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明細書 :光触媒皮膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4905659号 (P4905659)
公開番号 特開2007-325995 (P2007-325995A)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
公開日 平成19年12月20日(2007.12.20)
発明の名称または考案の名称 光触媒皮膜の製造方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  21/06        (2006.01)
B01J  23/34        (2006.01)
B01J  23/62        (2006.01)
B01J  23/656       (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/03        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 21/06 A
B01J 21/06 M
B01J 23/34 A
B01J 23/34 M
B01J 23/62 A
B01J 23/62 M
B01J 23/64 104A
B01J 23/64 104M
B01J 37/02 301K
B01J 37/03 A
B01J 37/34
B01J 37/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2006-157564 (P2006-157564)
出願日 平成18年6月6日(2006.6.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年 5月14日 社団法人軽金属学会主催の「第110回春期大会」において文書をもって発表 平成18年 4月13日 社団法人軽金属学会発行の「第110回春期大会講演概要集」に発表
審査請求日 平成21年6月3日(2009.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
発明者または考案者 【氏名】藤野 隆由
個別代理人の代理人 【識別番号】100084146、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 宏
【識別番号】100118625、【弁理士】、【氏名又は名称】大畠 康
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開平09-294933(JP,A)
特開2003-306729(JP,A)
国際公開第2005/064045(WO,A1)
特開2005-103505(JP,A)
藤野 隆由 他,アルミニウム二次電解皮膜上の酸化チタン薄膜の高次光触媒能,軽金属,2003年,第53巻第10号,第410-415頁
調査した分野 B01J 21/00-38/74
B01D 53/86、53/94
WPI
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
多孔性の陽極酸化皮膜を、チタニル酸塩と、チタニルと陽イオン錯体を形成する錯化剤と、を含む混合浴中で、電解処理して、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンを析出させて二酸化チタン皮膜を形成する、チタニル電解処理工程と、
二酸化チタン皮膜を、焼成して、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜に変化させる、焼成処理工程と、を有し、
更に、上記チタニル電解処理工程の前に、
多孔性の陽極酸化皮膜を、金属塩の浴中で、電解処理して、陽極酸化皮膜の孔中に、金属単体を析出させる、金属電解処理工程、を有しており、
上記焼成処理工程が、更に、熱拡散によって、金属単体を二酸化チタンに担持させるものである、ことを特徴とする光触媒皮膜の製造方法。
【請求項2】
陽極酸化皮膜として、アルミニウム、マグネシウム、チタン、又は各々の合金を、陽極酸化処理することによって、形成されたものを、用いる、請求項記載の光触媒皮膜の製造方法。
【請求項3】
チタニル酸塩として、硫酸チタニルを用いる、請求項1又は2に記載の光触媒皮膜の製造方法。
【請求項4】
錯化剤として、シュウ酸を用いる、請求項1~3のいずれか一つに記載の光触媒皮膜の製造方法。
【請求項5】
金属塩として、白金、金、パラジウム、ルテニウム、銀、スズ、マンガン、銅、コバルト、又はニッケルの、塩を用いる、請求項1~4のいずれか一つに記載の光触媒皮膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒は、環境分野やエネルギー分野で有効に利用できるため、非常に注目されている。具体的には、光触媒は、例えばNOx等の有害物を分解できるので、環境浄化の手段として利用できる。また、光触媒は、例えばチタニアナノアレイや色素増感太陽電池等に利用できる。
