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明細書 :耐震弾性柱および構造物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4769950号 (P4769950)
登録日 平成23年7月1日(2011.7.1)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
発明の名称または考案の名称 耐震弾性柱および構造物
国際特許分類 E04H   9/02        (2006.01)
E04C   3/34        (2006.01)
F16F  15/02        (2006.01)
E04B   1/20        (2006.01)
F16F   7/08        (2006.01)
E01D  19/02        (2006.01)
FI E04H 9/02 301
E04C 3/34
F16F 15/02 E
E04B 1/20 E
F16F 7/08
E01D 19/02
請求項の数または発明の数 8
全頁数 26
出願番号 特願2007-504738 (P2007-504738)
出願日 平成18年2月22日(2006.2.22)
国際出願番号 PCT/JP2006/303133
国際公開番号 WO2006/090723
国際公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
優先権出願番号 2005047321
優先日 平成17年2月23日(2005.2.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月20日(2009.2.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】澤田 純男
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】深田 高義
参考文献・文献 季刊大林,日本,株式会社大林組,1998年 3月 1日,P.16
調査した分野 E04H 9/02
E04B 1/20
E04C 3/34
F16F 15/02
E01D 19/02
F16F 7/08
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の部材に分割された柱部と、当該複数に分割された部材を束ねる複数の拘束部とを備え、
前記複数の拘束部により前記複数の部材を束ねる力の大きさが異なっていることを特徴とする耐震弾性柱。
【請求項2】
前記複数の拘束部は、隣接する前記複数の部材を密着させる方向に力を加えるものであることを特徴とする請求項1に記載の耐震弾性柱。
【請求項3】
前記複数の拘束部は、前記複数の部材全てに力を加えるものであることを特徴とする請求項1に記載の耐震弾性柱。
【請求項4】
前記柱部の隣接する部材同士が面で接していることを特徴とする請求項1に記載の耐震弾性柱。
【請求項5】
前記複数の部材の隣接する部材と接する面が、耐震弾性柱の伸張方向の軸と平行な直線を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の耐震弾性柱。
【請求項6】
前記複数の拘束部の前記複数の部材を束ねる力は、耐震弾性柱が設置された状態で上方に位置する部分よりも下方に位置する部分のほうが大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の耐震弾性柱。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の耐震弾性柱を用いていることを特徴とする構造物。
【請求項8】
前記複数の拘束部の前記複数の部材を束ねる力は、加わる曲げモーメントが小さい部分よりも加わる曲げモーメントが大きい部分のほうが、大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の耐震弾性柱。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、橋梁などの土木構造物や、中層ビルや、木造家屋などのような建築物に用いられる耐震弾性柱およびそれを用いた構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1923年関東地震で大きな被害が発生したのを契機に、1924年に改定された市街地建築物法には、水平設計震度0.1の耐震規定が世界に先駆けて盛り込まれた。これは構造物自重の10倍の力を水平方向に載荷した場合でも、弾性域に留まるように強度を与えることを意味する。その後1948年の福井地震を皮切りに、地震動特性が明らかになってくるに従い、設計の際に想定される地震動(設計地震動)が大きくなってきた。
【0003】
このような設計地震動に対し、1980年頃までは柱断面等を大きくして強度を高めることによって対処してきた。すなわち、柱等を太くしてその断面を大きくすれば、剛性も必然的に大きくなるから、構造物を「硬く、強く」することにより、その耐震性能を高めようとした。しかしながら、このような考え方による対処は、滅多に遭遇しない地震に対して、その対策コストが大きくなりすぎるという問題があるので、1980年代以降は弾塑性設計の考え方が主流となった。
【0004】
上記弾塑性設計の考え方は、中小地震(レベル1設計地震動)に対しては構造物の変形を弾性域内に留めるものの、大地震(レベル2設計地震動)に対しては構造部材の損傷を許容し、倒壊しないようにすれば良いという考え方である。この考え方に基づいて耐震性能を高めようとする場合、弾性域を超えてから部材が完全に破壊されるまでの塑性域で、十分な靱性を確保することを必要とする。
【0005】
このため、RC部材では密な帯鉄筋が配置されるようになった。既存の構造物に対しては、鋼板巻き立て工法や、コンクリート充填の鋼製橋脚など、より確実に部材の膨張を拘束する工法によって補強が行われている(例えば、非特許文献1参照)。最近では、小判型断面を持つ橋脚などの拘束が難しい構造物に対して、インターロッキング橋脚などのように帯鉄筋の構成を工夫することにより、円形や正方形断面と同様の拘束効果が発揮されるような方法が開発されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
さらに、軸方向鉄筋の付着を切る(アンボンド)ことにより、塑性域においてもある程度弾性を確保し安定化させる試み等がある(例えば、非特許文献3,4参照)。このような考え方は、現在でも主流である(道路橋示方書同解説耐震設計編(日本道路協会、2002年参照)。
