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明細書 :近接場光学顕微鏡装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4614296号 (P4614296)
公開番号 特開2002-031591 (P2002-031591A)
登録日 平成22年10月29日(2010.10.29)
発行日 平成23年1月19日(2011.1.19)
公開日 平成14年1月31日(2002.1.31)
発明の名称または考案の名称 近接場光学顕微鏡装置
国際特許分類 G01Q  60/18        (2010.01)
G01N  21/63        (2006.01)
G02B  21/06        (2006.01)
FI G01N 13/14 101
G01N 21/63 Z
G02B 21/06
請求項の数または発明の数 9
全頁数 16
出願番号 特願2000-216432 (P2000-216432)
出願日 平成12年7月17日(2000.7.17)
審査請求日 平成19年7月13日(2007.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】川上 養一
【氏名】岡本 晃一
【氏名】金田 昭男
【氏名】藤田 茂夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100075557、【弁理士】、【氏名又は名称】西教 圭一郎
【識別番号】100072235、【弁理士】、【氏名又は名称】杉山 毅至
審査官 【審査官】渡▲辺▼ 純也
参考文献・文献 国際公開第97/027466(WO,A1)
特開平06-003595(JP,A)
特開昭62-124443(JP,A)
特開平04-143637(JP,A)
特開平10-153604(JP,A)
特開2000-164663(JP,A)
特開平09-166606(JP,A)
特開平11-101808(JP,A)
特開平05-164968(JP,A)
特表2000-515624(JP,A)
Ruggero Micheletto et al,Direct mapping of the far and near field optical emission of nano-sized tapered glass fibers by an integrated SNOM/SF system,Applied Surface Science,ELSEVIER,1999年 4月,Vol. 144-145,p514 - p519
調査した分野 G01Q 10/00 ~ 90/00
G01N 21/63
G02B 21/06
特許請求の範囲 【請求項1】
光源からの光を試料表面に導く光源側導光手段を有し、光源側導光手段先端の近接場光によって試料の微小領域を照射し、照射されたエリア外の試料からの光を受光して試料を観測する近接場光学顕微鏡装置において、
前記光源側導光手段先端から、試料表面に沿う方向に離間した位置の試料表面に向けて先端が配置され、試料からの光を導く受光側導光手段を有し、
光源側導光手段で照射された位置とは異なる位置からの光を観測可能で、前記試料に照射され試料において反射および吸収される光の波長とは異なる波長の光を観測可能な近接場光学顕微鏡装置。
【請求項2】
光源からのパルス光を試料表面に導く光源側導光手段を有し、光源側導光手段先端の近接場光によって試料の微小領域を照射し、照射されたエリア外の試料からの光を受光して試料を観測する近接場光学顕微鏡装置において、
前記光源側導光手段先端から、試料表面に沿う方向に離間した位置の試料表面に向けて先端が配置され、試料からの光を導く受光側導光手段と、
入射した2次元像を検出するイメージセンサと、
受光側導光手段からの光を時間分解して前記イメージセンサに導く偏向手段とを有し、
光源側導光手段で照射された位置とは異なる複数の位置からの光を前記イメージセンサにおいて配列を成す複数位置において観測可能で、前記光源側導光手段で照射する時刻とは異なる時刻に試料から発せられる光を前記イメージセンサにおいて、前記複数位置が配列する方向に垂直な方向に複数の異なる位置で観測可能な近接場光学顕微鏡装置。
【請求項3】
前記受光側導光手段が複数設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の近接場光学顕微鏡装置。
【請求項4】
前記受光側導光手段先端が、試料表面で移動可能に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の近接場光学顕微鏡装置。
【請求項5】
