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明細書 :間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4548849号 (P4548849)
登録日 平成22年7月16日(2010.7.16)
発行日 平成22年9月22日(2010.9.22)
発明の名称または考案の名称 間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる方法
国際特許分類 C12N   5/0775      (2010.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P  33/00        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
FI C12N 5/00 202H
C12N 5/00 102
C12N 15/00 ZNAA
C12P 33/00
A01K 67/027
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2006-510634 (P2006-510634)
出願日 平成17年2月18日(2005.2.18)
国際出願番号 PCT/JP2005/002548
国際公開番号 WO2005/085425
国際公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
優先権出願番号 2004058406
優先日 平成16年3月3日(2004.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年3月8日(2007.3.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】宮本 薫
【氏名】矢澤 隆志
【氏名】梅澤 明弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】飯室 里美
参考文献・文献 Phil.Trans.R.Soc.Lond.B,1995年,Vol.350,p.279-283
Genes to Cells,1996年,Vol.1,p.663-671
Nuclear Receptor,2003年,Vol.1, No.1, 8,p.1-23
分子細胞治療,2001年,Vol.2, No.1,p.17-24
バイオサイエンスとバイオインダストリー,2002年,Vol.60, No.5,p.318-319
Biotherapy,2001年,Vol.15, No.2,p.119-125
Molecular and Cellular Biology,1997年,Vol.17, No.7,p.3997-4006
調査した分野 C12N 5/0775
C12N 5/10
C12N 15/09
C12P 33/00
A01K 67/027
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
骨髄由来の間葉系幹細胞を転写因子SF-1(Steroidogenic Factor 1)で刺激することから成る、間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる方法。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞を更にcAMPで刺激することから成る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記間葉系幹細がヒト由来である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
in vitroで請求項1~のいずれか一項に記載の方法を実施することから成るステロイド産生細胞の製法。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞を哺乳類(ヒトを除く)の精巣に移植することから成る、請求項1~3のいずれか一項に記載のステロイド産生細胞の製法。
【請求項6】
骨髄由来の間葉系幹細胞を転写因子SF-1で刺激して間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる工程、及び得られステロイド産生細胞を培養しその培養液からステロイドを回収する工程から成るステロイドの製法。
【請求項7】
骨髄由来の間葉系幹細胞を哺乳類(ヒトを除く)の精巣に移植して間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる工程、及び得られたステロイド産生細胞を培養しその培養液からステロイドを回収する工程から成るステロイドの製法。
【請求項8】
前記ステロイドが、プロゲスチン、アンドロゲン、エストロゲン、グルココルチコイド又はミネラルコルチコイドである請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
