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明細書 :酸性糖を利用する多糖類からの単糖もしくはオリゴ糖の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5318468号 (P5318468)
公開番号 特開2009-011317 (P2009-011317A)
登録日 平成25年7月19日(2013.7.19)
発行日 平成25年10月16日(2013.10.16)
公開日 平成21年1月22日(2009.1.22)
発明の名称または考案の名称 酸性糖を利用する多糖類からの単糖もしくはオリゴ糖の製造方法
国際特許分類 C13K   1/06        (2006.01)
C13K   1/02        (2006.01)
C13K  13/00        (2006.01)
FI C13K 1/06
C13K 1/02
C13K 13/00
C13K 13/00 101
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2008-148268 (P2008-148268)
出願日 平成20年6月5日(2008.6.5)
優先権出願番号 2007152153
優先日 平成19年6月7日(2007.6.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年6月1日(2011.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
発明者または考案者 【氏名】船造 俊孝
【氏名】石井 達夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100076439、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 敏三
【識別番号】100118131、【弁理士】、【氏名又は名称】佐々木 渉
【識別番号】100131288、【弁理士】、【氏名又は名称】宮前 尚祐
審査官 【審査官】鈴木 崇之
参考文献・文献 特開2005-110675(JP,A)
特開2000-070000(JP,A)
国際公開第2005/049869(WO,A1)
特開2004-267119(JP,A)
調査した分野 C13K 1/00-13/00
Thomson Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
中性多糖類100質量部対し、酸性糖を10~1000質量部併存させて水熱反応させ、前記中性多糖類を加水分解する単糖もしくはオリゴ糖の製造方法であって、
前記酸性糖は前記中性多糖類の加水分解を促進し、且つ、前記中性多糖類とともに前記酸性糖が加水分解されることを特徴とする、製造方法
【請求項2】
前記中性多糖類が、デンプン、寒天、グアーガム、グルコマンナン及びキシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の単糖もしくはオリゴ糖の製造方法。
【請求項3】
前記酸性糖が、ウロン酸を含む多糖であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単糖類もしくはオリゴ糖類の製造方法。
【請求項4】
前記ウロン酸を含む多糖が、ポリガラクツロン酸、アルギン酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン及びU-フコダインからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項記載の単糖類もしくはオリゴ糖類の製造方法。
【請求項5】
原料の前記多糖類として、炭水化物を含む食品廃棄物、木材または紙を用いる請求項1記載の単糖もしくはオリゴ糖の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、中性多糖類を熱水にて加水分解するに当たり、水溶液中に無機酸や無機塩を添加しないで酸性糖を添加することにより、目的の単糖やオリゴ糖を低温、低圧で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然多糖類は食品、医薬品、滋養品分野で広く利用されている。各目的のためには可溶化、あるいは重合度を調節する必要があり、加水分解反応による低重合度化、すなわち、糖化によって単糖ないしはオリゴ糖とすることが求められている。また、これら天然多糖類を含む廃棄物は外食産業や日常生活においても多量発生するが、そのままでは含水率が高く、腐敗性もあり、その資源化は難しい。しかしこれら廃棄物中の多糖類を効率よく糖化できれば、その糖化液はエタノール発酵や乳酸発酵などにより、エタノールや乳酸などの化学原料、あるいはその化学原料から燃料物質への変換を図ることが可能となる。
そのため、天然多糖類の効率の良い低分子化、糖化の技術が求められている。前記の発酵工程のためには、糖化後の後処理である酸の中和や、その際生成する塩の脱塩処理の負担が少ないほど有効な糖化法と考えられる。
