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明細書 :電子ビーム露光装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4945763号 (P4945763)
登録日 平成24年3月16日(2012.3.16)
発行日 平成24年6月6日(2012.6.6)
発明の名称または考案の名称 電子ビーム露光装置
国際特許分類 H01L  21/027       (2006.01)
H01J  37/305       (2006.01)
FI H01L 21/30 541T
H01J 37/305 B
請求項の数または発明の数 14
全頁数 22
出願番号 特願2007-516201 (P2007-516201)
出願日 平成17年11月18日(2005.11.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年11月20日京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーで開催された京都大学共催の関西テクノアイデアコンテスト’04において文書をもって発表
国際出願番号 PCT/JP2005/021299
国際公開番号 WO2006/123447
国際公開日 平成18年11月23日(2006.11.23)
優先権出願番号 2005144049
優先日 平成17年5月17日(2005.5.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年11月13日(2008.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】木村 建次郎
【氏名】小林 圭
【氏名】山田 啓文
【氏名】松重 和美
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】渡戸 正義
参考文献・文献 特開昭64-061914(JP,A)
特開昭55-087432(JP,A)
特開平06-236840(JP,A)
特開昭60-092617(JP,A)
特開平11-097331(JP,A)
特開昭54-085665(JP,A)
特開平06-236842(JP,A)
特開2004-304135(JP,A)
調査した分野 H01L 21/027
G03F 7/20 - 7/24
H01J 37/30 - 37/317
H01J 43/00 - 43/30
特許請求の範囲 【請求項1】
二次元の光パターンを発生するための光パターン発生部と、
入射された前記光パターンに基づく電子ビームアレイを生成し、前記電子ビームアレイを増幅し、増幅電子ビームアレイとして一括出射するための電子増幅部と、
前記増幅電子ビームアレイを、電子線レジスト上に集束するための電子ビームレンズ部と、を有し、
前記増幅電子ビームアレイは、複数の各マイクロ電子ビームを集合したものであり、
前記電子増幅部は、電子を増幅する、筒状のマイクロチャネルを、前記マイクロチャネルの軸方向を前記光パターンの光軸方向に対し沿うように、複数、それぞれ、前記光軸方向に対し直交する方向に互いに平行に隣り合って形成して、
前記複数の各マイクロ電子ビームは、互いに離間しており、かつ、前記光パターンの光路方向に沿っていることを特徴とする電子ビーム露光装置。
【請求項2】
前記電子ビームレンズ部は、さらに、前記増幅電子ビームアレイを、加速、アライメントおよび投影することの、少なくとも一つをできるようになっている請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項3】
前記マイクロチャネルの直径が、1μm~100μmであり、前記マイクロチャネルの直径に対する長さの比(L/d)が、20~200である請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項4】
前記電子増幅部は、前記光パターンの入射側に、入射してくる光子を電子に変換して出射する光電膜を備えている請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項5】
前記光パターン発生部は、前記電子増幅部における光パターンの入射部において多光子励起状態とするためのフェムト秒レーザと、上記フェムト秒レーザからのレーザ光を前記二次元の光パターンにて反射するためのマイクロミラーアレイ部とを有している請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項6】
さらに、前記増幅電子ビームアレイによって描画されたパターンに生じる歪を低減するように前記光パターンを補正するための補正部を有している請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項7】
前記補正部は、前記光パターン発生部を制御して、前記増幅電子ビームアレイに生じる歪を相殺するように逆歪光パターンを生成するための逆歪光パターン生成部を備えている請求項6に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記光パターン発生部を制御して、前記光パターンを、互いに補間し合う複数の分割光パターンをそれぞれ生成するための分割光パターン生成部を備えており、
