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明細書 :分散光学システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5327731号 (P5327731)
公開番号 特開2009-015014 (P2009-015014A)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成21年1月22日(2009.1.22)
発明の名称または考案の名称 分散光学システム
国際特許分類 G02F   1/39        (2006.01)
H01S   3/10        (2006.01)
G02B  13/00        (2006.01)
G02B   5/04        (2006.01)
G02B   5/18        (2006.01)
FI G02F 1/39
H01S 3/10 Z
G02B 13/00
G02B 5/04 C
G02B 5/18
請求項の数または発明の数 10
全頁数 21
出願番号 特願2007-176655 (P2007-176655)
出願日 平成19年7月4日(2007.7.4)
審査請求日 平成22年5月25日(2010.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】海老塚 昇
【氏名】和田 智之
【氏名】大谷 知行
【氏名】山下 幹雄
【氏名】佐藤 修二
個別代理人の代理人 【識別番号】100087000、【弁理士】、【氏名又は名称】上島 淳一
審査官 【審査官】岡田 吉美
参考文献・文献 特開2003-302666(JP,A)
特開2005-321480(JP,A)
調査した分野 G02F1/29-7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
入射光を分散する分散光学システムにおいて、
入射光を入射して分散する分散プリズムと、
前記分散プリズムの後段に配置され、前記分散プリズムから出射された光を入射して、該入射した光を出射して焦点面上に結像する結像レンズと、
前記結像レンズの後段において前記結像レンズの前記焦点面に配置され、前記結像レンズから出射された光を入射して、該入射した光の分散を拡大して出射する分散拡大レンズと、
前記分散拡大レンズの後段に配置された凸レンズまたは凹面鏡と
を有し、
前記凸レンズまたは凹面鏡は、前記分散拡大レンズからの出射光を結像する位置に配置され、
前記分散拡大レンズは、前記結像レンズから出射される前記分散プリズムにより分散された光について、屈折角が大きいスペクトルの青側の光が前記分散拡大レンズの光軸近傍に入射して前記光軸近傍に結像し、屈折角が小さいスペクトルの赤側の光が前記分散拡大レンズのコバ側に入射して前記コバ側に結像するように配置し
前記分散拡大レンズは、前記赤側の光の分散を前記青側の光の分散よりも大きくなるようにする
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、前記結像レンズの後段において前記結像レンズの前記焦点面近傍に配置されるとともに、前記結像レンズから出射される前記分散プリズムにより分散された光について、屈折角が大きいスペクトルの青側の光が前記分散拡大レンズの光軸上に入射して前記光軸上に結像するように配置された
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項3】
入射光を分散する分散光学システムにおいて、
入射光を入射して分散する回折格子と、
前記回折格子の後段に配置され、前記回折格子から出射された光を入射して、該入射した光を出射して焦点面上に結像する結像レンズと、
前記結像レンズの後段において前記結像レンズの前記焦点面に配置され、前記結像レンズから出射された光を入射して、該入射した光の分散を拡大して出射する分散拡大レンズと、
前記分散拡大レンズの後段に配置された凸レンズまたは凹面鏡と
を有し、
前記凸レンズまたは凹面鏡は、前記分散拡大レンズからの出射光を結像する位置に配置され、
前記分散拡大レンズは、前記結像レンズから出射される前記回折格子により分散された光について、前記分散拡大レンズに入射して回折角を拡大するように配置し
前記分散拡大レンズは、前記回折角の小さな光の分散を前記回折角の大きな光の分散よりも大きくなるようにする
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項4】
請求項3に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、前記結像レンズの後段において前記結像レンズの前記焦点面近傍に配置されるとともに、前記結像レンズから出射される前記回折格子により分散された光について、長波長側の光が前記分散拡大レンズの光軸上あるいは光軸近傍に入射して、短波長側の光が前記分散拡大レンズのコバ側に入射するように配置された
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項5】
請求項1または2のいずれか1項に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散プリズムは、三角プリズムであり、
前記分散プリズムが二等辺三角形あるいは正三角形の場合に前記分散プリズムに入射する入射光は、前記分散プリズムの底面と平行になるように入射角θ
θ=sin-1{n(λ)sin(α/2)}
(λ):λの屈折角
α:分散プリズムの角度
を有するものとし、
前記入射光のうち波長λの光は、前記分散プリズム中に入射の際の屈折角θ(λ)が
θ(λ)=sin-1{sinθ/n(λ)}
n(λ):λの屈折角
であり、
前記入射光が前記分散プリズムより出射する際の出射角θout(λ)は
θout(λ)=sin-1[n(λ)sin{α-θ(λ)}]
であり、
前記出射角θout(λ)を有する出射光は、前記結像レンズを出射後に、前記結像レンズの光軸から高さ方向における距離xだけ離れた結像位置から前記分散拡大レンズに入射するものであって、
前記xは、
x(λ)=f・tan{θout(λ)-θ}
θ:任意の角度
であり、
前記分散拡大レンズに入射する入射角φin(λ)は
φin(λ)=sin-1{(x+a)/R}
a:結像レンズと分散拡大レンズの光軸の距離
R:分散拡大レンズの曲率半径
であり、
前記分散拡大レンズ内における光軸となす角φ(λ)は
φ(λ)=sin-1 [sin{φin(λ)/n(λ)}]
(λ):λの分散拡大レンズに対する屈折率
であり、
前記分散拡大レンズより出射される光の出射角φout(λ)は
φout(λ)=sin-1[n(λ)sin{φin(λ)-φ(λ)}]
である
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、凸形状である
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、凹形状である
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項8】
請求項6または7のいずれか1項に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、シリンドリカルレンズである
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項9】
請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、非球面や自由曲面を備えたレンズである
ことを特徴とする分散光学システム。
【請求項10】
請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の分散光学システムにおいて、
前記分散拡大レンズは、1または複数のレンズよりなる
ことを特徴とする分散光学システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分散光学システムに関し、さらに詳細には、フェムト秒レーザーの位相整合器用の分散光学ユニットやテラヘルツ波発生器の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG方式)の非線形光学結晶に入射させるシード光の分散光学ユニットなどとして用いて好適な分散光学システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フェムト秒レーザー光を発生させる際には、非線形光学結晶により発生した広い波長領域のパルス光を位相整合してパルス幅の圧縮を行うようになされている。
【0003】
図1には、こうした位相整合を行うための従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システムの一例の概念構成説明図が示されている。
【0004】
即ち、この図1に示す従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100は、非線形光学結晶により発生した広い波長領域のパルス光を入射して当該入射したパルス光を反射させる第1ミラー102と、第1ミラー102により反射されたパルス光を分散させる第1回折格子104と、第1回折格子104により分散されたパルス光を反射させる第2ミラー106と、第2ミラー106により反射されたパルス光を反射させ波長ごとに平行光束にする第1凹面鏡108と、第1凹面鏡108の焦点位置に配置されるとともに第1凹面鏡108により波長ごとに平行光束にされたパルス光の位相を波長ごとに変調する空間光変調器(Spatial Light Modulator:SLM)110と、空間光位相変調器110により変調されたパルス光を反射して回折格子116上に集光する第2凹面鏡112と、第2凹面鏡112により集光されたパルス光を反射させる第3ミラー114と、第3ミラー114により集光された分散しているパルス光を合成する第2回折格子116と、第2回折格子116により合成されたパルス光を反射して外部へ出射する第4ミラー118とを有して構成されている。
【0005】

