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明細書 :油溶性キトサン誘導体およびその製造方法、並びに油溶性キトサン誘導体を含む組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5207165号 (P5207165)
公開番号 特開2009-057498 (P2009-057498A)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
公開日 平成21年3月19日(2009.3.19)
発明の名称または考案の名称 油溶性キトサン誘導体およびその製造方法、並びに油溶性キトサン誘導体を含む組成物
国際特許分類 C08B  37/08        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
B01J  20/24        (2006.01)
FI C08B 37/08 A
C09K 3/00 S
C09K 3/00 108A
B01J 20/24 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2007-227132 (P2007-227132)
出願日 平成19年8月31日(2007.8.31)
審査請求日 平成22年8月23日(2010.8.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】馬場 由成
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】三木 寛
参考文献・文献 英国特許出願公開第02363614(GB,A)
特開平10-120706(JP,A)
特開昭60-231900(JP,A)
特開昭57-016999(JP,A)
特開昭51-068689(JP,A)
特開昭54-011955(JP,A)
特開平05-163164(JP,A)
Xiangtan Daxue Ziran Kexue Xuebao,2001年,Vol.23(2),p.57-59,69
Polymer Journal,1982年,Vol.14(7),p.527-536
Sen-I Gakkaishi,1983年,Vol.39(12),p.T507-T511
調査した分野 C08B 37/08
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
キチンをピリジンで洗浄する第一の工程と、
当該洗浄後のキチンをハロゲン化アルキルと反応させることによって、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入し、アルキルキチンを合成する第二の工程と、
当該アルキルキチンを脱アセチル化する第三の工程と、を含むことを特徴とするキトサン誘導体の製造方法。
【請求項2】
キトサンをピリジンで洗浄する第一の工程と、
当該洗浄後のキトサンのアミノ基に、保護基を結合させることによって、アミノ基を保護したキトサンを合成する第二の工程と、
上記アミノ基を保護したキトサンとハロゲン化アルキルとを反応させ、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入する第三の工程と、を含むことを特徴とするキトサン誘導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンにエーテル結合を介してアルキル基を導入することによって合成される油溶性キトサン、油溶性キトサン誘導体およびこれらの製造方法、並びに油溶性キトサン誘導体を含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キチンの脱アセチル化物であるキトサンは、反応性の高い第1級アミノ基をC2位に有しているため、イオン交換体、広範囲の重金属吸着剤、各種酸性物質(核酸、エンドトキシンなど)の除去剤、カチオン系活性汚泥凝集剤、人工皮膚等として広く用いられている。
【0003】
一方、キトサンは酸性条件下でしか水や有機溶媒に溶解しないため、加工が困難であるという問題点がある。これまでに、有機溶媒への溶解性を改善したキトサン誘導体としては、C2位にエステル結合を用いてアルキル基やベンゾイル基を導入し、有機化合物と相互作用する機能を持たせたキトサン誘導体が開発されている(例えば、非特許文献1)。その他にも、キトサン骨格にアルキル基を導入したキトサン誘導体(以下、「アルキル基導入キトサン誘導体」という)であって、当該アルキル基がエステル結合を用いてキトサン骨格に導入されているキトサン誘導体がいくつか開示されている(例えば、特許文献1~3)。

【特許文献1】特開2005—247907号公報(平成17(2005)年9月15日公開)
【特許文献2】特開2007—119533号公報(平成19(2007)年5月17日公開)
【特許文献3】特表2006—503933号公報(平成18(2006)年2月2日公開)
【非特許文献1】キチン・キトサン研究,6(2000),90
