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明細書 :リチウム電池及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4923261号 (P4923261)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年4月25日(2012.4.25)
発明の名称または考案の名称 リチウム電池及びその製造方法
国際特許分類 H01M  10/0562      (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01M  10/0585      (2010.01)
H01M   4/48        (2010.01)
FI H01M 10/00 107
H01M 10/00 102
H01M 10/00 117
H01M 4/48 101
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2007-500424 (P2007-500424)
出願日 平成17年11月11日(2005.11.11)
国際出願番号 PCT/JP2005/020695
国際公開番号 WO2006/080126
国際公開日 平成18年8月3日(2006.8.3)
優先権出願番号 2005017638
優先日 平成17年1月26日(2005.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年10月10日(2007.10.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小久見 善八
【氏名】入山 恭寿
【氏名】安部 武志
【氏名】矢田 千宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100098969、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 正行
審査官 【審査官】赤樫 祐樹
参考文献・文献 特開平10-083838(JP,A)
特開2001-015111(JP,A)
特開2001-015152(JP,A)
特開2004-335455(JP,A)
特許第3448312(JP,B2)
調査した分野 H01M 10/05- 10/0587
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式Li4-xx1-x4(MはSi、Ti及びGeのいずれかであり、xは0より大きく1より小さい数である。)で表される化合物、又はLi-Ti-Al-P-O系ガラスセラミックスからなる固体電解質と、固体電解質の分解生成物からなり固体電解質の少なくとも一方の側に設けられた電極活物質とを備え、固体電解質及び電極活物質が、これらの相からなる遷移層を除く他物を介することなく連続していることを特徴とするリチウム電池。
【請求項2】
一般式Li4-xx1-x4(MはSi、Ti及びGeのいずれかであり、xは0より大きく1より小さい数である。)で表される化合物、又はLi-Ti-Al-P-O系ガラスセラミックスからなる固体電解質の表面を反応させて分解させることにより、固体電解質の表面に電極活物質を形成することを特徴とするリチウム電池の製造方法。
【請求項3】
前記反応を、前記固体電解質に対するイオン衝撃、高電圧印加、レーザー照射、ラジカル照射、電磁波照射、電子衝撃、熱衝撃、圧力衝撃、イオン交換、酸化還元及び浸炭のうちから選ばれる一種以上の手段により進行させる請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応を、前記固体電解質に対する酸素イオン衝撃又は電圧印加に伴う酸化還元により進行させる請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のリチウム電池が複数個直列に接続されていることを特徴とする組電
池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、固体電解質を用いたリチウム電池及びその製造方法に属する。
【背景技術】
【0002】
現在高性能電池として普及しているリチウム電池は、有機溶媒を含む液体電解質を用いている。これらの有機溶媒は、電極活物質の表面で酸化または還元による分解反応をおこすことが知られている。そして、この分解反応に起因して、電極活物質と電解質との界面に抵抗体層が形成される。この抵抗体層は、時間の経過とともにあるいは充放電反応の繰り返しによって非可逆的に増大し、電池抵抗を非可逆的に増大させる。その結果、電池性能が低下し、寿命が短くなる。また、可燃性の有機溶媒を用いている故に、安全対策に多大のコストがかかっている。
