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明細書 :回転発射装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2008-131993 (P2008-131993A)
公開日 平成20年6月12日(2008.6.12)
発明の名称または考案の名称 回転発射装置
国際特許分類 A63F   7/02        (2006.01)
FI A63F 7/02 308F
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2006-318457 (P2006-318457)
出願日 平成18年11月27日(2006.11.27)
発明者または考案者 【氏名】水野 勉
【氏名】堀内 学
【氏名】大橋 義納
【氏名】西本 誉
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2C088
Fターム 2C088BA39
2C088BA48
要約 【課題】鋼球の発射に関してアミューズメント性を加えており、遊戯面に打ち出された球が遊戯者に視覚的な趣向を与える機構を提供する。
【解決手段】鋼球が非接触で発射される様子を目視できることでアミューズメント性が向上し、さらに鋼球に磁気的に垂直力を与えることによって、レールとの摩擦を生じさせて回転を加えて発射することで、遊戯面に射出された球が釘に弾かれてランダムに運動して、遊戯面により多くの球を残すことができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
相対する第1および第2の磁極からなるギャップを有するコアと、前記磁極に沿ってギャップ中に配置されたレールと、前記ギャップをはさんで前記コアに巻きつけた2つのコイルを有し、前記2つのコイルは巻き数が異なる発射装置。
【請求項2】
相対する第1および第2の磁極からなるギャップを有するコアと、前記磁極に沿ってギャップ中に配置されたレールと、前記ギャップをはさんで前記コアに巻きつけた2つのコイルを有し、前記第1および第2の磁極は、それぞれ形状が異なる発射装置。
【請求項3】
相対する第1および第2の磁極からなるギャップを有するコアと、前記磁極に沿ってギャップ中に配置されたレールと、前記ギャップをはさんで前記コアに巻きつけた2つのコイルを有し、前記レールは、前記第1および第2の磁極に沿ってそれぞれ配置された第1と第2のレールであり、前記第1の磁極から前記第1のレールの滑走面までの距離は、前記第2の磁極から前記第2のレールの滑走面までの距離と異なる発射装置。
【請求項4】
相対する第1および第2の磁極からなるギャップを有するコアと、前記磁極に沿ってギャップ中に配置されたレールと、前記ギャップをはさんで前記コアに巻きつけた2つのコイルを有し、前記第1および第2の少なくともいずれかの磁極にくまとりコイルを挿入した発射装置。
【請求項5】
相対する第1および第2の磁極からなるギャップを有するコアと、前記磁極に沿ってギャップ中に配置されたレールと、前記ギャップをはさんで前記コアに巻きつけた2つのコイルを有し、前記第1および第2の少なくとも何れかの磁極には磁性体板が取り付けられている発射装置。
【請求項6】
相対する第1および第2の磁極からなるギャップを有するコアと、前記磁極に沿ってギャップ中に配置されたレールと、前記ギャップをはさんで前記コアに巻きつけた2つのコイルを有し、前記第1および第2の磁極の中心は前記コアの内側から外側に向かってずれている発射装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ランチア(以下、EMLと略記)の発射機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EMLは磁性体を瞬間的な電磁力の作用によって非接触で発射させる装置である。EMLの用途の一つとしてパチンコ機の遊戯球発射装置(特許文献1参照)がある。従来鋼球の発射は回転モータ、リニアアクチュエータ、またはモータとばねなどを用いて槌によって機械的に打ち出すものであった(特許文献2参照)。パチンコ台は遊戯面に液晶画面などによる様々な演出や趣向(特許文献3参照)が施されているのに対して、鋼球の発射には全く趣向が凝らされていない。これに対して特開2004-351088では鋼球を回転発射することで遊戯面に球を多く残し、アミューズメント性を追求している。これはレールと接触した状態で鋼球を台座に保持して、始端位置から終端位置までレール上をスライド移動して、鋼球に回転を与えて発射する機械式の回転発射装置であった。
【0003】

