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明細書 :マグネトロン周波数/位相制御回路とマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3697504号 (P3697504)
公開番号 特開2002-043848 (P2002-043848A)
登録日 平成17年7月15日(2005.7.15)
発行日 平成17年9月21日(2005.9.21)
公開日 平成14年2月8日(2002.2.8)
発明の名称または考案の名称 マグネトロン周波数/位相制御回路とマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置
国際特許分類 H03B  9/10      
H03L  7/00      
H05B  6/66      
FI H03B 9/10
H03L 7/00 B
H03B 9/10
H03L 7/00 B
H05B 6/66 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2000-231503 (P2000-231503)
出願日 平成12年7月31日(2000.7.31)
審判番号 不服 2002-014168(P2002-014168/J1)
審査請求日 平成12年7月31日(2000.7.31)
審判請求日 平成14年7月25日(2002.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】松本 紘
【氏名】篠原 真毅
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
参考文献・文献 特表昭60-123110(JP,A)
特開平11-1261411(JP,A)
森田清監修、西巻正郎、相浦正信著「マイクロ波電子管」(オーム社)186頁
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネトロンにアノード電流を供給して発振状態とするアノード電流源と、
前記マグネトロンの固有発振周波数に近い周波数を持つ基準信号を前記マグネトロンに注入して、前記マグネトロンの発振周波数を前記基準信号の周波数に引き込んで同期させる注入同期手段と、
前記マグネトロンの発振出力と前記基準信号とを比較して両者の周波数及び位相誤差を求め、前記アノード電流源のアノード電流出力を制御して前記周波数及び位相誤差を補正するフィードバック制御手段とを具備することを特徴とするマグネトロン周波数/位相制御回路。
【請求項2】
さらに、前記基準信号の位相を制御する位相制御手段を備え、この位相制御手段により基準信号の位相を可変することで前記マグネトロンの発振出力位相を制御することを特徴とする請求項記載のマグネトロン周波数/位相制御回路。
【請求項3】
前記基準信号のマグネトロンへの注入及びこのマグネトロンの発振出力の取り出しにサーキュレータを用いることを特徴とする請求項1記載のマグネトロン周波数/位相制御回路。
【請求項4】
マグネトロンにアノード電流を供給して発振状態とすることで前記マグネトロンにマイクロ波を放射させるアノード電流源と、
前記マグネトロンの固有発振周波数に近い周波数を持つ基準信号を生成する基準信号生成器と、
この基準信号生成器から出力される基準信号を前記マグネトロンに注入して、前記マグネトロンの発振周波数を前記基準信号の周波数に引き込んで同期させる注入同期手段と、
前記マグネトロンの発振出力と前記基準信号とを比較して両者の周波数及び位相誤差を求め、前記アノード電流源のアノード電流出力を制御して前記周波数及び位相誤差を補正するフィードバック制御手段とを具備することを特徴とするマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置。
【請求項5】
さらに、前記基準信号の位相を制御する可変移相器を備え、この可変移相器により基準信号の位相を制御することで前記マイクロ波出力を任意の位相に制御することを特徴とする請求項4記載のマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置。
【請求項6】
前記基準信号のマグネトロンへの注入及びこのマグネトロンから放射されるマイクロ波の取り出しにサーキュレータを用いることを特徴とする請求項4記載のマイクロ波発生装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネトロンの発振周波数及び位相を制御するマグネトロン周波数/位相制御回路と、マグネトロンを用いてマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から高出力のマイクロ波発生装置にはマグネトロンがよく用いられる。このマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置にあっては、マグネトロン固有の発振周波数に近い周波数を持った基準信号をマグネトロンに注入することにより、マグネトロンの発振周波数を基準信号の周波数に引き寄せてロックする(周波数引き込み)ことで、マグネトロンから放射されるマイクロ波の周波数制御が行われている。
【0003】
ここで、マグネトロンに対し、固有発振周波数とは周波数の異なる弱い基準信号を注入し、その信号強度比により決定される周波数差以内であれば、マグネトロンからの発生マイクロ波が弱い基準信号に同期するという現象は古くから知られている。基準信号をマグネトロンに注入することで、マグネトロンの発振周波数を基準信号の周波数に同期させロックするという注入同期法は、アドラー(Adler)により定式化されている(Adler, R., "A Study of Locking Phenomena in Oscillators", Proceedings of I.R.E and Waves and Electrons, pp.351-357, 1946)。
