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明細書 :X線検査方法およびX線検査装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4031113号 (P4031113)
公開番号 特開2000-046759 (P2000-046759A)
登録日 平成19年10月26日(2007.10.26)
発行日 平成20年1月9日(2008.1.9)
公開日 平成12年2月18日(2000.2.18)
発明の名称または考案の名称 X線検査方法およびX線検査装置
国際特許分類 G01N  23/04        (2006.01)
G01N  23/06        (2006.01)
G01V   5/00        (2006.01)
FI G01N 23/04
G01N 23/06
G01V 5/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願平10-210832 (P1998-210832)
出願日 平成10年7月27日(1998.7.27)
審査請求日 平成17年4月14日(2005.4.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】595034330
【氏名又は名称】松原 英一郎
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
発明者または考案者 【氏名】松原 英一郎
【氏名】川島 勉
【氏名】西木 直巳
個別代理人の代理人 【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100083356、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 康夫
【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
審査官 【審査官】豊田 直樹
参考文献・文献 特開平02-224744(JP,A)
特公平06-046240(JP,B2)
特開平08-260150(JP,A)
特開平05-346496(JP,A)
特開平06-230195(JP,A)
特開平07-111322(JP,A)
特開平06-313757(JP,A)
特開平09-229881(JP,A)
特開平08-313458(JP,A)
調査した分野 G01N 23/00 - 23/227
G21K 1/00 - 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
白金/カーボンの第1の多層膜モノクロメータと、白金/カーボンの、前記第1の多層膜モノクロメータと異なる第2の多層膜モノクロメータとを用い、
前記第1の多層膜モノクロメータにおいて第1の反射角で反射された波長λ1の第1のX線を測定対象物(人間を除く)に照射し、前記第2の多層膜モノクロメータにおいて前記第1の反射角で反射された波長λ2の第2のX線を前記測定対象物に照射した後、
前記第1のX線の透過データと前記第2のX線の透過データとの差分に基づいて測定対象物の所定の元素の情報を得ること
を含むX線検査方法。
【請求項2】
白金の層厚とカーボンの層厚が、白金層厚:カーボン層厚=1:2の関係にあることを特徴とする請求項1に記載のX線検査方法。
【請求項3】
X線発生器と、
前記X線発生器から照射されたX線を第1の反射角で反射させて波長λ1の第1のX線として測定対象物に照射する白金/カーボンの第1の多層膜モノクロメータと、
前記X線発生器から照射されたX線を前記第1の反射角で反射させて波長λ2の第2のX線として前記測定対象物に照射する、白金/カーボンの、前記第1の多層膜モノクロメータと異なる第2の多層膜モノクロメータと、
前記測定対象物を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器からのデータを処理するX線データ処理器と、を備え、
前記第1の多層膜モノクロメータと前記第2の多層膜モノクロメータは白金層1層とカーボン層1層の層厚の和が異なること
を特徴とするX線検査装置
【請求項4】
白金の層厚とカーボンの層厚が、白金層厚:カーボン層厚=1:2の関係にあること
を特徴とする請求項3に記載のX線検査装置
