長手方向に送り移動可能となっている(図2)。頸動脈ファントム5を水61に浸責させるのは、人体の頸動脈は頸部皮膚、筋肉など複数の組織の内部に存在し、超音波装置4による測定は頸部の皮膚表面にプローブ41をあてがって測定するのであるからこれと同等の環境を形成する必要があるためである。ここで、人内部組織と同様の超音波特性を有する物質として水が挙げられることから水61をプローブ41と頸動脈ファントム5との間に介在させている。
【0033】
また、矩体6において水61の上部は厚み1~3mm程度の天然ゴムシートからなる皮膚ファントム62によってカバーされている。表面に天然ゴムを皮膚ファントム62として用いる理由は超音波特性(音速)が人体の皮膚などの生体軟組織と同等だからである。特に、頸部は頭部に向かうほど太くなるため皮膚ファントム62にも頭部(図2中左側)に位置する方向が少し高くなるよう傾斜を形成することが好ましい。矩体6の上部には、超音波が頸動脈ファントム5に向けて発信される位置にプローブ41を固定するためのプローブ固定手段63を有している。プローブ固定手段63はプローブ41の先端を皮膚ファントム62にほぼ垂直となるように当接させた状態で固定し得る構造を意味する。
【0034】
このように配置された矩体6内の頸動脈ファントム5、水61及び皮膚ファントム62の関係は人体頸部における頸動脈、皮膚内部組織及び皮膚に対応する。したがって、プローブ41から頸動脈ファントム5までの距離は人体における頸部皮膚(プローブ41をあてがう位置)から頸動脈までの距離と同等に設定しておく必要がある。また、頸動脈ファントム5は矩体6内で駆動装置7により回転及び送り移動可能に構成されている。これは、超音波測定にあたっては人体頸部に対してプローブ41をあてがった後にプローブ41と頸部とを周方向及び長手方向に相対移動させて頸動脈の必要箇所の測定を行う手法を再現するべくプローブ41と頸動脈ファントム5とを相対移動可能としたものである。
【0035】
駆動装置7は数値制御可能な第一駆動モータ71及び第二駆動モータ72と、各駆動モータの回転を頸動脈ファントム5に回転或いは送り移動として伝達する伝達機構(図示しない)とを備えている。第一駆動モータ71は頸動脈ファントム5を周方向に回転させ、第二駆動モータ72は頸動脈ファントム5をその長手方向に沿って送り移動させることができる。各駆動モータの回転を頸動脈ファントム5の回転或いは送り移動に伝達する伝達機構の種類や構成は限定されず、第一駆動モータ71と第二駆動モータ72とを同時に駆動させることによって頸動脈ファントム5の回転と送り移動とを同時に行わせることも可能である。なお、各駆動モータはコンピュータ2によって数値制御されるパルスモータである。
【0036】
補正装置1を構成するコンピュータ2は、ファントム駆動制御手段21と、形状データ記憶手段22と、測定データ取得手段23と、形状データ抽出手段24と、補正値算出手段25と、実測データ補正手段26とを備えている。
【0037】
ファントム駆動制御手段21は、頸動脈ファントム5を回転及び送り移動させるため第一駆動モータ71及び第二駆動モータ72に駆動信号を送る手段であり、所定の駆動プログラムが格納されたROM(図示しない)が接続されている。なお、同駆動プログラムは補正装置1の起動に伴って頸動脈ファントム5を所定の駆動開始位置に移動させる。また、駆動プログラムは、頸動脈ファントム5における内中膜厚変位部位55、プラークファントム形成部位56、狭窄変位部位57をそれぞれ順に超音波装置4にて測定することができるように頸動脈ファントム5を回転させ、また送り移動させるよう第一駆動モータ71及び第二駆動モータ72を駆動させるように設定されている。
【0038】
形状データ記憶手段22は形状データベース221を有している。形状データベース221には頸動脈ファントム5における内中膜厚変位部位55の内中膜厚54、プラークファントム形成部位56に形成されているプラークファントムP1等のサイズ(高さ)、狭窄変位部位57に基づく動脈径を頸動脈ファントム5の長手方向の位置と関連付けた形状データ222が格納されている(図7)。この形状データベース221の形状データ222は超音波装置4による測定結果を補正する際の基準となるデータである。なお、形状データベース221は図面では空欄であるが頸動脈ファントム5を製造する際の設計図となるCADデータに基づいて作成した数値を格納すればよい。