以上の構成において、上記した従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100によれば、非線形光学結晶により発生した広い波長領域のパルス光を内部に取り込み、内部へ取り込んだパルス光を位相整合してパルス幅の圧縮を行って外部へ出射することにより、フェムト秒レーザー光を発生させることができる。
【0006】
なお、非線形光学結晶により発生したパルス光の波長領域が広いほど、パルス幅を圧縮することが可能である。
【0007】

しかしながら、上記した従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100のように回折格子を用いたシステムにおいては、回折格子自体が広い波長領域において高い効率を得ることが困難であり、また、回折格子の出射光として2倍の波長(1オクターブ)の光が2次回折光として重なってしまい、広帯域の波長領域において高効率でフェムト秒レーザー光を発生させることが困難であるという問題点があった。
【0008】

一方、上記したフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100のように回折格子を用いたシステムとは異なり、回折格子の代わりにプリズムを用いたフェムト秒レーザー用位相整合光学システムも知られている。
【0009】
しかしながら、プリズムは分散の波長依存性が大きいため、長波長領域では大きな分散を得ることが困難であるという新たな問題点を招来するものであった。
【0010】

具体的には、フェムト秒レーザー光を得るために、パルスレーザー光のパルス幅を数10フェムト秒に圧縮するには、波長300~1200nmの波長領域において効率約80%で2次回折光などの高次回折光が発生しないような分散素子あるいは分散光学システムが必要となる。
【0011】
ところが、従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100において、第1回折格子104および第2回折格子116として、ブレーズ波長が500nmである格子数150本/mmの反射型回折格子を用いた場合には、波長500nmにおける効率は75%程度であるが、波長300nmにおける効率は15%程度と低く、また、波長1200nmにおける効率は25%程度と低いものであり、さらに、波長300~600nmの位置に波長600~1200nmの2次回折光が重なってしまうという問題点があった。
【0012】

一方、テラヘルツ波を発生させるための光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG方式)は、その内部に非線形光学結晶が配置されており、この非線形光学結晶にシード光およびポンプ光を入射してテラヘルツ光を得るものである。
【0013】

図2には、従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器の概念構成説明図が示されている。
【0014】
この図2に示す光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200においては、非線形光学結晶208に入射させるシード光の入射角調整光学システムとして、回折格子を用いた分散光学システム204が用いられている。
【0015】
上記した従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200は、シード光を発生するシード光発生用光源202と、シード光発生用光源202により発生されたシード光を分散させる分散光学システム204と、ポンプ光を発生するポンプ光発生用光源(図示せず)と、ポンプ光発生用光源により発生されたポンプ光を反射するミラー206と、入射されたシード光およびポンプ光からテラヘルツ波を生成する非線形光学結晶208と、非線形光学結晶208上に載置されるとともに非線形光学結晶208により生成されたテラヘルツ波を取り出すカップラ210とを有して構成されている。
【0016】
また、上記した分散光学システム204は、シード光発生用光源202により発生されたシード光を分散する表面レリーフ型の回折格子204aと、回折格子204aにより分散された光を入射して各波長の光束を平行出射するレンズ204bと、レンズ204bより出射された各波長の光束後焦点に収斂するレンズ204cとを有して構成されている。
【0017】
なお、非線形光学結晶としては、適宜の材料を選択すればよく、例えば、MgO:LiNbOを用いることができる。
【0018】

