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明細書 :バイオリアクター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4631049号 (P4631049)
公開番号 特開2006-254848 (P2006-254848A)
登録日 平成22年11月26日(2010.11.26)
発行日 平成23年2月16日(2011.2.16)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
発明の名称または考案の名称 バイオリアクター
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
C12M   3/02        (2006.01)
C12N  11/02        (2006.01)
FI C12M 1/00 D
C12M 3/02
C12N 11/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2005-079350 (P2005-079350)
出願日 平成17年3月18日(2005.3.18)
審査請求日 平成19年10月2日(2007.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
発明者または考案者 【氏名】相澤 守
【氏名】松浦 知和
個別代理人の代理人 【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 特開2002-300872(JP,A)
特開2004-248595(JP,A)
特開2004-284933(JP,A)
特開2003-093052(JP,A)
特開2004-059344(JP,A)
特開2004-057019(JP,A)
肝臓,2003年,Vol.44, Supplement 1,p.A115, O-103
Phosphorus Research Bulletin,2004年,Vol.17,p.262-268
Phosphorus Letter,2004年,Vol.51,p.3-12
調査した分野 C12M1/00—3/10
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により培養槽の形に合うように一つの塊として形成され、連続気孔を有する多孔質リン酸カルシウム成形体からなる細胞固定化担体が充填された培養槽、培養槽に培地を供給する培地供給部、及び培養槽を通過した培地を回収する培地回収部を有することを特徴とするバイオリアクター。
【請求項2】
多孔質リン酸カルシウム成形体が、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性材料とを混合し、その混合物を焼成することによって製造されたものであることを特徴とする請求項1記載のバイオリアクター。
【請求項3】
繊維状リン酸カルシウム化合物と混合する可燃性材料の重量が、繊維状リン酸カルシウム化合物の重量の0.1~20倍であることを特徴とする請求項2記載のバイオリアクター。
【請求項4】
培地供給部が培養槽の外周部分に配置され、培地回収部が培養槽の中心部分に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のバイオリアクター。
【請求項5】
担体に固定される細胞が、肝細胞であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のバイオリアクター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工肝臓や生理活性物質の生産に利用できるバイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
重篤な肝機能障害に陥った場合、その抜本的な治療法は肝臓移植しかないのが現状である。肝臓の移植には生体肝移植と脳死肝移植がある。前者はドナー不足という解決できない問題があり、後者についてはさらに倫理的な問題を含んでいる。そのため移植治療の代替医療として、また劇症肝炎などの肝不全の応急措置としても臨床的に使用できる人工肝臓の開発が我が国だけでなく、グローバルな視点でも重要かつ緊急な課題である。
【0003】
これまでに人工肝臓の開発に関する多くの報告がある。これらの多くは肝臓をバイオリアクターのひとつとみなし、肝細胞をスフェロイドとして所定の担体に付着・増殖させて肝機能を代替させるというものである。ヒトの肝臓の機能は卓越しており、現在、最高レベルの人工肝臓でも、肝機能を維持できるのは2週間程度にとどまっている。
【0004】
ところで、本発明者らは、以前、細胞の固定担体として利用できる多孔質リン酸カルシウム成形体について報告を行っている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】

