TOP > 国内特許検索 > 貫通触感覚提示装置 > 明細書

明細書 :貫通触感覚提示装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4739302号 (P4739302)
公開番号 特開2009-070263 (P2009-070263A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年8月3日(2011.8.3)
公開日 平成21年4月2日(2009.4.2)
発明の名称または考案の名称 貫通触感覚提示装置
国際特許分類 G06F   3/01        (2006.01)
A63F   9/02        (2006.01)
FI G06F 3/01 310A
A63F 9/02 A
A63F 9/02 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2007-239750 (P2007-239750)
出願日 平成19年9月14日(2007.9.14)
審査請求日 平成20年12月5日(2008.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】渡邊 淳司
個別代理人の代理人 【識別番号】100091443、【弁理士】、【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
審査官 【審査官】▲高▼瀬 健太郎
参考文献・文献 特開2007-048268(JP,A)
特開2002-123169(JP,A)
調査した分野 G06F 3/01
G06F 3/048
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者の人体の一部を間に挟んで対向するように前記人体に装着されて、前記人体に振動を伝達する第1及び第2の振動子と、
前記第1及び第2の振動子を個別に駆動するための第1及び第2の駆動信号を発生する駆動信号発生装置と、
音響発生装置とを備え、
前記駆動信号発生装置は、前記第1及び第2の振動子を、時間差を持って駆動し且つ時間的な順番で前に駆動される前記第1の振動子の第1の振動持続期間と後に駆動される前記第2の振動子の第2の振動持続期間とが一部重なり、前記第1の振動持続期間が終了した後に前記第2の振動持続期間が終了するように前記第1及び第2の駆動信号を発生するように構成され、
前記音響発生装置によって出力される音響の発生タイミングと前記第1の駆動信号の発生タイミングとが同期していることを特徴とする貫通触感覚提示装置。
【請求項2】
画像表示装置を更に備え、前記画像表示装置に表示される仮想物の画像の表示タイミングと前記第1の駆動信号の発生タイミングとが同期している請求項に記載の貫通触感覚提示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の振動持続期間が、100~300msである請求項1または2に記載の貫通触感覚提示装置。
【請求項4】
前記時間差が50ms以上で、前記第1の振動持続期間と前記第2の振動持続期間とが重なっている期間が150ms以下である請求項1または2の記載の貫通触感覚提示装置。
【請求項5】
前記駆動信号発生装置は、前記第1の振動子の振動の最大振幅が前記第2の振動子の振動の最大振幅よりも大きくなるような前記第1及び第2の駆動信号を出力する請求項1または2に記載の貫通触感覚提示装置。
【請求項6】
前記駆動信号発生装置は、前記第1の振動子の振動の振幅が徐々に減衰し、前記第2の振動子の振動の振幅も徐々に減衰するような前記第1及び第2の駆動信号を出力する請求項1または2に記載の貫通触感覚提示装置。
【請求項7】
前記音響発生装置は、前記第1及び第2の振動子を装着する前記被験者に装着されて、前記被験者の聴覚により前記音響を認識できるように構成されている請求項1または2に記載の貫通触感覚提示装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通触感覚を体験できる貫通触感覚提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二点の触覚刺激を、時間差をもって提示した場合に適切な時間差の範囲では二点のあいだに、仮現運動を知覚することができることが、非特許文献1及び2に記載されている。

【非特許文献1】Ungyeon Yang,Yongseok Jang及びGerard J.Kimが発表した「Designing a Vibro-Tactile Wear for “Close Range”Interaction for VR-based Motion Training」2002年12月4日~6日に東京で開催されたICAT2002で配布された論文
