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明細書 :光触媒材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4756152号 (P4756152)
公開番号 特開2007-216197 (P2007-216197A)
登録日 平成23年6月10日(2011.6.10)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 光触媒材料の製造方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  23/34        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 23/34 M
B01J 37/02 101D
B01J 37/08
B01J 37/34
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2006-043205 (P2006-043205)
出願日 平成18年2月20日(2006.2.20)
審査請求日 平成21年1月22日(2009.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
発明者または考案者 【氏名】藤野 ▲隆▼由
個別代理人の代理人 【識別番号】100082072、【弁理士】、【氏名又は名称】清原 義博
審査官 【審査官】田澤 俊樹
参考文献・文献 特開2003-306729(JP,A)
特開2001-269584(JP,A)
特開2005-177572(JP,A)
特開2005-103504(JP,A)
特開2005-103505(JP,A)
特表平11-512337(JP,A)
特開2000-160212(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程(1)及び(2)を含む二酸化チタン‐二酸化マンガン複合材からなる光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法であって、
(1)マグネシウム基材表面に光触媒能を有する二酸化チタン皮膜を形成する工程
(2)前記二酸化チタン皮膜を、過マンガン酸塩水溶液中で光照射することにより、二酸化チタン皮膜に二酸化マンガンを担持する工程
前記工程(1)が以下の工程(a)及び(b)を含み、
(a)マグネシウム基材を、チタン酸塩と過酸化水素の混合溶液に浸漬することにより化成処理を施す工程
(b)工程(a)で得られたマグネシウム基材を熱処理する工程
前記工程(a)のマグネシウム基材が予め前処理が施されたマグネシウム基材であって、該前処理は硫酸を含む溶液中でエッチングすることを含むことを特徴とする光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)におけるマグネシウム基材が、純マグネシウム、又はAZ91、AZ61、AZ31、AZ80及びAM60系合金から選択されるいずれか一種のマグネシウム合金であることを特徴とする請求項に記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
【請求項3】
前記チタン酸塩がシュウ酸チタン酸アンモニウムおよびフッ化チタン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
【請求項4】
前記混合溶液中のチタン酸塩の濃度が0.0001~1mol/Lであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
【請求項5】
前記混合溶液中の過酸化水素の濃度が0.001~1mol/Lであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合溶液の温度が-5~99℃であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理が100~500℃の焼成であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒材料の製造方法に関する。詳細には、基材表面に、二酸化チタン‐二酸化マンガン(TiO/MnO)複合材からなる光触媒皮膜が形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境浄化の手段の一つとして光触媒が注目されており、中でも、光触媒能を有する二酸化チタン(TiO)は無害であり、化学的に安定で高活性の光触媒性能を示すことから盛んに研究が進められており、曇らないガラス、親水性塗料(汚れにくい)および空気清浄機などへの実用化の例も多く見られる。