【0003】
従来、デンプン等の多糖類の分解法には、(1)酸加水分解、(2)酵素加水分解(例えば非特許文献1及び2を参照)、(3)亜臨界水または超臨界水による加水分解(例えば特許文献1参照)、(4)炭酸ガスを加圧含有させた熱水により加水分解する方法(例えば特許文献2及び3を参照)等の方法が知られている。
上記の(1)~(4)の方法は、それぞれ次のようにそれぞれ一長一短がある。
(1)の酸加水分解法は、塩酸、硫酸などの酸を用いて分解する方法である。この方法は、常温付近あるいは若干加温することにより常圧で操作することができるが、処理時間が比較的長く、処理後に酸の除去または中和、脱塩操作が必要である。(2)の酵素加水分解法は、酵素を用いるためコストがかかり、処理時間も長くなる。また、多糖類の種類に合わせて適切な酵素を選択する必要があり、不適切な酵素を用いると充分に分解することができない。(3)の亜臨界水または超臨界水による加水分解法は、セルロースの分解方法である。これは、水の臨界温度(374℃)より高い温度の超臨界水または臨界温度より低い亜臨界水中で高速加水分解を行う方法である。なお、セルロースとデンプンとは、共にグルコースが重合した天然多糖類であるが、化学構造が異なるため物理的、化学的性質が全く異なる。そのため超臨界水中などの高温条件を必要とする。しかし、この方法はまだ実験・研究段階で、実用化されていない。また、処理時間は非常に速いが、高温、高圧操作のため生成した単糖類(グルコース)の二次分解を抑制することが難しく、単糖類収率は低くその分解生成物の方が多くなるという難点がある。また、分解生成物の中でも、特に副生する5-HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)は発酵を阻害する原因となる。(4)の熱水に二酸化炭素を加圧して含有させる方法は、後処理の中和、脱塩工程の必要がないが、高圧条件下のため、高圧環境を必要とする。また、特許文献3にはアガロースやアルギン酸などの多糖類を加水分解する方法が記載されているが、この方法は単に多糖類を分解することにのみ注目しているため、反応時間が数時間と長く、単糖類収率や単糖類の二次分解を抑えて5-HMFの副生を抑制することについては何ら考慮されていない。
したがって、後処理除去処理を必要とするような塩酸、硫酸などの無機酸やその塩を添加しない方法、反応条件を高温高圧にする必要がない糖化方法の開発が望まれている。また、加水分解した溶液をそのまま発酵原料として用いることを考慮すると、できるだけ副生物の生成を少なくして単糖やオリゴ糖の収率を高くする方法の開発が強く望まれている。

【非特許文献1】Shiro Saka and Tomonori Ueno,“Chemical conversion of various celluloses to glucose and its derivatives in supercritical water”,Cellulose,6,p.177-191(1999)
【非特許文献2】Ortwin Bobleter,“Hydrothermal degradation of polymers derived from plant”,Prog.Polym.Sci.,19,p.797-841(1994)
【特許文献1】特開2002-20401号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/049869A1
【特許文献3】特開2005-110675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、デンプンのような中性多糖類を、超臨界水法に比べて低温かつ低圧で加水分解することができ、酵素や硫酸などを添加せず、加水分解処理の後に中和、脱塩操作などを行わない、効率的で高収率の単糖類、オリゴ糖の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、デンプン等の中性多糖類の加水分解(糖化)について、種々検討を重ねた結果、例えば、デンプンに対して、無機酸添加の代わりに酸性糖を添加することにより、中性多糖類を単独で加水分解するよりも糖化収率が著しく向上し、低温条件で酸性糖がデンプンの糖化を促進することを見出した。また、このとき、さらに酸性糖自身も加水分解(糖化)されて単糖あるいはオリゴ糖となるので、発酵原料中に無機酸あるいは無機塩は存在せず加水分解処理後に中和、脱塩操作などの工程が不要であり、環境負荷も大きく低減されることを見出した。
本発明は、この知見に基づきなされるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)中性多糖類100質量部対し、酸性糖を10~1000質量部併存させて水熱反応させ、前記中性多糖類を加水分解する単糖もしくはオリゴ糖の製造方法であって、
前記酸性糖は前記中性多糖類の加水分解を促進し、且つ、前記中性多糖類とともに前記酸性糖が加水分解されることを特徴とする、製造方法、
