TOP > 国内特許検索 > 焼却灰を利用する光合成生物の培養培地およびその製造方法、並びに光合成生物の培養方法 > 明細書

明細書 :焼却灰を利用する光合成生物の培養培地およびその製造方法、並びに光合成生物の培養方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5164057号 (P5164057)
公開番号 特開2009-011197 (P2009-011197A)
登録日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発行日 平成25年3月13日(2013.3.13)
公開日 平成21年1月22日(2009.1.22)
発明の名称または考案の名称 焼却灰を利用する光合成生物の培養培地およびその製造方法、並びに光合成生物の培養方法
国際特許分類 C12N   1/12        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
FI C12N 1/12 B
C12N 1/00 G
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2007-174297 (P2007-174297)
出願日 平成19年7月2日(2007.7.2)
審査請求日 平成22年6月29日(2010.6.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】横井 春比古
【氏名】廣瀬 遵
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】山本 匡子
参考文献・文献 特開2005-000121(JP,A)
特開平03-172190(JP,A)
特開2007-070217(JP,A)
特開平07-251141(JP,A)
調査した分野 C12N 1/00-5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
Science Direct
Wiley InterScience
CiNii


特許請求の範囲 【請求項1】
焼却灰を、硝酸、硫酸および塩酸を組み合わせた混合酸で溶解して調製される溶液を含む光合成生物の培養培地。
【請求項2】
前記焼却灰が、鶏糞の焼却灰である請求項1記載の光合成生物の培養培地。
【請求項3】
前記溶液に、鉄塩もしくは銅塩またはその両方をさらに添加してなる請求項1又は2に記載の光合成生物の培養培地。
【請求項4】
焼却灰を、硝酸、硫酸および塩酸を組み合わせた混合酸で溶解させ、得られた溶液を用いて光合成生物を培養する、光合成生物の培養方法。
【請求項5】
焼却灰を、硝酸、硫酸および塩酸を組み合わせた混合酸で溶解して溶液を調製し、該溶液を含む培養培地を製造する光合成生物の培養培地の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物である焼却灰を培地の成分として有効利用した、光合成生物を培養するための培地およびその製造方法に関するものである。さらに、光合成生物の培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、焼却灰(燃焼灰)の排出量の増加に伴い、焼却灰の処理と有効活用の技術が求められている。焼却灰は、鶏糞、豚糞および牛糞等を含む畜産系廃棄物の焼却処分、食品廃棄物、生ゴミおよび都市ゴミの焼却処分、廃材や間伐材等の林産廃棄物の焼却処分、下水処理場から排出される余剰汚泥の焼却処分、各種工場から排出される各種廃棄物の焼却処分、並びに火力発電所や燃焼炉等での石炭等の化石燃料の燃焼等によって多量に発生する。
【0003】
焼却灰の処分法として先ず埋立て処理が挙げられるが、最近では埋立て処分場の確保が困難となってきており、焼却灰の減容化を図ると共に、埋立て以外の再資源化法や有効活用法の開発が強く望まれている。
【0004】
これまでに、焼却灰の様々な有効利用法が検討されており、例えばセメント分野では、セメント原材料、セメント混和材およびコンクリート混和材への利用法が開発されている(特許文献1)。土木分野では、地盤改良材、道路路盤材およびアスファルト等への利用法が開発されている(特許文献2)。建築分野では、建材ボードや人工軽量骨材等への利用法が開発されている(特許文献3)。農林水産分野では、肥料や土壌改良剤等への利用法が開発されている(特許文献4)。また、焼却灰を他の無機材料やセメント等の硬化剤と混合して成型体に成型し、水に浮遊可能な藻類の培養媒体として利用する方法も開示されている(特許文献5、特許文献6)。
【0005】
しかしながら、多量に発生する焼却灰の活用を図るために、これ以外の新たな分野での有効利用や有用物質の生産への利用が強く望まれていた。
【0006】