骨髄由来の間葉系幹細胞を哺乳類(ヒトを除く)の精巣に移植して得られる非ヒト動物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は、in vivoで胚葉を越えて非常に幅広い分化能を持つことが知られている(非特許文献1~3)。この細胞が成体でも採取可能であり、なおかつ胚性幹細胞と異なり分化した後も細胞の株化が容易であることからも、今後、発生・再生の分野で重要な役割を担っていくことが期待されている。
既に間葉系幹細胞を脂肪細胞、軟骨細胞又は骨芽細胞に分化させる方法については検討が行われている(特許文献1)。
【0003】

【特許文献1】WO2002/022788
【非特許文献1】J Clin Invest.10, 697-705, 1999
【非特許文献2】Exp Cell Res. 288, 51-9, 2003
【非特許文献3】Biochem Biophys Res Commun. 295, 354-61, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、骨髄由来の間葉系幹細胞株のステロイド産生細胞への分化を制御する手段を見出した。本発明の方法は、発生・再生の分野で極めて有用な方法になると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、マウスの骨髄間葉系幹細胞を精巣に移植すると、ステロイドホルモン産生細胞であるLeydig細胞に分化することを見出した(実施例4参照)。更に、マウス骨髄由来の間葉系幹細胞株KUM9を培養すると、極わずかな割合ではあるが、自発的にステロイド産生細胞に分化することを発見したが、同時に転写因子SF-1の発現も観察した(実施例5参照)。そこで、SF-1を恒常的に発現させるKUM9誘導株を作製し、さらにそこにcAMPの刺激を加えたところ、安定的にステロイドホルモンを産

生することがわかった(実施例1、2参照)。更に、ヒト細胞株では性腺ステロイドだけでなく副腎ステロイド産生酵素群も誘導されていることを確認した(実施例3参照)。これは、ヒトのステロイドホルモン欠損症の治療に幹細胞の分化を利用する際の基礎的データであり、再生治療に有用な方法であるものと考えられる。
以上の結果から、発明者らは、間葉系幹細胞を転写因子(SF-1)、好ましくは転写因子(SF-1)及びcAMPで刺激すると、間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させることが出来ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、骨髄由来の間葉系幹細胞を転写因子SF-1(Steroidogenic Factor 1)で刺激することから成る、間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる方法。この間葉系幹細胞を更にcAMPで刺激してもよい。
この間葉系幹細胞がヒト由来であることが好ましい。
また、本発明は、in vitroでこれらの方法を実施することから成るステロイド産生細胞の製法、又は間葉系幹細胞を哺乳類の精巣に移植することから成る上記いずれかのステロイド産生細胞の製法である。
更に、本発明は、骨髄由来の間葉系幹細胞を哺乳類(ヒトを除く)の精巣に移植して得られる非ヒト動物である。


【発明の効果】
【0007】
本発明は、間葉系幹細胞からステロイドホルモン産生細胞に分化させる手段を初めて提供するものである。
免疫の問題をクリアできれば、ブタなどの非ヒト動物の生殖腺に幹細胞を移植し、大量の分化した細胞を得ることが可能である。再生医療等で移植した細胞を分化した状態を保ったまま維持することが最も重要となるが、その方法を開発するためのツールとして、本発明の方法を用いることができる。再生医療の開発のためのモデル細胞となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
間葉系幹細胞とは、間質由来で様々な細胞に分化することが可能な細胞であり、骨髄に限らず中胚葉起源の諸組織の間質その他の組織(例えば、腎臓、関節膜、羊膜、臍帯血中)にも存在し、これらを利用することができる。
骨髄由来の間葉系幹細胞は、骨髄間質に存在して造血を支持する間質細胞であるが、成体になっても様々な細胞・組織への多分化能を有している。骨髄由来の間葉系幹細胞は、例えば、骨端に注射針を差し込み、PBSを注いで、骨髄の細胞を取り出し、その後、プラスチックシャーレに播いて接着させ、継代を繰り返すことにより、間葉系幹細胞を取り出すことができる。
【0009】
本発明の方法に用いる誘導因子である転写因子(SF-1)は生殖腺・副腎型のステロイドホルモン産出細胞に発現するオーファン核内レセプターであり、ステロイドホルモン産出酵素の転写を司ることが知られている(Endocrine Reviews vol.18, No.3, 361-377 (1997); The FASEB Journal vol.10 1569-1577 (1996))。SF-1は間葉系幹細胞と動物種が違っても、基本的に結合するDNAの標的配列が共通なため、同じ効果が得られるものと考えられる。
cAMPは、広く生物一般に存在し、その細胞内濃度は10-6~10-7M程度であり、標的細胞内の特定酵素の生成や代謝調節に関与し、さらに細胞の増殖や分化にも関係している。cAMPは、生殖腺及び副腎においてステロイドホルモン産生関連酵素の発現を誘導しステロイドホルモンの産出を促進するLH,ACTHのセカンドメッセンジャーである。