【非特許文献2】Masataka Niwa,Yasuyuki Yanagida,Haruo Noma,Kenichi Hosaka,及びYuichiro Kumeが発表した「Vibrotactile Apparent Movement by DC Motors and Voice-coil Tactors」2004年のICAT2004で配布された論文
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来は、人体の皮膚の表面に沿って仮現運動を知覚できることが確認されているだけであった。そのために研究成果の応用に限界があった。
【0004】
本発明の目的は、被験者の人体の一部を間に挟んで対向するように人体に装着されて、人体に振動を伝達する第1及び第2の振動子を用いて、被験者の人体の内部を物が貫通する仮現運動を知覚できるようにした貫通触感覚提示装置を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、聴覚による知覚とともに、被験者の人体の内部を物が貫通する仮現運動をよりリアルに知覚できるようにした貫通触感覚提示装置を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、視覚による知覚とともに、被験者の人体の内部を物が貫通する仮現運動をよりリアルに知覚できるようにした貫通触感覚提示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の貫通触感覚提示装置は、被験者の人体の一部を間に挟んで対向するように人体に装着されて、人体に振動を伝達する第1及び第2の振動子と、第1及び第2の振動子を個別に駆動するための第1及び第2の駆動信号を発生する駆動信号発生装置とを用いる。なお「対向」とは、人体の一部を間に介して対向すればよく、完全に対向する場合のみに限定されるものではない。また併せて音響発生装置を用いることもできる。本発明で用いる駆動信号発生装置は、第1及び第2の振動子を、時間差を持って駆動し且つ時間的な順番で前に駆動される第1の振動子の第1の振動持続期間と後に駆動される第2の振動子の第2の振動持続期間とが一部重なり、第1の振動持続期間が終了した後に第2の振動持続期間が終了するように第1及び第2の駆動信号を発生するように構成されている。このような駆動信号発生装置を用いて第1及び第2の振動子を振動させると、仮想物が人体の内部(体内)を貫通していく仮現運動を知覚することができる。特に、第1の振動子の第1の振動持続期間と後に駆動される第2の振動子の第2の振動持続期間とを一部重ねた上で、第1の振動持続期間が終了した後に第2の振動持続期間が終了するように第1及び第2の駆動信号を発生すると、第1及び第2の振動持続期間を重ねない場合と比べて、仮想物が体内入り、体内を移動して体外に出る感覚を明確に知覚することができる。またこのような触覚から得られる知覚に加えて、本発明においては、音響発生装置によって出力される音響の発生タイミング(発生開始時期)と第1の駆動信号の発生タイミング(発生開始時期)とを同期させることができる。ここでタイミングの同期とは、発生開始時期が時間的に関係を持っていることを意味する。したがって音響の発生と振動の発生が常に同時に起きなければならないわけではなく、音響の発生に時間遅れを持って振動が発生する場合も、同期に含まれるものである。音響の発生タイミングと第1の振動子による振動の発生タイミングとを同期させると、聴覚により仮想物が発射されたまたは当たったことを知覚した上で、触覚により仮想物が体内を貫通する知覚を得ることができる、さらにリアルな貫通触感覚を体験できる。
【0008】
第1及び第2の振動持続期間は、100~300msであることが好ましい。振動の振幅の大きさや周波数にもよるが、この期間が100msより短いと、振動を感じる知覚自体が弱くなることが多い。またこの期間が300msよりも長くなると、振動の振幅の大きさ及び周波数にもよるが、第1及び第2の振動子が振動している期間が長くなって、貫通触感覚がハッキリと知覚できなくなる場合が多い。
【0009】
また時間差が50ms以上で、第1の振動持続期間と第2の振動持続期間とが重なっている期間は、150ms以下であるのが好ましい。時間差が50msより小さく、重なっている期間が、150msより長くなると、第1及び第2の振動子が同時に振動している期間が長くなりすぎて、仮想物が体内を貫通している知覚がかなり弱くなる。
【0010】
なお駆動信号発生装置は、第1の振動子の振動の最大振幅が第2の振動子の振の最大振幅よりも大きくなるような第1及び第2の駆動信号を出力するように構成することができる。このようにすると、仮想物のエネルギーが体内の仮現運動で減じられた知覚を得ることができる。
【0011】
また駆動信号発生装置は、第1の振動子の振動の振幅が徐々に減衰し、第2の振動子の振動の振幅も徐々に減衰するような第1及び第2の駆動信号を出力するように構成することができる。このようにすると、さらに仮想物のエネルギーが仮現運動で減じられる知覚をよりリアルに得ることができる。
【0012】
