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明細書 :カーボンナノホーン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5250229号 (P5250229)
公開番号 特開2009-078993 (P2009-078993A)
登録日 平成25年4月19日(2013.4.19)
発行日 平成25年7月31日(2013.7.31)
公開日 平成21年4月16日(2009.4.16)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノホーン
国際特許分類 A61K  47/02        (2006.01)
A61K  47/42        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
FI A61K 47/02
A61K 47/42
A61P 35/00
C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2007-248261 (P2007-248261)
出願日 平成19年9月25日(2007.9.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年5月30日 日本DDS学会発行の「Drug Delivery System(DDS)Vol.22 NO.3 MAY 2007」に発表
特許法第30条第1項適用 2007年7月11日 フラーレン・ナノチューブ学会発行の「第33回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム 講演要旨集」に発表
特許法第30条第1項適用 平成19年8月1日 ナノトキシコロジーアセスと微粒子・ナノチューブのバイオ応用研究会 実行委員会発行の「第4回 ナノトキシコロジーアセスと微粒子・ナノチューブのバイオ応用研究会 要旨集」に発表
審査請求日 平成22年8月5日(2010.8.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】宮脇 仁
【氏名】徐 建▲くん▼
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】淺野 美奈
参考文献・文献 特表平05-506251(JP,A)
国際公開第2007/091663(WO,A1)
国際公開第96/028188(WO,A1)
国際公開第00/023476(WO,A1)
特開2005-343885(JP,A)
調査した分野 A61K 47/02
A61K 47/42
A61P 35/00
C01B 31/02
特許請求の範囲 【請求項1】
開孔処理されたカーボンナノホーンの当該開孔部にタンパク質からなる付加分子が付加されており、当該付加分子にDDS標的分子が付加されていることを特徴とするカーボンナノホーン。
【請求項2】
薬物が吸着または内包されていることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノホーン。
【請求項3】
付加分子がBSA(牛血清アルブミン)であり、DDS標的分子が葉酸であることを特徴とする請求項に記載のカーボンナノホーン。
【請求項4】
薬物として抗癌剤のドデタセキシル(Doc)を内包させたカーボンナノホーンの開孔部にアミン-PEO3-ビオチンを付加し、これにストレプトアビジンを付加し、これにDDS標的分子としてMouse anti-TAG-72を付加したことを特徴とする請求項に記載のカーボンナノホーン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物伝送システム(Drug Delivery System:DDS)などに有用な、カーボンナノホーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンの一種であるカーボンナノホーンは、低・無毒性がin vitroおよびin vivoの毒性試験より明らかになってきており、薬物担体としての利用について検討が進められている。
【0003】
たとえば、抗炎症剤のデキサメタゾンはカーボンナノホーンに吸着されることが示され、放出されたデキサメタゾンはin vitroでの有効性が確認されている(非特許文献1)。また、抗癌剤のシスプラチンも同様にカーボンナノホーン内に取り込まれることが示され、放出されたシスプラチンはヒト癌細胞に対する殺傷能力を有することも確認されている(非特許文献2)。

【非特許文献1】T. Murakami et al., Mol. Pharm., 1, 399 (2004)
【非特許文献2】K. Ajima et al., Mol Pharm 2, 475 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、カーボンナノホーンは薬物担体としての応用が期待されているが、カーボンナノホーンのみでは、その物理的性質に起因する腫瘍血管の透過亢進に基づくいわゆるEPR効果(Enhanced Permeation and Retention effect)による受動的ターゲティング(passive targetting)が期待できる一方で、腫瘍組織や癌細胞への直接のターゲティング能を有するものではない。
【0005】
腫瘍組織や癌細胞への直接のターゲティング能を有するものとして、腫瘍組織や癌細胞に特異的に発現している部位または分子に対して生物学的な親和性を有する標的分子を薬物担体に付加し、これらの特異的な結合能を利用して標的指向化を図る能動的ターゲティング(active targeting)が知られているが、ポリマーやミセルを薬物担体とした場合、化学修飾による標的分子の付加自由度には制限があった。