【0004】
また、上記注入同期法とマグネトロンの発振周波数を制御するフィードバックループを組み合わせることで、マグネトロンの位相を基準信号によって制御する方法が、W.C.ブラウン(W. C. Brown)によって開発されている(Brown, W. C., "Update on the Solar Power Satellite Transmitter Design", Space Power, Vol.6, pp.123-135, 1986)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ブラウンは、マグネトロンの発振周波数制御法として、コイルを用いて電磁界を制御する方法をとっており、以後、その制御法が広く採用されている。しかしながら、この制御法では、マグネトロンの発振周波数制御幅が非常に小さいために、安定性が十分とは言えない。このため、マグネトロンを用いたマイクロ波発生装置は、出力位相の安定化が困難で、例えばアクティブフェーズドアレイのように高精度の位相制御が要求されるアンテナ装置には使用できないという問題が生じている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、マグネトロンの発振出力の位相を容易に安定化させ、制御可能とするマグネトロン周波数/位相制御回路を提供し、さらにこの制御回路を採用することで、マグネトロンを用いても位相安定度が高く、かつ任意の位相のマイクロ波を出力可能なマイクロ波発生装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、フィードバックループによるマグネトロンの周波数制御方式として、アノード電流を制御することで、安定な位相制御を実現する。
【0008】
すなわち、本発明に係るマグネトロン周波数/位相制御回路は、マグネトロンにアノード電流を供給して発振状態とするアノード電流源と、前記マグネトロンの固有発振周波数に近い周波数を持つ基準信号を前記マグネトロンに注入して、前記マグネトロンの発振周波数を前記基準信号の周波数に引き込んで同期させる注入同期手段と、前記マグネトロンの発振出力と前記基準信号とを比較して両者の周波数及び位相誤差を求め、前記アノード電流源のアノード電流出力を制御して前記周波数及び位相誤差を補正するフィードバック制御手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、同期注入法によりマグネトロンの発振周波数を基準信号の周波数に引き込み、フィードバック制御により周波数及び位相をロックすることができる。この際、マグネトロンのアノード電流を制御することで周波数及び位相をロックしていることから、コイルによる電磁波で制御していた従来の方法と比較して制御幅を極めて広くとることができ、これによって安定性を向上させることができる。
【0010】
さらに、前記基準信号の位相を制御する位相制御手段を備えるようにすれば、マグネトロンの発振周波数及び位相が基準信号の周波数及び位相に高安定でロックしていることから、位相制御手段により基準信号の位相を可変することで、前記マグネトロンの発振出力位相を容易にかつ高精度に制御することが可能となる。
【0011】
前記基準信号のマグネトロンへの注入及びこのマグネトロンの発振出力の取り出しには、サーキュレータを用いることができる。
【0012】
また、本発明に係るマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置は、マグネトロンにアノード電流を供給して発振状態とすることで前記マグネトロンにマイクロ波を放射させるアノード電流源と、前記マグネトロンの固有発振周波数に近い周波数を持つ基準信号を生成する基準信号生成器と、この基準信号生成器から出力される基準信号を前記マグネトロンに注入して、前記マグネトロンの発振周波数を前記基準信号の周波数に引き込んで同期させる注入同期手段と、前記マグネトロンの発振出力と前記基準信号とを比較して両者の周波数及び位相誤差を求め、前記アノード電流源のアノード電流出力を制御して前記周波数及び位相誤差を補正するフィードバック制御手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
この構成は、マグネトロンを用いたマイクロ波発生装置に上記マグネトロン周波数/位相制御回路を適用したもので、これによって安定性に優れたマイクロ波を生成することが可能となる。
【0014】
さらに、前記基準信号の位相を制御する可変移相器を備えれば、この可変移相器により基準信号の位相を制御することで、前記マイクロ波出力を任意の位相に容易にかつ高精度に制御することができ、これによって例えばアクティブフェーズドアレイに用いることが可能となる。
【0015】
前記基準信号のマグネトロンへの注入及びこのマグネトロンから放射されるマイクロ波の取り出しには、サーキュレータを用いることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、マグネトロンを用いたマイクロ波発生装置に本発明に係るマグネトロン周波数/位相制御回路を適用した場合の構成を示すものである。図1において、符号11がマグネトロンで、このマグネトロン11のアノード(陽極)・カソード(陰極)間には、高圧直流安定化電源12により高圧直流電流(以下、アノード電流と称する)が流され、これによってマグネトロン11は発振状態に設定される。
【0018】
一方、基準信号発生器13は、マグネトロン11の固有発振周波数に近い周波数を持つ基準信号を発生するもので、ここで発生された基準信号は可変移相器14を介して分配器15に供給される。この分配器15は入力した基準信号を2系統に分配するもので、一方の系統の基準信号はサーキュレータ16に供給され、他方の系統の基準信号は混合器17に供給される。
【0019】
