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明細書 :光学活性アルコール類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4052702号 (P4052702)
公開番号 特開平11-189558 (P1999-189558A)
登録日 平成19年12月14日(2007.12.14)
発行日 平成20年2月27日(2008.2.27)
公開日 平成11年7月13日(1999.7.13)
発明の名称または考案の名称 光学活性アルコール類の製造方法
国際特許分類 C07C  29/145       (2006.01)
C07C  31/125       (2006.01)
C07C  33/18        (2006.01)
C07C  35/08        (2006.01)
B01J  31/22        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 29/145
C07C 31/125
C07C 33/18
C07C 35/08
B01J 31/22 X
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願平09-359655 (P1997-359655)
出願日 平成9年12月26日(1997.12.26)
審査請求日 平成16年6月1日(2004.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
発明者または考案者 【氏名】池平 秀行
【氏名】村田 邦彦
【氏名】碇屋 隆雄
【氏名】大熊 毅
【氏名】野依 良治
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 特開平09-176064(JP,A)
特開平08-225466(JP,A)
特開平09-110750(JP,A)
国際公開第97/020789(WO,A1)
特開平10-236986(JP,A)
特開平10-251284(JP,A)
特開平11-080053(JP,A)
特開平10-273456(JP,A)
Angewandte Chemie, International Edition in English (1997), 36(3), 285-288
Chemical Communications (Cambridge) (1996), (2), 233-4
調査した分野 C07C 29/00-39/44
C07B 53/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(a)
【化1】
JP0004052702B2_000009t.gif
(式中、R1 、R2 は、各々、別異なものとして、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または複素環基、もしくはRO-またはRO-CO-で、Rは(置換基を有していてもよい炭化水素基または複素環基を示し、またR1 およびR2 は結合して環を形成していてもよいが、非対称な化合物を構成する環が形成されていることとする。)で表されるカルボニル化合物を、下式
RuX
(式中、Xは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはアルコキシ基を示し、Lは、オレフィン類配位子または芳香族化合物配位子を示し、m、nは、各々、1~6の整数を示す。)で表される遷移金属触媒と、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘプタンジアミン、2,3-ジメチルブタンジアミン、1-メチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-ベンジル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、および1-イソプロピル-2,2-ジナフチルエチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種の光学活性含窒素化合物と塩基の存在下に気体水素と反応させて不斉水素化し、一般式(b)
【化2】
JP0004052702B2_000010t.gif
(R1 およびR2 は上記と同じものを示す。)で表される光学活性アルコール類を製造することを特徴とする光学活性アルコール類の製造方法。
【請求項2】
遷移金属触媒の配位子Lは、オレフィン系環状化合物である請求項1の光学活性アルコール類の製造方法。
【請求項3】
オレフィン系環状化合物は、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、またはノルボナジエンである請求項2の光学活性アルコール類の製造方法。
【請求項4】
遷移金属触媒の配位子Lは、ベンゼン、p-シメン、メシチレン、ナフタレン、またはアントラセンである請求項1の光学活性アルコール類の製造方法。
【請求項5】
