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明細書 :新規動原体タンパク質シュゴシン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4287857号 (P4287857)
登録日 平成21年4月3日(2009.4.3)
発行日 平成21年7月1日(2009.7.1)
発明の名称または考案の名称 新規動原体タンパク質シュゴシン
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  14/395       (2006.01)
C07K  14/415       (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C07K  16/14        (2006.01)
C07K  16/16        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/47
C07K 14/395
C07K 14/415
C07K 19/00
C07K 16/18
C07K 16/14
C07K 16/16
C12P 21/08
請求項の数または発明の数 27
全頁数 28
出願番号 特願2005-515905 (P2005-515905)
出願日 平成16年11月24日(2004.11.24)
国際出願番号 PCT/JP2004/017428
国際公開番号 WO2005/054471
国際公開日 平成17年6月16日(2005.6.16)
優先権出願番号 2003401943
2004279450
優先日 平成15年12月1日(2003.12.1)
平成16年9月27日(2004.9.27)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成17年12月27日(2005.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】渡辺 嘉典
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 The EMBO Journal,2003年10月,Vol.22, No.20,p.5643-5653
Molecular and Cellular Biology,2003年 6月,Vol.23, No.11,p.3965-3973
Science,2003年 5月,Vol.300,p.1152-1155
調査した分野 C12N1/00-15/90
C07K1/00-19/00
C12P1/00-41/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
Pubmed
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質
【請求項2】
配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNA。
【請求項3】
配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
請求項2記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項5】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項6】
配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質。
【請求項7】
以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質
【請求項8】
配列番号3に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNA。
【請求項9】
配列番号3に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項10】
請求項8記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項11】
配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項12】
配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質。
【請求項13】
以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質
【請求項14】
配列番号5に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNA。
【請求項15】
配列番号5に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項16】
請求項14記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項17】
配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項18】
配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質。
【請求項19】
以下の(a)又は(b)の染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
【請求項20】
配列番号7,9,11,13,15,17又は19に示される塩基配列又はその相補的配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項21】
配列番号7,9,11,13,15,17又は19に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項22】
請求項7,9,13,15,19,20又は21記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項23】
配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質。
【請求項24】
配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質。
【請求項25】
請求項5,6,11,12,23又は24記載のタンパク質と、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質。
【請求項26】
請求項5,6,11,12,23又は24記載のタンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項27】
抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項26記載の抗体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分裂酵母シゾザッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)に由来するRec8コヒ-シンのプロテクタータンパク質Sgo1(シュゴシン)や、染色体分配制御活性を有するそのホモログやパラログ、並びにそれらをコードするDNAに関する。
【背景技術】
【0002】
真核生物においては、細胞周期がS期の間に姉妹染色分体の接着が確立され、G2期全体を通してM期まで保持される。有糸分裂の間、この接着は染色体の全長に沿って破壊され、姉妹染色分体が細胞の反対側へ分配することを可能にし(均等分裂)、各娘細胞が各染色体のコピ-を1つ受け取ることを確実にしている。対照的に、減数分裂は1回のDNA複製に続く2回の染色体分離からなり、それによって1個のディプロイド生殖細胞から4個のハプロイド配偶子が形成される。減数第一分裂の間、相同染色体(ホモログ)は再結合するためにペアになり、一方のホモログから生成される姉妹染色分体が、他方のホモログから生成される姉妹染色分体に共有結合的に接着する、キアズマを形成する。したがって、ホモログが減数第一分裂で分離するためには、姉妹染色分体の接着は染色体腕部に沿って解離され、キアズマを解離しなくてはならない。しかし、姉妹染色分体の接着は減数第二分裂までセントロメアで保持され、有糸分裂で行うのと同様に姉妹染色分体が分離する場合に、残留した動原体性の接着を利用する。それ故、減数分裂では姉妹染色分体の接着が2段階で解離されることが必要とされる。しかし、減数第一分裂の間のみ、及びセントロメアにおいてのみ、動原体性の接着を保護するための分子機構は、未だ解決されていない(例えば、Annu Rev Genet 35,673-745(2001)参照)。
【0003】
姉妹染色分体の接着の分子的特性と、分裂後期の開始時において姉妹染色分体の接着を解離する機構とに関する重要な手掛かりがある(例えば、Annu Rev Genet 35,673-745(2001)、Curr Opin Cell Biol 12,297-301(2000)、Curr Biol 13,R104-14(2003)、Annu Rev Cell Dev Biol 17,753-77(2001)、Genes Dev 16,399-414(2002)参照)。様々な真核生物において、姉妹染色分体の接着は、Scc1(分裂酵母シゾザッカロミセス・ポンベのRad21)を含む多サブユニットコヒ-シン複合体に依存している。分裂後期促進複合体(APC)依存性のセキュリンの分解、Cut2/Pds1によって、Cut1/Esp1エンドペプチタ-ゼ(セパラーゼ)を解離することが可能となり、順にRad21/Scc1を切断し、姉妹染色分体の接着を解離する。減数分裂の間、コヒ-シンサブユニットRad21/Scc1は減数分裂における対応物であるRec8によって置換される(例えば、Cell 98,91-103(1999)、Mol.Cell.Biol.19,3515-3528(1999)、Nature 400,461-4(1999)、Genes Dev 15,1349-60(2001)、J Cell Biol 160,657-70(2003)参照)。Rec8複合体は減数第一分裂後にセントロメアにのみ存在し、Rec8を枯渇させることによって動原体性の接着が破壊されることから、セントロメアにおけるRec8の存在によって、減数第一分裂全体を通して、接着の持続性が与えられると考えられてきた(例えば、Nat Cell Biol 1,E125-7(1999)参照)。染色体の腕部に沿ったRec8は第一分裂後期にセパラーゼによって切断されるが、動原体性Rec8は特異的に第二分裂中期まで保護されることが、いくつかの証拠により示されている(例えば、Cell 103,387-98(2000)、Embo J 22,5643-53(2003)参照)。