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明細書 :低周波刺激による光合成促進方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4505584号 (P4505584)
公開番号 特開2007-050004 (P2007-050004A)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
発行日 平成22年7月21日(2010.7.21)
公開日 平成19年3月1日(2007.3.1)
発明の名称または考案の名称 低周波刺激による光合成促進方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
A01G   7/04        (2006.01)
A01G  31/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 601A
A01G 7/00 604C
A01G 7/04 A
A01G 7/04 B
A01G 31/00 612
A01G 31/00 620
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2006-290866 (P2006-290866)
分割の表示 特願2002-252380 (P2002-252380)の分割、【原出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
出願日 平成18年10月26日(2006.10.26)
審判番号 不服 2009-020653(P2009-020653/J1)
審査請求日 平成18年11月7日(2006.11.7)
審判請求日 平成21年10月27日(2009.10.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
発明者または考案者 【氏名】中林 和重
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審理対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
参考文献・文献 特開平4-287618(JP,A)
実開平7-30023(JP,U)
特開平8-242694(JP,A)
調査した分野 A01G7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
植物に対し、周波数が40Hz以下の低周波刺激を付与する方法であって、その刺激が光強度が0.01~500μmol/m2/sの点滅する赤色光及び/又は黄色光からなる低周波光刺激であることを特徴とする光合成促進方法。
【請求項2】
植物が、野外の温室内に設置した水耕栽培ベッドに定植された植物であることを特徴とする請求項1記載の光合成促進方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に低周波刺激を付与し、植物の光合成を促進する方法に関する。この方法を利用すれば、栄養素の欠乏や過剰により光合成能が低下した植物の光合成能を回復させることができる。
【背景技術】
【0002】
光合成は作物の収量に直接影響をあたえる要因であり、光合成活性を増進させることができれば、生育を促進させ収量を高くしたり、品質を向上させたりすることができる。これまでに、点滅光を植物体に照射することにより、緑藻の光合成の初期反応(O2発生)が促進することが知られているが(ヴォート生化学(上);東京化学同人)、低周波の点滅光により、より光合成活性が増進されたということは認められていない。また、100Hzから500000Hz(10ms ~2μs)のパルス光によってサラダナを生育させた結果、2500Hz(400μs)で最も光合成速度が大きくなることが知られているが、これはすべて人工光だけで植物を育てている事例にとどまる他、本発明のいう低周波領域については報告されていない(農業環境工学関連4学会2002年合同大会(8月))。光以外に磁力や電気などの刺激についても同様に、光合成活性の増進による生育の促進や品質の向上は認められていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
作物の生育を促進させ収量を高くするためには、肥料を施肥することにより、栄養素が不足しないようにするなど、栽培環境を常に最適な状態に維持することが必要である。しかし、これらの作業は手間がかかり、できれば省きたい作業である。そこで、人為的に植物自体の光合成活性を増進させることにより、最小限の手間で生育を促進させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、植物に低周波の刺激を付与すると、その植物の光合成活性が増進することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の(1)~(4)を提供するものである。
