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明細書 :3次元形状の計測装置およびその計測データによる義肢のソケット形状設計装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4304341号 (P4304341)
公開番号 特開2006-255199 (P2006-255199A)
登録日 平成21年5月15日(2009.5.15)
発行日 平成21年7月29日(2009.7.29)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
発明の名称または考案の名称 3次元形状の計測装置およびその計測データによる義肢のソケット形状設計装置
国際特許分類 A61F   2/54        (2006.01)
A61B   5/107       (2006.01)
A61F   2/60        (2006.01)
G06F  17/50        (2006.01)
FI A61F 2/54
A61B 5/10 300A
A61F 2/60
G06F 17/50 612J
G06F 17/50 624A
G06F 17/50 680Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2005-077834 (P2005-077834)
出願日 平成17年3月17日(2005.3.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年3月1日 日本機械学会、北陸信越学生会発行の「第34回 学生員卒業研究発表講演会 講演論文集」に発表
審査請求日 平成18年12月28日(2006.12.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】尾田 雅文
【氏名】花房 昭彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100119312、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 栄松
【識別番号】100119334、【弁理士】、【氏名又は名称】外山 邦昭
【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
審査官 【審査官】内山 隆史
参考文献・文献 特表2004-528858(JP,A)
特公平06-002137(JP,B2)
特開平11-311618(JP,A)
国際公開第98/011417(WO,A1)
調査した分野 A61F 2/00 - 2/80
A61B 5/00 - 5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
超音波の送出手段と、前記超音波の反射波の検出手段と、前記超音波の送出手段と前記反射波の検出手段の位置を決定する手段と、複数の材質から構成された検体の異なる材質間の境界を求めるために、検出されたデータを解析する手段と、解析された結果から有限要素モデルを作成する手段とを備え、前記検出されたデータを解析する手段は、超音波の反射波のデータを時間と周波数とで2次元解析して水と皮膚、皮膚と脂肪、脂肪と筋肉、筋肉と骨の境界の位置座標を求め、前記有限要素モデルを作成する手段は、前記検出されたデータを解析する手段により求めた位置座標と予め用意した当該箇所の標準ヒト型有限要素モデルを使用して皮膚の有限要素モデル、脂肪の有限要素モデル、筋肉の有限要素モデル、骨の有限要素モデルを作成するように構成されたことを特徴とする3次元形状計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元形状計測装置で計測された有限要素モデルのデータを入力する手段と、生活環境を考慮した境界条件を入力する手段と、前記有限要素モデルのデータと前記境界条件とで有限要素応力解析を行い、ソケット形状を決定する手段とを有することを特徴とする義肢のソケット形状設計装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状データ計測装置およびその計測データに基づく義肢のソケットの形状を設計する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、義肢用のソケットは主に義肢装具士の手作業により製作されてきたが、良い適合性を得るためには熟練した義肢装具士の技能が必要であった。しかしながら、ソケット形状を決定するには義肢装具士の経験や勘に頼ることが多く、例えば、義足使用時において断端部周辺に作用する荷重を考慮せずに、外部形状の情報だけに基づいて形状設計を行ったソケットでは、義足固定のための圧迫や、歩行立脚期など体重負荷時によって、ソケットおよび断端形状が変形することから、その適合状態に問題が生じる可能性があった。
