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明細書 :ビピリジン修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド、及びそれを用いたメチルシトシンの検出法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5114705号 (P5114705)
公開番号 特開2008-125470 (P2008-125470A)
登録日 平成24年10月26日(2012.10.26)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
公開日 平成20年6月5日(2008.6.5)
発明の名称または考案の名称 ビピリジン修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド、及びそれを用いたメチルシトシンの検出法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C07H  19/20        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
C12N 15/00 F
C12M 1/00 A
C07H 19/20
請求項の数または発明の数 15
全頁数 30
出願番号 特願2006-316189 (P2006-316189)
出願日 平成18年11月22日(2006.11.22)
審査請求日 平成21年11月4日(2009.11.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】岡本 晃充
【氏名】田井中 一貴
【氏名】田中 一生
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100124431、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 順也
審査官 【審査官】松原 寛子
参考文献・文献 バイオ関連化学合同シンポジウム 講演要旨集,2006年 9月19日,p.316
バイオ関連化学合同シンポジウム 講演要旨集,2006年 9月19日,p.109
バイオ関連化学合同シンポジウム 講演要旨集,2006年 9月19日,p.112
調査した分野 C12N 15/00
C12Q 1/68
C07H 19/20
C12M 1/00
CA/REGISTRY(STN)
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド。
【化1】
JP0005114705B2_000020t.gif
[式(1)中、nは0~3の整数を示し、
1は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4'-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基
【化2】
JP0005114705B2_000021t.gif
[式(2)中、X1は、O、NH、CH2、又はSを示し、一般式(2)の基は、aの側が一般式(1)中の五単糖に結合する部位であり、bの側がリンカーと結合する部位である。]を示す。]
【請求項2】
前記リンカーが、以下のいずれかの構造である、請求項1に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2- [m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す]
-(O-CH2-CH2)l-O- [lは1~100の整数を示す]
-(CH2)k- [kは1~20の整数を示す]
【請求項3】
Zが、メチル基で置換されている4,4'-ビピリジン基が、-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2-(m1及びm2は請求項2で定義されるものと同じ)をリンカーとして介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基である、請求項1に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
【請求項4】
以下の一般式(1-a)で表される化合物である、請求項1に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
【化3】
JP0005114705B2_000022t.gif
[式中、m1及びm2は、請求項2で定義されるものと同じ。]
【請求項5】
DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出する方法であって、
検出目的とするシトシン又はメチルシトシンが、バルジ構造又はミスマッチを形成するように、DNA試料と、下記一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含むガイドプローブとをハイブリダイズさせる第1工程、
【化4】
JP0005114705B2_000023t.gif
[式中、R1及びZは請求項1で定義されるものと同じ。]
第1工程で得られたハイブリダイズ産物に対して、オスミウム酸塩を作用させることにより、バルジ構造又はミスマッチを形成したメチルシトシンと、ガイドプローブに挿入されている一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基中の4,4'-ビピリジン基とをクロスリンクさせる第2工程、及び
前記ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンクの有無を検出する第3工程
を含むことを特徴とする、メチルシトシン検出方法。
【請求項6】
前記ガイドプローブが、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンとミスマッチを形成してDNA試料とハイブリダイズするものであり、該ガイドプローブにおいて、一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基が、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンに対して対合してミスマッチする部位に含まれている、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
前記ガイドプローブが、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンがバルジ構造を形成してDNA試料とハイブリダイズするものであり、該ガイドプローブにおいて、一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基が、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンに隣接する塩基に対して対合する部位に含まれている、請求項5に記載の検出方法。
【請求項8】
一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基が、以下の一般式(1-1-a)で表されるヌクレオチド残基である、請求項5乃至7のいずれかに記載の検出方法。
【化5】
JP0005114705B2_000024t.gif
[式中、m1及びm2は、請求項2で定義されるものと同じ。]
【請求項9】
ガイドプローブが20~100塩基の長さである、請求項5乃至8のいずれかに記載の検出方法。
【請求項10】
ガイドプローブが固相担体に結合されたものである、請求項5乃至9のいずれかに記載の検出方法。
【請求項11】
DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出するためのプローブであって、以下の特性を具備している核酸からなるメチルシトシン検出用プローブ:
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合する塩基はミスマッチする、及び
(3)一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含んでいる。
【化6】
JP0005114705B2_000025t.gif
[式中、R1及びZは請求項1で定義されるものと同じ。]
【請求項12】
DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出するためのプローブであって、以下の特性を具備している核酸からなるメチルシトシン検出用プローブ:
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合するヌクレオチドを欠失している、及び
(3)一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基を含んでいる。
【化7】
JP0005114705B2_000026t.gif
[式中、R1及びZは請求項1で定義されるものと同じ。]
【請求項13】
請求項11又は12に記載のプローブと、オスミウム酸塩とを備えるメチルシトシン検出用キット。
【請求項14】
請求項11又は12に記載のプローブの1種以上が、基体上に固定された核酸チップ。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸チップと、チップ上の発色パターンを検出できる装置とを備えるメチルシトシン検出用装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ビピリジン修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドに関する。また、本発明は、ビピリジン修飾ヌクレオチドを用いて、DNA試料中の目的塩基がシトシンであるかメチルシトシンであるかを判定するメチルシトシン検出方法に関する。更に、本発明は、当該メチルシトシン検出方法に用いるプローブ、キット、核酸チップ、及びメチルシトシン検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エピジェネティクスは、ゲノムを生理的に修飾するDNAメチル化、DNAとタンパク質との複合体であるクロマチン、クロマチンを構成する多くのタンパク質の翻訳後修飾から成立しており、統合的に遺伝子発現を制御している。
【0003】
クロマチン中のヒストンの修飾については、転写誘導の際に、ヒストン修飾によるクロマチン構造変換が重要な役割を果たす。例えば、ヒストンアセチル化酵素によるアセチル化が引き金となって、クロマチンのリモデリングが誘導され、基本転写因子とRNAポリメラーゼによる転写が開始する。また、ヒストンのメチル化やリン酸化は、転写の制御、サイレンシング、クロマチン凝縮などを引き起こす。
【0004】
また、多くの真核生物ではゲノム中のCpGジヌクレオチドの60~90%が、シトシン5位炭素原子のメチル化を受けている。メチル化CpGは反復配列を多く含むヘテロクロマチンやトランスポゾンに見られており、ウィルスやトランスポゾンの活性化を抑えていると考えられる。また、CpGのメチル化とヒストン修飾とは、相互に協調している。
【0005】
例外的に、多くの遺伝子のプロモーター領域にあるCGリッチな領域(CpGアイランド)ではメチル化を受けていない。さらにその例外として、インプリンティングされる遺伝子、女性の不活化X染色体ではCpGアイランドがメチル化されている。また、がん細胞におけるがん抑制遺伝子のプロモーター領域でもCpGアイランドがメチル化されている。従って、シトシンのメチル化は、癌の発生、再発、転移のマーカーとして使用することができ、遺伝子中のシトシンがメチル化されているか否かの簡単な検出方法が求められている。
【0006】
特許文献1,2は、DNA試料を重亜硫酸塩で処理してメチル化されていないシトシンをウラシルに変化させ、次いで、ウラシルよりメチル化シトシンを優先的に増幅するプライマーを用いてPCRを行い、増幅の有無を検出することによりシトシンがメチル化されていたか否かを判定する方法を教えている。しかし、この方法は、メチルシトシンではなく大多数を占めるシトシンを変化させるため、全てのシトシンの変換効率が判定結果に影響を与え、その分判定精度が低くなる。
【0007】
また、特許文献3は、5-メチルシトシンと特異的に結合する抗体を1本鎖DNAと接触させ、DNA鎖に結合した抗体量を測定することにより、DNAメチル化率を決定する方法を教えている。しかし、この方法は、抗体の作成や、DNA試料のPCRによる増幅などを行う必要があり、手間がかかる。
【0008】
また、非特許文献1は、2本鎖DNA試料を過マンガン酸カリウム及びヒドロキシルアミンで酸化し、次いでピペリジン処理することにより、2本鎖DNAにミスマッチが存在するか否かを検出できることを教えている。この方法はヒドロキシルアミンが必須である(図2、3参照)。しかし、この方法はミスマッチの存在を検出できるだけであり、DNA試料中のシトシンとメチルシトシンとを区別することはできない。
【0009】
また、非特許文献2は、メチルシトシン又はシトシンに特異的な反応を誘導し、その反応の有無を検出することにより、DNA試料中の目的塩基がシトシンであるかメチルシトシンであるかを判定する方法を開示している。そして、非特許文献2では、DNA試料中のメチルシトシン又はシトシンに対する特異的な反応に関しては、目的塩基を有するヌクレオチドを除きそれに隣接する両側の領域と相補的なガイドプローブ(バルジ形成プローブ)又は目的塩基と対応する塩基とだけがミスマッチしているガイドプローブ(ミスマッチ形成プローブ)を使用する方法を教示している。具体的には、非特許文献2は、バルジ形成プローブ又はミスマッチ形成プローブとDNA試料とをハイブリダイズさせることにより、目的塩基を有するヌクレオチドのみが二重らせんから外部に飛び出したバルジ構造又は目的塩基を有するヌクレオチドを含む塩基対が二重らせん中で緩んだ構造を形成させることができ、これによって、目的塩基に対して特異的ば反応を引き起こすことが可能になることを教示している。しかしながら、非特許文献2の方法では、目的塩基以外にメチルシトシンが存在している場合に、それが誤検出される畏れがある。そのため、非特許文献2の方法において誤検出を抑制するためには、エキソヌクレアーゼ等を用いてハイブリダイズ産物の1本鎖部分を除去する処理が不可欠であった。このような理由から、非特許文献2の方法では、操作の簡便化、測定時間の短縮化等の点で更に改善が望まれている。
【0010】
このような従来技術を背景として、更に簡便で高精度に、チルシトシンとシトシンとを区別する方法を確立して、より有用性が高く実用的なメチルシトシンの検出方法を提供することが望まれていた。