塩基がアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または塩、あるいは四級アンモニウム塩である請求項1ないし4のいずれかの光学活性アルコール類の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、光学活性アルコール類の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、医薬品の合成中間体や、液晶材料などの各種用途において有用な、光学活性アルコール類の実用性に優れた新しい製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、光学活性アルコール類を不斉合成する方法としては、1)パン酵母などの酵素を用いる方法や、2)金属錯体触媒を用いてカルボニル化合物を不斉水素化する方法などが知られている。とくに後者の方法においては、これまでにも多くの不斉触媒反応の例が報告されている。たとえば、(1)Asymmetric Catalysis In Organic Synthesis, 56-82頁(1994) Ed,R.Noyoriに詳細に記載されている光学活性ルテニウム触媒による官能基を有するカルボニル化合物の不斉水素化方法や、(2) Chem.Rev.,Vol.92, 1051-1069頁(1992)に記載されているルテニウム、ロジウム、イリジウムの不斉錯体触媒による水素移動型還元反応による方法、(3)油化学822-831頁(1980)および Advances inCatalysis, Vol.32, 215頁(1983)Ed.Y.Izumiに記載されている酒石酸を修飾したニッケル触媒を用いて不斉水素化する方法、(4)Asymmetric Synthesis, Vol.5, Chap.4(1985) Ed.J.D.MorrisonおよびJ.Organomet Chem. Vol.346, 413-424頁(1988)に記載されている。不斉ヒドロシリル化による方法、(5)J.Chem.Soc.,Perkin Trans, 1, 2039-2044頁(1985)および J.Am.Chem.Soc.,Vol.109, 5551-5553頁(1987)に記載される不斉配位子の存在下にボラン還元する方法、(6) J.Am.Chem.Soc.,Vol.117, 2675-2676頁(1995)に記載されるホスフィンおよびジアミン不斉配位子の存在下に不斉水素化する方法など知られている。
【0003】
しかしながら、酵素を用いる方法は比較的高い光学純度のアルコール類を得ることができるものの反応基質の種類に制約があり、しかも得られるアルコール類の絶対配置も特定のものに限られるという欠点がある。また、遷移金属の不斉水素化触媒による方法の場合には、分子内に官能基を含む、たとえばケト酸のような基質に対しては高い選択性で光学活性アルコール類は製造できるものの、反応速度の点で難点があった。さらに、前記(6)文献記載の方法は、選択性および活性の点で優れているもののホスフィン-ルテニウム錯体を用いているので、毒性の観点から特に安全とは言えず、かつ、工業的に回収使用する場合にも難点があった。
【0004】
このため、従来より、光学活性アルコール類を製造するための一般性の高い、しかも高活性な触媒を用いての新しい合成方法の実現が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
第1:一般式(a)
【0006】
【化3】
JP0004052702B2_000002t.gif
【0007】
(式中、R1 、R2 は、各々、別異なものとして、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または複素環基、もしくはRO-またはRO-CO-で、Rは(置換基を有していてもよい炭化水素基または複素環基を示し、またR1 およびR2 は結合して環を形成していてもよいが、非対称な化合物を構成する環が形成されていることとする。)で表されるカルボニル化合物を、下式
RuX
(式中、Xは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはアルコキシ基を示し、Lは、オレフィン類配位子または芳香族化合物配位子を示し、m、nは、各々、1~6の整数を示す。)で表される遷移金属触媒と、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘプタンジアミン、2,3-ジメチルブタンジアミン、1-メチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-ベンジル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、および1-イソプロピル-2,2-ジナフチルエチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種の光学活性含窒素化合物と塩基の存在下に気体水素と反応させて不斉水素化し、一般式(b)
【0008】
【化4】
JP0004052702B2_000003t.gif
【0009】
(R1 およびR2 は上記と同じものを示す。)で表される光学活性アルコール類を製造することを特徴とする光学活性アルコール類の製造方法。
第2:遷移金属触媒の配位子Lは、オレフィン系環状化合物である上記第1の光学活性アルコール類の製造方法。
第3:オレフィン系環状化合物は、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、またはノルボナジエンである上記第2の光学活性アルコール類の製造方法。
第4:遷移金属触媒の配位子Lは、ベンゼン、p-シメン、メシチレン、ナフタレン、またはアントラセンである上記第1の光学活性アルコール類の製造方法。
第5:塩基がアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または塩、あるいは四級アンモニウム塩である上記第1ないし第4のいずれかの光学活性アルコール類の製造方法。