ところで、こうした光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200の分散光学システム204に用いられる回折格子204aは、格子間隔を狭くすることにより大きな分散が得られるようになるものであるが、格子間隔が波長に近づくと回折効率が急激に低下してしまうことが知られている。
【0019】
ここで、分散光学システムの各構成部材の寸法や配置は回折格子204aの格子間隔に依存するものであり、従ってその小型化には限界があるという問題点があった。
【0020】
例えば、図2に示した光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200の分散光学システム204により約0.27°/nmの角度分散を得るためには、回折格子204aとして格子数1200本/mmを有する表面レリーフ型の回折格子と、焦点距離がf=750mmのレンズ204bと、焦点距離がf=250mmのレンズ204cとを用い、回折格子204aとレンズ204bとの間隔を750mmとし、レンズ204bとレンズ204cとの間隔を750mm+250mmとし、レンズ204cと非線形光学結晶208との間隔を250mmとする必要があるため、分散光学システム204の距離が約2mに及ぶ長さになり、装置全体が極めて大型化するという問題点があった。
【0021】

なお、本願出願人が特許出願時に知っている先行技術は、上記において説明したようなものであって文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、波長依存性が少なく、高効率で大きな分散が得られるような小型の分散光学システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明による分散光学システムは、分散プリズムより出射された分散光を結像する結像レンズ後段において、当該結像レンズの焦点面近傍に分散拡大レンズを配置し、さらに、結像レンズより出射された光のうち分散プリズムにおける屈折角が大きい光を分散拡大レンズの光軸付近に入射し、分散プリズムにおける屈折角が小さい光を分散拡大レンズの縁付近に入射するようにしたものである。
【0024】
従って、本発明によれば、広い波長範囲内で高次回折光を発生することなく高効率で大きな分散を得ることができるようになる。
【0025】
即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、入射光を分散する分散光学システムにおいて、入射光を入射して分散する分散プリズムと、上記分散プリズムの後段に配置され、上記分散プリズムから出射された光を入射して、該入射した光を出射して焦点面上に結像する結像レンズと、上記結像レンズの後段において上記結像レンズの上記焦点面に配置され、上記結像レンズから出射された光を入射して、該入射した光の分散を拡大して出射する分散拡大レンズと、上記分散拡大レンズの後段に配置された凸レンズまたは凹面鏡とを有し、上記凸レンズまたは凹面鏡は、上記分散拡大レンズからの出射光を結像する位置に配置され、上記分散拡大レンズは、上記結像レンズから出射される上記分散プリズムにより分散された光について、屈折角が大きいスペクトルの青側の光が上記分散拡大レンズの光軸近傍に入射して上記光軸近傍に結像し、屈折角が小さいスペクトルの赤側の光が上記分散拡大レンズのコバ側に入射して上記コバ側に結像するように配置し、上記分散拡大レンズは、上記赤側の光の分散を上記青側の光の分散よりも大きくなるようにしたものである。
【0026】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記分散拡大レンズは、上記結像レンズの後段において上記結像レンズの上記焦点面近傍に配置されるとともに、上記結像レンズから出射される上記分散プリズムにより分散された光について、屈折角が大きいスペクトルの青側の光が上記分散拡大レンズの光軸上に入射して上記光軸上に結像するように配置されるようにしたものである。
【0027】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、入射光を分散する分散光学システムにおいて、入射光を入射して分散する回折格子と、上記回折格子の後段に配置され、上記回折格子から出射された光を入射して、該入射した光を出射して焦点面上に結像する結像レンズと、上記結像レンズの後段において上記結像レンズの上記焦点面に配置され、上記結像レンズから出射された光を入射して、該入射した光の分散を拡大して出射する分散拡大レンズと、上記分散拡大レンズの後段に配置された凸レンズまたは凹面鏡とを有し、上記凸レンズまたは凹面鏡は、上記分散拡大レンズからの出射光を結像する位置に配置され、上記分散拡大レンズは、上記結像レンズから出射される上記回折格子により分散された光について、上記分散拡大レンズに入射して回折角を拡大するように配置し、上記回折角の小さな光の分散を上記回折角の大きな光の分散よりも大きくなるようにしたものである。
【0028】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項3に記載の発明において、上記分散拡大レンズは、上記結像レンズの後段において上記結像レンズの前記焦点面近傍に配置されるとともに、上記結像レンズから出射される上記回折格子により分散された光について、長波長側の光が上記分散拡大レンズの光軸上あるいは光軸近傍に入射して、短波長側の光が上記分散拡大レンズのコバ側に入射するように配置されるようにしたものである。
【0029】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、上記分散プリズムは、三角プリズムであり、上記分散プリズムが二等辺三角形あるいは正三角形の場合に上記分散プリズムに入射する入射光は、上記分散プリズムの底面と平行になるように入射角θ
θ=sin-1{n(λ)sin(α/2)}
(λ):λの屈折角
α:分散プリズムの角度
を有するものとし、上記入射光のうち波長λの光は、上記分散プリズム中に入射の際の屈折角θ(λ)が
θ(λ)=sin-1{sinθ/n(λ)}
n(λ):λの屈折角
であり、上記入射光が上記分散プリズムより出射する際の出射角θout(λ)は
θout(λ)=sin-1[n(λ)sin{α-θ(λ)}]
であり、上記出射角θout(λ)を有する出射光は、上記結像レンズを出射後に、上記結像レンズの光軸から高さ方向における距離xだけ離れた結像位置から上記分散拡大レンズに入射するものであって、上記xは、
x(λ)=f・tan{θout(λ)-θ}
θ:任意の角度
であり、上記分散拡大レンズに入射する入射角φin(λ)は
φin(λ)=sin-1{(x+a)/R}
a:結像レンズと分散拡大レンズの光軸の距離
R:分散拡大レンズの曲率半径
であり、上記分散拡大レンズ内における光軸となす角φ(λ)は
φ(λ)=sin-1 [sin{φin(λ)/n(λ)}]
(λ):λの分散拡大レンズに対する屈折率
であり、上記分散拡大レンズより出射される光の出射角φout(λ)は
φout(λ)=sin-1[n(λ)sin{φin(λ)-φ(λ)}]
であるようにしたものである。
【0030】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の発明において、上記分散拡大レンズは凸形状であるようにしたものである。
【0031】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の発明において、上記分散拡大レンズは凹形状であるようにしたものである。
【0032】
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、本発明のうち請求項6または7のいずれか1項に記載の発明において、上記分散拡大レンズはシリンドリカルレンズであるようにしたものである。
【0033】
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の発明において、 上記分散拡大レンズは非球面や自由曲面を備えたレンズであるようにしたものである。
【0034】
また、本発明のうち請求項10に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の発明において、上記分散拡大レンズは1または複数のレンズよりなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、以上説明したように構成されているので、波長依存性が少なく、高効率で大きな分散が得られる小型の分散光学システムを提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による分散光学システムの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0037】

