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明細書 :磁化状態制御装置および磁気情報記録装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5152712号 (P5152712)
公開番号 特開2009-026354 (P2009-026354A)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
公開日 平成21年2月5日(2009.2.5)
発明の名称または考案の名称 磁化状態制御装置および磁気情報記録装置
国際特許分類 G11C  11/15        (2006.01)
H01F  10/32        (2006.01)
H01L  21/8246      (2006.01)
H01L  27/105       (2006.01)
H01L  29/82        (2006.01)
FI G11C 11/15 100
G11C 11/15 140
H01F 10/32
H01L 27/10 447
H01L 29/82
請求項の数または発明の数 13
全頁数 19
出願番号 特願2007-186095 (P2007-186095)
出願日 平成19年7月17日(2007.7.17)
審査請求日 平成22年3月5日(2010.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】戸川 欣彦
【氏名】原田 研
【氏名】松田 強
【氏名】大谷 義近
【氏名】木村 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100090516、【弁理士】、【氏名又は名称】松倉 秀実
【識別番号】100106622、【弁理士】、【氏名又は名称】和久田 純一
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
審査官 【審査官】後藤 彰
参考文献・文献 国際公開第2006/115275(WO,A1)
特開2002-334972(JP,A)
特開2006-210711(JP,A)
特開2007-123637(JP,A)
特開2005-079508(JP,A)
特開2001-250206(JP,A)
調査した分野 G11C 11/15
H01F 10/32
H01L 21/8246
H01L 27/105
H01L 29/82
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の磁性体の磁化状態を制御する磁化状態制御装置であって、
前記複数の磁性体全体に対して、前記磁性体の磁化方向と略平行または略反平行な向きに磁場を印加する磁場印加手段と、
前記複数の磁性体の各々に対して、パルス電流を印加する電流印加手段と、を有し、
前記磁場印加手段は、複数の磁性体全体に対して磁場を印加する第1の磁場印加手段と、それぞれが対応する一部の磁性体に対して磁場を印加する複数の第2の磁場印加手段と、から構成され、
前記磁性体に磁場を印加しつつパルス電流を印加することによって、前記磁性体の磁化状態を制御する
ことを特徴とする磁化状態制御装置。
【請求項2】
前記磁性体は、括れ部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁化状態制御装置。
【請求項3】
前記磁性体は、屈曲部を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁化状態制御装置。
【請求項4】
前記磁場印加手段が印加する磁場の向きと前記磁性体の磁化方向とのなす角度は、30度以内である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁化状態制御装置。
【請求項5】
前記磁場印加手段が印加する磁場の大きさは、装置内に恒常的に存在する磁場よりも大きく、前記磁性体の磁化状態を磁場だけで変化させるために必要な磁場よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁化状態制御装置。
【請求項6】
前記磁場印加手段は、前記複数の磁性体の外部から磁場を印加することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の磁化状態制御装置。
【請求項7】
前記複数の磁性体は平面内に格子状に配列されており、
前記第1の磁場印加手段は、前記複数の磁性体が格子状に配列された平面全体に均一な
磁場を印加することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の磁化状態制御装置。
【請求項8】
複数の磁性体の磁化状態を制御する磁化状態制御装置であって、
前記複数の磁性体全体に対して、磁場を印加する磁場印加手段と、
前記複数の磁性体の各々に対して、パルス電流を印加する電流印加手段と、を有し、
前記磁場印加手段は、複数の磁性体全体に対して磁場を印加する第1の磁場印加手段と、それぞれが対応する一部の磁性体に対して磁場を印加する複数の第2の磁場印加手段と、から構成され、
前記磁性体に磁場を印加しつつパルス電流を印加することによって、前記磁性体の磁化状態を制御する
ことを特徴とする磁化状態制御装置。
【請求項9】
複数の磁気情報記録素子と、
前記複数の磁気情報記録素子全体に対して、前記磁気情報記録素子の磁化方向と略平行または略反平行な向きに磁場を印加する磁場印加手段と、前記複数の磁気情報記録素子の各々に対してパルス電流を印加する電流印加手段とから構成され、前記磁気情報記録素子に磁場を印加しつつパルス電流を印加することで磁気情報を書き込む情報書き込み手段と、
前記磁気情報記録素子に記録された情報を読み込む情報読み込み手段と、
を備え
前記磁場印加手段は、複数の磁気情報記録素子全体に対して磁場を印加する第1の磁場印加手段と、それぞれが対応する一部の磁気情報記録素子に対して磁場を印加する複数の第2の磁場印加手段と、から構成される、
磁気情報記録装置。
【請求項10】
前記磁場印加手段が印加する磁場の向きと前記磁性体の磁化方向とのなす角度は、30度以内である、
ことを特徴とする請求項に記載の磁気情報記録装置。
【請求項11】
前記磁場印加手段は、複数の磁気情報記録素子の外部から磁場を印加するものであることを特徴とする請求項9または10に記載の磁気情報記録装置。
【請求項12】