【0003】
このような二酸化チタンのより高い触媒活性を備えることを目的として、塩化白金酸、塩化パラジウムおよび塩化ロジウム水溶液中にて二酸化チタン粉末を分散させ、紫外線を照射することによって、光還元反応(カップリング)で二酸化チタン粒子や皮膜上に白金、金、パラジウムおよびロジウムなどの貴金属を担持(M/TiO)させる方法が多く見られる。但し、Mは金や白金等の貴金属である。この処理方法によって単一な二酸化チタンよりも、より高い光触媒能を有する材料が合成できる。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、酸性水を用いてチタンアルコキシドを加水分解して二酸化チタンゾルを作製し、これに貴金属塩の水溶液を添加する。この混合溶液に光を照射した後、該混合溶液から上澄み液を取り出し、この上澄み液に再度光を照射することによる金属イオンの光還元作用を利用して金属微粒子を二酸化チタン粒子群に分散させる方法であるが、金、白金などの貴金属は高価であり、工業的には不向きである。
【0005】
特許文献2に記載の発明は、アルミニウム板材の表面に、光触媒能を有する二酸化チタン化成皮膜を形成する方法である。この方法で作製した皮膜は非常に優れた密着性を有しているものの、板状に固定化されているために粉体と比べ、比表面積が小さく、触媒能に劣る。従って、板状で光分解や光合成に用いるには、より活性の高い光触媒の開発が不可欠である。
【0006】
特許文献3に記載の発明は、ガラスやセラミック上にゾル‐ゲル法を用いて二酸化チタン粒子を固定化させる方法である。この発明は、高温での焼成が問題となるだけでなく、特許文献2と同様、板状に固定化されているために粉状と比べ、比表面積が小さく、触媒能に劣る。従って、板状で光分解や光合成に用いるには、より活性の高い光触媒の開発が不可欠である。
【0007】

【特許文献1】特開2000-160212号公報
【特許文献2】特開2005-177572号公報
【特許文献3】特開平11-512337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、二酸化チタンの光還元作用を利用して、二酸化チタン粒子上に貴金属ではなく二酸化マンガン層を形成させることにより、より高い光触媒活性が得られることを見出し本発明に至った。
【0009】
本発明の課題は、高い触媒活性を備える光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、白金やパラジウム等の貴金属を使用せずに、安価で且つ容易に、高い光触媒能を有する光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法を提供することにある。
本発明のもう一つの課題は、高い触媒活性を備える光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料を、安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項に係る発明は、以下の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする二酸化チタン‐二酸化マンガン複合材からなる光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
(1)マグネシウム基材表面に光触媒能を有する二酸化チタン皮膜を形成する工程
(2)前記二酸化チタン皮膜を、過マンガン酸塩水溶液中で光照射することにより、二酸化チタン皮膜に二酸化マンガンを担持する工程
前記工程(1)が以下の工程(a)及び(b)を含み、
(a)マグネシウム基材を、チタン酸塩と過酸化水素の混合溶液に浸漬することにより化成処理を施す工程
(b)工程(a)で得られたマグネシウム基材を熱処理する工程