【0007】
しかしながら、弾塑性設計の考え方によれば、強震時に塑性変形を許容する以上、少なくとも何らかの補修工事が必要となるという問題がある。例えば、1995年兵庫県南部地震においては、多くのRC橋脚柱が倒壊せずとも修復不能となり、この結果、橋脚全体の置換を余儀なくされた。それらの修復不能となった橋脚は、その再建にかなりのコストと時間を要したほか、震災後の迅速な救援活動や物資の流れを阻害したことが指摘されている。
【0008】
一方で1990年代以降、免震構造や制震構造が開発され、次第に用いられるようになってきている。これは基本的な考え方が「外力に対し剛に抵抗する」から「外力を柔らかく受け容れる」へ移行してきていることを意味する。すなわち、構造物全体の剛性を下げ、かつ減衰を大きくすることによって、加速度応答を低減し、構造物に作用する慣性力を小さくするという考え方である。これを実現するために、建築物では基礎部分に、橋梁では支承部分に、剛性の小さな積層ゴムなどを用い、さらにその中に鉛プラグを入れたり別の減衰デバイスを付加したりする。これらの方法は、構造物に作用する地震力を低減させ、構造物の塑性変形を小さくできる画期的な方法であるが、用いる免震デバイスや減衰デバイスが高価であることが難点である。また、多くの場合、既存の構造形式はそのままにして、一部に特殊デバイスを挿入しているので、構造躯体自体の耐震性能が向上している訳ではない。さらに、最近では、塑性ヒンジが発生する領域にゴムなどのダンパー材を組み込むことで、変形性能とエネルギー吸収能の向上を図ろうという研究も進んでいるが、未だ実用化には至っていない(例えば、非特許文献5参照)。
【0009】

【非特許文献1】井浦雅司、折野明宏、石澤俊希 著、「コンクリートを部分充填した円形鋼製橋脚の弾塑性挙動に関する研究」、土木学会論文集、No.696/I-58、285頁-298頁、2002年
【非特許文献2】藤倉修一、川島一彦、庄司学、張建東、武村浩志 著、「インターロッキング式帯鉄筋を有するRC橋脚の耐震性」、土木学会論文集、No.640/I-50、71頁-88頁、2000年
【非特許文献3】川島一彦、細入圭介、庄司学、堺淳一 著、「塑性ヒンジ区間で主鉄筋をアンボンドした鉄筋コンクリート橋脚の履歴特性」、土木学会論文集、No.689/I-57、45頁-64頁、2001年
【非特許文献4】家村浩和、高橋良和、曽我部直樹 著、「アンボンド芯材を活用した高耐震性能RC構造の開発」、土木学会論文集、No.710/I-60、283頁-296頁、2002年
【非特許文献5】山岸睦功、川島一彦 著、「免震ゴムビルトイン型RC 橋脚の開発」、土木学会論文集、No.752/I-66、43頁-62頁、2004年
【発明の開示】
【0010】
上記背景技術の項において説明したように、従来の土木構造物や建築物における一般的な柱等は、強震時にある程度の損傷が発生することを前提に設計されており、地震後に補修が必要となるという問題がある。また、免震技術によって柱にかかる地震力自体を低減する方法が一般化されているが、コストがかかるという問題がある上、柱自体の耐震性能が向上している訳ではない。すなわち、現在、橋脚柱等の柱自体に十分な変形能と減衰とを低コストで付与できる技術は、未だ実現されていない。
【0011】
そこで、本発明は、低コストで、橋脚柱等の柱自体に十分な変形能と減衰とを付与することができる耐震弾性柱およびそれを用いた構造物を実現することを目的としている。
【0012】
本発明の耐震弾性柱は、上記の課題を解決するために、複数の部材に分割された柱部と、当該複数に分割された部材を束ねる拘束部とを備えていることを特徴としている。
【0013】
上記の発明によれば、地震による部材損傷の生じない橋脚柱等を低コストで実現することができる。すなわち、土木構造物や建築物架構等の柱を複数の部材に分割(分断)し、それを束ねるように予め拘束力を加えておくことにより、耐震弾性柱全体としての変形性能を増大させることができる。また、柱部を構成する複数の部材間の摩擦による減衰を柱部に付加することができる。このような摩擦減衰機構により、地震時の応答を弾性域内にとどめ、橋梁などの土木構造物や建築物を構成する耐震弾性柱の耐震性能を飛躍的に向上させることができるから、部材損傷の生じない耐震弾性柱を低コストで実現することが可能となる。
【0014】
柱部を構成する複数の部材としては、例えば、本発明の耐震弾性柱が設置された状態において鉛直軸方向となる方向に柱部を分割したものや、円柱や多角柱を複数用いる構成等が挙げられる。
【0015】
前記拘束部は、隣接する前記複数の部材同士を密着させる方向に力を加えるものであることが好ましい。この構成によれば、拘束部が複数の部材を束ねる力を制御することにより、複数の部材間に働く摩擦力を調整することができる。したがって、上記柱部に付加する摩擦による減衰を制御して、所望の性質を耐震弾性柱に付与することができる。
【0016】
前記拘束部は、前記複数の部材全てに力を加えるものであることが好ましい。これにより、前記柱部を構成する部材の間の摩擦による減衰を、柱部全体に付加することができるから、部分的な部材損傷の発生を防止することが可能となる。なお、「前記複数の部材全てに力を加える」とは、前記拘束部が、前記複数の部材の全てに直接的に力を加える場合のみならず、柱部を構成する部材を介して間接的に力を加える場合も含んでいる。例えば、長さの等しい複数の柱よりなる複数の部材を束ねて柱部とする場合、これら複数の柱の周囲を取り巻くように拘束部を設け、当該拘束部を締めることにより、複数の柱の全てに力を加えることができる。
【0017】
前記柱部の隣接する部材同士が面で接していることが好ましい。このように、隣接する部材同士が面で接触する構成とすれば、当該部材間に働く摩擦力を前記拘束部からの力により制御することが容易になる。したがって、耐震弾性柱の耐震性能を、より容易且つ精密に制御することが可能となる。
【0018】
また、上記のように隣接する複数の部材同士が面で接している場合、前記複数の部材の隣接する部材と接する面が、耐震弾性柱の伸張方向の軸と平行な直線を含んでいることが好ましい。通常、耐震弾性柱は、鉛直軸方向と伸張方向の軸とが一致するように設置されるが、上記の構成によれば、設置された状態において、複数の部材の面が鉛直軸と略平行な方向、すなわち当該面の法線が略水平方向となるように配置することができる。これにより、設置された状態で、柱部が鉛直方向に分割された構成となり、耐震弾性柱の強度を維持しつつ、耐震性を向上させることができる。
【0019】