(2)前記中性多糖類が、デンプン、寒天、グアーガム、グルコマンナン及びキシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)項に記載の単糖もしくはオリゴ糖の製造方法、
)前記酸性糖が、ウロン酸を含む多糖であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載の単糖類もしくはオリゴ糖類の製造方法、
)前記ウロン酸を含む多糖が、ポリガラクツロン酸、アルギン酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン及びU-フコダインからなる群から選ばれる少なくとも1種である()項に記載の単糖類もしくはオリゴ糖類の製造方法、および
)原料の前記多糖類として、炭水化物を含む食品廃棄物、木材または紙を用いる(1)項に記載の単糖もしくはオリゴ糖の製造方法
を提供するものである。
多糖類は通常中性であるので、本発明において単に「多糖類」というときは中性多糖類を意味し、「酸性糖」というときは酸性多糖類を意味する。また、本発明では「オリゴ糖」とは、単糖が2個以上縮合重合したものをいうが、本発明の方法により製造されるオリゴ糖は、好ましくは重合度2~30のもの、より好ましくは重合度2~6のものである。

【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によれば、デンプン等の中性多糖類に無機酸や無機塩などを添加せず酸性糖を併存させることにより、低温、低圧で加水分解して、中性多糖類を単独で加水分解するよりも高収率で単糖、オリゴ糖を得ることができる。また、生成した単糖類の二次分解を抑制することができ、特に発酵阻害因子である5-HMFの副生を抑制することができる。
本発明の方法は、加水分解後の中和・脱塩工程を不要とし、一方、添加する酸性糖自身も発酵原料となる。酸性糖自身も加水分解されて単糖あるいは低重合オリゴ糖となるので、発酵原料中には無機酸あるいは無機塩は存在せず、環境負担は低減される。この加水分解反応温度の低下は、水の飽和蒸気圧も反応温度の低下に伴って低下するので、反応圧力も同時に低下できる。一例として、水のみでデンプンを加水分解する場合、200℃程度は必要であるが、200℃の飽和水蒸気圧は1.55MPa(15.5bar)である。一方、酸性糖としてポリガラクツロン酸をデンプンに添加した場合、同程度の加水分解効果を得るには140℃でよく、この温度における飽和水蒸気圧は0.36MPa(3.6bar)で、反応条件を格段に温和にできる。本発明の適用例として、例えば、米飯などのデンプン質廃棄物に果皮あるいは果皮に含まれるポリガラクツロン酸を添加した態様で、比較的温和な熱水条件下でデンプンをグルコースあるいはそのオリゴ糖に変換でき、添加したポリガラクツロン酸はガラクツロン酸の単糖、オリゴ糖に変換できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、中性多糖類に酸性糖を併存させて水熱反応させ、前記中性多糖類を加水分解することを特徴とする単糖類またはオリゴ糖類の製造方法を提供するものである。なお、特開2005-110675号公報には、中性多糖類であるアガロースの加水分解および酸性糖であるアルギン酸の加水分解についてそれぞれ記載されているが、中性多糖類と酸性糖とを併存させて水熱反応を行い中性多糖類を加水分解することについては具体的に記載されていない。また、同公報に記載された方法では、単糖類の二次分解を抑えて5-HMFの副生を抑制することについては何ら考慮されておらず、反応時間を数時間と長くして多糖類を分解している。これに対し、本発明の方法によれば、酸性糖が中性多糖類の加水分解を促進し、中性多糖類および酸性糖それぞれを単独で加水分解するよりも効率よく高収率で単糖類またはオリゴ糖類を得ることができる。また、生成した単糖類の二次分解を抑制することができ、特に発酵阻害因子である5-HMFの副生を抑制することができる。
【0008】
本発明方法において「中性多糖類」とは、加水分解によって単糖類を生ずる高分子化合物をいい、好ましい例としては、具体的には、デンプン、寒天(アガロース)、グアーガム、グルコマンナン及びキシラン等が挙げられる。なお、セルロースとデンプンとは、共にグルコースが重合した天然の中性多糖類であるが、化学構造が異なるため物理的、化学的性質が全く異なる。デンプンは、セルロースと比べて低温で分解されるため、従来法の超臨界水中での加水分解法ではセルロースの場合より反応時間をさらに短く制御する必要があり、実験的に実現するのは困難であった。
【0009】
本発明において、前記中性多糖類の加水分解の際に併存させる酸性糖としては、ウロン酸を含む多糖であることが好ましい。ここで、「ウロン酸を含む多糖」とは、ウロン酸の繰り返し単位のみから構成される多糖類だけでなく、ウロン酸を構成単位の一部に含む多糖類をも意味する。ウロン酸を含む多糖としては、例えば、柑橘類の果皮などに含まれるペクチンから得られるポリガラクツロン酸、海藻の褐藻類から得られるアルギン酸、U-フコダイン、動物組織に含まれるヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチンなどのグリコサミノグリカンなどが挙げられる。