【0003】
義足の良否は、ソケット形状ならびにアライメントの適合性の両者により決定される。例えば義足ソケットの適合性が良好でない場合に、切断端で瘡を生じ易く、車椅子の併用を強いられるケースも存在する.このため、義足ソケットの最適形状を得ることは、義足使用者の快適性向上の点で極めて重要な問題である。
【0004】
このことから、経験や勘に頼ることなく、定量的かつ一定の製作技術レベルで対応することが求められている。近年レーザ測長技術などを利用した非接触な下肢表面形状計測手法を利用することによって、義足使用者の断端形状を数値化し、CAD/CAM技術を駆使した新しい義足ソケット製作手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
義足ソケットの最適形状を得るには、人体の外部形状だけでなく生体組織である骨、筋肉、脂肪形状等内部組織形状も併せて計測し、三次元モデルを作成する必要がある。内部組織を併せて身体形状を計測する方法として、X線CT、MRI、超音波が一般には利用されている。この中でも超音波は、X線被曝のような人体への負担がなく、MRIに比べ大型設備を必要としないなどの長所があり、CADでの義足ソケット設計のための超音波計測システムも研究されている(例えば、非特許文献1)。これらのシステムにおいては、超音波エコーの振幅に基づく濃淡画像から組織境界を抽出する方法が提案されているものの、X線CTやMRIと比較して、超音波の信号は組織内の屈折や散乱の影響を受けやすく、組織の境界を的確に判定することが困難であった。

【特許文献1】特開2003-299679号公報
【非特許文献1】IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering No10(1),P11-21,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、歩行等の生活状況を考慮し、人体の内部組織に作用する応力や変形を予測可能となれば、良好な適合状態を保証する義肢ソケット形状を決定する上で極めて有効である。また、ソケット作製前に、適合状態での問題の有無をコンピュータ上で評価することは、適切な形状のソケットを作製するための極めて重要な指標を提供でき、それには、人体の外部形状だけでなく骨、筋肉、脂肪形状等内部組織形状も併せて計測し、3次元モデルを作成する必要がある。さらに、各組織の力学的材料特性を適用して、義肢装着時の軟部組織に作用する応力や変形を有限要素法などの手法を適用して解析することが有用である。
【0007】
本発明の目的は、超音波により、人体の外部形状だけでなく生体組織としての骨、筋肉、脂肪形状等内部組織形状も併せて計測し、さらに、義肢使用時において断端部周辺に作用する荷重を考慮して、義肢使用者が快適に使用できるようなソケットを提供するための3次元形状測定装置、義肢用ソケット形状設計装置などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、超音波の送出手段と、前記超音波の反射波の検出手段と、前記超音波の送出手段と前記反射波の検出手段の位置を決定する手段と、複数の材質から構成された検体の異なる材質間の境界を求めるために、検出されたデータを解析する手段と、解析された結果から有限要素モデルを作成する手段とを備え、前記検出されたデータを解析する手段は、超音波の反射波のデータを時間と周波数とで2次元解析して水と皮膚、皮膚と脂肪、脂肪と筋肉、筋肉と骨の境界の位置座標を求め、前記有限要素モデルを作成する手段は、前記検出されたデータを解析する手段により求めた位置座標と予め用意した当該箇所の標準ヒト型有限要素モデルを使用して皮膚の有限要素モデル、脂肪の有限要素モデル、筋肉の有限要素モデル、骨の有限要素モデルを作成するように構成された3次元形状計測装置である。
【0009】
本発明による装置では、超音波の反射波を検出して、その波形データを解析することにより、人体の外部形状だけでなく、異なる材質から構成されている骨、筋肉、脂肪形状等内部組織形状も併せて計測することができる。このデータを使って、それぞれの内部組織形状の3次元有限要素モデルを作成して応力解析ができるので、ソケットの装着部位によく適合した快適なソケットを作ることができる。
【0010】
また、超音波の反射波のデータを、周波数毎に到達時間を計測することにより、骨、筋肉、脂肪などの境界を精度よく検出することができる。これにより、内部組織形状の精密な3次元有限要素モデルを作ることができ、より正確な応力解析ができるので、ソケットの装着部位によく適合した快適なソケットを作ることができる。