前記工程(a)のマグネシウム基材が予め前処理が施されたマグネシウム基材であって、該前処理は硫酸を含む溶液中でエッチングすることを含むことを特徴とする光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法。
求項に係る発明は、前記工程(a)におけるマグネシウム基材が、純マグネシウム、又はAZ91、AZ61、AZ31、AZ80及びAM60系合金から選択されるいずれか一種のマグネシウム合金であることを特徴とする請求項に記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
請求項に係る発明は、前記チタン酸塩がシュウ酸チタン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項又はに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
【0013】
請求項に係る発明は、前記混合溶液中のチタン酸塩の濃度が0.0001~1mol/Lであることを特徴とする請求項乃至いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
請求項に係る発明は、前記混合溶液中の過酸化水素の濃度が0.001~1mol/Lであることを特徴とする請求項乃至いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
請求項に係る発明は、前記混合溶液の温度が-5~100℃であることを特徴とする請求項乃至いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する
求項7に係る発明は、前記熱処理が100~500℃の焼成であることを特徴とする請求項乃至いずれかに記載の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
発明の光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料の製造方法によると、白金やパラジウム等の貴金属を使用せずに、安価で且つ容易に、高い触媒活性、即ち優れた機能性を有する光触媒皮膜が表面に形成されてなる光触媒材料を製造することができる。
【0015】
詳細には、本発明の光触媒皮膜及び光触媒材料の製造方法によると、二酸化チタンに二酸化マンガンをカップリングして二酸化チタン‐二酸化マンガン(TiO/MnO)複合材とすることができる。
従って、触媒機能を高めるために用いられる白金やパラジウムを二酸化チタン粒子等に担持させたものと比較し、二酸化マンガンが担持される本発明の光触媒皮膜及び光触媒材料は、より高い光触媒能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の製造方法における光触媒皮膜について説明する。
触媒皮膜は、光触媒能を有する二酸化チタン皮膜を過マンガン酸塩水溶液中で光照射することにより、二酸化チタン皮膜に二酸化マンガンを担持して得られる二酸化チタン‐二酸化マンガン(TiO/MnO)複合材からなる。
【0017】
前記二酸化チタン‐二酸化マンガンの複合材は、好ましくは二層構造である。二酸化チタン層は粒子の場合10~100nm、好ましくは、10~30nmである。板状の場合は、できるだけ厚く(5~30μm)、表面積が大きい多孔質構造の膜が好ましい。二酸化マンガン層は1~30nm、好ましくは、1~15nmである。ただし、この範囲はTiO2の粒径によって決められる。
【0018】
本発明の製造方法における光触媒材料は、前記光触媒皮膜が、基材表面に形成されてなる。基材としては、マグネシウムの基材を使用する。
基材の形状は粒子状、板状及び繊維状のいずれでもよく、用途に応じて適宜定められる。作業性、製造容易性等の点では、板状および繊維状であることが望ましく、商業的利用性の点では、板状であることが望ましい。即ち、本発明によると、如何なる形状の基材であっても、二酸化チタン皮膜を有する基材であれば、二酸化チタン‐二酸化マンガンの複合材を形成して光触媒材料とすることが可能である。
【0019】
以下、本発明の製造方法における二酸化チタン‐二酸化マンガン(TiO/MnO)複合材からなる光触媒皮膜の製造方法について説明する。