【0010】
加水分解の際に中性多糖類に併存させる酸性糖の量は、両者の、それぞれの種類、目的の生成物(単糖類、重合度2~30のオリゴ糖)、加水分解処理条件などによって変動し、一義的に定めることはできないが、一般的に言って、中性多糖類100質量部に対し、酸性糖を好ましくは10~1000質量部、より好ましくは20~500質量部併存させる。
本発明において原料の中性多糖類に併存させる酸性糖は、加水分解の際に添加するほか、処理原料中に最初から共存していてもよい。このような例としては米飯などのデンプン質廃棄物中にみかんなどの柑橘類の果皮あるいは、果皮に含まれるポリガラクツロン酸が混合しているものを上記の原料として用いることがあげられる。したがって、これらが混在している食品廃棄物を原料として用いることもできる。
【0011】
本発明における加水分解反応による生成物は、単糖(グルコース、ガラクトース等)またはオリゴ糖であることが好ましい。処理条件(温度、時間)を適宜調節することで、単糖類(重合度1)から重合度2~30(好ましくは2~6)のオリゴ糖まで任意に製造することができる。
【0012】
本発明では、加水分解を水熱反応で行う。本発明に用いられる「熱水」は、温度が好ましくは100~350℃、より好ましくは120~250℃で、圧力が好ましくは0.1~100MPa、より好ましくは0.2~10MPaのものである。
熱水中で加水分解を行う本発明では、超臨界水を用いる方法よりも反応温度、圧力が低く反応条件が比較的穏やかであるため、多糖類などの変質が少ないという利点がある。
熱水の好ましい温度は加水分解される有機化合物(中性多糖類)の種類によって異なる。中性多糖類の中でも、デンプン及びグアーガムの場合は120~250℃が好ましく、140~180℃がより好ましい。
【0013】
一般に多糖類を加水分解する場合、グルコースなどの生成物は、生成後に反応器中に存在すると、分解していき、発酵阻害の原因となる5-HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)の生成原因となる。これに対して、本発明の方法によれば、上記のような比較的温和な条件下での熱水反応であるので生成物の二次分解を抑制することができる。
例えば、中性多糖類としてデンプンを加水分解する場合、単糖としてのグルコースと、オリゴ糖としてマルトース、マルトオリゴ糖が生成し、単糖からオリゴ糖まで生成する。全体の生成物中に単糖を主として生成させるには水熱反応条件を、120~250℃、反応時間2~90分とするのが好ましい。なお、最適な反応条件は、熱水温度が高ければ反応時間は短くてもよく、熱水温度が低ければ反応時間は長くなる。
【0014】
本発明において単糖とオリゴ糖との分離は、クロマトグラフィー(特にゲルろ過クロマトグラフィー)や、溶解度の差を利用した晶析などによって行うことができる。本発明では、反応後に中和操作を行う必要性がなく、プロセスを簡略化することができ、コストやエネルギーを削減することができる。
本発明において、反応器は回分式であっても連続式であってもよい。
【0015】
次に、炭水化物を含む農業生産物、木材または紙類を原料としたグルコースの製造方法ならびにペクチン酸含有農業生産物を原料としたガラクツロン酸の製造方法について説明する。
炭水化物を含む農業生産物、木材もしくは紙類を原料として上記の加水分解方法を行うことにより、グルコースやガラクツロン酸及びそれらのオリゴ糖を製造することができる。
炭水化物を含む農業生産物の具体例としては、例えば、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、トウモロコシ、米、麦などが挙げられる。
また、酸性糖については、ペクチン酸含有農業生産物の具体例としては、例えば、柑橘類、リンゴ、シュガービートなどが挙げられる。また、ポリガラクツロン酸は柑橘類の果皮から得られる。アルギン酸は海藻の褐藻類から得られる。
【0016】
本発明の方法を利用して、炭水化物を含む農業生産物やペクチン酸含有農業生産物を含む食品廃棄物、木材、または紙類を資源として利用することが可能となる。具体的には、得られた単糖やそのオリゴ糖は、食品、医薬品原料などの分野で利用することができる。
また、炭水化物を含む食品廃棄物、木材または紙類を単糖及びそのオリゴ糖に変換し、発酵原料へ変換することもできる。具体的には、エタノール発酵、乳酸発酵、メタン発酵の原料を製造することができる。
【0017】
エタノール発酵の場合、エタノールを製造することができ、燃料として利用することができる。また、エタノールからエチレンを生産することができ、工業的に有用な各種化合物を製造することができる。
乳酸発酵の場合、乳酸を製造することができ、生分解性プラスチックの原料として利用することができる。