出芽酵母SPO13は動原体性Rec8の保護に関係しているが(例えば、Genes Dev 16,1659-71(2002)、Genes Dev 16,1672-81(2002)参照)、SPO13は動原体性ではなく、間接的に機能すると考えられる。ショウジョウバエMEI-S332はセントロメアに存在するタンパク質であり、減数第一分裂の間に動原体性の接着が持続するために必要であり、且つ減数分裂における動原体性の接着のプロテクター候補としての特性を有するが、このような保護の詳細については今のところ解明されていない(例えば、Annu Rev Cell Dev Biol 17,753-77(2001)、Cell 83,247-256(1995)参照)。いくつかの生命体においてゲノムシーケンスプロジェクトが完成したにもかかわらず、これらのタンパク質のホモログは出現していないため、保護に関する一般的な見解を形成することができない。同時に、分裂酵母の研究は、動原体性Rec8複合体をリクルートし、減数第一分裂中に動原体性の接着を確実にする、動原体周囲のヘテロクロマチンの重要性に焦点を当てている(例えば、Science 300,1152-5(2003)参照)。しかし、減数第一分裂において、動原体周囲のヘテロクロマチンだけでは、減数第二分裂に対して、Rec8の特異的な保護を与えることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒトを含めたほとんどの真核生物は、ゲノムの混合を伴う進化的に優れた有性生殖によって子孫を増やしている。染色体を半数にする減数分裂は、有性生殖機構の中核をなす。体細胞分裂では、姉妹染色分体の二つの動原体は反対極から伸びたスピンドル微小管によってとらえられ、腕部と動原体の接着が同時に解除されることにより姉妹染色分体が両極に均等に分配される(均等分裂)。これに対し減数第一分裂では、姉妹染色分体の動原体は同一極から伸びたスピンドル微小管によってとらえられ、動原体の接着が保持されたまま同一極へ分配される(還元分裂)。続く減数第二分裂ではじめて姉妹染色分体の動原体部分の接着が解除されてそれぞれ二極に分かれ、結果として四つのハプロイドの配偶子が正確に作られる。減数分裂特有の還元分裂は、酵母からヒトにいたるほとんどの真核生物に保存された染色体分配様式であるが、その分子レベルの制御機構は長い間謎であった。本発明者は、分裂酵母を用いて、減数分裂特有の染色体接着因子コヒーシンが、この制御において本質的な役割を果たしていることを示してきた(Nature 400,461-4(1999)、Science 300,1152-5(2003)及びNature 409,359-363(2001))。本発明の課題は、コヒーシンと協調して減数第一分裂における姉妹動原体の同一方向性及び接着の維持を保証する因子として、分裂酵母シゾザッカロミセス・ポンベに由来する減数分裂特異的な新規動原体タンパク質Sgo1(シュゴシン)や、染色体分配制御活性を有するそのホモログやパラログ、並びにそれらをコードするDNAを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
減数分裂には、ハプロイド配偶子を生成する2段階の特殊な核分裂が含まれている。これを達成するために、姉妹染色分体の接着は、初めに第一分裂後期に染色体腕部から、次に第二分裂後期にセントロメアから、段階的な方法で解離されなければならない。特に、減数第一分裂において動原体性の接着を保護する因子については、これまで解明されないままであった。本発明者らは、分裂後期にRec8を保護するタンパク質を解明するために、Rec8と共発現する場合、有糸分裂の成長を抑制し、分裂後期における姉妹染色分体の分離を妨げる遺伝子を、分裂酵母遺伝子中にスクリ-ニングした。このアプロ-チにより、分裂酵母におけるRec8コヒ-シンのプロテクターである、第一分裂後期において動原体性のRec8を分解から保護(守護)する減数分裂特異タンパク質を見い出し、Sgo1(シュゴシン;守護神に由来)と命名した。そして、有糸分裂の染色体分離において、シュゴシンが重要な役割を果たすことも見い出した。続いて、出芽酵母のSgo1ホモログ及び分裂酵母の有糸分裂パラログSgo2を見い出した。Sgo1とショウジョウバエMEI-S332との間のマージナルな類似性を同定し、他の真核生物におけるSgo1ホモログも見い出した。また、配列から予測した動物細胞のシュゴシン類似タンパク質が、機能的にも酵母のシュゴシンと保存性があることも見い出した。本発明はこれら知見に基づき完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち本発明は、(1)(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質又は(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(2)配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNAや、(3)配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(4)前記(2)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(5)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質や、(6)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質に関する。
【0007】
また本発明は、(7)(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質又は(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(8)配列番号3に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNAや、(9)配列番号3に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(10)前記(4)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(11)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質や、(12)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質に関する。
【0008】
本発明はまた、(13)(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質又は(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(14)配列番号5に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNAや、(15)配列番号5に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(16)前記(6)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(17)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質や、(18)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質に関する。
【0009】
本発明はまた、(19)(a)配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質又は(b)配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(20)配列番号7,9,11,13,15,17又は19に示される塩基配列又はその相補的配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(21)配列番号7,9,11,13,15,17又は19に示される塩基配列又はその相補的配列の全部を含み、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(22)前記(7),(9),(13),(15),(19),(20)又は(21)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、(23)配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質や、(24)配列番号8,10,12,14,16,18又は20に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質に関する。

【0010】
さらに本発明は、(25)前記(5),(6),(11),(12),(23)又は(24)記載のタンパク質と、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質や、(26)前記(5),(6),(11),(12),(23)又は(24)記載のタンパク質に特異的に結合する抗体や、(27)抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項26記載の抗体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のSgo1とRec8との共発現によって、姉妹染色分体は有糸分裂中に分離しないことを示す図である。a.内因性プロモータ(rad21+又はrec8+のための構成性染色質プロモータ、及びSgo1+のためのチアミン抑制プロモータPnmt1)によって示された遺伝子を発現するcen2-GFP株を、チアミン枯渇プレート上にストリークした。b.チアミン枯渇の後、30℃で15時間培養された、Padh1-rec8+Pnmt1-sgo1+細胞の標本。中核結合細胞においてcen2-GFPの不分離(アスタリスク)が認められる。c.cen2-GFPの不分離をカウントした(n>100)。d.Padh1-rec8+-GFP株を、Pnmt1-sgo1+を用いて、又は用いずに(b)と同様に培養した。間期及び分裂後期における細胞の標本を示す。
【図2】切断不可能なRec8の発現によって、有糸分裂において姉妹染色分体の分離が生じることを示す図である。プラスミドpREP41-rec8-RDRD(切断不可能なRec8(Embo J 22,5643-53(2003))を発現する)は、cen2-GFP細胞株(+Rec8-RDRD)の染色体に取り込まれ、細胞をチアミン存在下又は非存在下でプレートにストリークした。コントロールとして、宿主系細胞(-Rec8-RDRD)を同様に培養した。Rec8-RDRDがチアミンを含まないプレートでのみ発現することに留意。チアミン枯渇の後、培養液中30℃で15時間培養された細胞の標本。