前記複数の情報記録素子は平面内に格子状に配列されており、
前記第1の磁場印加手段は、前記複数の情報記録素子が格子状に配列された平面全体に均一な磁場を印加することを特徴とする請求項9~11のいずれかに記載の磁気情報記録装置。
【請求項13】
複数の磁気情報記録素子と、
前記複数の磁気情報記録素子全体に対して磁場を印加する磁場印加手段と、前記複数の磁気情報記録素子の各々に対してパルス電流を印加する電流印加手段とから構成され、前記磁気情報記録素子に磁場を印加しつつパルス電流を印加することで磁気情報を書き込む情報書き込み手段と、
前記磁気情報記録素子に記録された情報を読み込む情報読み込み手段と、
を備え、
前記磁場印加手段は、複数の磁気情報記録素子全体に対して磁場を印加する第1の磁場印加手段と、それぞれが対応する一部の磁気情報記録素子に対して磁場を印加する複数の第2の磁場印加手段と、から構成される、
磁気情報記録装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動によって磁性体の磁化状態を制御する磁化状態制御装置および磁気情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな原理に基づく種々の情報記録素子の開発が進展している。とりわけ、エレクトロニクスの新たな展開として注目される電子のスピン特性を利用した様々な素子とそれらを用いる一連の分野については、スピントロニクスという名称が与えられ、新分野として独立するに至っている。中でもスピン偏極した電流を磁性体素子に注入することにより素子中の磁化を反転させる研究は、応用の多様性から大きな注目を集めている。
【0003】
このようなスピン偏極した電流によって磁化を反転させる技術は、以下の理由により注目されている。すなわち、現在の磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)のように外部磁場によって磁化反転を行う方法では、素子
の微細化を行うと磁化反転に要する磁場が大きくなる。また、磁場は遠距離まで到達するという特性がある。したがって、現在のMRAMの大容量化を進めていくにつれ、外部磁場による反転磁化領域の生成は、早晩限界に達すると考えられているからである。
【0004】
このような理由から、スピン偏極した電流の注入による反転磁化の生成は、上記限界を破る可能性のある方法として精力的な研究が成されている。とりわけ、1990年代の終わりから、3層構造膜において低温での磁化反転が実験的に確認され(非特許文献1)、次いで2000年以降になると巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto Resistance)膜による室温での反転磁化生成の確認(非特許文献2)に至り、実用を目指した研究がヨーロッパ、アメリカを中心に精力的に進められている。しかし、高集積化が進むに従って素子構造の複雑化など問題も現われ始めている。
【0005】
単一磁化構造/反転磁化構造を用いた、情報の記録方法と読み出し方法について、以下
に、MRAMを例に取って説明する。
【0006】
<情報の書き込み>
MRAMを構成するTMR(Tunneling Magneto-Resistance)素子は、原子数個程度の厚さの絶縁体薄膜を2層の強磁性体薄膜で挟んだ3層構造を有する。そして、一方の強磁性体薄膜内の電子スピンの向きは固定され、他方の強磁性体薄膜内の電子スピンの向きは外部から印加する磁場によって変えられるようになっている。例えば、両方の電子スピンの向きが平行の場合を「0」に対応させ、一方、電子スピンの向きが互いに反平行の場合を「1」に対応させる。したがって、固定されていない強磁性体薄膜内の電子スピンの向き(磁化状態)を制御することで、情報の記録が行える。
【0007】
<情報の読み出し>
MRAMにおける情報の読み出しは、電子スピンの向きの違いによってTMR素子の電気抵抗が変化する特性を利用している。TMR素子において、両方の強磁性体薄膜内の電子スピンの向きが平行の場合には電気抵抗は小さくなり、逆に両方の電子スピンの向きが反平行の場合には電気抵抗が大きくなる。従って、この電気抵抗値の変化を検出することでTMR素子のスピン状態を知ることができる。
【0008】
MRAMのアドレスアクセスタイムは10ns台、サイクルタイムは20ns台とDRAM(Dynamic Random Access Memory)の5倍程度で、SRAM(Static Random Access
Memory)並みの高速な読み書きが可能である。また、フラッシュメモリの10分の1程
度の低消費電力、高集積が可能などの長所がある。
【0009】
また、ごく最近、レーストラック型磁化情報記録装置(Racetrack Random Access Memory)の概念が発表された(非特許文献3、特許文献1)。これは、1つの強磁性構造体を1個の記憶素子として取り扱うのではなく、複数の磁区構造を含む程度に大きな磁性材料を情報記録部(たとえばテープ状)として用意しておき、その中に反転磁化状態を書き込んで行くものである。いわば磁気テープと同じ様な考え方であるが、根本的に異なるのは磁気テープのごとく磁気ヘッド、もしくは磁気テープが移動することによって隣接した記録情報にアクセスするのではなく、読み出し、記録部位は機械的に固定されており、磁性材料中に記録された磁化状態がスピン偏極電流によって駆動され、磁区構造がその位置を移動させて記録・読み出し操作に供される点である。従来の機械的に固定された1bitと
しての各素子とその各部分への個別情報記録・消去ではなく、強磁性体中の磁区構造がそのままbitとして利用し得る可能性を持った全く新しい概念に基づくものである。従来の
隣接素子間の距離は、隣り合う磁区構造のサイズとなり究極のスケールダウンが実現され、集積密度の向上とそれに伴う高速演算性能が期待されている。
【0010】
本発明は、これらの背景の元に成された、弱磁場中の強磁性体に対するパルス電流の通電による反転磁化領域の生成実験(非特許文献4、5)に基づくものである。

【特許文献1】米国特許第6834005号明細書
【特許文献2】特開2006-196708号公報
【非特許文献1】E. B. Myers et al., "Current-Induced Switching of Domains in Magnetic Multilayer Devices", Science. Vol. 285, (1999) 867.