【特許文献1】特表2004-527241号公報
【特許文献2】特表2004-500892号公報
【特許文献3】特表2004-347508号
【非特許文献1】Chinh Bui et al., “Chemical cleavage reactions of DNA on solid support: application in mutation detection”, BMC Chemical Biology,2003,Vol.3
【非特許文献2】Akimitsu Okamoto et al., “Sequence-selective osmium oxidation of DNA: ef.cient distinction between 5-methylcytosine and cytosine”, Organic & Biomolecular Chemistry., 2006, 4, 1638-1640
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、DNA試料中の目的塩基がシトシンであるかメチルシトシンであるかを判定するために好適に使用される新規なビピリジン修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを提供することである。更に、本発明は、簡便で高精度にDNA試料中の目的塩基がシトシンであるかメチルシトシンであるかを判定するメチルシトシン検出方法、それに使用されるプローブ、キット、核酸チップ、及びメチルシトシン検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行ったところ、ビピリジン基で修飾させたヌクレオチドが含まれているバルジ形成プローブ又はミスマッチ形性プローブによれば、これらのプローブがDNA試料とハイブリダイズした状態では、当該ビピリジン基が作用可能な目的塩基が制限されるため、当該ビピリジン基と反応対象なるメチルシトシンの選択性を高めることができることを見出した。即ち、本発明者らは、新規なビピリジン修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド、及びDNA試料中の目的塩基がメチルシトシンであるかシトシンであるか判定する方法に関して、以下の知見を得た。
【0013】
(i) 下記一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドは、その4,4'-ビピリジン基が、オスミウム酸を介してメチルシトシンと選択的に結合できる。
【0014】
【化1】
JP0005114705B2_000002t.gif

【0015】
[式(1)中、nは0~3の整数を示し、
1は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4'-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している核酸塩基を示す。]
【0016】
(ii) 以下の(a)のガイドプローブ(ミスマッチ形成プローブ)を使用してDNA試料とハイブリダイズさせることにより、目的塩基を有するヌクレオチドを含む塩基対が二重らせん中で緩んだ構造をとり、DNA試料中のその他のヌクレオチドは二重らせん構造中に埋没するため、目的塩基にのみ反応を引き起こすことができる構造になる。
(a)ガイドプローブ
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合する塩基はミスマッチする、及び
(3)下記一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基を含んでいる。
【0017】
【化2】
JP0005114705B2_000003t.gif

【0018】
(iii) 更に、以下の(b)のガイドプローブ(バルジ形成プローブ)を使用してDNA試料とハイブリダイズさせることにより、目的塩基を有するヌクレオチドのみ二重らせんから外部に飛び出したバルジ構造を形成し、DNA試料中のその他のヌクレオチドは二重らせん構造中に埋没するため、目的塩基にのみ反応を引き起こすことができる構造になる。
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合するヌクレオチドを欠失している、及び
(3)上記一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基を含んでいる。
【0019】
(iv) 上記(ii)又は(iii)のようにDNA試料とガイドプローブとをハイブリダイズさせて、目的塩基にのみ反応を引き起こすことができる構造にした後に、オスミウム酸塩を作用させることにより、目的塩基がメチルシトシンであるか、シトシンであるかによって異なる反応物が生じる。即ち、目的塩基がメチルシトシンであれば、当該メチルシトシンと、ガイドプローブに挿入されている一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基中の4,4'-ビピリジン基とが、オスミウム酸を介して結合して、DNA試料とガイドプローブとの間にクロスリンクが形成される。一方、目的塩基がシトシンであれば、DNA試料とガイドプローブとの間にはクロスリンクが形成さない。
【0020】
(v) 従って、上記(iv)のようにオスミウム酸塩を作用させた後に、DNA試料とガイドプローブとの間のクロスリンクの形成の有無を検出することにより、問題となる塩基がシトシンであるかメチルシトシンであるかを判定することができる。
【0021】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の新規なビピリジン修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド、メチルシトシン検出方法等を提供する。
項1. 一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド。
【0022】
【化3】
JP0005114705B2_000004t.gif