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線を用いて対象物体を検査する方法およびその方法に使用する装置、即ち、X線検査方法およびX線検査装置に関する。詳しくは、対象物体中における特定の元素の有無を検出するためのX線検査方法およびX線検査装置に関する。このような方法および装置は、例えば電子部品等の工業用X線非破壊検査、医療用X線検査等に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子部品等の非破壊検査および人体内部の臓器撮影にはX線が多く用いられている。X線による非破壊検査は、X線を発生して対象物体としての測定試料に照射するX線発生・照射器、測定試料を透過したX線を検出して透過したX線に関するデータを生成するX線検出器、およびX線検出器により生成された透過したX線に関するデータを処理して画像を形成するデータ処理器を備えたX線検査装置を用いて実施される。
【0003】
この装置を用いて測定試料を検査するには、X線発生・照射器から白色X線を測定試料に照射し、透過したX線をX線検出器で検出し、検出されたデータを処理して測定試料に関するX線透過画像を表示する。
このようなX線検査の原理は、X線の透過の程度が測定試料を構成する物質の厚さ、物質の種類等によって異なることに基づくものであり、測定試料内部の欠陥部または内部に存在する異なる物質の形状、寸法、位置等を、透過したX線に関するデータに対応する画像(いわゆるX線透過画像)のコントラストの違いにより測定試料を破壊することなく知ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来のX線検査方法では、X線発生・照射器から白色X線を測定試料に照射して、X線透過の程度で物質内部の欠陥部または異なる物質の形状、寸法、位置等を検知することに関しては、透過画像のコントラストの違いのみに依存している。従って、X線透過の度合いが似ている周期表で近接する複数の元素で構成される物質の状態を判別したり、複雑に入り組んだ構造を持つ、物質の内部の状態を明らかにすることは極めて困難である。このことを以下に簡単な例を用いて説明する。
【0005】
図1に模式的断面図で示すように、部分a、部分b、部分cおよび部分dから構成され、それぞれの部分は元素A、元素Bおよび/または欠陥部(空隙部)から構成されている厚さ5tの測定試料10における元素Aの存在を確認するためにX線検査する場合を考える。図1では、測定試料10の厚さ方向にX線を照射する。尚、元素AのX線吸収係数はμAであり、元素BのX線吸収係数はμBであり、簡単のためにμA=2μBであると仮定する。
【0006】
従って、試料の上部から強度I0のX線を照射すると、各部分を透過するX線の強度Iは以下のように表される:
部分a I=I0exp(4μBt)
部分b I=I0exp(μAt+3μBt)=I0exp(5μBt)
部分c I=I0exp(5μBt)
部分d I=I0exp(μAt+2μBt)=I0exp(4μBt)
(但し、tは、図示するように、測定試料の厚さの1/5である。)
【0007】
従って、このような各部分における透過したX線の強度データを処理して、各データに対応する画像を得ることができる。その画像(透過X線写真)の例を図2に模式的に示す(測定試料10を図1の上から見た場合の断面に対応する)。明らかなように、部分aおよび部分dは同じ状態であると判断され、また、部分bおよび部分cは同じ状態であると判断される。従って、このような検査方法では、X線透過写真に基づいて元素Aの正確な状態(例えば元素Aの有無)を特定することは不可能である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するもので、X線検査において検出すべき元素の情報に関してより向上した結果を得ることができるX線検査方法及びX線検査装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記課題を解決するために検討した結果、元素のX線吸収係数がその元素の吸収端の波長を境にして長波長側のX線と短波長側のX線で大きく異なることを利用することによって、そのような元素を検出対象として含む対象物体を検査する場合には、そのような元素に関して向上した情報を得ることができることを見いだした。
【0010】
即ち、本発明は、対象物体としての測定試料中に存在する検出すべき物質を構成する元素の吸収端の波長より長波長の単色X線を測定試料に照射して得られるX線透過データ、および吸収端の波長より短波長の単色X線を測定試料に照射して得られるX線透過データである、吸収端を挟む2種類の波長のX線についてのX線透過データを差分することにより、測定試料中の検出すべき物質を構成する元素のみの情報を得る、例えばX線透過像を得るX線検査方法を提供する。
【0011】