【0010】
第7:液体反応媒体中において、下式
RuX
(式中、Xは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはアルコキシ基を示し、Lは、オレフィン類配位子または芳香族化合物配位子を示し、m、nは、各々、1~6の整数を示す。)で表される遷移金属触媒と光学活性含窒素化合物と塩基の存在下に調製される、光学活性アルコール類製造用触媒。
第8:遷移金属触媒の配位子Lは、オレフィン系環状化合物である上記第7の光学活性アルコール類製造用触媒。
第9:オレフィン系環状化合物は、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、またはノルボナジエンである上記第8の光学活性アルコール類製造用触媒。
第10:遷移金属触媒の配位子Lは、ベンゼン、p-シメン、メシチレン、ナフタレン、またはアントラセンである上記第7の光学活性アルコール類製造用触媒。
第11:光学活性含窒素化合物が光学活性アミン化合物である上記第7ないし第10のいずれかの光学活性アルコール類製造用触媒。
第12:塩基がアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または塩、あるいは四級アンモニウム塩である上記第7ないし第11のいずれかの光学活性アルコール類製造用触媒。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に実施の形態について詳しく説明する。
まず、この発明の原料であるカルボニル化合物は、前記の一般式(a)で示されるが、R1 とR2 は異なっておりR1 とR2 が結合して環を形成している場合にも非対称な化合物を構成する。R1 、R2 においては、前記のとおり、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または複素環基、もしくはRO-またはRO-CO-で、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基または複素環基を示し、R1 とR2 は環を形成してもよいことを示しているが、ここで、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが、炭化水素基としては、鎖状または環状もしくは両者が結合した、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素、単環または多環の芳香族炭化水素もしくは芳香脂肪族炭化水素から選ばれるものでよく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アラルキル基等がある。複素環基としては、各種のヘテロ原子を環構成原子としたものがある。アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-アミル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、メンチル基、2,3,4-トリメチル-3-ペンチル基、2,4-ジメチル-3-ペンチル基などが、アラルキル基としてはベンジル基、2-フェニルエチル基、2-ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基などが、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが、アルケニル基としては2-メチル-1-プロペニル基、2-ブテニル基、トランス-β-スチリル基、3-フェニル-1-プロペニル基、1-シクロヘキセニル基などがあり、複素環基としては、フリル基、ピペリジル基、イミダゾイル基等の各種のものであってよい。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基,t-ブトキシ基などが、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などが、アルキルオキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基などがそれぞれ例示される。これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、前記したと同様のハロゲン原子、前記したと同様のアルコキシル基、前記したと同様のアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-アミル基、n-ヘキシル基などの低級アルキル基、n-プロピルチオ基、t-ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、水酸基などが例示される。
【0012】
遷移金属触媒は、たとえば下式
RuX
(式中、Xは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはアルコキシ基を示し、Lは、オレフィン類配位子または芳香族化合物配位子を示し、m、nは、各々、1~6の整数を示す。)で表すことができ、また塩基は、たとえば、一般式(d)
【0015】
【化6】
JP0004052702B2_000004t.gif
【0016】
