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明細書 :薄膜発熱体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5078070号 (P5078070)
公開番号 特開2008-243460 (P2008-243460A)
登録日 平成24年9月7日(2012.9.7)
発行日 平成24年11月21日(2012.11.21)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 薄膜発熱体
国際特許分類 H05B   3/14        (2006.01)
H05B   3/74        (2006.01)
H05B   3/20        (2006.01)
H05B   3/12        (2006.01)
FI H05B 3/14 D
H05B 3/74
H05B 3/20 328
H05B 3/12 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2007-079725 (P2007-079725)
出願日 平成19年3月26日(2007.3.26)
審査請求日 平成22年3月23日(2010.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】吉門 進三
【氏名】佐藤 雅志
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】土屋 正志
参考文献・文献 特開平10-144459(JP,A)
特開昭52-051599(JP,A)
特開昭59-009887(JP,A)
国際公開第2006/095709(WO,A1)
調査した分野 H05B 3/14
H05B 3/12
H05B 3/20
H05B 3/74
特許請求の範囲 【請求項1】
金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜を基体上に積層したものからなり、前記金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜は、金属ケイ化物の結晶粒が、当該結晶粒の表面を膜状に被覆するケイ素を介して互いに接合された内部構造を有していることを特徴とする薄膜発熱体。
【請求項2】
前記金属ケイ化物は、モリブデン又はタングステン又はタンタル又はそれらの合金のケイ化物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜発熱体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗発熱体による加熱法は、半導体デバイス製造用ヒータ、真空蒸着装置、CVD装置、プレス金型用ヒータ、ホットプレート等において広く用いられている。そして、発熱体材料として、2000℃を超えるような超高温での使用に耐え、精密に温度制御をすることができ、しかも、酸化雰囲気中や還元雰囲気中等のあらゆる雰囲気中において化学的に安定しているものが必要とされ、例えば、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン及びケイ化タンタル等の金属ケイ化物が広く使用されている。
【0003】
また、抵抗発熱体を薄膜化すれば、複雑な3次元形状の抵抗発熱体を容易に形成することができ、抵抗発熱体の体積が減少するので、低電力で動作させるとともに、温度昇降を高速で行えることができ、従来の板状、棒状等のいわゆるバルク状の抵抗発熱体と比べて大きなメリットがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、金属ケイ化物は、空気中において耐酸化性が弱く、バルク状の抵抗発熱体とした場合には、その表面を2酸化ケイ素等で被覆して、耐酸化性を増大させる必要があった。さらに、金属ケイ化物を薄膜発熱体とした場合には、空気中で高温発熱させると、たとえ表面を酸化膜で被覆しても、金属ケイ化物の薄膜の酸化反応が急速に進行し、薄膜表面あるいは内部にまで絶縁性酸化物が形成される。その結果、薄膜発熱体の発熱中に全抵抗値が増大し、最終的には薄膜発熱体が断線状態となって動作しなくなるという問題があった。
【0005】

【特許文献1】特開2005-222746号公報
【特許文献2】特開2006-164595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、耐酸化性が強く、大気中において長時間連続して高温で発熱させても性能が低下しない薄膜発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜を基体上に積層したものからなり、前記金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜は、金属ケイ化物の結晶粒が、当該結晶粒の表面を膜状に被覆するケイ素を介して互いに接合された内部構造を有していることを特徴とする薄膜発熱体を構成したものである。
【0008】
