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明細書 :耐熱性エタノール生産細菌及び耐熱性エタノール生産細菌を用いたエタノール生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5120877号 (P5120877)
公開番号 特開2009-060836 (P2009-060836A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成21年3月26日(2009.3.26)
発明の名称または考案の名称 耐熱性エタノール生産細菌及び耐熱性エタノール生産細菌を用いたエタノール生産方法
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
C12P   7/06        (2006.01)
C12R   1/01        (2006.01)
FI C12N 1/20 A
C12P 7/06
C12N 1/20 A
C12R 1:01
請求項の数または発明の数 3
微生物の受託番号 NPMD NITE P-410
NPMD NITE P-411
全頁数 9
出願番号 特願2007-231058 (P2007-231058)
出願日 平成19年9月6日(2007.9.6)
審査請求日 平成22年6月4日(2010.6.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】山田 守
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 特開昭63-017696(JP,A)
入江陽他,Zymomonas mobilisの耐熱性分離株の解析 ,日本農芸化学会西日本支部大会およびシンポジウム講演要旨集,2007年 9月14日,Vol. 2007,p. 66 E-14
重本江美他,エタノ-ルを生産する耐熱性酵母の分離と生育条件の検討,日本農芸化学会大会講演要旨集,2007年 3月 5日,Vol.2007 ,p. 161 3A05p04
調査した分野 C12N 1/20
C12P 7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
受託番号がNITE P-410で表される、35℃以上の温度条件下におけるエタノール生産能力を有する、Zymomonas mobilis種に属する耐熱性エタノール生産細菌。
【請求項2】
受託番号がNITE P-411で表される、35℃以上の温度条件下におけるエタノール生産能力を有する、Zymomonas mobilis種に属する耐熱性エタノール生産細菌。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐熱性エタノール生産細菌を用いることを特徴とする、エタノールの生産方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温条件下においてエタノール生産が可能な新規微生物及びこれを用いたエタノール生産方法に関する。より詳しくは、37-39℃の温度条件下においてエタノール生産能を有する、Zymomonas mobilis種に属する細菌株及びこれを用いたエタノール生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用・工業用を問わず、エタノールは多様な用途に利用される物質であり、工業用には化学合成したエタノールが、食用は微生物などを用いた醸造エタノールがそれぞれ利用されてきている。近年、バイオテクノロジーの発展とバイオマス利用への意識が高まった事により、食用だけではなく工業用、特に燃料用エタノールにも発酵生産技術を利用しようとする試みが広がり始めている。エタノール生産に微生物を用いる発酵生産技術は古くから用いられてきた技術であり、その主役を担う微生物の生産性向上を目指した改良も数多く開示されている。
【0003】
エタノールの発酵生産に用いられる主な微生物は酵母(Saccharomyces cerevisiae)であるが、その他の微生物としてザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)などザイモモナス属に属する細菌のみにエタノール発酵能力があることが知られている(非特許文献1)。ザイモモナスはテキーラ(Tequila)やプルケ(Pulque)の生産に用いられるグラム陰性の嫌気性細菌であり、エタノール発酵においてはその発酵速度や菌体あたりのエタノール生産能が酵母より大きく、更に発酵時に生産されるバイオマスの量が酵母よりも少ないなどの有利な特徴を持っているが、エタノール耐性や温度耐性、利用可能な糖が限定される点など酵母に劣る部分もあり、工業的な利用が進まなかったのが現状であった。