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に開示されたアルキル基導入キトサン誘導体は、いずれもアルキル基がエステル結合でキトサン骨格に導入されたものである。しかしながら、エステル結合は酸やアルカリによって容易に加水分解されるため、当該誘導体は化学的に不安定であり、アルキル基が脱離しやすい。よって、有機溶媒への優れた溶解性を備え、しかも化学的に安定なキトサン誘導体は得られていないのが現状である。また、エステル結合によるアルキル基導入キトサン誘導体の合成は、工程数が多く、合成に手間がかかるという問題点も存在している。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、キトサンにエーテル結合を介してアルキル基を導入することによって、有機溶媒への優れた溶解性を備え、しかも化学的に安定なキトサン誘導体およびその製造方法、並びに当該キトサン誘導体を含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、キトサン骨格にエーテル結合を介してアルキル基を導入することによって、有機溶媒への溶解性と化学的な安定性とを両立したキトサン誘導体を合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るキトサン誘導体は、キトサン骨格中に少なくとも1以上のアルキル基を含有し、当該アルキル基の少なくとも1以上は、エーテル結合によってキトサン骨格に導入されていることを特徴としている。
【0008】
従来のように、アルキル基がエステル結合によって導入されているキトサン誘導体では、エステルカルボニル基が水酸化物イオンの付加を受けやすいため、酸やアルカリで容易に加水分解され、アルキル基が脱離しやすい。このように、アルキル基がエステル結合によって導入されているキトサン誘導体は化学的に不安定であり、アルキル基が脱離しやすいので、有機溶媒への溶解性(油溶性)も不十分である。
【0009】
一方、本発明に係るキトサン誘導体は、アルキル基がエーテル結合によって導入されているので、酸やアルカリによる攻撃を受けにくく、化学的に安定であり、アルキル基が脱離しにくいので、有機溶媒への溶解性に優れる。その結果、生体高分子であり、しかも油溶性であるという特徴に基づき、化粧品、医薬品、疎水性物質の分離剤、抽出剤、吸着剤、界面活性剤、分離膜、抗菌剤、抗カビ剤などの組成物に幅広く応用することができる。
【0010】
本発明に係るキトサン誘導体は、上記アルキル基が、キトサン骨格の3位および6位にエーテル結合によって導入されていることが好ましい。上記構成によれば、キトサン1分子中に2つのアルキル基を安定に保持することができるので、キトサン誘導体の有機溶媒への溶解性をより高めることができる。
【0011】
本発明に係るキトサン誘導体の製造方法は、キチンをピリジンで洗浄する第一の工程と、当該洗浄後のキチンをハロゲン化アルキルと反応させることによって、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入し、アルキルキチンを合成する第二の工程と、当該アルキルキチンを脱アセチル化する第三の工程と、を含むことを特徴としている。
【0012】
キチンは、2位のアミノ基となる部位が既にアセトアミド基として保護されており、保護基を別途用いる必要がないため、反応ステップを減らす観点から、アルキル基導入キトサン誘導体の製造のために好ましい原料であるといえる。
【0013】
しかしながら、キチンは結晶性が強いため、ハロゲン化アルキルと反応しにくいという欠点がある。上記構成によれば、ピリジンで洗浄することによってキチンの結晶性を弱めることができるため、キチンとハロゲン化アルキルとの反応性を高めることができる。そのため、キチン分子中に容易にアルキル基を導入することができ、続いて脱アセチル化することにより、容易に、少ないステップで、エーテル結合によってキトサン骨格にアルキル基を導入することができる。
【0014】
したがって、化学的に安定なアルキル基導入キトサン誘導体を簡便に製造することができる。
【0015】
本発明に係るキトサン誘導体の製造方法は、キトサンをピリジンで洗浄する第一の工程と、当該洗浄後のキトサンのアミノ基に、保護基を結合させることによって、アミノ基を保護したキトサンを合成する第二の工程と、上記アミノ基を保護したキトサンとハロゲン化アルキルとを反応させ、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入する第三の工程と、を含むことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、キトサンの結晶性を弱めた上で、キトサン由来の一級アミノ基を保護した状態でキトサンをハロゲン化アルキルと反応させるので、容易に、少ないステップで、エーテル結合によってキトサン骨格にアルキル基を導入することができる。
【0017】
したがって、化学的に安定なアルキル基導入キトサン誘導体を簡便に製造することができる。
【0018】
本発明に係る組成物は、本発明に係るキトサン誘導体、または本発明に係るキトサン誘導体の製造方法によって製造されたキトサン誘導体を含むことを特徴としている。上記キトサン誘導体は、アルキル基が安定に保持されているため、油溶性に優れる。したがって、上記構成によれば、例えば農薬や環境ホルモンなどの疎水性物質の除去剤や、疎水性医薬品のドラッグデリバリーキャリア等に好適な組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るキトサン誘導体は、キトサン骨格中に少なくとも1以上のアルキル基を含有し、当該アルキル基の少なくとも1以上は、エーテル結合によってキトサン骨格に導入されているという構成である。