また本発明の装置では、画像表示装置を更に備えていてもよい。そして画像表示装置に表示される仮想物の画像(弾丸や矢等の発射画像)の表示タイミングと第1の駆動信号の発生タイミングとを同期させることができる。このようにすると、視覚によっても仮想物が体内に入ることを知覚した上で、貫通触感覚を体験できるので、よりリアルな体験をすることができる。
【0013】
なお前述の音響発生装置は、第1及び第2の振動子を装着する被験者に装着されて、被験者の聴覚により前記音響を認識できるように構成されているのが好ましい。このようにすると、装置の装着者が移動しながら貫通触感覚を体験できるので、装置の用途が広がる利点が得られる。
【0014】
なお被験者の人体に、一組の第1及び第2の振動子だけでなく、複数組の第1及び第2の振動子を装着して、これら複数組の第1及び第2の振動子を個々に利用して、被験者に貫通触感覚を体験させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、仮想物が体内入り、体内を移動して体外に出る感覚を明確に知覚することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の貫通触感覚提示装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の貫通触感覚提示装置の実施の形態の一例の構成を示すブロック図である。図1において、符号1及び2で示したブロックは、人体に装着されて人体に振動を与える第1及び第2の振動子を示している。例えば、第1及び第2の振動子1及び2は、図2に示すように、被験者の腹部分と背部分に装着することができる。装着場所は、図2の例に限定されるものではなく、人体の一部を間に挟んで対向するように人体に装着すればよい。したがって腕に装着する場合には、腕の一部を間に挟む一対の位置に(腕の骨を間に挟む一対の位置に)第1及び第2の振動子1及び2を装着すればよい。第1及び第2の振動子1及び2としては、例えば、携帯電話に搭載されている振動発生用のDCモータや、圧電振動子等を用いることができる。最も好ましくは、第1及び第2の振動子1及び2は、被験者の人体の皮膚と振動部が直接触れるように被験者の人体に装着するのが好ましい。しかし下着の上から被験者の人体に振動を伝達するようにしてもよいのは勿論である。装着手段としては、公知の粘着性を有する樹脂シートを装着面に配置したものを用いてもよい。また予め第1及び第2の振動子1及び2を振動発生面が被験者の皮膚とまたは下着と接触するように実装した被服やベルト状の装着具を作っておき、被験者にこの被服や装着具を着用してもらうことにより、第1及び第2の振動子1及び2を被験者に装着するようにしてもよい。
【0017】
駆動信号発生装置3は、第1及び第2の振動子1及び2を駆動するために、第1及び第2の駆動信号S1及びS2を発生する。駆動信号発生装置3には、制御装置4から制御信号が入力される。駆動信号発生装置3は、制御信号に応じて、第1及び第2の駆動信号S1及びS2を発生する。図3(A)乃至(C)は、動作を説明するために用いる波形図である。以下図3参照しながら本実施の形態を説明する。第1及び第2の駆動信号S1及びS2は、第1及び第2の振動子1及び2を時間差(後述の振動開始時間差SOA)を持って駆動する。また駆動信号発生装置3は、時間的な順番で前に駆動される第1の振動子1の第1の振動持続期間D1と後に駆動される第2の振動子2の第2の振動持続期間D2とが一部重なり(後述の重なっている期間ISI)、第1の振動持続期間D1が終了した後に第2の振動持続期間D2が終了するように第1及び第2の駆動信号S1及びS2を発生する。このような駆動信号発生装置3を用いて第1及び第2の振動子1及び2を振動させると、仮想物が被験者の人体の内部(体内)を貫通していく仮現運動を知覚することができる。特に、第1の振動子1の第1の振動持続期間D1と後に駆動される第2の振動子2の第2の振動持続期間D2とを一部重ねた上で、第1の振動持続期間D1が終了した後に第2の振動持続期間D2が終了するように第1及び第2の駆動信号S1及びS2を発生すると、第1及び第2の振動持続期間D1及びD2を重ねない場合と比べて、仮想物が体内入り、体内を移動して体外に出る感覚を明確に知覚することができる。
【0018】
また本実施の形態では、音響発生装置5と画像表示装置6とを備えている。音響発生装置5及び画像表示装置6も、制御装置4からの制御信号に応じて動作する。制御装置4は、例えば本実施の形態で、射撃ゲームを実現する場合であれば、敵が発射した銃の発射音を効果音(音響)として発生する。本実施の形態では、発射音(音響)の発生タイミング(発生開始時期)と第1の駆動信号S1の発生タイミング(発生開始時期)とを同期させている。すなわち本実施の形態では、制御装置4から出力される音響信号So[図3(C)参照]と、第1の駆動信号S1とが時間的に関係を持っている。具体的には、音響信号Soが発生した後、若干の時間遅れ(t0)を持って第1の駆動信号S1が発生している。この状態も、発射音(音響)の発生タイミング(発生開始時期)と第1の駆動信号S1の発生タイミング(発生開始時期)とが同期している例に含まれる。なお反射音の発生と同時に第1の振動子1の振動を開始させてもよいのは勿論である。このように音響の発生タイミングと第1の振動子1による振動の発生タイミングとを同期させると、聴覚により仮想物が発射されたまたは当たったことを知覚した上で、触覚により仮想物が体内を貫通する知覚を得ることができるので、さらにリアルな貫通触感覚を体験できる。