【0023】
[式(1)中、nは0~3の整数を示し、
1は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4'-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している核酸塩基を示す。]
項2. 前記核酸塩基が、プリン塩基、7-デアザプリン塩基、又はピリミジン塩基である、項1に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
項3. 前記リンカーが、以下のいずれかの構造である、項1又は2に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
【0024】
-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2- [m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す]
-(O-CH2-CH2)l-O- [lは1~100の整数を示す]
-(CH2)k- [kは1~20の整数を示す]
項4. Zが、メチル基で置換されている4,4'-ビピリジン基が、-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2-(m1及びm2は前記と同じ)をリンカーとして介して結合しているプリン塩基である、項1に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
項5. 以下の一般式(1-a)で表される化合物である、項1に記載のヌクレオシド又はヌクレオチド。
【0025】
【化4】
JP0005114705B2_000005t.gif

【0026】
[式中、m1及びm2は、前記と同じ。]
項6. DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出する方法であって、
検出目的とするシトシン又はメチルシトシンが、バルジ構造又はミスマッチを形成するように、DNA試料と、下記一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含むガイドプローブとをハイブリダイズさせる第1工程、
【0027】
【化5】
JP0005114705B2_000006t.gif

【0028】
[式中、R1及びZは前記と同じ。]
第1工程で得られたハイブリダイズ産物に対して、オスミウム酸塩を作用させることにより、バルジ構造又はミスマッチを形成したメチルシトシンと、ガイドプローブに挿入されている一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基中の4,4'-ビピリジン基とをクロスリンクさせる第2工程、及び
前記ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンクの有無を検出する第3工程
を含むことを特徴とする、メチルシトシン検出方法。
項7. 前記ガイドプローブが、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンとミスマッチを形成してDNA試料とハイブリダイズするものであり、該ガイドプローブにおいて、一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基が、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンに対して対合してミスマッチする部位に含まれている、項6に記載の検出方法。
項8. 前記ガイドプローブが、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンがバルジ構造を形成してDNA試料とハイブリダイズするものであり、該ガイドプローブにおいて、一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基が、検出目的とするシトシン又はメチルシトシンに隣接する塩基に対して対合する部位に含まれている、項6に記載の検出方法。
項9. 一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基が、以下の一般式(1-1-a)で表されるヌクレオチド残基である、項6乃至8のいずれかに記載の検出方法。
【0029】
【化6】
JP0005114705B2_000007t.gif

【0030】
[式中、m1及びm2は、前記と同じ。]
項10. ガイドプローブが20~100塩基の長さである、項6乃至9のいずれかに記載の検出方法。
項11. ガイドプローブが固相担体に結合されたものである、項6乃至10のいずれかに記載の検出方法。
項12. DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出するためのプローブであって、以下の特性を具備している核酸からなるメチルシトシン検出用プローブ:
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合する塩基はミスマッチする、及び
(3)一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含んでいる。
【0031】
【化7】
JP0005114705B2_000008t.gif

【0032】
[式中、R1及びZは前記と同じ。]
項13. DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出するためのプローブであって、以下の特性を具備している核酸からなるメチルシトシン検出用プローブ:
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合するヌクレオチドを欠失している、及び
(3)一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基を含んでいる。
【0033】
【化8】
JP0005114705B2_000009t.gif

【0034】
[式中、R1及びZは前記と同じ。]
項14. 項12又は13に記載のプローブとDNA試料とのハイブリダイズ産物。
項15. 項12又は13に記載のプローブと、オスミウム酸塩とを備えるメチルシトシン検出用キット。
項16. 項12又は13に記載のプローブの1種以上が、基体上に固定された核酸チップ。
項17. 項16に記載の核酸チップと、チップ上の発色パターンを検出できる装置とを備えるメチルシトシン検出用装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド
本発明は、一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドを提供する。
【0036】
【化9】
JP0005114705B2_000010t.gif

【0037】
式(1)中、nは0~3の整数を示す。nが0の場合は、当該化合物はヌクレオシドに相当し、nが1~3の整数の場合は、当該化合物はヌクレオチドに相当する。
【0038】
また、式(1)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す。ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示される。式(1)中、R1として、好ましくは水素原子である。
【0039】
また、式(1)中、Zは、置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基がリンカーを介して結合している核酸塩基を示す。
【0040】
ここで、核酸塩基としては、具体的には、プリン塩基、7-デアザプリン塩基、及びピリミジン塩基が挙げられる。これらの中でも、好ましくはプリン塩基が挙げられる。
【0041】
上記核酸塩基がプリン塩基である場合には、当該プリン塩基としては、具体的には、下記一般式(2)の基が例示される。
【0042】
【化10】
JP0005114705B2_000011t.gif

【0043】
式(2)中、X1は、O、NH、CH2、又はSを示し、好ましくはNHである。また、一般式(2)の基は、aの側が一般式(1)中の五単糖に結合する部位であり、bの側がリンカーと結合する部位である。
【0044】
また、上記核酸塩基が7-デアザプリン塩基である場合には、当該7-デアザプリン塩基としては、具体的には、下記一般式(3)の基が例示される。
【0045】
【化11】
JP0005114705B2_000012t.gif

【0046】
式(3)中、X2は、X1と同様である。また、一般式(3)の基は、aの側が一般式(1)中の五単糖に結合する部位であり、bの側がリンカーと結合する部位である。
【0047】
更に、上記核酸塩基がピリミジン塩基である場合には、当該ピリミジン塩基としては、具体的には、下記一般式(4)又は(4’)の基が例示される。
【0048】
【化12】
JP0005114705B2_000013t.gif

【0049】
式(4)及び(4')中、X3は、X1と同様である。また、一般式(3)の基は、aの側が一般式(1)中の五単糖に結合する部位であり、bの側がリンカーと結合する部位である。
【0050】
式(1)中のZにおいて、置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基と核酸塩基とを連結させるリンカーとしては、特に制限されるものではないが、具体例として、下記の構造のリンカーが挙げられる。
【0051】
-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2- [m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数、好ましくは1~5の整数を示す]
-(O-CH2-CH2)l-O- [lは1~100の整数、好ましくは1~10の整数を示す]
-(CH2)k- [kは1~20の整数、好ましくは1~10の整数を示す]
これらのリンカーの中でも、好ましくは-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2-が挙げられる。当該リンカーは、特に限定されないが、左側の結合部位に核酸塩基が結合し、右側の結合部位に置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基が結合するように構成されていることが望ましい。
【0052】
また、式(1)中のZにおいて、置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基とは、具体的には、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4'-ビピリジン基である。
【0053】
ここで、炭素数1~10のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が例示される。炭素数1~10のアルキル基として、好ましくは炭素数1~5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
【0054】
当該置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基として、具体的には、下記一般式(5)又は(5’)の基が例示される。
【0055】
【化13】
JP0005114705B2_000014t.gif

【0056】
式(5)及び(5')中、R11~R17及びR21~R22は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、又はカルバモイル基を示す。式(5)及び(5')の基において、cの側が前記リンカーと結合する部位である。
【0057】
式(1)中のZにおいて、置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基として、好ましくは、一般式(5)の基である。一般式(5)の基の中でも、R11~R16が水素原子であり、R17が炭素数1~10のアルキル基(好ましくはメチル基)であるもの場合には、オスミウム酸塩に対する反応特性が高くなり、好適である。
【0058】
式(1)中のZの好適な一例として、1つのメチル基で置換されている4,4'-ビピリジン基が、-(CH2)m1-NH-CO-(CH2)m2-(m1及びm2は前記と同じ)をリンカーとして介して結合しているプリン塩基が挙げられる。より好適なZの具体例として、下記の一般式(Za)で表される基が例示される。
【0059】
【化14】
JP0005114705B2_000015t.gif

