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明細書 :温度変化により可逆的に結晶化するイオン性コロイド系およびそれを利用するコロイド結晶の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3025233号 (P3025233)
公開番号 特開平11-319539 (P1999-319539A)
登録日 平成12年1月21日(2000.1.21)
発行日 平成12年3月27日(2000.3.27)
公開日 平成11年11月24日(1999.11.24)
発明の名称または考案の名称 温度変化により可逆的に結晶化するイオン性コロイド系およびそれを利用するコロイド結晶の製造方法
国際特許分類 B01J 13/00      
B01D  9/02      
C01B 33/14      
FI B01J 13/00 Z
B01D 9/02
C01B 33/14
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願平10-145095 (P1998-145095)
出願日 平成10年5月11日(1998.5.11)
審査請求日 平成11年2月22日(1999.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】山中 淳平
【氏名】古賀 忠典
【氏名】吉田 博史
【氏名】橋本 竹治
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】中村 泰三
参考文献・文献 特開 昭62-7430(JP,A)
特開 平9-913(JP,A)
特表 平3-504462(JP,A)
J.Chem.Phys.Vol.94,No.7,PP.5222-5225
株式会社培風館 コロイド化学 初版 昭和42年5月30日 第257頁
創造科学技術推進事業 1997 創造科学技術研究報告(東京)第4部講演要旨集
Colloid Polym Sci,Vol.266,No.2,pp.173-179(1988)
調査した分野 B01J 13/00
B01D 9/02 611
C01B 33/14
特許請求の範囲 【請求項1】
表面に電荷を有するコロイド粒子が液体媒質中に分散されコロイド粒子の体積分率が0.01~0.05であるコロイド分散系に、該液体媒質中における解離度が温度変化とともに変化するような弱電離物質を添加して、外部からの加熱または冷却により前記コロイド粒子を結晶化させることを特徴とするコロイド結晶の製造方法。

【請求項2】
コロイド粒子がシリカ粒子であり、液体媒質が水であり、弱電離物質がピリジンまたはピリジン誘導体であることを特徴とする請求項2のコロイド結晶の製造方法。

【請求項3】
表面に電荷を有し体積分率が0.01~0.05であるコロイド粒子、該コロイド粒子を分散させる液体媒質、および該液体媒質中において解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質を含み温度変化により可逆的に結晶化し得ることを特徴とするコロイド系。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、コロイドの技術分野に属し、特に、温度変化により可逆的に結晶化するイオン性コロイド系およびそれを利用するコロイド結晶の製造方法に関する。

【10】

【発明の実施の形態】本発明のコロイド結晶の製造方法に従えば、温度変化とともに解離度(電離度)が変化するような弱電離物質(弱電解質)をイオン性コロイド分散系に添加するだけで、外部からの加熱または冷却により熱可逆的にイオン性コロイド分散系を結晶化させることができる。前述のように、イオン性コロイド系においては粒子間静電的相互作用の増加に伴って結晶化が起こり、ここで、静電的相互作用の大きさは、粒子の有効表面電荷密度(σe ) の増加、粒子の体積分率(φ)の増加、または添加塩濃度(Cs )の減少により増加することが本発明者らにより見出されている〔例えば、J. Yamanaka, T. Koga, N. Ise およびT. Hashimoto,Phys. Rev. E 53, R 4314, (1996) 〕。本発明に従い、温度変化とともに解離度が変化するような弱電離物質を添加、共存させると、コロイド粒子のσe (有効表面電荷密度)が温度に依存して変化し、したがって、温度変化によりイオン性コロイド系の結晶化を制御できるものと理解される。

【11】
これまでσe 値の制御は、コロイド粒子の表面電荷密度を積極的に変化させるべきとの考えから、コロイド分散系に専ら強電離物質(強電解質)を添加することにより行われていた。例えば、本発明者らも、以前の実験では、シリカコロイド系に水酸化ナトリウムNaOHを添加し、シリカ粒子表面の弱酸性シラノール基(Si-OH)の解離度を変化させるように試みた〔上述の論文Phys. Rev. E53, R 4314, (1996) 〕。NaOHは強塩基であり、その解離(NaOH→Na+ +OH- )は温度によらずほぼ完全であると見なせる。