(M2 はアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を示し、Yはヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、ナフチル基を示す。)で表される金属塩あるいは4級アンモニウム塩とすることができる。また、上記の式で表される遷移金属触媒のオレフィン類配位子としては、たとえば、エチレン、アリル、ブタジエン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、ノルボナジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、などが例示される。配位子となり得るオレフィン系環状化合物には、たとえば一般式(e)で表すことができるものもある。
【0017】
【化7】
JP0004052702B2_000005t.gif
【0018】
式中のR1 ~R5 は同じかもしくは異なる置換基からなり、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基またはアルキルオキシカルボニル基を示すことができる。具体的には、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが、アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-アミル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、メンチル基、2,3,4-トリメチル-3-ペンチル基、2,4-ジメチル-3-ペンチル基などが、アラルキル基としてはベンジル基、2-フェニルエチル基、2-ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基などが、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チオフェニル基、などが、アルケニル基としては2-メチル-1-プロペニル基、2-ブテニル基、トランス-β-スチリル基、3-フェニル-1-プロペニル基、1-シクロヘキセニル基などが、アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、t-ブトキシ基などが、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などが、アルキルオキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基などがそれぞれ例示される。これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、前記したと同様のハロゲン原子、前記したと同様のアルコキシル基、前記したと同様のアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-アミル基、n-ヘキシル基などの低級アルキル基、n-プロピルチオ基、t-ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、水酸基などが例示される。置換基はその数は1~5の任意の数であり、場所は任意の場所を選ぶことができる。
【0019】
香族化合物配位子としては、ベンゼン、p-シメン、メジチレン、ナフタレン、アントラセンなどが例示されるが、さらに配位子となり得る芳香族化合物は、次の一般式(f)で表すことができる単環もしくは多環の芳香族化合物である。
【0020】
【化8】
JP0004052702B2_000006t.gif
【0021】
a ~Re は同じかもしくは異なる置換基からなり、水素、飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリル基、異原子を含む官能基を示すことができる。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ベンジル、ビニル、アリル、フェニル、ナフチルなどの不飽和炭化水素等の基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等の異原子を含む官能基を示すことができる。置換基はその数は1~6の任意の数であり、場所は任意の場所を選ぶことができる。
【0023】
たとえば以上のような配位子を持つこの発明の遷移金属触媒については、各種の原料遷移金属化合物から合成もしくは調整することができ、たとえば、出発原料となるルテニウム錯体の例としては、塩化ルテニウム(III) 水和物、臭化ルテニウム(III) 水和物、沃化ルテニウム(III) 水和物等の無機ルテニウム化合物、〔2塩化ルテニウム(ノルボルナジエン)〕多核体、〔2塩化ルテニウム(シクロオクタジエン)〕多核体等のジエンが配位したルテニウム化合物、〔2塩化ルテニウム(ベンゼン)〕二核体、〔2塩化ルテニウム(p-シメン)〕ダイマー、〔2塩化ルテニウム(トリメチルベンゼン)〕二核体、〔2塩化ルテニウム(ヘキサメチルベンゼン)〕二核体等の芳香族化合物が配位したルテニウム錯体等が用いられる。この他、ジアミン配位子あるいはジアミン配位子と置換可能な配位子を有するルテニウム錯体であれば、特に、上記に限定されるものではない。例えば、COMPREHENSIVE ORGANOMETALIC CHEMISTRY II7巻 294-296ページに示された、種々のルテニウム錯体を出発原料として用いることができる。
【0024】
この発明における上記ルテニウム錯体の使用量は反応容器や反応の型式あるいは経済性によっても異なる反応基質であるカルボニル化合物に対してモル比で1/100~1/100,000用いることができ、好ましくは1/200~1/10,000の範囲とする。また、この発明に用いられる一般式M2 Yで示される塩基においてM2 はアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、Yはヒドロキシル基あるいはアルコキシ基、メルカプト基、ナフチル基を示し、具体的にはKOH、KOCH3 、KOCH(CH3 2 、KC108 、LiOH、LiOCH3 、LiOCH(CH3 2 、等が例示される。さらに4級アンモニウム塩も利用できる。