転写因子(SF-1)やcAMPで刺激する手段としては、直接この因子を間葉系幹細胞に接触させてもよいし、これを発現するようなベクターを用いてもよい。
【0010】
間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させるために、in vitroで間葉系幹細胞を誘導因子で刺激してもよいし、間葉系幹細胞を哺乳類の生殖器官に移植してもよい。
in vitroで行う場合、例えば、ヒト由来のものは10%FBS含有のDMEM (Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、マウス由来のものは10%FBS含有のIMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)又はDMEMを培養液として用いてもよい。培養条件は通常の培養細胞と同じく温度37℃、CO2濃度5%のインキュベーターで培養を行うことができる。
SF-1の濃度は細胞1×105細胞あたり約0.1~10μg、好ましくは1μg程度、cAMPの濃度は約0.5~2.0mM、好ましくは1mM程度である。
【0011】
一方、間葉系幹細胞を哺乳類の生殖器官に移植すると、何らかの因子が細胞に働いて(器官移植の場合は、周囲の細胞との相互作用など)、SF-1が幹細胞に発現してくるようになり、SF-1を介してステロイドホルモン産生細胞に分化してくるものと考えられる。
間葉系幹細胞の分化においてcAMPは補助的なものである。また、cAMPは、濃度の違いはあれ、細胞内に必ず存在しており、cAMPの場合は外部から加えなくとも、何らかの原因で細胞内の濃度が上昇することもよくある。
【0012】
このようにしてステロイド産生細胞を得ることができるし、このようにして製造されたステロイド産生細胞からステロイドを得ることもできる。
間葉系幹細胞が分化するステロイド産生細胞として、副腎皮質細胞、卵巣顆粒膜細胞、卵巣夾膜細胞、精巣ライディッヒ細胞、精巣セルトリ細胞等が挙げられる。
ステロイドとして、プロゲスチン、アンドロゲン、エストロゲン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイドなど、コレステロールから合成されるすべてのステロイドホルモン等を得ることができる。
【0013】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
ステロイドホルモン合成酵素の遺伝子発現は、表1に示すプライマーを用いたRT-PCRによって調べた。
【表1】
JP0004548849B2_000002t.gif

【実施例1】
【0014】
pIRES-puro2ベクター(Clontech、図1)にラットSF-1遺伝子(Gene Bank NM_053344,配列番号17)のコーディング領域(配列番号17の1~1389番目)を組み込み、Nru Iで直線化した後に確立されたマウス成体由来の間葉系幹細胞の細胞株であるKUM9(国立成育医療センター研究所生殖医療研究部から提供された。)にトランスフェクションした。48時間後にピュロマイシン(2μg/ml)入りの培地で選択を行い、2週間後に生き残った耐性コロニーをピックアップしクローン化した。
【0015】
親ベクターであるpIRES-puroをトランスフェクションしたクローン(図2B)はトランスフェクションを行わないKUM9(図2A)と同様の形態を示した。それに対しSF-1を発現するクローン(SF-7, SF-9)の細胞内にはステロイドホルモンの前駆体となるコレステロールを含むと考えられる多数の脂肪滴が観察された(図2C)。
各クローン(SF-7, SF-9)からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロティングによりSF-1タンパク質の発現を調べたところ、SF-1タンパク質を検出した(図3)。
また、この細胞におけるステロイドホルモン合成酵素の遺伝子発現をRT-PCRによって調べた結果、P450sccが発現していることが観察された。
【実施例2】
【0016】
次に実施例1でF-1の発現が観察されたクローン(SF-9)について、cAMP(1mM,SIGMA)を添加し7日間培養を行った。cAMP添加後、1,3,5,7日に細胞よりRNAを抽出しRT-PCRによって遺伝子発現の変化を調べた。比較のため、親ベクター(pIRES)を用いて同様の操作を行った。
その結果、1日後にP450sccが、3日後にはHSD3b1が、さらに5日後にはP450c17の発現が誘導された(図4)。
ウエスタンブロティングの結果、mRNA同様にこれらの酵素のタンパク質も発現が誘導されていることが示された(図5)。
【0017】
またこれらの結果は、SF-1を導入していない細胞(pIRES-puro)にcAMPを添加しても、ステロイドホルモン産生酵素が発現せず、ステロイドホルモンも作らず、cAMPのみではステロイドホルモン産生細胞に分化させられないことがわかる。
このことは、間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる際に、SF-1が必須の因子であり、cAMPが補助的な因子であることを示している。