【非特許文献2】J. A. Katine et al., "Current-Driven Magnetization Reversal and Spin-Wave Excitations in Co/Cu/Co Pillars", Phys. Rev. Lett. Vol. 84, (2000) 3149.
【非特許文献3】"Spintronics Devices Research: Magnetic Racetrack Memory Project", [online], IBM, URL<http://www.almaden.ibm.com/spinaps/research/sd/?racetrack>
【非特許文献4】Y. Togawa et al., "Current-Excited Magnetization Dynamics in Narrow Ferromagnetic Wires", Japan. J. Appl. Phys. Vol. 45, (2006) L683.
【非特許文献5】Y. Togawa et al., "Domain Nucleation and Annihilation in Uniformly Magnetized State Under Current Pulses in Narrow Ferromagnetic Wires", Japan. J. Appl. Phys. Vol. 45, (2006) L1322.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のMRAMなど磁気情報記録素子は、素子内の強磁性体材料内に発生する磁化状態によって情報を記録していた。この磁化状態の制御には素子外部より磁場を印加し、その磁場強度を反映した状態で素子内に磁化反転、複数の磁区構造の生成などを生じさせていた。磁場印加によって磁化反転を起こす場合は、素子の微細化に伴って印加する磁場強度を強くする必要が生じる。このため、微小な領域に大きな磁場を印加するという技術的困難が生じ、高集積化への妨げの一因となっていた。
【0012】
また、磁場は無限遠方までその影響が到達する性質を持っているため、集積密度を高めたとき、ある素子を制御するために発生させた磁場が隣接素子の磁化状態を乱す可能性が出てくる。このことも素子の高集積化への妨げの一因となっていた。
【0013】
一方、スピン偏極電流を注入する方法ではこれらの問題を解消できる。たとえば、特許文献2では、磁気情報記憶素子の形状・構成材料に工夫を施し、素子に通電する電流量を
ある臨界電流量よりも高めている。これによって、電流により自発生成された磁区構造(磁化状態)を利用して情報の記録・消去を行う方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、スピン偏極電流を用いる方法では、磁化状態を確実に制御することは困難と推定される。とりわけ、実際の素子としての動作方法を考えると、情報の記録・消去の両動作が、いずれも通電させる電流量の制御のみに依存しているため、動作不安定を招く恐れがある。
【0015】
本発明はこれらの問題点を鑑みてなされたもので、高集積化を可能とするとともに、確実に磁性体の磁化状態を制御することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、磁気情報記録素子等を構成する磁性体(強磁性体)に磁場を印加するとともにパルス電流を通電させ、磁化情報の記録・消去を行う磁気状態制御装置である。印加する外部磁場の強さ・方向により、パルス電流による磁性体中の反転磁化の生成を確実ならしめる。
【0017】
本発明で必要とする外部印加磁場は数ガウス(G)程度の弱磁場であり、地磁気(約0.15G)などの環境要因によって装置内に恒常的に存在する磁場よりは十分に大きく、磁化反転を引き起こす磁場(材質・形状に依存するが概ね100G程度)よりは十分に小さくてよい。また、素子部の強磁性体中の磁化の方向と反平行に(反対向きに)磁場を印加してパルス電流を流すことで、反転磁化構造を発生させることができる。また、素子部の強磁性体中の磁化の方向と平行に(同じ向きに)磁場を印加してパルス電流を流すことで、磁化反転の抑制や反転磁化構造の消去を行うことができる。
【0018】
このように、印加する磁場の強さを弱くすることができるため、必要な磁場を印加するための機構を作製することが容易となる。また、磁場のみで磁化反転を引き起こす磁場より十分に小さい磁場で磁化状態の制御(情報記録・消去)が可能となるため、制御時に発生する隣接素子への影響を回避することができる。したがって、高集積化が可能となる。
【0019】
また、磁化状態の制御は、外部磁場とパルス電流の2つの独立なパラメータによって行われる。特許文献2のように単に電流強度だけで動作の制御を行うのに比較して、より高い動作安定性が確保できる。
【0020】
磁気情報記録素子を高集積化する場合は、集積化された複数の素子全体に一様の磁場を印加しつつ、それぞれの素子に個別に磁化情報の記録・消去を行うためのパルス電流を印加可能とすると良い。このようにすることで、複数の素子の磁化状態を同時に制御可能となる。また、磁場印加手段が1つで済むため高集積化に役立つ。
【0021】