【12】
本発明者は、このたび、そのような従来の考え方とは異なり、弱電離物質の解離度が温度に依存することに注目し、これをイオン性コロイドの結晶化に利用した。例えば、弱塩基であるピリジン(Py;水溶液中でPy+H2 O→PyH+ +OH- と解離)の解離度は昇温と共に増加する(電気伝導度測定により決定した、ピリジンの無塩水溶液におけるpKb 値は、10および50℃において9.28および8.53であり、温度と共に直線的に減少した)。従って、Py(ピリジン)をシリカコロイド分散系のようなコロイド分散系に共存させた場合、昇温に伴いコロイド粒子のσe 値が増加すると考えられる。しかも、種々の温度における上記の解離は、通常の使用条件において系の温度変化に要する時間よりもはるかに短時間で平衡状態となる。すなわち、σe 値は試料温度により一義的に決まり、それまでの温度履歴等に依らないため、結晶化が熱可逆的に起こる。

【13】
弱電離物質
本発明においては、温度変化により解離度が変化(増加または減少)するような各種の弱塩基、弱酸または塩を弱電離物質として使用することができる。以下、本発明において使用され得る弱塩基、弱酸および塩を例示するが、本発明において使用される弱電離物質はこれらに限定されるものではない。

【14】
好ましい弱塩基としては、例えば、ピリジンおよびピリジン誘導体(モノメチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン等)が挙げられ、これらは温度上昇とともに解離度が増加する。これらのピリジンまたはピリジン誘導体は、シリカ粒子の結晶化に対して好適なpKb 値を有し、またpKb 値の温度による変化が充分に大きいという理由から本発明において用いられるのに特に好ましい。弱塩基としては、この他に、ウラシル、キノリン、トルイジン、アニリン(およびその誘導体)等も使用することができ、これらも昇温とともに解離度が増加する。

【15】
本発明において使用される弱酸としては、水溶液中で温度上昇とともに解離度が減少する酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロル酢酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸等を挙げることができる。一方、ホウ酸や炭酸のように、昇温とともに解離度が増加するような酸を用いることもできる。さらに、上記のごとき弱塩基と弱酸の中和により得られる塩も解離度に温度依存性があり、本発明における弱電離物質として使用できる。温度に依存して解離度が増加するか減少するかは、当該酸と塩基の強さの大小関係に依る。

【16】
コロイド分散系
本発明のコロイド結晶の製造方法が適用されるのに特に好ましいコロイド分散系の例は、シリカ微粒子が水に分散された系である。このシリカ微粒子は、水中に分散されると、その表面を覆っている弱酸性のシラノール基(Si-OH)のOHが一部解離してマイナスの電荷(O- )をもつとともに、その周囲に対イオンと呼ばれるブラスイオン(H+ )が分布している。ここで、この系に前述したようなピリジンのような電離物質を添加するとシラノール基の解離度が変化し、粒子の電荷密度(単位表面積あたりの電荷量)が変化する。このように電荷密度が比較的容易に制御できるという特性はシリカ粒子のメリットであり、これを利用してコロイド結晶を調製することができる。

【17】
しかしながら、本発明のコロイド結晶の製造方法は、シリカ-水系に限られず、表面に弱酸または弱塩基に由来する電荷を有するコロイド粒子が液体媒質に分散され、上述したような弱電離物質を添加すると該電離物質が液体媒質中で解離(電離)するとともに、コロイド粒子表面の電荷が変化し得るようなその他のイオン性コロイド分散系にも適用できる。

【18】
すなわち、コロイド粒子として、表面に弱酸を有するものであればシリカと同様に使用可能であり、例えば、酸化チタン微粒子やカルボキシ変成ラテックス(表面にカルボキシル基を有するラテックス)等を使用することができる。さらに、表面に弱塩基を持つものであれば、弱酸を添加することにより、シリカ+ピリジン系と類似の機能を発現されることもでき、これに該当するコロイド粒子としては酸化アルミニウムやアミノ基を有するラテックス等を挙げることができる。