光触媒皮膜の製造方法は、光触媒能を有する二酸化チタン皮膜を過マンガン酸塩水溶液中で光照射することにより、二酸化チタン皮膜に二酸化マンガンを担持して二酸化チタン‐二酸化マンガン(TiO2/MnO2)複合材とする工程を含む。詳細には、二酸化チタン皮膜に光照射して、光還元をすることにより、二酸化チタン‐二酸化マンガン複合材を得る。
【0020】
前記過マンガン酸塩としては、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムが挙げられるが、好ましくは、過マンガン酸カリウムである。
前記過マンガン酸塩水溶液中の過マンガン酸塩の濃度は、1×10-3~2mol/L、好ましくは0.01~0.1mol/Lである。この理由は、1×10-3mol/L未満の場合は、マンガン(VII)の還元速度が遅いためであり、2mol/Lを超えると反応速度が速すぎて二酸化マンガンの担持量の制御が困難であるためいずれの場合も好ましくないからである。
前記過マンガン酸塩水溶液の温度は、好ましくは0~95℃、より望ましくは20~55℃である。0℃未満の場合は、反応速度が遅く、また95℃を超えると反応速度が速すぎて二酸化マンガンの担持量の制御が困難になるためいずれの場合も好ましくない。
【0021】
前記光照射において、好ましくは波長範囲が220~400nm、より望ましくは250~380nmの紫外線が用いられる。この理由は、220nm未満の場合、空気中の酸素が光エネルギーを吸収であり、400nm以上の場合は、二酸化チタン上に二酸化マンガンが担持しないためいずれの場合も好ましくないからである。
前記紫外線の照射時間は1~7200分が好ましく、より望ましくは、30~120分である。この理由は、1分未満の場合、二酸化マンガンの担持量が少なく、7200分を超えると二酸化マンガンが二酸化チタン全面を覆ってしまうために光を吸収し、いずれも高い触媒活性が期待できないからである。
前記光照射に使用する光源とサンプルの距離は、好ましくは200cm以下、より望ましくは、10~100cmである。この理由は、光源とサンプルの距離が200cmを超えると、空気中の酸素が光エネルギーを吸収し、光還元反応性が低下するため望ましくないからである。
【0022】
以下、本発明の光触媒材料の製造方法について説明する。
触媒材料は、基材表面に光触媒皮膜が形成されてなり、詳細には、以下の工程(1)及び(2)を含む。
(1)マグネシウム基材表面に光触媒能を有する二酸化チタン皮膜を形成する工程
(2)前記二酸化チタン皮膜を、過マンガン酸塩水溶液中で光照射することにより、二酸化チタン皮膜に二酸化マンガンを担持する工程
【0023】
即ち、上記工程(2)は、前述した光触媒皮膜を形成する工程であり、本発明の光触媒材料の製造方法は、工程(2)の前に、マグネシウム基材に二酸化チタン皮膜を形成する工程(1)をさらに含む。
【0025】
例えば、二酸化チタン粒子上に二酸化チタン皮膜を形成する方法としては、特に限定されず、ゾル‐ゲル法、陽極酸化法、水熱加圧法、化成処理法、スパッタリング等、いずれも使用可能であるが、例えば、特開2000‐160212号公報で記載される製造方法によりアナタース型二酸化チタン粒子を得ることができる。即ち、酸性水を用いてチタンアルコキシドを加水分解して二酸化チタンゾルを作製し、これに金属塩の水溶液を添加し、この混合溶液に光を照射した後、該混合溶液から上澄み液を取り出し、この上澄み液に再度光を照射することによる金属イオンの光還元を利用して金属微粒子を二酸化チタン粒子群に分散させることを含む製造方法によりアナタース型二酸化チタン粒子が得られる。
【0027】
前記マグネシウムに二酸化チタン皮膜を形成する方法としては、特に限定されず、ゾル‐ゲル法、陽極酸化法、水熱加圧法、化成処理法、スパッタリング等、いずれも使用可能である。例えば、特開2005-103505号公報、特開2005-103504号公報、或いは特開2004-091852号公報に記載の方法でマグネシウム基材表面に二酸化チタン皮膜を形成することができる。
【0028】
前記の特開2005-103505号公報及び特開2005-103504号公報は、ノン火花放電型陽極酸化皮膜を形成し、該微細孔内部及び皮膜表面に光触媒を担持固定化することによる、マグネシウム金属の製造方法であり、前記固定化の方法としては、ゾル‐ゲル法が用いられている。このゾルゲル法は、製造コストが高いだけでなく、ゾル溶液によるゲル化は、その作製環境によって大きく影響され、またゾル溶液の保存も困難であるという問題を有しているものの、二酸化チタンの固定化のために最も汎用されている手段である。