入射された光を分光する分光器と、
入射した2次元像を検出するイメージセンサーとを有し、
複数の受光側導光手段の先端を、2次元マトリクス状に試料表面に配置し、受光側導光手段の反対側端部を一列に配置し、一列に配列された反対側端部からの光を分光器によって配列方向に垂直な方向に分光し、2次元状にイメージセンサーに出射し、試料表面の複数位置で受光した光の発光スペクトルを観測可能としたことを特徴とする請求項1に記載の近接場光学顕微鏡装置。
【請求項6】
入射された光の強度に応じて生じた光電子を、通過時に応じて偏向させる偏向手段と、
入射した2次元像を検出するイメージセンサーとを有し、
複数の受光側導光手段の先端を、2次元マトリクス状に試料表面に配置し、受光側導光手段の反対側端部を一列に配置し、一列に配列された各反対側端部からの光を前記偏向手段で配列方向に垂直な方向に偏向し、2次元状にイメージセンサーに出射することによって、試料表面の複数位置で受光した光の強度の時間変化を観測可能としたことを特徴とする請求項1に記載の近接場光学顕微鏡装置。
【請求項7】
前記受光側導光手段は、複数の微小開口が形成され、試料表面上に配置され、各開口の開閉を個別に制御する微小開口アレイを有することを特徴とする請求項1または2に記載の近接場光学顕微鏡装置。
【請求項8】
前記光源側導光手段の先端を成す光ファイバと、前記受光側導光手段の先端を成す光ファイバとを有する検針であって、
前記光源側導光手段の先端と前記受光側導光手段の先端との離間距離が、互いに異なる複数種類の離間距離に設定される複数種類の検針を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の近接場光学顕微鏡装置。
【請求項9】
前記光源側導光手段は、直径が100nm以下の開口を介して試料表面に光を導き、
前記光源側導光手段によって照射される試料表面の範囲は、前記開口と同程度の大きさであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の近接場光学顕微鏡装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料と十分小さな開口とを近接させ、開口からの近接場光によって試料を観測する近接場光学顕微鏡装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学顕微鏡における空間分解能の限界は、光が開口を通過する際の回折現象によって決まり、波長をλ、開口数をNとすると、分解能は0.61λ/Nとなる。そのため、通常の光学顕微鏡ではミクロン程度、走査型レーザ顕微鏡でも、サブミクロン程度の空間分解能しか得ることができない。
【0003】
それに対し、最近、光の回折限界を超えた分解能をもつ近接場光学顕微鏡装置が開発されている。近接場光学顕微鏡装置は、光の波長λより充分に小さい開口を有するプローブから取出された近接場光を試料に照射し、試料からの散乱光や発光を集光し、分光検出するものである。光の波長λよりも充分近い距離に試料を近づけることにより分解能の向上を図っている。
【0004】
試料と開口とが接近した部分は近接場と呼ばれ、開口径を光の波長λ以下にすると、近接場においてエバネッセント光と呼ばれる近接場光が発生する。近接場光の分布は、近接場光によって励起された対象物から数十nm程度の領域に限られている。近接場光が発生する状態を保持しつつ、開口部が試料表面上を走査することにより~100nm程度の超高空間分解能を実現することができる。
【0005】
たとえば、特開平11-101808号には、微小開口のファイバプローブを用いた近接場光学顕微分光測定装置が開示されている。この装置は、被測定物表面にエバネッセント光を発生させる励起光を照射する手段と、エバネッセント光の場へプローブを侵入させることにより発生する被測定光を集光する手段と、集光手段により集光された光を、その波長毎に分光する手段と、分光手段により得られる分光光を検出する手段とから成り、検出手段が各波長の分光光を同時に検出可能なマルチチャンネル検出手段であることを特徴としている。
【0006】
以上のような手段が講じられた装置によれば、試料を近接場光の近傍に近づけることで、微小領域を選択的に励起することができる。その結果、ファイバプローブ先端に近接している励起領域における発光を捕らえることができる。試料表面においてファイバプローブをxy方向に走査することにより、超高空間分解能画像を得ることができる。
【0007】