また、磁場印加手段は、全体に一様に磁場を印加する第1の磁場印加手段と、一部(1つでも複数でも良い)の素子に個別に磁場を印加する複数の第2の磁場印加手段とから構成されることも好ましい。このようにすることで、情報の記録・消去の動作速度が向上するという利点がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、磁性体の磁化状態制御をより確実に制御可能とするとともに、高集積化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<磁気情報記録素子の情報記録原理>
強磁性体(磁気情報記録素子)の情報記録の原理を説明する。図1に、単一磁化状態(単磁区構造)と、磁化反転を含む状態(多磁区構造)を模式的に示す。図1Aに示す強磁性体101は向き301の単一磁区からなるのに対し、図1Bでは磁壁302で区切られた複数の磁区が形成されている。従来、図1Aに示したような単一磁化状態の強磁性体101に外部より局所的に磁場を印加することによって図1Bに示す反転磁化を作り出している。そして、素子全体の抵抗値の変化から、例えば、図1Aの状態を「0」(消去)、図1Bの状態を「1」(記録)として論理的に定義し、情報を記録している。
【0024】
強磁性体101の磁化反転の動作を確実にするために、また、強磁性体101の磁区構造を明確にするために、強磁性材料に形状的な変化を与えることが好ましい。形状変化としては、図2Aに示すような括れ部103や、図2Bに示すような屈曲部109を採用できる。また、図2Cに示すように、強磁性体の一部の材料を、異なる強磁性材料102とする方法も採用できる。このような形状の変化や材料(透磁率)の変化があるとその部位を磁壁として磁化反転が起きやすい。すなわち、素子部の磁化状態制御をより安定的に行えるようになる。
【0025】
図3は、磁化反転の発生の様子を電子顕微鏡で観察した例で、図1および図2に対応した実験結果である。試料は薄帯状に形成したパーマロイであり、幅が500nm(ナノメートル)、厚さが30nmである。また、屈曲部109の屈曲角は長軸方向に対して24度である。図3Aは単一磁化状態、図3Bは反転磁化を含む状態である。この観察は透過型電子顕微鏡を用いたローレンツ法による結果であり、帯状の磁性薄膜の端部に現れた黒線401の位置によって磁化の方向を知ることができる。黒線401の位置は、図3Aでは全て上側であるのに対して、図3Bでは中央部では下側に変化している。つまり、図3Bでは磁化の反転が発生していることが分かる。なお、磁化の方向はそれぞれ図中に矢印で記載している。図3Bを見ると、磁区の境界である磁壁の位置は、屈曲部109や括れ部(薄帯作成時の傷と推定される)103に位置していることが分かる。
【0026】
なお、図1~3は本発明により磁化状態が制御される磁気情報記録素子の例示であって、これらに限定されるものではない。磁気情報記録素子としては、磁化状態を制御することで情報を記録できる素子であれば、その他どのような素子であっても良い。例えば、TMR素子やスピンバルブなどの磁化状態を制御しても良い。
【0027】
<本発明の動作原理>
図4に本発明の動作原理を示す。単一磁化状態の強磁性体101にその磁化方向301とは逆方向に外部より数Gの磁場303を加える(図4A)。この状態でパルス電流202を通電する(図4B)。図では強磁性体101の単一磁区の磁化の向きにパルス電流を通電しているが、パルス電流を通電する向きはどちら向きであっても構わない。パルス電流202の電流強度、パルス幅が適切であるとき、強磁性体101中に反転磁化の領域が発生する(図4C)。反転磁化領域の生成する位置は、強磁性体101の形状などにより制御可能で、前述(図2)の通りである。
【0028】
外部磁場303を印加せず、パルス電流だけでも反転磁化構造は発生するが、パルス電流の通電に対して安定的かつ確実に発生するものではない(非特許文献5)。また、外部磁場303をおよそ100G印加した場合にも、反転磁化状態を発生させることは可能であるが、局所的に強磁場を発生させるには別途の技術が必要であり、そのための集積化への欠点がある
【0029】
反転磁化構造の解消には、印加する外部磁場303の方向を逆転させた後(図4D)、反転磁化領域の生成時と同じパルス電流202を通電させるだけでよい(図4E)。一方、磁化の方向と同じ方向に外部磁場303を印加した場合には、同じ強さ、時間幅のパル
ス電流を印加しても、反転磁化領域は生成しない(図5A,B)。
【0030】
このように、外部磁場とパルス電流によって磁化状態の切り替えが制御できる。
【0031】
図6は上記実験に用いた強磁性薄帯の全体像(ローレンツ顕微鏡像)である。実験に使用した強磁性体は、複数の屈曲部を有するジグザグ形状である。屈曲部での屈曲角は長軸方向に対して24度である。このような磁性体に対して、外部磁場を図中横方向に印加する。すなわち、外部磁場の方向と、磁気情報記録素子として動作する磁性構造体との角度の関係は比較的緩やかである。この状態でパルス電流を印加する。図6において、強磁性体端部(上側または下側)の黒線401の位置によって磁化の向きを把握できる。各々の領域の磁化の方向を図中矢印で示したように、磁化の反転が発生していることが分かる。
【0032】
ジグザグ形状の強磁性体を採用する場合に、その屈曲角が長軸方向に対して30度以内であることが好適である。その理由は以下のように考えられる。本発明の動作原理の理論的な解明はされていないものの、磁化状態制御に寄与する外部磁場は、強磁性体に平行な成分(方向余弦の成分)であると考えられる。したがって、屈曲角を長軸方向に対して30度以内とすることで、外部磁場と磁性体の向きの差が30度以内となり、印加した外部磁場の大半(cos30°=0.87,87%以上)が磁化制御に寄与する。