【0025】
上記の塩基の使用量は上記ルテニウム錯体に対して0.5~100当量であり好ましくは2~40当量である。そして、この発明では、光学活性アミン化合物等の含窒素化合物を用いるが、このものはたとえば一般式NR3 4 5 で示されるアミン化合物で、置換基のうち少なくとも一つが光学活性基であり残りが水素あるいは飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリール基である光学活性モノアミンであるか、あるいは次の一般式(g)
【0026】
【化9】
JP0004052702B2_000007t.gif
【0027】
(Zは炭素数1~5のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を示し、R6 、R7 、R12、R13は水素あるいは飽和あるいは不飽和炭化水素基、アリール基、ウレタン基、スルフォニル基等であり、R8 、R9 、R10、R11はこれら置換基が結合している炭素が不斉中心となるように同じかもしくは異なる基であり、水素あるいはアルキル基、芳香族単環および多環式基、飽和あるいは不飽和炭化水素基、および環式炭化水素基等を示す。)で表される光学活性ジアミン化合物であるとすることができる。たとえば光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘプタンジアミン、2,3-ジメチルブタンジアミン、1-メチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-ベンジル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、などの光学活性ジアミン化合物およびR9ないしR15の置換基のうち1つないし2つともスルフォニル基あるいはウレタン基である光学活性ジアミン化合物を例示することができる。さらに用いることのできる光学活性ジアミンは例示した光学活性エチレンジアミン誘導体に限るものでなく光学活性なプロパンジアミン、ブタンジアミン、フェニレンジアミン誘導体を用いることができる。これら光学活性アミン化合物の使用量は上記ルテニウム錯体に対し、モノアミン化合物の場合は1~20当量の範囲好ましくは2~10当量の範囲であり、ジアミン化合物の場合は0.5~10当量の範囲、好ましくは1~5当量の範囲である。
【0028】
なお、この発明では、液体溶媒として、反応原料、触媒系を可溶化するものであれば適宜なものを用いることができる。例としてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N-メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶媒を用いることができる。生成物がアルコールであることからアルコール系溶媒が好適である。反応基質が溶媒に可溶化しにくい場合は上記溶媒から選択して混合溶媒として用いることができる。
【0029】
溶媒の量が反応基質の溶解度および経済性により判断される。2-プロパノールの場合基質濃度は、基質によっては1%以下の低濃度から無溶媒に近い状態で反応を行うことができるが、好ましくは20~50重量%で用いることが望ましい。
そして、この発明における水素の圧力は、本触媒系が極めて高活性であることから1気圧で十分であるが、経済性を考慮すると1~200気圧の範囲で、好ましくは3~100気圧の範囲が望ましいが、プロセス全体の経済性を考慮して50気圧以下でも高い活性を維持することも可能である。
【0030】
反応温度は経済性を考慮して15℃から100℃で行うことが好ましいが25~40℃の室温付近で反応を実施することができる。しかしながら本発明においては-30~0℃の低温でも反応が進行することを特徴としている。反応時間は反応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが数分から10時間で反応は完結する。実施例で具体的に例示する。
【0031】
この発明における反応は反応形式がバッチ式においても連続式においても実施することができる。
【0032】
【実施例】
以下実施例を示し、さらに詳しくこの発明方法について説明する。代表例として用いることのできるジアミン配位子については次の表1に示した。
【0033】
【表1】
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【0034】
実施例1
シュレンク反応管にKOHの0.5M 2-プロパノール溶液(120μL)と(S,S)-ジフェニルエチレンジアミン(8.5mg,0.04mmol)と2,4′-シクロルベンゾフェノン(502mg,2.0mmol)および15mlの2-プロパノールおよび4mlのトルエンをアルゴン気流下で仕込み、脱気-アルゴン置換を行った後この溶液にさらに〔RuCl2 (p-シメン)〕2 (6.1mg,0.01mmol)加えて反応溶液を調製する。この溶液を脱気-アルゴン置換を繰り返し行い、完全に溶解させた後、100mlの金属製オートクレーブに移し水素を40気圧まで圧入することにより反応を開始させた。
【0035】