メタン発酵の場合、メタンを製造することができ、燃料として利用することができる。また、メタンから水素を生産することができ、燃料電池の原料として利用することができる。
【0018】
得られたガラクツロン酸単糖およびそのオリゴ糖は食品添加物として利用することができる。また、最近は重金属の吸着剤としての利用が検討されている。
【実施例】
【0019】
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
実施例はいずれも回分式反応器(容積3.6mL)を用いたものであるが、本発明の効果は反応器の種類や形状などに制限されない。また実施例はいずれも反応温度140℃、反応時間20、40分であるが、中性多糖類の種類、添加する酸性糖の種類、必要とする加水分解物の分子量やその収率は反応条件に大きく依存するので、実施例の反応条件に限るものではない。
【0021】
以下の実施例において、中性多糖類由来の各生成物の収率(質量%)は、
(中性多糖類由来の生成物の炭素質量(g)/原料中の中性多糖類の炭素質量(g))×100
の数式により求めた。また、中性多糖類の可溶化率(%)は、
(可溶化した中性多糖類の炭素質量(g)/原料中の中性多糖類の炭素質量(g))×100
の数式により求めた。
【0022】
実施例1
(グアーガム+PGA(ポリガラクツロン酸)の場合)
回分式反応器として3.6mL容の回分式反応器に、蒸留水3mL、グアーガム(中性多糖類)仕込量15mg、PGA(酸性糖)仕込量15mgを仕込み、反応温度140℃、反応時間40分で加水分解反応を行った(試料101、本発明)。また、PGAを添加しないこと以外は試料101と同様にして加水分解反応を行った(試料102、比較例)。なお、グアーガムは、単糖のガラクトース及びマンノースから構成されており、ポリガラクツロン酸は、単糖のガラクツロン酸から構成されている。
各試料における中性多糖類(グアーガム)由来の生成物収率および中性多糖類(グアーガム)の可溶化率を表1に示す。
【0023】
【表1】
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【0024】
表1に示すように、グアーガムのみを加水分解した比較例の試料102では、試料の74.5%が加水分解されて可溶化するものの、試料の64.8%は重合度31以上のオリゴ糖に分解されるにとどまり、単糖にまで分解されたのはわずかに0.5%であった。これに対し、酸性糖であるPGAを添加した本発明の試料101では、原料中のグアーガムは100%加水分解されて可溶化しており、重合度31以上のオリゴ糖は生成せずに、すべて単糖および重合度2~30のオリゴ糖に加水分解されていることがわかった。このことから、グアーガムにPGAを併存させて水熱反応(加水分解)を行うと、グアーガムのみで加水分解するよりも糖化収率が向上することがわかった。また、表1には示していないが、本発明の試料101では、試料中の全炭素質量に対して17.5質量%のガラクツロン酸が生成しており、このことからポリガラクツロン酸も加水分解されていることがわかった。
【0025】
また、熱水加水分解後の各試料について、試料中の単糖およびオリゴ糖が変性せずに製造されているか確認するため、さらにペクチナーゼ(Sigma、U.S.A.)を用いて酵素分解を行った。すなわち、上記の熱水加水分解後の各試料における重合度2以上のオリゴ糖について酵素により単糖への分解を試みた。また同様に、上記の熱水加水分解後の各試料を2N 硫酸により加水分解(酸分解)を行った。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
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【0027】
表2に示すように、グアーガムのみを加水分解した試料102では、酵素分解によっても構成単糖は生成せず、酸分解でなければ単糖が生成しないことがわかる。これに対し、グアーガムにPGAを添加した試料101では、先の熱水加水分解によって重合度が2~30と低いオリゴ糖に分解されており、それに続く酵素分解または酸分解によって更に単糖に分解されることがわかる。これにより、本発明の試料101では、試料中の単糖およびオリゴ糖が変性せずに製造されていたことがわかった。
【0028】
実施例2
(キシラン+PGAの場合)
中性多糖類としてグアーガムの代わりにキシランを用いた以外は実施例1における試料101と全く同様にして加水分解を行った(試料201、本発明)。また、PGAを添加しないこと以外は試料201と同様にして加水分解反応を行った(試料202、比較例)。なお、キシランは、単糖のキシロースから構成されている。
各試料における中性多糖類(キシラン)由来の生成物収率および中性多糖類(キシラン)の可溶化率を表3に示す。
【0029】
【表3】
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【0030】