【0033】
上記の実験において、外部印加磁場の強度を変化させていったときの電流強度3mA(ミリアンペア)、パルス時間幅0.3μs(マイクロ秒)の、パルス電流の通電1回当りの反転磁化構造生成の確率の変化を図7に示す。図中横軸の磁場は、強磁性薄帯中の単一磁化の方向と逆向きの場合を正で示している。実験結果は明らかなヒステリシスを描いており、単一磁化と逆方向に6G以上の磁場を印加した場合には、確実に反転磁化領域を生成できる。また、生成された反転磁化領域は外部印加磁場がゼロであっても、あるいは磁場ゼロ状態でパルス電流が通電された場合でも消滅しない。反転磁化を確実に消去するためには、反対方向の磁場(-2G)の印加とその状態でのパルス電流の通電が必要である。
【0034】
電流強度とパルス幅を変化させた場合にも強磁性体内でのジュール発熱が顕著にならない条件(例えば、発熱による温度上昇が強磁性材料のキュリー温度以下)であれば、図7と同様のヒステリシスが描かれる、すなわち、外部印加磁場とパルス電流によって磁化状態の切り替えが制御できる。なお、この実験は冷却下(5K)および室温(300K)で行い、いずれの条件でも同様のヒステリシスが得られることを確認している。
【0035】
印加するパルス電流の電流強度とパルス幅は、強磁性構造体の形状(厚さ、幅)や材料に依存しており、実験によって求めることができる。上記の実験で採用した磁性体に対する、動作可能なパラメータの範囲の一例を図8に示す。図8に示す網掛け部305の範囲の電流強度とパルス幅の組み合わせであれば、磁性体の磁化状態の制御が可能である。また、図8に示すパラメータの範囲限られるわけではなく、電流密度が8×1010A/m2以上、更に好ましくは1×1010A/m2以上、パルス幅が100μ秒以下、更に好ましくは1μ秒以
下でも磁性体の磁化状態の制御が可能である。
【0036】
<本発明の基本構成>
本発明による磁化状態制御技術を磁気情報記録装置に適用する場合には、強磁性体を磁気情報記録素子として捉え、この強磁性体に、外部から所定の強度・方向の磁場を印加する磁場印加手段と、所定の電流強度・時間幅のパルス電流を通電できる電流印加手段を有する構成とすればよい。前述したように、磁場は一般的には拡散しながら遠方まで影響を及ぼす物理量であるので、比較的広い範囲に外部磁場を印加しておき、各素子部に対する磁化状態の反転制御は、パルス電流によって行うのが合理的な操作方法である。
【0037】
そのため、以下ではまず、各素子部の形状、パルス電流の通電方法に関する基本的な構成を説明し、その後に、外部磁場の印加方法に関して説明する。
【0038】
<実施例1>
図9に本発明を適用した磁気情報記録素子の基本構成を示す。磁化状態を反転させるためのパルス電流202を通電するための1組の通電線205と、抵抗を測定して記録された情報を読み取るための1組の導電線204が、強磁性体101に接続され、1個の磁気情報記録素子105を構成している。外部磁場は、任意の手段でこの磁気情報記録素子に印加される。例えば、磁気情報記録素子付近に配置したコイルに電流を印加して、誘導磁場を発生させることが好適である。このコイルなどの磁場印加手段とパルス電流を通電するための通電線205とが磁気情報記録素子に情報を書き込むための情報書き込み手段に相当し、抵抗値を測定するための導電線204が磁気情報記録素子の情報を読み込むための情報読み込み手段に相当する。
【0039】
強磁性体101の材料としては、強磁性体であればどのようなものであっても良いが、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)のような単一の強磁性金属や、パーマロイ、スーパーマロイのような強磁性合金などを用いることができる。
【0040】
このような磁気情報記録素子の磁化状態を、外部磁場とパルス電流とによって制御することで情報の記録が可能となる。なお、本実施例ではパルス電流を通電する通電線205と、抵抗値を測定する導電線204とをそれぞれ個別に配置しているので、それぞれ独立に操作可能である。
【0041】
<実施例2>
図10に最近発表されたレーストラック型磁気情報記録装置(非特許文献3)の情報書き込み手段として、本発明を適用した場合を説明する。
【0042】
十分な大きさ(長さ)を持つ強磁性薄帯に、薄帯中に磁区構造を生成するためのパルス電流を印加する1組の導電線205と、この導電線205とは場所を異にした情報読み出しのための1組の導電線204が直接接続されている。また、強磁性薄帯には上記の導電線204,205とは独立に、強磁性薄帯内部に生成された磁化状態(磁区構造)を駆動(移動)するためのスピン偏極電流208を通電する導電線207が接続されている。また、磁場印加手段によって磁性体薄帯に弱磁場を印加可能としている。
【0043】
本実施例では、強磁性薄帯とその中に記録される磁化状態を独立のものと考え、スピン偏極電流208によって、その位置を任意に移動させる。情報の書き込みを行う際には、情報を書き込む磁区の位置をスピン偏極電流208によって情報書き込み用の導電線205の位置に移動させ、この導電線205からパルス電流202を印加することで磁化状態の制御、すなわち情報の書き込み・消去を行う。また、情報の読み込みを行う際には、情報を読み込む磁区の位置をスピン偏極電流によって情報読み込み用の導電線204の位置に移動させ、この導電線204から抵抗値を測定し情報の読み込みを行う。
【0044】