【0003】
ところで、光触媒の一つとして注目されている二酸化チタンは、粒子として合成される。しかし、粒子の二酸化チタンは、取扱いが不便であり、また、使用後の回収が困難である。そこで、二酸化チタンを基板に固定して光触媒皮膜として使用することが、一般に行われている。その固定法としては、スパッタリング法やスラリー法やゾルゲル法(特許文献1参照)が知られている。
【0004】
一方、二酸化チタンを光触媒皮膜として使用する場合には、取扱いは便利となるが、二酸化チタンの、光に反応する表面積(以下、「反応表面積」と称する)が、二酸化チタンを粒子のままで使用する場合に比して、減少してしまい、それ故、光触媒能が低くなる。

【特許文献1】特開2004-154779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラリー法やゾルゲル法では、二酸化チタンと基板との密着性が不十分であり、溶液の管理が困難であり、高コストである等の、問題があった。そこで、二酸化チタンを密着性良く且つ簡単に基板に固定できる方法が、望まれている。
【0006】
また、二酸化チタンを基板に固定して光触媒皮膜として使用する場合であっても、基板の単位面積当たりの二酸化チタンの反応表面積を増大させて光触媒能を向上させることが、望まれている。
【0007】
本発明は、基板の単位面積当たりの二酸化チタンの反応表面積が大きいために高い光触媒能を発揮できる光触媒皮膜を、密着性良く且つ簡単に基板に形成することができる、光触媒皮膜の製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光触媒皮膜の製造方法は、次の構成(i)~(iii)の光触媒皮膜を得ることができるものである。
(i)多孔性の陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に形成された、光触媒能を有する二酸化チタン、からなることを特徴とする光触媒皮膜である。しかも、二酸化チタンが、金属単体を担持しているものである。金属単体としては、例えば、白金、金、パラジウム、ルテニウム、銀、スズ、マンガン、銅、コバルト、ニッケルがある。
【0012】
(ii)上記(i)において、陽極酸化皮膜が、アルミニウム、マグネシウム、チタン、又は各々の合金を、陽極酸化処理することによって、形成されたものである。
【0014】
(iii)上記(i)において、金属単体が、白金、金、パラジウム、ルテニウム、銀、スズ、マンガン、銅、コバルト、又はニッケルであるものである。
【0015】
請求項1記載の発明は、多孔性の陽極酸化皮膜を、チタニル酸塩と、チタニルと陽イオン錯体を形成する錯化剤と、を含む混合浴中で、電解処理して、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンを析出させて二酸化チタン皮膜を形成する、チタニル電解処理工程と、二酸化チタン皮膜を、焼成して、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜に変化させる、焼成処理工程と、を有し、更に、上記チタニル電解処理工程の前に、多孔性の陽極酸化皮膜を、金属塩の浴中で、電解処理して、陽極酸化皮膜の孔中に、金属単体を析出させる、金属電解処理工程、を有しており、上記焼成処理工程が、更に、熱拡散によって、金属単体を二酸化チタンに担持させるものである、ことを特徴とする光触媒皮膜の製造方法である。
【0019】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、陽極酸化皮膜として、アルミニウム、マグネシウム、チタン、又は各々の合金を、陽極酸化処理することによって、形成されたものを、用いるものである。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、チタニル酸塩として、硫酸チタニルを用いるものである。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1~3のいずれか一つに記載の発明において、錯化剤として、シュウ酸を用いるものである。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項1~4のいずれか一つに記載の発明において、金属塩として、白金、金、パラジウム、ルテニウム、銀、スズ、マンガン、銅、コバルト、又はニッケルの、塩を用いるものである。
【発明の効果】
【0024】
上記構成(i)によれば、光触媒皮膜が陽極酸化皮膜の表面だけでなく孔内面にも形成されているので、基板の単位面積当たりの、光触媒皮膜の面積すなわち二酸化チタンの反応表面積が非常に大きく、したがって、高い光触媒能を発揮できる。
【0026】