表3に示すように、キシランのみを加水分解した比較例の試料202では、試料の70.4%が加水分解されて可溶化するものの、試料の57.4%は重合度31以上のオリゴ糖に分解されるにとどまり、単糖にまで分解されたのはわずかに0.1%であった。これに対し、酸性糖であるPGAを添加した本発明の試料201では、原料中のキシランは92.2%が加水分解されて可溶化しており、重合度31以上のオリゴ糖は生成せずに、すべて単糖および重合度2~30のオリゴ糖に加水分解されていることがわかった。このことから、キシランにPGAを併存させて水熱反応(加水分解)を行うと、キシランのみで加水分解するよりも糖化収率が向上することがわかった。また、表3には示していないが、本発明の試料201では、試料中の全炭素質量に対して21.5質量%のガラクツロン酸が生成しており、このことからポリガラクツロン酸も加水分解されていることがわかった。
【0031】
さらに、熱水加水分解後の各試料について、実施例1と同様にして酵素分解および酸分解を行った。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
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【0033】
表4に示すように、キシランのみを加水分解した試料202では、酵素分解によっても構成単糖は生成せず、酸分解でなければ単糖が生成しないことがわかる。これに対し、キシランにPGAを添加した試料201では、先の熱水加水分解によって重合度が2~30と低いオリゴ糖に分解されており、それに続く酵素分解または酸分解によって更に単糖に分解されることがわかる。これにより、本発明の試料201では、試料中の単糖およびオリゴ糖が変性せずに製造されていたことがわかった。
【0034】
実施例3
(デンプン+PGAの場合)
中性多糖類としてグアーガムの代わりにデンプンを用いた以外は実施例1における試料101と全く同様にして加水分解を行った(試料301、本発明)。また、PGAを添加しないこと以外は試料301と同様にして加水分解反応を行った(試料302、比較例)。なお、デンプンは、単糖のグルコースから構成されている。
各試料における中性多糖類(デンプン)由来の生成物収率および中性多糖類(デンプン)の可溶化率を表5に示す。
【0035】
【表5】
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【0036】
表5に示すように、デンプンのみを加水分解した比較例の試料302では、試料の75%が加水分解されて可溶化するものの、試料の69.1%は重合度31以上のオリゴ糖に分解されるにとどまり、単糖にまで分解されたのはわずかに0.3%であった。これに対し、酸性糖であるPGAを添加した本発明の試料301では、原料中のデンプンは100%加水分解されて可溶化しており、重合度31以上のオリゴ糖は生成せずに、すべて単糖および重合度2~30のオリゴ糖に加水分解されていることがわかった。このことから、デンプンにPGAを併存させて水熱反応(加水分解)を行うと、デンプンのみで加水分解するよりも糖化収率が向上することがわかった。また、表5には示していないが、本発明の試料301ではガラクツロン酸が生成しており、このことからポリガラクツロン酸も加水分解されていることがわかった。
【0037】
実施例4
(デンプン+PGAの場合)
実施例3における試料301について、反応時間を20分としたこと以外は同様にして加水分解を行った(試料401、本発明)。試料401における中性多糖類(デンプン)由来の生成物収率および中性多糖類(デンプン)の可溶化率を表6に示す。また、実施例3における試料302(比較例)の結果についても表6に転記する。
【0038】
【表6】
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【0039】
表6に示すように、デンプンのみを加水分解した比較例の試料302では、40分反応させることで、試料の75%が加水分解されて可溶化するものの、試料の69.1%は重合度31以上のオリゴ糖に分解されるにとどまり、単糖にまで分解されたのはわずかに0.3%であった。これに対し、酸性糖であるPGAを添加した本発明の試料401では、試料302の半分の反応時間でも、原料中のデンプンは100%加水分解されて可溶化しており、重合度31以上のオリゴ糖は生成せずに、すべて単糖および重合度2~30のオリゴ糖に加水分解されていることがわかった。このことから、デンプンにPGAを併存させて水熱反応(加水分解)を行うと、デンプンのみで加水分解するよりも、処理時間が短く、かつ効率的に加水分解(糖化)できることがわかった。
【0040】
実施例5~8
また、実施例1~4においてポリガラクツロン酸(PGA)の代わりに同量のアルギン酸を用いたこと以外は実施例1~4と同様にして熱水加水分解を行った。その結果、いずれの場合も、アルギン酸の添加は中性多糖類の加水分解(糖化)促進に効果があり、中性多糖類のみで熱水加水分解した場合と比べて、より低分子化されており、アルギン酸の添加は中性多糖類の加水分解に効果があること分かった。