【0019】
第1及び第2の駆動信号S1及びS2の第1及び第2の振動持続期間D1及びD2は、100~300msであることが好ましい。振動の振幅の大きさや周波数にもよるが、この期間が100msより短いと、貫通触感覚が弱くなることが多い。またこの期間が300msよりも長くなると、振動の振幅の大きさ及び周波数にもよるが、第1及び第2の振動子1及び2が振動している期間が長くなって、貫通触感覚がハッキリと知覚できなくなる場合が多い。
【0020】
また時間差(後述の振動開始時間差SOA)が50ms以上であり、第1の振動持続期間D1と第2の振動持続期間D2とが重なっている期間ISI50ms以下であるのが好ましい。この時間差(後述の振動開始時間差SOA)が50msより小さく、重なっている期間ISI50msより長くなると、第1及び第2の振動子1及び2が同時に振動している期間が長くなりすぎて、仮想物が体内を貫通している知覚が弱くなる。
【0021】
なお駆動信号発生装置3は、図4(A)及び(B)に示すように、第1の振動子1の振動の最大振幅V1が第2の振動子の振の最大振幅V2よりも大きくなるような第1及び第2の駆動信号S1及びS2を出力するように構成してもよい。このようにすると、仮想物のエネルギーが体内の仮現運動で減じられた知覚を得ることができる。図4の振動波形に示すように、駆動信号発生装置3は、第1の振動子1の振動の振幅が徐々に減衰し、第2の振動子2の振動の振幅も徐々に減衰するような第1及び第2の駆動信号S1及びS2を出力するように構成することができる。このように駆動信号発生装置3を構成すると、さらに仮想物のエネルギーが仮現運動で減じられる知覚をよりリアルに得ることができる。このような振動波形は、DCモータを振動子として利用したり、駆動信号S1及びS2として振幅を変えることが可能なアナログ信号を用いて圧電振動子を駆動することにより、比較的簡単に得ることができる。
【0022】
また本発明の装置では、画像表示装置6を更に備えている。図5は、被験者が音響発生装置5と画像表示装置6とを備えたヘルメット7を装着している状態を模式的に示している。画像表示装置6は、ヘルメット7の前方に設けたスクリーン部8に被験者が画像を認識できるように画像を表示するものである。なお理解を容易にするために、図5においては、画像をスクリーン部8に表示した状態を図示してあるが、実際には、被験者しか画像は見えない。なおパソコンの表示画面のように、画像表示装置が別に設置されてもよいのは勿論である。音響発生装置5は、ヘッドフォンと同じ構造を有するものである。
【0023】
本実施の形態では、画像表示装置6に表示される仮想物の画像(弾丸や矢等の発射画像)の表示タイミングと第1の駆動信号S1の発生タイミングとを同期させている。すなわち例えば弾丸が発射される画像の表示タイミングと、第1の振動子1の振動を開始する発生タイミングとが、時間遅れを持って同期している。したがって弾丸が発射された後、時間遅れを持って被験者は貫通触感覚を知覚することになる。よって本実施の形態では、視覚によっても仮想物が体内に入ることを知覚した上で、貫通触感覚を体験できるので、よりリアルな体験をすることができる。また図5の例では、第1及び第2の振動子1及び2を装着する被験者が、音響発生装置5と画像表示装置6とを装着することになるため、被験者の聴覚により音響を認識しながら、しかも視覚による刺激を受けながら、貫通触感覚を知覚できる。そのため装置の装着者(被験者)が移動しながら、貫通触感覚を体験できるので、装置の用途が大幅に広がる。
【0024】
なお上記例では、被験者の人体に、一組の第1及び第2の振動子1及び2だけを装着しているが、複数組の第1及び第2の振動子1及び2を装着して、これら複数組の第1及び第2の振動子1及び2を個々に利用して、被験者に貫通触感覚を体験させるようにしてもよいのは勿論である。
【0025】
次に本発明を完成するにあたって行った貫通触感覚の実験について説明する。実験では、図2に示すように二つの振動子(第1及び第2の振動子1及び2を被験者の腹部と背部に装着した。これらの振動子としては、圧電振動子を用いた。固定は、ベルト状の装着具を用いた。実験においては二つの振動子をある時間差を持って振動させ被験者に主観的な貫通感覚を報告してもらった。二つの振動子の時間パラメータは、それぞれの振動子の振動持続間D1及びD2と、二つの振動開始時間差SOAを変化させた。
【0026】