ところで、光合成生物である藻類は、食品分野、飼料分野および環境分野等の広い分野で現在利用されている。例えば、緑藻類のクロレラ(Chlorella)は、食品分野では、乾燥藻体が錠剤や顆粒の形態で、熱水抽出物(エキス)はドリンクの形態で健康食品として市販されている。農業分野では、クロレラエキスの植物成長剤としての利用や、乾燥藻体の肥料としての利用も行われている。水産分野では、ワムシの生産や養殖用餌料の添加剤として利用されている。
【0007】
また、藍藻類のスピルリナ(Spirulina)は、食品分野では、栄養補助食品等の食品素材として、あるいは藻体に含まれる青色色素が食用色素として利用されている。水産分野では鑑賞魚や養殖魚の飼料添加物として、畜産分野では産卵鶏等の飼料添加物として使用されている。
【0008】
さらに最近では、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の対策技術として、クロレラ等の藻類を光照射下で培養して、火力発電所や各種工場から排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素を固定化させて低減し、同時に、培養した藻体の飼料への利用や、あるいは藻体からの有用物質の抽出・生産、あるいは有害化学物質の除去等、環境分野での利用も検討されている(特許文献7、特願2006-250005号を参照)。
【0009】
しかしながら、これらの光合成生物を光の照射下で人工的に培養して細胞並びに有用物質を生産する場合、培養に適した専用の培地が必要となる。培地中には、窒素、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、硫黄および鉄等を含む塩類、マンガン、コバルト、亜鉛およびモリブデン等の微量金属の塩類等、種々の無機栄養塩を含むことが求められるため、培地の製造には多種類の薬品が必要で調製に手間がかかり、また薬品の費用もかかってコスト高になる。
【0010】
石炭灰等を水と接触させて得られる溶液に二酸化炭素を接触させたものを光合成生物の培養に用いる方法が検討されているが(特許文献7)、この方法では、石炭灰等に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属等の元素は酸化物の状態で存在するため単に水と接触させるだけでは溶解量が極めて少なく、栄養成分的に不足するため、光合成生物の効率的な培養は困難であった。
【0011】
そこで、簡便でかつ安価に調製でき、効率よく大量に光合成生物を培養できる経済的な培地の開発と、その培地の光合成生物の生産および有用物質の生産への利用が強く望まれていた。
【0012】

【特許文献1】特開2003-146726号公報
【特許文献2】特開2003-251398号公報
【特許文献3】特開平6-166579号公報
【特許文献4】特開2006-297187号公報
【特許文献5】特開2000-245278号公報
【特許文献6】特開平11-243943号公報
【特許文献7】特開平10-248553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、廃棄物である焼却灰の有効利用を図り、光合成生物の培養に利用可能な培地を簡便かつ安価に提供することを課題とする。また、焼却灰を利用した光合成生物の培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究の結果、焼却灰を酸で溶解して得られる溶液が藻類等の光合成生物を培養するための培地として利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)焼却灰を酸で溶解して調製される溶液を含む光合成生物の培養培地。
(2)前記酸が、硝酸、硫酸および塩酸から選ばれる一以上である上記(1)に記載の光合成生物の培養培地。
(3)前記焼却灰が、鶏糞の焼却灰である上記(1)又は(2)に記載の光合成生物の培養培地。
(4)前記溶液に、鉄塩もしくは銅塩またはその両方をさらに添加してなる上記(1)~(3)のいずれかに記載の光合成生物の培養培地。
(5)焼却灰を酸で溶解させ、得られた溶液を用いて光合成生物を培養する、光合成生物の培養方法。
(6)焼却灰を酸で溶解して溶液を調製し、該溶液を含む培養培地を製造する光合成生物の培養培地の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の培養培地は、藻類等の光合成生物を培養するための培地として利用できる。培地を調製する際に廃棄物である焼却灰を原料に用いるため、簡便かつ安価に光合成生物の培養と有用物質の生産を行うことができる。また焼却灰を培養培地の成分として利用することで、産業廃棄物である焼却灰の有効活用と再利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される焼却灰としては、鶏糞、豚糞および牛糞等の畜産廃棄物、生ゴミ、都市ゴミ、食品廃棄物、廃材や間伐材等の林産廃棄物、下水処理場汚泥、工場から排出される廃棄物等の、各種の有機性廃棄物を燃焼した際に排出される灰や、火力発電所や燃焼炉等で石炭等の固形燃料を燃焼した際に排出される灰等を用いることができる。