【特許文献1】特開2003-159387号公報
【特許文献2】特開2003-033481号公報
【特許文献3】特開2003-030679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼球の発射に関してアミューズメント性を加えており、遊戯面に打ち出された球が遊戯者に視覚的な趣向を与える機構の開発を必要とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鋼球が非接触で発射される様子を目視できる構造であり、さらに鋼球に磁気的に回転力を与える。以上の2点から上記の問題を解決しようとするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば発射される様子を目視できることでアミューズメント性が向上し、回転を加えて遊戯面に射出された球が釘に弾かれてランダムに運動して、遊戯面により多くの球を残すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施の形態1)
本実施の形態では、まずEMLについて説明する。図14にパチンコ台に用いるEMLの基本構成(従来技術)を示した。同システムはコア1と鋼球2とコイル3、および定電流源4で構成されている。コアは2つの磁極から構成される。定電流源4から通電時間T0のパルス電流I (5)を通電すると、コイル3に同図中に示した方向に電流が流れる。これによってコア1にはパルス電流I (5)による磁束F (6)が流れる。磁束F (6)はギャップ部において空気より透磁率の高い鋼球2に鎖交する。磁束F (6)は磁路を最小にとって磁気抵抗を減少させようとするため、鋼球2には紙面上方向の磁気力F (11)が作用する。これによって鋼球2は速度v (7)で発射される。鋼球2の発射方向である変位zと磁気力Fの正方向9を同図のようにとり、鋼球2の中心と磁極18を形成する鉄心の中心が一致する位置を変位z =
0 mm (10)とする。このとき、実測により鋼球2の初期位置z0 (8) = -32.5 mmにおいて、飛翔高さが1 mとなるように電流を設定した場合、鋼球2の回転数は3.3~5.7 rpsとなった。鋼球2に変位z = z0からz =
z1まで運動した間に与えられる仕事Wは次式で与えられる。
【0008】
【数1】
JP2008131993A_000003t.gif

【0009】
ここに、F:磁気力[N]、z:変位[m]
【0010】
与えられた仕事は運動エネルギーTとなり、次式で与えられる。
【0011】
【数2】
JP2008131993A_000004t.gif

【0012】
ここに、m:鋼球の質量[kg]、v:速度[m/s]
【0013】
すなわち、図14のEMLでは運動エネルギーTは鋼球2を発射するエネルギーとなる。
【0014】
図1に本実施の形態のEMLの構成を示す。左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLを示した。同図では鋼球2に磁気力F (11)が発生するとともに、磁極18を形成する左右の鉄心で磁束密度Byのアンバランスを生じさせ、磁極方向に垂直力Fy (12)が作用する。このときレール19と鋼球2との間で摩擦力Ff (13)が働いて、角速度w (14)の回転を与えて発射することができる。なお、同図では左右のコイル巻数を変えることで垂直力Fy (12)を発生させているが、左右のコイル巻数が等しくても2つの電源によって左右のコイルに流すパルス電流の大きさを変えることによっても同様の効果が得られる。
【0015】
図2に左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLの磁気力-変位特性を示した。同図は有限要素法(以下、FEMと略記)の静磁界解析を用いて計算した。鉄心に電磁鋼板を用いている。また試料振動形磁力計を用いて測定した鋼球2の磁化特性をFEMに入力して解析を行った。起磁力は左右のコイル合わせてNI = 5.5 kA一定とした。左右の巻数は、紙面左側コイルの巻数:紙面右側コイルの巻数 = 1:2となるように決定した。ギャップ21の長さは15 mmである。図14の従来技術の磁気力F (11)と比較して磁気力F (11)はほぼ同じ特性である。
【0016】
図3に左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLの垂直力-変位特性を示した。同図はFEMを用いて図2と同じ解析条件で計算を行った。垂直力Fy (12)は最大で5 N程度であった。
【0017】
図4に左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLの磁束密度-y軸方向の位置特性を示した。同図はFEMの静磁界解析を用いて計算した。起磁力は左右のコイル合わせてNI = 3.6 kA一定とした。左右の巻数は、紙面左側コイルの巻数:紙面右側コイルの巻数 = 144:258となるように決定した。ギャップ21の長さは15 mmである。従来技術では、y = 0の軸に対して、磁束密度Byは対称となった。異なる巻数モデルでの磁束密度Byは従来技術と比較して、コイルの巻数が大きい側で大きく、コイル巻数が小さい側で小さくなった。この磁束密度Byの偏りによって垂直力Fy (12)が生ずる。
【0018】
鋼球2とレール19の間に発生する摩擦力Ff (13)は次式で与えられる。
【0019】
【数3】
JP2008131993A_000005t.gif