また比較のために、「腹部から背部」、「背部から腹部」、「右脇腹部から左脇腹部」の体幹を貫通する三つの条件において,実際に貫通感覚が生じるのか,調べる実験を行った。最初の実験では、第2の振動持続間D2を200msに固定した。そして第1の振動持続間D1を100,200,300,400msの4通りに変更した。また振動開始時間差SOAを0~400msの間を25ms刻みに17通りに変化させた。実験においては,各時間パラメータを1試行ずつ含む64試行を1ブロックとし,上記の3条件を,順番にそれぞれ5ブロック、計15ブロックを行った。被験者は,刺激時の主観的貫通感を「同時」,「二つ別の振動」,「貫通感覚(強,中,弱)」の5通りのいずれかで回答した。
【0027】
実験結果を図6に示す。(A)が「腹部から背部」に、(B)が「背部から腹部」に、(C)が「右脇腹部から左脇腹部」に第1及び第2の振動子1及び2を配置して実験を行った結果である。図6において、横軸は先の振動の終了から、後の振動の開始までの時間即ち重なっている期間ISI(Inter Stimulus Interval)を示しており、縦軸は主観的貫通感覚の大きさを示している。ISIがマイナスであるのは先の振動が終了する前に、後の振動が開始したことを意味する。すなわち第1の振動持続期間D1と第2の振動持続期間D2とが一部重なっていることを意味する。またISIがプラスであるのは先の振動が終了した後に、後の振動が開始したことを意味する。主観的貫通感覚は、貫通感覚(強)を3、貫通感覚(中)を2貫通感覚(弱)を1とし、他の感覚を0とした。図6(A)乃至(C)を見ると体幹を貫く3条件ともに、振動開始時間差SOA(D1-ISI)が50~100ms以上で、重なっている期間ISIがマイナス(-150~0ms程度)のとき強く貫通感覚が生じることがわかる。
【0028】
次に持続時間による違いを実験した。前の実験では、第1の振動子1の第1の振動持続間D1を変化させて実験を行ったが、この実験では、第2の振動子2の第2の振動持続間D2の持続時間を変化させて同様の実験を行った。図7にその結果を示す。第1の振動持続間D1は200msに固定し、第2の振動持続間D2を100,200,300,400msの4通りに変更し、振動開始時間差SOAを0~400msの間で25ms刻みに17通りに変化させた。図7の縦軸及び横軸は図6と同様である。図7のグラフから、第2の振動持続間D2の持続時間は貫通感覚の主観的強度に影響を与えないことがわかる。
【0029】
次に、振動開始時間差SOAによって生じる感覚の違いについて実験した。すなわち主観的貫通感覚の速度と振動開始時間差SOAの関係を調べた。主観的貫通感覚が強く生じている条件(第1の振動持続間D1を100msとした場合には、振動開始時間差SOAを50~100msとする条件。また第1の振動持続間D1を200msとし、振動開始時間差SOAを50~200msとする条件。さらに第1の振動持続間D1を300msとし、振動開始時間差SOAを100~300msとする条件。さらに第1の振動持続間D1を400msとし、振動開始時間差SOAを100~400msとする条件。)にして、第1の振動子と第2の振動子を振動させた。そしてその際に知覚される主観的貫通速度を1(遅い),2(中位),3(速い)で回答してもらった。その結果を図8に示す。図8からは、第1の振動持続間D1によらず振動開始時間差SOAが貫通速度感覚において主要なパラメータであることがわかる。発明者は、上記の実験を基礎として、上記の発明を完成した。
【0030】
上記実施の形態によれば、腹部側と背部側に第1及び第2の振動子1及び2を装着し、この2つの振動子間に生じる貫通感覚(“ぐっさり感”)を利用した新しい装置を提供できる。なお本発明の装置は、ゲーム装置や、体感装置等の種々の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の貫通触感覚提示装置の実施の形態の一例の構成を示すブロック図である。
【図2】被験者の腹部分と背部分に第1及び第2の振動子を装着する例を示す図である。
【図3】(A)乃至(C)は、実施の形態の動作を説明するために用いる波形図である。
【図4】第1の振動子と第2の振動子の振動波形の一例を示す図である。
【図5】被験者が音響発生装置と画像表示装置とを備えたヘルメットを装着している状態を模式的に示す図である。
【図6】(A)乃至(C)は、第1の振動子の第1の振動持続時間を固定し、しかも振動子の装着位置を変えて実験した結果を示すグラフである。
【図7】第2の振動子の第2の振動持続時間を固定して行った実験の結果を示すグラフである。
【図8】振動開始時間差によって生じる感覚の違いについて実験した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の振動子
2 第2の振動子
3 駆動信号発生装置
4 制御装置
5 音響発生装置
6 画像表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7