上記構成において、前記金属ケイ化物としては、例えば、モリブデン又はタングステン又はタンタル又はそれらの合金のケイ化物を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄膜発熱体の内部を、金属ケイ化物の結晶粒がケイ素を介して互いに接合された構造としたので、薄膜発熱体を大気中において長時間にわたって高温度で連続発熱をさせても、酸化反応が薄膜内部にまで進行せずに抵抗値及び発熱温度はほとんど変動せず、よって、耐熱性に優れ、安定に作動する薄膜発熱体を提供することができる。また、迅速な温度制御が可能で、しかも小電力で作動する薄膜発熱体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について説明する。本発明による薄膜発熱体は、金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜を基体上に積層したものからなっている。金属ケイ化物としては、例えば、モリブデン又はタングステン又はタンタル又はそれらの合金のケイ化物を挙げることができ、また、基体は、例えばアルミナ、窒化ホウ素、サイアロン、窒化ケイ素等の一般的な耐熱材料から形成される。
【0014】
この場合、金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜の内部は、金属ケイ化物の結晶粒がケイ素を介して互いに接合された構造を有し、この構造において、ケイ素が金属ケイ化物の結晶粒の表面を膜状に被覆している。
【0015】
上述の薄膜発熱体は、金属ケイ化物とケイ素(該金属ケイ化物中の元素の組成比に占めるケイ素の割合を超える量のケイ素)の混合物を形成材料としてスパッタリング又は真空蒸着又はPVD(Physical Vapor Deposition:物理的気相成長法)又はCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相反応法)を行い、基体上に金属ケイ化物‐ケイ素複合体の薄膜を積層させることによって製造することができる。
【0016】
また、これらの方法の他に、例えば、溶射法、スプレー法、印刷法及びディップコーティング法を用いて、基体上に薄膜を形成することによって薄膜発熱体を製造することもできる。
【0017】
次に、本発明による薄膜発熱体の作用効果を確認するため、実証実験を行った。
(実施例1)
2ケイ化モリブデン(MoSi)粉末とケイ素の粉末を、モリブデンとケイ素の原子数比が1:3(2ケイ化モリブデン粉末とケイ素粉末の比は1:1)の割合になるように計量し、メノウ乳鉢で乾式混合したものを、無酸素銅製の皿状のターゲットホルダに25MPaで加圧し、容量結合型平行平板型マグネトロンスパッタリング装置(アネルバ、SPF-210B)及び高周波(RF)電源(東京ハイパワー、RF-500)を組み合わせたRFマグネトロンスパッタリング装置にセットした。また、薄膜を積層するための基板として、窒化ケイ素(Si)基板(50mm×50mm、厚さ2.0mm)を用いた。基板を、イオン交換水、メタノール、アセトン、トリクロロエチレン、アセトン、メタノール、イオン交換水、さらにイオン交換水の順で各5分間、超音波洗浄機(アイワ医科工業株式会社、AU-70C)で洗浄した。
【0018】
そして、基板をターゲットホルダと対向する位置に固定し、RFマグネトロンスパッタリングを行った。スパッタリングは、放電周波数13.56MHz、放電電力200W、放電時圧力0.53Pa、アルゴン流量400ml/minの条件下で、3時間行い、基板上に薄膜を厚さ約10μmに積層し、薄膜発熱体を作製した。なお、予備放電は、シャッターを閉じた状態で30分間行い、基板の加熱温度は700℃とした。
【0019】
作製した薄膜発熱体を使用して、図1に示すような発熱エレメントを作製した。図1を参照して、薄膜発熱体1の発熱面(薄膜面)1aに、50mm×50mm、厚さ0.2mmの雲母の絶縁膜2を介して、50mm×50mm、厚さ5.0mmのアルミ板3をボルト5及びナット6で固定した。また、発熱面1aとネジの接触部は導電性を向上させるために(図示されない)プラチナ薄膜あるいは箔を介して圧着し、さらに、薄膜発熱体1の基体面にはステンレス製の電極4a、4bを接合した。
【0020】
(比較例1)
2ケイ化モリブデン(MoSi)粉末のみを用いて、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行い、窒化ケイ素(Si)基板(50mm×50mm、厚さ2.0mm)上に薄膜を積層し、薄膜発熱体を作製し、さらに、この薄膜発熱体から、実施例1と同様に発熱ユニットを作製した。
【0021】
(X線解析法による構造分析)
実施例1の薄膜、比較例1の薄膜及びケイ素の粉末を、それぞれ、X線解析装置によって組成分析した。分析結果を図2のグラフに示した。このグラフから、比較例1の薄膜は、六方晶系のMoSi結晶構造を有しているのに対し、実施例1の薄膜は、MoSiの結晶粒がSiを介して接合された内部構造を有していることがわかる。
【0022】
(発熱実験1)
実施例1の発熱エレメントに定電圧15.0Vを印加し、発熱温度のばらつき及び抵抗値の変化を測定した。発熱温度の測定は、発熱エレメントのアルミ板に形成した直径1mmの穴にアルメル-クロメル熱電対を挿入して測定した。また、測定に際して、発熱エレメントをアルミナウール断熱材で挟んで断熱した。測定結果を図3(A)のグラフに示した。このグラフからわかるように、3000時間を経過しても、発熱温度の変化量は5℃程度で、抵抗値は0.05Ω程度しか減少しなかった。