【図3】本発明のSgo1はRec8を保護するために必要とされ、それによって減数第一分裂後期にセントロメアにおいて接着が起こることを示す図である。a.cen2-GFPでマークされたホモログの1つについて、野生型及びsgo1Δ細胞における減数分裂中の分離を観察した(n>170)。cen2-GFP正常の分離パタ-ンが図示されている(左)。sgo1Δ細胞の標本が示されている(右)。b.減数第一分裂(mes1Δ抑止)後の姉妹cen2-GFPドットの分離が、sgo1Δ細胞で明らかである。c.第一分裂後期の後期(n>30)、及び第二分裂前中期(n>100)に示された細胞で、Rec8-GFPシグナルを観察し、細胞が示す動原体性Rec8-GFPの頻度をカウントした。CFP-Atb2(α-2チューブリン)を発現させることにより、スピンドルを可視化した(Curr Biol 11,836-45(2001))。d.抗GFP抗体を用いたChIPアッセイを使用して、減数第一分裂(mei4Δ抑止)の前に、抑止された細胞で指示された染色体のサイト全体におけるRec8-GFPレベルを測定した。下のパネルはシゾサッカロミセス・ポンベ染色体1が模式的に示されており、プライマー(cnt、imr,dg,dh,lys1,mes1)を使用した。
【図4】本発明のSgo1は、減数第一分裂中に、動原体周囲領域に局在することを示す図である。a.ディプロイドpat1-114/pat1-114細胞株(Embo J 22,5643-53(2003))の同調的減数分裂をサンプリングし、減数核分裂をDAP1染色によってモニターし、抗Sgo1抗体を用いたウエスタンブロット法により、Sgo1のタンパク質レベルを検出した。b.減数細胞内の指示されたステ-ジにおいて、Sgo1(緑色)はチューブリン(赤色)及びDAP1(4’6’-diamidino-2-phenylindole)(青色)で対比染色した。c.mis6+-CFPを共発現するsgo1+-GFP細胞を蛍光顕微鏡下で調べた。Sgo1-GFP(緑色)及びMis6-CFP(赤色)を重ねた。d.抗GFP抗体によるChIPアッセイを用いて、第一分裂中期に抑止された細胞の示された染色体のサイト全体における、Sgo1-GFPレベルを測定した。mat(接合型遺伝子座におけるヘテロクロマチン領域)及びTAS(テロメア会合シーケンス)における追加的なプライマーと同時に、図2dと同様のプライマーを使用した。e.CFP-Atb2を発現してスピンドル(赤色)を可視化する示された細胞において、第一分裂中期にSgo1-GFP(緑色)を検出した。f.増殖細胞においてRec8-HAがSgo1-FLAGを伴って又は伴わずに発現し、抽出物を抗FLAG抗体で免疫沈降した。g.減数分裂におけるシュゴシンの作用のモデル。第一分裂後期の開始時に、シュゴシンはセパラーゼによる切断から動原体性Rec8複合体を保護し、それにより減数第二分裂まで動原体性の接着を保存する。シュゴシンは第一分裂後期の間にAPC依存的に分解する。
【図5】ハプロイドpat1-114細胞株(wt)、及びcut1-206又はPrad21-slp1細胞の同調培養におけるSgo1とRec8の発現量の経時変化を示す図である。slp1プロモータがrad21と置換されたPrad21-slp1細胞は、slp1+(APC活性化のために要求される分裂酵母CDC20ホモログ(Mol Cell Biol 17,742-50(1997))の発現が減数分裂の間抑制される。減数核分裂をDAP1染色によりモニターし、Sgo1、Rec8及びチューブリン(コントロール)のタンパク質レベルを、それぞれ抗Sgo1抗体、抗Rec8抗体及び抗チューブリン抗体を用いたウエスタン・ブロッティング法で測定した。cut1-206細胞が正常な動原体と共にSgo1の分解を起こすが、Rec8の分解は遅れた。Prad21-slp1細胞はRec8と同様にSgo1の分解の遅れを示した。矢印はセパラーゼCut1によるRec8の切断生成物を示している。
【図6】sgo1+が異所的に発現することにより、cut1-206変異体の成長が抑制されることを示す図である。染色体sgo1+プロモータをPnmt1又はPnmt41(Pnmt1の弱いバ-ジョン)と交換し、cut1-206温度感受性細胞の有糸分裂の成長における影響を調べた。示された細胞を、チアミン非存在下プレートにストリークし、28℃で3日間培養した。Pnmt1によってSgo1をある程度発現するcut1-206細胞は、許容温度であっても有糸分裂の成長を停止したが、cut1+細胞は正常に成長した。
【図7】動原体における有糸分裂において、本発明のSgo2は重要な役割を果たすことを示す図である。a.0、5又は10μg/mlのTBZを含むYEAプレートに、示された培養体の連続的に希釈物をスポットし、30℃で3日間培養した。b.指示された系列をYEAプレートにストリークし、30℃で3日間培養した。c.第一分裂後期に、野生型、及びCFP-Atb2を発現してスピンドル(赤色)を可視化するbub1Δ細胞において、Sgo2-GFP(緑色)を検出した。DNAをヘキスト(青色)で染色した。分裂後期における野生型細胞についても図示した。d.sgo2+-GFP mis6+-HA細胞を固定し、抗GFP抗体及び抗HA抗体で染色した。e.ChIPアッセイを用いて、分裂前中期に抑止された細胞又は非同調性細胞で、示された染色体のサイト全体においてSgo2-GFPレベルを測定した。
【図8】本発明の出芽酵母シュゴシンScSgo1の解析結果を示す図である。a.増殖中の出芽酵母ScSGO1-GFPディプロイドをメタノ-ルで固定し、DAP1で対比染色した。b.ScSGO1-Myc NDC10-HA細胞を固定し、DAP1並びにMyc及びHAに対する抗体で染色した。c.培養液中で減数分裂を起こすScSGO1-GFPディプロイドをメタノ-ルで固定し、DAP1で対比染色した。d.0又は15μg/mlのベノミルを含むYPDプレートに、示された培養体の連続的に希釈物をスポットした。e.コロニーセクタリングアッセイにより、野生型(wt)及びScsgo1Δ変異体における染色体の損失を解析した。非必須染色体フラグメントの損失は、白色コロニー中の赤色セクタ-となっている。ポジティブコントロールとしてubr1Δ変異体を使用した(Nature 410,955-9(2001))。セクタリングコロニーの頻度を図下に示す(n>120)。f.Scsgo1ΔテトラッドにおけるcenV-GFPの分離の標本。テトラッドにおける分離パタ-ンは、ほとんど下に示す3つのうちのいずれかに分類された。各個体群(n=200)についても示した。g.ScSGO1-Mycディプロイドは同調的な減数分裂に誘発され、減数第一分裂及び減数第二分裂において、2つのホモログのうち一方をマークされたcenV-GFPの分離について調べた。細胞は減数第一分裂ではほとんどが還元分離パタ-ンを起こしたが(96%、n=207)、減数第二分裂では染色体不分離の発生率が高かった(34%、n=322)。h.ホモログの両方をcenV-GFPでマークされた細胞は減数分裂に誘発され、抗チューブリン抗体及びDAP1で対比染色された。第一分裂後期の細胞を、cenV-GFPドットについて検査した。ScSGO1-Myc細胞は姉妹染色分体のいずれかのペアで分断されたcenV-GFPドットを頻繁に示したが(72%、n=138)、コントロール野生型細胞は示さなかった(<2%、n=106)。
【図9】種々の生物における、シュゴシン類似タンパク質のアミノ末端のコイルドコイル領域、及びカルボキシル末端基本領域のシーケンスを示す図である。Sgo1のアミノ末端領域における1次配列はシゾサッカロミセス・ポンベ(Sgo1及びSgo2)、出芽酵母(ScSgo1)及びアカパンカビ(B23G1.060)に保存され、MEI-S332を含む他の種のシーケンスは保存されていないが、恐らく全てがコイルドコイルモチ-フを保有している(COILSプログラム(Science 252,1162-4(1991))による予測)。図に示す矢印、アスタリスク及び丸印参照。
【図10】保存された領域内で生じたsgo1変異体を調べた結果を示す図である。示されたプラスミドで形質転換されたh+sgo1Δ及びh-sgo1Δcen2-GFP細胞の双方を、SPAプレートで混合し、減数第二分裂におけるcen2-GFPの分離についてモニターした。sgo1を発現させるために、チアミン抑制nmt1プロモータの弱いバ-ジョンを帯びているプラスミドpREP81を使用した。プラスミドpREP81-sgo1(wt)を有するコントロール細胞は減数第二分裂において80%近い分離を示すが、不分離のsgo1対立遺伝子を発現する細胞は、ランダムな分離(50%分離)を示した。非保存サイト変異体297TAを除き、テストされた変異体はいずれも、このアッセイにsgo1Δを補完しなかった。2つの独立した実験の平均が示されている(n>100)。
【図11】図11(a)はシュゴシンファミリータンパク質の概要を示す図である。予測されたコイルドコイル(赤色)と保存された基本領域(青色)とが、N末端領域とC末端領域とにそれぞれ存在している。また、図11(b)はsiRNAをトランスフェクションした後で、HeLa細胞抽出物をウェスタンブロットで分析した結果を示す図である。
【図12】ウサギから調製したhSgo1あるいはhSgo2に対する抗体で、HeLa細胞を染色し(緑色)、同時に、チューブリン抗体およびDAPIで染色し、それぞれスピンドル(赤色)および染色体DNA(青色)で共染色した結果を示す図である。なお、細胞はパラホルムアルデヒドで固定した。
【図13】分裂前中期および中期のHeLa細胞を、hSgo1あるいはhSgo2に対する抗体で染色し(緑色)、同時にセントロメアタンパク質CENP-Aに対する抗体(a,c;赤色)および減数分裂前期から中期にかけて動原体内部に局在する染色体のパッセンジャータンパク質AuroraBに対する抗体(b,d;赤色)、並びにDAPI(青色)で共染色した結果を示す図である。hSgo1、hSgo2いずれのシグナルも、染色体上のCENP-Aドットに近接する場所にシグナルが見られた。このことから、hSgo1、hSgo2いずれもセントロメアタンパク質であることが明らかになった。また、Sgo1とAurora Bの位置は、前中期と中期において事実上同じであったが、Sgo2はAurora Bのちょうど外側に位置していた。このことから、hSgo1、hSgo2はいずれも前中期から中期までに動原体内部に位置していることが明かとなった。
【図14】hSgo1、hSgo2を標的としたRNAi実験をそれぞれ行った結果を示す図である。48時間後にはいずれのタンパク質の発現も有意に抑制され、その結果、分裂期(図中total)に停止した細胞が蓄積した。この蓄積は、スピンドルチェックポイント因子BubR1をRNAiにより抑制することにより解除されたことから、hSgo1、hSgo2はセントロメアにおいて、動原体をスピンドルが正しくとらえる過程に直接的あるいは間接的に機能していることが示唆される。