【0018】
その中でも、鶏糞の燃焼により排出される灰(鶏糞焼却灰)は特に好ましく用いられる。鶏糞焼却灰は、燃焼条件等によって組成は異なるが、約25~約55重量%のCaO、約7~約25重量%のKO、約9~約15重量%のP、約3~約12重量%のSO、約1~約7重量%のCl、約2~約3重量%のMgO、1未満~約3重量%のNaO、および約1~約4重量%のSiO等を含み、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン等の有用な元素から構成されるため、光合成生物の培養培地の原料として好適である。
【0019】
焼却灰を溶解する酸としては、鉱酸、有機酸、炭酸等の種々の酸を挙げることができ、中でも硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸が好適に用いられる。これらの硝酸、硫酸および鉱酸は、いずれか1種類のみを用いても良く、あるいは2種もしくは3種類全てを組み合わせて用いても良い。硝酸中の硝酸イオンは、藻類等の光合成生物の生育に必要な窒素源として利用できるため、少なくとも硝酸を成分に含むことが好ましく、最も好ましくは硝酸、硫酸および塩酸の3つの酸を組み合わせた混合酸である。混合酸を用いる場合、各成分の混合比は、焼却灰や培養する光合成生物の種類等を考慮して適宜設定することができる。一般的には、体積比で硝酸を100としたとき、同モル濃度の硫酸が5~20、塩酸が10~30程度である。
【0020】
これらの酸に焼却灰を添加して攪拌等により溶解させ、その後遠心分離、ろ過等の手段により未溶解の焼却灰を分離し、得られた溶液のpHを培養する光合成生物の培養に適するpHに調整し、さらに必要に応じ水で希釈する等して培養する光合成生物の培養に適する培地濃度に調節することで、本発明の培養培地が得られる。このような焼却灰の溶液を含む培養培地中には、焼却灰に存在するナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン等の各種元素が塩の状態で溶解しており、藻類等の光合成生物が光合成独立栄養条件下で生育する際の栄養塩として利用することができる。
【0021】
なお、本発明の培養培地は、上記のように溶液の状態で用いることができるが、その他の方法として溶液を寒天等とともに溶解・固化させ、固体培地もしくは半流動培地としても良い。
【0022】
さらに本発明の培養培地には、必要に応じて、各種の塩を添加することができる。これにより光合成生物に必要な栄養分を補うことができる。具体的な塩の種類としては、FeSO・7HO等の鉄塩、CuSO・5HO等の銅塩、および鉄塩と銅塩の組み合わせ等を挙げることができる。また、硝酸塩は、特に焼却灰を溶解させる酸がHSOとHClのみで構成される混合酸である場合、窒素源として利用できるため好ましく添加される。
【0023】
塩の添加量は、焼却灰の種類等によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば鶏糞焼却灰を原料とする培地については、水で希釈する等して適切なpHに調製した後の培地に対し、鉄塩がFe換算で約0.1~約2mg/L、銅塩がCu換算で約0.01~約0.03mg/Lとすることが好ましく、硝酸塩を加える場合は約200~約2500mg/L程度の添加量とすることが好ましい。
【0024】
以上のような焼却灰から調製された溶液を含む培地で培養できる光合成生物としては、例えば、緑藻類であるクロレラ属、藍藻類であるスピルリナ属等が挙げられるが、これらの藻類に限られたものではなく、その他の藻類、植物プランクトン、海藻、海草、光合成細菌、野菜等の各種植物など、光合成独立栄養的に生育するものであればどのような光合成生物も培養可能である。なお、光合成生物は、本発明の培養培地に直接播種しても良く、あるいは藻類用培地であるMBM培地等の通常の培地で予め光合成生物の培養を行って前培養液を得、その前培養液を本発明の培養培地に加えても良い。また、焼却灰の溶液自体を培養培地として利用する場合のみならず、例えば焼却灰の溶液を野菜等の養液栽培(水耕栽培等)における培養液(液体肥料)として用いることもできる。
【0025】
さらに、藻類等の光合成生物が光照射下で光合成独立栄養的に生育する際には炭素源が必要であるが、この炭素源を確保するため、例えば培養培地を設置した容器を振盪することで大気中の二酸化炭素を培地中に溶解させ、これを炭素源として利用することができる。また、焼却灰を溶解させた溶液への炭酸水素ナトリウムの添加、あるいは空気や二酸化炭素を含有するガスの培養容器内への通気により、培地中に溶解する炭酸イオンの濃度が増大し、それによって光合成生物の生育速度と増殖量を向上させることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明がこれら実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0027】