しかも、二酸化チタンが金属単体を担持しているので、可視光を吸収して低い光エネルギーで励起電子を発生させ、しかも、その励起電子の再結合を抑制でき、したがって、更に高い光触媒能を発揮できる。
【0028】
上記構成(ii)によれば、種々の陽極酸化皮膜を利用できるので、光触媒皮膜の用途範囲を拡大できる。
【0030】
上記構成(iii)によれば、上記構成(i)の光触媒皮膜を確実に実現できる。
【0031】
請求項1記載の発明では、チタニル電解処理工程において、チタニル錯体が生成して、それが陽極酸化皮膜の表面に付着するとともに孔内に入って孔内面にも付着し、二酸化チタンが析出し、これにより、二酸化チタン皮膜が陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に形成される。そして、焼成処理工程において、二酸化チタンの結晶構造がアナタース型に変化し、これにより、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、光触媒皮膜が得られる。
【0033】
しかも、金属電解処理工程において、陽極酸化皮膜の孔中に金属単体又は金属化合物のコロイド粒子が析出する。そして、焼成処理工程において、熱拡散によって、金属単体が二酸化チタンに担持される。したがって、請求項記載の発明によれば、上記構成(i)の光触媒皮膜を密着性良く且つ簡単に基板に形成することができる。
【0035】
請求項記載の発明によれば、上記構成(ii)の光触媒皮膜を得ることができる。
【0036】
請求項記載の発明によれば、硫酸チタニルが比較的安価な材料であるので、上記構成(iの光触媒皮膜を安価に得ることができる。
【0037】
請求項記載の発明によれば、2価の陰イオンの錯体を安定して生成させることができ、したがって、チタニル電解処理工程を安定して実施することができる。例えば、チタニル酸塩として硫酸チタニルを用い、錯化剤としてシュウ酸を用いた場合には、硫酸チタニルとシュウ酸とが2:1のモル比で反応して、[(TiO)2+の陽イオン錯体が生成する。
【0039】
請求項記載の発明によれば、上記構成(i)の光触媒皮膜を種々得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
基本形態)
基本形態の光触媒皮膜は、次の工程(A)、(B)、及び(C)を経て形成される。
【0041】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
(a)前処理工程
純アルミニウム材からなる基板を、まず、希アルカリによって脱脂処理及びエッチング処理し、そして、希酸によってデスマット処理する。
【0042】
(b)陽極酸化処理工程
前処理された基板を、硫酸の浴中で、対極として白金板又はチタン板を用いて、電解処理する。これにより、基板表面に、多孔性の陽極酸化皮膜が形成される。
【0043】
より具体的には、硫酸濃度は1.5mol/l、電解処理は直流定電流電解処理又は交流定電圧電解処理又は交直重畳電解処理、電流密度は1~2A/dm、浴温度は0~25℃、電解時間は30~60分である。これにより、形成される陽極酸化皮膜の膜厚は10~30μmであった。なお、浴は、硫酸、シュウ酸、リン酸、ギ酸、クロム酸の、単独浴又は混合浴でもよい。また、硫酸と硫酸アルミニウムとの混合浴でもよく、具体的には、硫酸濃度は1.5mol/l、硫酸アルミニウム濃度は0.05mol/lである。
【0044】
(B)チタニル電解処理工程
陽極酸化皮膜を、硫酸チタニルとシュウ酸との混合浴中で、対極として白金板を用いて、電解処理する。これにより、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンからなる皮膜が形成される。
【0045】
より具体的には、硫酸チタニル濃度は0.01~0.1mol/l、シュウ酸濃度は0.1~0.5mol/l、浴pHは4~6、浴温度は0~25℃、電解時間は1~10分、電解処理は直流電解処理又は交流電解処理又は交直ハイブリッド電解処理である。直流電解処理又は交流電解処理の場合、電圧は5~30V、電解時間は1~10分であり、交直ハイブリッド電解処理の場合、基底電圧は5~10V、振幅は5~20V、周波数は1~10kHz、電解時間は1~10分である。
【0046】
(C)焼成処理工程
二酸化チタン皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、焼成する。これにより、二酸化チタンが、アナタース型結晶構造を有する二酸化チタンに変化し、したがって、二酸化チタン皮膜が、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜となる。焼成温度は、0~500℃、好ましくは350~500℃、より好ましくは450℃である。
【0047】