【0018】
また、3日、7日目の培養液を回収しステロイドホルモンの産出量をラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した。その結果、mRNA並びにタンパク質の発現を反映し、cAMP添加群では3日目からプロジェステロン、そして7日目にはアンドロジェンが検出された(図6)。ステロイド合成酵素の誘導だけでなく、実際男性ホルモンの一種であるアンドロステンジオンも合成されていることが確認された。
HSD3b1の免疫染色の結果、すべての細胞が陽性であった(図7)。
実施例1と2の結果は、SF-1の強制発現により骨髄由来の間葉系幹細胞がステロイドホルモン産出細胞に分化することを示している。
【実施例3】
【0019】
実施例2と同様の実験をヒト由来の細胞で行い、同じようにステロイドホルモン産出細胞ができることを調べた。
ヒト骨髄間葉系幹細胞由来のhMSCE6/E7(京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野より提供された。)に、リン酸カルシウム法により上記のpIRES-puro-SF-1ベクターのトランスフェクションを行った。48時間後にピュロマイシン(0.3μg/ml)入りの培地で選択を行い、2週間後に生き残った耐性コロニーをピックアップし、クローン化した。cAMPを添加して7日間培養した細胞からRNAを抽出し、RT-PCR法により遺伝子の発現を調べた。
【0020】
pIRES-puro-SF-1を安定発現するhMSC細胞は、KUM9の時に観察されたような形態変化(図2A~C)を示さなかった。
しかし、RT-PCRによる遺伝子発現解析の結果、StaR,P450scc,3β-HSDといったステロイドホルモン合成に関わる遺伝子群の発現が観察された。さらにcAMP添加により副腎皮質においてグルココルチコイド産出に関わる酵素であるP450 c21とP450 11b1の発現が誘導された(図8)。
この結果、ヒトの骨髄由来の間葉系幹細胞がステロイドホルモン産出細胞に分化したことがわかる。
【実施例4】
【0021】
本実施例では、骨髄由来の間葉系幹細胞を精巣に移植した。
5週齢オスGreenラット(日本SLC株式会社)の手足の長骨の骨端に26ゲージの注射針を差し込み、PBSのそそぎ込みによって骨髄の細胞を抽出した。赤血球を浸透圧ショックによって破壊した後、20%FBS含有α-MEM培地に5×10/100mmシヤーレの細胞密度で播いた。24時間後に培地を交換し、非接着細胞を除去した。3日後に0.25%トリプシンを使い、細胞をはがして継代を行い、さらに1週間培養した。これにより骨髄由来の細胞のうち間葉系幹細胞が濃縮された。コンフルエントに達した細胞をトリプシンではがした後に、50μlのPBS中に1×10の細胞を懸濁し、これを3週齢のオスSprague Dawleyラット(日本チャールズリバー社)の精巣に注射した。
3週間後に精巣を摘出し倒立顕微鏡で観察した後に、4%パラフォルムアルデヒドに固定した。凍結切片を作製し免疫組織化学に用いた。一次抗体にウサギ抗ラットP450scc抗体(CHEMICON)とマウス抗GFP抗体(MBL)、二次抗体にCy3結合抗ウサギIgG抗体(SIGMA)とFITC結合抗マウスIgG(SIGMA)を使い二重染色を行った。
【0022】
Greenラット骨髄由来と考えられるGFP陽性の細胞は、移植から3週間後の精巣に存在しており、倒立蛍光顕微鏡下で容易に検出することができた(図9A)。よって移植した細胞は宿主の精巣内で生着することがわかった。
この細胞が精巣内で、ステロイドホルモン産出細胞(ライディッヒ細胞)に分化しているかどうかを調べるために、抗GFP(図9B)と抗P450scc(図9C)による二重免疫染色を行った。P450scc陽性の多く細胞群がGFP陽性であったことから、Greenラット骨髄由来の細胞はライディッヒ細胞に分化したことが分かる。
【実施例5】
【0023】
実施例4の方法ではマクロファージ系の細胞が残るため幹細胞を完全に純化することはできない。そこで、確立されたマウス成体由来の間葉系幹細胞の細胞株であるKUM9にin vitroでステロイドホルモン産出細胞に分化する能力があることを確かめる実験を行った。
【0024】
P450scc(側鎖切断酵素)はミトコンドリア内膜上にあってコレステロールをプレネグネロンに分解する反応を触媒する酵素である。この分解反応はすべてのステロイドホルモン産出において必要不可欠な過程であることから、P450sccはあらゆるステロイドホルモン産出細胞に発現が見られる。
Chungらのグループは可視化レポーター遺伝子LacZのトランスジェニックマウスを作製することによって、ヒトのP450scc遺伝子(Gene Bank M60421)の5’上流域2.3Kbpが生殖腺及び副腎のステロイドホルモン産出細胞におけるP450scc遺伝子の発現を規定していることを示した(Endocrino1ogy,140:5609-18,1999)。従って、この領域のコントロールにより可視化レポーター遺伝子を発現をする幹細胞を作製すれば、ステロイドホルモン産出細胞への分化を検出できると考えられる。
【0025】