【0029】
また、特開2004-091852号公報には、脱脂工程、第1水洗工程、陽極酸化工程、第2水洗工程、窒素ブロー工程、コーティング工程、焼付け工程を含むマグネシウム基材の表面処理方法が記載されている。この製造方法は7つの工程を含み、簡便で有用性の高い方法であるとはいえないものの、マグネシウム基材上に厚い皮膜を形成することができる。
【0030】
本発明において、用いられるマグネシウム基材に二酸化チタン化成皮膜を形成する方法、以下の工程(a)及び(b)を含む。
(a)マグネシウム基材を、チタン酸塩と過酸化水素の混合溶液に浸漬することにより化成処理を施す工程
(b)工程(a)で得られたマグネシウム基材を熱処理する工程
【0031】
前記工程(a)で用いられるマグネシウム基材としては、純マグネシウム又はマグネシウム合金であってもよく、マグネシウムを主成分とするものであれば特に限定されない。また、その形態等を問わず、素材品、鋳造品、鍛造品、加工品等種々の形態および形状をとり得る。前記マグネシウム合金としては、AZ91、AZ61、AZ31、AZ80、AM60等が例示できる。
【0032】
まず、工程(a)について説明する。
工程(a)において、マグネシウム基材を、チタン酸塩と過酸化水素の混合溶液に浸漬することにより化成処理を施す。
前記チタン酸塩としては、フッ化チタンアンモニウム、シュウ酸チタン酸アンモニウム、硫酸チタン酸アンモニウム、臭化チタン酸アンモニウム、ヨウ化チタン酸アンモニウムが挙げられるが、好ましくは、シュウ酸チタン酸アンモニウムである。
【0033】
前記混合溶液中のチタン酸塩の濃度は、好ましくは0.0001~1mol/L、より望ましくは0.01~0.1mol/Lである。この理由は、チタン酸塩の濃度が0.0001mol/L未満の場合、成膜速度(加水分解速度)及びマグネシウムの溶解速度が遅く、また、1mol/Lを超えると成膜反応が過剰となり密着性が劣るため、いずれの場合も望ましくないからである。
【0034】
前記混合溶液中の過酸化水素の濃度は、好ましくは0.001~1mol/L、より望ましくは0.01~0.1mol/Lである。この理由は、過酸化水素の濃度が0.001mol/L未満の場合、成膜速度(加水分解速度)及びマグネシウムの溶解速度が遅く、また、1mol/Lを超えると成膜反応が過剰となり密着性が劣るため、いずれの場合も望ましくないからである。
【0035】
前記混合溶液の温度は、好ましくは-5~100℃、より望ましくは50~80℃である。この理由は、混合溶液の温度が-5℃未満の場合、成膜速度(加水分解速度)及びマグネシウムの溶解速度が遅く、また、100℃を超えると成膜速度(加水分解速度)及びマグネシウムの溶解速度が過剰となり密着性が劣るため、いずれの場合も望ましくないからである。
【0036】
工程(a)において、マグネシウム基材を、チタン酸塩と過酸化水素の混合溶液に浸漬する時間は特に限定されないが、好ましくは5~120分間である。特に、チタン酸塩と過酸化水素の濃度が、前述の好適な範囲にある場合は、15~60分間が望ましく、この時間の浸漬によると、密着性、チタンの含有量が程よいため優れる。
【0037】
本発明にかかるマグネシウム基材に、好ましくは工程(a)の前に予め前処理が施される。前記前処理としては、硫酸を含む溶液中でのエッチングが挙げられ、前記溶液中の硫酸の濃度としては、5~10重量%が望ましい。
【0038】
次に、工程(b)について説明する。
工程(b)において、工程(a)で得られたマグネシウム基材を熱処理する。前記熱処理は、特に限定されないが、例えば脱水処理、低温プラズマ処理、焼成処理等の処理方法が挙げられる。
【0039】
前記熱処理としては、好ましくは100~500℃、より望ましくは200~400℃の焼成により熱処理が行われる。この理由は、100℃未満の場合は、結晶性に劣り、また、500℃を超えるとクラックを生じるためいずれの場合も好ましくないからである。
前記焼成は、大気中、又は酸素雰囲気中いずれで行ってもよいが、好ましくは大気中で行われる。大気中の焼成は、好ましくは1~600分間、より望ましくは10~180分間である。