上記工程(A)、(B)、及び(C)を経て得られる本基本形態の光触媒皮膜は、陽極酸化皮膜の表面だけでなく孔内面にも形成されているので、非常に大きな表面積を有している。すなわち、基板の単位面積当たりの、本基本形態の光触媒皮膜の面積すなわち二酸化チタンの反応表面積は、非常に大きい。したがって、本基本形態の光触媒皮膜は、高い光触媒能を有している。すなわち、本基本形態の光触媒皮膜によれば、高い光触媒能を発揮できる。また、吸収端の波長が短い方へシフトするので、この点からも高い光触媒能を発揮できる。
【0048】
また、本基本形態の製造方法は、通常の前処理及び陽極酸化処理に加えて、チタニル電解処理及び焼成処理を行うだけであるので、極めて簡単に実施することができる。すなわち、本基本形態の製造方法によれば、光触媒皮膜を極めて簡単に基板に形成することができる。
【0049】
しかも、本基本形態の製造方法は、電解処理によって、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンを析出させているので、二酸化チタンと陽極酸化皮膜との密着性が良好である。したがって、本基本形態の製造方法によれば、光触媒皮膜を密着性良く基板に形成することができる。
【0050】
第1参考形態)
参考形態の光触媒皮膜は、次の工程(A)、(B)、(C)、及び(D)を経て形成される。
【0051】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
基本形態と同様に処理する。
【0052】
(B)チタニル電解処理工程
基本形態と同様に処理する。
【0053】
(C)焼成処理工程
基本形態と同様に処理する。
【0054】
(D)酸化物担持処理工程
光触媒皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、過マンガン酸塩の水溶液中にて、光照射に晒す。これにより、マンガンが光還元されて、二酸化マンガンが光触媒皮膜の二酸化チタンに担持される。
【0055】
より具体的には、過マンガン酸塩は、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムであり、好ましくは、過マンガン酸カリウムである。過マンガン酸塩水溶液の濃度は、1×10-4~2mol/l、好ましくは、0.001~0.1mol/lである。何故なら、1×10-4mol/l未満の場合には、マンガンの還元速度すなわち反応速度が遅く、2mol/lを越える場合には、反応速度が速すぎ、いずれの場合も、二酸化マンガンの担持量を制御するのが困難だからである。過マンガン酸塩水溶液の温度は、0~95℃、好ましくは、20~55℃である。何故なら、0℃未満の場合には、反応速度が遅く、95℃を越える場合には、反応速度が速すぎ、いずれの場合も、二酸化マンガンの担持量を制御するのが困難だからである。光照射における光の波長は、220~400nm、好ましくは、250~380nmである。何故なら、220nm未満の場合には、空気中の酸素が光エネルギーを吸収してしまい、400nmを越える場合には、二酸化マンガンが二酸化チタン上に担持されないからである。光照射の時間は、1~7200分、好ましくは、30~120分である。1分未満の場合には、二酸化マンガンの担持量が少なく、7200分を越える場合には、二酸化マンガンが二酸化チタンの全面を覆って光を吸収してしまい、いずれの場合も、高い光触媒能を発揮できないからである。
【0056】
上記工程(A)、(B)、(C)、及び(D)を経て得られる本参考形態の光触媒皮膜は、基本形態と同様に、陽極酸化皮膜の表面だけでなく孔内面にも形成されているので、非常に大きな反応表面積を有している。したがって、本参考形態の光触媒皮膜によれば、基本形態と同様に、高い光触媒能を発揮できる。
【0057】
しかも、本参考形態の光触媒皮膜は、二酸化チタンが二酸化マンガンを担持しているので、得られた皮膜は灰色を呈し、可視光を吸収して低い光エネルギーで励起電子を発生させ、しかも、その励起電子の再結合を抑制でき、したがって、基本形態の光触媒皮膜に比して、高い光触媒能を発揮できる。
【0058】
また、本参考形態の製造方法は、通常の前処理及び陽極酸化処理に加えて、チタニル電解処理、焼成処理、及び酸化物担持処理を行うだけであるので、極めて簡単に実施することができる。すなわち、本参考形態の製造方法によれば、光触媒皮膜を極めて簡単に基板に形成することができる。
【0059】
しかも、本参考形態の製造方法は、電解処理によって、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンを析出させているので、基本形態と同様に、光触媒皮膜を密着性良く基板に形成することができる。
【0060】
第1実施形態)
本実施形態の光触媒皮膜は、次の工程(A)、(E)、(B)、及び(C)を経て形成される。
【0061】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
基本形態と同様に処理する。
【0062】
(E)金属電解処理工程
陽極酸化皮膜を、金属塩の水溶液中で、対極として白金板を用いて、電解処理する。これにより、陽極酸化皮膜の孔中に、金属単体又は金属化合物のコロイド粒子が析出する。