【特許文献1】特開2004-284933号公報
【特許文献2】特開2003-93052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、肝細胞を固定したバイオリアクターは、短期間で肝臓としての機能を失ってしまう。本発明は、このような既存のバイオリアクターの問題を解決するものであり、長期間細胞を生存、増殖できるバイオリアクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前述した多孔質リン酸カルシウム成形体のうち特定のものを細胞の固定化担体として用い、また、細胞固定化担体を充填した培養槽への培地の流れを特定のものにすることにより、培養槽中の細胞を長期間生存、増殖させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)~(8)を提供するものである。
【0009】
(1)繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成され、連続気孔を有する多孔質リン酸カルシウム成形体を細胞固定化担体として用いたことを特徴とするバイオリアクター。
【0010】
(2)多孔質リン酸カルシウム成形体が、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性材料とを混合し、その混合物を焼成することによって製造されたものであることを特徴とする(1)記載のバイオリアクター。
【0011】
(3)繊維状リン酸カルシウム化合物と混合する可燃性材料の重量が、繊維状リン酸カルシウム化合物の重量の0.1~20倍であることを特徴とする(2)記載のバイオリアクター。
【0012】
(4)繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成され、連続気孔を有する多孔質リン酸カルシウム成形体からなる細胞固定化担体が充填された培養槽、培養槽に培地を供給する培地供給部、及び培養槽を通過した培地を回収する培地回収部を有することを特徴とするバイオリアクター。
【0013】
(5)多孔質リン酸カルシウム成形体が、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性材料とを混合し、その混合物を焼成することによって製造されたものであることを特徴とする請求項4記載のバイオリアクター。
【0014】
(6)繊維状リン酸カルシウム化合物と混合する可燃性材料の重量が、繊維状リン酸カルシウム化合物の重量の0.1~20倍であることを特徴とする(5)記載のバイオリアクター。
【0015】
(7) 培地供給部が培養槽の外周部分に配置され、培地回収部が培養層の中心部分に配置されていることを特徴とする(4)乃至(6)のいずれか記載のバイオリアクター。
【0016】
(8)培養槽に充填される細胞固定化担体が、多孔質リン酸カルシウム成形体の一つの塊であることを特徴とする(7)記載のバイオリアクター。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバイオリアクターを用いて細胞を培養することにより、細胞を長期間生存、増殖させることができるようになる。これにより、効率的な生理活性物質の生産や長期間機能を維持できる人工肝臓などの人工臓器の作製などが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明のバイオリアクターは、繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成され、連続気孔を有する多孔質リン酸カルシウム成形体を細胞固定化担体として用いることを特徴とするものである。
【0020】
多孔質リン酸カルシウム成形体は、例えば、特開2003-93052号公報又は特開2004-284933号公報に記載された方法によって製造することができる。即ち、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性材料とを含む混合スラリを吸引ろ過により脱水して固形体を得て、次いで、該固形体を加熱して該可燃性材料を焼却除去することにより製造することができる。
【0021】
上記繊維状リン酸カルシウム化合物は、下記の式で定義されるアスペクト比が10~200の範囲にあることが好ましい。
【0022】
式:アスペクト比=L/{(a+b)/2}
(Lは繊維状リン酸カルシウム化合物の長さ、aは繊維状リン酸カルシウム化合物の厚さ、bは繊維状リン酸カルシウム化合物の幅を示す。)
繊維状リン酸カルシウム化合物の長さ(L)は、通常は、30~150μmの範囲にあり、60~100μmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