近年、ザイモモナス属細菌を利用した発酵生産技術としては、レバンなど有用物質の発酵生産技術(特許文献1-5)、エタノール発酵生産を向上させるための、遺伝子導入をはじめとする種々の技術(特許文献6-9)や、耐塩性、接合能、資化性向上など有用形質を持った菌株(特許文献10-12)などがこれまでに開示されているが、発酵生産において工業的に重要な改良の一つである耐熱性についてはこれまで開発が進んでこなかった。特許文献8にはザイモモナスと乳酸菌を37℃という高温で共培養して発酵させる旨記載されているが、これはエタノール生産を低く抑えるための高温発酵であって、高温条件下で高効率なエタノール生産を目的とするものではなかった。これらの背景から、今後需要の急増が見込まれるエタノール発酵生産技術において適用可能な、熱耐性を持った微生物の開発が待たれていた。

【特許文献1】特開平2-109989 グルコン酸およびソルビトールの製造法
【特許文献2】特開平2-195870 ザイモモナス・モビリスの新菌株並びにその菌株を使用するレバンの製法
【特許文献3】特開平6-225781 微生物を用いた飽和デルタ-ラクトンの製造方法
【特許文献4】特開2003-277225 細胞増殖作用と皮膚保湿及び刺激緩和効能を持つレバンを含む化粧料組成物
【特許文献5】特開2004-339078 外用剤組成物
【特許文献6】特開昭63-017696 アルコールの発酵方法
【特許文献7】特開平4-066090 異種遺伝子高発現ベクター
【特許文献8】特開平7-000103 適量の炭酸及び低濃度のエタノールを含有する発酵乳の製造法
【特許文献9】特開2007-014306 染色体組み込みマンノース発酵性ザイモモナス細菌
【特許文献10】特開昭63-074482 糖蜜からのエタノール製造に適した細菌
【特許文献11】特開平1-171481 新規なザイモモナス・モビリス
【特許文献12】特開平4-281783 マルトースからのエタノール製造に適した新規細菌
【非特許文献1】Rogers P.L.et al.1980.Process.Biochem.15(6):7-11.
【非特許文献2】Adachi O.et al.1978.Agric.Biol.Chem.42:2045-56.
【非特許文献3】Sambrook J.&Russell DW.2001.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbour.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の現状に鑑み、本発明は、35℃以上の温度条件下、好ましくは37-39℃の温度条件下でも効率よくエタノールの発酵生産が可能な新規ザイモモナス属細菌株及びこれを用いたエタノール生産方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決のため、本発明者らは、常に高温条件下にある熱帯地域に生息する発酵微生物に着目し、本課題を解決可能なザイモモナス・モビリス(以下Zm菌とも略す)株を単離する方法を試みた。すなわち熱帯地域から単離・株化されたZm菌の複数の株について、30℃から40℃における増殖能とエタノール生産能とを既に確立されたZm菌のエタノール高生産株と比較検討し、このうち特定の株が35℃以上、好ましくは37-39℃というZm菌にとっては過酷な温度条件下でも高い増殖能とエタノール発酵生産能力を有していることを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明の第1の態様は、受託番号がNITE P-410で表される、35℃以上の温度条件下におけるエタノール生産能力を有する、Zymomonas mobilis種に属する耐熱性エタノール生産細菌を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、受託番号がNITE P-411で表される、35℃以上の温度条件下におけるエタノール生産能力を有する、Zymomonas mobilis種に属する耐熱性エタノール生産細菌を提供する。
【0009】
本発明の第の態様は、請求項1又は2に記載の耐熱性エタノール生産細菌を用いることを特徴とする、エタノールの生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌を利用することにより、食品用・工業用を問わず効率的にエタノールを生産することが可能となる。特に本発明の提供する菌株は、好ましくは37-39℃と高い温度条件においても効率よくエタノールを発酵生産する能力を有しており、発酵装置の冷却コストの低減、他種の微生物のコンタミネーションの低減、発酵速度の増大など、エタノール発酵生産のコスト削減と効率化を達成可能と期待される。