図3には、本発明による分散光学システムの第1の実施の形態の概念構成説明図が示されている。
【0038】
この本発明の第1の実施の形態による分散光学システム10は、例えば、フェムト秒レーザーの位相整合器用の分散光学ユニットとして用いることができるものである。
【0039】
即ち、分散光学システム10は、非線形光学結晶により発生した広い波長領域のパルス光などの入射光を分散させる分散プリズム12と、分散プリズム12により分散された光束を結像する結像レンズ14と、結像レンズ14の出射面14aより出射された光の焦点位置である結像レンズ14の結像面近傍(焦点面近傍)に設置されるとともに入射した光の分散を拡大する分散拡大レンズ16とを有して構成されている。
【0040】
なお、この分散光学システム10においては、分散プリズム12として各頂角が60°を有する石英製の正三角柱形状の三角プリズムを用い、また、結像レンズ14として焦点距離が100mmである平凸レンズを用い、また、分散拡大レンズ16として曲率半径が17mmの石英からなる凸形状のシリンドリカルレンズを用いた。
【0041】
また、分散光学システム10は、上記した各構成部材により構成されてなるものであるが、これら各構成部材は、以下に説明するように配置されている。
【0042】
即ち、結像レンズ14の出射面14aから出射される分散プリズム12により分散された光束について、屈折角が大きいスペクトルの短波長側、即ち、青色光(図3において破線で示す。)を分散拡大レンズ16の光軸近傍上に入射して光軸近傍上に結像させ、屈折角が小さいスペクトルの長波長側、即ち、赤色光(図3において一点鎖線で示す。)を分散拡大レンズ16のコバ側、即ち、縁近傍に入射してコバ側、即ち、縁近傍に結像させるように配置する。
【0043】
なお、分散光学システム10においては、波長300nmの光が分散拡大レンズ16の光軸上を通るように設計されている。
【0044】

以上の構成において、分散光学システム10によれば、分散プリズム12により分散された光束を結像レンズ14で波長毎に結像させ、結像面近傍に分散拡大レンズ16が配置されていることにより、分散拡大レンズ16で波長分散を拡大して分散の波長依存性を制御することができる。
【0045】
即ち、分散光学システム10は、分散プリズム12により分散された光束について、屈折角が大きいスペクトルの短波長側、即ち、青色光(図3において破線で示す。)を分散拡大レンズ16の光軸近傍上に入射させ、屈折角が小さいスペクトルの長波長側、即ち、赤色光(図3において一点鎖線で示す。)を分散拡大レンズ16のコバ側、即ち、縁近傍に入射させているので、分散プリズム12により分散された光束のなかでスペクトルの長波長側の光束の分散を大きくすることができる。
【0046】
従って、分散光学システム10においては、分散拡大レンズ16の曲率半径の選択と入射角(光軸からの距離)の調整とを行うことにより、表面刻線型の回折格子より大きな分散や、波長あるいは波数に対してほぼ線形と見なすことができる分散特性を得ることができる。
【0047】