【0003】
そこで、不燃性の固体のみで構成される電池を開発するべく、固体電解質を含む正負の電極活物質体間に固体電解質粉末を挟み、マイクロ波加熱した後に封入することを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法(特許文献1)、及び正極と負極との間に酸化物系無機固体電解質を介在させ、電極活物質を酸化物ガラスで結着してなるリチウム電池(特許文献2)が提案されている。
【0004】

【特許文献1】特開2000-251938号公報
【特許文献2】特開2001-126757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの提案も電極活物質と固体電解質を別々に成形した後、積層して一体化しなければならず、それ故にコストが高い。また、電極活物質と固体電解質との界面は、各々の粒子がミクロンオーダーで混ざっているだけであるので、微視的には結合しておらず、これが電荷移動抵抗の低減を妨げていた。
それ故、この発明の課題は、低コストで内部抵抗の小さい全固体型のリチウム電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明のリチウム電池の製造方法は、
リチウムイオンを含む固体電解質の表面を反応させることにより、固体電解質の表面に電極活物質を形成することを特徴とする。
この方法によれば、電極活物質が固体電解質の表面を反応させることにより形成されているので、両者を接合する工程を改めて設ける必要はない。また、電極活物質と固体電解質との境界部分の成分濃度が一方から他方に向かって原子オーダーで傾斜的に変化した発電要素が得られる。
【0007】
かくして得られるリチウム電池は、
リチウムイオンを含む固体電解質と、固体電解質の分解生成物からなり固体電解質の少なくとも一方の側に設けられた電極活物質とを備え、固体電解質及び電極活物質が、これらの相からなる遷移層を除く他物を介することなく連続していることを特徴とする。
このリチウム電池によれば、固体電解質及び電極活物質が、これらの相からなる遷移層を除く他物を介することなく連続しているので、界面における電荷移動抵抗は小さい。
【発明の効果】
【0008】
工数が減り、内部抵抗も小さいので、低コストで高出力の電池が得られ、利用分野の拡大を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は実施例の固体電解質に対する衝撃付与部分の走査型電子顕微鏡写真、(b)は(a)の両矢印で示す範囲のオージェ分析パターンである。
【図2】実施例4の電池の充放電時における容量と電極電圧の関係を示すグラフである。
【図3】実施例5の電池の充放電時における時間と電池電圧の関係を示すグラフである。
【図4】比較例2の電池の充放電時における時間と電池電圧の関係を示すグラフである。
【図5】実施例6の電池の充放電時における時間と電池電圧の関係を示すグラフである。
【図6】実施例7の電池の充放電時における時間と電池電圧の関係を示すグラフである。
【図7】実施例8のガラスセラミックス粉末の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【図8】実施例8のガラスセラミックス粉末の充放電サイクル毎の容量を示すグラフである。
【図9】実施例9の固体電解質Li1.790.56Si0.443.00ガラス薄膜の開回路曲線を示すグラフである。
【図10】実施例10の組電池の充放電時における時間と電池電圧の関係を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記固体電解質としては、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Si及びSnのうちから選ばれる一種以上の元素を含む複合金属酸化物、複合金属硫化物などの化合物が挙げられる。これらのうち、一般式Li4-xx1-x4(MはSi、Ti及びGeのいずれかであり、xは0より大きく1より小さい数である。)で表される化合物のように、バナジウムを含むものが好ましい。そのような固体電解質から、酸化バナジウムのようにリチウムが容易に挿入脱離する電極活物質を形成することができるからである。また、前記固体電解質としてLi-Ti-Al-P-O系ガラスセラミックスも好ましい。電解によって表面に容易に電極活物質を形成することができるからである。