【19】
また、弱酸と弱塩基の両方をもつ球状タンパク質や粘度鉱物から成るコロイド系にも適用可能である。さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いてシリカ粒子表面に弱塩基を導入するなどの表面修飾法により、種々の弱酸や弱塩基が粒子表面に導入された各種のコロイド粒子を含む系にも本発明は適用できる。

【2】

【従来の技術】コロイドとは、数nmから数μmの大きさを有するコロイド粒子が媒質中に分散している状態を指称し、多くの工業的用途を持つ。例えば、シリカなどの無機微粒子から成るコロイドは、ゴム・プラスチックの充填剤、複写・感光紙のコーティング剤、インク用マイクロフィラー、半導体の研磨剤、耐火物用バインダー、化粧品の顔料などに広く用いられている。また、高分子ラテックスなどの有機粒子コロイドは、医療検査用試薬、細胞研究試料、電子顕微鏡用の標準試料などとして、さらに、金属微粒子から成るコロイドは磁気材料、導電性フィラー、および触媒などとして、工業的に重要である。

【20】
また、液体媒質に関しては、コロイド粒子表面の解離基(電荷付与基)、および添加した弱電離物質(弱酸、弱塩基、塩)が解離できるような高い誘電率を呈することができれば、水以外の液体も使用可能である。例えば、フォルムアミド類(例えば、ジメチルフォルムアミド)やアルコール類(例えば、エチレングリコール類)を使用することができる。これらはコロイド粒子および添加する弱電離物質の組合せによってはそのまま使用することもできるが、一般的には水との混合物として使用するのが好ましい。

【21】
結晶化方法
本発明の方法に従いコロイド結晶を生成させるには、上述したようなコロイド粒子と液体媒質とから成るコロイド分散系に弱電離物質(弱塩基、弱酸、塩)を添加して、系を外部から加熱または冷却すればよい。すなわち、温度上昇とともに解離度が増加するような弱電離物質を用いる場合には加熱することによりコロイド結晶が生成し、他方、温度上昇とともに解離度が減少するような弱電離物質を用いる場合には冷却することによりコロイド結晶が生成する。

【22】
弱電離物質を添加するコロイド分散系は、市販のコロイド用粒子を水などの適当な液体媒質に分散させたり、ゾル-ゲル法などにより合成したものを用いればよいが、一般に、コロイド結晶は微量の塩(イオン性不純物)の存在によってその生成が阻害されるため、コロイド分散系の調製にあたっては充分な脱塩が必要である。例えば、水を用いる場合には、まず精製水に対して、用いた水の電気伝導度が使用前の値と同程度になるまで透析を行い、次に充分に洗浄したイオン交換樹脂(陽イオンおよび陰イオン交換樹脂の混床)を試料に共存して少なくとも1週間保つことにより、脱塩精製を行う。

【23】
さらに、コロイド粒子の粒径およびその分布にも注意を払う必要がある。例えば、シリカ粒子の場合、粒径が数1000Å以上のシリカ粒子は、沈降が著しいため不適であり、1000Å程度以下の粒子を用いることが望ましい。また粒径分布が広い試料は結晶を生じにくく、分布が10%程度以下の粒子を用いることが望ましい。

【24】
次に、弱電離物質を添加、共存させ、これに温度変化を起こさせることによりコロイド結晶を生成させることができる。この場合、前述したように、イオン性コロイド系における結晶化を支配するコロイド粒子間の静電的相互作用は、該粒子の有効表面電荷密度(σe )に加えて、粒子の体積分率(φ)および添加塩濃度(Cs )によっても影響される。したがって、結晶化が生じる温度や弱電離物質の添加量は、当初のコロイド分散系のφやCs によって異なる。例えば、ピリジン(Py)を添加する場合、一定温度およびφ条件下で比較したとき、一般に、Cs 値が高いほどPy濃度の高い条件で結晶化が起こる。

【25】
一般的には、φ(コロイド粒子の体積分率)として0.01~0.05程度、またCs(添加塩濃度)として2~10μM程度のコロイド分散系を調製し、これに弱電離物質を添加する。このためには、コロイド粒子の比重をピクメーター法などにより求め、この値を用いて精製したコロイド分散系のφ値を絶乾法により決定する。これを精製した水などの液体媒質で希釈することにより、所定のφ値を有する分散系を調製する。φ値は、コロイド結晶が望まれる特性に応じた結晶面間隔を有するように算出する。また、必要に応じ、NaClなどの低分子塩水溶液を添加してCs 値を制御する。