なお、分散拡大レンズ16として、複数のレンズを組み合わせたり、非球面や自由曲面を備えたレンズを採用することにより、波長あるいは波数に対して任意の分散特性を得ることができるようになる。
【0048】
また、分散光学システム10において、分散プリズム12に代えて回折格子を用いることにより、1オクターブ以内の波長範囲において極めて大きな分散を得ることが可能である。
【0049】

次に、分散光学システム10によって光を分散させる際の作用について、図4および図5を合わせて参照しながら詳細に説明することとする。
【0050】
まず、分散プリズム12への入射光として、例えば、非線形光学結晶により発生した広い波長領域のパルス光などの入射光が分散プリズム12に入射すると、当該入射光は分散プリズム12により分散されてスペクトルが得られる。
【0051】
なお、図3乃至図5においては、本発明の理解を容易にするために、赤色光(図3乃至図5において一点鎖線で示す。)、緑色光(図3乃至図5において二点鎖線で示す。)および青色光(図3乃至図5において破線で示す。)のみを図示するものとし、以下の説明においても、上記した赤色光、緑色光および青色光に関して説明する。
【0052】
ここで、分散プリズム12により分散されて出力される赤色光、緑色光および青色光のなかで、青色光に対する屈折率が最も大きく、また、赤色光に対する屈折率が最も小さいものであり、図3に示されているようにそれぞれの角度に屈折した赤色光、緑色光および青色光が分散プリズム12から出射される。
【0053】
次に、分散プリズム12より出射した赤色光、緑色光および青色光(以下、これら赤色光、緑色光および青色光を総称して「分散光」と称する。)は、分散プリズム12の後段に配置された結像レンズ14に入射し、結像レンズ14の出射面14aより出射される。
【0054】
そして、結像レンズ14を出射した分散光はそれぞれ、結像レンズ14の焦点面付近に配置された分散拡大レンズ16に入射し、青色光は分散拡大レンズ16の光軸近傍に結像し、また、赤色光は分散拡大レンズ16のコバ側、即ち、縁近傍に結像する。
【0055】
上記のようにして分散拡大レンズ16に入射された分散光は、分散拡大レンズ16から出射されて、分散光学システム10の外部へ取り出されるものである。
【0056】

上記において説明したように、本発明による分散光学システム10は、分散プリズム12により分散された光束を波長ごとに結像させるため、結像レンズ14の後段に分散拡大レンズ16を設けるとともに、分散プリズム12により大きく屈折した波長の光は分散拡大レンズ16の光軸近傍に入射するようにし、分散プリズムにより小さく屈折した波長の光は分散拡大レンズの縁近傍に入射するようになされていおり、分散プリズムと結像レンズのみから得られる光の分散よりも、光の分散をより拡大することができる。
【0057】
即ち、分散光学システム10においては、青色光が分散拡大レンズ16の光軸近傍に収束し、赤色光が分散拡大レンズ16の縁近傍に収束しており、波長の分散を大きくとることができるものである。
【0058】
こうした分散光学システム10は、分散拡大レンズ16に光が入射する際に、分散拡大レンズ16における光の入射位置によって屈折角が異なる球面収差のため、光軸近傍は屈折角が小さくなり、光軸から離れて縁近傍にいくに従って屈折角が大きくなることを利用している。
【0059】
より詳細には、分散プリズム12から出射された光束のなかで、短波長の光束は大きく屈折し、長波長の光束は小さく屈折するものであるので、分散拡大レンズ16に入射する際には、分散プリズム12における屈折率とは逆となるように、即ち、短波長の光は屈折角を小さくさせるように分散拡大レンズ16の光軸近傍に入射させ、長波長の光は屈折角を大きくさせるように分散拡大レンズ16の縁近傍に入射させるように制御することによって、それぞれの波長の波長分散を調整することができるものである。
【0060】

ここで、図4および図5を参照しながら、分散光学システム10の分散拡大レンズ16における入射位置および出射光の屈折角についての関数を詳細に説明する。
【0061】
なお、図4は分散プリズム12における入射角と内部屈折角と出射角とを図示する概念説明図であり、図5は分散拡大レンズ16における入射角と内部屈折角と出射角とを図示する概念説明図である。
【0062】
分散光学システム10における分散プリズム12として用いられる三角プリズムの形状が二等辺三角形もしくは正三角形の場合に、分散プリズム12内において、任意の波長(例えば、中心波長)λの光束を図4に示すように分散プリズム12の底辺と平行に進行させるためには、入射面における光束の入射角θは、分散プリズム12の頂角αと波長λの屈折率n(λ )とを用いて式1で示すことができる。
【0063】

θ=sin-1{n(λ )sin(α/2)} ・・・ 式1

即ち、波長λの光を上記式1より得られた入射角θで入射させると、光は分散プリズム12内を分散プリズム12の底面と平行に進行することになる。
【0064】
より具体的には、例えば、石英で形成されているとともに頂角α=60°を有する分散プリズム12を用いた分散光学システムにおいて、中心波長λ=400nmの光を入射させた場合には、屈折率n はn(400nm)=1.4701であるので、上記の式1より入射角θを求めると、以下の値が得られる。
【0065】