ここで、この情報とは、例えば検出すべき物質を構成する元素の測定試料中の有無または測定試料中の存在位置に関する種々のデータが含まれ、情報を得るとは、例えば、検出すべき物質を構成する元素の位置、分布状態を特定できることが含まれる。従って、検出すべき物質の測定試料における状態を確認することができる。より具体的には、2種類のX線透過データを差分した結果を処理して画像にて表示する場合、目視的に検出すべき物質の測定試料における状態を確認することができる。このようなデータから画像を得るための処理、いわゆる画像処理が、一般的に行われていることは周知であり、これ以上の詳細な説明は省略する。即ち、2種類の波長におけるX線透過データを得て、これを差分することを除いた事項、例えばデータの画像処理については一般的に実施されている方法を採用できる。尚、本発明において、検出すべき対象は、測定試料中における元素そのものであってよい。
【0012】
更に、上述のような2種類の波長の単色X線を測定試料に照射して所定方向にスキャンさせて2種類のX線透過データを得、これらのデータを差分することによりスキャン方向に対して平行な測定試料の断面に関して検出すべき物質を構成する元素に関する情報を得、次に、スキャン方向を変えて測定試料の別の断面に関して検出すべき物質を構成する元素に関する情報を得る。このような操作を繰り返し、画像処理することにより検出される元素が構成する物質の画像を、断面画像、立体画像等として得ることができる。得られたX線透過データからこのような断面画像、立体画像等を得る方法自体は既知の画像処理方法を適用できる。
【0013】
例えば、所定のスキャン幅で異なる波長を有する2種類の単色X線を用いて、最初に試料をその幅方向でスキャンして、次に試料をその厚さ方向でスキャンしてよく、更に、必要であれば、試料をその奥行き方向でスキャンしてよい。また、試料の表面に沿って試料の周囲で回転するようにスキャンしてよい。更に、これらを適当に組み合わせてもよい。これらのスキャンにより得られた透過X線データを周知の方法で処理して検査対象の物質を構成する元素の状態をに関する情報、例えば画像を表示できる。
【0014】
更に、本発明は、X線発生器、X線発生器から照射された白色X線を単色化して、測定試料中の検出対象となる物質を構成する元素の吸収端の波長より長波長の単色X線と短波長の単色X線を形成するモノクロメータ、および単色化されたX線を測定試料に照射し、測定試料を透過したX線を検出して透過X線に関するデータを発生するX線検出器を有して成るX線検査装置を提供する。
【0015】
この装置は、更に、吸収端の波長より長波長の単色X線を測定試料に照射して得たX線透過データと短波長の単色X線を測定試料に照射して得たX線透過データを処理して、例えば画像処理して、測定試料中の検出対象である物質を構成する元素のみの状態に関する情報、例えば検出対象である物質のX線透過像を得るX線透過データ処理器を備えたX線検査装置を提供する。この装置は、画像表示装置を更に有してもよい。
【0016】
本発明において、モノクロメータは、白色X線から吸収端を挟んで異なる波長の単色化X線を発生する必要がある。そのためには、白色X線がモノクロメータに入射する角度を変えることができるように、X線発生器、モノクロメータおよび測定試料(必要な場合は測定試料およびX線検出器)の少なくとも2つが相対的に移動できるように配置されていればよい。
【0017】
モノクロメータが異なる波長の単色化X線を発射する場合、発射される単色化X線のモノクロメータに対する角度が変わるので、モノクロメータからの単色化X線が測定試料の同じ箇所を好ましくは同じ角度(例えば直角)で測定試料に入射するように、測定試料も相対的に移動できるようになっているのが好ましい。「相対的に」なる用語は、その要素自体が動く場合の他に、その要素が動かずに他の要素が動くことによって実質的にその要素が動いたことに等しくなる場合をも含む意味で使用している。
【0018】
具体的には、モノクロメータ自体を回転させて、白色X線の入射角θ1からθ2になるようにする。モノクロメータの回転に対応させて測定試料も回転させて、単色化X線が常に測定試料の同じ位置で好ましくは同じ角度(通常直角)で測定試料に当るようにする(後述する図5参照)。
【0019】
別の態様では、モノクロメータを固定して、X線発生器および測定試料(必要な場合は測定試料およびX線検出器)を回転できるようにしてよい。更に別の態様では、測定試料(必要な場合は測定試料およびX線検出器)を固定してモノクロメータおよびX線発生器を回転できるようにしてもよい。いずれの態様を選択するかということは、特に限定されるものではないが、一般的には、それぞれの要素の回転を容易にできるか否かにより判断することができる。
【0020】