繊維状リン酸カルシウム化合物の材料としては、リン酸三カルシウム[Ca3(PO42]、リン酸水素カルシウム[CaHPO4]、リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO42]、及び水酸アパタイト(ハイドロキシアパタイト)[Ca10(PO46(OH)2]の一種、もしくは二種以上の混合物を挙げることができる。なお、水酸アパタイトには、カルシウムの一部が欠損したカルシウム欠損水酸アパタイト[Ca10-x(HPO4)x(PO46-x(OH)2-x・nH2O]などの非化学量論組成水酸アパタイトも含まれ、水酸アパタイトのリン酸イオン、または水酸化物イオンの一部が炭酸イオンで置換された炭酸含有水酸アパタイトも含まれる。
【0024】
上記繊維状リン酸カルシウム化合物のうちで好ましいのは繊維状水酸アパタイトであり、特に好ましいは、(100)、(200)および(300)面が発達したa面配向の繊維状水酸アパタイトである。a面配向の繊維状水酸アパタイトは、カルシウム塩およびリン酸塩を含む溶液を尿素の存在下にて加熱することにより製造することができる。
【0025】
上記可燃性材料は、500~1500℃の温度に加熱したときの灰分が1重量%以下となるものであることが好ましい。このような可燃性材料の例としては、ポリメタルクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびカーボンを挙げることができる。これらのうちで好ましいものはカーボンである。なお、可燃性材料は、球状であることが好ましいが(より好ましくは真球)、必ずしも球状である必要はなく、立方体、直方体、円筒、円柱等であってもよい。可燃性材料が球状の場合、その粒子径は、通常は、5~500μmの範囲にあり、好ましくは100~200μmの範囲にある。
【0026】
上記混合物スラリの溶媒には、水あるいは水とアルコールの混合溶液を用いることが好ましい。溶媒として水とアルコールの混合溶液を用いる場合、その比率は容積比で、水:アルコールが、通常は1:99~99:1の範囲にあり、好ましくは25:75~75:25の範囲にある。なお、溶媒として用いるアルコールの種類には特に制限はなく、メタノール、エタノールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコールを用いることができるが、エタノールが好ましい。
【0027】
上記混合スラリにおいて、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性材料との配合割合は、繊維状リン酸カルシウム化合物1重量部に対して、可燃性材料が、通常は0.1~100重量部の範囲にあり、好ましくは0.1~50重量部の範囲にあり、特に好ましくは0.1~20重量部の範囲にある。
【0028】
上記混合スラリを吸引ろ過により脱水することによって、繊維状リン酸カルシウム化合物の物理的な係合により形成された固形体を得ることができる。この固形体は、複数個の可燃性材料を包含する。固形体の加熱温度は、通常は500~1500℃の範囲にあり、好ましくは1000~1500℃の範囲にある。
【0029】
上記方法によって製造された多孔質リン酸カルシウム成形体は、可燃性材料の焼却除去によって生じる連続気孔を有する。この連続気孔に含まれる気孔(マクロポア)の大きさは、通常、直径が5~500μmの範囲にある。また、この多孔質リン酸カルシウム成形体は、マクロポアとは別により小さい気孔(ミクロポア)も有する。ミクロポアは、リン酸カルシウム化合物の針状結晶の重なりから生じるもので、通常、直径が5μm未満である。
【0030】
多孔質リン酸カルシウム成形体の気孔率は、通常、80~99%の範囲にあり、好ましくは、90~99%の範囲にあり、より好ましくは95~99%の範囲にある。
【0031】
本発明のバイオリアクターは、通常、上記多孔質リン酸カルシウム成形体からなる細胞固定化担体が充填された培養槽、培養槽に培地を供給する培地供給部、及び培養槽を通過した培地を回収する培地回収部を有する。
【0032】
培養槽、培地供給部、及び培地回収部の配置は特に限定されないが、培地供給部が培養槽の外周部分に配置され、培地回収部が培養槽の中心部分に配置されていることが好ましい。このように培養槽等が配置されたバイオリアクターは、一般にラジアルーフロー型バイオリアクターと呼ばれ、各種栄養源(特に酸素)の濃度勾配を軽減できる、培地の流れによって生じる剪断力を低減できるといった特徴を持つ。
【0033】
図1に、ラジアルフロー型のバイオリアクターを模式的に表した図を示す。図中の矢印は培地の流れを表している。培地供給口1から入った培地は、培養槽3の外周部分に配置されている培地供給部2から培養槽3へ移動する。培養槽3に入った培地は、培養槽3の中心部分に配置されている培地回収部4へ移動し、その後、培地排出口5から排出される。図2は、ラジアルフロー型のバイオリアクターの断面を模式的に表したものである。この図に示すように、培地は、培養槽3を外周部分から中心部分へ逆放射状に移動する。なお、図1及び図2中で、一点鎖線で表した部分はフィルターになっており、培地や細胞が自由に移動することができる。