【26】
以上の試料調製にあたっては、イオン性不純物による汚染を可能な限り避ける必要がある。この点、ガラスからは塩基性不純物が水中に溶出し、粒子のσe 値を増加させるため、ガラス製の容器および器具の使用は避ける。また空気中の二酸化炭素は水に溶解して炭酸を生じるため、窒素等の雰囲気下で調製を行うことが望ましい。さらに、容器、器具類は精製水(電気伝導度 0.6μS/cm以下)で充分洗浄したのち使用する。

【27】
以上のように調製したコロイド系を加熱または冷却し、結晶の有無を確認し、結晶化温度を評価すればよい。結晶生成の確認には、イリデセンスの観察の他、X線散乱法、光学顕微鏡法および分光光度法(反射または透過スペクトル測定)等が適用できる。

【28】
本発明のコロイド結晶製造方法の効果
本発明の方法では、単に外部から系を加熱または冷却するという簡単な手段により、熱可逆的にコロイド粒子の結晶化を生じさせることができる。この結晶化は、ピリジン等の弱電離物質の濃度を変化させることにより、制御できるが、その際、弱電離物質の濃度はNaOHのような強塩基を添加する場合のように厳密である必要もない。すなわち、添加した弱電離物質の濃度に比べその解離種の濃度がごく少量であるため、弱電離物質濃度に対するコロイド粒子の表面電荷密度(σe )の変化が強塩基を添加した場合より緩やかであり、ある程度の濃度範囲が許容されることも利点である。

【29】
また、本発明においては系を密閉系に保つことができるため、イオン性不純物による汚染を防いで高性能のコロイド結晶を得ることができる。かくして、本発明は、光応答特性を制御できる光学素子などの製造に、広範な応用が期待される。

【3】
これら従来の用途においては、主としてコロイド系の微粒子としての特性が利用されているが、近年、コロイド粒子が液体中で形成する結晶構造(コロイド結晶)に着目した応用展開が検討されている。コロイド結晶は粒子が三次元的に規則正しく配列した集合体であり、1)表面に電荷を持つイオン性コロイド粒子(シリカ、イオン性高分子ラテックス等)が水等の極性液体中において、粒子間の強い静電的相互作用により安定化され形成する場合と、2)非イオン性コロイド粒子がパッキングして形成する場合があるが、本発明が対象とするのは、前者のイオン性コロイド粒子系である。

【30】
弱電離物質含有コロイド系のその他の用途
叙上のように、本発明のコロイド結晶の製造方法は、表面に電荷を有するコロイド粒子、該コロイド粒子を分散させる液体媒質、および該液体媒質中において解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質を含むコロイド系を利用し、これに外部から温度変化を与えてコロイド結晶を生成させることに基づくものである。このような弱電離物質含有コロイド系は温度変化により可逆的に結晶化し物性が変化するので、この性質を利用して、コロイド結晶の製造以外にも応用することが可能である。

【31】
例えば、温度変化により物性が変わることを利用した新規な感熱性材料(感熱性塗料、温度センサーなど)の開発が可能となる。また、昇温によりコロイド系が結晶化するような系を用いれば、系の粘性は温度とともに増加することが期待される。一方、通常の単純液体においては、一般に粘性は温度増加にともない単調に減少する。このような特異な粘性-温度特性を利用して、例えば従来の応力伝達系に用いられる液体(クラッチ用のオイルなど)の温度特性の改善などへの応用も期待される。

【32】
これらの用途に適用される場合の弱電離物質含有コロイド系におけるコロイド粒子、液体媒質および弱電離物質の内容は、コロイド結晶の製造方法に関連して説明したのと本質的には同じである。但し、これらの用途においては、弱電離物質含有コロイド系は、コロイド結晶を製造する場合のようなコロイド溶液(ゾル)のみならず、必要に応じてゲル状態をとることもある。したがって、この場合のコロイド系とは、ゾル状態およびゲル状態の両方を指称するものとする。