【0060】
式(Za)中、m1及びm2は、前記と同じ。
【0061】
本発明の一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドは、当該技術分野の専門家であれば、化学合成により容易に製造できる。一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドの合成方法として、具体的には、下記一般式(11)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドと、前述する構造を有する置換又は未置換の4,4'-ビピリジンとを、前述するリンカーにより連結させる方法が例示される。
【0062】
【化15】
JP0005114705B2_000016t.gif

【0063】
式(11)中、R1は前記と同じであり、Z'は核酸塩基を示す。
【0064】
一般式(11)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド、及び前述する構造を有する置換又は未置換の4,4'-ビピリジンは、公知化合物又は公知化合物から容易に誘導される化合物である。また、一般式(11)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドと、前述する構造を有する置換又は未置換の4,4'-ビピリジンとを、前述するリンカーにより連結させるには、使用するリンカーの種類に応じて、適宜反応条件を設定すればよい。このようなリンカーによる連結条件についても、当該技術分野の専門家であれば容易に設定できる事項である。
【0065】
本発明の一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドにおいて、置換又は未置換の4,4'-ビピリジンが、オスミウム酸塩を介して、メチルシトシンと選択的に結合できる。従って、当該一般式(1)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチドは、例えば、後述するように、DNA試料中の目的塩基がシトシンであるかメチルシトシンであるかを判定するために用いられるプローブの構成ヌクレオチドとして有用である。
【0066】
一般式(1)で表されるヌクレオチドを含むプローブ等のポリヌクレオチドは、当該ヌクレオチド及び他のヌクレオチドを原料として用いて、所定の塩基配列となるように制御しながら、公知のDNA合成法に従って調製できる。
【0067】
(II)メチルシトシン検出方法
本発明のメチルシトシン検出方法は、DNA試料中のシトシンのメチル化の有無を検出、即ち、DNA試料中の目的とする塩基がシトシンであるか、又はメチルシトシンであるかを検出するための方法である。
【0068】
本発明のメチルシトシン検出方法において、シトシンのメチル化の有無の検出対象となるDNA試料は、その由来等については特に制限されるものではない。当該DNA試料としては、例えば、血液、尿、痰、精液、髪、皮膚などの生体サンプルそのものであってもよく、生体サンプルから単離されたものであってもよいが、単離されたDNAを用いることが好ましい。
【0069】
本発明のメチルシトシン検出方法は、下記の第1工程~第3工程を含むことを特徴とする。
【0070】
検出目的とするシトシン又はメチルシトシンが、バルジ構造又はミスマッチを形成するように、DNA試料と、上記一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基を含むガイドプローブとをハイブリダイズさせる第1工程、
前記第1工程で得られたハイブリダイズ産物に対して、オスミウム酸塩を作用させることにより、バルジ構造又はミスマッチを形成したメチルシトシンと、ガイドプローブに挿入されている一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基中の4,4'-ビピリジン基とをクロスリンクさせる第2工程、及び
前記ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンクの有無を検出する第3工程。
【0071】
以下、本発明のメチルシトシン検出方法について、工程毎に分説する。
第1工程
DNA試料中の検出対象塩基に特異的な反応を誘導するためには、反応に使用される薬剤が検出対塩基に接近する必要があるが、通常各ヌクレオチドは2本鎖DNAのらせん構造中に埋没していて、上記薬剤が接近できない。
【0072】
従って、本発明の方法における第1工程では、DNA試料中の検出目的とするシトシン又はメチルシトシン(以下、「目的塩基」と表記することもある)が、バルジ構造又はミスマッチを形成するように、DNA試料と、上記一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含むガイドプローブとをハイブリダイズさせる。
【0073】
ここで、「目的塩基のバルジ構造」とは、DNA試料とプローブとで形成される2本鎖核酸において、塩基対を形成せずに2本鎖から外部に飛び出した、目的塩基(シトシン又はメチルシトシン)を含むヌクレオチドからなる膨らみをいう。
【0074】
このようにDNA試料中の目的塩基に対してバルジ構造又はミスマッチを形成させることにより、当該目的塩基に対する特異的な反応を引き起こすことが可能になる。
【0075】
本発明において、目的塩基とバルジ構造を形成させるガイドプローブ(バルジ生成プローブ)としては、以下の特徴を有するものが使用される:
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合(ペアリング)するヌクレオチドを欠失している、即ち、
(3)一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含んでいる。
【0076】
バルジ生成プローブにおいて、一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基の挿入位置については、オスミウム酸を介してバルジ構造を形成した目的塩基と結合できる位置にある限り、特に制限されるものではないが、好ましくは、DNA試料の目的塩基に隣接する塩基に対して対合(ペアリング)する位置が例示される。
【0077】
また、より好適なバルジ生成プローブとしては、目的塩基と対合するヌクレオチドを欠失していること、及び一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基を含むこと以外は、DNA試料の塩基配列に対して完全相補的であるものが挙げられる。このようなバルジ生成プローブを使用することで、メチルシトシンの誤検出を一層効果的に抑制することができる。
【0078】
また、本発明において、目的塩基とミスマッチを形成させるガイドプローブ(ミスマッチ生成プローブ)としては、以下の特徴を有するものが使用される:
(1)DNA試料とハイブリダイズできる、
(2)DNA試料の検出目的とするシトシン又はメチルシトシンと対合(ペアリング)する塩基はミスマッチする、及び
(3)一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基を含んでいる。
【0079】
ミスマッチ生成プローブにおいて、一般式(1-1)で表されるヌクレオチドの残基の挿入位置については、オスミウム酸を介してミスマッチした目的塩基と結合できる位置にある限り、特に制限されるものではないが、好ましくは、DNA試料の目的塩基に対して対合(ペアリング)する位置が例示される。
【0080】
要理好適なミスマッチ生成プローブとしては、目的塩基とミスマッチして対合するヌクレオチドが一般式(1-1)で表されるヌクレオチドであり、その他のヌクレオチドは、DNA試料に対して完全相補的であるものが挙げられる。このようなミスマッチ生成プローブを使用することで、メチルシトシンの誤検出を一層効果的に抑制することができる。
【0081】
ガイドプローブの好適な長さは各方法で異なっており、通常、20~100塩基程度が好ましく、20~50塩基程度がより好ましい。この程度の長さであれば、安定に2本鎖を形成できるとともに、DNA自動合成機で合成することができる。
【0082】
また、ガイドプローブを、どの位置にバルジ又はミスマッチを形成するように設計するかは特に限定されない。好ましくは、目的塩基のバルジ又はミスマッチを2本鎖の中央付近に形成できるように設計すればよい。
【0083】
ガイドプローブは、上記領域とハイブリダイズできるようにそれに相補的なものであればよく、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、修飾核酸などのいずれであってもよい。DNA試料として細胞抽出液のようにヌクレアーゼを含むものを用いる場合は、ガイドプローブを修飾核酸プローブとすることによりヌクレアーゼによる分解を受け難くなる。修飾核酸としては、ホスホロチオエート修飾核酸、モルホリノ修飾核酸、2'-O-アルキル核酸、2'-N-アルキル核酸、2'-S-アルキル核酸、2'-ハロゲン核酸などが挙げられる。また、ハイブリダイゼーションを安定化するため、プローブの配列中に2-アミノアデニン、5-アルキニルウリジンのような修飾塩基を有するヌクレオチドを配したり、プローブの末端又は内部をアミン、ポリアミン等で修飾したり、プローブの末端にジデオキシヌクレオチドを付加したりすることもできる。
【0084】
また、ガイドプローブは、ビーズ状又は平板状の担体に固定されていることが好ましく、これにより、プローブに結合したDNA試料に対して順次異なる処理を行ったり、処理間にDNA試料を洗浄することができる。また、プローブの再利用が可能となる。このような担体材料として、例えば、ポリスチレン、金、ガラス、磁性を持つ酸化鉄微粒子、量子ドット性を持つ硫化亜鉛微粒子などが挙げられる。
【0085】
本第1工程において、ハイブリダイゼーションの条件は特に限定されない。DNA試料の種類、ガイドプローブの長さなどによって異なるが、例えば、pH7のリン酸ナトリウム緩衝液等のハイブリダイゼーション溶液を用いて室温~100℃程度で5分間~1時間程度処理した後、pH7のリン酸ナトリウム緩衝液等を用いて5~25℃程度で1~5分間程度洗浄する条件が挙げられる。
【0086】
第2工程
本第2工程では、第1工程で形成させたバルジ構造又はミスマッチを形成させた目的塩基に対して選択的な反応を誘導する。具体的には、本第2工程では、前記第1工程で得られたハイブリダイズ産物に対して、オスミウム酸塩を作用させることにより、バルジ構造又はミスマッチを形成したメチルシトシンと、ガイドプローブに挿入されている一般式(1-1)で表されるヌクレオチド残基中の置換又は未置換の4,4'-ビピリジン基とをクロスリンクさせる。
【0087】
本第2工程で使用されるオスミウム酸としては、具体的にはオスミウム酸カリウム等が例示される。
【0088】
また、本第2工程において、メチルシトシンと4,4'-ビピリジン基とのクロスリンクを形成させるには、例えば、オスミウム酸塩を0.1~1000mM程度、好ましくは1~100mM程度の存在下で、0~40℃程度で30秒~1時間程度処理すればよい。かかる処理は、pH6~7程度のpH条件下で実施することが望ましい。更に、かかる処理では、フェリシアン化カリウムやメチルモルホリンオキシド等の酸化活性化剤を、0.1~100mM程度、好ましくは0.1~50mM程度添加して実施することにより、前記クロスリンクの形成速度を高めることができる。
【0089】
本第2工程では、目的塩基がメチルシトシンである場合には、DNA試料中の目的塩基であるメチルシトシンとガイドプローブ中のビピリジン基がオスミウム酸を介して結合し、下記に示す構造のクロスリンクが形成される。
【0090】
【化16】
JP0005114705B2_000017t.gif