上記本発明の耐震弾性柱は、前記拘束部を複数備えていることが好ましい。これによれば、柱部において必要な複数の位置に力を加えることができる。また、この場合、前記複数の拘束部により前記複数の部材を束ねる力の大きさを異ならせることが好ましい。このように、柱部の位置に応じて異なる力を加えることによれば、地震の際に加わる力に応じて、分割された部材間の摩擦力を調整することができる。したがって、耐震弾性柱の変形を本来損傷の発生する部位以外のところに誘導することができるから、耐震弾性柱の耐震性能を向上させ、損傷の発生を抑制することが可能である。
【0020】
耐震弾性柱を耐震性能を向上させるには、例えば、前記拘束部の前記複数の部材を束ねる力が、耐震弾性柱が設置された状態で上方に位置する部分よりも下方に位置する部分のほうが大きくなるように、拘束力の分布に勾配をつけた構成が有効である。
【0021】
本発明の構造物は、上記の課題を解決するために、上記耐震弾性柱を用いていることを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、本発明にかかる耐震弾性柱を用いているため、低いコストで、耐震性の高い構造物とすることができる。上記構造物には、建造物や建築物を含むあらゆる構造物が含まれ、例えば、橋梁などの土木構造物や、中層ビルや、木造家屋などのような建築物を挙げることができる。
【0023】
以上のように、本発明は、複数の部材に分割された柱部と、当該複数に分割された部材を束ねる拘束部とを備えているから、分割された部材間の摩擦による減衰を付加することができる。これにより、耐震弾性柱全体としての変形性能を増大し、地震時に応答が弾性域内にとどまるから、部材損傷の生じない耐震弾性柱を実現することができる。また、本発明によれば、新たな特殊デバイス挿入する必要がないから、低いコストで耐震弾性柱自体の耐震性を高めることができる。
【0024】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、耐震弾性柱の概略構成を示す斜視図である。
【図2(a)】図2(a)は、図1の本発明の耐震弾性柱について、耐震弾性柱の復元力-変位曲線を示すグラフである。
【図2(b)】図2(b)は、図36の従来の耐震弾性柱について、耐震弾性柱の復元力-変位曲線を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態を示すものであり、耐震弾性柱の概略構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例の橋脚柱の概略構成を示す正面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例で評価対象とした橋脚柱の概要を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施例で評価対象とした橋脚柱部材の剛性を、鉄筋降伏ひずみまでの割線剛性で与えたことを示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施例におけるモデル化を簡便にするため、柱部材と柱部材との節点間に架けるはり要素で摩擦機構を表現した図である。
【図8】図8は、本発明の実施例で柱部材間の摩擦のモデル化に用いた完全弾塑性モデルを示すグラフである。
【図9】図9は、復元力を線形項と非線形調整項とに分けることを示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の実施例におけるミュレーションで用いたモデルの概要を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の実施例におけるミュレーションで用いたモデルにおいて、橋脚柱の柱部材の主鉄筋のひずみについて説明する概略図である。
【図12】図12は、等価減衰定数について説明するグラフである。
【図13】図13は、本発明の実施例において、柱部材間が完全に固着している場合と、拘束力が0の場合との結果を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の実施例において検討した拘束力分布(条件A:等分布拘束)を示す模式図である。
【図15】図15は、本発明の実施例において検討した拘束力分布(条件B:台形分布拘束)を示す模式図である。
【図16】図16は、本発明の実施例において検討した拘束力分布(条件C:等分布+二次分布[2乗]拘束)を示す模式図である。
【図17】図17は、本発明の実施例において検討した拘束力分布(条件D:等分布+二次分布[1/2乗]拘束)を示す模式図である。
【図18】図18は、本発明の実施例において、柱部材を拘束した位置を示す模式図である。
【図19(a)】図19(a)は、図14の拘束力分布(条件A:等分布拘束)の結果を示しており、(a)は、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数を示すグラフである。
【図19(b)】図19(b)は、図14の拘束力分布(条件A:等分布拘束)の結果を示しており、部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図20】図20は、図15の拘束力分布(条件B:台形分布拘束)の結果を示しており、β=100のとき、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数を示すグラフである。
【図21(a)】図21(a)は、図15の拘束力分布(条件B:台形分布拘束)の結果を示しており、α=0のとき、βを100から1100まで200毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数を示すグラフである。
【図21(b)】図21(b)は、図15の拘束力分布(条件B:台形分布拘束)の結果を示しており、部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図22】図22は、図16の拘束力分布(条件C:等分布+二次分布[2乗]拘束)の結果を示しており、β=20の時、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数を示すグラフである。
【図23(a)】図23(a)は、図16の拘束力分布(条件C:等分布+二次分布[2乗]拘束)の結果を示しており、α=0のとき、βを20から220まで40毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数を示すグラフである。