【0039】
また、形状データベース221は、頸動脈ファントム5の前記各部位に関しては連続的なデータとして記録されていることが好ましい。しかし、予め頸動脈ファントム5に対する測定箇所が決められている場合、例えば内中膜厚変位部位55において測定個所を5箇所と設定している場合などのようにスポット的に測定する場合には該測定部位のみにおける形状データ222を形状データベース221に記録させておいてもよい。
【0040】
測定データ取得手段23とは、補正対象となる超音波装置4を用いて頸動脈ファントム5を測定して得られた画像データに基づいて内中膜厚54、プラークファントムP1等のサイズ、狭窄部位59に基づく動脈径の各測定データを得る手段である。測定データ取得手段23は測定データファイル231を有しており(図8)、頸動脈ファントム5の内中膜厚54、プラークファントムP1等のサイズ、狭窄部位59に基づく動脈径に関する測定データ232を頸動脈ファントム5の位置と関連づけて格納可能となっている。超音波装置4による測定に周波数及びゲインを異ならせた複数種が選択可能な場合にはその種類に応じた数だけの測定データファイル(231a,231b,231n)を有する。
【0041】
なお、補正装置1では、頸動脈ファントム5の内中膜厚54、プラークファントムP1等のサイズ、狭窄部位59に基づく動脈径に関する測定データ232は、超音波装置4に備え付けられているモニタ(図示しない)に表示される画像データ(Bモード像)を同超音波装置4の外部出力を介して入手する。そして、予めコンピュータ2にインストールされた画像処理ソフトに基づいて画像データをコンピュータ2内で処理することにより自動計算にて得ることができる。また、測定データ取得手段23は、頸動脈ファントム5の送り移動中に連続的に測定データ232を取得することもできるが、前記したように予め頸動脈ファントム5に対する測定箇所が決められている場合、該所定の位置における測定データ232を得ることもできる。
【0042】
形状データ抽出手段24とは、形状データ記憶手段22が有する形状データベース221に格納されている内中膜厚、プラークファントムサイズ、動脈径の形状データ222の中から前記測定データ取得手段23によって得たそれぞれの測定データ232に対応する位置の内中膜厚、プラークサイズ、動脈径の各データ抽出する手段である。なお、形状データ抽出手段24は、ファントム駆動制御手段21による制御信号に基づいて超音波装置4のプローブ41が測定している頸動脈ファントム5の部位及び位置を特定し、形状データ222の中から特定の部位及び位置における形状データを抽出する。
【0043】
形状データ抽出手段24は抽出データファイル241を有しており(図11)、抽出した内中膜厚、プラークファントムサイズ、動脈径に関する形状データを部分形状データ242として頸動脈ファントムの位置と関連付けて抽出データファイル241に格納する。
【0044】
補正値算出手段25は、測定データ取得手段23によって取得した頸動脈ファントム5の特定部位の測定データ232と、これに対応する部位に関して形状データ抽出手段24が抽出した部分形状データ242とを対比し、部分形状データ242に基づいて測定データ232に対して必要な補正値を算出するものである。
【0045】
すなわち、測定データ取得手段23によって取得した頸動脈ファントム5の測定データ232と形状データ抽出手段24が抽出した部分形状データ242とは、頸動脈ファントム5における同一部位及び位置のデータであるため理論上は一致するはずである。しかし、超音波装置の処理能力や解像度を含めた総合的な性能、また選択した周波数やゲインの種類によって両データが一致しない場合が多い。このため、補正値算出手段25は形状データ抽出手段24が抽出した部分形状データ242を基準値として、測定データ取得手段23が取得した頸動脈ファントム5の特定部位及び位置の測定データ232が前記基準値と一致するための補正値を算出する。
【0046】