また、図11に示すように、情報の書き込みおよび読み込みを1組の導電線で兼用することも可能であり、局所的強磁場印加が不要であることと相まって、レーストラック型磁気情報記録装置のさらなる高集積化ができる。
【0045】
<実施例3>
図12を用いて、従来のMRAM型磁気情報記録素子に本発明を適用した場合の実施例を説明する。従来のMRAMは、TMR素子などの磁気抵抗素子105と、磁化状態を変
化させるために磁場を印加する磁場印加手段(不図示)と、磁気抵抗素子105の抵抗値を測定して記録されている磁気情報を読み込む導電線204とを備える。
【0046】
MRAMは磁場のみで磁化状態の制御を行うので、MRAMの磁場印加手段は100G程度の磁場を印加できる。本実施例では、この磁場印加手段を流用して数G程度の強さの外部磁場を印加する。そして、情報読み込み用の導電線204を、パルス電流202を流して情報を書き込むためにも兼用する。このように、従来のMRAMの機構に本発明を適用して、磁気情報の記録を行うことができる。
【0047】
<実施例4>
磁気情報記録素子を構成する強磁性体の形状・構造は種々の形状・構造を採用可能である。特に、磁区構造が明確になるように、形状等の変化を付けることが好適である。
【0048】
図13,14は、磁気情報記録素子部の強磁性体101が局所的な形状の変化を有する場合の例である。図13では強磁性体101が括れ部103を有する。図14では、強磁性体101が屈曲部109を有する。また、図15,16は、磁気情報記録素子部が複数の強磁性材料から構成される場合の例である。
【0049】
強磁性材料の局所的な形状の変化、とりわけ図13のような括れ部103や、図14のような屈曲部109が存在すると、その括れや屈曲をきっかけに反転磁化の領域が生成される。すなわち、括れ部や屈曲部を磁壁として磁区構造が反転しやすい傾向がある。この効果を利用して強磁性体中に反転磁化構造を作り出すとともに、磁気情報を担う素子の位置を明確に定める効果が得られる。図13,14はともに、パルス電流通電によって磁化状態が反転した後を模式的に表したものである。
【0050】
強磁性材料の変更もその材料に応じて透磁率が異なるため、強磁性材料の境と磁化状態の境界が一致しやすい傾向がある。この効果を積極的に利用した素子がスピンバルブであるが、同様の効果を本発明における磁気情報記録素子においても利用することができる。図15は、異なる2種類の磁性材料からなる磁気情報記録素子部の、パルス電流通電後の反転磁化状態を表したもので、中央部の磁性材料部のみが反転磁化状態となっていることを描いている。なお、各磁性体材料の配置方法やパルス電流を通電する方向と強磁性体の磁化の方向には関連が無く、図16に示すように複数の磁性体材料を層状に重ねたり、強磁性体の磁化方向とパルス電流の流れる方向が直交するようにしても良い。
【0051】
もっとも、実際には素子の構造として図13~16に示す構造に限定されるわけではなく、種々の構造を採用することができる。また、本実施例では、実施例3と同様のように情報を書き込むためにパルス電流を通電する導電線205と、情報を読み込むために抵抗値を測定する導電線204を兼用としているが、実施例1のようにこれらの導電線を個別に配置した場合でも、本実施例で説明した各種の素子を採用できることはいうまでもない。
【0052】
<実施例5>
本実施例は、複数の磁気情報記録素子を集積化した磁気情報記録装置である。図17,18に本実施例による磁気情報記録装置の基本構成を示す。本実施例による磁気情報記録装置では、強磁性体素子105が1つの平面内に格子状に配置され、素子の集積度が高められている。
【0053】
図17は、それら各素子への通電線が該平面の上下に互いに直角に配列されている例で、一般的な記録装置と同じ構造である。この強磁性体素子平面の上下に外部磁場印加のためのコイル106が配されている。図18には強磁性体素子の磁化方向が各素子の配置さ
れた平面内にある場合の一例を示す。この構成の場合には、外部磁場印加のためのコイル106は、該素子面の左右に配されることになる。
【0054】
どちらの例においても1対のコイル106に所定の電流を通電し各素子に磁場を印加した上で、必要な素子にパルス電流を通電し素子部の磁化を反転させる。このようにして情報を記録する。磁化反転は、外部磁場の印加された素子の内、パルス電流が通電された素子で発生するが、複数の素子に同時にパルス電流を通電すれば、複数の素子の磁化状態を同時に切り替えられる。また、1対のコイルのみで全ての強磁性体素子に磁場が印加されるので、素子毎に磁場印加手段が必要ではない。したがって、高集積化が可能となる。
【0055】
なお、図17、18の様に外部磁場の印加にコイルを用いるのは一例であって、磁場強度や方向が制御可能であれば、永久磁石などを用いることも十分に可能である。
【0056】
また、各強磁性体素子の磁化方向は、図17では素子が配置された平面に対して垂直、図18では素子が配置された平面に対して平行であるが、これらは本発明の本質とは全く関係が無い。素子の形状も同様に、一般的な記録装置と同じ構造が描かれているが、これに限るものではなく、レーストラック型磁気情報記録装置の形状でも実施可能である。
【0057】
<実施例6>
本発明による磁気情報記録装置の基本構成は前述の通りであるが、各素子部への磁場の印加方法に関しては、いろいろな方法が実施可能である。とりわけ磁場の方向、強度を局所的かつ短時間で切り替えることは、各素子へのアクセスの自由度を高め、装置の利便性の向上、情報の記録・消去など動作速度の向上という観点から重要である。