【0011】
また、断端部周辺の骨表面形状、筋肉表面形状、脂肪表面形状などを分離してそれぞれ有限要素モデルを作成するので、それぞれの力学的特性を反映して、より正確な応力解析ができ、ソケットの装着部位によく適合した快適なソケットを作ることができる。
【0012】
請求項の発明は、上記の3次元形状計測装置で作成された有限要素モデルのデータを入力する手段と、生活環境を考慮した境界条件を入力する手段と、前記有限要素モデルのデータと前記境界条件とで有限要素応力解析を行い、ソケット形状を決定する手段とを有する義肢のソケット形状設計装置である。
【0013】
3次元形状計測装置で作成された有限要素モデルのデータと義肢の使用者の生活環境を考慮した境界条件、例えば、通常の生活パターンでの四肢の動きや体の動かし方から、ソケットの装着部位にかかる負荷などのデータを入力して、有限要素応力解析を行うことにより、ソケット形状を最適化して、ソケットの装着部位によく適合した快適なソケットを作ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波を利用した簡単な3次元形状計測装置で、断端周辺の外部形状だけでなく、異なる材質から構成されている骨、筋肉、脂肪形状等内部組織形状も併せて計測することができる。このデータを使って正確な有限要素モデルが作成でき、義肢の使用者の生活環境に応じた形状修正を行ったソケットの設計ができる。さらに、その設計データを数値制御の工作機械に適合するデータに変換して出力することにより、設計通りのソケットを再現性よく製造でき、ソケットの装着部位によく適合した快適なソケットを作ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、超音波を利用した3次元形状計測装置の信号検出部分を説明するための図である。検体3は水2が入った水タンク1に浸漬され、超音波を送出し、その反射波を検出するプローブ4が水タンク1に密着しながらその周囲を走査するようになっている。
【0016】
プローブ4は、基準となる点から伸びた3本のアームである第1アーム5、第2アーム6、第3アーム7に結合され、結合点は自在に回転するように構成されている。このような構成により、プローブ4は水タンク1に密着しながらその周囲を走査することができる。ただ、この構成は一実施例であり、アームの数はこれに限られることはない。また、その全体構成もこれに限られず、プローブ4が水タンク1に密着しながらその周囲を走査することができる構成であればよい。例えば、プローブ4を動かす代わりに、多数のプローブを水タンク1の周囲に設置し、その動作を切換えてゆくような構成でもよい。
【0017】
プローブ4から送出された超音波は水中を経由して検体で反射し、その反射波がプローブに到達して検出される。検出したデータから、超音波が往復に要した時間を求めることにより、プローブ4から検体の反射点までの距離を求めることができる。さらに、プローブの位置が前記3本のアームの長さ(r~r)とそれぞれが成す角度(θ~θ)から求まり、反射点の基準となる点から見た位置座標が求まる。ここで、プローブ4を水タンク1に密着しながらその周囲および縦軸方向に走査してデータを収集すれば、検体3の3次元形状を計測することができる。
【0018】
本発明は、生体を検体としたとき、単に検体の表面形状だけでなく、生体を構成する組織である骨、脂肪、筋肉などの形状を検出するためのデータ処理に関する。
【0019】
図2に、パルス状の超音波を送出したとき、その反射波をプローブ4で検出した超音波の波形を示す。それぞれ水と皮膚、皮膚と脂肪、脂肪と筋肉、筋肉と骨の境界での反射による超音波の振幅が大きくなっている。従来は、この波形の振幅が極大となる時点までの時間から反射点の位置を求めていたが、誤差が大きかった。本発明によるデータ処理方法は、検出した反射波のデータをウエーブレット変換し、その値を検出時間軸と周波数軸の2次元空間にプロットし、その極大となる点を求める方法である。ウエーブレット変換値は反射波のエネルギー分布に対応しているので、最も正確な反射点を計測することができる。
【0020】
本発明による3次元形状計測装置は、図示していないが、このようなデータ処理を行う手段を含んでいる。このような処理は専用のハードウエアで行ってもよいが、コンピュータのソフトウエアで処理することもできる。
【0021】
図3は、図2における水と皮膚、皮膚と脂肪との境界での反射波を拡大して示したものである。これにウエーブレット変換を行い、その値を検出時間軸と周波数軸の2次元空間にプロットしたものを図4に示す。図4から、極大値になる時間を求めると、水と皮膚との境界での反射波は9.6μsで、皮膚と脂肪との境界での反射波は10.3μsであることがわかる。