また、特開平5-164968号には、開口部を複数個もつ微小開口アレイを有する近接場光学顕微鏡装置が開示されている。この装置は、マイクロマシニング加工によって開口部が複数個形成された微小開口アレイと、各開口部に対向させて配置された複数の増幅型光電素子から成る光電アレイとが一体に形成されたセンサユニットと、センサユニットに対向配置される試料との距離が近接場となるように距離を制御する手段と、センサユニットと試料との対向方向と直交する方向に相対的に移動させて試料を走査する手段と、その走査に同期させてセンサユニットの各増幅型光電素子から出力される信号を表示する手段を有するものとしている。
【0008】
以上のような手段が講じられた装置によれば、センサユニットの開口部と試料とが距離制御手段によって近接し、近接場光が試料光として各開口部に入射する。これによりセンサユニットの各増幅型光電素子からは各々対応する開口部に入射した試料光に応じた信号が増幅されて出力される。これら各出力信号は表示手段により、走査手段による試料走査に同期して、試料像として表示される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11-101808号に示されている近接場光学顕微分光装置では、同一ファイバプローブにより励起、検出を行っている。この方式では、微小領域を選択的に励起することが可能である。しかし、ファイバプローブ先端に近接している励起エリアにおける発光現象しか据えることができず、励起エリ外の発光現象は観測不可能である。
【0010】
試料が光材料の場合、励起エリアにおいて、電子・正孔(キャリア)あるいはそれらが結合した励起子が発光するが、励起エリアにおいて発生した電子、キャリア、励起子の多くは拡散によって励起エリア外に流れ出し、他の場所において発光する。これらの励起エリアから流れ出したキャリアのダイナミクスは、材料の光機能・光物性に大きな影響を及ぼすため、光・電子デバイス開発において非常に重要な過程であるが、特開平11—101808号の従来技術では、励起エリア外の発光を観測することができなかった。
【0011】
また、特開平5-164968号に示されている近接場光学顕微鏡装置では、微小開口アレイを薄膜上の試料上面に配置し、試料の下方から、試料下面前面に均等に光を照射し、上面の微小開口アレイの各開口を介して、試料上面からの光を個別に光電素子で受光するように構成されている。つまり、光は試料全面に照射され、それを複数箇所で受光するように構成されている。このような構成によって高S/N比、高速走査を実現できる。しかし、微小領域を選択的に励起することが不可能であり、さらに、励起エリア外に流れ出すキャリア、励起子の発光を観測することも不可能である。
【0012】
本発明の目的は、励起エリア外での発光を検出することができる近接場光学顕微鏡装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、光源からの光を試料表面に導く光源側導光手段を有し、光源側導光手段先端の近接場光によって試料の微小領域を照射し、照射されたエリア外の試料からの光を受光して試料を観測する近接場光学顕微鏡装置において、
前記光源側導光手段先端から、試料表面に沿う方向に離間した位置の試料表面に向けて先端が配置され、試料からの光を導く受光側導光手段を有し、
光源側導光手段で照射された位置とは異なる位置からの光を観測可能で、前記試料に照射され試料において反射および吸収される光の波長とは異なる波長の光を観測可能な近接場光学顕微鏡装置である。
【0014】
図1は、本発明の概要を示す図である。光源側導光手段で試料を励起すると、励起場所において、電子・正孔(キャリア)あるいはそれらが結合した励起子が発光するとともに、電子、キャリア、励起子の多くは拡散によって励起エリア外に流れ出し、他の場所において発光する。
【0015】
本発明では、光源側導光手段とは別に、試料の発光を受光する受光側導光手段を備え、この受光側導光手段は、光源側導光手段先端から離間した位置の試料表面に向けて先端が配置されるので、拡散によって励起エリア外に流れ出し、励起エリア外での発光を観測することができる。
本発明に従えば、試料表面のエネルギー分布画像を得ることができる。
また請求項2に記載の本発明は、光源からのパルス光を試料表面に導く光源側導光手段を有し、光源側導光手段先端の近接場光によって試料の微小領域を照射し、照射されたエリア外の試料からの光を受光して試料を観測する近接場光学顕微鏡装置において、
前記光源側導光手段先端から、試料表面に沿う方向に離間した位置の試料表面に向けて先端が配置され、試料からの光を導く受光側導光手段と、
入射した2次元像を検出するイメージセンサと、
受光側導光手段からの光を時間分解して前記イメージセンサに導く偏向手段とを有し、