【図15】HeLa細胞を用いて、hSgo1を標的としたRNAi実験を行い、細胞をスライドグラス状に広げ、ギムザ染色した結果を示す図である。コントロールの細胞では、姉妹染色分体が動原体部位で強く接着しているが、hSgo1を抑制した細胞では動原体部位の接着が弱くなって、この実験の操作によって離れやすくなっていることが判明した。
【図16】Sgo1及びBub1が、有糸分裂における動原体での凝縮に必要であることを示す図である。(a)siRNAで処理で染色体の拡張が、ギムザ染色した有糸分裂中のHeLa細胞で生じた。代表的な拡張を発生割合と共に示す。各RNA干渉に対して、100以上の前期及び前中期が観察された。姉妹染色分体のペアの一例の拡大図を上部に示す。(b)微小管重合阻害剤(nocodazole)で4時間処理した後、染色体拡大がRNA干渉した細胞で観察された。拡大した例をその割合(n>100)と共に示す。(c)siRNAで処理してから36時間後に、Scc1-mycを発現するHeLa細胞を固定した。前記細胞を抗myc抗体(緑色)及び抗動原体抗体(anti-centromere-antibory,ACA))(赤色)で免疫染色した。DAPI(青色)でDNAを染色した。(d)Scc1-myc染色を示す細胞の割合を示す。本細胞株において、Scc1-mycを発現する細胞は、25%にも満たなかった。スケールバーは10μmを示す。
【図17】Bub1を標的としたRNAi実験をそれぞれ行った結果を示す図である。(A,B)Bub1を標的としたRNAi実験をそれぞれ行った結果、hSgo1、hSgo2いずれのタンパク質のセントロメアへの局在が消失した。(C,D)コントロールのBubR1を標的としたRNAi実験では、hSgo1、hSgo2いずれのタンパク質のセントロメアへの局在は正常であったことから、Bub1の結果の有意性が保証された。Bub1とBubR1は似ているが異なるタンパク質であり、hSgo1とhSgo2のセントロメアへの局在はBub1に依存するが(A,B)、BubR1には依存しない(C,D)ことを示している。
【図18】マウスのシュゴシン相同遺伝子(配列21、23)のcDNAとGFP遺伝子を融合したクローンを、レトロウイルスベクターを用いて作製し、ヒトのHeLa細胞で発現させた結果を示す図である。いずれのGFP融合タンパク質も、分裂期にヒトの動原体タンパク質Bub1と共局在することがわかった。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の対象となるタンパク質としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質Sgo1(シュゴシン)や、該配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質や、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質Sgo1のパラログSgo2や、該配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質や、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる染色体分配制御活性を有するタンパク質Sgo1のサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)ホモログScSgo1や、該配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質や、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)由来の染色体分配制御活性を有するタンパク質(NC)や、該配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質や、配列番号10又は12に示されるアミノ酸配列からなるシロイヌナズナ由来の染色体分配制御活性を有するタンパク質(At)や、該配列番号10又は12に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質や、配列番号14又は16に示されるアミノ酸配列からなるマウス由来の染色体分配制御活性を有するタンパク質(Mm)や、該配列番号14又は16に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質や、配列番号18又は20に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来の染色体分配制御活性を有するタンパク質(Hs)や、該配列番号18又は20に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質を挙げることができる。また、上記染色体分配制御活性としては、染色体分配を制御する活性であれば特に制限されないが、好ましくは生殖細胞の染色体分配及び/又は体細胞分裂の染色体分配を正しく制御する活性を、より好ましくは減数第一分裂において姉妹染色分体の動原体が離れないように保護(守護)する活性を挙げることができる。なお、本発明のタンパク質はそのDNA配列情報等に基づき公知の方法で調製することができ、その由来は酵母、マウス、ヒト等に限定されるものではない。また、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質であるSgo1(シュゴシン)変異体は、ポイントミューテーション等の公知の遺伝子操作により常法により作製することができる。
【0013】
本発明の対象となるDNAとしては、上記本発明の染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、分裂酵母シゾザッカロミセス・ポンベに由来する配列番号1又は3に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNA、並びにこれらの配列の一部または全部を含む染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、サッカロミセス・セレビジエに由来する配列番号5に示される塩基配列又はその相補的配列からなるDNA、並びにこれらの配列の一部または全部を含む染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、ノイロスポラ・クラッサに由来する配列番号7に示される塩基配列又はその相補的配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA、並びにこれらの配列の一部または全部を含む染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、シロイヌナズナに由来する配列番号9又は11に示される塩基配列又はその相補的配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA、並びにこれらの配列の一部または全部を含む染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、マウスに由来する配列番号13又は15に示される塩基配列又はその相補的配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA、並びにこれらの配列の一部または全部を含む染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、ヒトに由来する配列番号17又は19に示される塩基配列又はその相補的配列からなり、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA、並びにこれらの配列の一部または全部を含む染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAや、かかるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNA等を例示することができる。
【0014】
これらDNAは、そのDNA配列情報等に基づき、例えば酵母、マウス、ヒト等の遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーなどから公知の方法により調製することができる。また、配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19等に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部又は全部をプローブとして、酵母、マウス、ヒト等のDNAライブラリーに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行ない、該プローブにハイブリダイズするDNAを単離することにより、目的とする染色体分配制御活性を有するタンパク質をコードするDNAを得ることもできる。かかるDNAを取得するためのハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC,0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば、種々の要素を適宜組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0015】
本発明の融合タンパク質としては、前記本発明のタンパク質とマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合しているものであればどのようなものでもよく、マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、アルカリホスファターゼ、抗体のFc領域、HRP、GFPなどを具体的に挙げることができ、また本発明におけるペプチドタグとしては、Mycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合タンパク質は、常法により作製することができ、Ni-NTAとHisタグの親和性を利用したタンパク質Sgo1等の精製や、当該分野の研究用試薬としても有用である。
【0016】
本発明のタンパク質に特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を具体的に挙げることができ、これらは上記Sgo1等のタンパク質又はその一部を抗原として用いて常法により作製することができるが、その中でもモノクローナル抗体がその特異性の点でより好ましい。かかるモノクローナル抗体等の抗体は、生体内におけるSgo1等の局在を明らかにする上で有用である。
【0017】