【図23(b)】図23(b)は、図16の拘束力分布(条件C:等分布+二次分布[2乗]拘束)の結果を示しており、部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図24】図24は、図17の拘束力分布(条件D:等分布+二次分布[1/2乗]拘束)の結果を示しており、係数βが200の時、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数の応答を示すグラフである。
【図25(a)】図25(a)は、図17の拘束力分布(条件D:等分布+二次分布[1/2乗]拘束)の結果を示しており、α=0のとき、βを200から2200まで400毎に変化させたときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数を示すグラフである。
【図25(b)】図25(b)は、図17の拘束力分布(条件D:等分布+二次分布[1/2乗]拘束)の結果を示しており、部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図26】図26は、条件A,B,C,Dで、α=0における、等価減衰heqが最大となるときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数をまとめて示したグラフである。
【図27】図27は、条件Bにおいてβ=600の場合は、α=400で減衰定数が最大となったことを示すグラフである。
【図28(a)】図28(a)は、条件Bについて各β値に対して等価減衰heqが最大となるときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数をまとめて示したグラフである。
【図28(b)】図28(b)は、条件Bについて各β値に対して等価減衰heqが最大となるときの部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図29(a)】図29(a)は、条件Cについて各β値に対して等価減衰heqが最大となるときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数をまとめて示したグラフである。
【図29(b)】図29(b)は、条件Cについて各β値に対して等価減衰heqが最大となるときの部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図30(a)】図30(a)は、条件Dについて各β値に対して等価減衰heqが最大となるときの変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数をまとめて示したグラフである。
【図30(b)】図30(b)は、条件Dについて各β値に対して等価減衰heqが最大となるときの部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を示すグラフである。
【図31】図31は、最大変形性能を与えた拘束条件のC2における部材降伏が発生した時点の柱部材の曲率分布dθ/dhを示すグラフである。
【図32】図32は、降伏時の耐力の保持を制約条件にして、変形性能を最大にする最適問題の解として得られた拘束条件の、B2(α=800、β=800)における変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数のグラフである。
【図33】図33は、B3(α=400、β=900)でも、図32のB2とほぼ等しい結果が得られることを示す変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数のグラフである。
【図34】図34は、C3が、図32のB2、図33のB3とあまり変わらない性能を示す解を得たことを示す変位-復元力関係と部材降伏が発生した変位における等価減衰定数のグラフである。
【図35】図35は、B2,B3,C3の条件での部材降伏が発生した時点の柱部材の曲率分布dθ/dhを示すグラフである。
【図36】図36は、従来の柱の概略構成を示す斜視図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
橋脚柱等の柱における弾性域の変形性能は、部材内のひずみの最大値で決まる。曲げ変形に対して断面保持の仮定が成り立つ限り、断面を大きくすれば部材表面のひずみは大きくなり、変形性能は下がる、したがって、部材断面は小さい方が変形性能は大きくなり、同時に剛性は小さくなる。したがって、柱を構成する部材を鉛直方向に分割することにより、柱全体の変形性能を大きくすることができる。ただし、上記のように分割しただけなら、柱のエネルギー吸収能は大きくならないので、分割した柱部材を束ねるように周囲に強度の大きな拘束部材を設け、予め拘束力を導入する。これによって分割面での摩擦が期待できるようになる。
【0027】
上記構成によって耐震弾性柱の変形性能を高くできることについて、以下に説明する。図1は本発明の実施形態を示すものであり、耐震弾性柱の概略構成を示す斜視図である。同図に示すように、本実施の形態の耐震弾性柱10は、柱部材11a~11f(以下、これらを区別しない場合、柱部材11という。)が、拘束部15a,15b(以下、これらを区別しない場合、拘束部15という。)により締め付けられることによって、束ねられたものである。
【0028】
本実施の形態の耐震弾性柱10の柱部は、円柱である6つの柱部材11からなり、柱部材11aの周りを柱部材11b~11fにより取り囲んだ状態となっているから、隣り合う柱部材11の側面同士が接触し、当該接触する側面の間に摩擦力が発生することとなる。そして、この摩擦力の大きさは、拘束部15により柱部材11を締め付ける力の大きさにより制御することができるので、耐震弾性柱10全体としての変形性能とエネルギー吸収能とを容易に調整し、耐震弾性柱10に所望の耐震性能を付与することができる。
【0029】
一方、図36に示す従来の柱100のように、柱100を一つの部材により構成すると、柱の断面が大きくなり同じ変形量に対する部材表面のひずみは大きくなるから、本実施の形態の耐震弾性柱10のような大きな変形性能を実現することはできない。復元力と変位との関係につき、図2(a)および図2(b)を用いて以下に説明する。
【0030】