【0020】
それゆえ、化学的に安定であり、有機溶媒への溶解性に優れるアルキル基導入キトサン誘導体を提供することができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係るキトサン誘導体の製造方法は、キチンをピリジンで洗浄する第一の工程と、当該洗浄後のキチンをハロゲン化アルキルと反応させることによって、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入し、アルキルキチンを合成する第二の工程と、当該アルキルキチンを脱アセチル化する第三の工程と、を含むという構成である。
【0022】
それゆえ、容易に、少ないステップで、エーテル結合によってキトサン骨格にアルキル基を導入することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明に係るキトサン誘導体の製造方法は、キトサンをピリジンで洗浄する第一の工程と、当該洗浄後のキトサンのアミノ基に、保護基を結合させることによって、アミノ基を保護したキトサンを合成する第二の工程と、上記アミノ基を保護したキトサンとハロゲン化アルキルとを反応させ、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入する第三の工程と、を含むという構成である。
【0024】
それゆえ、容易に、少ないステップで、エーテル結合によってキトサン骨格にアルキル基を導入することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(1)キトサン誘導体
本発明に係るキトサン誘導体は、キトサン骨格中に少なくとも1以上のアルキル基を含有し、当該アルキル基の少なくとも1以上は、エーテル結合によってキトサン骨格に導入されている。係る構成を有することにより、従来のアルキル基導入キトサン誘導体よりも化学的安定性に優れ、かつ、油溶性に優れるアルキル基導入キトサン誘導体を提供することができる。
【0026】
具体的には、アルキル基がキトサン骨格にエーテル結合によって導入されているので、酸やアルカリによる攻撃を受けにくく、アルキル基を分子中に安定に保持できる。また、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチル、石油エーテル、アルコール類、アセトン、アセトニトリル等の多様な溶媒に対して優れた溶解性を示すことができる。
【0027】
本明細書において「キトサン骨格」とは、以下の一般式(1)で表される骨格をいい、「アルキル基の少なくとも1以上は、エーテル結合によってキトサン骨格に導入されている」とは、一般式(1)のX、Xのうち、少なくとも1つはアルキル基であることを意味する。
【0028】
【化1】
JP0005207165B2_000002t.gif

【0029】
上記一般式(1)中、X、Xはそれぞれ独立してアルキル基、アリル基、シクロアルキル基または水素であり、X、Xのうち、少なくとも1つはアルキル基である。R,Rはそれぞれ独立してアルキル基または水素である。RまたはRがアルキル基である場合、当該アルキル基には後述する保護基が結合していてもよい。
【0030】
上記アルキル基としては特に限定されるものではなく、直鎖状であってもよいし、分岐を有していても構わない。官能基同士の立体障害がより少なく、かつ、有機溶媒への溶解性を高めることができるという観点から、直鎖アルキル基であることがより好ましい。また、炭素数は特に限定されるものではないが、合成の容易さの観点からは、1~20であることがより好ましい。特に好ましくはオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オレイル基である。また、上記アルキル基は、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子で置換されていてもよい。
【0031】
上記アルキル基は、キトサン骨格の3位および6位にエーテル結合によって導入されていることが好ましい。本発明に係るキトサン誘導体においては、アルキル基の少なくとも1以上がエーテル結合によってキトサン骨格に導入されていれば、エステル結合によってアルキル基がキトサン骨格に導入されているキトサン誘導体よりも、アルキル基を分子中に安定に保持でき、かつ、油溶性を高めることができる。よって、必ずしもキトサン骨格の3位および6位にエーテル結合によって導入されている必要はないが、上記アルキル基は、キトサン骨格の3位および6位にエーテル結合によって導入されていると、油溶性をより高めることができるため好ましい。
【0032】
上記キトサン誘導体において、一般式(1)で表される繰り返し単位が、全ての繰り返し単位中に占める割合は、油溶性を高めるという理由により、40-60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。上限は特に限定されるものではなく、100モル%まで可能である。