上記の本発明の抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に本発明のタンパク質若しくはエピトープを含むその断片、又は該タンパク質を膜表面に発現した細胞を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256,495-497,1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4,72,1983)及びEBV-ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,pp.77-96,Alan R.Liss,Inc.,1985)など任意の方法を用いることができる。
【0018】
本発明のタンパク質に対する一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号)を適用することができる。また、ヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウス又は他の哺乳動物等を利用したり、上記抗体を用いて、本発明のタンパク質を発現するクローンを単離・同定したり、アフィニティークロマトグラフィーでそのポリペプチドを精製することもできる。本発明のタンパク質やその抗原エピトープを含むペプチドに対する抗体は、染色体分配制御因子を指標とした癌や不妊症あるいはダウン症などの染色体分配疾患の診断や治療に使用できる可能性がある。
【0019】
また前記モノクローナル抗体等の抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又は3H等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、本発明のタンパク質の機能解析を行うことができる。また本件発明の抗体を用いる免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
【0020】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
[方法]
(Rec8プロテクターのスクリーニング)
本発明者らは栄養細胞においてRec8と共発現した場合のみ毒性となる遺伝子を調べた。GFPと融合したシーケンスをコードするRec8を、チアミン抑制nmt1+プロモータのもとでpREP82(ura4+マーカー)にクローニングし、pREP82-rec8+-GFPを構築した。減数分裂細胞から調製されたmRNAを用いて構築したシゾサッカロミセス・ポンベcDNAライブラリー、及びpREP3ベクター(nmt1+プロモータ、LEU2+マーカー)(Y.Akiyoshi and Y.W.未発表)を使用した。pREP82-rec8+-GFPを保有するleu1 ura4-D18細胞はcDNAライブラリーでトランスフォームし、チアミン(プロモータオフ)を含む寒天プレート上に広げられ、30℃で30日間培養された。次に、コロニーが2枚のチアミンを含まない寒天プレート上、すなわち、一方はプラスミドpREP82-rec8+-GFPを欠落した細胞のみが成長することができる、ウラシル及び5’-FOA(5’-fluoroortoic acid)を含むプレート上で複製され(それによりライブラリクローンのみを発現する)、他方は5’-FOAを含まないプレート上で複製される(rec8+-GFPとライブラリクローンとの共発現を可能にする)。本発明者らは、死滅した細胞を赤色染色する薬品であるPhloxine Bを両寒天プレートに加え、それにより病態のコロニーに焦点を当てた。2日間の培養後、共発現寒天プレートでのみ病態を示すコロニーを取り上げ、ライブラリー由来のプラスミドを回収して解析した。
【0022】
(シゾサッカロミセス・ポンベ株)
内因性sgo1+及びsgo2+へのGFP又はFLAGタグ付け及び削除を、PCRベースの遺伝子ターゲティング法(Yeast 14,943-951(1998))によって実施した。PCR増幅sgo1+-FLAGのC末端にGFPを挿入することによりsgo1+-FLAG-GFPが作製され、内因性sgo1の遺伝子座に組み込まれた。さらに、PCRベースの遺伝子ターゲティング法によって、sgo1+の内因性プロモータをnmtプロモータと置換し、Pnmt-sgo1+又はPnmt-sgo1+-FLAG-GFPを作出した。必要に応じて、Sgo1-GFP又はSgo1-FLAGにタグ付けされたタンパク質を削除した。文献(Nature 400,461-4(1999))記載のように、減数第一分裂の前(減数第一分裂前期の後期に近接した時期)に、減数分裂細胞を抑止するためにmei4Δ変異体を使用し、減数第一分裂後に抑止するためにmes1Δを使用した。
【0023】
(GFPでマークされた染色体の観察)
減数第一分裂におけるホモログの分離パタ-ンを観察するために、cen2-GFP(Embo J 22,2284-96(2003))を保持するh90細胞が、減数分裂誘導培地SPAにスポットされた。姉妹染色分体の分離パタ-ンを調べるために、一方はcen2-GFPでマークされ、他方はマークされていない異なる接合型細胞が混合され、SPA上にスポットされた。1日間培養された後、接合体がGFPについて観察された。冷却CCDカメラ(Quantix、Photometrics)を備えた顕微鏡(Axioplan2、Zeiss)、及びMetamorph software(Universal Imaging Corporation)のもとで、画像を得た。GFPシグナルの7つのZセクションは、画像の各ピクセル位置における最大値のシグナルを取ることによって、単一の二次元の画像に変換した。
【0024】
(クロマチン免疫沈降;ChIP)
Sgo1を有するChIPについては、ディプロイドsgo1+-FLAG-GFPを使用した。高度に同調的な培養を達成するために、内因性slp1+プロモータを減数分裂中は活性化しないrad21+プロモータと置換し、第一分裂中期に細胞を抑止した。細胞は、窒素枯渇培地において30℃で17時間培養され、60%以下の細胞を第一分裂中期に抑止した。Sgo2を有するChIPについては、nda3-KM311sgo2+-GFP細胞を30℃で増殖させ、その後18℃に移行した。8時間の培養の後、ほとんどの細胞を分裂中期に抑止した。細胞は3%のパラホルムアルデヒドで18℃で30分間固定され、抽出物が作製された。DNAは平均サイズが400bpまでに破壊され、抽出物は、ウサギ抗GFP抗体(Clontech)で免疫沈降された。全細胞粗製抽出物から作製されたDNA、又は免疫沈降されたクロマチンのフラクションは、LightCycler又はLightcycler-DNA Master SYBR Green I kit(Roche Molecular Biochemicals)で、定量的なPCRによって解析された。ChIPフラクションにおける非特異的な結合を説明するために、各実験におけるコントロールとして抗体不含サンプルを用いた。
【0025】
(抗Sgo1抗体の作製)
sgo1+ORFはシゾサッカロミセス・ポンベcDNAライブラリーからのPCR増幅物であり、組換えタンパク質GST-Sgo1及びHis-Sgo1を作製するために、プラスミドpGEX4T-2(Pharmacia Biotech)及びpET-19b(Novagen)にそれぞれ挿入された。文献(Embo J 22,5643-53(2003))記載の通り、GST-Sgo1はウサギを免疫化するために使用され、産生された抗体はHis-Sgo1によって精製した。また、ヒトのシュゴシン相同遺伝子(配列番号17、19)のコードするタンパク質(配列番号18,20;それぞれhSgo1,hSgo2とする)の解析を行う目的で、hSgo1,hSgo2の一部を大腸菌に発現させ、そのタンパク質をウサギに注射することによりhSgo1,hSgo2に対する抗体を作製した。
【0026】
(免疫染色)
内因性Sgo1を染色するために、MM-Nで5時間培養された野生型ディプロイド細胞を、30℃で40分間3%のホルムアルデヒドで固定し、文献(Embo J 22,5643-53(2003))記載の方法によって染色した。Sgo2-GFP及びMis6-HAを染色するために、対数的に成長している細胞を使用した。1:50でウサギ抗Sgo1抗体及び1:100でAlexa488結合の抗ウサギ抗体(Molecular Probes)を用いてSgo1を検出した。1:200でマウス抗チューブリン抗体TAT-1(Keith Gull氏から供与)、及び1:2000でCy3タグ付け抗マウス抗体(Chemicon)を用いてチューブリンを検出した。DNAを可視化するために、細胞をDAPIで対比染色した。1:50でマウス抗GFP抗体(Roche)、及び1:100のBODIPY FL結合抗マウス抗体(Molecular Probes)を用いてSgo2-GFPを検出した。1:50でウサギ抗HA抗体Y-11(Santa Cruz)、及び1:100でAlexa488結合抗ウサギ抗体を用いてMis6-HAを検出した。DNAを可視化するために、細胞をDAPIで対比染色した。また同様に、ウサギ抗hSgo1抗体及びウサギ抗hSgo2抗体を用いて免疫染色を行った。
【0027】
(共免疫沈降)
Padh-rec8+-3HA Pnmt41-sgo1+-FLAG-GFP株細胞及び、コントロールとしてのPadh-rec8+-3HA株細胞を、30℃で15時間チアミンを用いずに培養し、収集し、抽出物を作製した。クロマチン結合タンパク質を遊離させるために、DNase1で抽出物を処理した。遠心分離によって抽出物を清澄化した後、Sgo1-FLAG-GFPタンパク質を、抗FLAG抗体M2(Sigma)で免疫沈降した。抗HA抗体Y-11及び抗FLAG抗体M2によって、それぞれRec8-3HA及びSgo1-FLAG-GFPを検出した。
【0028】
(出芽酵母の解析)
すべての供試株は、染色体ロスアッセイに関するものを除き、SK1(Cell 98,91-103(1999))の派生物であった。染色体ロスアッセイを文献(Nature 410,955-9(2001))記載の通り実施した。PCR生成カセット(Yeast 14,953-961(1998))を使用して、ScSGO1遺伝子を削除、又はエピト-プデータグを付けた。正確な遺伝子タ-ゲットをPCRによってチェックした。染色体Vをマ-キングしたURA3-GFPドット(cenV-GFP)については前述されている(Cell 98,91-103(1999))。文献(Dev Cell 4,535-48(2003))記載の通り、30℃でディプロイド細胞を培養することにより、胞子形成が誘引された。インサイチュ蛍光免疫法(in situ immunofluorescence)を文献(Dev Cell 4,535-48(2003))記載の通り実施した。
【0029】
(細胞の培養)
10%のウシ胎子血清と0.03%のL-グルタミンとを加えたDMEM培地で、HeLa細胞を培養した。Scc1-mycを発現するHeLa細胞株を200μg/mlのG418(Invitrogen社製)及び100μg/mlのHygromycin B(Wako社製)で培養した。sμg/mlのDoxycyclin(Sigma社製)を用いたインキュベーションを48時間行うことにより、Scc1-mycの発現を誘導した。
【0030】
(抗ヒトSgo抗体の作製)