【0020】
ここに、m:摩擦係数、Fy:垂直力[N]
【0021】
また摩擦係数が次式の条件を満たしたとき、摩擦力Ff (13)は次のようにも与えられる。
【0022】
【数4】
JP2008131993A_000006t.gif

【0023】
【数5】
JP2008131993A_000007t.gif

【0024】
ここに、msm:最大静止摩擦係数、ms:静止摩擦係数
【0025】
このとき鋼球2はレール19の上をすべることなく回転するため、運動エネルギーTは次式で与えられる。
【0026】
【数6】
JP2008131993A_000008t.gif

【0027】
ここに、I:慣性モーメント[kg・m2]、w:角速度[rad/s]
【0028】
すなわち運動エネルギーTは鋼球2を発射するエネルギーと回転力に要するエネルギーの和で与えられる。よって入力エネルギーが一定の場合、変位z方向の磁気力F (11)は減少して、発射の速度v (7)も減少する。すなわち図1のモデルでは、磁気力F (11)と垂直力Fy (12)の比率を、速度vが要求する仕様を満足するように決定する必要がある。
【0029】
また鋼球2とレール19の間にすべりがある場合、すなわち数4を満たさない場合、摩擦力Ff (13)は次式で与えられる。
【0030】
【数7】
JP2008131993A_000009t.gif