以下の各実施例および参考例では、光合成生物の緑藻類であるクロレラ属の株として、国立大学法人東京大学のIAMカルチャーコレクションから入手したクロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)IAM C-27、クロレラソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)IAM C-212、クロレラケスレリ(Chlorella kessleri)IAM C-531、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)IAM C-536、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)IAM C-547およびクロレラ(Chlorella sp.)IAM C-628、研究室で分離・保存しているクロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)MKJ-34(特願2006-250005号)およびクロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)C-1(特願2006-250005号)を使用した。
【0028】
また、藍藻類であるスピルリナ属の株として、独立行政法人国立環境研究所から入手したスピルリナプラテンシス(Spirulina platensis)NIES-39、スピルリナプラテンシス(Spirulina platensis)NIES-45、スピルリナプラテンシス(Spirulina platensis)NIES-46およびスピルリナプラテンシス(Spirulina platensis)NIES-597を用いた。
【0029】
クロレラ属の前培養には、表1、表2および表3で示されるMBM培地を用い、蛍光灯での光照射下(5500Lux、12時間暗-12時間明)、30℃の条件下で6日間の静置培養を行って前培養液を得た。
【0030】
【表1】
JP0005164057B2_000002t.gif

【0031】
【表2】
JP0005164057B2_000003t.gif

【0032】
【表3】
JP0005164057B2_000004t.gif

【0033】
スピルリナ属の前培養には、表4および表5に示すSOT培地またはMA培地を用い、蛍光灯での光照射下(5500Lux、12時間暗-12時間明)、30℃の条件下で6日間の静置培養を行って前培養液を得た。
【0034】
【表4】
JP0005164057B2_000005t.gif

【0035】
【表5】
JP0005164057B2_000006t.gif

【0036】
(実施例1、参考例1)
焼却灰を用いた培養培地を以下のようにして調製した。0.1mol/LのHNO、0.1mol/LのHSOおよび0.1mol/LのHClを体積比で25:3:5の比率で混ぜた混合酸50mlをビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら鶏糞焼却灰を少量ずつ添加し、溶液のpHが5.4になるまで鶏糞焼却灰を溶解させた。酸による溶解処理により、鶏糞焼却灰は元の重量の約60%相当分が溶解し、焼却灰の減容化を行うことができた。焼却灰を溶解した溶液を遠心分離(10,000rpm、10分間)して未溶解の焼却灰を取り除き、得られた上澄み液を蒸留水で30倍に希釈したものを培養培地として用いた。
【0037】
次に、上記のように鶏糞焼却灰を用いて調製した培養培地をL字型試験管に10mL添加し、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した。滅菌後、上記各種のクロレラ属の藻体の前培養液0.3mLを接種し、培養温度30℃、蛍光灯での光照射(5500Lux、12時間暗-12時間明)の条件下で7日間の振盪培養を行った。培養開始時と培養終了時の培養液について、紫外可視分光光度計(島津製作所UVmini-1240)を用いて波長660nmでの吸光度(OD660)を測定し、その吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。
【0038】
また、クロレラ属の培養に使用されるMBM培地でも同様の方法で培養して生育度を求め(参考例1)、本発明による培養培地での生育度と比較した。この測定結果を図1に示す。
【0039】
図1に示すように、鶏糞焼却灰を用いた本発明の培地で培養すると、クロレラ属の種類によって生育度は異なるものの、MBM培地で培養したときとほぼ同程度の生育が得られ、したがって本発明による培養培地がクロレラ属の培地として利用できることが分かった。
【0040】
(実施例2、参考例2)