ヒトSgo1のN末端アミノ酸配列に関する情報がデータベース上で得られなかったことから、本発明者らは、λ TriplEx:CTCGGGAAGCGCGCCATTGTG(配列番号38)のクローニング部位を認識するプライマーと、Q9BVA8のアミノ酸配列中の第237~242番に対応するDNA配列:CCTGGCTGAATCAGCTTTGGTG(配列番号39)を認識するプライマーとを用いてcDNAライブラリー(BD Biosciences社製)から増やしたcDNA断片をクローニングした。かかるシークエンシングにより、Sgo1のmRNAは527個のアミノ酸を有するタンパク質をコードすることがわかった。Sgo1に対するポリクロナール抗体を得るために、Sgo1の第109~491番目のアミノ酸をコードするcDNA断片を増やし、GST-Sgo1とHis-Sgo1とを作製するためにプラスミドpGEX4T-2(Amersham社製)とpET19b(Novagen社製)の読み枠中にそれぞれ挿入し、続けてウサギ(QIAGEN)を免疫処理した(生産者マニュアルの指示に従って行う)。CNBr活性を有するセファロース(Amersham社製)上で、His-Sgo1をアフィニティー精製した。Sgo2に対する抗体は、GST-Sgo2(第331~631番のアミノ酸)で育成して、上記と同様の方法によりHis-Sgo2を用いて精製した。
【0031】
(免疫蛍光顕微鏡検査及び染色体拡大)
抗ヒトSgo1抗体(1:1000)、抗ヒトSgo2抗血清(1:10000)、抗Bub1(1:1000;MBL社製)、抗BubR1(1:1000;MBL社製)、抗CENP-A(1:1000;MBL社製)、抗AuroraB AIM-1(1:1000;BD Biosciences社製)、及び抗微小管DM1A(1:1000;Sigma社製)を用いて、上記方法により免疫蛍光染色を行った。Scc1-mycの免疫染色は、抗myc CM-100(1:1000;Gramsch Laboratories社製)及びACA(1:1000、Dr.Yoshinari Takasakiから提供を受ける)を用いて、上記方法により行った。2次抗体としては、Alexa Fluor 488ヤギ抗ウサギ抗体(1:1000;Molecular Probes社製)、Cy3共役抗マウス抗体(1:1000;CHEMICON社製)、及びCy3共役ロバ抗ヒト抗体(1:1000;Jackson ImmunoResearch Laboratories.Inc社製)を用いた。3μg/mlのHoechst 33342又は0.5μg/mlのDAPIを用いて対比染色した。映像は、SlideBook又はMetaMorphソフトウェアを用いて撮影した。
【0032】
(染色体拡大)
有糸分裂中のHeLa細胞を有糸分裂シェイクオフ(mitotic shake-off)により回収し、330nMのノコダゾールで0から4時間インキュベーションした。染色体拡大を上記方法で行った。
【0033】
(免疫ブロット法)
HeLa細胞をサンプル緩衝液を用いて煮沸して、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。タンパク質をImmobilon-P膜(Millipore社製)に移し、続けてTBST(150mMのNaCl,20mMのTris-Hcl,pH7.4,0.05% Tween-20)中で5%のスキムミルク(Nacalai社製)でブロッキングした。抗Sgo1抗体(1:1000)、抗Sgo2抗体(1:1000)、抗Bub1抗体(1:500)及び抗チューブリン抗体(1:3000)を加えた0.1%のスキムミルクTBST中で、抗体のインキュベーションを行った。ブロットは、ECL(Amersham社製)で作製された。
【0034】
(RNAi)
hSgo1RNA又はhSgo2RNA上に、siRNAターゲット配列として、hSgo1:AAGUCUACUGAUAAUGUCUUATT(配列番号40)とhSgo2:AAGCACUACCACUUUGAAUAATT(配列番号41)及びヒトSgo1:GUGAGCCUCUGUGAAUCAATT(配列番号42)とヒトSgo2:GCUCUCAUGAACAAUAACUTT(配列番号43)をそれぞれ選択した。また、他のsiRNAターゲット配列であるBub1RNA上にsiRNAターゲット配列としてGAGUGAUCACGAUUUCUAATT(配列番号44)を、スピンドルチェックポイント因子BubR1RNA上に、siRNAターゲット配列を2箇所AACGGGCAUUUGAAUAUGAAA(配列番号45;JCS,117,1577-1589(2004)参照)を選択した。これらの配列を二本鎖として合成し、オリゴフェクタミン(インビトロジェン社)を用いて細胞へ導入した。また同様に、HIVベクターの作製に当たっては、HeLa細胞に対して、HIVプラスミドベクター、pMD.G(VSV-G env発現プラスミド)、pMDLg/p.RRE(第3世代パッケージングプラスミド)及びpRSV Rev(Rev発現プラスミド)を、リン酸カルシウム法により、トランスフェクションを行い、48時間後の培養上清を回収後、濃縮してウイルスベクターとして用いた。
【実施例2】
【0035】
[結果]
(分裂酵母におけるシュゴシンSgo1の同定)
有糸分裂コヒ-シンRad21/Scc1を減数分裂バ-ジョンであるRec8と置換することは、減数第一分裂後期を通して動原体性姉妹染色分体の接着を保護するための必須条件である(Cell 103,1155-68(2000)、Mol Cell Biol 23,3965-73(2003))。しかし、有糸分裂中に異所的にRec8を発現させた場合、Rec8はセントロメアに広く局在したが、姉妹染色分体が反対側に分離するにつれて分裂後期には消滅した(図1c、d)。さらに、有糸分裂中に、切断不可能なRec8が異所的に発現した結果(Rec8は減数分裂中に、セパラーゼCut1により切断されることに留意(Embo J 22,5643-53(2003)))、姉妹染色分体の分離が不能となった(図2参照)。したがって、減数第一分裂中の状況とはコントロール的に、動原体性Rec8は有糸分裂中にセパラーゼによって切断され、結果的に姉妹染色分体が分離する。これらの観察から、本発明者らはRec8の減数第一分裂特異性動原体プロテクターを仮定するに至った。この因子を発見するために、本発明者らは、Rec8と共発現した場合にのみ有糸分裂成長中に毒性を発生する遺伝子を調査した。このスクリーニングによって新規遺伝子sgo1+(ORF:SPBP35G2.03C)を見い出した。Rad21と共発現した場合、Sgo1は成長に関してほとんど影響を及ぼさないため、Sgo1による成長の妨害はRec8に大きく依存している(図1a)。セントロメア会合緑色蛍光タンパク質マーカー(cen2-GFP)が高頻度で中核細胞(図1b、c参照)の同じ側に分離されるため、rec8+とsgo1+との共発現の結果、核分裂がブロックされる(blocked nuclear division)頻度が高まる。分裂後期にSgo1がRec8を分解から保護する可能性をテストするために、Sgo1発現に関連してRec8の局在を調べ、構成性染色質adh1プロモータの制御下で、そのカルボキシル末端にGFPデータグ付けしたRec8を発現させ、チアミン抑制nmt1プロモータを用いてSgo1を誘導した。その結果、Sgo1が共発現した場合にのみ、分裂後期を通してRec8-GFPシグナルが持続することを見い出した(図1d)。Sgo1が減数分裂においてのみ発現することから、(DNAマイクロアレイデータ(Nat Genet 32,143-7(2002))、下記参照)、上述の結果によって、Sgo1が減数分裂の間はRec8のプロテクターであることがわかった。
【0036】
(Sgo1は減数第一分裂における動原体性の接着を保護する)
減数分裂中のRec8の保護に関して、Sgo1が本当に必要であるかを調べるために、sgo1+をコードするORF全体を除去し、表現型を調査した。sgo1+は減数分裂特異遺伝子であるという概念に一致して、sgo1Δ細胞は生育可能であり正常な増殖的成長を示した。sgo1Δ細胞の減数分裂の染色体分離を調べるために、接合体の2つのホモログのうち一方についてのみ、セントロメア関連シーケンスをGFP(cen2-GFP)でマークし、減数第一分裂の間、GFPドットの分離をモニターした。姉妹染色分体ペアが、各接合体の同じ側へ概ね一緒に移動したことから、減数第一分裂はsgo1Δにおいて正常に出現することがわかった。したがって、単極性接着は損なわれていなかった(図3a)。さらに、両染色体におけるcen2-GFPをマークすることにより、減数第一分裂でホモログが正確な染色体の分離を行ったと判定した(データは示さず)。しかし、減数第二分裂においては、姉妹染色分体ペアは適切に分離せず、50%以下の細胞において染色体不分離を起こした(図3a)。この値は減数第二分裂におけるランダムな染色体分離と一致している。
【0037】
動原体性の接着を調べるために、mes1Δ突然変異を経て減数第二分裂の前に抑止された接合体における両ホモログをマークしたcen2-GFPを観察した。上記結果を裏付けるかのように、分割されたcen2-GFPシグナルが二分染色体核にいきわたり、sgo1Δ細胞はセントロメアの早期分裂を示すことが多い(図3b)。最終的に、セントロメアにおけるRec8の保護がSgo1に依存しているかについて、第一分裂後期の後期及び第二分裂前中期のRec8-GFPを観察することにより調べた。野生型細胞においてはRec8シグナルが動原体性であることが顕著であるのに対し、sgo1Δ細胞のこれらのステ-ジにおいては、セントロメアからRec8シグナルの多くが消失した(図3c)。sgo1Δ細胞のすべての表現型は、ヘテロクロマチン欠損のシゾサッカロミセス・ポンベを連想させるが、ここでRec8の動原体周囲領域への局在は減少し、動原体性の接着は減数第一分裂の間に失われ、減数第二分裂におけるランダムな分裂を導く(Science 300,1152-5(2003))。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを用いて、減数第一分裂の前に抑止された細胞のRec8によるクロマチン結合を調べた。ヘテロクロマチン欠損細胞とは全く対照的に、Rec8の局在は他のすべてのテスト領域と同様、動原体周囲領域のsgo1Δ細胞においても損なわれていなかった。これらの結果は、減数第一分裂後の動原体性Rec8の消失が、セントロメアへのRec8局在における初期の欠損によって生じるのではなく、むしろ減数第一分裂における動原体性Rec8の保存における欠損によって生じることを示唆する。上述の結果によって、Cut1セパラーゼが第一分裂後期の開始時に活性化し、染色体性Rec8のほとんどを切断し、動原体性Rec8のみを残すことを示している(Embo J 22,5643-53(2003))。これらの結果は、減数第一分裂期を通してセパラーゼによる切断からコヒ-シンRec8を保護することにより、動原体性の接着を保護する上でSgo1が必須の役割を果たしていることを示している。