補正値算出手段25による補正値の算出にあたっては、内中膜厚変位部位55、プラークファントム形成部位56及び狭窄変位部位57の各部位ごと、すなわち内中膜厚54の補正値、プラークファントムP1等のサイズの補正値、狭窄部位59に基づく動脈径の補正値をそれぞれ算出する。なお、補正値は例えば内中膜厚変位部位55であれば同部位に一括適用可能な補正値を設定してもよく、また厚みが薄い場合と厚い場合とでは誤差が大きい場合には内中膜厚をいくつかの厚み区分にわけて個別に補正値を設定してもよい。これは、プラークファントムP1等のサイズや狭窄部位59においても同様である。さらに、補正値は測定データ232と部分形状データ242との差である加減値であっても、測定データ232と部分形状データ242との比である係数値、更には所定の演算式のいずれでもよい。
【0047】
補正値算出手段25は補正値データファイル251を有しており、内中膜厚、プラークファントムのサイズ、動脈径の各補正値を算出した後に、該補正値を頸動脈ファントムの位置と関連付けて補正値データ252として補正値データファイル251に格納する。また、超音波装置4による測定が周波数及びゲインを異ならせて複数種ある場合にはその種類に応じた数だけの補正値データファイル(251a,251b,251n)を有する。
【0048】
実測データ補正手段26は、被検体の頸動脈に対する内中膜厚、プラークのサイズ、動脈径の測定結果を前記補正値算出手段25により算出した補正値に基づいて補正するものである。実測データ補正手段26は実測データファイル261を有している(図11)。実測データ補正手段26は超音波装置4によって被検体の内中膜厚、プラークのサイズ、動脈径を測定して得たデータを実測データ262として周波数及びゲインと関連づけて実測データファイル261に格納する。また、補正値データファイル251の補正値データ252の中からから対応する周波数及びゲインにおける補正値を抽出し、補正値263として実測データファイル261に格納する。実測データ補正手段26は前記実測データ262を補正値263に基づいて補正し、補正後のデータも補正後実測データ264として実測データファイル261に格納する。
【0049】
以下、上記実施形態の補正装置1を用いた超音波装置4の補正値算出フローについて説明する。この補正値算出フローは、大きく分けて、頸動脈ファントムを測定する測定ステップ(S1)、この測定結果に対応する形状データを抽出する抽出ステップ(S2)、補正値を算出する算出ステップ(S3)の3つのステップから構成される(図12a)。
【0050】
補正対象である超音波装置4は、モニタを備えた超音波装置本体と所定域の周波数及びゲインの超音波を発信し、そのエコーを受信するプローブ41とを備えた一般的な構造を有しているものとする。補正装置1は、超音波装置4と通信回線を介して電気的に接続されており、プローブ41が受信したエコーに基づいて超音波装置4にて変換した画像データを取得可能となっている。以下、超音波装置4にて頸動脈ファントム5を用いて補正値を算出する具体的手順を説明する。
【0051】
まず、前段階として、超音波装置4のプローブ41をファントム部3のプローブ固定手段63に固定し、プローブ41の先端を皮膚ファントム62にあてがうように固定する。このとき皮膚ファントム62上には人体に対する超音波測定の際に用いる超音波用ゲルを塗布し、プローブ41から発信された超音波が頸動脈ファントム5に確実に伝達されるようにしておく。
【0052】
また、頸動脈ファントム5は駆動装置7により所定の駆動開始位置に位置させておく。なお、頸動脈ファントム5の駆動開始位置はどのような位置であってもよいが、好ましくは頸動脈ファントム5に埋め込んだマーカー8を駆動開始位置として設定しておくことにより、頸動脈ファントム5が初期位置にあるかどうかを超音波装置4を介して認識することができる。なお、頸動脈ファントム5の駆動開始位置の移動は駆動プログラムによる自動設定ものがよい。更に駆動装置7による頸動脈ファントム5の一連の駆動動作終了後には頸動脈ファントム5が再び駆動開始位置に戻るようにプログラムを設定しておけばよい。
【0053】
補正値の算出は、補正対象となる超音波装置4が通常使用している周波数及びゲインを対象とする。すなわち、ある超音波装置4において用いている周波数が5MHz,8MHz,10MHzの3パターンであって、ゲインが大小の2パターンであったならば、周波数のパターン(3パターン)×ゲインのパターン(2パターン)の合計6パターンによる計測を行う。これは頸動脈の場所等によっては特定の周波数及びゲインでは十分な解像度が得られないため、測定目的によって周波数及びゲインを使い分けているという理由によるものである。
【0054】