【0031】
ここに、 md:動摩擦係数
【0032】
このとき運動エネルギーTはすべりによって損失するため、所要の回転力や発射速度を得るように決定する必要がある。
【0033】
実測により左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLでは、鋼球2の初期位置z0 (8) = -33 mmにおいて、飛翔高さが1 mとなるように電流を設定した場合、鋼球2の回転数は18~21 rpsとなった。
【0034】
(実施の形態2)
図5に本実施の形態のEMLの構成を示す。本実施の形態は、左右の磁極18に非対称の切欠き20を設けたEMLである。同図は図4と同様に鋼球2に作用する磁束密度Byをy = 0の軸に対して非対称に与えて磁極18方向に垂直力Fy (12)が作用することによって、レール19との摩擦で鋼球2に回転を与えて発射する構造である。
【0035】
図6に左右の磁極18に非対称の切欠き20を設けたEMLの磁気力-変位特性を示した。同図はFEM静磁界解析であり、鉄心に電磁鋼板を用いて、起磁力は左右のコイル合わせてNI = 5.5 kA一定とした。ギャップ21の長さは15 mmである。また切欠き20は紙面左側の磁極18の中心から、10.2 度の角度の切欠き20を設けてある。磁気力は従来技術と比較して最大値が減少している。しかしF = 0 Nとなる変位はz = 2 mm程度となっており、変位z = -7.5 mm ~ 2 mmまでは切欠きモデルの磁気力F (11)が従来技術の磁気力F (11)を上回っている。このことから図14における電流の通電時間T0をF > 0とすれば、鋼球2に与える仕事は従来技術と切欠きモデルで、ほぼ同じになる。
【0036】
図7に左右の磁極18に非対称の切欠き20を設けたEMLの垂直力-変位特性を示した。同図はFEMを用いて図6と同じ解析条件で計算を行った。垂直力Fy (12)は最大で6 N程度であった。なお、本実施の形態で示した磁極の切欠きは1例であり、ギャップ中の磁束密度が非対称なるように磁極の形状を変えてもよい。
【0037】
(実施の形態3)
図8に本実施の形態のEMLの構成を示す。本実施の形態は、鋼球2を偏心させたEMLである。同図はギャップ21の中心軸に対して鋼球2を偏心させて設置することによって、磁極方向に垂直力Fy (12)を作用させて、レール19との摩擦で鋼球2に回転を与えて発射する構造である。
【0038】
図9に鋼球2をy方向に偏心させたEMLの磁気力-変位特性を示した。同図はFEM静磁界解析であり、鉄心に電磁鋼板を用いて、起磁力は左右のコイル合わせてNI = 5.5 kA一定とした。ギャップ21の長さは15 mmである。また鋼球2はギャップ21の長さの中心軸上に対して、y方向に1 mm偏心させている。磁気力F (11)は従来技術よりも若干大きな力を得ることができる。これは鋼球2の直径11 mmに対してギャップ21の長さが15 mmと大きいために、鋼球2がより磁極18に近づいた方が磁束F (6) は流れやすくなる。
【0039】
図10に鋼球2を偏心させたEMLの垂直力-変位特性を示した。同図はFEMを用いて図9と同じ解析条件で計算を行った。垂直力Fy (12) = 15 N以上の大きな力を得ることができる。これによってすべりなく鋼球2に回転を与えることができる。
【0040】
実測により鋼球2を偏心させたEMLでは、鋼球2の初期位置 z0 (8) = -33 mmにおいて、飛翔高さが1 mとなるように電流を設定した場合、鋼球2の回転数は18~27 rpsとなった。
【0041】
(実施の形態4)
図11に本実施の形態のEMLの構成を示す。本実施の形態は、磁極18にくまとりコイル15を挿入したEMLである。同図は片側の磁極18にくまとりコイル15を挿入している。くまとりコイルとは銅線を1~2回程度巻いた磁束の位相を遅らせる作用があるコイルである。そのため、くまとりコイル15内部の鉄心を通る磁束F’ (16)は、それ以外の部分を通る磁束よりも位相が遅れる。よって鋼球2に時間的に遅れた磁束が鎖交して回転を与えて発射することができる。
【0042】
(実施の形態5)
図12に本実施の形態のEMLの構成を示す。本実施の形態は、右側の磁極18に磁性体板17を取り付けたEMLである。同図は磁極18に磁性体板17を取り付けている。磁性体板17が磁化されることにより鋼球2が磁性体板17に引き寄せられ、鋼球2に紙面右方向の垂直力Fy (12)を作用させる。これによって磁性体板17との摩擦で鋼球2に回転を与えて発射する構造である。
【0043】
実測により右側の磁極18に磁性体板17を取り付けたEMLでは、鋼球2の初期位置z0 (8) = -32.5 mmにおいて、飛翔高さが1 mとなるように電流を設定した場合、鋼球2の回転数は56~67 rpsとなった。
【0044】
(実施の形態6)
図13に本実施の形態のEMLの構成を示す。本実施の形態は、鋼球2の発射方向に左右の磁極18をずらしたEMLである。磁極18がずれていることによって、磁束F (6)の流れが変化し、鋼球2にy方向の垂直力Fy (12)を作用させる。これによってレール19との摩擦で鋼球2に回転を与えて発射する構造である。
【0045】
実測により鋼球2の発射方向に左右の磁極18をずらしたEMLでは、鋼球2の初期位置 z0 (8) = -32.5 mmにおいて、飛翔高さが1 mとなるように電流を設定した場合、鋼球2の回転数は16~21 rpsとなった。
【0046】
以上の実施の形態について、個々にもしくは2つ、3つを併用して用いることで、鋼球に回転力を与えて発射する機構が実現し、鋼球の発射に関して更なるアミューズメント性を凝らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEML
【図2】左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLの磁気力-変位特性
【図3】左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLの垂直力-変位特性
【図4】左右の磁極18に異なる巻数のコイルを挿入したEMLの磁束密度-y軸方向の位置特性
【図5】左右の磁極18に非対称の切欠き20を設けたEML
【図6】左右の磁極18に非対称の切欠き20を設けたEMLの磁気力-変位特性
【図7】左右の磁極18に非対称の切欠き20を設けたEMLの垂直力-変位特性
【図8】鋼球2を偏心させたEML
【図9】鋼球2を偏心させたEMLの磁気力-変位特性
【図10】鋼球2を偏心させたEMLの垂直力-変位特性
【図11】磁極18にくまとりコイル15を挿入したEML
【図12】磁極18に磁性体板17を取り付けたEML
【図13】鋼球2の発射方向に左右の磁極18をずらしたEML
【図14】パチンコ台に用いるEMLの基本構成(従来技術)
【符号の説明】
【0048】
1 コア
2 鋼球
3 コイル
4 定電流源
5 パルス電流I
6 パルス電流による磁束F
7 速度v
8 鋼球の初期位置z0
9 変位zと磁気力Fの正方向
10 変位z = 0 mm
11 磁気力F
12 垂直力Fy
13 摩擦力Ff
14 角速度w
15 くまとりコイル
16 くまとりコイルによる磁束F'
17 磁性体板
18 磁極
19 レール
20 切欠き
21 ギャップ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13