【0034】
このバイオリアクターの細胞固定化担体として、上述した多孔質リン酸カルシウム成形体を使用する。多孔質リン酸カルシウム成形体は、ビーズ状の小塊を多数作製し、それらを培養槽に充填してもよいが、好ましくは、バイオリアクターの培養槽の形に合うように、多孔質リン酸カルシウム成形体を成形し、一つの塊としてバイオリアクターに設置する。
【0035】
本発明のバイオリアクターは、その使用目的に応じて、様々な細胞を培養できる。例えば、本発明のバイオリアクターを人工肝臓として利用するのであれば、肝細胞を培養し、生理活性物質の生産に利用するのであれば、肝細胞、骨芽細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、神経細胞などを培養する。
【0036】
供給する培地は、培養する細胞に応じて決めればよく、例えば、肝細胞であればASF104培地などを添加する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0038】
〔実施例1〕
硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム、及び尿素を、それぞれ0.100mol・dm-3、0.167mol・dm-3、及び0.500mol・dm-3の濃度となるように0.1mol・dm-3の硝酸(70%、比重:1.42)に溶解して、反応原料液を調製した。この反応原料液を、冷却管付きのフラスコに入れ、オイルバスを用いて加熱した。加熱は、80℃で24時間と90℃で72時間の二回に分けて行った。加熱終了後、フラスコ内の生成物(繊維状リン酸カルシウム化合物)を取り出して、洗浄乾燥した。
【0039】
繊維状リン酸カルシウム化合物を含むスラリ(2重量%)に、同体積のエタノールを加えた後、粒子径が150μm以下のカーボンビーズ(ニカビーズ、日本カーボン(株)製)を所定の量加え、充分に撹拌し、繊維状リン酸カルシウム化合物とカーボンビーズとの混合物スラリを調製した。この混合物スラリを、底部がろ紙でできた容器に入れ、吸引ろ過を行い、後述するバイオリアクターの培養槽に納まる形状の固形物を得た。次いで、この固形物を、水蒸気雰囲気下、1300℃で5時間焼成して(昇温速度:5℃/分)、カーボンビーズを焼却除去し、多孔質リン酸カルシウム成形体を得た。多孔質リン酸カルシウム成形体は、AFS0(カーボンビーズ無添加)、AFS1000(繊維状リン酸カルシウム化合物の10倍の重量のカーボンビーズを添加)、AFS2000(繊維状リン酸カルシウム化合物の20倍の重量のカーボンビーズを添加)の3種類作製した。
【0040】
AFS0、AFS1000、及びAFS2000の電子顕微鏡写真をそれぞれ図3、図4及び図5に示す。
【0041】
〔実施例2〕
実施例1で作製したAFS2000を、市販のラジアルフロー型バイオリアクター(BRK-05、エイブル株式会社製)の培養槽に設置し、無血清培地(ASF104、味の素製)を、約2.5ml/分の流速で循環させ、肝細胞の培養を行った。培養時の温度は37℃に維持し、また、5%COを供給しながら培養を行った。肝細胞は、ヒト肝細胞癌由来のFLC-4を用いた。肝細胞の播種は、培地中に肝細胞を添加することにより行い、その数は、培地100mL中の細胞密度が、1.5×10個/cmになるようにした。
【0042】
培養開始から1日、3日、7日後に培地を抜き取り、グルコース量、乳酸値、及びpHを測定した。グルコース量、乳酸値、及びpHの測定結果をそれぞれ図6、図7及び図8に示す。
【0043】
これらの図に示すように、バイオリアクター内に培地を循環させることにより、グルコース量の減少、乳酸値の上昇、pHの低下が観察された。これらの結果から、バイオリアクター中の肝細胞は生存しており、肝細胞としての機能を正常に発揮していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のバイオリアクターを模式的に表した図。
【図2】本発明のバイオリアクターの断面を模式的に表した図。
【図3】AFS0の電子顕微鏡写真。
【図4】AFS1000の電子顕微鏡写真。
【図5】AFS2000の電子顕微鏡写真。
【図6】本発明のバイオリアクター使用した場合のグルコースの経時的変化を示す図。
【図7】本発明のバイオリアクター使用した場合の乳酸値の経時的変化を示す図。
【図8】本発明のバイオリアクター使用した場合のpHの経時的変化を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1 培地供給口
2 培地供給部
3 培養槽
4 培地回収部
5 培地排出口
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図3】
5
【図4】
6
【図5】
7