【0022】
図5は、皮膚と脂肪との境界での反射波を拡大して示したものである。これにウエーブレット変換を行い、その値を検出時間軸と周波数軸の2次元空間にプロットしたものを図6に示す。図6から、極大値になる時間を求めると、14.6μsと15.7μsの2つの極大値が認められるが、ウエーブレット変換値が大きい方の値である15.7μsを採用する。
【0023】
このようにして得られた各点の位置座標を連結することにより、有限要素の各要素を構成できる。実用的には、得られた3次元位置座標と、予め用意した当該箇所の標準ヒト型有限要素モデル、具体的には、ビジブルヒューマン画像のデータを使用して、図7に示すような外形である皮膚の有限要素モデル10、脂肪の有限要素モデル11、筋肉の有限要素モデル12、骨の有限要素モデル13などが作成される。その外形からソケットの有限要素モデル14を生成できる。
【0024】
図8に、義肢の使用者が快適に使用できるようなソケットを製造するまでのプロセスを示す。ステップS1では、上述したような装置と方法で、超音波を使って、使用者の断端の形状を測定する。ステップS2では、測定したデータを時間-周波数の2次元解析により、それぞれ水と皮膚、皮膚と脂肪、脂肪と筋肉、筋肉と骨の境界の位置座標を求める。ステップS3では、求めた位置座標を連結して、有限要素モデルを構築する。
【0025】
ステップS4では、義肢の使用者の生活環境による境界条件で有限要素モデルを修正する。例えば、生活環境が坂や階段を頻繁に通る場所なのか、立っている時間が長いのか、などの条件で、使用者の断端の形状が変化する。これらのことを考慮して有限要素モデルを修正する。例えば、図9に示すように、使用者の断端の形状に合わせたソケット形状21から生活環境を考慮して、例えば、ソケット形状20のような形状に修正を行う。
【0026】
骨、筋肉、脂肪などそれぞれの有限要素モデルが構築され、ソケットの有限要素モデルも構築されているので、それぞれの部分の物理的特性を考慮して、ステップS5では応力解析を行う。ステップS6では、応力解析の結果を評価し、応力が集中するようなところがあれば、ステップS7で、修正を行い、再度応力解析を行う。ステップS6で応力解析の結果を評価し、応力が一様になるようなソケットの形状修正が完了すれば、ソケットの形状の設計が完了し、ステップS8で、そのデータを変換して数値制御工作機械用のデータとして作成し、ステップS9で数値制御工作機械に入力して機械を作動させればソケットの製作ができる。
【0027】
本発明による3次元形状計測装置は、この実施例に示した生体の3次元形状を計測するのには限られず、異なった材質からなるラミネート構造の物体の3次元形状を計測し、それぞれ異なった材質の境界点を検出でき、それらの形状を有限要素モデルとして構築することができる。
【0028】
本発明は、以上のような実施例に限られず、その趣旨と精神に基づき、当業者が容易に考えることができるような、変更や置き換えも本発明の請求範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】超音波を利用した3次元形状計測装置の信号検出部分を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施例において、3次元形状計測装置で検出した超音波信号の波形を示す図である。
【図3】図2で示した超音波信号の波形の一部分の拡大図である。
【図4】図3で示した信号の波形を本発明による3次元形状計測装置でデータ処理して、ウエーブレット変換値を時間—周波数の2次元空間にプロットした図である。
【図5】図2で示した超音波信号の波形の他の一部分の拡大図である。
【図6】図5で示した信号の波形を本発明による3次元形状計測装置でデータ処理して、ウエーブレット変換値を時間—周波数の2次元空間にプロットした図である。
【図7】断端およびソケットの有限要素モデルを説明する分解図である。
【図8】本発明による装置におけるデータ処理プロセスを説明するフローチャートである。
【図9】設計されたソケットの修正を説明する図である。
【符号の説明】
【0030】
1 水タンク
2 水
3 検体
4 プローブ
5,6,7 アーム
10 皮膚の有限要素モデル
11 脂肪の有限要素モデル
12 筋肉の有限要素モデル
13 骨の有限要素モデル
14 ソケットの有限要素モデル
20 修正後のソケットの形状
21 修正前のソケットの形状
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図8】
4
【図4】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図9】
8