【33】

【実施例】本発明の特徴を一層明らかにするため、シリカ-水コロイド系にピリジン(Py)を添加して結晶化の相図を求めた例を示すが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。日本触媒社製シリカコロイド粒子KE-P10W(直径0.12±0.01μm、比重2.24)を透析法およびイオン交換法により充分に精製し、実験に用いた。電気伝導度測定により決定したPy無添加時におけるσe 値は、約 0.1μC/cm2 であった。Cs 値は添加した塩(NaCl)の濃度と、用いた水中のイオン性不純物濃度(2μM)の和として決定した。

【34】
φ=0.03、Cs =7μMの条件下で、種々のPy濃度においてイリデセンス観察により結晶化の相図を決定した。結果を図1に示す。白および黒丸は、イリデセンスが観察された条件および認められなかった条件を示し、それぞれ結晶相、無秩序相に対応する。本実施例の場合、10-4MオーダーのPyを共存することにより、約0~50℃の温度範囲において、加熱により結晶化するシリカコロイド分散系を得ることができた。結晶化は熱可逆的であり、加熱により結晶化した試料を冷却すると、系は無秩序状態となった。

【4】
コロイド結晶の結晶面間隔は、原子・分子系結晶の場合よりはるかに大きく、しばしば用いられる実験条件(イオン性粒子系の場合、粒径 0.1~1μm、粒子の体積分率10-2~10-1)において、可視光の波長のオーダーとなる。このため、コロイド結晶は可視光のBragg 回折により、イリデセンスと呼ばれる虹色の光を発し、また、可視光に対する特異的な吸収帯(フォトニックバンドギャップ)を持つ。これらの特性に基づき、コロイド結晶を用いて新規な特性を持つ光学素子を作製する試みが近年盛んに行われている。

【5】
イオン性コロイド系由来のコロイド結晶の生成を制御する手法としては、これまでに、イオン性高分子ラテックス/水分散系に対して、せん断力を与えたり [B. J. AckersonおよびN. A. Clark, Phys. Rev. A 30, 906, (1984)]、電場による[T. Palberg, W. Moench, J. SchwarzおよびP. Leiderer, J. Chem. Phys. 102, 5082, (1995)]、可逆的な結晶化実験が報告されているが、これらの方法を応用するにあたっては、前者の場合、せん断場印加のために特殊な装置が必要とされること、また後者については、電極反応により不純物イオンが生じ、これが結晶化を妨げること、等の難点があるものと思われる。この他に、イオン性コロイド結晶を高分子ゲルを用いて固定化し、温度変化によるゲルの体積変化を利用して結晶面間隔を制御した報告 [J. M. Weissman, H. B. Sunkara, A. S. Tse andS. A. Asher, Science, 274, 959, (1996)]があるが、この場合にはコロイド結晶の固定化にあたって煩雑な工程が必要であり、また、無秩序な粒子配列状態からの結晶の生成は試みられていない。

【6】

【発明が解決しようとする課題】本発明の主目的は、各種のイオン性コロイド系から、特殊な装置や複雑な工程を必要とせずに比較的簡単にコロイド結晶を製造することのできる技術を確立することにある。

【7】

【課題を解決するための手段】本発明者は、このたび、イオン性コロイド分散系に特定の電離物質を共存させると温度変化によりコロイド結晶が可逆的に形成し得るという事実を発見し、本発明を導き出した。

【8】
かくして、本発明に従えば、上記の目的を達成するものとして、表面に電荷を有するコロイド粒子が液体媒質中に分散されているコロイド分散系に、該液体媒質中における解離度が温度変化とともに変化するような弱電離物質を添加して、外部からの加熱または冷却により前記コロイド粒子を結晶化させることを特徴とするコロイド結晶の製造方法が提供される。本発明の方法が適用される特に好ましい例は、コロイド粒子がシリカ粒子であり、液体媒質が水であり、弱電離物質がピリジンまたはピリジン誘導体である場合である。

【9】
さらに、本発明は、上記のコロイド結晶の製造に利用されるのみならず、各種の機能性材料に応用することができるコロイド系も対象とする。すなわち、本発明は、表面に電荷を有するコロイド粒子、該コロイド粒子を分散させる液体媒質、および該液体媒質中において解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質を含むことを特徴とするコロイド系も提供する。
図面
【図1】
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