測定ステップ(S1)は、大きく頸動脈ファントム5の内中膜厚測定を行う内中膜厚測定ステップ(S10)、頸動脈ファントム5におけるプラークファントムP1等の測定を行うプラークファントム測定ステップ(S11)、頸動脈ファントム5における狭窄部位59の測定を行う狭窄部位測定ステップ(S12)から構成される(図12b)。
【0055】
まず、内中膜厚測定ステップ(S10)を行う。このステップでは、ファントム駆動制御手段21は第一駆動モータ71に対して、頸動脈ファントム5が所定の駆動開始位置から内中膜厚変位部位55がプローブ41側から見て最も遠ざかる位置になるように頸動脈ファントム5を回転させる指示を出し、第一駆動モータ71は同指示に基づいて頸動脈ファントム5を周方向へ回転させる(S101)。第一駆動モータ71による頸動脈ファントム5の回転が終了すると、ファントム駆動制御手段21は第二駆動モータ72に対して、頸動脈ファントム5を送り移動させるよう指示を出し、第二駆動モータ72は同指示に基づいて頸動脈ファントム5の送り移動を開始する(S102)。
【0056】
また、この第二駆動モータ72による送り移動の開始と同時に、測定データ取得手段23が内中膜厚54の測定を開始する。前記測定データ取得手段23は、所定間隔(時間若しくは送り長さ)ごとに内中膜厚を自動測定しながら測定結果を測定データファイル231に順次格納していき(S103)、送り移動が頸動脈ファントム5の他端に至ると内中膜厚の測定ステップは終了し(S104)、続いてプラークファントム測定ステップ(S11)となる。
【0057】
このプラークファントム測定ステップ(S11)では、ファントム駆動制御手段21は第一駆動モータ71に対して、プラークファントム形成部位56がプローブ41側から見て最も遠ざかる位置になるように頸動脈ファントム5を回転させる指示を出し、第一駆動モータ71は同指示に基づいて頸動脈ファントム5を周方向へ回転させる(S111)。
【0058】
頸動脈ファントム5の回転が終了すると、ファントム駆動制御手段21は第二駆動モータ72に対して、頸動脈ファントム5を送り移動させるよう指示を出し、第二駆動モータ72は同指示に基づいて頸動脈ファントム5の送り移動を開始する(S112)。なお、この送り移動の方向は前のステップである内中膜厚測定ステップ(S10)の送り移動と逆方向でよい。
【0059】
また、この第二駆動モータ72による送り移動の開始と同時に、測定データ取得手段23がプラークファントムP1等の測定を開始する。前記測定データ取得手段23は、プラークファントムP1等のサイズを自動測定しながら測定結果を測定データファイル231に順次格納していき(S113)、送り移動が頸動脈ファントム5の一端に至るとプラークファントム測定ステップは終了し、(S114)、続けて狭窄部位測定ステップとなる(S12)。この狭窄部位測定ステップ(S12)では、ファントム駆動制御手段21は第一駆動モータ71に対して、頸動脈ファントム5の狭窄変位部位57がプローブ41側からみて最も遠ざかる位置になるように頸動脈ファントム5を回転させる指示を出し、第一駆動モータ71は同指示に基づいて頸動脈ファントム5を周方向に回転させる(S121)。
【0060】
頸動脈ファントム5の回転が終了すると、ファントム駆動制御手段21は第二駆動モータ72に対して、頸動脈ファントム5を送り移動するよう指示を出し、第二駆動モータ72は同指示に基づいて頸動脈ファントム5の送り移動を開始する(S122)。この送り方向は前のステップであるプラークファントム測定ステップ(S11)の送り方向と逆方向(内中膜厚測定ステップ(S10)と順方向)でよい。
【0061】
また、この第二駆動モータ72による送り移動の開始と同時に、測定データ取得手段23が狭窄部位59の測定を開始する。前記測定データ取得手段23は、所定間隔(時間若しくは送り長さ)ごとに血管内径を自動測定しながら測定結果を測定データファイル231に順次格納していき(S123)、送り移動が頸動脈ファントム5の他端に至ると狭窄部位測定ステップは終了し(S124)、測定ステップ(S1)は終了する(END)。なお、前記したように補正対象となる超音波装置が通常使用している周波数及びゲインが複数ある場合にはその種類に応じた数だけ上記の各ステップを繰り返し行う。
【0062】