前記複数の分割光パターンに基づく、互いに隣り合う各マイクロ電子ビームの間隔は、前記光パターンに基づく、互いに隣り合う各マイクロ電子ビームの間隔より広いものである請求項6に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項9】
さらに、前記電子増幅部からの増幅電子ビームアレイの出射角度のバラツキを抑制するため、電子増幅部の出射側にグリッド状静電レンズ部を有している請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項10】
前記マイクロチャネルは、前記電子増幅部からの増幅電子ビームアレイの出射角度のバラツキを抑制するように、前記増幅電子ビームアレイの出射口側端部の内周面が、前記マイクロチャネルの出射端に向かって末広がりとなるように形成されている請求項に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項11】
前記マイクロチャネルは、前記増幅電子ビームアレイの電子を間欠的に出射するものである請求項に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項12】
前記補正部は、前記各分割光パターンをそれぞれ時分割にて生成するものである請求項8に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項13】
前記光パターン発生部は、二次元パターンデータから前記二次元の光パターンを発生するものである請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
【請求項14】
前記二次元の光パターンは、半導体素子の回路パターンに応じたものである請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIといった半導体装置の製造において、上記半導体装置における半導体素子の微細加工が可能な、電子ビーム露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子の性能は、図12に示すように、半導体リソグラフィー技術による微細加工の精度(つまり、最小加工寸法の低減化)に委ねられているといっても過言ではない。これまでの可視光帯域の光(電磁波)を利用したリソグラフィー技術による微細加工は、その光の波長に依存して解像度が決まる。このため、微細加工のより微細化を進めるためには、図13に示すように、可視光領域からEUV(Extreme Ultra Violet rays、極紫外線)やX線などの、より短波長帯域の光を利用する必要があった。
【0003】
しかし、それらの短波長帯域の光は、その光の発生装置の実現や光ビームの縮小などに用いる光学系の実現が容易ではない。
【0004】
このことから、発生や制御が比較的容易である電子ビーム(電子線)を半導体リソグラフィー技術による微細加工に用いることが考えられた。
【0005】
しかしながら、電子ビームを用いた既存の半導体製造(リソグラフィー)装置は、一本の電子ビームにて、半導体素子の回路パターンを直接描画するので、高集積度の半導体素子における回路パターンの全てを描画するのに多大な露光時間(数時間から数十時間)を要することが問題であった。つまり、光の波長に依存した微細加工限界を打ち破る電子ビーム露光方式は、”一筆書き”の一次元的な露光方式であるが故に直接ウェハー全体を露光するには多大な露光時間を要し、実用的でないという問題を生じている。
【0006】
近年、電子ビームを用いた露光方法において、露光時間を短縮化するために、上記パターンを一括描画する二次元電子ビームによる一括露光方法が開発されている。そのような二次元電子ビーム一括露光方式としては、SCALPEL方式(AT&T)や、PRIVAIL方式(IBM)が提案されている。
【0007】
SCALPEL方式では、図14(a)に示すように、メンブレン32aの表面上にパターン化された散乱部32bを備えるレチクル32に対し、電子ビーム31を照射する。出射電子ビームを電子レンズ33およびバックフォーカルプレーンフィルタ34を有する光学系により電子線レジストを塗布した金属薄膜35に照射・露光して上記パターンの回路を形成する方式である。SCALPEL方式については、特許文献1にも記載されている。
【0008】
PRIVAIL方式においては、図15(a)および図15(b)に示すように、前記パターンに応じた空孔44aを形成したSi基板44をレチクルとして用い、上記Si基板44に電子ビーム41を照射する。このとき、空孔44aを通過した電子ビーム41を、光学系を用いて、電子線レジストが塗布された金属薄膜を備えたウェハー47上にそれぞれ照射・露光する方式である。上記光学系としては、電子レンズ42、電子ビーム軸偏向用ヨーク43aを備えたイルミネーションレンズ43、コリメーションレンズ45、およびコントラストアパーチャ46を備えたプロジェクションレンズ46が挙げられる。ただし、PRIVAIL方式は、図15(c)に示すような、中空の部分を備えたSi基板44を作製できないという不都合を有している。PRIVAIL方式については、特許文献2にも記載されている。
【特許文献1】
米国特許第5,260,151号(Date of Patent:1993年11月09日)