光源側導光手段で照射された位置とは異なる複数の位置からの光を前記イメージセンサにおいて配列を成す複数位置において観測可能で、前記光源側導光手段で照射する時刻とは異なる時刻に試料から発せられる光を前記イメージセンサにおいて、前記複数位置が配列する方向に垂直な方向に複数の異なる位置で観測可能な近接場光学顕微鏡装置である。
本発明に従えば、試料の発光の時間変化を観測することができる。
【0016】
請求項記載の本発明は、前記受光側導光手段が複数設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、受光側導光手段が複数設けられることによって、試料表面の複数箇所での発光を同時に観測することができる。
【0018】
請求項記載の本発明は、前記受光側導光手段先端が、試料表面で移動可能に設けられることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、受光側導光手段を移動可能とすることによって、たとえば受光側導光手段を試料表面上でスキャンすることで、1本の受光側導光手段で、試料全面の発光を観測することができる。
【0020】
請求項記載の本発明は、入射された光を分光する分光器と、
入射した2次元像を検出するイメージセンサーとを有し、
複数の受光側導光手段の先端を、2次元マトリクス状に試料表面に配置し、受光側導光手段の反対側端部を一列に配置し、一列に配列された反対側端部からの光を分光器によって配列方向に垂直な方向に分光し、2次元状にイメージセンサーに出射し、試料表面の複数位置で受光した光の発光スペクトルを観測可能としたことを特徴とする。
【0021】
図18は、光学顕微鏡、ストリークカメラを用いた時間・空間・波長分解計測の原理を示す図である。ストリークカメラは、検出光をまず分光器で分光して波長分解する。波長分解した光を光電板に照射し、光電子に変換する。光電板からの光電子を掃引電極間を通過させる。掃引電極は、電子が掃引電極間を通過するとき、時間経過にしたがって極板間電圧が変化するように高速掃引電圧が印加され、これによって掃引電極間を通過する時間に応じて、光電子の移動経路が偏向する。
【0022】
受光した光は、分光器によって横方向に広がり、この広がった光が光電板で光電子に変換され、掃引電極によって縦方向に広がる。このようにして2次元平面状に広がった光電子がイメージセンサーによって画像として検出される。この検出画像は、横方向が発光スペクトルを示し、縦方向が光の強度の時間変化(タイムプロファイル)を示す。
【0023】
このように、ストリークカメラにおいては、一本の光ファイバが受光した光を波長分解および時間分解するが、これを、たとえば2次元マトリクス(行列)状に配置された複数の受光側導光手段を用いる本発明に適用しようとすると、各受光側導光手段毎にストリークカメラを設けねばならず、コストが非常に高くなるといった問題を有する。
【0024】
それに対し、請求項4記載の本発明では、先端が試料表面で2次元マトリクス状に配置された受光側導光手段の反対側端部を一列に配置し、たとえば横方向に広げ、この端部からの光を分光して縦方向に広げることによって、2次元状にイメージセンサーに出射し、これによって、試料表面の複数位置での検出光のスペクトル分布を観測することができる。このようにして、一つの分光器やイメージセンサーで複数箇所の発光スペクトルを観測でき、低コストで波長分解可能な近接場光学顕微鏡を実現することができる。
【0025】
請求項記載の本発明は、入射された光の強度に応じて生じた光電子を、通過時に応じて偏向させる偏向手段と、
入射した2次元像を検出するイメージセンサーとを有し、
複数の受光側導光手段の先端を、2次元マトリクス状に試料表面に配置し、受光側導光手段の反対側端部を一列に配置し、一列に配列された各反対側端部からの光を前記偏向手段で配列方向に垂直な方向に偏向し、2次元状にイメージセンサーに出射することによって、試料表面の複数位置で受光した光の強度の時間変化を観測可能としたことを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、上記した請求項4と同様に、先端が試料表面でマトリクス状に配置された受光側導光手段の反対側端部を一列に配列してたとえば横方向に広げ、掃引電極などの偏向手段で縦方向に広げることによって、2次元状にイメージセンサーに出射する。これによって、試料表面の複数位置での検出光を時間分解して観測することができる。
【0027】
このようにして、一つの偏向手段やイメージセンサーで複数箇所での検出光のタイムプロファイルを観測でき、低コストで時間分解可能な近接場光学顕微鏡を実現することができる。
【0028】
請求項記載の本発明の前記受光側導光手段は、複数の微小開口が形成され、試料表面上に配置され、各開口の開閉を個別に制御する微小開口アレイを有することを特徴とする。
【0029】