【0058】
図19にそのための方策の一例を示す。外部磁場を印加・制御するため、全ての強磁性体素子に磁場を印加する1対のコイル106(第1の磁場印加手段)に加えて、各強磁性体素子の近傍に導電線108(第2の磁場印加手段)を配する。この導電線108への通電により発生する誘導磁場によって、目的とする強度、方向の外部磁場を所定の素子に印加する。図19の例では、導電線108は、巻き数0.5のコイルである。素子との位置関係をわかりやすくするために、素子近傍に配置される導電線108は2個のみを描いているが、実施に当っては、各素子に配置することは言うまでもない。同種の省略は、以降の図に於いても同様である。
【0059】
素子が配列された平面に垂直な左右1対のコイル106は、素子全体の磁場を均一に揃えるため、もしくは該導電線により発生・制御する磁場を小さくする目的で、素子面全体に均一な磁場を印加するために利用できる。
【0060】
例えば、コイル106によって反転磁化発生に必要な強さよりもわずかに弱い程度の磁場(図7の例では4G程度)をかけておけば、磁化反転が必要な時に導電線108に印加する磁場が弱くて済み、短時間での制御が可能となる。また、導電線108からのジュール熱の発生を抑止することが出来る。
【0061】
また、例えば、コイル106によって磁化反転に必要な磁場の向きとは逆向きに磁場をかけておけば、磁化反転させるためには導電線108でより強い磁場をかける必要が生じ、わずかな磁場での磁化反転が発生せず誤動作を防止できる。
【0062】
また、例えば、コイル106によって印加する磁場は地磁気などの外部磁場による影響を排除するために用いて、磁化反転のための磁場は全て導電線108によって印加しても良い。
【0063】
また、コイル106を利用して全ての素子に対して磁場を印加した上で、全素子にパルス電流を通電することにより、装置全体の素子に記録された情報の一斉消去も行える。
【0064】
<実施例7>
実施例6では導電線108が素子ごとに設けられていたが、本実施例では1つの導電線108が複数の素子に対して磁場を印加する。図20に本実施例にかかる磁気情報記録装置の構成を示す。図に示すように、導電線108は素子が複数配置される面と平行に直線状に配置されており、その下に存在する複数の素子に同時に外部磁場を作用させることが可能である。すなわち、複数素子に印加する磁場の制御が同時に行える。さらに、図20には直線状の幅広の導電線を1本描いているが、これは導電線の幅の広さを利用して、複数列の素子にも外部磁場を同時に印加することを模式的に示したものである。その他、素子が配列された平面の左右の1対のコイル106の用い方などは実施例6と同様である。
【0065】
このように、全素子に磁場を印加するコイル106と、一部かつ複数の素子に磁場を印加する導電線108を用いることで、上記実施例6と同様の効果が得られる。さらに、導電線108の数を減らすことが出来るので、高集積化が可能となる。
【0066】
<実施例8>
本実施例では、一部の強磁性体素子に磁場を印加する導電線108が、強磁性体素子の配された平面(素子面)に垂直である。図21に本実施例による磁気情報記録装置の構成を示す。図21では該導電線を幅広とし、前述と同様に複数の素子に同時に磁場を印加できる例も描いている。その他の素子の動作原理、外部磁場印加コイルの利用方法などは前述の実施例6,7(図19,20)の場合と同じである。
【0067】
さらに図21を用いて、記録・消去の2つの操作が同時に実現可能な制御方法を説明する。導電線108に通電すると、その導電線108を中心に周回した誘導磁場304が発生する。すなわち、導電線108の表裏の面で発生する磁場304の方向が逆になっている。そのため、実施例5で述べたごとく複数の素子へのパルス電流の通電が可能であれば、導電線の表裏で記録・消去の2つの操作が同時に実現可能である。
【0068】
さらに、複数の該導電線を用いる場合には、発生した誘導磁場の合成として、部分的にさまざまな方向(ただし図21の構成では面内の方向のみ)への磁場印加も可能である。これら、磁場印加への自由度の確保と、導電線の表裏の逆磁場を用いた操作においては、素子部の磁化反転の生成が、外部磁場強度に対して正負対称(図7のヒステリシスが縦軸に対して左右対称)である方が容易である。よってこの場合には、外部磁場印加コイルは前述とは異なり、均一な外部磁場を与えるのではなく、素子平面に恒常的にかかる地磁気などの外部磁場を相殺する目的で用いることが好適である。
【0069】
<実施例9>
本実施例では、強磁性体素子の配列面を複数備える。図22、23に本実施例による磁気情報記録装置の構成を示す。図22は該素子面が縦に積まれる構造をとった場合、図23は該素子面が水平方向に並列構造の場合である。
【0070】
図22では上下の素子面に印加する外部磁場を該素子面間の導電線108で制御するため、上下の素子面に印加される誘導磁場の向きは互いに逆転している。従って、実施例8で述べたごとく、上下面で記録・消去の2つの制御が同時に実現可能である。この様な異なる2つの制御を望まぬ場合には、予め各素子の磁化の方向を各素子面ごとに反転させておけばよい。
【0071】
図23は、水平方向の3枚の該素子面に印加される外部磁場を該平面上でU字型を描く
導電線によって制御する例である。本実施例では外部磁場は1軸方向のみとは限らず、複数の軸方向で可能であることを示している。この場合に外部磁場を印加するための手段も図21の様に複数用意する方が機構的に簡単である。