【0033】
(2)キトサン誘導体の製造方法
(2-1)キチンを出発物質とする製造方法
一実施形態において、本発明に係るキトサン誘導体の製造方法は、キチンをピリジンで洗浄する第一の工程と、当該洗浄後のキチンをハロゲン化アルキルと反応させることによって、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入し、アルキルキチンを合成する第二の工程と、当該アルキルキチンを脱アセチル化する第三の工程と、を含む方法である。
【0034】
キチンは結晶性が強く、そのままではアルキル基を導入しにくいため、上記第一の工程では、キチンをピリジンで洗浄することによって結晶性を弱め、ハロゲン化アルキルとの反応性を高めることを目的としている。
【0035】
キチンやキトサンは水素結合(アルコール水酸基の水素とアミノ基の窒素原子との水素結合)を有しており、結晶性が高くなっているため、ピリジンで洗浄して結晶性を弱めることによって反応性を高くすることができる。なお、結晶性が弱まったことは、X線の回折パターンが鋭いピークからブロードなピークへ変わることを指標として判断することができる。
【0036】
上記キチンは、一般式(2)で表される繰り返し単位を含むキチン、すなわち、β-1,4-ポリ-N-アセチル-D-グルコサミンである。
【0037】
【化2】
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【0038】
キチンをピリジンで洗浄する方法は特に限定されるものではなく、常温でスターラーを使用して攪拌すること等、従来公知の方法を用いることができる。キチンに対するピリジンの使用量は特に限定されるものではなく、少なくとも、使用するキチンの全量を浸漬できる程度あれば足りる。また、ピリジンとしては、特に限定されるものではないが、脱水ピリジンを用いることが好ましい。
【0039】
第二の工程では、第一の工程で結晶性を弱めたキチンを、メタンスルホン酸やDMF等の溶媒中においてハロゲン化アルキルと反応させることによって、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入し、アルキルキチンを合成する。
【0040】
上記ハロゲン化アルキルとしては特に限定されるものではなく、導入したいアルキル基の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、1-ブロモオクチル、1-フッ化オクチル、1-塩化オクチル、1-ヨウ化オクチル、1-ブロモノニル、1-フッ化ノニル、1-塩化ノニル、1-ヨウ化ノニル、1-ブロモデカン、1-フッ化デカン、1-塩化デカン、1-ヨウ化デカン、1-ブロモドデカン、1-フッ化ドデカン、1-塩化ドデカン、1-ヨウ化ドデカン、1-ブロモオレイル、1-フッ化オレイル、1-塩化オレイル、1-ヨウ化オレイル等を用いることができる。
【0041】
上記キチンの数平均分子量は、数千~数十万であることが好ましく、特に数千~数万であることが好ましい。キチンの数平均分子量が係る範囲の場合、本製造方法の結果物であるキトサン誘導体の、有機溶媒への溶解性が十分なものとなるため好ましい。
【0042】
第二の工程で用いられる反応触媒としては、特に限定されるものではないが、脱酸反応を速やかに進行させることができるという理由により、NaH、Na(OCH3)、ピリジン、NaOH(固体)、トリエチルアミン等を好ましく用いることができる。脱酸反応では、反応で生成された各種酸(ハロゲン化アルキルの種類に依存する)の中和反応、あるいは水素を引き抜くための反応に用いる塩基性物質が必要である。例示した触媒中、塩基性が最も強くて、比較的取り扱いやすいのはNaHであるため、中でも、NaHが特に好ましい。触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、少なくとも、ハロゲン化アルキル基で置換されるキチン・キトサンの水素の量が必要であり、一般的には等量の2倍以上あれば十分であると考えられる。
【0043】
第二の工程の結果得られるアルキルキチンは、アルカリで処理する等の公知の方法によって脱アセチル化され(第三の工程)、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するキトサン誘導体が生成される。キトサン誘導体を構成する繰り返し単位における、キチン由来のアセトアミド基の残存率は、0%に近いほど好ましいが、20-30%以下であれば、アルキル基が化学的に安定であり、かつ油溶性が高いという本発明の目的を達成しうるキトサン誘導体を提供することができる。
【0044】
上記キトサン誘導体には、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基が導入されている。エーテル結合によって一つのキトサン骨格に導入されているアルキル基の数は、1であっても2であってもよく、3位に導入されていても6位に導入されていてもよいが、油溶性を高める観点から、3位および6位にエーテル結合によって導入されていることが好ましい。すなわち、一般式(1)においてX、Xのうち、少なくとも1つはアルキル基である。
【0045】