抽出ステップ(S2)では、形状データ抽出手段24が、形状データベース221の形状データ222の中から前記測定ステップ(S1)において測定した部位及び位置に対応する内中膜厚、プラークファントム及び狭窄部位のデータを抽出する(S21)。続いて、抽出したデータを部分形状データ242として抽出データファイル241に格納し(S22)、抽出ステップ(S2)を終了する(図2c)。
【0063】
続く算出ステップ(S3)では、補正値算出手段25が、抽出データファイル241に格納された部分形状データ242と測定データファイル231に格納された測定データ232とに基づいて、それぞれ疾患部位及び位置ごとに両者の差異を計算し、同差異を相殺する値としての補正値を算出する(S31)。算出した補正値は補正値データファイル251に位置と関連づけて補正値データ252として格納し(S32)、算出ステップ(S3)を終了する(図2d)。
【0064】
上記のステップ(S1,S2,S3)により、超音波装置4によって頸動脈ファントム5を測定した場合の疾患部位に関する測定データの測定誤差を修正する補正値を得ることができる。続いて、上記によって算出した補正値を用いて被検体の頸動脈の内中膜厚を測定する際の測定値の補正フローを説明する。同フローは、実測ステップ(S41)、近似データ選択ステップ(S42)、補正値抽出ステップ(S43)、修正値算出ステップ(S44)とから構成される(図2e)。測定者は、補正値データ252を利用可能な超音波装置4を用いて所定の周波数及びゲインを選択した後、被検体の頸動脈の内中膜厚を測定する。この測定結果は実測データ補正手段26によって使用周波数及びゲインとともに実測データファイル261に実測データ262として格納する(S41)。
【0065】
更に、実測データ補正手段26は、測定データファイル231a~231nの中から対応する周波数及びゲインの内中膜厚に関する測定データファイル231を選択し、同ファイルに格納されている測定データ232のうち前記実測データ262の値に近似する内中膜厚のデータに関する位置データを抽出する(S42)。続いて、実測データ補正手段26は、補正値データファイル251a~251nの中からに対応する周波数及びゲインの内中膜厚に関する補正値データファイル251を選択する。選択したファイルに格納されている補正値データ252の中から前記抽出した位置データに対応する位置の内中膜厚に関する補正値データ252を読み出し(S43)、補正値データ252を補正値263として実測データファイル261に格納する。そして、実測データ262を同補正値263に基づいて補正することにより補正した実測値を算出する(S44)。補正した実測値を補正後実測データ264として実測データファイル261に格納して(S45)補正フローを終了する。
【0066】
測定者は、同実測データファイル261に格納された補正後実測データ264を参照することにより超音波装置4の画像上における誤差が修正された検体の頸動脈の内中膜厚を得ることができる。
【0067】
上記実施形態の補正装置1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の補正装置1を用いることにより頸動脈ファントム5の測定データと形状データとに基づいて超音波装置4の測定データに対する補正値を求めることができ、超音波装置4の測定誤差を減少させることができる。
【0068】
(2)補正装置1により補正値を算出した後に、実測データ補正手段26によって補正値に基づいて超音波装置4にて被検体を測定した際の実測データを補正することができるため、被検体に対する超音波装置4の測定誤差を減少させることができる。
【0069】
(3)駆動装置7によって頸動脈ファントム5を回転及び送り移動させているため、補正値算出の作業を自動化することができる。
(4)頸動脈ファントム5のそれぞれ周方向に120度ずつ角度を異ならせた場所において軸方向に沿って形成する内中膜厚変位部位55、プラークファントム形成部位56、狭窄変位部位57を形成している。これにより、超音波測定時において互いの干渉を最小にすることができる。
【0070】
(5)疾患部位であるプラークファントムP1~P6は断面半円形状の基本形状のみならず種々の形状に形成されている。このため、多様な形状のプラークにも対応することができる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記補正装置1では超音波装置4にて使用している周波数及びゲインが複数ある時は各パターンにて頸動脈ファントム5の測定データを得たが、一の周波数およびゲインのみで測定データを得てもよい。この場合他の周波数及びゲインについては所定の演算式にて算出した測定データを用いてもよい。