そこでpEGFP-1ベクター(図10、Clontech)のEGFPタンパク質コーディング領域の上流に、P450scc遺伝子(Gene Bank M60421、配列番号18)を組み込み、さらにピュロマイシン耐性遺伝子をコードするpPURベクター(図11、Clontech)と融合させた。
この合成ベクターをApaL Iで直線化した後に、マウス骨髄間葉系幹細胞由来のKUM9細胞(国立成育医療センター研究所生殖医療研究部から提供された。)にリポフェクションによってトランスフェクションした。この細胞株では、P450sccが発現すると同時に蛍光GFPも発現するので、蛍光を指標にしてフローサイトメーターにより自発的に分化したKUM9由来ステロイド産生細胞を分離できる。
その48時間後からピュロマイシン(2μg/ml)入りの培地で選択を行い、2週間後に生き残った耐性コロニーを限界希釈法によってクローン化した。
【0026】
クローンを増殖させる過程で倒立蛍光顕微鏡下での観察を行ったところ、単離された250クローンのうちに、2つのクローンにおいて倒立蛍光顕微鏡下でGFP陽性の細胞が観察された。
GFP陽性の細胞が多数見られたこの2つのクローンに関してフローサイトメーターを使ってGFP陽性と陰性の細胞に分離したところ、2~5%がGFP陽性であった(図12)。
【0027】
また、GFP陽性細胞について、P450sccの免疫染色を行ったところ、GFP陽性細胞は免疫染色によってもやはりP450scc陽性であることが確認された(図13)。
【0028】
更に、セルソーターでGFP陽性(scc+)と陰性(scc-)の細胞画分を分離し、分離した細胞からtotal RNAを抽出し、reverse transcriptaseによる逆転写反応を行いcDNAを作製した。各遺伝子に特異的なプライマーによりRT-PCRを行った。その結果、GFP陽性分画の細胞(scc+)には、P450scc遺伝子のmRNAの発現が観察された(図14)。このようにして単離した細胞では、転写因子SF-1が発現していた。さらに、ステロイドホルモン産出に関わる逢伝子の発現を調べたところ、生殖腺・副腎型(HSD3b1)と胎盤型(HSD3b6)の両方の3β-HSD遺伝子の発現が観察された。
以上の結果から、この移植によりSF-1が幹細胞に発現し、SF-1を介してステロイドホルモン産生細胞に分化するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】pIRES-puro2ベクターを示す図である。
【図2】KUM9(A)に、親ベクター(B)とSF-1発現ベクター(C)を安定導入した細胞を示す図である。
【図3】各細胞株からSF-1タンパク質を検出したウエスタンブロティングを示す図である。SF-7及びSF-9はそれぞれSF-1導入して新たに確立した7番目及び9番目の細胞株を示す。
【図4】KUM9に親ベクター(pIRES)とSF-1(SF9)を安定導入した細胞株に、cAMPを添加して7日間培養し、抽出されたRNAについてRT-PCRを行った結果を示す図である。日数はcAMP添加後RNA抽出までの日数を示す。HSD3b(3b-HSD)は3日目に、P450c17とP450c11b1は5日目に発現している。
【図5】図4と同様の培養条件の細胞からタンパク質を抽出して行ったウエスタンブロティングを示す図である。ポジティブコントロールとしてマウス・ライディッヒ細胞由来のMA10細胞由来のタンパク質を用いた。
【図6】図4と同じ培養条件の細胞の培養上清を回収し、分泌されたステロイドホルモンの量をRIAによる定量を示す図である。それぞれ示した日の前日に新しい培養液と交換し、24時間以内に産出されるホルモンの量を定量した。
【図7】SF9細胞株をcAMP添加前(-)と添加後7日間(+)培養した後に、抗3β-HSD I抗体による免疫染色を示す図である。DAPI(4',6-Diamidino-2-phenylindole, dihydrochloride)はDNAの染色物質であり、核の細胞内局在を示す。
【図8】ヒト骨髄間葉系幹細胞由来のhMSC E6/E7細胞にSF-1を安定導入し、cAMPを添加して7日間培養した細胞からRNAを抽出して行ったRT-PCRを示す図である。
【図9】骨髄由来の間葉系幹細胞を移植した精巣を示す図である。STは精細管(seminiferous tubule)を示す。
【図10】pEGFP-1ベクターを示す図である。
【図11】pPURベクターを示す図である。
【図12】GFP陽性のクローンのフローサイトメトリーを示す図である。
【図13】GFP陽性細胞についのP450sccの免疫染色を示す図である。
【図14】GFP陽性(scc+)と陰性(scc-)の細胞画分について各酵素のRT-PCRの結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図6】
1
【図10】
2
【図11】
3
【図12】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
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【図13】
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【図14】
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