本実施形態に係る方法によって合成された上記キトサン誘導体において、一般式(1)で表される繰り返し単位が、キトサン誘導体を構成する全ての繰り返し単位中に占める割合は、(1)と同様に、40-60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
【0046】
後述するキトサンを出発物質とする方法の場合、2位のアミノ基に予め保護基をつけた上でアルキル基を導入する必要があるが、キチンを出発物質とする場合、アミノ基となる部位は元々アセトアミド基として保護されているため、反応ステップを減らすことができるという利点がある。
【0047】
(2-2)キトサンを出発物質とする製造方法
一実施形態において、本発明に係るキトサン誘導体の製造方法は、キトサンをピリジンで洗浄する第一の工程と、当該洗浄後のキトサンのアミノ基に、保護基を結合させることによって、アミノ基を保護したキトサンを合成する第二の工程と、上記アミノ基を保護したキトサンとハロゲン化アルキルとを反応させ、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入する第三の工程と、を含む方法である。
【0048】
本実施形態に係る方法では、キトサンを出発原料とする。当該キトサンとしては、一般式(3)で表される繰り返し単位を含むキトサン、すなわち、β-1,4-ポリ-D-グルコサミンが用いられる。
【0049】
【化3】
JP0005207165B2_000004t.gif

【0050】
上記キトサンの数平均分子量は、数千~数十万であることが好ましく、特に数千~数万であることが好ましい。キトサンの数平均分子量が係る範囲の場合、本製造方法の結果物であるキトサン誘導体の、有機溶媒への溶解性が十分なものとなるため好ましい。
【0051】
上記第一の工程においては、(2-1)で説明したキチンを出発物質とする場合と同様に、キトサンをピリジンで洗浄することによって、キトサンの結晶性を弱めることを目的としている。洗浄の方法は、(2-1)と同様である。
【0052】
上記第二の工程においては、当該洗浄後のキトサンのアミノ基に、保護基を結合させることによって、アミノ基を保護したキトサンを合成する。保護基としては特に限定されるものではなく、例えば無水フタル酸、アルデヒド誘導体類などを用いることができる。アルデヒド誘導体類としては特に限定されるものではなく、いかなるアルデヒド誘導体をも用いることができるが、例えば2-ピリジルカルバルデヒド、2-チオフェンカルバルデヒド、2-サルシルアルデヒド、アルキルチオアルデヒド等のように、キレート配位子または官能基を持ったアルデヒド誘導体を用いると、アミノ基の保護基の導入と、キレート配位子または官能基の導入とを同時に達成できる。よって、キレート配位子または官能基と相互作用する疎水性物質を分離するための分離剤として有用なキトサン誘導体を提供することができる。
【0053】
保護基の結合方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ピリジンやDMF等の溶媒中で、一般式(3)で表される繰り返し単位を含むキトサンと、例えば2-ピリジルカルバルデヒドのようなシッフ塩基とを反応させてキトサンのアミノ基にシッフ塩基を結合させ、シッフ塩基キトサンを合成する方法や、一般式(3)で表される繰り返し単位を含むキトサンと、無水フタル酸とを反応させて、N-フタロイルキトサンを合成する方法が挙げられる。これによって、キトサン起源のアミノ基がシッフ塩基で置換されて保護された、式(4)で表される繰り返し単位を含む中間生成物、または、キトサン起源のアミノ基がフタルアミド基によって置換されて保護された、式(5)で表される繰り返し単位を含む中間生成物が得られる。
【0054】
【化4】
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【0055】
【化5】
JP0005207165B2_000006t.gif

【0056】
式(4)で表される繰り返し単位を含む中間生成物は、NaBHなどの還元剤を用いて還元することにより、式(6)で表されるピリジルメチルキトサンとなる。ただし、還元のプロセスはこれに限られるものではなく、例えば、式(4)で表される繰り返し単位を含む中間生成物をハロゲン化アルキルと反応させた後で、NaBHなどの還元剤を用いてC=NをC-Nに還元してもよい。この場合は、キトサン由来の一級アミノ基が二級アミンとして生成する確率が高くなるため、二級アミンとしての生成を期待するなら、後者のプロセスの方が好ましい。
【0057】
【化6】
JP0005207165B2_000007t.gif

【0058】
次に、上記アミノ基を保護したキトサンとハロゲン化アルキルとを反応させる(第三の工程)。その結果、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入することができる。
【0059】
例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒中でNaH等の触媒の存在下、ピリジルメチルキトサンまたはN-フタロイルキトサンとハロゲン化アルキルとを反応させることにより、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入することができる。
【0060】