【0011】
前記反応は、例えば前記固体電解質に対して、イオン衝撃、高電圧印加、レーザー照射、ラジカルガンなどによるラジカル照射、電磁波照射、電子衝撃、溶融鉄中に浸けるなどの熱衝撃、超音波などによる圧力衝撃、イオン交換、酸化還元及び浸炭のうちから選ばれる一種以上の手段により進行させることができる。反応のメカニズムは、各手段によって異なる。例えば酸素を含むイオンで衝撃を与えると、固体電解質が酸化されてリチウムなどの特定の元素が化合物として分離される。その結果、固体電解質の表面にはリチウムを含まない酸化物層が形成され、これが電極活物質となる。また、固体電解質の両面に反応させると、正極活物質と負極活物質とを同時に形成することができる。
【実施例】
【0012】
-実施例1~3及び比較例1-
板状の結晶性固体電解質Li3.40.6Si0.44を固相反応にて製造し、これをターゲットとして高周波マグネトロンスパッタリング装置(大阪真空株式会社製、型式 OSV250)にて周波数13.56MHz、後述のガス流量、圧力4Pa、出力150Wの条件で24時間イオン衝撃を加えた。その後、ターゲットを裏返して同一条件でイオン衝撃を加えることにより、実施例1~3の発電要素を製造した。
発電要素の両面に白金をスパッタリングして集電体を形成することにより、実施例1~3のリチウム電池を製造した。そして、各電池の一方の集電体に直流電源の正極、他方の集電体に負極を接続し、電流値10nAの定電流で4.0Vまで充電し、4.0Vで 約12時間充電し続けた後、同電流で1.5Vまで放電することにより、放電容量を測定した。比較のために、上記固体電解質にイオン衝撃を加えることなく、両面に白金をスパッタリングして同一条件で充電し放電し、放電容量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0013】
【表1】
JP0004923261B2_000002t.gif

【0014】
次に、実施例2の衝撃付与部分を点分解能5nmのオージェマイクロプローブ(日本電子株式会社製、型式Jamp 7800F)にて表面から内部に向かって走査させたところ、図1に示すデータが得られた。図1(a)は衝撃付与部分の側面を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影倍率:10000倍)、図1(b)は図1(a)の両矢印で示す範囲のオージェ分析パターンであり、横軸が距離、縦軸がバナジウム量である。図1に示すようにバナジウム量が表面近傍で内部に比べて相対的に増加していた。
【0015】
-実施例4-
実施例2においてイオン衝撃を加える時間を24時間に代えて5時間とした以外は、実施例2と同一条件で発電要素を製造した。別途、溶媒としてのプロピレンカーボネート(PC)に濃度1MとなるようにLiClO4を溶かした電解質溶液を調製した。
発電要素の片面に白金をスパッタリングして正極集電体を形成するとともに、反対側の面に電解質溶液を介して負極としてリチウム金属を対向させた。そして、電流値10nAの定電流で電池電圧が2.0Vとなるまで放電し、同電流で3.0Vまで充電する操作を4回繰り返しながら、充放電容量を測定した。測定結果を図2に示す。
図2に見られるように、固体電解質の表面にイオン衝撃によって形成された物質は、リチウムイオンの挿入及び脱離を繰り返すことが判明した。しかも、4回目の充放電時に容量が増していることから、活物質として良好なものであると認められる。
【0016】
-実施例5及び比較例2-
厚さ1 mm、イオン伝導率1.0×10-4S・cm-1(25℃)のLi-Ti-Al-P-O系ガラスセラミックス(オハラ社製LIC-GC)からなる板を準備した。(Li2CO3+MnO2)粉末(Li:Mn=7:10)をターゲットとしてレーザーアブレーション装置(日本電池 型式 EXL-210)を用いて、圧力23Pa、レーザー照射エネルギー100mJ cm-2、照射時間1時間の条件にてガラスセラミックス板の表面にLi-Mn-O薄膜を形成した。この薄膜の上に白金をスパッタリングして集電体を形成し、ガラスセラミックス板の他面に銅をスパッタリングして積層体を製造した。そして、白金に直流電源の正極、銅に負極を接続して積層体に400Vの電圧を3秒間印加した。その後、白金側の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、無数の孔が空いていた。電圧印加に伴ってLi-Mn-O薄膜およびガラスセラミックス板から酸素が脱離し、同時にリチウムイオンが銅側に移動したものと認められる。
【0017】