尚、工程(a)及び(b)により得られたマグネシウム基材表面の二酸化チタン化成皮膜の膜厚は、1~30μm、好ましくは5~30μmである。
【0040】
本発明において、好適に用いられるこのマグネシウム基材表面に二酸化チタン化成皮膜を製造する方法によると、容易に、マグネシウム基材の耐食性、耐摩耗性を向上させることができるから、例えば、汎用されるゾル‐ゲル法と比較すると、省エネ、迅速作製、及び大幅なコストの削減が可能となる。
【0041】
さらに、前記工程(1)の基材として、アルミニウムが用いられる場合の、該基材表面に二酸化チタン皮膜を形成する方法としては特に限定されず、ゾル‐ゲル法、陽極酸化法、水熱加圧法、化成処理法、スパッタリング等、いずれも使用可能である。例えば、特開2005‐177572号公報の方法、即ち、アルミニウム材を、フッ化チタン塩と過酸化水素との混合溶液に晒して、アルミニウム材表面に化成皮膜を生成させる化成処理工程と得られたアルミニウム材を熱処理する工程を含む方法が挙げられる。
【実施例1】
【0042】
以下本発明の実施例について詳細について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明の光触媒材料の製造方法における工程(1)について説明する。本実施例においては、マグネシウムを基材として用いた。
【0043】
(マグネシウム基材上への二酸化チタン化成皮膜の製造)
〈1〉前処理
合金系マグネシウム基材(AZ91)(3cm×3cm×1mm)を10%硫酸溶液中で1分間エッチングした。
〈2〉工程(a)
前処理したマグネシウム基材をシュウ酸チタン酸アンモニウム0.02mol/Lと過酸化水素0.04mol/Lを含む混合溶液に30分間浸漬した。尚、混合溶液の温度は、80℃とした。
〈3〉工程(b)
工程(a)で得られたマグネシウム基材を、大気中で400℃、1時間焼成した。
【0044】
前記の工程により、二酸化チタン化成皮膜が表面に形成されたマグネシウム基材(以下、単に二酸化チタン化成皮膜基材という)を得た。この一連の工程の概念図を図1に示す。
【0045】
図1(A)は、本発明に係るマグネシウム基材上への二酸化チタン化成皮膜の製造方法に関する一連の工程を示す。(B)は、本発明に係る工程(a)の化成処理中のマグネシウム基材の表面における化学反応を表す。
図1(A)が示すように、マグネシウム基材が、前処理としてエッチングされる。次に、得られたマグネシウム基材は、工程(a)において、シュウ酸チタン酸アンモニウムと過酸化水素を含む混合溶液に浸漬することにより化成処理が施される。化成処理されたマグネシウム基材の表面には水酸化マグネシウム(Mg(OH))が形成され、さらにその表面にペルオキソチタンが形成される。得られたマグネシウム基材を、工程(b)において、焼成することにより、その表面に二酸化チタン(TiO)が形成される。
【0046】
図1(B)が示すように、工程(a)の化成処理において、酸性浴中でマグネシウムが溶解し、水素が著しく発生する。そして、界面のpHが上昇し水酸化マグネシウムが生成する。同時にペルオキソチタン化合物の加水分解が進行し、チタン塩加水分解生成物が析出する。
【0047】
図2の(a)は、SEMによる二酸化チタン化成皮膜基材の表面観察結果を示し、粒径40nmの結晶が確認された。尚、図2の(b)は、工程(b)を施さなかったマグネシウム基材(即ち前処理と工程(a)のみにより得られた基材)の表面観察結果である。
図3は、薄膜XRDによる皮膜の解析結果を示す。尚、図3中(b)は、工程(b)を施していないものであり、この二酸化チタン化成皮膜は非晶質であった。一方、図3中(a)が示すように二酸化チタン化成皮膜基材において、アナターゼ型二酸化チタンが生成されたことが確認できた。
【0048】
図4は、FT-IRによる皮膜の解析結果を示す。図4中(a)は、二酸化チタン化成皮膜基材の解析結果である。図4中(b)は、工程(b)を施さなかったマグネシウム基材の解析結果である。これにより、1401及び904cm-1に特有のピークが確認された。これは黄色皮膜の成分のペルオキソ錯体の伸縮振動であると考えられる。