図2(a)および図2(b)は、それぞれ、図1の本発明の耐震弾性柱および図36の従来の柱について、柱の復元力-変位曲線を示すグラフである。図2(a)に示すように、耐震弾性柱10では、加わる力が大きくなると、柱全体では復元力の変化を殆ど伴わずに摩擦による塑性変形が生じた後に、柱部材11の弾性変形量を超えて降伏点a1に達することにより柱部材11に亀裂が発生し、その後に破断点a2に到達する。図2(b)に示すように、従来の柱100も、この降伏点b1に達した後、亀裂を生じて破断点b2に到達することは同じであるが、降伏点b1に到達する以前は弾性変形であり、降伏点a1よりも小さな変位で降伏点b1に到達して亀裂が発生し、その後に柱内部の破壊を伴いながら塑性変形を生じることになる。
【0031】
従来のRC柱の塑性変形領域では、破壊面が水平に入り鉄筋の塑性変形のみでエネルギー吸収が行われているのに対し、本発明の提案する構造形式では予め鉛直方向のせん断破壊面を入れることにより、柱全体としての塑性変形領域での挙動を制御して分割された個々の柱部材を弾性域に留め、柱部材の塑性変形によるエネルギー吸収がない代わりに分割面での摩擦によるエネルギー吸収による減衰が発揮される構造を実現している。
【0032】
このように、図1に示すように耐震弾性柱10を複数の柱部材11により構成することにより、柱部材11への亀裂の発生を抑制することができるから、地震の後の補修を不要とすることができる。ただし、残留変形が発生する場合があるが、その場合は拘束部15の拘束力を一旦解放することにより、残留変形を解消することができる。
【0033】
また、耐震弾性柱10では、拘束部15a,15bを2つ備えているので、柱部材11の位置に応じて異なる力を加えることが可能である。これにより、地震の際に大きな曲げモーメントが加わる部分への拘束力を他の部分よりも大きくすることができるから、耐震弾性柱10に加わる曲げ変形を分散させることができる。したがって、耐震弾性柱10に加わる曲げ変形を効率的に分散させ、耐震性を向上させることが可能となる。ここで、耐震弾性柱10を橋脚柱として用いる場合、一般にその上部よりも下部に大きな曲げモーメントが加わるから、柱の下部(下方)に設けられている拘束部15bの拘束力を、上部(上方)に設けられている拘束部15aよりも大きくすることが好ましい。
【0034】
図3は、本発明の他の実施形態を示すものであり、耐震弾性柱の概略構成を示す斜視図である。同図に示すように、本実施の形態の耐震弾性柱20は、柱部材21a~21g(以下、これらを区別しない場合、柱部材21という。)が、拘束部25a,25b(以下、これらを区別しない場合、拘束部25という。)により締め付けられることによって、束ねられたものである。同図に示すように、柱部材21が正6角柱であり、いわゆるハニカム構造となっている点において、耐震弾性柱20は、柱部材11が円柱の耐震弾性柱10(図1参照)とは異なっている。
【0035】
図3の耐震弾性柱20のように、柱部材21を正6角柱とすることにより、中心の柱部材21aの各側面を柱部材21b~21gの側面と接触させ、柱部材21b~21gの側面のうち3つを隣接する柱部材21の側面と接触させることができる。これにより、柱部材21同士が接触する面の面積を大きくすることができるから、接触面間の摩擦力を制御して耐震弾性柱20の変形性能を調整することが容易になる。
なお、図1、図3に示した形状は耐震弾性柱を構成する柱部材の形状の例示であり、本発明の耐震弾性柱を構成する柱部材の形状はこれらに限られず、柱を構成する部材が分割されたものであればよい。さらに本発明は、分割された柱部材の変形を厳密に弾性範囲内に留めることを意図するものではなく、大きな損傷を受けない範囲であればよい。
【0036】
また、柱部材の材料はRCに限定されるものではなく、木材、鋼材などあらゆる材料による柱部材が適用できる。さらに本発明の耐震弾性柱を水平方向に設置してフレーム構造の一部として使用する場合も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
また、本発明にかかる構造物は、上記耐震弾性柱を用いているものであればよく、その構造物の種類など、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。また、本発明の構造物の製造方法は特に限定されるものではなく、その構造物の種類などに応じた従来公知の方法を用いることができる。
【0038】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
以下では、本発明の耐震弾性柱の実施例として、橋脚柱について説明する。なお、以下の実施例は、本発明の耐震弾性柱を何ら限定するものではない。
【0040】
〔実施例〕
〔1 背景〕
本実施例では、本発明の耐震弾性柱の技術思想に基いた橋脚柱をフレームモデルでモデル化して、その挙動を解析した結果につき記載する。
【0041】
図4は、モデル化された本実施例の橋脚柱30の概略構成を示す正面図である。同図に示すように、本実施例の橋脚柱30は、橋脚柱30の上端部横梁部31aとフーチング部31bとの間の部分が鉛直-奥行方向に三分割した3本の柱部材31c,31d,31e(以下、これらを区別しない場合、柱部材31という。)を備えており、柱部材31を密着させる方向に拘束力を加えるように束ねている拘束部35a,35b,35cを複数備えている。なお、図4は柱部材31に対して複数箇所で拘束力を与えることを概略的に説明するものであり、後述するように、本実施例では拘束力を10箇所で加えている。
【0042】
以下の実施例においては、まず、橋脚柱をモデル化するための梁理論と、摩擦機構の表現方法を説明する。そして、その後に、プッシュオーバー解析によって、橋脚柱全体の荷重-変形関係を求め、分割した柱部材の拘束の方法によって、挙動がどのように異なるかを示した後、適切と思われる拘束の方法をについて検討した結果につき説明する。
【0043】
〔2 橋脚柱のモデル化〕
(2-1)概説
構造物の応答解析手法はいくつかあるが、本実施例は、本発明の「弾性耐震柱」の性能を検討、評価するのが目的であるので、数多くの条件の解析を効率的に実施できることから、計算時間が短く、かつ精度を大きく損なわないフレームモデルで解析することとした。
【0044】
以下では、本実施例で用いたRC橋脚柱のモデル化とその解析手法、さらに、摩擦機構のモデル化について述べる。
【0045】
(2-2)橋脚部材のモデル化
(2-2-1)断面諸量の設定
まず、本実施例で対象とした橋脚柱(RC橋脚単柱)30の概要を図5に示す。通常、鉄筋コンクリート部材はトリリニア応答特性を示すが、本実施例では、モデル化を単純にするため、鉄筋降伏以前までを弾性域とみなし、その剛性を図6に示すように鉄筋降伏ひずみまでの割線剛性で与えることとした。鉄筋降伏ひずみεsyは、次式(2.1)で表わせる。
εsy=σsa/Es …(2.1)
(ただし、σsaは鉄筋の永久ひずみ0.2%における引っ張り応力、Esは鉄筋のヤング係数である。)