【特許文献2】
米国特許第5,466,904号(Date of Patent:1995年11月14日)
【発明の開示】
【0009】
(発明が解決しようとする課題)
前記のSCALPEL方式は、図14(b)に示すように、電子ビーム31がメンブレン32aを通過する必要があるため、その部分で著しく解像度が低下してしまうという課題を生じている。
【0010】
前記のPRIVAIL方式は、複雑なパターン、例えば図15(c)に示すような中空を備えたパターンを形成するときには、上記パターンを分割した各小パターンを上記ウェハー47上にそれぞれ照射する。このため、上記方式は、上記各小パターンの相互間での位置あわせが必要となり、この位置あわせの精度が原因でSCALPEL方式と同様に解像度が著しく低下する(解像度としては100nmが限界)という課題を生じている。
【0011】
また、上記両方式においては、レチクルの製作や真空室内への上記レチクルの設置など面倒な操作が必要であるという課題も生じている。このように各方式には、上述した根本的な課題がある。
本発明の目的は、電子ビームによる高精細な描画パターンを形成できる電子ビーム露光装置を提供すると共に、所望する二次元の描画パターンの形成を、二次元一括露光によって迅速に実現できて上記形成を低コスト化できる、電子ビーム露光装置を提供することである。
(課題を解決するための手段)
本発明に係る電子ビーム露光装置は、上記課題を解決するために、二次元の光パターンを発生するための光パターン発生部と、入射された前記光パターンに基づく電子ビームアレイを生成し、前記電子ビームアレイを増幅し、二次元パターンの増幅電子ビームアレイとして一括出射するための電子増幅部と、前記増幅電子ビームアレイを、電子線レジスト上に集束するための電子ビームレンズ部と、を有し、上記増幅電子ビームアレイは、複数の各マイクロ電子ビームが集合したものであり、上記複数の各マイクロ電子ビームは、互いに離間しており、かつ、前記光パターンの光路方向に沿っていることを特徴としている。
上記電子ビーム露光装置では、前記電子ビームレンズ部は、さらに、前記増幅電子ビームアレイを、加速、アライメントおよび投影することの、少なくとも一つをできるようになっていることが好ましい。
上記構成によれば、二次元の光パターンに基づく増幅電子ビームアレイを、電子線レジストが塗布された金属薄膜を備えた基板上の上記電子線レジスト上に照射・露光する。このことにより、二次元の露光パターンを一括して描画でき、露光時間を短縮化できる。さらに、上記構成は、光パターンに基づく電子ビームアレイを増幅した増幅電子ビームアレイを用いているので、上記電子線レジストに照射される電子ビーム強度を大きくできる。この結果、上記露光時間をさらに短縮化できて、描画速度を向上できる。
これにより、上記構成は、上記描画パターンの精度および描画速度を向上できるから、例えば半導体素子の最小加工寸法が、5nm以下といった、より微細な加工精度をより迅速に実現できて、5nmスケール以下の高集積度の半導体素子を有する超高密度のLSIを、より低コストにて製造できる。
また、前記電子ビームレンズ部が、さらに、前記増幅電子ビームアレイを加速できるようになっていると、電子線を短波長化できるので、描画パターンを、より微細化できて、上記描画パターンの精度および描画速度を向上できる。また、前記電子ビームレンズ部が、さらに、前記増幅電子ビームアレイをアライメントできるようになっていると、上記描画パターンの精度をより向上できる。
【0018】
上記電子ビーム露光装置では、前記電子増幅部は、電子を増幅する、筒状のマイクロチャネルが、前記マイクロチャネルの軸方向を前記光パターンの光軸方向に対し沿うように、複数、それぞれ、前記光軸方向に対し直交する方向に互いに隣り合って形成されていることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、上記各マイクロチャネルを設けたことにより、照射した光パターンを分割化した各マイクロ電子ビームの集合体である増幅電子ビームアレイをより確実に形成できる。
【0020】
この結果、上記構成は、増幅された増幅電子ビームアレイを、より確実に得ることができるので、上記描画パターンの描画速度をより向上させることができる。このことから、例えば半導体素子の最小加工寸法が、5nm以下といった、より微細な加工精度をより迅速に実現できて、5nmスケール以下の高集積度の半導体素子を有する超高密度のLSIを、より低コストにて製造できる。
【0021】
上記電子ビーム露光装置においては、前記電子増幅部は、前記光パターンの入射側に、入射してくる光子を電子に変換して出射する光電膜を備えていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、光パターン発生部からの光パターンの光強度が小さくとも、光電部を、電子増幅部における、光パターンの入射側に設けたことで、上記光パターンに応じた電子パターンを電子増幅部に入射し増幅して、増幅電子ビームアレイを、より確実に得ることが可能となる。
【0023】