28℃で4時間攪拌した後、常温にもどし反応化合物を高速液体クロマトグラフィーと 1H-NMR分析により生成物の同定と反応収率(95%)を求めた。さらに得られた(+)-2,4′-ジクロルベンズヒドロールの光学純度は光学活性カラムを用い高速液体クロマトグラフィーにより決定し、45%eeの結果を得た。
実施例2
シュレンク反応管にKOHの0.5M 2-プロパノール溶液(120μL)と(S,S)ジフェニルエチレンジアミン(8.5mg,0.04mmol)と2,4′-ジクロルベンゾフェノン(502mg,2.0mmol)および15mlの2-プロパノールおよび4mlのトルエンさらに100μlのDMFをアルゴン気流下で仕込み、脱気-アルゴン置換を行った後この溶液にさらに〔RuCl2 (cod)〕2 (2.8mg,0.01mmol)を加えて反応溶液を調製する。この溶液を脱気-アルゴン置換を繰り返し行い、完全に溶解させた後、100mlの金属製オートクレーブに移し水素を40気圧まで圧入することにより反応を開始させた。
【0036】
28℃で4時間攪拌した後、常温にもどし反応化合物を高速液体クロマトグラフィーと 1H-NMR分析により生成物の同定と反応収率(55%)を求めた。さらに得られた(+)-2,4′-ジクロルベンズヒドロールの光学純度は光学活性カラムを用い高速液体クロマトグラフィーにより決定し、55%eeの結果を得た。
実施例3
シュレンク反応管にKOHの0.5M 2-プロパノール溶液(120μL)と(S,S)ジフェニルエチレンジアミン(8.5mg,0.04mmol)とアセトフェノン(601mg,5.0mmol)および15mlの2-プロパノールおよび4mlのトルエンさらに100μlのDMFをアルゴン気流下で仕込み、脱気-アルゴン置換を行った後この溶液にさらに〔RuCl2 (cod)〕2 (2.8mg,0.01mmol)を加えて反応溶液を調製する。この溶液を脱気-アルゴン置換を繰り返し行い、完全に溶解させた後、100mlのガラス製オートクレーブに移し水素を40気圧まで圧入することにより反応を開始させた。
【0037】
28℃で4時間攪拌した後、常温にもどし反応化合物を高速液体クロマトグラフィーと 1H-NMR分析により生成物の同定と反応収率(75%)を求めた。さらに得られた(R)-1-フェニルエタノールの光学純度は光学活性カラムを用い高速液体クロマトグラフィーにより決定し、39%eeの結果を得た。
実施例4
シュレンク反応管にKOHの0.5M 2-プロパノール溶液(120μL)と(S,S)ジフェニルエチレンジアミン(8.5mg,0.04mmol)とアセトフェノン(601mg,5.0mmol)および15mlの2-プロパノールおよび4mlのトルエンさらに100μlのピリジンをアルゴン気流下で仕込み、脱気-アルゴン置換を行った後この溶液にさらに〔RuCl2 (p-シメン)〕2 (6.1mg,0.01mmol)を加えて反応溶液を調製する。この溶液を脱気-アルゴン置換を繰り返し行い、完全に溶解させた後、100mlのガラス製オートクレーブに移し水素を40気圧まで圧入することにより反応を開始させた。
【0038】
28℃で4時間攪拌した後、常温にもどし反応化合物を高速液体クロマトグラフィーと 1H-NMR分析により生成物の同定と反応収率(30%)を求めた。さらに得られた(R)-1-フェニルエタノールの光学純度は光学活性カラムを用い高速液体クロマトグラフィーにより決定し、28%eeの結果を得た。
実施例5
シュレンク反応管にKOHの0.5M 2-プロパノール溶液(120μL)と(S,S)ジフェニルエチレンジアミン(8.5mg,0.04mmol)とアセトフェノン(601mg,5.0mmol)および15mlの2-プロパノールおよび4mlのトルエンさらに100μlのDMFをアルゴン気流下で仕込み、脱気-アルゴン置換を行った後この溶液にさらに〔RuCl2 (p-シメン)〕2 (6.1mg,0.01mmol)を加えて反応溶液を調製する。この溶液を脱気-アルゴン置換を繰り返し行い、完全に溶解させた後、100mlのガラス製オートクレーブに移し水素を40気圧まで圧入することにより反応を開始させた。
【0039】
28℃で4時間攪拌した後、常温にもどし反応化合物を高速液体クロマトグラフィーと 1H-NMR分析により生成物の同定と反応収率(100%)を求めた。さらに得られた(R)-1-フェニルエタノールの光学純度は光学活性カラムを用い高速液体クロマトグラフィーにより決定し、10%eeの結果を得た。
実施例6
シュレンク反応管にKOHの0.5M 2-プロパノール溶液(120μL)と(S,S)ジフェニルエチレンジアミン(8.5mg,0.04mmol)とアセトフェノン(601mg,5.0mmol)および15mlの2-プロパノールおよび4mlのトルエンをアルゴン気流下で仕込み、脱気-アルゴン置換を行った後この溶液にさらに〔RuCl2 (p-シメン)〕2 (6.1mg,0.01mmol)を加えて反応溶液を調製する。この溶液を脱気-アルゴン置換を繰り返し行い、完全に溶解させた後、100mlのガラス製オートクレーブに移し水素を4気圧まで圧入することにより反応を開始させた。
【0040】
28℃で4時間攪拌した後、常温にもどし反応化合物を高速液体クロマトグラフィーと 1H-NMR分析により生成物の同定と反応収率(76%)を求めた。さらに得られた(S)-1-フェニルエタノールの光学純度は光学活性カラムを用い高速液体クロマトグラフィーにより決定し、20%eeの結果を得た。
【0041】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明により、より高純度で高収率での各種光学活性アルコール類の取得が可能となる。また、工業的な触媒の回収においても簡便に行うこができる。