θ=sin-1{1.401×sin(60/2)}=47.312°

従って、中心波長λ=400nmの光を分散プリズム12に入射する際に、入射角θを47.312°とすると、分散プリズム12内を分散プリズム12の底面と平行な状態で入射光が進行する。
【0066】
上記により算出された入射角θを用いて、入射光の各波長(λ)における分散プリズム12内の屈折角θ(λ)を表すと、以下の式2で示すことができる。
【0067】

θ(λ)=sin-1{sinθ/n(λ )} ・・・ 式2

さらに、分散プリズム12より出射した出射光の屈折角θout(λ)は、上記式2により表された各波長の屈折率n(λ)を用いて、式3によって表される。
【0068】

θout(λ)=sin-1[n(λ )sin{α-θ(λ )}] ・・・ 式3

分散プリズム12より出射し、式3より得られた出射角θout(λ)を有する光は、結像レンズ14に入射したのち、分散拡大レンズ16に入射する。
【0069】
そのときの、分散拡大レンズ16上の結像レンズ14焦点面における結像位置x(λ)が式4から求められる。より詳細には、結像位置x(λ)は、分散プリズム12からの出射光の屈折角θout(λ)から任意の角度θ(例えばλの出射後の屈折角θout(λ)=入射角θ)を差し引いた際に得られる値と、結像レンズ14の焦点距離fとを用いて算出される。
【0070】

x(λ)=f・tan{θout(λ)-θ}・・・ 式4

こうして得られた各波長の結像位置x(λ)より、分散拡大レンズ16における各波長の光の入射位置がわかるものである。
【0071】

さらに、分散拡大レンズ16に入射する際の入射角φin(λ)は、結像位置x(λ)の値に結像レンズ14と分散拡大レンズ16との光軸の距離aを加えて得られる値と、分散拡大レンズ16の曲率半径Rとを用いて式5により表される。
【0072】

φin(λ)=sin-1{(x+a)/R}・・・ 式5

そして、上記式5より得られた分散拡大レンズ16への入射角φin(λ)と、屈折率n(λ)とを用いて、分散拡大レンズ16内における入射光と光軸とのなす角φ(λ)が式6により求められる。
【0073】

φ(λ)=sin-1[sin{φin(λ)/n(λ)}]・・・ 式6

さらに、式5から得られた分散拡大レンズ16への入射角φin(λ)と、式6から得られた分散拡大レンズ16の光軸となす角φ(λ)とを用いて、分散拡大レンズ16を出射した各波長の出射角φout(λ)は、以下の式7より得られる。
【0074】

φout(λ)=sin-1[n(λ)sin{φin(λ)-φ(λ)}]・・・ 式7
ここで、上記した本発明による分散光学システム10における分散特性について、図6(a)(b)を参照しながら以下に説明する。
【0075】
まず、図6(a)には、本発明による分散光学システム10を用いて光を分散させた場合における各波長の屈折角を表した分散曲線が示されている。これは、波長に対する分散特性(波長分散)を示すものである。
【0076】
なお、図6(a)には、本発明による分散光学システム10の分散特性と比較するために、格子数150本/mmの回折格子のみを用いて垂直入射させた光を分散させた際の波長に対する分散特性(波長分散)と、各頂角が60°で石英からなる分散プリズムのみを用いて光を分散させた際の波長に対する分散特性(波長分散)とがあわせて示されている。
【0077】
一方、図6(b)には、本発明による分散光学システム10を用いて光を分散させた場合における波数に対する屈折角をプロットした波数に対する分散特性(波数分散)が示されている。
【0078】
なお、図6(b)には、図6(a)と同様に、本発明による分散光学システム10と比較するために、図6(a)に示す上記回折格子および上記分散プリズムを用いて光を分散させた場合の波数に対する分散特性(波数分散)とがあわせて示されている。
【0079】

図6(a)に示されているように、本発明の分散光学システム10の波長に対する分散特性は、長波長になるにつれて分散し難くなり、波長依存性が高いものであることがわかる。
【0080】
一方、回折格子の分散特性は、波長に対する屈折角を直線で表すことができ、一定の分散が得られることがわかる。また、プリズムの分散特性は、短波長領域での分散については回折格子のみの場合より大きいが、長波長になるにつれて分散が小さくなることがわかる。
【0081】

また、図6(b)に示されているように、本発明の分散光学システム10の波数に対する分散特性は、波長に対する分散特性よりもより直線的であり、一定に近い分散が得られていることがわかる。
【0082】
一方、回折格子の波数に対する分散特性は一定ではない(非線形である。)ことがわかる。また、プリズムの分散特性は、直線的であり、一定の分散が得られているが、本発明による分散光学システム10に比べると分散が小さいことがわかる。
【0083】