本発明の別の態様では、上述のような要素の移動に代えて、X線発生器と測定試料を結ぶ軸に対して垂直な方向にモノクロメータを平行移動することにより、白色X線の入射角画θ1からθ2になるようにする。この場合、単色化X線は、反射角がθ1からθ2に変わっても、測定試料の常に同じ箇所に当るという利点がある。尚、単色化X線が測定試料に当る角度も同じにするには、測定試料を軸回転できるようにすればよい。
【0021】
本発明の更に別の態様では、2種のモノクロメータを用いて、これを入れかえることにより、入射角が同じであっても異なる波長の単色化X線を発生できるように使用してよい。例えば格子間隔を変えた2種類の多層膜をモノクロメータとして使用できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
「発明が解決しようとする課題」の欄にて用いた2種類の元素AおよびBから構成され、部分的に欠陥を持つ試料(図1)について考える。一般的に元素のX線吸収係数は、図3に示すように、X線波長の関数であり、元素固有の吸収端(波長λ0)で不連続に大きく変化することが知られている。元素の吸収端に関しては、ある元素に関して、その吸収端近傍の波長領域において吸収端波長(λ0)より長波長側と短波長側でその元素の線吸収係数が大きく変化するが、他の元素の線吸収係数はほとんど変化しない。
【0023】
(1)最初に、元素Aが図3に示すような線吸収特性を有する場合、吸収端波長(λ0)より短波長の単色X線(波長λ1)を測定試料に照射した場合、元素AのX線吸収係数はμA1であり、元素BのX線吸収係数はμB1であると仮定する。
【0024】
従って、試料の上部からX線(強度I01)を照射すると、透過するX線の強度(I1)は以下のようになる:
部分a I1=I01exp(4μB1t)
部分b I1=I01exp(μA1t+3μBt)
部分c I1=I01exp(5μB1t)
部分d I1=I01exp(μA1t+2μBt)
(但し、tは、図示するように、試料の厚さの1/5である。)
【0025】
(2)次に、吸収端より長波長の単色X線(波長λ2)を測定試料に照射した場合、元素AのX線吸収係数はμA2であり、元素BのX線吸収係数はμB2であると仮定する。従って、試料の上部からX線(強度I02)を照射すると、透過するX線の強度(I2)は以下のようになる:
部分a I2=I02exp(4μB2t)
部分b I2=I02exp(μA2t+3μB2t)
部分c I2=I02exp(5μB2t)
部分d I2=I02exp(μA2t+2μB2t)
(但し、tは、図示するように、試料の厚さの1/5である。)
【0026】
ここで、吸収端は元素Aに固有のものであり、元素Aの吸収端の両側の波長λ1またはλ2を有する単色X線を使用しているので、元素Bの吸収係数は両波長λ1およびλ2において大差なく、μB1=μB2としてよい。また、通常、I01=I02=I0である。
【0027】
これらの2種類のX線を照射することにより得られるX線透過データを画像処理して得られる画像は、上記I1およびI2に対応する画像であり、各部分のI1およびI2の大きさに応じて例えばコントラストの差として画像を表現できる。その画像をI1に付いては図4(a)に、また、I2に付いては図4(b)に模式的に示している。
【0028】
(3)次に、得られた2種類の画像データを差分する。即ち、I1-I2を計算する:
部分a I1-I2=0
部分b I1-I2=I0exp(μA1t-μA2t)
部分c I1-I2=0
部分d I1-I2=I0exp(μA1t-μA2t)
明らかなように、元素Aが存在する部分のみ画像データが得られ、元素Aが存在しない部分については、データが相殺されるので画像データは得られない。このI1-I2に対応する画像を図4(c)に模式的に示している。
【0029】
明らかなように、検出すべき元素Aが存在する部分bおよび部分dが、元素Aが存在しない部分aおよび部分cから区別されている。即ち、本発明のように、検出すべき元素の吸収端を挟んで異なる2種類の波長の単色化X線を用いてX線透過データを得、これらのデータを差分することにより、その元素のみの状態を確認することができる。元素の吸収端は、いずれの波長領域にあってもよいが、一般的には1~4Å程度の範囲に吸収端が存在するのが好ましい。それは、1Åより短い波長を良好に分光できる適当なモノクロメーターが少ないこと、また、波長が4Åより大きくなるとX線強度が小さくなり、X線が透過しにくいからである。
【0030】
吸収端の波長(λ0)とλ1またはλ2との差は、検出すべき元素のX線透過係数の特性に応じて適当に選択できる。一般的には吸収端の波長に近い波長を選択すると、吸収係数の差が大きいので好ましい。例えば、以下の範囲のλ1およびλ2を選択できる:
【0031】
JP0004031113B2_000002t.gif
【0032】