したがって、コンクリート部の等価ヤング係数(Ec)eqは、コンクリートの曲げ強度fc、およびεsyを用いて、
(Ec)eq=fc/εsy …(2.2)
として与えた。
【0046】
ところで、鉄筋コンクリートの等価曲げ剛性(EI)eqは、鉄筋部の曲げ剛性EsIs、および、コンクリート部の曲げ剛性(EcIc)eqの和で与えられ、得られた(EI)eqから、以下の式により、鉄筋コンクリートの等価ヤング係数(E)eqを求める。
(E)eq=(EI)eq/(Is+Ic) …(2.3)
ここで、
Is:中立面から考えた鉄筋部の断面二次モーメント
Ic:中立面から考えたコンクリート部の断面二次モーメント
である。以上の手続から得られた断面諸量を表1に示す。
【0047】
【表1】
JP0004769950B2_000002t.gif
(2-2-2)はり要素の剛性マトリクスの誘導
柱部材は、通常のはり要素(鷲津久一郎、宮本博、山田嘉昭、山本善之、川井忠彦 著、「有限要素法ハンドブックI基礎編」、培風館、1981年参照)でモデル化する。剛性マトリクスを以下に示す。
【0048】
【数1】
JP0004769950B2_000003t.gif
(2-3)摩擦機構のモデル化
(2-3-1)導入
本来、摩擦機構は面で構成され体積を持たないが、モデル化の簡便にするため、図7に示すように柱部材と柱部材との節点間に架けるはり要素で表現する。さらに、定式化の繁雑さを避けるため、摩擦機構の非線形特性は、図8に示す完全弾塑性モデルを用いた。また、動摩擦係数と静摩擦係数は同じ値とし、すべて0.5と仮定した。以下に摩擦バネを表現するマトリクスの導出を示す。
【0049】
(2-3-2)摩擦バネモデル
摩擦機構を表現するはり要素は圧縮、曲げ、せん断を受けるが、摩擦力はせん断抵抗力として働き、圧縮、曲げ方向には影響しないと仮定し、そのバネ定数を導出する。図7に示す座標系について、節点変位ベクトル{u}
{u}={X,Y,θ,X,Y,θ …(2.5)
を与えたときの、部材中点におけるひずみ{ε}
{ε}={ε,ε,ε …(2.6)
は、以下の関係で結ばれるとした。
【0050】
【数2】
JP0004769950B2_000004t.gif
ここで、ε、ε、εは、それぞれ、軸力ひずみ、せん断ひずみ、曲げひずみである。
この関係をマトリクス表記すると、
{ε}=[Bα]{u} …(2.8)
である。ここで、
【0051】
【数3】
JP0004769950B2_000005t.gif
となる。
[Dα]は弾性マトリクスを表わし、
【0052】
【数4】
JP0004769950B2_000006t.gif
で与えられる。
ここで要素剛性マトリクス[Kα]は
【0053】
【数5】
JP0004769950B2_000007t.gif
で与えられるので,式(2.11)に式(2.9)と式(2.10)とを代入して1要素について積分すると、
【0054】
【数6】
JP0004769950B2_000008t.gif
となる。ただし、Aはせん断力に対するせん断有効面積で、通常、純断面積に断面固有な係数を付加したものであるが、本論文では、摩擦を考慮する要素の全断面積有効であるとした。
【0055】
また、節点変位ベクトル{u}が与えられたときの、部材中点での応力{σ
{σ}={N,Q,M} …(2.13)
は、
{σ}=[Dα][Bα]{u} …(2.14)
と求められる。ここで、
N:摩擦面に対し鉛直に働く応力
Q:摩擦面に働くせん断応力
M:摩擦を考慮する部材に働く曲げ応力
である。ただし、摩擦が働く全断面積をせん断有効面積とし、摩擦係数を0.5としたので、すべりは
Q>0.5N …(2.15)
となるときに生じる。
【0056】
(2-4)多自由度系の非線形静的解析法
復元力が非線形である系の時刻tにおける運動方程式は、次式で与えられる。
{R({U})}={P} …(2.16)
ここに、{U}は節点変位ベクトル、{R({U})}は復元力ベクトルで、{U}の関数、{P}は節点外力ベクトルである。
【0057】
ここで、復元力を図9のように線形項と非線形調整項に分けることで、式(2.16)を次式で書き換える。
[K]{U}-{Q}={P} …(2.17)
ここに、[K]は剛性マトリクス、{Q}は非線形復元力の線形項との調整ベクトル(以降、調整外力とする)で、次式で表されるような{X}の関数である。
{Q}=[K]{U}-{R({U})} …(2.18)
各タイムステップにおいて式(2.17)を満たすことが要求されることから、時刻tの節点変位ベクトル{U}を次式で求める。
{U}=[K]-1({P}+{Q}) …(2.19)
しかし、式(2.19)の調整外力項{Q}を求めるには、{U}が必要となる。そこで繰り返し計算法により収束計算を行うことで、{U}を求める。
【0058】
〔3 橋脚柱の荷重-変形特性〕
(3-1)概説
本項では鉛直方向に分割された橋脚柱に様々な条件の拘束を加えたモデルについて斬増載荷試験の数値シミュレーションを行い、各拘束条件での挙動を比較することにより、それぞれの非線形特性を調べた結果について説明する。
【0059】
図10に以下に説明するシミュレーションでモデルの概要を示す。対象とした橋脚柱30は高さ10m、下端固定、上端ヒンジで一辺3.5mの正方形断面を持つRC柱で、横梁部31aとフーチング部31bとの間に、正面内の一方向の曲げが作用するとして鉛直-奥行方向に三分割した3本の部材である柱部材31c~31e(以下、これらを区別しない場合、柱部材31という。)を備えている。柱部材31はそれぞれ、降伏するまでの挙動のみを考慮するので、すべて弾性とする。
【0060】
また、各柱部材31の外端に主鉄筋があるとみなし、図11に示すように、そこでのひずみ(柱部材31の外端のひずみ)が鉄筋降伏ひずみを超えると、橋脚柱30の柱部材31全体としての降伏であるとみなした。具体的には、図11に示すように、ε=ε+B/2ε(εは柱部材31の長手方向の歪みを示し、εは柱部材31の曲率(曲げ歪み)を示し、Bは柱部材31の幅を示している)が、鉄筋降伏ひずみを超えた場合に、橋脚柱30の柱部材全体としての降伏であるとみなした。
【0061】
評価パラメタとして部材降伏時の保有耐力、および変形能、さらに、部材降伏時の積載部変位を最大応答とする履歴減衰(図12参照)の等価減衰定数heqを用いた。ただし、等価減衰定数heq(柴田明徳著、「最新耐震構造解析」、森北出版、1981年参照)は
【0062】
【数7】
JP0004769950B2_000009t.gif
である。
シミュレーションは中央の部材の頂部に10[kN]ずつ斬増載荷することにより行う。
【0063】
(3-2)拘束条件による変形性能の違い