微小開口アレイの各開口の開閉を個別に制御することによって、検出場所を任意に選択することが可能である。
請求項8に記載の本発明は、前記光源側導光手段の先端を成す光ファイバと、前記受光側導光手段の先端を成す光ファイバとを有する検針であって、
前記光源側導光手段の先端と前記受光側導光手段の先端との離間距離が、互いに異なる複数種類の離間距離に設定される複数種類の検針を含むことを特徴とする。
請求項9に記載の本発明は、前記光源側導光手段は、直径が100nm以下の開口を介して試料表面に光を導き、
前記光源側導光手段によって照射される試料表面の範囲は、前記開口と同程度の大きさであることを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明の実施の一形態である近接場光学顕微鏡装置1の構成を示すブロック図である。近接場光学顕微鏡装置1は、検針5を用いて試料4を、100nm程度の超空間分解能で観測する装置である。試料4としては、たとえばLED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)などの光、電子デバイスであり、具体例としては、GaAs,GaNなどの化合物半導体が挙げられる。
【0031】
本実施形態の検針5は、導光手段である光ファイバを2本有し、一本は光源であるレーザ光源2からのレーザ光を導く光源側光ファイバ6であり、もう一本は、試料4の発光を受光し、光検出系8に導く受光側光ファイバ7である。
【0032】
光ファイバ6,7は、先を鋭く尖らせ、先端の開口は、数10~100nm程度である。光源側光ファイバ6にレーザ光を導入すると、先端から、開口の直径と同程度の範囲に近接場光が発生し、この近接場光近傍に試料4を近づけると、試料表面で電子、キャリア、励起子が発生し、試料4が発光する。
【0033】
光源側光ファイバ6と、受光側光ファイバ7とは所定距離、たとえば数μm程度離間して配置されており、受光側光ファイバ7も光源側光ファイバ6と同距離、試料4に近接させる。光源側光ファイバ6で励起された試料4は、励起エリアで発光するとともに、励起エリア外に電子、キャリア、励起子が流れ出し、励起エリア外でも発光する。励起エリアでの発光は、光源側光ファイバ6で受光され、励起エリア外に流れ出し、受光側光ファイバ7の下での発光は、受光側光ファイバ7で受光される。
【0034】
レーザ光源2からのレーザ光はハーフミラー3を介して光源側光ファイバ6に導かれて先端から照射され、光源側光ファイバ6で受光した光は、ハーフミラー3で反射して光検出系8に導かれる。受光側光ファイバ7で受光した光も光検出系8に導かれる。
【0035】
光検出系8は、分光器、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどのイメージセンサーを有するストリークカメラからなり、受光した光の発光スペクトルおよびタイムプロファイルを観測する。このようにして、本実施形態の顕微鏡装置1では、励起エリアだけでなく、励起エリア外での試料4の発光も観測することができる。
【0036】
また、2本の光ファイバを有する検針としては、たとえば図3に示すように、離間距離の異なる複数種類の検針(図3では、離間距離x1,x2,x3の3種類の検針の例を示す)を用いることによって、励起エリアから異なる複数距離離れた位置の発光を観測することができる。
【0037】
図4は、光照射位置x0,および光照射位置x0から距離x1、距離x2離れた位置で検出した光の光学検出系8での観測結果を示し、グラフは位置x0,x1,x2での発光スペクトル、およびタイムプロファイルの例を示す。このように本発明では、光源側光ファイバで励起される励起エリアの観測だけでなく、励起エリア外も観測することが可能である。なお、光照射位置であるx0の位置での検出結果は、従来技術と同じであり、光照射位置から離間した位置で検出できることが本発明の特徴である。
【0038】
また、励起させるレーザ光は、連続光であってもよく、フェムト秒オーダの極短パルス光であってもよい。しかし、図4に示す、スペクトルを計測する際には連続光でもパルス光でもどちらでもよいが、タイムプロファイルを計測する際には、パルス光でなければならない。また、観測する試料は、半導体材料に限らず、有機材料であってもよく、たとえば生体細胞の観測にも適用することができる。一例としては、神経細胞中における神経伝達物質や電気信号のダイナミクスの観測に適用することができる。また、本実施形態では、光源側光ファイバ6および受光側光ファイバ7の両方で検出するように構成したが、本発明はこれに限らず、受光側光ファイバ7のみで受光するように構成してもよい。また、本実施形態では、試料の表面側から照射し、この表面側で、照射位置から試料表面に沿う方向に離間した位置での発光を検出するように構成したが、本発明はこれに限らず、光源側光ファイバで試料の裏側から照射し、受光側光ファイバで、試料の表側から、照射位置から試料表面に沿う方向に離間した位置(xy方向に離間した位置)で検出するように構成してもよい。