ここで、フェムト秒レーザーを発生させる場合には、広い波長領域において高い効率を維持できるとともに、パルス圧縮の効率や制御の点で、広い波数領域において一定の波数分散特性を示す分散素子が望まれているため、上記した分散特性から判断すると本発明による分散光学システム10はフェムト秒レーザーの発生に適していると認められる。
【0084】
すなわち、本発明による分散光学システム10は、分散が大きい回折格子のみの場合の利点と波数特性が直線的で分散が一定であるプリズムのみの場合利点とを兼ね備えているものである。
【0085】

次に、図7(a)(b)を参照しながら、本発明による分散光学システム10の第1の変形例および第2の変形例について説明する。
【0086】
即ち、図7(a)は、上記した第1の実施の形態による分散光学システム10(図3参照)において、結像レンズ14から出射した光束のうち波長300nmの光束が分散拡大レンズの光軸より10mm上の位置に入射するようにした第1の変形例の各波長における屈折角を表した分散曲線、即ち、波長に対する分散特性(波長分散)が示されている。
【0087】
なお、図7(a)には、上記した第1の変形例の分散特性と比較するために、格子数150本/mmの回折格子のみを用いて垂直入射させた光を分散させた際の波長に対する分散特性(波長分散)と、各頂角が60°で石英からなる分散プリズムのみを用いて光を分散させた際の波長に対する分散特性(波長分散)とがあわせて示されている。
【0088】
この図7(a)から、上記した第1の変形例の波長に対する分散特性は、上記した第1の実施の形態による分散光学システム10や回折格子あるいはプリズムのみの場合と比較して直線性が増していることから、得られる分散がより一定であるとともに、各波長における屈折角も増加していることから大きい分散が得られ、高い効率で分散光を得ることができることが認められる。
【0089】
次に、図7(b)は、上記した第1の実施の形態による分散光学システム10(図3参照)において、分散拡大レンズ16として第1の実施の形態とは曲率半径が異なる分散拡大レンズ、具体的には、曲率半径が6.5mmの石英製凸形状レンズを用いるようにした第2の変形例の各波長における屈折角を表した分散曲線、即ち、波長に対する分散特性(波長分散)が示されている。
【0090】
なお、図7(b)には、上記した第2の変形例の分散特性と比較するために、格子数150本/mmの回折格子のみを用いて垂直入射させた光を分散させた際の波長に対する分散特性(波長分散)と、各頂角が60°で石英からなる分散プリズムのみを用いて光を分散させた際の波長に対する分散特性(波長分散)とがあわせて示されている。
【0091】
この図7(b)から、上記した第2の変形例の波長に対する分散特性は、上記した第1の実施の形態による分散光学システム10、第1の変形例ならびに回折格子あるいはプリズムのみの場合と比較して、各波長における屈折角が大きく増加しており、大きい分散が得られることが認められる。また、波長600~1000nmの領域における分散曲線はほぼ線形であることから、この波長領域において一定の分散が得られることが認められる。
【0092】

次に、図8を参照しながら、本発明による分散光学システムの第2の実施の形態について説明する。
【0093】
なお、以下の説明においては、図3を参照しながら説明した本発明の第1の実施の形態による分散光学システム10と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いることにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は適宜に省略することとする。
【0094】

この図8に示す第2の実施の形態の分散光学システム40は、上記した第1の実施の形態の分散光学システム10(図3参照)と比較すると、分散拡大レンズとして凹形状のシリンドリカルレンズを用いている点においてのみ異なっている。
【0095】
即ち、この第4の実施の形態の分散光学システム40は、分散プリズム12と、結像レンズ14と、結像レンズ14から出射された光の焦点位置に設置されて入射した光の分散を拡大する分散拡大レンズ46とを有して構成されており、分散拡大レンズ46としては、曲率半径が17mmのBK7製凹形状レンズシリンドリカルを用いている。
【0096】

こうした凸形状の分散拡大レンズ16を有する分散光学システム10および凹形状の分散拡大レンズ46を有する分散光学システム40は、分散プリズム12の代わりに回折格子を配置することで、1オクターブ以内の波長範囲において、極めて大きな分散を得ることも可能になる。
【0097】

次に、図9を参照しながら、本発明による分散光学システム10の使用例として、分散光学システム10を用いたフェムト秒レーザー用位相整合光学システムについて説明することとする。
【0098】
この図9に示す本発明による分散光学システム10を用いたフェムト秒レーザー用位相整合光学システム300は、従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100と比較すると、第1の回折格子104および第2の116に代えて、本発明による分散光学システム10を用いて構成した点において、従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100と異なっている。
【0099】
なお、以下の説明においては、図1を参照しながら説明した従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いることにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は適宜に省略することとする。
【0100】

即ち、分散光学システム10を用いたフェムト秒レーザー用位相整合光学システム300は、第1のミラー102と、第1のミラー102の後段に配置される第1の分散光学システム10と、分散光学システム10の後段に配置される第2のミラー106と、第1の凹面鏡108と、空間光位相変調器110と、第2の凹面鏡と、第3のミラー114と、第2の分散光学システム10と、第2の分散光学システム10の後段に配置された第4のミラー118とを有して構成されている。
【0101】
上記したように、本発明による分散光学システム10は、図6(a)に示す分散特性を有する分散光学ユニットであり、こうした分散光学システム10を用いることにより、波長300nm~1200nmの領域においては、80%以上の効率が得られるものである。
【0102】
さらに、回折格子を用いた従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システム100の場合と比べると、パルス幅の圧縮に重要な短波長において分散が大きいため、位相整合の精度を向上することが可能である。
【0103】