上記ハロゲン化アルキルとしては、(2-1)と同様のハロゲン化アルキルを用いることができる。また、反応触媒は特に限定されるものではなく、(2-1)で説明した触媒と同様に、NaH、Na(OCH3)、ピリジン、NaOH(固体)、トリエチルアミン等を好ましく用いることができ、中でもNaHを特に好ましく用いることができる。
【0061】
保護基がついた状態でも、有機溶媒への溶解性を示すことができるため、本発明に係るキトサン誘導体は、上記保護基を有していてもよいが、上記保護基は、従来公知の方法によってキトサン誘導体から容易に除去することができる。例えば、酸で処理することによってシッフ塩基を除去する方法や、水加ヒドラジン等を反応させてフタルアミド基を除去する方法により除去することができる。
【0062】
(2-1)、(2-2)で述べたような、本発明に係る製造方法のように、エーテル結合によってキトサン骨格に少なくとも一つのアルキル基を導入するキトサン誘導体の製造方法については、これまでに全く知見が得られておらず、キトサン誘導体の新規な合成方法である。当該方法は、(2-1)、(2-2)で説明したように、2~3ステップで完結することができる非常に簡便な方法であり、しかも生産物であるキトサン誘導体は、アルキル基が安定に保持され、油溶性が高いという優れた性質を有するものである。したがって、本発明に係る製造方法はキトサン誘導体の非常に有用な合成方法であるといえる。
(3)組成物
本発明にはまた、本発明に係るキトサン誘導体、または、本発明に係る製造方法によって製造されたキトサン誘導体を含む組成物も含まれる。
【0063】
上述のように、本発明に係るキトサン誘導体、および本発明に係る製造方法によって製造されたキトサン誘導体は、アルキル基がキトサン骨格にエーテル結合によって導入されているので、酸やアルカリによる攻撃を受けにくく、アルキル基を分子中に安定に保持できるため、有機溶媒に対して高い溶解性を示すことができる。また、高い生体親和性を持つ生体高分子である。
【0064】
それゆえ、上記キトサン誘導体は、農薬や環境ホルモン等の疎水性物質の分離剤、乳液などの化粧品、石鹸、疎水性医薬品のドラッグデリバリーシステムにおけるキャリア、貴金属、有価金属、有害金属等の金属イオンの抽出剤または吸着剤、アミノ酸、タンパク質等の生理活性物質の抽出剤または吸着剤、界面活性剤、分離膜、抗菌剤、抗カビ剤等の組成物の原料として好適に用いることができる。
【0065】
また、上記キトサン誘導体は、現在廃棄処分されているカニやエビの殻に含まれるキチン質を原料とすることができるため、これらの組成物に応用することにより、バイオマス廃棄物の有効利用に寄与することができるだけでなく、極めて低コストで製造することができる。
【0066】
(2-2)で製造されたキトサン誘導体を上記分離剤として使用する場合は、(2-2)に記載した方法において、回収しようとする目的物質と相互作用をするキレート配位子または官能基を有するアルデヒド誘導体を保護基として用いれば、アミノ基の保護基の導入と、キレート配位子または官能基の導入とを同時に達成することができ、その結果、キレート配位子または官能基と相互作用する疎水性物質を分離することができるため好ましい。上記アルデヒド誘導体としては、例えば2-ピリジルカルバルデヒド、2-チオフェンカルバルデヒド、2-サルシルアルデヒド、アルキルチオアルデヒド等を挙げることができる。
【0067】
本発明の組成物中における上記キトサン誘導体の含有量は特に限定されるものではない。例えば、キトサン誘導体の含有量は組成物全重量に対して100重量%であってもよい。
【0068】
本発明の組成物は、用途に応じて、上記キトサン誘導体と所望の任意成分とを、当業者に公知の方法によって適宜配合して得ることができる。
【0069】
また、上記キトサン誘導体は、成膜することもできるので、上記キトサン誘導体を含む組成物を分離膜として用いることもできる。分離の対象としては、農薬や環境ホルモン等の疎水性物質、貴金属、有価金属、有害金属等の金属イオン、アミノ酸、タンパク質等の生理活性物質等を挙げることができる。成膜方法は特に限定されるものではないが、例えば、任意の有機溶媒に溶解させた上記キトサン誘導体を、シャーレ等の容器に流し込み、有機溶媒を揮発させることによって行うことができる。
【0070】
さらに、上記キトサン誘導体は、膜状(フィルム状)、中空糸状、繊維状にすることや、不織布にすることもできるので、上記キトサン誘導体を含む組成物を中空糸状、繊維状、不織布に成形し、機能性繊維として用いることもできる。上記機能性繊維としての用途としては、一般的には吸着材としての用途を挙げることができる。また、膜状(フィルム状)であれば、抗菌性フィルムとしての使用も可能である。当該成形を行うための方法は特に限定されるものではないが、例えば、任意の有機溶媒に溶解させた上記キトサン誘導体を、ゲル化浴に通すことによって中空糸状や繊維状に成形することができる。
【0071】
このように、上記キトサン誘導体は生体高分子であり、しかもアルキル基を安定的に保持できるため油溶性であるという特徴を生かすことによって、多くの分野で上記のような組成物の新素材として利用可能である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
(1)本発明に係るキトサン誘導体の製造