【0063】
より具体的には、金属塩は、白金、金、パラジウム、ルテニウム、銀、スズ、マンガン、銅、コバルト、又はニッケルの、塩化物、硫化物等である。金属塩水溶液の濃度は0.001~0.01mol/l、水溶液pHは1~9、水溶液温度は0~25℃、電解時間は1~15分、電解処理は直流電解処理又は交流電解処理又は交直ハイブリッド電解処理である。直流電解処理又は交流電解処理の場合、電圧は5~30V、電解時間は1~10分であり、交直ハイブリッド電解処理の場合、基底電圧は5~10V、振幅は5~20V、周波数は1~10kHz、電解時間は1~10分である。
【0064】
(B)チタニル電解処理工程
金属単体が析出した陽極酸化皮膜を、基本形態と同様に、電解処理する。これにより、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンからなる皮膜が形成される。
【0065】
(C)焼成処理工程
金属単体が析出し且つ二酸化チタン皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、焼成する。これにより、二酸化チタンが、アナタース型結晶構造を有する二酸化チタンに変化し、したがって、二酸化チタン皮膜が、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜となり、また、熱拡散によって、金属単体が二酸化チタンに担持される。焼成温度は、0~500℃、好ましくは350~500℃、より好ましくは450℃である。
【0066】
上記工程(A)、(E)、(B)、及び(C)を経て得られる本実施形態の光触媒皮膜は、基本形態と同様に、陽極酸化皮膜の表面だけでなく孔内面にも形成されているので、非常に大きな反応表面積を有している。したがって、本実施形態の光触媒皮膜によれば、基本形態と同様に、高い光触媒能を発揮できる。
【0067】
しかも、本実施形態の光触媒皮膜は、二酸化チタンが金属単体を担持しているので、可視光を吸収して低い光エネルギーで励起電子を発生させ、しかも、その励起電子の再結合を抑制でき、したがって、基本形態の光触媒皮膜に比して、高い光触媒能を発揮できる。
【0068】
また、本実施形態の製造方法は、通常の前処理及び陽極酸化処理に加えて、金属電解処理、チタニル電解処理、及び焼成処理を行うだけであるので、極めて簡単に実施することができる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、光触媒皮膜を極めて簡単に基板に形成することができる。
【0069】
しかも、本実施形態の製造方法は、電解処理によって、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンを析出させているので、基本形態と同様に、光触媒皮膜を密着性良く基板に形成することができる。
【0070】
第2参考形態)
参考形態の光触媒皮膜は、次の工程(A)、(B)、(C)、及び(F)を経て形成される。
【0071】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
基本形態と同様に処理する。
【0072】
(B)チタニル電解処理工程
基本形態と同様に処理する。
【0073】
(C)焼成処理工程
基本形態と同様に処理する。
【0074】
(F)酸化物・金属担持処理工程
光触媒皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、過マンガン酸塩及び金属塩の水溶液中にて、光照射に晒す。これにより、マンガン及び金属が光還元されて、二酸化マンガン及び金属が光触媒皮膜の二酸化チタンに担持される。
【0075】
より具体的には、過マンガン酸塩の種類は、第1参考形態と同じであり、金属塩の種類は、第1実施形態と同じであり、光照射の条件は、第1参考形態の酸化物担持処理工程と同じである。
【0076】
上記工程(A)、(B)、(C)、及び(F)を経て得られた本参考形態の光触媒皮膜は、基本形態と同様に、陽極酸化皮膜の表面だけでなく孔内面にも形成されているので、非常に大きな反応表面積を有している。したがって、本参考形態の光触媒皮膜によれば、基本形態と同様に、高い光触媒能を発揮できる。
【0077】
しかも、本参考形態の光触媒皮膜は、二酸化チタンが二酸化マンガン及び金属単体を担持しているので、基本形態の光触媒皮膜に比して、高い光触媒能を発揮できる。
【0078】
また、本参考形態の製造方法は、通常の前処理及び陽極酸化処理に加えて、チタニル電解処理、焼成処理、及び酸化物・金属担持処理を行うだけであるので、極めて簡単に実施することができる。すなわち、本参考形態の製造方法によれば、光触媒皮膜を極めて簡単に基板に形成することができる。
【0079】
しかも、本参考形態の製造方法は、電解処理によって、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンを析出させているので、基本形態と同様に、光触媒皮膜を密着性良く基板に形成することができる。