【0006】
本発明は、以上のとおりの背景から、能動的ターゲティングを可能とし、薬物担体としての機能をさらに高めたカーボンナノホーンを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0008】
第1:開孔処理されたカーボンナノホーンの当該開孔部にタンパク質からなる付加分子が付加されており、当該付加分子にDDS標的分子が付加されていることを特徴とするカーボンナノホーン。
【0012】
:薬物が吸着または内包されていることを特徴とする上記第1に記載のカーボンナノホーン。
:付加分子がBSA(牛血清アルブミン)であり、DDS標的分子が葉酸であることを特徴とする上記第1に記載のカーボンナノホーン。
:薬剤として抗癌剤のドデタセキシル(Doc)を内包させたカーボンナノホーンの開孔部にアミン-PEO3-ビオチンを付加し、これにストレプトアビジンを付加し、これにDDS標的分子としてMouse anti-TAG-72を付加したことを特徴とする上記第に記載のカーボンナノホーン。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カーボンナノホーンにDDS標的分子を付加することで、能動的ターゲティングが可能となり、標的となる組織や細胞などに選択的かつ効率的に薬物を取り込ませることができ、たとえば薬物として抗癌剤を用いた場合には、治療効果を高め副作用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0015】
カーボンナノホーンとしては、たとえば、本発明者らがすでに開発して数多くの報告を行っている各種の方法により合成されたものを用いることができる。カーボンナノホーンは、通常は、集合体の組織構造を有するものであり、たとえば、複数の単層カーボンナノホーン(Single Walled Carbon Nanohorn:SWNH)がその閉鎖端部を外方に向けて集合した構造を有している。
【0016】
本発明においてカーボンナノホーンに付加されるDDS(Drug Delivery System:薬物輸送システム)標的分子は、腫瘍組織や癌細胞などの、標的となる組織や細胞に特異的に発現している部位または分子に対して、リガンド-受容体相互作用、抗原-抗体反応などにより生物学的な親和性を示す分子のことであり、このようなDDS標的分子をカーボンナノホーンに付加することにより、薬物担体としてのカーボンナノホーンおよびこれに吸着または内包された薬物の標的部位への集積を促進することができる。
【0017】
DDS標的分子としての、受容体に特異的なリガンド分子の具体例としては、葉酸等の有機分子などが挙げられる。多くのヒト癌細胞はビタミン葉酸の受容体を表面膜に過剰発現することが知られており(J. A. Reddy and P.S. Low, Crit. Rev. Ther. Drug Carr. Syst., 15, 587 (1998))、カーボンナノホーンに葉酸を付加することにより、癌細胞への選択的な輸送が実現される。
【0018】
その他、リガンド-受容体相互作用、抗原-抗体反応などにより生物学的な親和性を示す分子の具体例としては、各種のペプチドや抗体、たとえば血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide)、N-methylscopolamine、TAG-72 antibody、CEA antibody、CA 19-9 antibodyなどが挙げられる。
【0019】
DDS標的分子は、カーボンナノホーンに複数付加されていてもよく、複数種が付加されていてもよい。
【0020】
DDS標的分子は、たとえば、開孔処理されたカーボンナノホーンの開孔部に付加することができる。このような開孔部は、本発明者らがすでに提案している酸化等の手段によってカーボンナノホーンの壁部や頂部に形成することができ、この開孔部には、カルボキシル基や水酸基などの置換基を導入することができる。
【0021】
好ましい一例として、開孔部にタンパク質、糖分子などの付加分子を付加し、当該付加分子にDDS標的分子を付加させることができる。たとえば、置換基が導入された開孔部に牛血清アルブミンを結合させ、この牛血清アルブミンにDDS標的分子を結合させることができる。
【0022】
また、カーボンナノホーンの置換基が導入された開孔部にアミン-PEO3-ビオチンなどのビオチンを結合させ、次いでストレプトアビジンをビオチンと複合化させ、その後、ペプチドなどのDDS標的分子をビオチン化したものをストレプトアビジンと複合化させることができる。
【0023】
タンパク質などの付加分子を介してカーボンナノホーンにDDS標的分子を付加させることで、カーボンナノホーンにDDS標的分子を容易に導入でき、さらに、カーボンナノホーンの生理溶液中における分散性を高めることもできる。
【0024】
DDS標的分子は、その種類等に応じて可能であれば、カーボンナノホーンの開孔部分に直接結合させるようにしてもよい。あるいは、その種類等に応じて可能であれば、カーボンナノホーンの開孔部以外の外壁または内壁にDDS標的分子を付加するようにしてもよく、この場合、上記したように付加分子を介してDDS標的分子を付加するようにしてもよく、外壁または内壁にDDS標的分子を直接結合するようにしてもよい。
【0025】
カーボンナノホーンは、外壁や開孔部分を上記以外の化合物で化学修飾したものであってもよい。たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのオリゴマーやポリマー、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、またはこれらの誘導体などをカーボンナノホーンに化学修飾することで、カーボンナノホーンの生理溶液中における分散性を高めることができる。これらの化合物を化学修飾する方法については、すでに多くの報告がある。