【0038】
(Sgo1は減数第一分裂中にセントロメアに局在する)
Sgo1タンパク質を検出するために、Sgo1特異的抗体を作製し、ウエスタンブロット法によりSgo1が専ら減数第一分裂期に発現することを示した(図4a)。減数分裂の様々なステ-ジにある細胞に対して免疫蛍光顕微鏡検査法を実施し、Sgo1が第一分裂前期の終期に出現し、いくつかのドットとして第一分裂中期までに十分に局在することが明らかになった(図4b)。これらのドットはMis6動原体タンパク質(Cell 90,131-143(1997))と共存し、Sgo1がセントロメア会合タンパク質であることを示している(図4c)。第一分裂後期の開始時に、Sgo1シグナルが劇的に減少する。第一分裂中期に抑止されたAPC枯渇細胞のセントロメアにおいては、Sgo1は分解されていないが、セパラーゼ欠損細胞においては正常な分解が起きていることを見い出し(図5)、第一分裂後期におけるSgo1の分解が、セパラーゼを介してというよりも、APCによってより直接的にレギュレイトされていることを示した。第一分裂後期の初期のセントロメアにおいて残留Sgo1シグナルを検知することができたが、それらは第一分裂後期の終期までには完全に消失した(図4b)。これは、セパラーゼが十分に活性化した場合、第一分裂後期の開始時にかなりの量のSgo1が必要とされることを示している。しかし、第一分裂後期が進行するにつれて、必要とされるSgo1は少量になっていくと考えられる。この考え方は、セパラーゼ活性が素早くダウンレギュレートされる場合、あるいは第一分裂後期の間に染色体へのアクセスが妨げられる場合に論証可能である。Sgo1は減数第二分裂では全く出現せず(図4b)、Sgo1は、減数第一分裂においてのみRec8を保護するために必要であるという考え方と一致する。
【0039】
本発明者らは、Rec8の動原体周囲領域における局在が、減数第一分裂全体を通して動原体性の接着が持続するために、特に重要であることを既に報告(Science 300,1152-5(2003))している。Sgo1がRec8の動原体性プロテクターである場合には、そこに局在することもまた予測された。この可能性をテストするために、ChIPアッセイを用い、Rec8の局在をより正確に描写した。Sgo1は実際にセントロメアシーケンスに沿って、中心核領域よりはむしろ、動原体周囲のヘテロクロマチン領域と会合している(図4d)。免疫沈降実験によって、インビボでSgo1がRec8複合体と相互に作用していることが示されるように(図4f)、保護は密接な相互作用を通じて実行される。同時に、これらの結果は、Sgo1は動原体周囲領域に残留し、第一分裂後期において、セパラーゼによる切断から動原体性Rec8を保護するために作用することを示している(図4d)。Rec8の局在はSgo1に依存しておらず、逆もまた同様であることを見い出した(図3d、図示せず)。実際には、Rec8とSgo1とはむしろ独立して動原体周囲領域に産生されるが、局在に関しては、Rec8はヘテロクロマチンに依存し、Sgo1はBub1キナ-ゼに依存している(図4e)。対照的に、Sgo1とRec8はそれぞれ、swiΔ6(ヘテロクロマチン欠損)及びbub1Δ細胞にあるセントロメアに局在している(図4e)。このように独立して局在することにより、染色体腕部領域に沿うことなく、セントロメアのみでRec8を保護することが確実となる。
【0040】
また、シュゴシンがセパラーゼの作用からRec8を物理的にシ-ルドし、これを相殺することを示す。この点において、Sgo1の強い過剰発現が、Rec8が発現していない場合であっても、有糸分裂の成長を中程度に妨害し(図示せず)、cut1対立遺伝子に対して許容的な温度である場合であっても、Sgo1が穏やかに発現することによりcut1変異体を殺す(図6)ことが見い出された。
【0041】
(Sgo2は分裂酵母における有糸分裂Sgo1パラログである)
従来の遺伝子データベースのブラスト検索によって、本発明者らは、サッカロミセス・セレビジエ及びノイロスポラ・クラッサからSgo1類似のタンパク質を見い出し、Sgo1が保存されたタンパク質であることを示した(下記参照)。また、同検索において、本発明者らがSgo2と名付けたシゾサッカロミセス・ポンベSgo1パラログを見い出した(ORF:SPACI5A10.15)。sgo2+遺伝子を分裂させ、sgo2Δ細胞が生存可能であるが、スピンドル不安定化剤チアベンダゾ-ル(TBZ)に対して感受性を示すことを見い出した(図7a)。sgo1Δ細胞がその種の欠陥を全く示さないことから、この表現型は注目に値する。その細胞分配について調べるために、内因性sgo2+遺伝子にGFPデータグを付けた。増殖細胞において、Sgo2-GFPは2つ又は3つのドットとして核内で観察された(図7d)。しかし、Sgo2-GFPはセントロメアタンパク質Mis6と有糸分裂中期において共存し、分裂後期の間に消失する(図7c、d)。ChIPアッセイは、Sgo2クロマチン会合が有糸分裂細胞の同調ポピュレーションにのみ検出可能であり、クロマチン会合は動原体周囲領域に局在していることを示した(図7e)。この局在を強化し、ヘテロクロマチン欠損swi6Δ突然変異体と結合した場合、sgo2の削除は染色体の分離に劇的な欠陥を与えるが、これ自体は動原体の機能をわずかに損なうものである(Science 269,1429-31(1995))(図7b)。これらの結果は、有糸分裂における染色体の分離を確実にするために、Sgo2が動原体性ヘテロクロマチン因子と協働していることを示している。さらに、減数第一分裂におけるホモログの染色体不分離において、sgo2Δ細胞がある程度増加(~15%)したことを見い出し、適切な減数第一分裂を促進させるためには、Sgo2もまた重要であることを示した。しかし、sgo1Δは減数第一分裂において明らかな欠陥引き起こさず(図3a)、また減数分裂におけるsgo2Δの欠陥を強化しないことから、Sgo2の役割はSgo1の役割と重複してはいない。
【0042】
(Bub1に制御されるシュゴシンの局在)
分裂酵母bub1変異体において、減数第一分裂以降は動原体性Rec8を検出できないことから、保存されたセントロメア会合キナ-ゼBub1は、減数分裂の間Rec8を保護する際に機能すると考えられている。(Nat Cell Biol 3,522-6(2001)、図3c)。bub1変異体は減数第一分裂の染色体分離において多面的に影響を及ぼしているが、Sgo1の機能はBub1活性によって標的とされうると考えられる。この問題を解明するために、減数分裂が起こっているbub1Δ細胞において、Sgo1-GFPシグナルを調べた。明らかに、bub1Δ細胞は正確な動原体性Sgo1-GFPシグナルをほぼ完全に欠いており、代わりに核内に拡散した蛍光を示した(図4e)。キナ-ゼ活性を消滅させるbub1-K762R点突然変異を用いて、同様の結果を得た(Embo J 22,1075-87(2003))。Sgo1タンパク質の実質的なレベルは、減数分裂bub1Δ細胞においてウエスタンブロット解析によって検出されるが(図示せず)、Bub1はSgo1タンパク質の安定性に影響を及ぼさない。したがって、Bub1のキナ-ゼ活性はSgo1をセントロメアに取り込むために必要となり、bub1Δ細胞における動原体の保護に見られる欠損は、Sgo1の局在が損なわれることにより説明することができる。
【0043】
並行した実験において、セントロメアにおける有糸分裂Sgo2の局在は、bub1変異体において同様に妨害されることを見い出した(図7c)。Bub1機能を失うことによって、動原体の機能が弱まると指摘されてきた(J Cell Biol 143,1775-87(1998))。この点に関して、bub1-K762R変異体は、動原体周囲でのヘテロクロマチン形成における役割を通じて、同様に動原体機能をわずかに損なう突然変異であるswi6Δに対して共致死性を示す。sgo2Δが同様にswi6Δに対して共致死性を示し(図7b)、有糸分裂において重大な染色体分離ミスを示すことを見い出した(図示せず)。sgo2Δbub1Δ二重変異体が、成長又はTBZ感受性について累積的欠陥をまったく示さなかったことから(図7a)、これらの遺伝子解析により、有糸分裂における染色体の分裂を確実にするための、Sgo2とBub1とのタンデム機能を確認した。これらの全てを考慮すると、以上の結果は、セントロメアにSgo1及びSgo2をそれぞれ減数分裂及び有糸分裂において取り込むことが、Bub1キナ-ゼの重要な機能であることを示している。
【0044】
(出芽酵母Sgo1ホモログの特性)
本発明者らは、出芽酵母における、これまで解析されたことのない一つのSgo1ホモログであるScSgo1(ORF:YOR073W)を同定した。内因性ScSGO1にGFPタグを付けることによって、ScSgo1の細胞内の局在について調べた。ScSgo1-GFPは増殖細胞において主として単一ドットとして検出されたが、これはポピュレーションのうち限定されたサブセットでのみ検出された(図8a)。ScSgo1-GFPはG1/S期(すなわち細胞内に芽がない場合、又は細胞内の芽が小さい場合)では検出されないが、G2/M期(芽が大きく、単一核を有する細胞)ではドットとして出現し、分裂後期(芽が大きく、核を伸ばしている細胞)では消滅する(図8a)。ドットはNdc10動原体タンパク質と共局在している(図8b)。減数分裂の間、ScSgo1-GFPは第一分裂中期にのみ動原体で検出されるが、第一分裂後期及び減数第二分裂においては全く検出されない(図8c)。したがって、ScSgo1局在パタ-ンは減数分裂におけるSpSgo1、及び有糸分裂におけるSpSgo2のパタ-ンに酷似している。
【0045】
ScSgo1の機能を調べるために、ScSGO1遺伝子を分裂させた。Scsgo1Δ細胞は生存可能ではあるが、成長が遅く、スピンドル不安定化剤ベノミルに対する感受性を示し(図8d)、動原体機能を損なう恐れがあることを示した。また、コロニーセクタリングアッセイを用いて、Scsgo1Δ細胞と野生型細胞とでクロモソ-ム損失率を比較した。40%のScsgo1Δコロニーが赤色セクタ-(クロモソ-ムの損失を示す)を含んでいたが、野生型コロニーでは2%未満であった(図8e)。有糸分裂の染色体分離を確実にするために、ScSgo1が動原体において重大な役割を果たしていると結論付けた。Scsgo1Δ細胞は減数分裂開始の際に、多くの細胞が減数分裂状態で単一の核に抑止されているという重大な欠陥を示した。しかし、リ-クした減数分裂のテトラニュークリエート生成物のうち、cenV-GFPの分配パタ-ンは、減数第二分裂におけるランダムな分離を除き、減数第一分裂における適切な分離と一致している(図8f)。また、カルボキシル末端において染色体ScSGO1に13Mycタグを付けることは、それ自体は有糸分裂の成長又は減数第一分裂で検出可能な欠陥を引き起こさないが、減数第二分裂における分離を損ねる結果となる(34%の染色体不分離が68%のランダム分離を示す)ことを見い出した(図8g)。さらに、ScSGO1-Myc細胞は減数第一分裂後期の後期において姉妹セントロメアの分離を頻繁に示し((図8h)、動原体性の接着が適切に保護されていないことを示した。同時に、これらの結果は、減数第一分裂全体を通して動原体性の接着を保護する上でScSgo1が重要な役割を果たしており、それにより分裂酵母Sgo1と同様に減数第二分裂を確実にしているとの考えを支持する。