【0005】
(1)植物に対し、周波数が40Hz以下の低周波刺激を付与する方法であって、その刺激が光強度が0.01~500μmol/m2/sの点滅する赤色光及び/又は黄色光からなる低周波光刺激であることを特徴とする光合成促進方法。
(2)植物が、野外の温室内に設置した水耕栽培ベッドに定植された植物であることを特徴とする(1)記載の光合成促進方法。
[発明の効果]
【発明の効果】
【0006】
植物体に外部より特定周波数の刺激を光、磁力、電気などによって付与することにより、その植物体の光合成活性を人為的に増進させる。また、栄養素の欠乏や過剰などにより生育が阻害されるような件下において、植物体の光合成能が低下した場合においても、光合成活性を回復させる。これにより、今までと変わらない、もしくは今まで以下の手間により植物体の生育を促進させ、収量を高くすることが可能である。また、施肥する肥料の量を減らすことも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光合成促進方法は、植物に低周波刺激を付与することを特徴とするものである。
本発明の光合成促進方法は、植物一般に適用することができる。具体的には、トマト、レタス、チンゲンサイなどを適用対象とすることができるが、これらに限定されるわけではない。
植物に付与する刺激の周波数は1000Hz以下の低周波数でよいが、特に40Hz以下が望ましい。付与する刺激の種類は、植物の光合成活性を増進させるものであれば特に限定されず、光、磁力、電気、音、物理的な力などを例示できるが、これらに限定されるわけではない。
これらの刺激は、例えば以下のような方法で付与することができる。
【0008】
(1)光
光刺激の付与方法は特に限定されず、例えば、一定周期、もしくは不定期で点滅する光を植物に照射すればよい。使用する光は、ストロボ光でよいが、白熱電球やLED単色光や混合光などを用いてもよい。光の波長は、可視光のほか、紫外光や赤外光も含む。可視光はどのようなものでもよいが、赤色や黄色の光の方が好ましい。光の強さは特に限定されないが、0.01~500μmol/m2/s程度が好ましい。光の照射部位は通常地上部であるが、養液栽培においては、植物体の地上部だけではなく、地下部に照射してもよい。
【0009】
(2)磁力
磁力刺激の付与方法も特に限定されず、例えば、植物に永久磁石を近づけたり遠ざけたりして機械的に作用させてもよく、また、植物の近くに設置した誘導コイル、あるいは線状の導線に、間断、あるいは強弱をつけた電流を通電して磁界を発生させてもよい。この時に用いる電流はサイン波でもデジタル波でも矩形波でもよい。また、デューディー比は1:1000~1000:1で構わない。
磁力刺激を付与する部位は、根部が望ましいが、地上部でも構わない。また、養液栽培においては、培養液に刺激を付与してもよい。作用させる刺激の強さは0.01~1000ミリガウスの範囲でよいが、1~20ミリガウスとした方が効果が高い。
【0010】
(3)電気
電気刺激の付与方法も特に限定されず、例えば、植物の茎葉に電極を接着したり、植物周辺の土壌中に電極を埋め、電流を間断したり、あるいは交流電流を流したり、または、培養液の入った栽培ベッド内に電極を設置し、そこに間断した電流や、交流電流を流したりしてもよい。
電気刺激を与える部位は、植物体地上部でもよいが、養液栽培の場合には栽培ベッド内に電極を設置すれば根部だけではなく、培養液もイオンが活性化されるなどの影響をうけるので都合がよい。対になる電極は白金、銅、銀、ステンレス、スチール、炭素棒、伝導性プラスチックなどが適しており、両端の電圧は0.01V~60Vが好ましい。波形は矩形波、サイン波、デジタル波を問わず、デューティー比は1:1000~1000:1の範囲でよい。
【0011】
(4)音
音刺激の付与方法も特に限定されず、例えば、特定周波数の音を発する装置(スピーカーなど)を植物体の近傍に設置することにより、音刺激を付与することができる。植物に付与する位置は、地上部が好ましいが、地下部でもよい。音刺激の強さは、0.01db~100dbでよいが、1~30dbが望ましい。
【0012】
(5)物理的な力
物理的な力による刺激の付与方法も特に限定されず、例えば栽培ベッドにセラミックスピーカーを取り付け、振動を発生させることにより、物理的な力による刺激を付与できる。波形は矩形波、サイン波、デジタル波を問わず、デューティー比は1:1000~1000:1の範囲でよい。振動の強さは特に限定されないが0.01db~100dbが好ましい。