【0091】
[上記クロスリンク構造において、xにはDNA試料中の目的塩基であるメチルシトシン部分、yにはオスミウム酸部分、zにはガイドプローブのビピリジン基部分を示す。尚、上記クロスリンク構造において、ビピリジン基部分は、置換基が無いものを例として記している。]
一方、本第2工程では、目的塩基がシトシンである場合には、前述するようなクロスリンクが形成されない。
【0092】
なお、第2工程は、前記第1工程と同時に実施してもよい。即ち、ガイドプローブ、DNA試料、オスミウム酸塩、及び必要に応じて酸化活性化剤を同時に混合し、所定の条件で反応させることにより、第1工程及び第2工程を同時に実施することもできる。
【0093】
第3工程
本第3工程では、前記ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンクの有無を検出する。ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンクが検出されると、目的塩基がメチルシトシンであると判定される。一方、ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンク構造が検出されなければ、目的塩基がシトシンであると判定される。
【0094】
本第3工程では、ガイドプローブとDNA試料とのクロスリンクを検出可能である限り、その具体的検出方法については特に限定されない。
【0095】
当該クロスリンク構造の検出方法の一例として、当該クロスリンク部分を標識物質で標識した後に、該標識物質を検出する方法が例示される。ここで、標識物質による標識としては、酵素標識、蛍光標識、電気化学的標識、放射標識等が挙げられる。また、標識物質の検出は、標識物質の種類に応じた公知の方法で実施される。
【0096】
その他に、クロスリンク構造の検出方法としては、DNA試料の質量分析又はゲル電気泳動による分子量測定が例示される。詳述すれば、以下の通りである。ガイドプローブとDNA試料とがクロスリンクしていれば、ハイブリダイズできない条件下でも、両者が結合した状態で存在する。一方、ガイドプローブとDNA試料とがクロスリンクしていなければ、ハイブリダイズできない条件下では、両者は分離して存在する。従って、ハイブリダイズできない条件下で、DNA試料の質量分析又はゲル電気泳動を行い、DNA試料の重量又は分子量が増加していれば、ガイドプローブと被験DNAとがクロスリンクしており、DNA試料の重量又は分子量に変動がなければ、ガイドプローブとDNA試料はクロスリンクしていないと判定される。
【0097】
更に、他のクロスリンク構造の検出方法としては、前記ガイドプローブとDNA試料のハイブリダイズ産物の熱安定性を測定する方法が例示される。詳述すれば、ハイブリダイズ産物の融点は、クロスリンクが形成されている場合には、クロスリンクが形成されていない場合に比して上昇している。従って、前記ガイドプローブとDNA試料のハイブリダイズ産物の融点を測定することによっても、クロスリンクの形成の有無を判定できる。また、ハイブリダイズ産物の熱安定性は、クロスリンクが形成されている場合に向上しているので、上記の他に、熱安定性を測定する方法として、次のような方法を採用できる:
(1)まず、ガイドプローブとDNA試料のハイブリダイズ産物において、DNA試料の領域であってガイドプローブとハイブリダイズしていない領域ができるように、前記ガイドプローブを設計しておく。即ち、ガイドプローブの塩基数をDNA試料の塩基数よりも少なくなるように設定しておく。
(2) 前記第2工程後のガイドプローブとDNA試料のハイブリダイズ産物を、クロスリンクが形成されている場合にはハイブリダイズ産物が安定であるが、クロスリンクが形成されていない場合にはハイブリダイズ産物が不安定になって二本鎖構造が損なわれる条件下で処理した後に洗浄する。このような条件の一例として、95℃で10分間煮沸処理する条件が例示される。このような処理を行うことによって、クロスリンクが形成されているハイブリダイズ産物は、二本鎖構造を保持させた状態できるのに対して、クロスリンクが形成されていないハイブリダイズ産物は二本鎖構造を喪失し、ガイドプローブのみになる。
(3)別途、DNA試料において、ガイドプローブとハイブリダイズしていない領域に対して、ハイブリダイズでき、且つ標識物質が結合しているクロスリンク検出用プローブを準備しておく。このクロスリンク検出用プローブを、前記(2)の工程の処理物に対して作用させることにより、DNA試料中のガイドプローブとハイブリダイズしていない領域とハイブリダイズさせる。
クロスリンクが形成されていないハイブリダイズ産物は、前記(2)の工程によってガイドプローブのみになっているので、クロスリンク検出用プローブがハイブリダイズできない。これに対して、クロスリンクが形成されているハイブリダイズ産物は、前記(2)の工程によっても二本鎖構造が維持されているので、クロスリンク検出用プローブがDNA試料の所定の領域に対してハイブリダイズできる。
(4)前記工程(3)の後に、標識物質の有無を検出する。標識物質が検出されるとハイブリダイズ産物においてクロスリンクが形成されていると判定でき、また標識物質が検出されなければ、ハイブリダイズ産物においてクロスリンクが形成されていないと判定できる。
【0098】
(III)メチルシトシン検出用キット
本発明のメチルシトシン検出用キットは、上記メチルシトシン検出方法を実施するためのキットであり、上記ガイドプローブと、オスミウム酸塩とを備える。本メチルシトシン検出用キットは、更に酸化活性化剤を含んでいてもよい。また、本メチルシトシン検出用キットは、上記ガイドプローブとDNA試料との間で形成されたクロスリンクを検出するための試薬を備えるものであってもよい。
【0099】
(IV)メチルシトシン検出用核酸チップ
基体上に、1種以上のガイドプローブが固定された核酸チップを用いれば、様々な遺伝子について様々な位置のシトシンのメチル化の有無を、一度に検出することができる。
【0100】
プローブは、上記説明したガイドプローブであるが、複数の目的塩基を判定できるように互いに異なるプローブを用いればよい。
【0101】
この核酸チップの基体の材料は特に限定されず、例えばガラス、シリカ、金などの公知の材料を用いることができる。基体上へのプローブのスポット径は例えば50~200μm程度とすることができ、スポットピッチは例えば100~500μm程度とすることができる。
【0102】
この核酸チップ上のプローブ群に対して、上記説明した本発明方法の各操作を行えばよい。
【0103】
(V)メチルシトシン検出装置
本発明のメチルシトシン検出装置は、上記説明した核酸チップと、チップ上の発色パターンを検出できる装置とを備える装置である。発色パターンの検出装置としては、蛍光、吸収、蛍光偏光、蛍光寿命などを測定できるマイクロプレートリーダー、マイクロチップリーダー、蛍光顕微鏡、蛍光イメージャーなどが挙げられる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0105】
製造例1
以下に示す工程に従って、4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンヌクレオシドのホスホロアミダイト化合物を合成した。具体的な合成方法は以下の通りである。
【0106】
【化17】