まず、柱部材31間が完全に固着している場合と初期拘束力が0の場合、すなわち柱部材31間が載荷するとただちに滑る場合の結果を図13に示す。柱部材31間が完全固着の場合と、完全分離の場合についてそれぞれ断面二次モーメントをI、Iとすると
【0064】
【数8】
JP0004769950B2_000010t.gif
となるので、図13に示すように前者が後者の9倍の勾配を持つことがわかる。以後、前者を初期剛性、後者を最終剛性と呼ぶ。さらに、部材幅が1/3になることにより後者は鉄筋を降伏させずに前者の3倍まで変形出来ることを示している。
【0065】
拘束は、柱上端から下端までの間に等間隔(1m)で10ヵ所、それぞれ幅1mの範囲で与える。
以下に検討した拘束力分布を示す。
条件A:等分布拘束(図14参照)
条件B:台形分布拘束(図15参照)
条件C:等分布+二次分布[2乗]拘束(図16参照)
条件D:等分布+二次分布[1/2乗]拘束(図17参照)
拘束する位置を示すため図18のように上からF(1)、・・・、F(X)、・・・、F(10)で表現する。拘束力は左右対称に与えることとし、柱変形によって変化しないものと仮定した。
【0066】
(3-2-1)条件A(等分布拘束)
図18に示す拘束する各位置への拘束応力を以下の式で与えた(図14参照)。
【0067】
【数9】
JP0004769950B2_000011t.gif
ここで、X=1の値が他の半分であることは、滑りを頂部から生じさせるためである。条件B、C、Dでも同様にこの調整を行っている。
【0068】
αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係を図19(a)に+と×印で示す。同図はどれかの部材(柱部材31)が降伏するまで(×印)の挙動を示している。この条件では、初期剛性から急激に最終剛性に移行している。これはすべての場所での滑りがほぼ同時に起こっていることを意味する。また、拘束力が大きくなるに従い、剛性の移行点の変位や荷重が大きくなり、最終剛性をもつ勾配線を押し上げる効果があると考えられる。
【0069】
また、同図に*印でプロットされた点は、柱部材が降伏した変位で1サイクル載荷した場合に得られる履歴ループの面積から計算された等価減衰定数heqである(他の条件も同様)。また条件Aで等価減衰heqが最大となるαに対する変位-復元力関係と等価減衰がAとしてプロットされている。また、この条件では、橋脚柱の下部が基礎と剛結であることから最下部の部材の曲げひずみが集中し降伏する。
【0070】
次に、部材降伏が発生した時点の各柱部材の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を図19(b)に示す。この図からわかるようにdθ/dhとhが曲げモーメント分布と同じようにほぼ直線関係にある。このことはそれぞれの柱部材が別々に挙動し、柱下端にひずみが集中して降伏することを示している。
【0071】
(3-2-2)条件B(台形分布拘束)
図18に示す拘束する各位置への拘束応力を以下の式で与えた(図15参照)。
【0072】
【数10】
JP0004769950B2_000012t.gif
β=100のとき、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係を図20に示す。条件A(等分布拘束)と比べると、拘束分布に勾配をつけたことによりすべりに遅れが生じている。ここで注意すべきことは、変形性能や減衰性能もほとんど損なわず保有耐力が向上していることである。
【0073】
この結果から示されたことは、拘束分布に勾配をつけることですべりが同時に発生することを防ぎ、耐力を維持したまま部材を降伏させずに大きな変形を許容することを示している。
【0074】
次に、拘束条件に勾配を与えることによる特性の変化をより明確にするため、α=0のとき、βを100から1100まで200毎に変化させたときの変位-復元力関係と等価減衰を図21(a)に示す。また、等価減衰heqが最大となるβに対する履歴と等価減衰が図中にBとしてプロットされている。この図からわかることは、βが大きくなると剛性変化点での耐力が増し、さらに変形性能が大幅に向上していることである。
【0075】
部材降伏が発生した時点の各柱部材(柱部材31)の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を図21(b)に示す。βが大きくなると、各部材の曲率分布が直線ではなくなり、条件Aでは橋脚柱下端で曲率が最大であったのに対し、条件Bでは柱の中間高さあたりに推移している。このことが柱下端にひずみを集中させずに、柱全体の変位を大きくしていると考えられる。
【0076】
(3-2-3)条件C(等分布+二次分布[2乗]拘束)
図18に示す拘束する各位置への拘束応力を以下の式で与えた(図16参照)。
【0077】
【数11】
JP0004769950B2_000013t.gif
β=20の時、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係と等価減衰定数を図22に示す。条件B(台形分布拘束)と比べると保有耐力や減衰はほぼ同じだが、変形性能が向上している。
【0078】
次に、α=0のとき、βを20から220まで40毎に変化させたときの変位-復元力関係と等価減衰定数を図23(a)に示す。また、このときの等価減衰heqが最大となるβに対する履歴、等価減衰が図中Cとしてプロットされている。条件Bの場合と比べると減衰が小さくなっていることが注目される。また、βが100以下では変形性能が極めて高いが、βがそれ以上になると、その変形能が保たれなくなる。
【0079】
部材降伏が発生した時点の各柱部材(柱部材31)の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を図23(b)に示す。βが大きくなると条件Bと同様、橋脚上部に曲げ変形を誘導していることがわかる。しかし、βが100以上に大きくなると高さ3m程度までの変形が抑えられてしまい、結果としてそこに部材力の集中が生じて降伏し、変形能を抑えていると考えられる。
【0080】
(3-2-4)条件D(等分布+二次分布[1/2乗]拘束)
図18に示す拘束する各位置への拘束応力を以下の式で与えた(図17参照)。
【0081】
【数12】
JP0004769950B2_000014t.gif
係数βが200の時、αを0から5000まで1000毎に変化させたときの変位-復元力関係と等価減衰定数の応答を図24に示す。この場合も条件B(台形分布拘束)に比べ変形許容は若干小さくなるが、減衰はほぼ同等で、条件A(等分布拘束)とBの中間的な応答性状を示していると考えられる。