エタノール生産細菌は、通常エタノール生産に用いられる酵母に比べ高いエタノール生産効率を有し、更に発酵に伴って生産されるバイオマス量も酵母に比べて小さいなど産業利用には適した性質を持っており、更に本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌株は35℃以上という高温条件下でも効率よくエタノール生産を行うことが可能であり、その利用価値は高いと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最良の形態を述べる。本発明の第1の態様は、35℃以上の温度条件下におけるエタノール発酵能力を有することを特徴とする、Zymomonas mobilis種の耐熱性エタノール生産細菌を提供する。本発明は、Zm菌を用いたエタノール生産における生産性向上を目指し、耐熱性に着目してZm菌の自然分離株のスクリーニングを行ったものであり、通常は室温~30℃付近がエタノール発酵の至適温度であるZm菌の中から単離された、35℃以上、更に好ましくは37-39℃でもエタノール生産能を有するZm菌株を提供するものである。ここでいうエタノール生産能とは、好ましくは3-20%(w/v)グルコース(またはこれに相当する他種の資化可能な糖)を含む培地を用いた培養において、1-5%(w/v)のエタノールを生産する能力をいう。エタノール生産に用いられる温度以外の培養条件等はこれまでZm菌を用いたエタノール生産に使用されてきた条件等のうちから適宜選択すれば良く、本発明を限定するものではないが、例えばエタノール発酵微生物の標準的な培地であり、酵母抽出物(Yeast extract)、ペプトン、(D-)グルコースを含むYPD培地などが適している。本発明の提供する耐熱性Zm菌は、野外分離株を30℃から40℃までの温度条件下でエタノール生産を行わせるというスクリーニング工程により得られるものであるが、その具体例としては寄託番号がNITE AP-410で表される株(405株)、またはNITE AP-411で表される株(550株)が好適であり、これらの株はコロニーの形状が白色、盛り上がり、中心部突出、コロニーの周囲はスムースと形態学的にZm菌と一致する形質を示し、更に下記実施例に示す通り、遺伝子(adhA)レベルではZ.mobilis種のエタノール高生産株であるZM4株と塩基配列で98%、アミノ酸配列で100%の相同性を示し、Z.mobilis種に属する菌株であると同定されたものである。
【0013】
本発明が提供するZm菌株は、高温条件下においてエタノール発酵能力を有する株として自然界から単離されてきた株であるが、遺伝子工学的な手法を用い、例えばエタノール発酵や温度耐性に係る本株の遺伝子を改変したり、または他種生物由来の遺伝子、例えばバイオマス原料を資化するためのセルラーゼやペクチナーゼなどの遺伝子などを本株に導入して更に有用な形質を付加したりするといった品種改良もまた有効である。遺伝子改変や導入に用いる技術としては、微生物を用いた遺伝子工学分野で通常用いられている手法を適宜応用すれば良く、本発明を限定するものではないが、例えば相同組み換えによるゲノム上の遺伝子の改変や、プラスミドベクターを用いた新規な遺伝子(群)の導入などの手法が考えられる。
【0014】
本発明はまた、第1から第3の態様のうちいずれか1つに記載の耐熱性エタノール生産細菌を用いたエタノールの生産方法も提供する。嫌気的解糖というエタノール発酵の基本的な原理は本発明の提供するZm菌株を利用した場合にも変わりはないため、本発明の菌株を用いたエタノールの発酵生産のためには、適当量の糖分(炭化水素)を主成分とし、上記態様のエタノール生産酵母を加えて発酵を行う事が可能である。発酵に用いる装置、機器、原料液の構成などは発酵産業分野において用いられているものを適宜利用すれば良く、本発明を限定するものではないが、例えば主成分として1-20%の糖分を含有する培養液、好ましくはYPD培養液を原料液に用いるエタノール生産方法が好適である。また下記実施例に示すとおり、本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌株のうち405株については、エタノールの発酵生産においてその発酵効率が最大になると言われる1-5%程度の糖分を含有する培養系に用いるのが好ましく(3%グルコース含有培地で1%のエタノールを生産可能)、一方550株は糖蜜など10%を越える糖濃度の高い培養系で用いるなど(16%グルコース含有培地で4%のエタノール生産可能)、菌株の性状や原材料、目的等に合わせて用いるのが好ましい。
【0015】