【0039】
図5は、光源側光ファイバ6を有する固定側検針10を固定し、受光側光ファイバ7を有する移動側検針11をxy方向に走査可能に構成した本発明の他の実施形態の近接場光学顕微鏡装置の検針先端部を示す図である。この顕微鏡装置では、レーザ光を照射して測定する毎に、移動側検針11をxy方向に移動させて試料表面をスキャンし、検出位置を変えることによって、試料の全表面を観測することが可能となる。
【0040】
図6は、光ファイバアレイを用いた本発明のさらに他の実施形態の近接場光学顕微鏡装置の光ファイバアレイを示す図である。この顕微鏡装置では、複数の光ファイバの先端側を図6に示すように2次元マトリクス(行列)状に配置する。そのうち、たとえば中央の一本の光ファイバを光源側光ファイバとし、その他の光ファイバを受光側光ファイバとし、受光側光ファイバからの光をCCDカメラなどのイメージセンサーで検出する。これによって、一度に試料表面を観測することができる。
【0041】
図7は、光ファイバアレイを用いた顕微鏡装置での観測結果を示す図である。検出光を分光器で分光することによって試料表面のエネルギー分布画像を得ることができ、また、CCDカメラの電子シャッタなどで、微小時間ごとの試料像を撮像することによって、試料表面の発光の時間変化を観測することができる。図7の上の図は、観測した試料表面のエネルギーを、時間分解して示す図であり、たとえば検出光を所定の周波数ごとに分けて表示し、これら周波数毎の時間変化を示したものであり、図7の下の図は、周波数ごとに分けず、検出光全ての時間変化を示す図である。
【0042】
なお、この例では、中央の光ファイバのみを光源側光ファイバとし、他の全ての光ファイバを受光側光ファイバとしたが、本発明はこれに限らず、任意の一本、または複数の光ファイバを光源側光ファイバとしてもよく、また光源側光ファイバでも受光するように構成してもよい。
【0043】
上記した顕微鏡装置では、一度に試料表面のエネルギー分布またはタイムプロファイルを観測することができるが、各光ファイバで検出した光ごとの発光スペクトルおよびタイムプロファイルを観測するには、全ての光ファイバごとにストリークカメラを設けなければならず、顕微鏡装置のコストが増大してしまう。
【0044】
そこで、次に示す本発明のさらに他の実施形態の近接場光学顕微鏡装置では、スペクトル観測用カメラとタイムプロファイル観測用カメラを用いて、試料表面の複数箇所で検出した光の発光スペクトルおよびタイムプロファイルを観測できるように構成した。
【0045】
この顕微鏡装置では、図6で示したものと同様の光ファイバアレイを有し、この先端側を、図8に示すように、2次元マトリクス状に配置し、この先端を試料表面に向ける。そして、光ファイバアレイの反対側端側を一列に配列する。
【0046】
図9は、スペクトル観測用カメラの測定原理を示す図である。スペクトル観測用カメラは、分光器16とイメージセンサー17とを有し、一列に配列された光ファイバアレイの反対側端部からの光を、図9に示すように分光器16で分光する。これによって横方向に一列に配列される光ファイバからの光が縦方向に広がって2次元状に広がる。そして2次元状に広がった光をCCDなどのイメージセンサー17で検出する。すると、図10に示すように、各列が、光ファイバ一本ごとの検出光の発光スペクトルとして検出される。このようにして、複数箇所での検出光の発光スペクトルを一台のカメラで観測することができる。
【0047】
図11は、タイムプロファイル観測用カメラの測定原理を示す図である。タイムプロファイル観測用カメラは、光電板20、掃引電極21、およびイメージセンサー22を有し、一列に配列された光ファイバアレイの反対側端部からの光を光電板20に照射する。光電板20は、入射した光子数に比例した光電子を放出する。掃引電極21は、光電子が通過するとき、図12に示すように、時間経過に比例して極板間電圧が高くなるように高速掃引電圧が印加される。掃引電極間を通過する光電子は、極板間電圧に比例して通過経路が変化し、イメージセンサー22によって検出される。
【0048】
たとえば、図12で、時刻t1で掃引電極21を通過する光電子e1の通過経路が図13のAであるとすると、同じ光ファイバから出射し、時刻t1より後の時刻t2に掃引電極21を通過する光電子e2は、極板間電圧が、さらに高くなっているので、図13のBに示すように、通過経路は大きく下に曲がり、イメージセンサーへの到達位置がさらに下となる。