尚、元素が有する吸収端は必ずしも1つではなく、複数存在する場合が多い。従って、測定試料が検出すべき元素の他に、周期律表においてその元素に近接する他の元素を含む場合において、複数の吸収端の内、他の元素の線透過係数の変化が大きくない波長領域に存在する吸収端を使用するのが好ましい。
【0033】
また、場合により、異なる2種類の波長λ1およびλ2を使用する場合において、I0が異なる(I01≠I02)場合には、X線透過強度を入射X線強度により規格化した(即ち、I1/I01およびI2/I02を算出する)データを用いて差分すればよい。本発明においては、このようにデータを規格化してから差分する場合も、差分することに含めている。
【0034】
このように、元素Aの吸収端より短波長の単色X線(波長λ1)と長波長の単色X線(波長λ2)の強度差が大きい場合は、測定試料に照射されるX線の強度(I0)が大きく異なる場合がある。その場合、例えば、モノクロメータと測定試料との間に測定試料に入射するX線強度をモニターする別のX線検出器を用いる。この検出器として、透過型プロポーショナルカウンター、透過型イオンチャンバーあるいは金属箔やポリマー箔からのX線散乱モニターが使用できる。先に説明したように、この検出器で検出した、測定試料に入射するX線強度で測定試料を透過したX線強度を規格化することにより、λ1とλ2が大きく異なる場合でも精度良く元素AのみのX線透過データを、従って、精度の良い画像を得ることができる。
【0035】
X線発生器としては、例えばX線管を用いることができる。本発明では、特性X線ではなく、白色X線を単色化して利用できるため、強度のより強いX線を発生できる回転対陰極のX線管を用いるのが好ましい。X線管の管電圧は、検出したい元素の吸収端波長より短波長のX線を発生できれば良いが、白色X線の最大強度を示す波長と吸収端波長が同じになるように設定するのが好ましい。
【0036】
X線管のターゲットとして、材質は特に限定されない。しかし、強度の強い白色X線を必要とするため、原子番号の大きい元素、例えばモリブテン、タングステン、金、ロジュウムなどを用いるのが好ましい。
【0037】
モノクロメータは、検出したい元素の吸収端波長近傍の波長のX線に単色化できる格子定数を持つものであればよく、通常のX線用モノクロメータを使用できる。例えば、検出したい元素の吸収端が約1~4Åあれば、グラファイト(002)(格子定数2d=6.72Å)、シリコン(111)(格子定数2d=6.27Å)、フッ化リチウム(200)(格子定数2d=4.03Å)、フッ化リチウム(220)(格子定数2d=2.85Å)、フッ化リチウム(420)(格子定数2d=1.80Å)、ゲルマニウム(111)(格子定数2d=6.53Å)、InSb(111)(格子定数2d=7.48Å)等を使用することができる。また、単色化したい波長に応じて多層膜(例えばカーボンと金との多層膜)を用いることもできる。一般的には、反射強度を考慮すると、グラファイト(002)を用いるのが好ましく、分解能および平行性を考慮すると、Si(111)を使用するのが好ましい。
【0038】
また、単色化したいX線の波長が短い(例えば0.1Å以下)場合には、例えばSi(311)、Si(553)などを使用できる。また、単色化したいX線の波長が長い(例えば10Å以上)場合には、例えばKAP[フタル酸水素カリウム(KHC844)](001)(格子定数2d=26.64Å)、多層膜、回折格子を使用できる。
【0039】
X線検出器として、デジタル処理のできる検出器、例えばイメージングプレート、X線CCDカメラを使用することができる。
本発明の方法の実施に際して使用する装置としては、吸収端波長の両側でその波長に近い波長を有する単色化X線を発生させることを除いて、X線発生器、モノクロメータ、X線検出器、データ処理器等に関しては、通常のX線分析に使用されている既知の装置を使用することができる。
【0040】
上述のように構成したX線検査装置を用いて、図1に示すようなAおよびBの2種類の元素で構成され、部分的に欠陥部を持つ測定試料中の元素Aの状態を確認するためのX線検査は、例えば次のように実施できる。
【0041】
X線発生器より照射された白色X線をモノクロメータにより検出対象である元素Aの吸収端波長より短波長λ1のX線に単色化する。その単色化されたX線を測定試料に照射し、測定試料を透過するX線をX線検出器で検出して透過X線に関するデータを得、それをデータ処理器に送り蓄積する。
【0042】
次に、X線発生器、モノクロメータ、ならびに測定試料およびX線検出器の3者から選択される2つ、通常、比較的容易に移動できるものを回転させ、X線発生器から照射された白色X線を元素Aの吸収端波長より長波長λ2の単色X線に単色化し、測定試料に照射する。測定試料を透過するX線をX線検出器で検出して透過X線に関するデータを得、それをデータ処理器に送り蓄積する。