本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌を用いたエタノール発酵生産において、原料液に含まれる主成分たる糖分については、グルコース、スクロースやフルクトースといった純粋な糖やそれらの混合物の他、酒類の原料として用いられている植物原料、例えば米類、麦類、芋類、サトウキビ、サトウカエデ、リュウゼツラン、甜菜などバイオマスと総称される種々の原料が利用可能である。これらのうち資化可能な単糖類を含有するものは、その搾り汁などをそのまま用いることが可能であり、デンプンやセルロースなど多糖類を主として含有するものについては、これら多糖類を分解する酵素を用いるか、あるいは分解能力を持つ微生物に多糖類の加水分解を行わせ、資化可能な単糖類にまで分解して用いるのが好ましい。バイオマス原料から作られる「バイオエタノール」は、石油資源に代わる燃料として今後需要の増加が予想されており、本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌及びこの細菌が生産するエタノールを利用することによって、バイオエタノール関連産業に寄与することが期待される。以下に本発明の実施例を示すが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
(ザイモモナス菌株と培養)Zymomonas mobilisの実験株として、タイ王国で単離され株化されたTISTR405,TISTR548,TISTR550,TISTR551株(以後それぞれ数字のみで株名を表す)を用いた。またこれらの株のエタノール生産能などに関する対照として、Zm菌のエタノール高生産株であるZM4株(寄託番号:NRRL B-14023)を用いた。Zm菌の培養には0.3%酵母抽出物、0.5%ペプトン、3%グルコースを含むYPD培地100mlを用い、100rpm(Round per minute)の速度で振とう培養を行った。培養液中のエタノール濃度は、非特許文献2に記載の方法、すなわち酢酸菌由来の精製アルコールデヒドロゲナーゼを用いた方法により測定した。またZm菌の増殖は、培養液のOD600(600nmにおける吸光度)を測定することで算出した。
【0017】
(菌株の種同定)TISTR405株、548株、550株、551株は、YPD寒天培地上においてコロニーを形成し、その形状に着目すると白色、盛り上がり、中央部が突出という特徴を示し、コロニー周辺部はスムースであった。これはZymomonas mobilis種の特徴と一致した。更なる同定のため、これらの菌株のうち405株のゲノムDNAからアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(adhA)の断片をクローニングし、その塩基配列を既知の生物種のデータベースと比較した。Zm菌からのゲノムDNAの調製は、非特許文献3に記載の方法で行い、Z.mobilis種のエタノール高生産株であるZM4株のadhA塩基配列を参照してプライマー(配列番号1,2)を設計して、PCRによってadhAコード領域の上流約500bpを含む1630bpの遺伝子断片を得た。PCR産物をpUC119プラスミドベクターに導入し、M13ユニバーサルプライマー(配列番号3,4)を用いて塩基配列を決定した。配列番号5に明らかになった配列を表す。この配列を用いNCBIデータベースによって相同検索を行ったところ、Z.mobilis ZM4株のadhA遺伝子と塩基配列レベルでは98%の相同性、アミノ酸に翻訳すると100%と完全に一致した。これらの結果から、本発明の提供するTISTR405株、548株、550株、551株はそれぞれ、Z.mobilis種に属する微生物であると同定された。
【0018】
(増殖及びエタノール生産能の検討-3%グルコース)Zm菌の各株の耐熱性、及び高温条件下におけるエタノール生産能を明らかにするため、30℃から40℃において各株を培養し、その増殖と培養液中のエタノール濃度を測定した。40℃においては、全ての株が生育しなかったので、以後の検討は39℃以下の温度で行った。図1に、本検討の結果を表す。図1Aは30℃における各株の増殖を表したものであり、縦軸はOD600の値を、横軸は培養開始からの時間(hour)を表す。図1Bは30℃におけるエタノール生産能を表したものであり、縦軸はエタノール濃度(w/v)を、横軸は培養開始からの時間(hour)を表す。またグラフ中—○—は405株を,—△—は550株を,—□—は551株を,—▲—は548株を,—●—はZM4株をそれぞれ示している(シンボルはA-Dまで共通)。図1Aに見られるように、548株が若干増殖の立ち上がりが遅い他は同様の増殖曲線を示し、また550株と551株は24時間以降の増殖が他の株に比べてやや鈍るという傾向を示した。一方エタノール生産能で見ると(図1B)、550株が培養液中に含まれるエタノール濃度が最も高い約1.0%を示し、次いで405,551,Zm4株が0.8%程度のエタノール濃度を示した。548株は培養液中のエタノール濃度がほとんど上昇せず、エタノール生産には不向きと判断された。反対に550株は、増殖速度はそれほど速くないものの、エタノール生産能はエタノール高生産株であるZM4株も含めた全株中で最も高く、エタノール生産には適した株であることが示された。
【0019】