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【0107】
N-(2-アミノエチル)-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4-イル)ヘキサンアミド(以下、化合物1と表記する)の合成
(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4-イル)ヘキサン酸(568mg、2.0mmol)とPyBOP(Benzotriazole-1-yl-oxy-trispyrrolidinophosphonium hexafluorophosphate)(1.14g、2.2mmol)とをDMF(ジメチルホルムアミド)(10ml)中に添加し、室温で30分間撹拌を行った。次いで、この溶液に、1,2-ジアミノエタン(222μL、2.2mmol)を添加し、その混合物を室温で2時間撹拌した。得られた溶液は減圧濃縮し、クロロホルムで希釈した。有機相を1Nの水酸化ナトリウムでの洗浄、塩化ナトリウム溶液での洗浄、及び乾燥剤(硫酸マグネシウム)による乾燥処理に供し、更に減圧濃縮して、褐色オイル状の化合物1(603mg、1.7mmol、収率85%)を得た。1H NMR(CDCl3) δ8.46 (t, 2H, J = 5.4 Hz), 8.20 (d, 2H, J = 6.8 Hz), 7.12-7.08 (m, 2H), 2.66 (quartet, 2H, J= 7.8 Hz), 2.42 (s, 3H), 2.20-2.12 (m, 2H), 1.72-1.52 (m, 4H), 1.42-1.39 (m, 4H), 1.32-1.25 (m, 2H); 13C NMR(CDCl3) δ155.9, 152.4, 148.8, 148.7, 148.0, 124.5, 123.8, 121.9, 121.1, 38.8, 36.2, 35.1, 29.9, 28.7, 26.7, 20.1; FABMS (NBA/CHCl3) m/z327 ([(M+H)+]), HRMS calcd. for C19H27ON4([(M+H)+]) 327.2185, found 327.2184.
(6-(2-(6-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4-イル)ヘキサンアミド)エチルアミノ-9H-プリン-9-イル)-5'-O-ジメトキシトリチル-2'-デオキシリボサイド(以下、化合物2と表記する)の合成
(6-クロロ-9H-プリン-9-イル)-5'-O-ジメトキシトリチル-2'-デオキシリボサイド(11.0g、19.2mmol)を含むDMF(50ml)に、ジイソプロピレンアミン(23ml)及び化合物1(11.0g、55.4mmol)を含むDMF(50ml)を添加し、混合物を75℃で12時間撹拌した。酢酸エチル(1L)で希釈した後、得られた混合液を、塩化ナトリウム溶液による洗浄処理、乾燥剤(硫酸マグネシウム)による乾燥処理、濾過処理、及び減圧蒸留処理に供した。斯くして得られた粗生成物に対してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1、1%NH4OH含有)を行い、白色固形状の化合物2(15.8g、18.3mmol、収率95%)を得た。1H NMR(CD3OD) δ8.41 (dd, 2H, J= 4.8, 10.1 Hz), 8.17 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 8.04 (s, 2H), 7.33 (d, 2H, J = 7.3 Hz), 7.20 (d, 4H, J = 8.8 Hz), 7.15-7.08 (m, 5H), 6.71 (dd, 4H, J = 4.0, 8.4 Hz), 6.38 (t, 1H, J = 6.2 Hz), 4.60 (quartet, 1H, J = 4.2 Hz), 4.10 (quartet, 1H, J = 4.4 Hz), 3.66 (s, 6H), 3.43 (t, 2H, J = 5.9 Hz), 3.32-3.27 (m, 2H), 2.83 (dt, 1H, J = 6.2, 13.5 Hz), 2.56 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 2.44 (ddd, 1H, J = 4.6, 6.2, 13.4 Hz), 2.36 (s, 3H), 2.11 (t, 2H, J = 7.1 Hz), 1.61-1.50 (m, 4H), 1.29-1.23 (m, 2H); 13C NMR(CD3OD) δ176.3 160.0, 157.0, 156.3, 154.7, 153.8, 150.3, 150.0, 149.9, 146.2, 140.4, 137.10, 137.06, 131.23, 131.20, 129.3, 128.7, 127.8, 126.0, 125.4, 123.6, 122.9, 114.0, 87.9, 87.6, 85.8, 72.6, 65.0, 55.7, 40.8, 40.3, 36.9, 36.0, 30.9, 29.6, 26.5, 21.2; FABMS (NBA/CH3OH) m/z 863 ([(M+H)+]), HRMS calcd. for C50H55O6N8 ([(M+H)+]) 863.4245, found 863.4235.
化合物2のホスホロアミダイト化合物(以下、化合物3と表記する)の合成
無水アセトニトリル(500μL)に化合物2(47mg、54μmol)及びテトラゾール(3.8mg,54μmol)添加されている溶液に、2-シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト(17.1μl、54μmol)を窒素雰囲気下で添加した。混合物を室温で30分間撹拌した。得られた反応物を濾過して、化合物3を得た。
化合物2の脱ジメトキシトリチル化
化合物2から保護基(ジメトキシトリチル基)を脱離させることにより、本発明のヌクレオシド(一般式(1)中のnが0、R1が水素原子、Zが下記一般式(Za-1)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンである化合物)が得られる。
また、化合物2から保護基(ジメトキシトリチル基)を脱離させ、更に所定数のリン酸を付加させることにより、本発明のヌクレオチド(一般式(1)中のnが1~3、R1が水素原子、Zが一般式(Za-1)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンである化合物)が得られる。
【0108】
製造例2
1,2-ジアミノエタンの代わりに1,5-ジアミノペンタンを使用すること以外は、上記製造例1と同様の方法で、本発明のヌクレオシド(一般式(1)中のnが0、R1が水素原子、Zが下記4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンである化合物)及びヌクレオチド(一般式(1)中のnが1~3、R1が水素原子、Zが下記一般式(Za-4)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンである化合物)を合成した。
【0109】
【化18】
JP0005114705B2_000019t.gif