(1-1)キトサンを出発物質としたO,O’-ジデシルキトサンの製造
(1-1-1)N-フタロイルキトサンの合成
キトサン20g、蒸留水50ml、ピリジン50mlを三口フラスコに入れ、130℃で2時間攪拌し、キトサンをピリジンで洗浄した。ろ過後得られた粉体を三口フラスコに入れ、ピリジン100mlを加えて130℃で2時間攪拌した。再びピリジン100mlを用いて同様の操作を繰り返し、乾燥させた。
【0074】
上記のように洗浄したキトサン5g、無水フタル酸23gを三口フラスコに入れ、DMF100mlを加えて130℃で5時間攪拌させた。蒸留水200mlの中にフラスコ内の溶液を滴下し、生じた沈殿物をろ過により得た。
【0075】
(1-1-2)O,O’-ジデシル-N-フタロイルキトサンの合成
三口フラスコにN-フタロイルキトサン1g、DMSO 100mlを入れ80℃で2時間撹拌させた。ウォーターバス内にフラスコを移し、DMSOが凍らないよう20度程度に保った。NaH 1.66g(10eqvt.)を加え1時間撹拌した後、1-ブロモデカン22.88g(30eqvt.)を滴下し、25℃以下で撹拌させた。24時間後、1-ブロモデカン11.44g(15eqvt.)を滴下した。さらに24時間後NaH0.16g(1eqvt.)を加え、1時間後に1-ブロモデカン3.81g(5eqvt.)を滴下した。最初に1-ブロモデカンを滴下して72時間経過した後、水2Lを加え一晩撹拌させた。遠心分離により得られた液体状物質にメタノール1Lを加え、一晩撹拌させた。ろ過後、得られた物質をクロロホルム40mlに溶解させ、アセトン250mlを加えて再び沈殿させた。ろ過後クロロホルム30mlを加えて再び溶解させ、エバポレーターを用い固体状物質を得た。その後、エバポレーターを用いアセトンで2回洗浄し、O,O’-ジデシル-N-フタロイルキトサンを得た。
【0076】
(1-1-3)O,O’-ジデシルキトサンの合成
(1-1-2)で合成されたO,O’-ジデシル-N-フタロイルキトサン0.4gをクロロホルム50mlに溶解させた。三口フラスコ内で、ヒドラジン0.70g(20eqvt.)を滴下し、60℃で24時間撹拌させた。その後、水を沈殿物が生じるまで加えた。ろ過後、エタノール、アセトンで洗浄し乾燥させ、O,O’-ジデシルキトサンを得た。
【0077】
図1は、本発明に係るキトサン誘導体の製造方法の一例である上記(1-1)の製造スキームを示す。
【0078】
(1-2)キトサンを出発物質とした3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンの製造
キトサン5gを2wt%の酢酸溶液500mlに溶解し、そこにキトサンの10倍等量の2-ピリジンカルバルデヒドを滴下し、333Kで24時間反応させて、ピリジル基を導入したキトサンのシッフ塩基誘導体(シッフ塩基キトサン)を得た。その後、当該シッフ塩基キトサンを水素化ホウ素ナトリウムにより還元し、ピリジルメチルキトサンを得た。次に、N-フタロイルキトサンの代わりに出発物質としてピリジルメチルキトサンを用いて、(1-1-2)で示したO,O’-ジデシル-N-フタロイルキトサンの合成と同じ方法によって、ピリジルメチルキトサンにデシル基を導入し、酸に安定な二級アミンとピリジン環が導入された3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンを得た。
【0079】
図2は、本発明に係るキトサン誘導体の製造方法の一例である上記(1-2)の製造スキームを示す。
【0080】
図3は、ピリジルメチルキトサンのIRスペクトルを表しており、図4は3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンのIRスペクトルを表している。
【0081】
図3に示されるように、ピリジルメチルキトサンでは、アルキル基が導入されていないので、図3におけるピーク2の吸収は弱いが、図4に示されるように、3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンではデシル基が3位および6位に導入されているため、図4におけるピーク2の吸収(アルキル基の吸収)が強くなっている。また、カルボニル化合物の吸収は検出されていないが、C-O-Cの吸収(ピーク13,14)が検出されている。したがって、デシル基はエステル結合ではなくエーテル結合によってキトサン骨格に導入されていると言える。
【0082】
なお、ピリジルメチルキトサンの水酸基は、FT-IRで定量したところ、85%がアルキル化されていた。3446cm-1のピークより、キトサン由来の二級アミン(-NH-)はアルキル化されずに残っていることが分かる。キトサンからの3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンの収率は90%以上であった。
【0083】
(1-3)キトサンを出発物質とした3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンの製造