上記実施例1における鶏糞焼却灰を用いて調製した焼却灰培地をL字型試験管に10mL添加し、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した。滅菌後、各種のスピルリナ属の藻体の前培養液0.3mLを接種し、培養温度30℃、蛍光灯での光照射(5500Lux、12時間暗-12時間明)の条件下で7日間の振盪培養を行った。培養開始時と培養終了時の培養液の吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。また、スピルリナ属の培養に使用されるSOT培地またはMA培地でも同様の方法で培養して生育度を求め(参考例2および3)、本発明による培養培地での生育度と比較した。この測定結果を図2に示す。
【0041】
図2に示すように、鶏糞焼却灰を用いた培地で培養すると、スピルリナ属の株の違いによって生育度は異なるものの、SOT培地またはMA培地で培養したときとほぼ同程度の生育が得られ、したがって本発明による培養培地がスピルリナ属の培地として利用できることが分かった。
【0042】
(実施例3~6)
培養培地を調製する際に、混合酸の組成を変えて焼却灰を溶解させ、得られた培養培地での生育度を検討した。具体的には、0.1mol/LのHNO、0.1mol/LのHSOおよび0.1mol/LのHClを、25:3:5(実施例3)、25:3:0(実施例4)、25:0:5(実施例5)、0:3:5(実施例6)、の体積比で混ぜた4種類の混合酸を用いた。4種類の混合酸50mLをそれぞれビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら鶏糞焼却灰を少量ずつ添加し、溶液のpHが5.4になるまで鶏糞焼却灰を溶解させた。鶏糞焼却灰が溶解した溶液を遠心分離(10,000rpm、10分間)して未溶解の焼却灰を取り除き、得られた4種類の上澄み液を蒸留水で30倍に希釈したものを培地として用いた。
【0043】
4種類の培養培地をL字型試験管に10mL添加し、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した。滅菌後、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)MKJ-34およびクロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)C-1の前培養液0.3mlを接種し、培養温度30℃、蛍光灯での光照射(5500Lux、12時間暗-12時間明)の条件下で7日間の振盪培養を行った。培養開始時と培養終了時の培養液の吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。この測定結果を表6に示す。
【0044】
【表6】
JP0005164057B2_000007t.gif

【0045】
表6に示すように、HNO、HSOおよびHClのうち2種を含む酸で調製した実施例3~6の培養培地は、いずれもクロレラ属の培地として利用可能であることが明らかとなった。その中でも、HNO、HSOおよびHClの3種類の酸を全て含む混合酸で調製した培養培地において、両方のクロレラとも生育度が最も高いことが分かった。また、HSOとHClだけで構成される混合酸で調製した培養培地では生育度が若干低かった。これは、HNOを含まないために培地中の窒素源が少ないことが原因と考えられる。従って、培養培地を調製する際には、焼却灰を溶解する混合酸としてHNO、HSOおよびHClの3者を含有する方が好ましく、特にHNOを含有させることが好ましいことが分かった。
【0046】
(実施例7~14)
培養培地の調製において、0.1mol/LのHNO、0.1mol/LのHSOおよび0.1mol/LのHClを体積比で25:3:5の比率で混ぜた混合酸を用いて、鶏糞焼却灰(実施例7)または豚糞と木炭の混合物を燃焼して得られる豚糞・木炭焼却灰(実施例8)を溶解して得られた溶液を30倍希釈したものを培養培地として用いた。これらの培養培地をL字型試験管に10mL添加し、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した後、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)MKJ-34の前培養液0.3mlを接種し、培養温度30℃、蛍光灯での光照射(5500Lux、12時間暗-12時間明)の条件下で7日間の振盪培養を行った。培養開始時と培養終了時の培養液の吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。
【0047】
また、上記のように鶏糞焼却灰から調製した培養培地に対し、さらにFeSO・7HOを2mg/Lの濃度となるように添加した培地(実施例9)、CuSO・5HOを0.079mg/Lの濃度となるように添加した培地(実施例10)、並びにFeSO・7HOおよびCuSO・5HOを各々2mg/Lおよび0.079mg/Lの濃度となるように添加した培地(実施例11)を調製し、同様の方法で振盪培養を行い、生育度を求めた。
【0048】