【実施例】
【0080】
基本例)
基本形態に該当する例である。
【0081】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
(a)前処理工程
純アルミニウム材からなる基板を、まず、10%水酸化ナトリウム水溶液によって脱脂処理及びエッチング処理し、そして、10%硝酸によってデスマット処理した。
【0082】
(b)陽極酸化処理工程
前処理された基板を、1.5mol/l硫酸の浴中で、対極として白金板を用いて、電解処理した。電解処理は直流定電流電解処理、電流密度は2A/dm、浴温度は10℃、電解時間は30分とした。これにより、図1の(a)に示すように、基板1表面に、多数の孔21を有する、すなわち、多孔性の、陽極酸化皮膜2が形成された。陽極酸化皮膜2の膜厚は50μm、孔21の径(L1)は10nm、孔21の深さ(L2)は50μmであった。
【0083】
(B)チタニル電解処理工程
陽極酸化皮膜を、0.02mol/l硫酸チタニルと0.3mol/lシュウ酸との混合浴中で、対極として白金板を用いて、電解処理した。浴は、28%NHOHによってpH5に調整した。浴温度は10℃、電解時間は5分、電解処理は交流電解処理、電圧は9Vとした。これにより、図1の(b)に示すように、陽極酸化皮膜2の表面及び孔21の内面に、二酸化チタンからなる皮膜3が形成された。
【0084】
(C)焼成処理工程
二酸化チタン皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、450℃で焼成した。これにより、二酸化チタンが、アナタース型結晶構造を有する二酸化チタンに変化し、したがって、二酸化チタン皮膜が、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜となった。すなわち、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、光触媒皮膜3を得た。
【0085】
[光触媒皮膜の同定]
X線光電子分光法により、基本例の光触媒皮膜の二酸化チタンの結合エネルギーを調べた。その結果を図2に示す。図2は、二酸化チタンがアナタース型結晶構造を有していることを示している。したがって、基本例の光触媒皮膜は、光触媒能を有する二酸化チタンからできている。
【0086】
[光触媒皮膜の形成状態]
基本例の光触媒皮膜の深さ方向分析をSIMSによって行った。なお、分析試料としては膜厚4μmの陽極酸化皮膜を用い、深さ方向で4μmまで分析した。その結果を図3に示す。図3において、a1はチタンの同位体の一方である48Ti、a2はチタンの同位体の他方である46Tiを示す。図3からわかるように、いずれのTiも分析試料の孔の全深さに存在している。したがって、光触媒皮膜は、陽極酸化皮膜の表面だけでなく孔内面にも形成されている。
【0087】
[光触媒皮膜の反応表面積]
陽極酸化皮膜1g当たり、10m以上であった。
【0088】
[光触媒能の評価]
基本例の光触媒皮膜の光触媒能を、次のようにして評価した。すなわち、所定濃度のメチレンブルー水溶液中に光触媒皮膜を浸漬し、光触媒皮膜に紫外光を照射して、メチレンブルーの吸光度及び濃度の変化を30分毎に調べた。その結果を図4の(a)及び(b)に示す。(a)は吸光度の経時変化、(b)は濃度の経時変化を示す。(a)において、b1、b2、b3、b4は、それぞれ、光照射時間が0分、30分、60分、90分の場合の、メチレンブルーの特定波長の吸光度を示し、(b)において、c1はブランクの場合、c2は基本例の光触媒皮膜の場合を示している。図4からわかるように、メチレンブルーは極めて短時間で分解されている。したがって、基本例の光触媒皮膜の光触媒能は、極めて高い。
【0089】
[光触媒皮膜の吸収端]
紫外・可視吸収スペクトルを調べて、基本例の光触媒皮膜の吸収端を求めた。その結果を図5に示す。図5において、d1は基本例の光触媒皮膜の吸収スペクトル、d2はアナタース型結晶構造を有する市販の二酸化チタン粉末の吸収スペクトル、d3は陽極酸化皮膜の吸収スペクトルである。図5からわかるように、基本例の光触媒皮膜の吸収端は350nm、市販の二酸化チタン粉末の吸収端は388nm、陽極酸化皮膜の吸収端は280nmであった。また、基本例の光触媒皮膜の吸収領域は、市販の二酸化チタン粉末の吸収領域から、矢印Sだけ短波長側へシフトしている。これは、所謂、「量子サイズ効果」と称する。したがって、この点からも、基本例の光触媒皮膜の光触媒能は、極めて高い。
【0090】
第1参考例)
第1参考形態に該当する実施例である。
【0091】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
(a)前処理工程
基本例と同様に処理した。
【0092】
(b)陽極酸化処理工程