図5は、XPSによる皮膜の状態分析結果を示す。Ti2pのスペクトルから、二酸化チタン化成皮膜基材(図5中(a))において、アナターゼ型二酸化チタンが生成したことがわかる。尚、図5中(b)は、工程(b)を施さなかったマグネシウム基材である。O1sのスペクトルによると、この基材においては水酸化マグネシウムが生成し、一方、図5中(a)が示すように、二酸化チタン化成皮膜基材からは炭酸マグネシウムおよび酸化マグネシウムが生成していることが確認された。
【0049】
図6は、二酸化チタン化成皮膜基材のTG-DTAによる皮膜の熱分析の結果を示す。277℃でアナターゼ型二酸化チタンが生成することがわかった。さらに水酸化マグネシウムの脱水反応も確認された。
図7は、皮膜のUV-Visスペクトル結果を示す。図7中(a)は二酸化チタン化成皮膜基材のスペクトル結果であり、図7中(b)は、工程(b)を施さなかったマグネシウム基材に関する。二酸化チタン化成皮膜基材において、アナターゼ型二酸化チタンの存在を示す400nm付近の吸収が確認された。
【0050】
以上より、本発明の光触媒材料の製造方法における工程(1)において、マグネシウムを用いた場合、上記の方法により形成された二酸化チタン化成皮膜の二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタンであるから、好適に使用できることがわかった。
【0051】
次に、前述の工程(a)における化成処理の条件と膜厚に関する試験を行った。
工程(a)における化成処理において、以下の表1の如く条件を変化させ、この変化により二酸化チタン化成皮膜の膜厚がどのように変化するかについて試験した。以下の条件の変更以外は、前述の(マグネシウム基材上への二酸化チタン化成皮膜の製造)に基づいた。
【0052】
【表1】
JP0004756152B2_000002t.gif

【0053】
シュウ酸チタン酸アンモニウムの濃度と膜厚の関係を図8、過酸化水素の濃度と膜厚の関係を図9、混合溶液の温度(浴温度)と膜厚の関係を図10に示す。
図8より、シュウ酸チタン酸アンモニウムの濃度に比例し膜厚が増加することがわかる。また、図9から、過酸化水素濃度が0.05Mまでは、比例して膜厚も増加するが、それ以上は、略一定であることがわかる。さらに、図10からは、浴温度が50℃以上になると、反応速度は高くなり、膜厚は著しく上昇するが、60℃を超えると、膜厚は略一定であることがわかる。即ち、本発明に係る工程(a)及び(b)により、基材上に二酸化チタン化成皮膜を形成すると、容易二酸化チタンをマグネシウム基材へ固定化できるだけでなく、工程(a)における各条件(シュウ酸チタン酸アンモニウムの濃度、過酸化水素の濃度、混合溶液の温度)を調節することにより、二酸化チタンの膜厚を調節することが可能である。
【0054】
次に、本発明の光触媒材料の製造方法における工程(2)について実施例に基づき説明する。本実施例においては、前述の(マグネシウム基材上への酸化チタン化成皮膜の製造)で得られた二酸化チタン化成皮膜基材を用いた。
二酸化チタン化成皮膜基材を、0.02mol/L過マンガン酸カリウム水溶液中に超音波分散させ、水銀ランプ(極大波長350nm)の紫外光を3時間照射し、二酸化マンガンを光還元させて、本発明の光触媒材料(実施例1)を得た。図11は、本発明に係る工程(2)の概念図を示す。
【0055】
SEMによる皮膜の表面観察結果を、図12に示す。図12中(1)は、二酸化チタン化成皮膜基材の走査型電子顕微鏡写真であり、粒径40nmの二酸化チタンの結晶が確認された。(2)は、実施例1、即ち、光還元により酸化物を二酸化チタン膜に担持したSEMによる皮膜の表面観察結果を示す。SEMによる皮膜の表面観察結果より、光還元によって二酸化チタン表面に5~10nmの二酸化マンガンの担持状態が観察できた。
【0056】
図13は実施例1のXPSによる状態分析結果を示す。図13のa)が示すように、Ti2pスペクトルからアナターゼ型二酸化チタンを形成している。図13のb)が示すように、Mn2pスペクトルから、単独の標準二酸化マンガンよりも1.6eVシフトしているためチタンとの複合酸化物を形成していることがわかった。また、図13のc)が示すように、O1sから金属酸化物を形成していることがわかった。すなわち、実施例1が、チタンとマンガンが結合した複合酸化物を有していることがわかる。
【0057】