波長λ1の場合のデータおよび波長λ2の場合のデータをデータ処理器にて差分処理して、検出対象である元素Aだけの情報を得ることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明に基づいてX線検査を実施する1つの態様の基本構成をブロック図で模式的に図5に示す。図5に示す態様では、X線発生器1から照射された白色X線は、入射角θ1でモノクロメータ2に入射して、モノクロメータ2により単色化される(例えば波長λ1)。単色化されたX線は測定試料3に照射され、測定試料を透過したX線はX線検出器4により検出される。検出された画像はデータ処理器5で画像処理され、表示部6に表示される。
【0044】
尚、本発明では、単色化X線の測定試料への入射方向の延長線上に検出すべき元素が存在するか否かを測定することになる。従って、測定試料に照射される単色化X線の波長が異なる場合であっても、単色化X線の測定試料に対する入射点および好ましくは入射角は同じであるのが好ましい。一般的に、測定試料に照射される単色化X線の波長が異なる場合であっても、単色化X線の測定試料に対する入射点は同じであり、入射角は90°であるのがより好ましい。例えばθ1およびθ2が大きく異ならない場合には、入射点のみが保持されるように、測定試料を保持しても実用上は差し支えない場合がある。
【0045】
図示した態様では、モノクロメータ2は、それに入射する白色X線の入射角をθ1からθ2に変えることにより異なる波長(例えばλ2)の単色化X線を得ることができるように回転可能である(矢印A参照)。例えば、照射される白色X線に対してモノクロメータ2の反射面の角度を変えることができるように軸回転可能である。
【0046】
更に、波長λ2の単色化X線が測定試料3の実質的に同じ位置において同じ角度で入射するように測定試料3も(必要な場合にはX線検出器4と一緒に)回転可能である(矢印B参照)。例えば、モノクロメータ2への白色X線の入射点Oを中心として、測定試料3とX線検出器4を矢印Bのように回転させることにより行う。尚、この場合において、X線発生器1は固定されていてよく、白色X線を発生してモノクロメータ2に向かって照射する。
【0047】
別の態様では、モノクロメータ2を固定して、X線発生器1と測定試料3(および必要な場合にはX線検出器4)が回転可能であってもよい。この態様においても、白色X線のモノクロメータに入射する角度を変えることができ、別の波長λ2の単色化X線を得ることができる。
【0048】
更に別の態様では、測定試料3およびX線測定器4を固定して、X線発生器1とX線検出器4が回転可能であってもよい。この態様においても、白色X線のモノクロメータに入射する角度をθ1からθ2に変えることができ、別の波長λ2の単色化X線を得ることができる。
【0049】
従って、測定装置を構成するX線発生器1、モノクロメータ2および測定試料3(X線検出器4を含んでよい)の3つの内の少なくともいずれか2つを回転可能にしておけば、モノクロメータに入射する白色X線の入射角をθ1からθ2に変えることができ、それにより、同じモノクロメータを使用する場合でも、異なる波長の単色化X線(λ1およびλ2)を得ることができる。この場合、異なる波長の単色化X線のモノクロメータからの出射角は異なるので、測定試料3を固定しておくと、測定試料への単色X線の入射の位置および角度が変わるので、これらが変わらないようにするために、同じモノクロメータを使用する場合には、測定試料(X線測定器を含んでよい)も対応して相対的に回転可能となるようにするのが好ましい。
【0050】
(実施の形態2)
図6は、本発明を実施する別の態様に使用するX線検査装置の基本構成を示すブロック図である。図6において、X線検査装置を構成するX線発生器1、モノクロメータ2、測定試料3、X線検出器4、データ処理器5および表示部6は実施の形態1で示した図5と同様であるが、X線発生器1から照射された白色X線を単色化する方法が異なる。
【0051】
図6においては、X線発生器1と測定試料3を結ぶ軸(破線にて示す)に対して垂直な方向に矢印Cで示すように、モノクロメータ2を平行移動することにより、白色X線のモノクロメータへの入射角をθ1からθ2に変えることにより、波長λ1の単色X線および波長λ2の単色X線を得ることができる。
【0052】
例えば、モノクロメータ2を白色X線の入射角がθ1となって波長λ1の単色X線の得られる位置へ配置し、波長λ1の場合のX線透過データを得る(図6の上部の配置)。その後、波長λ2の単色X線が得られるようにX線発生装置1と測定試料3を結ぶ軸に対して垂直な方向に矢印Cで示すようにモノクロメータ2を平行移動して入射角がθ2となるようにし、波長λ2の場合のX線透過データを得る(図6の下部の配置)。その際、測定試料3に照射する波長λ2の単色X線が測定試料3に対して照射される位置および好ましくは角度が、波長λ1の単色X線の場合と同じになるようにする。例えば、矢印Dで示すように、モノクロメータ2への白色X線の入射点Oを中心として、測定試料3とX線検出器4を回転させることにより行う。