前処理された基板を、1.5mol/l硫酸と0.015mol/l硫酸アルミニウムとの混合浴中で、対極として白金板を用いて、電解処理した。電解処理は直流定電流電解処理、電流密度は2A/dm、浴温度は10℃、電解時間は30分とした。これにより、基板表面に、多孔性の陽極酸化皮膜が形成された。
【0093】
(B)チタニル電解処理工程
基本例と同様に処理した。これにより、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンからなる皮膜が形成された。
【0094】
(C)焼成処理工程
基本例と同様に処理した。これにより、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、光触媒皮膜を得た。
【0095】
(D)酸化物担持処理工程
光触媒皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、0.01mol/l過マンガン酸カリウムの水溶液中にて、光照射に晒した。水溶液の温度は25℃とした。照射する光の波長は220~400nmとした。照射時間は30分とした。これにより、二酸化マンガンが光触媒皮膜の二酸化チタンに担持された。
【0096】
第1実施例)
第1実施形態に該当する実施例である。
【0097】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
(a)前処理工程
基本例と同様に処理した。
【0098】
(b)陽極酸化処理工程
第1参考例と同様に処理した。これにより、基板表面に、多孔性の陽極酸化皮膜が形成された。
【0099】
(E)金属電解処理工程
陽極酸化皮膜を、0.001mol/l塩化白金酸水溶液中で、対極として白金板を用いて、電解処理した。水溶液pHは2、水溶液温度は10℃、電解処理は直流定電流電解処理、電圧は9V、電解時間は5分とした。これにより、陽極酸化皮膜の孔中に、白金が析出した。
【0100】
次いで、陽極酸化皮膜を、0.005mol/l塩化スズ水溶液中で、対極として白金板を用いて、電解処理した。水溶液pHは2、水溶液温度は10℃、電解処理は直流定電流電解処理、電圧は9V、電解時間は5分とした。これにより、陽極酸化皮膜の孔中に、スズが析出した。
【0101】
(B)チタニル電解処理工程
白金及びスズが析出した陽極酸化皮膜を、基本例と同様に処理した。これにより、陽極酸化皮膜の表面及び孔内面に、二酸化チタンからなる皮膜が形成された。
【0102】
(C)焼成処理工程
白金及びスズが析出し且つ二酸化チタン皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、基本例と同様に処理した。これにより、二酸化チタン皮膜が、光触媒能を有する二酸化チタンからなる光触媒皮膜となり、また、熱拡散によって、白金及びスズが二酸化チタンに担持された。したがって、二酸化チタンが白金及びスズを担持してなる光触媒皮膜が得られた。
【0103】
第2参考例)
第2参考形態に該当する実施例である。
【0104】
(A)陽極酸化皮膜の形成工程
(a)前処理工程
基本例と同様に処理した。
【0105】
(b)陽極酸化処理工程
第1参考例と同様に処理した。これにより、基板表面に、多孔性の陽極酸化皮膜が形成された。
【0106】
(B)チタニル電解処理工程
基本例と同様に処理した。
【0107】
(C)焼成処理工程
基本例と同様に処理した。
【0108】
(F)酸化物・金属担持処理工程
光触媒皮膜が形成された陽極酸化皮膜を、0.01mol/l過マンガン酸カリウム及び0.01mol/l塩化白金酸の水溶液中にて、光照射に晒した。水溶液の温度は25℃とした。照射する光の波長は220~400nmとした。照射時間は30分とした。これにより、二酸化マンガン及び白金が光触媒皮膜の二酸化チタンに担持された。すなわち、二酸化チタンが二酸化マンガン及び白金を担持してなる光触媒皮膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、基板の単位面積当たりの二酸化チタンの反応表面積が大きいために高い光触媒能を発揮できる光触媒皮膜を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の基本例で得られた(a)陽極酸化皮膜及び(b)二酸化チタン皮膜を示す断面図である。
【図2】基本例の光触媒皮膜をX線光電子分光法によって調べた結果を示す図である。
【図3】基本例の光触媒皮膜をSIMSによって深さ方向分析した結果を示す図である。
【図4】基本例の光触媒皮膜の光触媒能を調べた結果を示す図である。
【図5】基本例の光触媒皮膜の紫外・可視吸収スペクトルを調べた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1 基板 2 陽極酸化皮膜 21 孔 3 二酸化チタン皮膜(光触媒皮膜)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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