【0110】
試験例1 メチルシトシンの検出
DNA試料として、20mer DNA(5'-GGTGGGGGCAGNGCCTCACA-3';Nはシトシン又はメチルシトシンを示す)(配列番号1)を用い、その5'末端を放射標識(32P)し、精製した。
【0111】
また、別途、ミスマッチ形成プローブとして、20mer DNA(5'-TGTGAGGCNCTGCCCCCACC-3';Nは一般式(Za-1)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを示す)(配列番号2)を調製した。
【0112】
次いで、ラベル化を行ったDNA試料(0.5μM、50μL)とミスマッチ形成プローブ(0.5μM、50μL)を、5mMオスミウム酸カリウム及び100mMフェレシアン化カリウムを含むトリス塩酸緩衝溶液(pH 7.0、1mMEDTA含有)に加えて50℃で10分間放置した。斯くして得られた反応溶液をポリアクリルアミド電気泳動に供して、反応後の生成物の分子量の増減を解析することにより、クロスリンク体の生成の有無を確認した。また、比較のために、オスミウム酸カリウムを添加せずに、或いはミスマッチ形成プローブとして4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンの代わりに置換されていないプリンを有する20mer DNAを使用して、様の条件で試験を実施した。
【0113】
結果を図1に示す。図1のlane 1~6の結果から、オスミウム酸カリウムを添加させていない条件では、クロスリンク体が形成されなかったことが確認された。また、4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを有していないミスマッチ形成プローブでは、クロスリンク体が形成されないことも確認された。一方、lane 7及び8の結果から、目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料は、目的塩基がシトシンであるDNA試料とは異なるバンドが検出されることが示された。
【0114】
また、目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料とミスマッチ形成プローブとの間でクロスリンクが形成されていることを明らかにするために、上記反応後のサンプルを精製し、MALDI-TOF MSによる同定を行った。その結果から、マスデータから、ミスマッチ形成プローブオスミウム錯体を介して、目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料と結合していることが示唆された。
【0115】
更に、目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料とミスマッチ形成プローブとの間で形成されているクロスリンクがメチルシトシン部位選択的なクロスリンク反応であることを調べるために、上記反応後にピペリジン処理を行い、その産物をゲル電気泳動により解析した。その結果、メチルシトシン部位でのみ切断が観察されたことから、上記クロスリンクはメチルシトシンに対して選択的に生じていることが示された(図2参照)。
【0116】
即ち、以上の結果から、図3に示すように、目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料とミスマッチ形成プローブとの間では選択的にクロスリンクが形成されており、目的塩基がシトシンであるDNA試料とミスマッチ形成プローブとの間ではクロスリンクが形成されないことが示された。
【0117】
更に得られたアダクト(目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料-ミスマッチ形成プローブ)は、その融点が79.1℃であり、オスミウム未処理のアダクト(目的塩基がメチルシトシンであるDNA試料-ミスマッチ形成プローブ)の融点(54.8℃)と比較すると、熱安定性が大きく上昇していた。このことは、メチルシトシンへのクロスリンクによる二本鎖の安定化を指標として、メチルシトシンの検出を容易に行い得ることを示している。
【0118】
試験例2 メチルシトシンの検出
ミスマッチ形成プローブにおける一般式(Za-4)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンとして下記の構造のものを使用する以外は、上記試験例1と同様の方法で試験を行い、メチルシトシンの検出を行った。
【0119】
結果を図4に示す。図4には、上記試験例1の結果についても併せて示す。この結果から、リンカーの長さの違い(炭素数が2又は5の違い)に拘わらず、メチルシトシンを選択的に検出できることが明らかとなった。
【0120】
試験例3 長鎖DNAを試料としたメチルシトシンの検出
長鎖のDNAを試料としても、メチルシトシンの検出を行えるかを確認するために、以下の試験を実施した。
【0121】
まず、DNA試料として、30mer DNA(5'-CTCATGGTGGGGGCAGNGCCTCACAACCTC-3';Nはシトシン又はメチルシトシンを示す)(配列番号3)を用い、その5'末端を放射標識(32P)し、精製したものを準備した。当該DNA試料(0.5μM、50μL)と試験例1で使用したミスマッチ形成プローブ(0.5μM、50μL)を、5mMオスミウム酸カリウム及び100mMフェレシアン化カリウムを含むトリス塩酸緩衝溶液(pH 7.0、1mMEDTA含有)に加えて50℃で1~20分間反応させ、経時的にサンプリングした。斯くして得られた反応溶液をポリアクリルアミド電気泳動に供して、反応後の生成物の分子量の増減を解析することにより、クロスリンク体の生成の有無を確認した。
【0122】
結果を図5に示す。この結果から、長鎖(30mer)のDNA試料に対しても、高い精度でメチルシトシンの検出が可能であることが確認された。
【0123】
試験例4 標識物質を使用したメチルシトシンの検出
<試験方法>
以下の工程a~hを実施することにより、標識物質を使用したメチルシトシンの検出を行った。なお、本試験における各工程の模式図について図6に示す。
工程a:ミスマッチ形成プローブのチップへの結合
ミスマッチ形成プローブとして20mer DNA(5'-AAACTCCACNCACAAACACG-3'; Nは一般式(Za-1)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを示す)(配列番号4)を準備し、その5'末端を基-(CH2)18-NH2で修飾することによりアミノ化した。
【0124】
当該アミノ化ミスマッチ形成プローブ(25μM)及びNaCl(0.1M)を含む150mMのNa cacoバッファーを調製し、その2μLをアルデヒド基を有するチップ(アルデヒド基によってコーティングされたスライドガラス)に添加して終夜室温でインキュベートした。次いで、0.15重量%SDS含有水溶液で洗浄した後に乾燥させて、DNA試料の5'末端を結合させたチップを得た。
【0125】
工程b:ミスマッチ形成プローブが結合されたチップに対する還元
次に、チップに結合したミスマッチ形成プローブに対して、PBS(phosphate buffered saline; pH 7.0)4mL、水酸化硼素ナトリウム10mg、及びエタノール1mLを添加し、室温で5分間放置し、水で2回洗浄した後に乾燥させて、チップとミスマッチ形成プローブとの間を結合させている窒素原子を還元させた(即ち、チップとミスマッチ形成プローブとの間を結合させている基を、基-N=C-から基-NH-CH2-に変換させた)。
【0126】
工程c:ミスマッチ形成プローブとDNA試料とのハイブリダイズ