【0026】
本発明においてカーボンナノホーンに吸着または内包させる薬物の具体例としては、医薬、動物薬などを挙げることができ、より具体的には、ドデタセキシル、シスプラチン等の抗癌剤、デキソメタゾンまたはそのエステル誘導体等の抗炎症剤、光線力学治療用分子などを挙げることができる。
【0027】
これらの薬物は、たとえば、酸化開孔されたカーボンナノホーンと薬物とを液相において混合することによりカーボンナノホーンに吸着または内包させることができる。液相溶媒としては、アルコール、DMF、DMSO、アセトニトリルなどの極性溶媒と、水との混合溶媒などを用いることができる。
【0028】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例示によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
図1に示す手順により、SWNHの開孔部のカルボキシル基に、BSA(牛血清アルブミン)を付加し、次いで葉酸を付加した。
【0030】
SWNHの酸化は、過酸化水素を用いて、光照射下、100 ℃、2時間の条件で行った。酸化開孔したSWNHoxと、Alexa Fluor 488で蛍光標識したBSAを、リン酸緩衝液中、常温にて攪拌しながら、EDC(1-ethyl-3-(3-dimethylamino-propyl)carbodiimide)の存在下に処理してBSAをSWNHoxの開口部の縁に付加した。次いで、得られたBSA-NHと葉酸を、リン酸緩衝液中、常温にて攪拌しながら、EDCの存在下に処理してBSA-NHに葉酸を付加した。
【0031】
純酸素中で行った熱重量分析(TGA)におけるナノホーン、葉酸、およびBSAの各分子の重量減少から、分子量を用いてモル比を算出した。ここで、ナノホーン1本の分子量は、直径4 nm、長さ40 mmの円筒グラフェン構造を仮定して求めた240,000を用いた。
【0032】
ナノホーン1本当たりに付加したBSAおよび葉酸のモル比の分析結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
JP0005250229B2_000002t.gif
<実施例2>
口腔の表皮癌から得た、葉酸受容体が過剰発現するヒト癌KB細胞を用い、SWNHの葉酸ラベルによる選択的取り込みについて検討した。1×105/dishのKB細胞を37 ℃、5 % CO2の条件で24 時間培養したディッシュに、実施例1で得たFA-BSA-NHの懸濁液を滴下し、37 ℃、5 % CO2の条件で24時間培養した。
【0034】
得られた培養物をPBSでリンスした後、添加物を取り込んだ細胞数を、フローサイトメトリーにより測定した。BSA-NH(葉酸なし)についても測定を行った。測定結果を図2に示す。
【0035】
葉酸を付加したBSAナノホーン(FA-BSA-NH)はKB細胞内に効率的に取り込まれ、葉酸なしのBSA-NHと比較してKB細胞への取り込み量の有意な増加が確認された。
【0036】
なお、葉酸受容体がより少ない通常のヒト細胞を用いて同様の試験を行ったが、FA-BSA-NHと葉酸なしのBSA-NHとの間で細胞への取り込み量に相違は見られなかった。
<実施例3>
抗癌剤のドデタセキシル(Doc)を内包させたSWNHの開孔部にアミン-PEO3-ビオチンを付加し、次いでストレプトアビジンを付加した後、DDS標的分子であるMouse anti-TAG-72を付加した。
【0037】
過酸化水素で処理して開孔部を形成したSWNHに、modified nano-precipitation methodによりDocを導入した。Docの導入量は約20質量%であった。
【0038】
洗浄後、得られたDoc@NHの開孔部のカルボキシル基に、アミン-PEO3-ビオチンを共有結合させて付加し、次いで、Doc@NHに付加したビオチンにストレプトアビジンを複合させた。ストレプトアビジンの導入量は約25質量%であった。このDoc@NH-SAのストレプトアビジンに、水溶液中にて、Mouse anti-TAG-72を付加し、Doc@NH-SA-TAGを得た。
<実施例4>
WST-1アッセイ法により細胞毒性試験を行った。ヒト胃癌由来の細胞(ATCC No. CRL5973)細胞を、Docのみ、NH-SA-TAG(Docなし)、Doc@NH-SA(Tagなし)、またはDoc@NH-SA-TAGと共に(3 μg/ml)、2日間培養した。
【0039】
Doc@NH-SA-TAGを用いた場合における2日間培養後の試料の共焦点蛍光顕微鏡による観察像を図3に示す。なお、蛍光標識にはAlexa 488を用いた。Doc@SWNH-SA-TAGが胃癌細胞内に取り込まれていることが確認され、ヨウ化プロピジウム染色により、それらの大部分が死滅していることが分かった。
【0040】
WST-1アッセイ法の結果を図4に示す。Doc@NH-SA-TAGは、TAGの効果により優先的に胃癌細胞に取り込まれ、TAGを付けていないDoc@NH-SAを用いた場合に比較して、効率的に細胞死を起こさせていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】SWNHから出発して葉酸付加BSA-SWHHOXを得るまでの工程を示した図である。
【図2】添加物を取り込んだ細胞数のグラフである。
【図3】Doc@NH-SA-TAGを取り込んだ細胞の共焦点蛍光顕微鏡による観察像である。
【図4】WST-1アッセイ法における胃癌細胞のviabilityのグラフである。
図面
【図2】
0
【図4】
1
【図1】
2
【図3】
3