【0053】
尚、このような測定試料およびX線検出器4の移動は、波長が異なることにより生じる測定試料のX線照射状態(位置および角度)の変化が測定結果に与える影響を実質的に無視できるほどに小さい場合には、移動を省略することも可能である。
このようにして得た波長λ1の単色X線によるX線透過データと波長λ2の単色X線によるX線透過データとを差分することにより、検出対象である元素Aのみの状態に関する情報としてX線透過像を得ることができる。
【0054】
(実施の形態3)
図7は、本発明を実施する更に別の態様に使用するX線検査装置の基本構成を示すブロック図である。図7において、X線発生器1、測定試料3、X線検出器4、データ処理器5、表示部6は実施の形態2で示した図5と同様であるが、波長λ1とλ2の2種の単色化X線を得るため、2種のモノクロメータ2-1および2-2を装備している。この2種のモノクロメータはそれぞれ同じX線の入射角θで波長λ1とλ2の単色X線が得られるような格子間隔をもつもので、このようなモノクロメータとして例えば多層膜が用いられる。
【0055】
具体的には、波長λ1の単色X線が得るためモノクロメータ2-1を配置してX線透過データを得る。その後、波長λ2の単色X線を得るため、モノクロメータ2-1と同じ位置にモノクロメータ2-2を配置し、X線透過データを得る。これらのデータを差分することにより検出対象である元素AのみのX線透過像を得ることができる。この場合では、測定試料3およびX線検出器4の位置を変更する必要がないという利点がある。
【0056】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
図5に示したX線検査装置を用いて、IC内部の電極接合部のX線検査を行った。X線発生器1として、タングステンターゲットの回転対陰極型X線発生装置を用いた。最大管電圧は100KV、最大管電流は10mAである。モノクロメータ2としてはグラファイト(002)を、X線検出器としてはイメージングプレートを使用した。測定試料3であるICにおいては金バンプと金ワイヤーが接続されており、その外部は樹脂でモールドされているため、金バンプと金ワイヤーとの接続状態を外部から確認することはできない。この接続状態を本発明に基づいて検査した。
【0057】
実施の形態1で述べたX線検査方法によりX線検査を行った。この検査で検出対象である物質は金バンプと金ワイヤーとの間の接続部であり、その物質を構成する元素は金であり、その他の元素は炭素、水素、酸素などである。そこで、検出対象である元素の吸収端として金のL(III)吸収端を選んだ。
金のL(III)吸収端の波長λ0は1.04オングストロームであるので、λ0より短波長の単色X線の波長λ1として1.00オングストロームを、長波長の単色X線の波長λ2として1.10オングストロームを選択し、モノクロメータ2を回転して白色X線の入射角を調節することにより単色化X線を得る。面間隔d=3.354オングストロームのグラファイト(002)を使用する。この場合のブラッグ反射角を計算すると、波長λ1のX線を得るにはブラッグ反射角はと8.57゜となり、波長λ2のX線の場合は、ブラッグ反射角は9.44゜となる。
【0058】
まず、モノクロメータへ入射する白色X線の入射角θ1が8.57°となるようにモノクロメータを調整し、モノクロメータからの反射角8.57°の単色化X線がIC表面に垂直に当る位置に測定試料をおく。そして、λ1のX線を測定試料に照射した後、モノクロメータをX線の入射角θ2が9.44°となるように回転させ、測定試料3、X線検出器4も反射角の変化に応じて同じ状態でX線が入射するように位置を移動させる。λ2のX線を測定試料に照射し、検出した2種類の画像データをデータ処理器で差分した結果、金だけのX線透過像を得ることができた。
【0059】
(実施例2)
実施の形態2に示したX線検査装置により、IC内部の電極接合部のX線検査を行った。X線発生器、モノクロメータ、X線検出器、および測定試料は実施例1と同様のものを使用した。
実施例1と同様に検出対象である元素の吸収端として金のL(III)吸収端を選択し、金のL(III)吸収端より短波長のX線λ1を1.00オングストローム、長波長のX線λ2を1.10オングストロームとする。ブラッグ反射角はそれぞれ8.57゜および9.44゜である。
【0060】