次に、DNA試料として50mer DNA(5'-TTTGAGGTGNGTGTTTGTGCCTGTCCTGGGAGAGACCGGCGCACAGAGGA-3';Nはシトシン又はメチルシトシンを示す)(配列番号5)を用いて、当該DNA試料(配列番号5においてNがメチルシトシンのものとシトシンのものとが所定量混在)と、チップに結合させたミスマッチ形成プローブとをハイブリダイズさせた。具体的には、チップに結合させたミスマッチ形成プローブに対して、DNA試料(1μM)及びNaCl(0.1M)を含む50mMのリン酸ナトリウム溶液(pH 7.0)を2μL添加し、室温で30分間静置した。その後、1×SSCで洗浄した後に、更に0.1×SSCで洗浄し、乾燥させることにより、チップ上でミスマッチ形成プローブとDNA試料とのハイブリダイズ産物を得た。
【0127】
工程d:ハイブリダイズ産物におけるクロスリンクの形成
更に、上記で得られたハイブリダイズ産物に対して、5mMオスミウム酸カリウム及び100mMフェレシアン化カリウムを含むトリス塩酸緩衝溶液(pH 7.7、1mMEDTA含有)を2μL添加し、室温で1時間反応させた。次いで、0.15重量%SDS含有水溶液で洗浄した後に乾燥させて、ハイブリダイズ産物においてクロスリンクが形成された反応物を得た。
【0128】
工程e:クロスリンクが形成されていないハイブリダイズ産物の分解
次に、上記処理を行った反応産物を95℃の水に10分間浸漬した後に乾燥させることにより、クロスリンクが形成されていないハイブリダイズ産物を分解させた。
【0129】
工程f:クロスリンク検出用プローブのハイブリダイズ
更に、クロスリンク検出用プローブとして、3'末端にトリエチレングリコールを介してビオチンを結合させている20mer DNA(3'-TCTCTGGCCGCGTGTCTCCT-5')(配列番号6)を準備した。上記処理を行った反応産物に対して、このクロスリンク検出用プローブ(10μM)及びNaCl(0.1M)を含む50mMのリン酸ナトリウム溶液(pH 7.0)を2μL添加し、室温で30分間静置した。その後、1×SSCで洗浄した後に、更に0.1×SSCで洗浄し、乾燥させることにより、チップ上でDNA試料とクロスリンク検出用プローブとをハイブリダイズさせた反応物を得た。
【0130】
工程g:チップのブロッキング
次いで、上記で得られたチップ上の反応産物に対して、子牛血清アルブミン(BSA)(50mg/mL)を含むPBSを1.5mL添加して室温で5分間静置した。その後、PBSで洗浄することにより、反応産物が結合しているチップをブロッキングした。
【0131】
工程h:Cy3-アビジンコンジュゲートの結合
更に、上記でチップ上の反応産物に対して、BSA(50mg)、PBS(1.5mL)及びCy3-アビジンコンジュゲート(15μL)を添加して室温で5分間反応させた。その後、PBSで洗浄した後に乾燥させることにより、チップ上の反応産物に存在するビオチンにCy3-アビジンコンジュゲートを結合させた反応物を得た。
【0132】
工程g:Cy3の蛍光強度の測定
斯くして処理されたチップ上の反応物のCy3の蛍光強度を測定した(励起波長532nm、検出波長585±45nm)。
【0133】
<結果>
この結果、DNA試料における、目的塩基がメチルシトシンであるDNAの割合に応じて、強い蛍光輝度が検出された(図7参照)。即ち、この結果から、本発明によれば、予めメチル化頻度と検出される蛍光輝度との関係を示す検量線を作成することによって、シトシンのメチル化頻度が未知のDNA試料に対して、メチル化量の定量が可能になることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】試験例1で行ったポリアクリルアミド電気泳動の結果を示す図である。図1中、K2OsO4の欄が「-」のものは、K2OsO4を添加していない場合の結果を示し、該欄が「+」のものはK2OsO4を添加した場合の結果を示す。また、図中、ODN1'(BpyA)の欄が「-」のものは、4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを有していないミスマッチ形成プローブを使用した場合の結果であり、該欄が「+」のものは4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを有しているミスマッチ形成プローブを使用した場合の結果を示す。更に、図中のNの欄が「C」のものはDNA試料において目的塩基がシトシンである場合の結果を示し、該欄が「M」のものは、DNA試料において目的塩基がメチルシトシンである場合の結果を示す。
【図2】試験例1において、クロスリンク反応後にピペリジン処理を行い、その産物をゲル電気泳動により解析した結果を示す図である。図2中、probeの欄が「-」のものは、ミスマッチ形成プローブを添加していない場合の結果を示し、該欄が「+」のものは4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを有しているミスマッチ形成プローブを使用した場合の結果を示す。また、図中、Osの欄が「-」のものは、K2OsO4を添加していない場合の結果を示し、該欄が「+」のものはK2OsO4を添加した場合の結果を示す。更に、図中のNの欄が「C」のものはDNA試料において目的塩基がシトシンである場合の結果を示し、該欄が「M」のものは、DNA試料において目的塩基がメチルシトシンである場合の結果を示す。
【図3】試験例1で得られた結果から明らかにされた知見を模式的に示す図である。即ち、4'-メチル-2,2'-ビピリジン基とメチルシトシンはオスミウム酸を介してクロスリンクを形成するが、4'-メチル-2,2'-ビピリジン基とシトシンでは、該クロスリンクは形成しないことを模式的に示す図である。
【図4】試験例2で行ったポリアクリルアミド電気泳動の結果を示す図である。図4中、m1=1のものは、ミスマッチ形成プローブに一般式(Za-1)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンが結合している場合の結果を示し、m1=4のものは、ミスマッチ形成プローブに一般式(Za-4)で表される4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンが結合している場合の結果を示す。また、図中のNの欄が「C」のものはDNA試料において目的塩基がシトシンである場合の結果を示し、該欄が「M」のものは、DNA試料において目的塩基がメチルシトシンである場合の結果を示す。
【図5】試験例3で行ったポリアクリルアミド電気泳動の結果を示す図である。図中のNの欄が「C」のものはDNA試料において目的塩基がシトシンである場合の結果を示し、該欄が「M」のものは、DNA試料において目的塩基がメチルシトシンである場合の結果を示す。
【図6】試験例4で行ったメチルシトシンの検出について、各工程毎に模式的に示す図である。図中、Xは4'-メチル-2,2'-ビピリジン修飾プリンを示し、Mはメチルシトシンを示す。
【図7】試験例4で行った試験結果を示す図である。図中、[M]/([M]+[C])は、DNA試料として使用した配列番号5に示すDNAにおいて、NがメチルシトシンであるDNAの割合(%)、即ち、目的塩基がメチルシトシンであるのDNAと目的塩基がシトシンのDNAの合計量に対する目的塩基がメチルシトシンのDNAの割合(%)を示している。図中、左図は、蛍光顕微鏡により観察した結果(4回の実験結果;1列につき1回の実験の結果)を示す。また、図中、右図は、左図に示される4回の実験結果の蛍光の輝度の平均をプロットしたものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6