【0072】
○ また、周波数及びゲインを異ならせる以外にダイナミックレンジ、時間制御感度(STC)、エコーハンスを異ならせる場合には、これらについても異なる条件の下で頸動脈ファントムの測定データを取得してもよい。
【0073】
○ 測定ステップS1では頸動脈ファントム5を軸方向にのみ送り移動させて二次元状の測定データを取得したが、送り移動に加えて回転も追加し三次元状の測定データを取得してもよい。また、測定対象(内中膜又はプラーク)によって頸動脈ファントム5の測定データ取得方法を異ならせてもよい。
【0074】
○ 頸動脈ファントム5を円筒形状に形成し、その周方向の角度を異ならせた部位に軸方向に沿って内中膜厚変位部位55、プラークファントム形成部位56及び狭窄変位部位57の各疾患部位を形成したが、軸方向の長さ位置を異ならせた部位に周方向に沿って前記各疾患部位を形成してもよい。なお、周方向に各疾患部位を形成する場合には頸動脈ファントム5の内周面に対向する位置に疾患部位が形成されることとなるため、例えば螺旋状に疾患部位を形成するなどして干渉を防止することもできる。
【0075】
○ また、上記実施形態では、内中膜厚変位部位55、プラークファントム形成部位56及び狭窄変位部位57の各疾患部位を形成した頸動脈ファントム5を用いたが、一の頸動脈ファントムには内中膜厚変位部位55のみ形成するなど疾患部位ごとに頸動脈ファントムを用いても良い。また頸動脈ファントム5にこれら以外の種類の疾患部位を形成してもよい。
【0076】
○ 頸動脈ファントム5を円筒形状に形成したが、同形状に限定されず実際の頸動脈同様に分岐部位を形成してもよい。
○ 頸動脈ファントム5にプラークファントムP1等を一体形成したが、プラークファントムP1等は頸動脈ファントム5に対して取り付け取り外し自在としてもよい。これにより、種々の形状や超音波特性を持ったプラークファントムを必要に応じて頸動脈ファントムに取り付けることができ、プラークファントムの測定対象を増やすことができる。
【0077】
○ 上記実施形態の頸動脈ファントム5の駆動は回転及び送り移動のみであるが、更に頸動脈の高さ調節用の第三駆動モータを備え、頸動脈ファントム5とプローブ41との相対的距離を任意に調節可能としてもよい。また頸動脈ファントム5の測定ステップ(S1)において頸動脈ファントム5とプローブ41との相対的距離を変化させつつ回転或いは送り移動させながら超音波装置4による測定を行ってもよい。
【0078】
○ 頸動脈ファントム5とプローブ41との相対回転及び相対送り移動に関して、頸動脈ファントム5を回転させ送り移動することとしているが、頸動脈ファントム5を固定しプローブ41を回転および送り移動させるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施形態の補正装置および超音波装置の概念図
【図2】ファントム部の模式図
【図3】頸動脈ファントムの簡易斜視図
【図4】図3のA-A線断面図
【図5】aは図4のB-B線断面図、bは図4のC-C線断面図、cは図4のD-D線断面図
【図6】補正装置を構成するコンピュータの概念図
【図7】形状データベースの簡略図
【図8】測定データファイルの簡略図
【図9】抽出データファイルの簡略図
【図10】補正値データファイルの簡略図
【図11】実測データファイルの簡略図
【図12】aは補正値算出フロー図、bは測定フロー図、cは抽出フロー図、dは補正フロー図、eは実測フロー図
【図13】人体における頸動脈の説明図
【符号の説明】
【0080】
1…補正装置、2…補正装置を構成するコンピュータ、3…補正装置を構成するファントム部、4…超音波装置、5…頸動脈ファントム、22…形状データ記憶手段、23…測定データ取得手段、24…形状データ抽出手段、25…補正値算出手段、26…実測データ補正手段、41…プローブ、54…内中膜厚、222…形状データ、232…測定データ、242…部分形状データ、262…実測データ、263…補正値、P1~P6…プラークファントム。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12