上記サーキュレータ16は、分配器15から供給される基準信号を第1端子から入力し、この入力基準信号を第2端子から出力してマグネトロン11に注入し、マグネトロン11から放射されるマイクロ波を第2端子から取り込んで第3端子から出力する。このサーキュレータ16から出力されるマイクロ波は方向性結合器18を介して外部出力され、例えばホーンアンテナ等の給電系へ送られる。
【0020】
上記方向性結合器18はマイクロ波出力の一部を分岐出力するもので、このマイクロ波分岐出力は減衰器19により減衰(例えば-30デシベル)されて上記混合器17に供給される。この混合器は、分配器15からの基準信号と減衰器19からのマイクロ波出力を入力して混合するもので、この混合器17の出力は、低域通過フィルタ(LPF)20により不要な高調波成分が除去され、基準信号とマイクロ波出力との周波数差/位相差相当の直流電圧信号に変換される。この直流電圧信号はアナログ/デジタル変換器(A/D)21によりデジタル信号に変換されて、アノード電流制御演算器22に供給される。
【0021】
上記アノード電流制御演算器22は、デジタル処理により、入力電圧信号から基準信号に対するマグネトロン発振出力の周波数/位相誤差を求め、その誤差を減少させるためのアノード電流制御信号を演算出力するもので、この制御信号はデジタル/アナログ変換器(D/A)23によりアナログ制御信号に変換されて高圧直流安定化電源12に供給される。高圧直流安定化電源12は、この制御信号に応じてマグネトロン11のアノード電流を増減し、その発振周波数を制御する。
【0022】
上記構成において、以下にその処理動作を説明する。
【0023】
まず、マグネトロン11は高圧直流安定化電源12によってアノード電流が流され、発振状態にあるとする。この状態で、基準信号発生器13で発生された、マグネトロン11の固有発振周波数に近い周波数を持つ基準信号をサーキュレータ16を介してマグネトロン11に注入する。この結果、マグネトロン11の発振周波数は基準信号の周波数に引き込まれていく。
【0024】
マグネトロン11から放射されるマイクロ波は、サーキュレータ16、方向性結合器18を介して外部出力される。このとき、サーキュレータ16の持つ特性により、マイクロ波出力が基準信号入力側に戻ることはない。
【0025】
次に、上記方向性結合器18で抽出されたマイクロ波出力を減衰器19により減衰した後、混合器20によって分配器15からの基準信号と比較する。アノード電流制御演算器22は、この比較結果からマイクロ波出力、すなわちマグネトロン11の発振周波数信号と基準信号との周波数誤差及び位相誤差を検出する。そして、マグネトロン11の発振周波数を基準信号に近づけるように、電源12を通じてマグネトロン11のアノード電流値を制御し、互いに周波数が一致し、位相が90°差となるまでアノード電流を変化させる。
【0026】
このように、マグネトロン11のアノード電流を、その発振周波数信号と基準信号との比較によるフィードバックループによって制御することで、マグネトロン11の発振周波数を基準信号に一致させ、位相を90°差にロックすることができる。この場合、アノード電流による周波数制御幅は、コイルを用いて電磁界を制御する場合に比して格段に広くとることができる。
【0027】
図2にアノード電流制御による周波数ロック過程におけるマグネトロン11の周波数スペクトルの時間変化を示す。この例では、マグネトロン11の固有発振周波数2.465GHzに対して基準信号の周波数を2.45GHzとしている。図2において、(a)が注入当初の周波数スペクトルを示しており、この周波数スペクトルは、以後(b)、(c)、(d)の順に変化していく。この図から、当初2波であったものが最終的に1波になり、マグネトロン11の出力周波数が基準信号の周波数に一致することがわかる。
【0028】
以上のように、フィードバックループは、マグネトロン11の発振周波数を基準信号に近づけるようにマグネトロン11のアノード電流値を変化させ、最終的に発振周波数を基準信号の周波数に一致させてロックする。この結果、基準信号の位相を可変移相器14で変化させると、マグネトロン11の発振周波数及び位相は基準信号の位相変化に追従する。したがって、可変移相器14で基準信号の位相を制御するだけで、マグネトロン11の発振周波数及び位相を容易に制御することができる。
【0029】
本実施形態のマイクロ波発生装置によれば、マグネトロン11から放射されるマイクロ波の位相を高安定な状態で制御可能であるため、アクティブフェーズドアレイに用いることが可能となる。すなわち、複数個のマイクロ波発生装置をアンテナ素子ごとに用意し、指定されたビーム指向方向の励振位相分布に合わせて各マイクロ波発生装置のマイクロ波位相を制御することで、電気的にビームの方向を制御することができる。
【0030】
また、図2の周波数スペクトル波形からわかるように、波形の綺麗な基準信号にマグネトロン11の発振周波数がロックするため、発振周波数スペクトルが改善され、マイクロ波出力の品質向上に寄与することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、マグネトロンの発振出力の位相を容易に安定化させ、制御可能とするマグネトロン周波数/位相制御回路を提供し、さらにこの制御回路を採用することで、マグネトロンを用いても位相安定度が高く、かつ任意の位相のマイクロ波を出力可能なマイクロ波発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るマグネトロンを用いたマイクロ波発生装置の一実施形態の構成を示すブロック回路図。
【図2】 同実施形態において、周波数ロック過程におけるマグネトロンの周波数スペクトラムの時間変化を示すスペクトラム波形図。
【符号の説明】
11…マグネトロン
12…高圧直流安定化電源
13…基準信号発生器
14…可変移相器
15…分配器
16…サーキュレータ
17…混合器
18…方向性結合器
19…減衰器
20…低域通過フィルタ(LPF)
21…アナログ/デジタル変換器(A/D)
22…アノード電流制御演算器
23…デジタル/アナログ変換器(D/A)
図面
【図1】
0
【図2】
1