【0013】
本発明の光合成促進方法は、植物の生育促進などに利用できるほか、光合成能の低下した植物の光合成能の回復に利用できる。即ち、光合成能の低下した植物に、低周波刺激を付与して栽培することにより、その植物の光合成能を回復させることができる。
【実施例】
【0014】
〔実施例1〕 光刺激
レタス(秀水(トキタ種苗))をバーミキュライト・ピートモス混合床に播種し、野外の温室内に設置してある水耕栽培ベッドに定植した。播種後15日目から毎日午前9:00~11:00の2時間低周波光刺激を付与した。光刺激源には赤色LED(ER-500L(スタンレー電気)、光強度:300μmol/m2/s)を用い、ウェーブジェネレターで発生させたパルス信号(矩形波、デューティー比1:1)をアンプで増幅させて、中位葉の上方15cmの位置で点滅させた。光刺激の周波数は20Hz、又は400Hzとした。
【0015】
以上のような条件で栽培したレタスの光合成活性及び生重量を測定した。対照として、低周波光刺激を付与しないレタスの光合成活性及び生重量も同様に測定した。
光合成活性の測定は、播種から32日目の低周波光刺激付与時に、LI-6400(LI-COR社)を用いて行った。LI-6400は、二酸化炭素の吸収量から光合成活性を測定する装置である。また、光合成活性は、光強度が0、100、250、500、又は1000(μmol/m2/s)の光を照射しながら測定した。
生重量は、播種から32日目に収穫し、測定を行った。
【0016】
光合成活性及び生重量の測定結果を表1に示す。
【表1】
JP0004505584B2_000002t.gif
表1に示すように、低周波光刺激を付与することにより、レタスの光合成活性が増進した。特に20Hzの光刺激を付与した場合に増進効果が大きかった。
【0017】
〔実施例2〕磁力刺激
トマト(ルネッサンス(サカタのタネ))を用い、園試処方1/2単位の培養液を満たした水耕栽培ベッドに定植した。定植した日から毎日午前9時、10時及び11時から各15分間低周波磁力刺激を付与した。磁力刺激の付与は、根部への付与と培養液への付与の2通りの方法で行った。根部への付与は、根が密集している定植ベッドの外側にエナメル線をまきつけて行い、培養液への付与は、培養液タンクにエナメル線をまきつけて行った。磁力の強さは、25ミリガウスとし、磁力刺激の周波数は、20Hz又は400Hzとした。
【0018】
以上のような条件で栽培したトマトの光合成活性を測定した。対照として、低周波磁力刺激を付与しないトマトの光合成活性も同様に測定した。光合成活性の測定は、定植から14日目の低周波磁力刺激付与時に、LI-6400(LI-COR社)を用いて行った。また、実施例1と同様に、光合成活性は、光強度が0、100、250、500、又は1000(μmol/m2/s)の光を照射しながら測定した。
【0019】
光合成活性の測定結果を表2に示す。
【表2】
JP0004505584B2_000003t.gif
表2に示すように、低周波磁力刺激を付与することにより、トマトの光合成活性が増進した。特に20Hzの磁力刺激を付与した場合に増進効果が大きかった。
【0020】
〔実施例3〕 電気刺激
トマト(ルネサンス(サカタのタネ))を園試処方1/2単位の培養液を満たした水耕栽培ベッドに定植した。定植した日から毎日午前9時、10時及び11時から各15分間低周波電気刺激を付与した。電気刺激の付与は、根部への付与と培養液への付与の2通りの方法で行った。根部への付与は、栽培ベッド中の培地内にステンレス製の2枚の電極を設置し、培養液潅水時に電極が培養液に完全に浸っている間に通電することにより行い、培養液への付与は、培養液の貯水タンク内に電極を設置し、根部への刺激と同じ時間に通電することにより行った。電極にかかる電圧は、6Vとし、電気刺激の周波数は、20Hz又は400Hzとした。
【0021】
以上のような条件で栽培したトマトの光合成活性を測定した。対照として、低周波電気刺激を付与しないトマトの光合成活性も同様に測定した。光合成活性の測定は、定植から14日目の低周波電気刺激付与時に、LI-6400(LI-COR社)を用いて行った。また、実施例1と同様に、光合成活性は、光強度が0、100、250、500、又は1000(μmol/m2/s)の光を照射しながら測定した。光合成活性測定時の二酸化炭素濃度は400μmol/molとし、湿度については外気と同じ条件とした。
【0022】
光合成活性の測定結果を表3に示す。
【表3】
JP0004505584B2_000004t.gif
表3に示すように、20Hzの電気刺激を根部へ付与することにより光合成活性が増進した。しかし、400Hzの電気刺激を根部へ付与した場合には、光合成活性が逆に減少した。また、電気刺激を培養液へ付与した場合には、光合成活性にほとんど変化はみられなかった。