【0046】
(真核生物でのシュゴシンの保存)
ブラスト検索の結果、Sgo1類似のタンパク質が3種のみ同定されたが、これらは全て菌類で、シゾサッカロミセス・ポンベSgo2、サッカロミセス・セレビジエScSgo1、及びノイロスポラ・クラッサB23G1.060であった。これらのタンパク質に2つの保存領域を見い出したことから、BLOCK MAKER及びMASTプログラム(Nucleic Acids Res 26,309-12(1998)、Bioinformatics 14,48-54(1998))を使用して、2ブロックシーケンス条件下で関連性のあるタンパク質を検索した。このアプロ-チは、ハエ、ムシ、植物、マウス及びヒトを含む様々な真核生物からいくつかのタンパク質候補を抽出した(図9のそれぞれショウジョウバエDm、Ce、シロイヌナズナAt、マウスMm及びヒトHs;配列番号21~37参照)。特に、このリストはDrosophila MEI-S332を含んでおり、これは以前に減数分裂における動原体性の接着を保存するために必要なタンパク質として特徴付けられたものである(Cell 83,247-256(1995))が、類似性のスコアはマージナルである(E値=10)。リスト中、他の全てのタンパク質はカルボキシル末端基本領域において類似性のショートストレッチを示すが、それらすべてが推定コイルドコイルを含むことを除いては、第1ブロックの主なシーケンスは保存されていない。これら2つのブロック間のスペースとシーケンスはタンパク質間で分岐する。これらのブロックはMEI-S332機能にとって重要であると以前に確認されている(Genes Dev.12,3843-3856(1998))ため、Sgo1の保存された領域の重要性について調査を行った。これらの類似性ブロック内で、いくつかのアミノ酸をそれぞれにアラニンに変化させ、インビボで変異体タンパク質の機能を調べた(図10)。MEI-S332機能のために重要であるとして知られる保存された3つのアミノ酸もまた、Sgo1の機能のために必要であることを見い出した(MEI-S332における13N、34V及び368S;Sgo1における29N、501及び294S)(図9の矢印部分)。さらに、第2ブロック内の他の保存されたアミノ酸(Sgo1の293P、296R、298K、299L及び300R)も、すべてSgo1機能にとって必要であり(図9アスタリスク)、ここで保存されていない残基297Tは、機能を損なうことなくアラニンに変化させることができる(図9丸印)。これらの結果は、シゾサッカロミセス・ポンベSgo1と様々な真核生物における他のタンパク質との間に見られるマージナルな構造的類似性が重要であることを示している。植物及び哺乳類は2つのシュゴシンに類似したタンパク質を有しており、シュゴシンの機能は分裂酵母におけるように、有糸分裂と減数分裂を完成させるために分岐した可能性がある。
【0047】
(ヒトのシュゴシン相同遺伝子のコードするタンパク質は分裂期に動原体に特異的に局在する)
本発明者らはヒトSgoタンパク質であると考えられるSgo1及びSgo2をデータベース上で見い出しているが、ヒト以外の種における公知のSgoタンパク質との全体的な配列相同性はわずかなものであった(図11a)。そこで、前記データベース上で見い出したタンパク質が実際にヒトSgoのホモログであるか否かを調べるために、本発明者らは前記タンパク質の局在性を調べた。かかる目的のために、本発明者らはバクテリアで産生された組換えタンパク質に対するウサギポリクロナール抗体を培養した。得られたSgo1抗体は、HeLa細胞抽出物で~70kDのバンド(推定分子量は60kD)を検知し、また、Sgo1 mRNAを標的とするsiRNAで細胞を処理した場合、かかるシグナルが大幅に減少した(図11b)。同様に、Sgo2抗体は、~120kDのバンド(推定分子量は1450kD)を検知し、Sgo2 siRNAで処理した細胞から得た抽出物では減少していた(図11b)。かかるデータは、Sgo1とSgo2との両方が、増殖したHeLa細胞において少なくとも発現していることを示している。次に、ヒトSgoのホモログであることが推定されたヒトのシュゴシン相同遺伝子(配列番号17、19)のコードするタンパク質(配列番号18,20;それぞれhSgo1,hSgo2)の解析を行う目的で、hSgo1,hSgo2の一部を大腸菌に発現させ、そのタンパク質をウサギに注射することによりhSgo1,hSgo2に対する抗体を作製し、かかる抗体を用いて、HeLa細胞を染色し、同時に、チューブリン抗体およびDAPIで染色し、それぞれスピンドルおよび染色体DNAで共染色して、増殖細胞でともに内在性のhSgo1,hSgo2タンパク質の発現を調べた。結果を図12に示す。図12からわかるように、分裂期の前中期(prometaphase)から中期(metaphase)にかけて、hSgo1、hSgo2いずれのシグナルも、染色体上にドット状に見られた。この免疫染色の結果により、hSgo1、hSgo2のいずれのタンパク質も、分裂期に動原体に特異的に局在することを確認した。また、分裂前中期および中期のHeLa細胞を、hSgo1あるいはhSgo2に対する抗体で染色し、同時にセントロメアタンパク質CENP-Aに対する抗体及びDAPIで共染色して、hSgo1,hSgo2タンパク質の発現を調べた。結果を図13に示す。図13からわかるように、hSgo1、hSgo2いずれのシグナルも、染色体上のCENP-Aドットに近接する場所にシグナルが見られた。このことから、hSgo1、hSgo2いずれもセントロメアタンパク質であることが明らかになった。さらに、この可能性を調べるため減数分裂前期から中期にかけて動原体内部に局在していいることが知られている染色体のパッセンジャータンパク質である、Aurora Bを染色した。Sgo1とAurora Bの位置は、前中期と中期において事実上同じであったが、Sgo2はAurora Bのちょうど外側に位置していた(図13)。このことから、hSgo1、hSgo2はいずれも前中期から中期までに動原体内部に位置していることわかる。右側に姉妹キネトコアの代表図を拡大したものを示す。スケールバーは10μmである。
【0048】
(ヒトのシュゴシン相同遺伝子のコードするタンパク質は分裂期に動原体に特異的に局在し、染色体分配を進行させる上で重要な役割をしている)
hSgo1、hSgo2を標的としたRNAi実験をそれぞれ行った。結果を図14に示す。その結果、48時間後にはいずれのタンパク質の発現も有意に抑制され、図14に示されるように、分裂期(図中total)に停止した細胞が蓄積した。このことから、いずれのタンパク質も分裂期に動原体に局在し、染色体分配を進行させる上で重要な役割をしていることが強く示唆された。この蓄積は、後述するように、スピンドルチェックポイント因子Bub1をRNAiにより抑制することにより解除されたことから、hSgo1、hSgo2はセントロメアにおいて、動原体をスピンドルが正しくとらえる過程に直接的あるいは間接的に機能していることが示唆される。
【0049】
また、HeLa細胞を用いて、hSgo1を標的としたRNAi実験を行った細胞をスライドグラス状に広げ、ギムザ染色した。結果を図15に示す。RNAiを行っていないコントロールの細胞では、分裂前期の姉妹染色分体が動原体部位で強く接着しているが、RNAiを行ったhSgo1の発現を抑制した細胞では動原体部位の接着が弱くなって、離れやすくなっていることが判明した。このことから、増殖細胞の分裂期にhSgo1は、染色体の動原体部位の強い接着を維持するのに重要な役割を持つことが示された。すなわち、Sgo1タンパク質がRNAi実験によりノックダウンされた有糸分裂細胞を集めて、染色体構造を直接観察するために染色体を拡大させた。コントロールとなる細胞では姉妹染色分体は腕部領域に沿って分離した動原体での一次性の収縮が観察された(図16a i)。驚くべきことに、Sgo1がない細胞では、姉妹染色分体がしばしば染色体長の全体に沿って分離した(図16a iii)。姉妹染色分体が密に接近しているサンプルは、姉妹染色分体が一次性の収縮を示さなかった(図16a iv)が、このことは動原体結合が選択的に失われたことを示している。ノコダゾール処理を行うと、紡錘体チェックポイントを活性化し、これにより前中期に細胞サイクルを拘束している。M期におけるこのような長期的拘束は、染色体の腕部領域からの結合性を完全に分離する。このために姉妹染色分体が動原体でのみ結合しており、「X型」染色体を形成する(図16b、コントロール)。予想通り、ノコダゾール処理を行うと、Sgo1 RNAi干渉細胞において染色体長に沿った姉妹染色体分体が完全に分離した(~97%)(図16c、d)。このことより、増殖細胞の分裂期にhSgo1は染色体の動原体部位の強い接着を維持するのに重要な役割を持つことが示された。
【0050】
Bub1を標的としたRNAi実験をそれぞれ行った。結果を図17に示す。その結果、hSgo1、hSgo2のいずれのタンパク質のセントロメアへの局在が消失した。この結果は、本発明者らが酵母で見つけた、「シュゴシンのセントロメアへの局在がBub1キナーゼに依存している」という結論が、高等生物にも保存されていることを意味する。
【0051】
次に、マウスのシュゴシン相同遺伝子(配列番号21、23)のcDNAとGFP遺伝子を融合したクローンを、レトロウイルスベクターを用いて作製し、ヒトのHeLa細胞で発現させた。結果を図18に示す。その結果、いずれのGFP融合タンパク質も、分裂期にヒトの動原体タンパク質Bub1と共局在することがわかった。
【0052】
以上のhSgo1,hSgo2についての解析やマウスのシュゴシン相同遺伝子を用いた解析結果から、配列から予測した動物細胞のシュゴシン類似タンパク質が、機能的にも酵母のシュゴシンと保存性があることが強く示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のシュゴシンは真核細胞に広く保存された染色体分配制御因子で、染色体分配における機構解明の他、体細胞分裂では癌の誘発機構、また減数分裂では不妊症あるいはダウン症などの染色体分配疾患などの研究に、有利に用いることができる。
図面
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【図2】
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【図3】
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【図18】
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