次に、本発明による分散光学システム40の使用例として、従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200内に本発明による分散光学システム40を用いた光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400について、図10を参照しながら説明することとする。
【0104】
この図10に示す本発明による分散光学システム40を用いた光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400は、従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200と比較すると、分散光学システム204に代えて、本発明による分散光学システム40が用いられている点において異なっている。
【0105】
また、上記した第2の実施の形態の分散光学システム40においては、分散光学システム40内に分散プリズム12を用いたが、光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400における分散光学システム40においては、分散プリズム12に代えて格子数300本/mmの表面レリーフ型回折格子12’を用いている。
【0106】
なお、以下の説明においては、図2を参照しながら説明した従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いることにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は適宜に省略することとする。
【0107】

即ち、図10には本発明による分散光学システム40を用いた光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400の概念構成説明図が示されており、この光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400は、シード光源202と、分散光学システム40と、ポンプ光源(図示せず。)と、ミラー206と、非線形光学結晶208と、カップラ210とを有して構成されている。
【0108】
さらに、分散光学システム40は、回折格子12’と、結像レンズ14と、分散拡大レンズ46と、凸レンズ18とを有して構成されている。

【0109】

こうした光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400は、回折格子と非線形光学結晶との距離が0.8mとすることができ、従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200と比較すると、従来の40%の距離で構成されるため装置を小型化することが可能である。
【0110】

次に、図11には、こうした光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器400に用いた本発明による分散光学システムの分散特性が示されている。
【0111】
即ち、使用波長領域(波長1060nm~1080nm)において、波長に対して直線的な分散特性を得られることから、分散が一定で、かつ、効率の良く分散できるものであることが認められる。
【0112】

また、従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器200は格子数1200本/mmの回折格子204aを用いていたが、本発明による分散光学システム40とともに格子数300本/mmの回折格子を用いることにより、格子数1200本/mmの回折格子を用いた場合に対して、50~200%程度の効率向上が期待できるものである。

なお、上記した実施の形態においては、分散光学システム10に分散プリズム12を用いたが、これに限られるものではないことは勿論であり、分散プリズム12の代わりに回折格子を用いて光の分散を行ってもよいものである。ただし、図9に示す本発明による分散光学システム10を用いたフェムト秒レーザー用位相整合光学システム300の場合においては、分散光学システム10の構成を変更せずに分散プリズム12を用いるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、レーザー関連機器、テラヘルツ波発生光源、各種計測・分析装置あるいは光通信機器などに用いることができ、例えば、フェムト秒レーザーの位相整合器用の分散光学システム、テラヘルツ波発生器の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器の非線形光学結晶に入射させるシード光を分散させる分散光学システム、差周波テラヘルツ波発生器の非線形光学結晶用の分散光学システム、光通信用波長弁別および混合器、単色光源あるいは分光光度計などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、従来のフェムト秒レーザー用位相整合光学システムの一例の概念構成説明図である。
【図2】図2は、従来の光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器の概念構成説明図である。
【図3】図3は、本発明による分散光学システムの第1の実施の形態の概念構成説明図である。
【図4】図4は、図3に示す分散光学システムの分散プリズムにおける入射角と内部屈折角と出射角とを図示する概念説明図である。
【図5】図5は、図3に示す分散光学システムの分散拡大レンズにおける入射角と内部屈折角と出射角とを図示する概念説明図である。
【図6】図6(a)は、本発明による分散光学システムの第1の実施の形態を用いて光を分散させた場合における波長に対する屈折角をプロットした波長に対する分散特性(波長分散)を示すグラフであり、図6(b)は、本発明による分散光学システムの第1の実施の形態を用いて光を分散させた場合における波数に対する屈折角をプロットした波数に対する分散特性(波数分散)を示すグラフである。
【図7】図7(a)は、本発明による分散光学システムの第1の実施の形態の第1の変形例を用いて光を分散させた場合における波長に対する屈折角をプロットした波長に対する分散特性(波長分散)を示すグラフであり、図7(b)は、本発明による分散光学システムの第1の実施の形態の第2の変形例を用いて光を分散させた場合における波長に対する屈折角をプロットした波長に対する分散特性(波長分散)を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明による分散光学システムの第2の実施の形態の概念構成説明図である。
【図9】図9は、本発明による分散光学システムを用いたフェムト秒レーザー用位相整合光学システムの概念構成説明図である。
【図10】図10は、本発明による分散光学システムを用いた光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器の概念構成説明図である。
【図11】図11は、図10に示した光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器に用いた分散光学システムの分散特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0115】
10、40 分散光学システム
12 分散プリズム
14 結像レンズ
16、46 分散拡大レンズ
100、300 フェムト秒レーザー用位相整合光学システム
102、106、114、118 ミラー
104、116 回折格子
108、112 凹面鏡
110 空間光位相変調器
200、400 光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器
202 シード光源
204 分散光学システム
206 ミラー
208 非線形光学結晶
210 カップラ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10