【0049】
このようにして、横方向に並べられた各光ファイバからの光が、掃引電極21によって時間経過に従って縦方向に広げられてイメージセンサー22で検出される。つまり、イメージセンサーで検出された画像は、縦の各列が、一本の光ファイバからの検出光のタイムプロファイルとなる。
【0050】
このようにして、複数の光ファイバからの検出光のタイムプロファイルを、1台のカメラで観測することができる。
【0051】
上述した各実施形態では、光源からの光を導く導光手段、および受光した光を光検出系に導く導光手段として光ファイバを用いたが、本発明の導光手段は、光ファイバに限定されるものではない。図14は、導光手段の他の形態である、微小開口が複数形成された微小開口アレイ25を示す図である。この微小開口アレイ25は、開口アレイ板26に、数10~数100nm程度の微小開口27をマトリクス状に複数形成し、各開口に、開口を解放、遮蔽する蓋28を設け、これらを個別に制御するように構成した。
【0052】
この微小開口アレイ25を試料上に配置し、たとえば任意の二箇所の開口を開放し、一方の開口にレーザ光を導き、他方の開口から光を検出することによって、励起場所や検出場所を任意に選択することが可能となる。また、一本の光ファイバで任意の発光現象を観測可能にすることができる。
【0053】
開口27の蓋28の開閉は、マイクロマシン技術によって実現され、たとえば図15に示すように角変位する全蓋式、半蓋式、スライド変位するシャッタ式などが考えられる。また、このような蓋式でなく、液晶シャッタによって微小開口27の開閉を制御するようにしてもよい。
【0054】
このように、微小開口アレイ25では、任意の場所の励起、検出ができる装置であるため、たとえばマイクロ光メモリの書き換え、読み込み装置として応用することが可能である。
【0055】
またさらに、たとえば生体細胞のように試料に凹凸のある場合、近接場を常に保つために、図16に示すような方式が考えられる。前記微小開口アレイ25の微小開口部27を筒29で構成し、前記微小開口アレイと試料表面30との距離をセンサによって感知し、試料表面との距離が常に近接場となるように試料表面の凹凸に応じて微小開口の筒がマイクロマシン技術によって上下するように構成してもよい。
【0056】
また、マルチファイバプローブ31と微小開口アレイ25とを図17のように組合せることでも同様のことが可能である。
【0057】
また、本発明のさらに他の実施形態の近接場光学顕微鏡装置である。パルス光を試料に照射したとき、試料の発光は照射したパルス光よりも長くなる。したがって、検出光をフェムト秒オーダの時間分解能で分解して観測することによって、試料の性質をより深く観測することができる。本実施形態の顕微鏡装置は、検出光をフェムト秒オーダーの高速の時間分解能で観測することができる近接場光学顕微鏡装置である。
【0058】
本顕微鏡装置では、フェムト秒オーダーのパルス状のレーザ光を、まずゲート光とポンプ光とに分岐し、ポンプ光を試料に照射する。試料の発光は、受光側光ファイバまたは微小開口アレイで受光し、光検出系に導かれるが、その間に、非線形光学素子と所定の周波数の光のみ通過させる光フィルタが介在され、前記分岐したゲート光は、非線形光学素子に向けて照射される。
【0059】
つまり、非線形光学素子には、試料からの光とゲート光とが照射される。非線形光学素子は、ゲート光の周波数と試料からの光の周波数の和周波または差周波を有する光を発生する。和周波の光を発生する非線形光学素子としては、たとえばBBO(β-BaB24)があり、差周波の光を発生する非線形光学素子としては、KTP(KTiOPO4)がある。前記光フィルタは、非線形光学素子からの和周波または差周波のみを選択的に通過し、通過した光のみが光検出系で検出される。
【0060】
パルス状のレーザを試料に照射したのち、試料は、照射したパルスより長い間発光し続けるが、本実施形態では、試料からの発光は、ゲート光が非線形光学素子に入射したときのみ検出されるので、フェムト秒オーダーの時間分解能で切り出した検出光を観測できる。また、ゲート光を遅延させることにより、任意の時間の光を切り出して検出することができる。
【0061】
また、非線形光学素子と光フィルタに代えて、所定の偏光方向の光のみ透過させる偏光部材と、偏光方向を変換する偏光方向変換部材とを用いてもよい。
【0062】
たとえば、第一の偏光方向のみ透過させる第一偏光部材に試料からの光を透過させ、第二の偏光方向のみ透過させる第二偏光部材にゲート光を透過させ、第一の偏光方向の光を、第二の偏光方向の光によって、第三の偏光方向に変換して出力する偏光方向変換部材を、非線形光学素子に代えて設け、光フィルタに代えて、第3の偏光方向の光のみを透過させる第三偏光部材を設ける。