【0072】
また、図示はしないが、実施例8に記載の図21の構成に於いては、強磁性体素子の配された平面を縦方向に積み重ね、外部磁場を局所的かつ短時間で制御するための該導電線が縦に貫くような構造をとる場合に、本実施例で述べた機能を併せ持つことが容易に類推される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は最近実験的に発見された物理現象を磁気情報記録装置などの磁化状態制御装置に応用することを目的としたもので、本発明によれば外部磁場とパルス電流の2つの物理操作により磁化反転の生成・消滅を制御する。この外部磁場とパルス電流の物理操作は、磁場強度、磁場の印加方向、および電流量、パルス幅の各々2つのパラメータを含み、より繊細な制御への可能性を持っている。現在、世界中で急速に開発が進められているスピントロニクス素子の主動作方法として、および主たる記憶装置として利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】強磁性体の磁化状態の模式図である(A:単一磁化状態、B:反転磁化状態)。
【図2】形状、材質によって発生する反転磁化状態の模式図である(A:括れ部がある場合、B:屈曲部がある場合、C:異なる強磁性材料から構成される場合)。
【図3】形状に変化がある強磁性体での磁化状態の観察例(ローレンツ顕微鏡像)である(A:単一磁化状態、B:反転磁化状態)。
【図4】反転磁化状態の生成・消去方法を示す模式図である(A:初期状態の単一磁化状態、B:初期状態へのパルス電流の通電、C:反転磁化状態の生成、D:反転磁化状態の消去(外部磁場の方向を逆転)、E:消去後の単一磁化状態)。
【図5】単一磁化状態の磁化方向と外部印加磁場の方向が一致したときには磁化状態に変化が生じないことを示す模式図である(A:パルス電流通電前、B:パルス電流通電後)。
【図6】強磁性体薄帯の外観と印加磁場の方向を示す観察例(ローレンツ顕微鏡像)である。
【図7】外部印加磁場の強度と反転磁化状態発生の頻度を表わす実験図(ヒストグラム)である。
【図8】反転磁化状態を発生させられる強磁性体に通電するパルス電流の電流強度とパルス幅の関係を表わす実験図である。
【図9】本発明における磁化情報記録素子の構造の模式図である。
【図10】本発明をレーストラックメモリに適用する場合の情報記録・読出しの方法を説明する模式図である。
【図11】本発明をレーストラックメモリに適用する場合の情報記録・読出しの素子が兼用される場合を説明する模式図である。
【図12】本発明をMRAM型メモリに適用する場合の情報記録・読出しの方法を説明する模式図である。
【図13】本発明をMRAM型メモリに適用する場合で、素子に形状の変化(括れ部)を含む場合の情報記録・読出しの方法を説明する模式図である。
【図14】本発明をMRAM型メモリに適用する場合で、素子に形状の変化(屈曲部)を含む場合の情報記録・読出しの方法を説明する模式図である。
【図15】本発明をMRAM型メモリに適用する場合で、素子が複数の磁性材料から構成される場合の情報記録・読出しの方法を説明する模式図である。
【図16】本発明をMRAM型メモリに適用する場合で、素子が複数の磁性材料から構成される場合の情報記録・読出しの方法を説明する模式図である。
【図17】本発明における磁気情報記録装置で、外部磁場が素子面に垂直に印加される場合の基本構成を説明する図である。
【図18】本発明における磁気情報記録装置で、外部磁場が素子面に平行に印加される場合の基本構成を説明する図である。
【図19】本発明における磁気情報記録装置で、各素子に個別に外部磁場の制御を行なう場合の基本構成を説明する図である。
【図20】本発明における磁気情報記録装置で、直線状の導電線を用いて素子部に外部磁場の制御を行なう場合の基本構成を説明する図である。(導電線が素子面に平行の場合)
【図21】本発明における磁気情報記録装置で、直線状の電導線を用いて素子部に外部磁場の制御を行なう場合の基本構成を説明する図である。(導電線が素子面に垂直の場合)
【図22】本発明における磁気情報記録装置で、重ねられた素子面間に配された電導線を用いて素子部印加される外部磁場の制御を行なう場合の基本構成を説明する図である。
【図23】本発明における磁気情報記録装置で、並べられた素子面上に配された電導線を用いて素子部印加される外部磁場の制御を行なう場合の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
101 強磁性体
102 種類の異なる磁性材料
103 括れ部
104 強磁性体素子の長軸方向と外部印加磁場の成す角度
105 強磁性体素子
106 外部磁場印加コイル
107 素子の配列した平面(素子面)
108 外部磁場制御用導電線
109 屈曲部
201 電気抵抗値
202 パルス電流
203 パルス電流の方向
204 素子への抵抗測定など情報処理のための通電線
205 パルス電流通電のための導電線
207 スピン偏極電流のための導電線
208 スピン偏極電流
209 外部磁場制御電流
301 磁化の方向
302 磁壁
303 外部印加磁場
304 誘導磁場(エルステッドフィールド)
305 反転磁化構造の生成領域
401 磁化方向を示す磁性薄膜端部に現れる黒線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22