【0023】
実施例1の発熱エレメントに、さらに、定電圧17.0Vを印加し、発熱温度のばらつき及び抵抗値の変化を測定した。測定結果を図3(B)のグラフに示した。このグラフからわかるように、6000時間を経過しても、発熱温度は410℃付近で安定しており、抵抗値は3~3.3Ωの範囲でばらつきはあるもののほとんど変化しなかった。これは、酸化反応が薄膜の表面や内部においてほとんど進行していないことに起因し、また、このことから、薄膜内部においてSiがMoSiの結晶粒の表面を膜状に被覆していると考えられる。この場合、抵抗値が一定の範囲内に留まっているという条件の下で、2ケイ化モリブデンの結晶粒を被覆するケイ素の層の厚さが大きくなるほど、その耐熱性が向上すると考えられる。
【0024】
(発熱実験2)
比較例1の発熱エレメントに、定電圧12.5Vを印加し、発熱温度のばらつき及び抵抗値の変化を測定した。測定結果を図4のグラフに示した。このグラフからわかるように、電圧印加時は、約400℃程度の発熱温度であったが、55時間経過したあたりから各測定値が急激に変化した。最終的には、発熱温度は110℃まで低下し、抵抗値は約17Ω増加した。これは、薄膜内部まで酸化が進行し、電極との導電性が55時間経過したあたりから急激に低下したことに起因すると考えられる。
【0025】
(実施例1と比較例1との比較検討)
比較例1の薄膜発熱体は、長時間にわたって高温(350℃以上)で発熱させると、発熱温度が低下するとともに抵抗値も大きく変動して不安定になるが、実施例1の薄膜発熱体は、長時間にわたって高温で発熱させても発熱温度及び抵抗値の変動は少なく、耐熱性に優れ、安定して動作することがわかった。
【0026】
(実施例1の温度応答性の評価実験)
実施例の発熱エレメントに対し17V~35Vの電圧を瞬間的に印加し、室温から350℃の温度に達するまでの時間を測定した。測定結果を図5のグラフに示した。このグラフからわかるように、印加電圧を増加させるにともなって、所要時間は指数関数的に減少した。最終的に、35Vの電圧を印加することで78秒で350℃の温度まで達することが確認され、本発明による薄膜発熱体は、高速での昇降温制御が可能であることが確認された。
【0027】
(実施例2)
モリブデンとケイ素の原子数比が2.3になるように2ケイ化モリブデン粉末とケイ素の粉末を混合し、この混合物から実施例1の場合と同様にして薄膜発熱体を製作した。
(実施例3)
モリブデンとケイ素の原子数比が2.6になるように2ケイ化モリブデン粉末とケイ素の粉末を混合し、この混合物から実施例1の場合と同様にして薄膜発熱体を製作した。
(実施例4)
モリブデンとケイ素の原子数比が2.8になるように2ケイ化モリブデン粉末とケイ素の粉末を混合し、この混合物から実施例1の場合と同様にして薄膜発熱体を製作した。
(実施例5)
モリブデンとケイ素の原子数比が3.4になるように2ケイ化モリブデン粉末とケイ素の粉末を混合し、この混合物から実施例1の場合と同様にして薄膜発熱体を製作した。
【0028】
(抵抗の温度係数の測定)
実施例1~実施例5の各薄膜発熱体及び比較例1(モリブデンとケイ素の原子数比2.0)の薄膜発熱体のそれぞれについて抵抗の温度係数を測定した。測定結果を、薄膜発熱体を構成するモリブデン及びケイ素の原子数比と抵抗の温度係数との関係として図6のグラフに示した。このグラフから、モリブデンとケイ素の原子数比がほぼ2.2となるような2ケイ化モリブデン粉末とケイ素粉末の混合物から薄膜発熱体を製作すれば、薄膜発熱体の抵抗の温度係数はほぼゼロとなることがわかる。こうして得られた薄膜発熱体は、その抵抗値が温度に依存しなくなるので、長時間にわたり高温で作動させても非常に安定している。
【0029】
このように、本発明によれば、温度係数がゼロの薄膜発熱(抵抗)体を簡単に製作することができ、この薄膜抵抗体を用いて、高温で長時間作動させてもその抵抗値がほとんど変化しない固定抵抗器を製作することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による薄膜発熱体を用いた発熱エレメントの構成を示す図である。
【図2】本発明による2ケイ化モリブデン‐ケイ素複合体の薄膜、ケイ素の粉末及び2ケイ化モリブデン薄膜のそれぞれのX線回線装置による分析結果を示すグラフである。
【図3】本発明による2ケイ化モリブデン‐ケイ素複合体の発熱実験における、発熱温度及び抵抗値の測定結果を示すグラフである。
【図4】2ケイ化モリブデン薄膜の発熱実験における、発熱温度及び抵抗値の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明による2ケイ化モリブデン‐ケイ素複合体の薄膜の温度応答性の評価実験の測定結果を示すグラフである。
【図6】薄膜発熱体を構成するモリブデン及びケイ素の原子数比と抵抗の温度係数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 薄膜発熱体
1a 発熱面(薄膜面)
2 雲母の絶縁膜
3 アルミ板3
4a、4b 電極
5 ボルト
6 ナット6
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5