【0082】
次に、α=0のとき、βを200から2200まで400毎に変化させたときの変位-復元力関係と等価減衰定数を図25(a)に示す。また、等価減衰heqが最大となるβに対する履歴と等価減衰が図中Dにプロットされている。条件Bと比べると減衰は若干大きくなるが、変形性能は劣る。
【0083】
部材降伏が発生した時点の各柱部材(柱部材31)の曲率dθ/dhの高さ方向hに対する分布を図25(b)に示す。橋脚上部の曲げ変形を誘導しているが、拘束力分布の変化を条件B、Cと比べ緩やかにしたことにより、曲率の高さ方向への変化も条件B(図21(b))、条件C(図23(b))と比べ小さくなっていることがわかる。
【0084】
(3-3)最適拘束条件
上述した検討結果から、橋脚柱上部の拘束力を小さくしてすべりを誘導するような拘束条件の場合に変形能の向上がみられ、さらに等価減衰定数が最大となる場合でも、未分割での降伏時の75%程度の耐力を保有することが可能であることも示された。そこで、減衰性能、および変形性能を最大化する最適条件を求める。
【0085】
(3-3-1)減衰性能を最大化するの拘束条件
条件A,B,C,Dで、α=0における、等価減衰heqが最大となるときの変位-復元力関係をまとめて図26に示す。これらは、まだ最適条件ではないが、この付近に最適条件があると考え、また、条件Aで得られた「等分布拘束は履歴の最終剛性勾配線を’押し上げる’効果がある」という知見を基に、式(3.4),(3.5),(3.6)でそれぞれαと係数βとを相互に変化させ、最適化を行う。この手順は各条件について同時の作業が出来ないので、個々の条件について以下の作業を行う。
【0086】
まず、各条件についてα=0における等価減衰heqが最大となるときのβの値がわかっているので、βを固定し、αを徐々に大きくして減衰定数の向上があるかどうか調べ、減衰定数が最大となる条件を求める。例えば条件Bでは図27に示すように、α=400、β=600のときに減衰定数が最大となったので、この拘束条件を新たにB4とする。次に、βの値を大きくしてからαの値を0から増やし、減衰性能の向上があるかどうかを調べる。さらに、βの値を小さくし、αの値を徐々に大きくすることによって、減衰定数の向上があるかどうかを調べる。この作業をくり返し、減衰性能の向上がなければこの作業を打ち切る。これら一連の作業から、最も減衰性能の高い拘束条件を求めることができる。
【0087】
条件B、C、Dについて一連の作業から得られた履歴応答結果を、それぞれ、図28(a)、図28(b)、図29(a)、図29(b)、図30(a)、および図30(b)に示す。これら結果から、どの条件でもα=0の場合より減衰性能が大きくなる条件が求まり、B6のときの31%が最大等価減衰定数となった。
【0088】
(3-3-2)変形性能を最大化するの拘束条件
上述した解析結果から求められた最大変形性能を与える拘束条件は、図23(a)に示した条件Cの2であった(以下、C2という。)。ここで着目すべきことは、若干ではあるが拘束力を与えなかったときの応答(図19(a)の1、以下、A0と呼ぶ)の場合より、C2の方が変形性能が高いことである。そこで、部材(柱部材31)降伏時の曲率分布dθ/dhを図31に示す。C2は、橋脚基部での変形を抑え、その上の部分(高さ方向3m以上の範囲)に曲げ変形を誘導することによって、変形性能が最も顕著に向上した拘束条件であったと考えられる。
【0089】
また、これまでの結果から、降伏時の耐力の保持と変形性能の両立には条件Bが適していると考えられる。そこで、降伏時の耐力の保持を制約条件にして、変形性能を最大にする最適問題の解としての拘束条件として、図32に示すB2(α=800、β=800)が得られる。また図33に示すB3(α=400、β=900)でも、ほぼ等しい結果が得られる。しかし、条件Cで同じ最適問題を解くと図34に示すC3のように、B2、B3とあまり変わらない性能を示す解を得た。そこで、これらの条件での曲率分布dθ/dh(図35)を示す。この図からわかることは、条件C3では二次関数による拘束によって橋脚基部での変形を抑えるという特性がよく顕われている。また、耐力保持と変形性能の両立を図った場合には、部材曲率の極大値が高さ4.5m付近に生じることがわかる。
【0090】
〔4 まとめ〕
上述した本実施例では、RC橋脚柱を鉛直軸方向に分割することによる橋脚全体としての変形性能を増大し、分割面での摩擦による減衰を付加することによって、地震時に柱部材の応答が弾性域内にとどまって部材損傷の生じない橋脚柱の実現可能性について、プッシュオーバー解析を行い、様々な拘束条件での挙動を比較することによりその変形特性を調べた。以下に、本実施例で得られた知見を要約して列挙する。
(1)初期拘束力の分布を変えることで、外力による橋脚柱部材の変形状態を制御可能であることが示された。
(2)柱基部に大きな拘束力を与えることにより、柱基部にひずみを集中させずに柱上部に変形を誘導する機構が示された。
(3)拘束分布条件によっては、分割しない橋脚柱の鉄筋降伏時耐力と同等の耐力を持ちながら、その2倍以上の変形を許容する。
(4)分割面での摩擦により等価減衰が定数で30%程度得られることにより、地震時の応答を低減する効果が期待される。
【0091】
発明を実施するための最良の形態の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の耐震弾性柱は、低コストで、柱自体に十分な変形能と減衰とが付与された橋脚柱等の構造物に適用することができる。
図面
【図1】
0
【図2(a)】
1
【図2(b)】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14】
14
【図15】
15
【図16】
16
【図17】
17
【図18】
18
【図19(a)】
19
【図19(b)】
20
【図20】
21
【図21(a)】
22
【図21(b)】
23
【図22】
24
【図23(a)】
25
【図23(b)】
26
【図24】
27
【図25(a)】
28
【図25(b)】
29
【図26】
30
【図27】
31
【図28(a)】
32
【図28(b)】
33
【図29(a)】
34
【図29(b)】
35
【図30(a)】
36
【図30(b)】
37
【図31】
38
【図32】
39
【図33】
40
【図34】
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【図35】
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【図36】
43