次に、積層体を500nAの定電流で銅側の電極電位が1.0Vとなるまで放電し、2.2Vとなるまで充電する操作を繰り返しながら、充放電容量を測定した。測定結果を図3に示す。図3において右のグラフは左のグラフの横軸を拡大した図である。
比較のために、積層体製造後、400Vの電圧を印加することなく充放電操作を繰り返すことを試みた。このときの充放電容量の測定結果を図4に示す。
積層体が400Vの電圧印加前(比較例2)は充放電容量の可逆性がほとんどないのに対し、400Vの電圧印加後(実施例5)に可逆的な放電容量が0.3μAhcm-2になっており、これが繰り返されることが、図3と図4の対比に示される。従って、電圧印加によってガラスセラミックス板の表面にガラスセラミックスの分解生成物からなる電極活物質が形成されたものと認められる。
【0018】
-実施例6-
実施例5においてLi-Mn-O薄膜に代えてLi-Co-O薄膜をガラスセラミックス板の表面に形成したこと以外は、実施例5と同じ条件で積層体を製造し、充放電容量を測定した。Li-Co-O薄膜形成のターゲットとしては(Li2CO3+Co34)粉末(モル比7:5)を用いた。測定結果を図5に示す。実施例5と同様に良好な充放電特性を示した。
【0019】
-実施例7-
実施例5で準備したものと同じガラスセラミックス板の一方の面にマンガン薄膜、他方の面に銅薄膜をスパッタして積層体を形成した。そして、直流電源の正極をマンガンに、負極を銅に接続し、80℃の雰囲気下、10μAの定電流で250秒間電解した。その後、積層体を50nAの定電流で電池電圧が0.4Vとなるまで放電し、2.0Vとなるまで充電する操作を繰り返しながら、充放電容量を測定した。測定結果を図6に示す。図6において右のグラフは左のグラフの横軸を拡大した図である。実施例5と同様に良好な充放電特性を示した。
【0020】
-実施例8-
平均粒径1μm(D=50)、イオン伝導率1.2×10-3S・cm-1(25℃)のLi-Ti-Al-P-O系ガラスセラミックス(オハラ社製LIC-GC)からなる粉末を準備した。このガラスセラミックス粉末とアセチレンブラック(炭素粉末)とポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比(70:15:15)で混ぜてペースト状にし、ニッケル板に塗布した。このニッケル板を正極集電体とし、これに実施例4で調製したものと同じ電解質溶液を介して負極としてリチウム金属を対向させた。
そして、次の条件で充放電し、負極の電位を測定したところ、図7及び図8に示すように、ガラスセラミックス粉末が1回目の充放電で固体電解質としての機能を失い、その後は電極活物質として機能することが判明した。従って、1回目の充放電で固体電解質が分解したものと認められる。
充電条件:1μA、2.0V
放電条件:1μA、3.0V
なお、図8において白丸が充電容量(リチウム挿入側)、黒丸が放電容量(リチウム脱離側)である。
【0021】
-実施例9-
レーザーアブレーション装置を用いて、圧力0.67Pa、レーザー照射エネルギー200mJ cm-2、照射時間1時間の条件にて厚さ750nmの固体電解質Li1.790.56Si0.443.00ガラス薄膜を白金基板上に製造した。この基板を正極とし、これに実施例4で調製したものと同じ電解質溶液を介して、負極としてリチウム金属を対向させた。
そして、次の条件でリチウム挿入或いは脱離反応を一定の間隔で繰り返し行い、その際の開回路電圧を測定したところ、図9に示すような開回路曲線が得られ、ガラス薄膜がリチウムイオンの挿入脱離を示し、電極活物質として機能することが判明した。
リチウム挿入脱離反応の時の電解条件:2.55μA cm-2
各電解時間及び間隔:1時間電解の後、10時間放置
【0022】
-実施例10-
実施例7で作製したものと同じ積層体を、一つの積層体のマンガン薄膜とその隣の積層体の銅薄膜とが接触するように5枚重ねることによって多層体を作製した。そして、10μAの定電流で250秒間電解した後、16.2Vで10時間定電圧電解した。その後、多層体を100nAの定電流で電池電圧が1.5Vとなるまで放電し10Vになるまで充電する操作を繰り返しながら、充放電容量を測定した。測定結果を図10に示す。実施例7と同様な充放電曲線を示すが、約2.5V(実施例7の5倍)の平均電圧が得られた。積層枚数を増やすことで、高電圧の組電池を簡便に形成できることがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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