高温条件である39℃における検討結果を、図1C,Dに示す。図1Cは39℃における各株の増殖(軸はAと共通)を、図1Dは39℃におけるエタノール生産能(軸はBと共通)をそれぞれ示している。図1Cに示すとおり、39℃ではエタノール高生産株であるZm4株の増殖はOD600の値で0.5以下まで減少し、また551株はほとんど増殖が見られなかった。反対に405株はこの温度でも30℃と同様の良好な増殖を示し、548及び550株も対照のエタノール高生産株よりは高い増殖能を示した。39℃におけるエタノール生産能の比較においては、ZM4株は0.4%程度と30℃の4割程度のエタノール生産能しか示さなかったのに対して、405株及び550株は1%程度と30℃と同様のエタノール生産能を示し、また405株では培養開始後24時間で0.8%、36時間で1%と30℃よりも良好なエタノール生産能を示し、耐熱性エタノール生産菌として利用可能であることが示された。550株は30℃同様、39℃における増殖が405株に比べて低かったが、培養液中のエタノール濃度は高い値を示し、菌体あたりのエタノール生産能という観点から優れた株であることが示された。551株は60時間後に0.2%というエタノール生産能を示し、548株はほとんどエタノール濃度の上昇が見られなかった。これらの結果から、全てのZm菌株が耐熱性エタノール生産に適しているわけではなく、特定の株、すなわち405及び550株が耐熱性エタノール生産に適していることが明らかとなった。
【実施例2】
【0020】
(増殖及びエタノール生産能の検討-16%グルコース)より高い濃度のグルコースを含む培養液中における本発明の菌株の増殖能とエタノール生産能を検討するため、16%グルコースを含むYPD培地(グルコース濃度以外は実施例1と同じ)を用い、405株、550株及び対照のエタノール高生産株であるZM4株の30℃と39℃における増殖とエタノール生産能を調べた。増殖能はOD600の値で、エタノール生産能は培養液中のエタノール濃度を測定することで算出した。検討の結果を図2に示す。図2Aは30℃における各株の増殖を表し、縦軸はOD600の値を、横軸は培養開始からの時間(hour)を示している。またグラフ中—○—は405株を,—△—は550株を,—●—はZM4株をそれぞれ示している(シンボルはA-D共通)。グルコース濃度16%の培養では、405株のOD600の値が他の2株に比べて小さかった。図2Bは30℃におけるエタノール生産能を表し、ZM4株では36時間後に約3%のエタノールが生産されていた。これに対し、550株では36時間後に4%のエタノールが生産されており、この条件においてZM4株よりもすぐれたエタノール生産能を示した。
【0021】
39℃における増殖能とエタノール生産能を、図2C,Dにそれぞれ示す。30℃同様、増殖(C)に関しては405株のOD600の値が1以下である他はZM4株と550株との間に差は見られなかった。一方エタノール生産能(D)では、対照のエタノール高生産株、405株が2%以下のエタノール生産能しか示さなかったのに対して、550株は30℃に近い4%弱のエタノール生産能を示し、550株が耐熱性のエタノール生産能に加え、高濃度の糖を含んだ培養液中においても高いエタノール生産能を持つことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の提供するエタノール生産細菌は、微生物を種々の有用物質の生産に利用する発酵産業で利用可能である。特に本発明のエタノール生産細菌は、37℃以上というザイモモナス属細菌にとっては過酷な高温条件下で良好なエタノール生産能を有しており、バイオエタノールをはじめとするエタノール生産においてコスト削減などの利点をもたらすと期待される。また実施例1,2の検討結果から、本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌の菌株の利用に際しては、エタノールの発酵生産効率が最大と言われる3%前後の糖分を含んだ培養液を用いた培養には405株が、糖蜜など10%を越える高濃度の糖分を含んだ培養液を用いた培養には550株がそれぞれ適しており、その目的や用途に応じて使い分けるのが好ましいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】3%グルコースを含有する培養液を用いた系における、本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌の30℃及び39℃での増殖(A,C)及びエタノール生産能(B,D)を、ザイモモナス・モビリスのエタノール高生産株と比較して示す。
【図2】16%グルコースを含有する培養液を用いた系における、本発明の提供する耐熱性エタノール生産細菌の30℃及び39℃での増殖(A,C)及びエタノール生産能(B,D)を、ザイモモナス・モビリスのエタノール高生産株と比較して示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1