さらに、豚糞・木炭焼却灰から調製した培養培地に対しても、FeSO・7HOを2mg/Lの濃度となるように添加した培地(実施例12)、CuSO・5HOを0.079mg/Lの濃度となるように添加した培地(実施例13)、並びにFeSO・7HOおよびCuSO・5HOを各々2mg/Lおよび0.079mg/Lの濃度となるように添加した培地(実施例14)を調製し、振盪培養を行って生育度を求めた。
【0049】
以上の測定結果を図3に示す。
図3に示すように、豚糞・木炭焼却灰から調製した培養培地でもクロレラのような光合成生物を培養するための培地として利用できることが分かった。また、鶏糞焼却灰および豚糞・木炭焼却灰を用いて調製した培養培地では、微量の鉄塩と銅塩を添加すると、無添加の場合に比べて生育度が高くなる傾向を示した。
【0050】
(実施例15)
0.1mol/LのHNO、0.1mol/LのHSOおよび0.1mol/LのHClを体積比が25:3:5になるように混ぜた混合酸を用いて、鶏糞焼却灰を溶解して得られた30倍希釈の培養培地280mLを300mLの三角フラスコに添加し、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した。滅菌後、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)MKJ-34の前培養液20mLを添加し、CO濃度が5%となるように空気にCOガスを混ぜた混合ガス(CO5%,空気95%)を300mL/minの流量で通気しながら、培養温度30℃、蛍光灯での光照射(5500Lux、12時間暗-12時間明)の条件下で7日間通気培養を行い、培養開始時と培養終了時の培養液の吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。
【0051】
(実施例16)
また、実施例15における培養培地に対し、FeSO・7HOおよびCuSO・5HOが各々2mg/Lおよび0.079mg/Lの濃度となるように添加した。この鉄塩と銅塩を添加した培養培地280mLを300mLの三角フラスコに入れ、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した後、実施例15と同様の方法でクロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)MKJ-34の通気培養を行い、培養開始時と培養終了時の培養液の吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。
【0052】
(参考例4)
さらに、実施例15および16の培養培地での通気培養と比較するために、MBM培地280mLを300mLの三角フラスコに入れ、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した後、実施例15と同様の方法でクロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)MKJ-34の通気培養を行い、培養開始時と培養終了時の培養液の吸光度(OD660)の差から生育度を求めた。
実施例15および16、並びに参考例4の測定結果を、表7に示す。
【0053】
【表7】
JP0005164057B2_000008t.gif

【0054】
表7に示すように、図1での振盪培養と同様に、焼却灰から調製した培地での通気培養でもクロレラの培養が可能であることが分かった。ここで、MBM培地での通気培養の結果と比べると、実施例15における通気培養の生育度が若干低いが、培地に微量のFeSO・7HOとCuSO・5HOを添加した実施例16における通気培養ではMBM培地のものよりも高い生育度が得られることが分かった。従って、本発明による培地は通気培養下での光合成生物の培養にも適しており、原料となる焼却灰の種類によっては、適当な塩類を微量補充することでさらに生育度を向上することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明してきたように、本発明によれば、焼却灰を酸によって溶解して得られる溶液は藻類等の光合成生物の生育に必要な栄養分を含有していることから培地として使用することができる。また、本発明の培養培地は、光照射下での振盪培養や通気培養等により藻類等の光合成生物を培養できることから、クロレラやスピルリナをはじめとする各種の光合成生物の培養と生物体の生産、並びにこれらの光合成生物が作る有用物質の生産において有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1および参考例1における各種のクロレラ属の生育度の測定結果を示すグラフである。
【図2】実施例2、参考例2および3における各種のスピルリナ属の生育度の測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例7~14におけるクロレラの生育度の測定結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2