図14は二次イオン質量分析による実施例1と二酸化チタン化成皮膜基材の二酸化マンガンの質量分析結果を示す。図14中(b)が示すように、工程2によって光還元した後のMnO/TiO複合酸化皮膜(実施例1)中に明瞭な55Mnおよび48Tiの質量ピークが確認できる。
【0058】
図15は二酸化チタン1gに対する二酸化マンガンの量を示す。光照射3時間までは担持量は比例的に増加している。しかし、照射3時間以降は担持量にほとんど変化は見られなかった。
【0059】
図16は350nmを最大波長とする紫外光を50分間照射し、マラカイトグリーンの分解を分光光度計により618nmの波長で、吸光度を測定した。二酸化チタン化成皮膜基材において、高い触媒活性が確認できた。さらに、本法の光還元させたMnO/TiO皮膜(実施例1)はより一層の高い触媒活性が確認できた。
【0060】
図17は、過酸化水素の分解による光触媒活性評価結果を示す。二酸化チタン上に二酸化マンガンを担持させることで二酸化チタン単独の皮膜に比べて2倍以上の光触媒活性を示すことが確認された。
【0061】
次に、本発明の光触媒材料の製造方法において、基材として二酸化チタン粒子を用いた場合の実施例について説明する。
アナターゼ型二酸化チタン粒子(20~150nm)を0,02mol/L過マンガン酸カリウム水溶液中に超音波分散させ、350nmの紫外光を3時間照射し、二酸化マンガンを光還元させて、本発明の光触媒材料(実施例2)を得た。
このTEM写真を図18に示す。二酸化チタン上に二酸化マンガン(約15nm)の層が覆っていることが確認できる。
【0062】
図19はUV-visスペクトルを示す。(1)二酸化チタン化成皮膜基材、(2)は実施例1、(3)は実施例2を示す。(1)の吸収端が400 nmであった。また、図中(2)及び(3)は、いずれも吸収端が約800 nm以上であり、可視光全領域に一定の吸収が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1中(A)は、本発明の光触媒材料の製造方法の工程(1)において、マグネシウムを用いた場合の、マグネシウム基材表面に二酸化チタン化成皮膜を製造するための一連の工程を示し、(B)は、該工程における化学反応を示す。
【図2】図2は、SEMによる皮膜の表面観察結果であり、(a)が二酸化チタン化成皮膜基材、(b)が工程(b)を施していない基材を示す。
【図3】図3は、薄膜XRDによる皮膜の解析結果であり、(a)が二酸化チタン化成皮膜基材、(b)が工程(b)を施していない基材を示す。
【図4】図4は、FT-IRによる皮膜の解析結果であり、(a)が二酸化チタン化成皮膜基材、(b)が工程(b)を施していない基材を示す。
【図5】図5は、XPSによる皮膜の状態分析結果であり、(1)がTi2pのスペクトル、(2)がO1sのスペクトルを示す。
【図6】図6は、二酸化チタン化成皮膜基材における、TG-DTAによる皮膜の熱分析を行った結果を示す。
【図7】図7は、皮膜のUV-Visスペクトル結果であり、(a)が二酸化チタン化成皮膜基材、(b)が工程(b)を施していない基材を示す。
【図8】図8は、工程(a)におけるシュウ酸チタン酸アンモニウムの濃度と膜厚の関係を示す。
【図9】図9は、工程(a)における過酸化水素の濃度と膜厚の関係を示す。
【図10】図10は、工程(a)における浴温度と膜厚の関係を示す。
【図11】図11は、本発明に係る工程(2)の概念図である。
【図12】図12は、SEMによる皮膜の表面観察結果であり、(1)は、二酸化チタン化成皮膜基材、(2)は実施例1を示す。
【図13】図13は、実施例1のXPSによる状態分析結果を示す。
【図14】図14は、二次イオン質量分析による実施例1の二酸化チタン皮膜上に光還元した55Mn及び48Tiの質量分析結果を示す。
【図15】図15は、原子吸光分析による紫外線照射時間に対するMn量の結果である。
【図16】図16は、マラカイトグリーン分解による光触媒能の評価結果を示す。
【図17】図17は、過酸化水素分解による光触媒能の評価結果を示す。
【図18】図18は、実施例2のTEMによる皮膜の観察結果を示す。
【図19】図19は、光触媒のUV-vis吸収スペクトル結果である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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