まず、モノクロメータへ入射するX線の入射角θ1が8.57°となる位置にモノクロメータを配置し、反射角が8.57°の位置へ測定試料をおく。測定試料は、反射した単色化X線が垂直に照射するように調整する。そして、λ1のX線を測定試料に照射した後、モノクロメータをX線の入射角θ2が9.44°となるようにX線発生器と測定試料を結ぶ軸に対して垂直な方向へ平行移動させる。λ2のX線を測定試料に照射し、検出した2種類の画像データをデータ処理器で差分した結果、金だけのX線透過像を得ることができた。
【0061】
(実施例3)
実施の形態3に示したX線検査装置により、IC内部の電極接合部のX線検査を行った。X線発生器、X線検出器、および測定試料は実施例1と同様のものを使用し、2種類のモノクロメータは白金/カーボンの多層膜(白金層厚:カーボン層厚=1:2)を用いた。
【0062】
実施例1に示したように検出対象である元素の吸収端として金のL(III)吸収端を選択し、金のL(III)吸収端より短波長のX線λ1を1.00オングストローム、長波長のX線λ2を1.10オングストロームとする。
ブラッグ反射角が2種類のモノクロメータ共に3.00゜となるように多層膜周期を計算したところ、モノクロメータ2-1の多層膜周期(白金層1層とカーボン層1層の和)のは9.55オングストローム、モノクロメータ2-2の多層膜周期は10.51オングストロームとなる。このような多層膜周期をもつ白金/カーボンの多層膜を作製した。層数は50層とした。。
【0063】
まず、モノクロメータ2-1をX線の入射角3.00°の位置に配置する。測定試料3とX線検出器4は反射角3.00°の位置へX線が垂直に入射するようにおき、X線を照射する。モノクロメータ2-1で波長λ1に単色化されたX線を測定試料3に照射し、測定試料3を透過したX線をX線検出器で検出する。その後、モノクロメータ2-1の代わりにモノクロメータ2-2を同位置に配置し、X線を照射する。モノクロメータ2-2では波長λ2に単色化されたX線が得られ、波長λ2の単色X線を測定試料3に照射し、測定試料3を透過したX線をX線検出器4で検出し、このデータと波長λ1の単色X線で得られたデータを差分することにより、金だけのX線透過像を得ることができた。
尚、いずれの実施例においても、金だけのX線透過像からバンプと金ワイヤーとの接続状態、即ち、接続されているか、あるいは断線しているかを判断することができた。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、測定試料中のある物質が検出対象となる元素に加えて他の元素を含み、その他の物質が検出対象となる元素を含まない場合、検出対象となる元素を含む物質だけの形状、寸法、場所、状態を知ることができる。そのため、検出対象となる元素以外の元素の情報によって、検出対象となる元素のを含む物質の情報が得られ難い場合、本発明により正確に検出対象となる元素を含む物質だけの情報を得ることができる。
【0065】
実施例において説明した電子部品の内部の接続状態の確認の他、体内における物質の状態の確認にも本発明を適用できる。一例としては、造影剤、例えば硫酸バリウムが内部に存在する臓器のX線検査において、バリウムを検出すべき元素として本発明を適用すると、硫酸バリウムを含む臓器の状態を把握できる。また、胆石のような結石の状態をX線検査する場合には、カルシウムを検出すべき元素として選択して本発明を適用してよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、AとBの2種類の元素で構成され、部分的に欠陥部をもつ測定試料の模式的断面図を示す。
【図2】 図2は、従来のX線検査装置を用いて図1の測定試料を検査した場合の透過画像の模式図を示す。
【図3】 図3は、元素の波長と線吸収係数の関係を示す模式的グラフである。
【図4】 図4は、本発明のX線検査方法を適用する場合のX線透過画像の模式図であり、(a)は、波長λ1の場合の模式的X線透過画像であり、(b)は、波長λ2の場合の模式的X線透過画像であり、(c)は、これらの画像を差分して得られる模式的X線透過画像である。。
【図5】 図5は、本発明の実施の形態1のX線検査装置の基本構成を示す模式的ブロック図である。
【図6】 図6は、本発明の実施の形態2のX線検査装置の基本構成を示す模式的ブロック図である。
【図7】 図7は、本発明の実施の形態3のX線検査装置の基本構成を示す模式的ブロック図である。
【符号の説明】
1 X線発生器
2 モノクロメータ
2-1 波長λ1の単色X線を得るためのモノクロメータ
2-2 波長λ2の単色X線を得るためのモノクロメータ
3 測定試料
4 X線検出器
5 データ処理器
6 表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6