【0063】
このように構成することによって、試料からの光は、パルス状のゲート光が偏光方向変換部材に照射されたときのみ、検出され、これによってフェムト秒オーダーの時間分解能で観測可能となる。偏光変換部材は、たとえばKerr効果を発揮するCS2によって実現される。
【0064】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、光源側導光手段とは別に、試料の発光を受光する受光側導光手段を備え、この受光側導光手段は、光源側導光手段先端から離間した位置の試料表面に向けて先端が配置されるので、拡散によって励起エリア外に流れ出し、励起エリア外での発光を観測することができる。また試料に照射され試料において反射または吸収される光の波長とは異なる波長の光を観測可能であるので、試料から発せられる光のエネルギー分布画像を得ることができる。
また本発明によれば、光源側導光手段で照射する時刻とは異なる時刻に試料からの光を観測可能であるので、試料表面の発光の時間変化観測することができる。
【0065】
また本発明によれば、受光側導光手段が複数設けられることによって、試料表面の複数箇所での発光を観測することができる。
【0066】
また本発明によれば、受光側導光手段を移動可能とすることによって、たとえば受光側導光手段を試料表面上でスキャンすることで、1本の受光側導光手段で、試料全面の発光を観測することができる。
【0067】
また本発明によれば、先端が試料表面で行列状に配置された受光側導光手段の反対側端部を一列に配置して2次元状にイメージセンサーに出射することによって、一つのイメージセンサーで複数箇所のスペクトル分布を観測でき、低コストで波長分解可能な近接場光学顕微鏡を実現することができる。
【0068】
また本発明によれば、先端が試料表面で行列状に配置された受光側導光手段の反対側端部を一列に配置して2次元状にイメージセンサーに出射することによって、試料表面の複数位置での検出光を時間分解して観測することができる。このようにして、一つのイメージセンサーで複数箇所での検出光のタイムプロファイルを観測でき、低コスト化が図られる。
【0069】
また本発明によれば、微小開口アレイの各開口の開閉を個別に制御することによって、検出場所を任意に選択することが可能である。
また本発明によれば、近接場光学顕微鏡は、複数種類の検針を含み、これらの検針において、光源側導光手段の先端と受光側導光手段の先端との離間距離は、互いに異なる複数種類の離間距離に設定されるので、励起エリアから異なる複数距離離れた位置の発光を観測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を説明する図である。
【図2】本発明の実施の一形態である近接場光学顕微鏡装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】光源側光ファイバと受光側光ファイバとの離間距離が異なる3種類の検針を示す図である。
【図4】3箇所での検出光の発光スペクトルおよびタイムプロファイルを示す図である。
【図5】受光側光ファイバ7が移動可能な近接場光学顕微鏡装置の検針先端部を示す図である。
【図6】光ファイバアレイを示す図である。
【図7】光ファイバアレイを用いて撮像したエネルギー分布画像および時間変化画像を示す図である。
【図8】光ファイバアレイの先端側の配置を示す図である。
【図9】複数個所の検出光の発光スペクトルを観測するスペクトル観測用カメラの測定原理を示す図である。
【図10】複数箇所での検出光の発光スペクトルを示す画像である。
【図11】複数個所の検出光のタイムプロファイルを観測するタイムプロファイル観測用カメラの測定原理を示す図である。
【図12】掃引電極21に印加する電圧を示すグラフである。
【図13】掃引電極間を通過するときの光電子e1,e2の通過経路A,Bを示す図である。
【図14】微小開口アレイ25を示す図である。
【図15】微小開口アレイ25の蓋28の開閉方法を示す図である。
【図16】凹凸のある試料を観測する場合に、近接場を常に保つ方法を示す図である。
【図17】微小開口アレイ25とマルチファイバプローブ31とを組み合わせた図である。
【図18】ストリークカメラの測定の原理を示す図である。
【符号の説明】
1 近接場光学顕微鏡装置
4 試料
6 光源側光ファイバ
7 受光側光ファイバ
8 光検出系
25 微小開口アレイ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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