キトサン5gを2wt%の酢酸溶液500mlに溶解し、そこにキトサンの10倍等量の2-ピリジンカルバルデヒドを滴下し、333Kで24時間反応させて、ピリジル基を導入したキトサンのシッフ塩基誘導体(シッフ塩基キトサン)を得た。次に、N-フタロイルキトサンの代わりに出発物質として当該シッフ塩基キトサンを用いて、(1-1-2)で示したO,O’-ジデシル-N-フタロイルキトサンの合成と同じ方法によって、当該シッフ塩基キトサンにデシル基を導入し、3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチレンキトサンを得た。その後、当該3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチレンキトサンを水素化ホウ素ナトリウムにより還元し、酸に安定な二級アミンとピリジン環が導入された3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンを得た。
【0084】
図5は、本発明に係るキトサン誘導体の製造方法の一例である上記(1-3)の製造スキームを示す。
【0085】
(1-4)キチンを出発物質とする製造
キチン(Funakoshi Co. Ltd, Tokyo(株)製)8.25g(40.6mmol)g、蒸留水200ml、ピリジン300mlを三口フラスコに入れ、130℃で4時間攪拌し、キチンをピリジンで洗浄した。ろ過後、得られた粉体を三口フラスコに入れ、ピリジン300mlを加えて130℃で2時間攪拌した。再びピリジン300mlを用いて同様の操作を繰り返し、乾燥させた。
【0086】
上記のように洗浄したキチンを用いて(1-1-2)に示したO,O’-ジデシル-N-フタロイルキトサンの合成と同様にして、O,O’-ジデシルキチンを得た。得られたO,O’-ジデシルキチンを氷浴下で脱アセチル化することによって、O,O’-ジデシルキトサンを得た。
(2)キトサン誘導体の溶解度
3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサン(表1中、ジデシルPMCと略記)0.064gを、100mlのメタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、THF,トルエン、ヘキサンに加えた。また、ピリジルメチルキトサン(表1中、PMCと略記)1mgを5mlのメタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、THF,トルエン、ヘキサンに加え、常温で撹拌器を用いて攪拌し、溶解の程度を目視で判定した。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
JP0005207165B2_000008t.gif

【0088】
次に、溶解性が見られたクロロホルム、THF,トルエン、ヘキサンに対する3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンの溶解度を、3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンのクロロホルム、THF,トルエン、ヘキサンに対する濃度を徐々に変えていき、不溶物の発生を目視で観察する方法によって求めた。結果を表2に示した。
【0089】
【表2】
JP0005207165B2_000009t.gif

【0090】
表1、表2に示すように、ピリジルメチルキトサンは有機溶媒に対する溶解性を全く示さなかったが、エーテル結合によってデシル基を導入した3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンは、クロロホルム、THF,トルエン、ヘキサンに対して優れた溶解性を示した。すなわち、キトサンのような親水性の高い生体高分子を有機溶媒に溶解させることは容易ではないが、本発明に係るキトサン誘導体は有機溶媒に対し優れた溶解性を備える。しかも、アルキル基はエーテル結合によってキトサン骨格に導入されているので、アルキル基がエステル結合によって導入されている場合とは異なり、酸やアルカリによる攻撃を受けにくい。よって、分子中にアルキル基を安定に保持することができ、有機溶媒に対して安定的に溶解させることができる。
【0091】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るキトサン誘導体は、キトサン骨格中に少なくとも1以上のアルキル基を含有し、当該アルキル基の少なくとも1以上は、エーテル結合によってキトサン骨格に導入されている。それゆえ、酸やアルカリによる攻撃を受けにくく、化学的に安定であり、有機溶媒への溶解性に優れる。したがって、化粧品、医薬品、疎水性物質の分離剤、抽出剤、吸着剤、界面活性剤、分離膜、抗菌剤、抗カビ剤などの組成物に幅広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係るキトサン誘導体の製造方法の一例を示す製造スキームである。
【図2】本発明に係るキトサン誘導体の製造方法の一例を示す製造スキームである。
【図3】ピリジルメチルキトサンのIRスペクトルを表すチャートである。
【図4】3,6-O,O’-ジデシル-N-2-ピリジルメチルキトサンのIRスペクトルを表すチャートである。
【図5】本発明に係るキトサン誘導体の製造方法の一例を示す製造スキームである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4