上記電子ビーム露光装置では、前記光パターン発生部は、フェムト秒レーザと、上記フェムト秒レーザからのレーザ光を前記二次元の光パターンにて反射するためのマイクロミラーアレイ部とを有していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、マイクロミラーアレイ部により二次元の光パターンとなった、フェムト秒レーザからのレーザ光は、電子増幅部に照射されると、上記電子増幅部において、上記光パターンに準じた電子ビームアレイを生成できる。
【0025】
これにより、上記構成は、光電膜を用いた場合と同様な、高精細で、迅速化できる描画パターンによる半導体素子を形成できる。その上、上記構成は、光電膜を省くことが可能であるから、光電膜に必要な真空状態の維持という、装置の大型化や高コスト化を抑制できる。
上記電子ビーム露光装置においては、さらに、前記増幅電子ビームアレイによって描画されたパターンに生じる歪を低減するように前記光パターンを補正するための補正部を備えていることが望ましい。
上記構成によれば、増幅電子ビームアレイによって描画されたパターンに生じる歪を低減するように光パターンを補正するための補正部を設けたので、増幅電子ビームアレイにより描画されるパターンを、光パターン側から補正することで、所望する描画パターンに近づけることが確実化および迅速化できる。
上記電子ビーム露光装置では、前記補正部は、前記光パターン発生部を制御して、前記増幅電子ビームアレイに生じる歪を相殺するように逆歪光パターンを生成するための逆歪光パターン生成部を備えていてもよい。
上記構成によれば、増幅電子ビームアレイに生じる歪を相殺するように逆歪光パターンを生成するための逆歪光パターン生成部を設けたことで、上記相殺によって描画パターンの精度を改善できる。
上記電子ビーム露光装置においては、前記補正部は、前記光パターン発生部を制御して、前記光パターンを、互いに補間し合う複数の分割光パターンをそれぞれ生成するための分割光パターン生成部を備えており、上記複数の分割光パターンに基づく、互いに隣り合う各マイクロ電子ビームの間隔は、前記光パターンに基づく、互いに隣り合う各マイクロ電子ビームの間隔より広いものであってもよい。
上記構成によれば、互いに補間し合う複数の分割光パターンをそれぞれ生成するための分割光パターン生成部を備えたことにより、複数の各分割光パターンから、互いに補間し合う、複数の各分割パターン電子ビームアレイを得ることができる。それらの各分割パターン電子ビームアレイを時間軸に沿って互いに異なる時間に電子線レジストの同一エリアに照射することで、前記光パターンに対応した描画パターンを電子線レジスト上に形成できる。
このとき、時分割にて用いられる、各分割パターン電子ビームアレイにおける、互いに隣り合うマイクロ電子ビームの間隔を大きくできる。これにより、各分割パターン電子ビームアレイにおける、互いに近接したマイクロ電子ビーム間および電子線レジスト内部での散乱電子間の静電相互作用力を軽減することができる。
【0033】
その結果、上記構成は、所望の描画パターンによる歪の少ない感光パターンが電子線レジスト上に得られるので、分割パターン電子ビームアレイによる上記感光パターンにおける描画の高精度化が可能となる。
【0034】
上記電子ビーム露光装置では、さらに、前記電子増幅部からの増幅電子ビームアレイの出射角度のバラツキを抑制するため、電子増幅部の出射側にグリッド状静電レンズ部を有していてもよい。
【0035】
上記構成によれば、増幅電子ビームアレイをグリッド状静電レンズ部におけるグリッド状部を通過させることで、互いに平行化できて前記出射角度のバラツキを抑制して、上記バラツキに起因する解像度の低下を軽減できる。その上、前記出射角度のバラツキを抑制できるから、前述の光パターンとの相似性を向上できて、描画パターンの高精度化が可能となる。
【0036】
上記電子ビーム露光装置においては、前記マイクロチャネルは、前記電子増幅部からの増幅電子ビームアレイの出射角度のバラツキを抑制するように、前記増幅電子ビームアレイの出射口側端部の内周面が、前記マイクロチャネルの出射端に向かって末広がりとなるように形成されていてもよい。
【0037】
上記構成によれば、上記末広がりの形状により、グリッド状静電レンズ部を設けた場合と同様に、出射された増幅電子ビームアレイの各マイクロ電子ビームの各出射方向を上記マイクロチャネルの中心軸に対し平行となるように近づけることができる。
【0038】
この結果、前記出射角度のバラツキを抑制できるから、上記バラツキに起因する解像度の低下を軽減できる。その上、前記出射角度のバラツキを抑制できるから、前述の光パターンとの相似性を向上できて、描画パターンの高精度化が可能となる。
【0039】
(発明の効果)
本発明の電子ビーム露光装置は、以上のように、二次元の光パターンに基づく、電子ビームアレイを生成し、前記電子ビームアレイを増幅し、増幅電子ビームアレイとして出射するための電子増幅部と、前記増幅電子ビームアレイを電子線レジスト上に集束するための電子ビームレンズ部とを有している構成である。
【0040】
それゆえ、上記構成は、パターン化された増幅電子ビームアレイにより、描画パターンを高分解能、高精度かつプログラマブルに描画して形成することができる。この結果、前述したように、例えば最小加工寸法が5nm以下といった、より微細な加工が実現でき、5nmスケール以下の半導体素子を備えた超高密度LSIが製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る実施の第一形態の電子ビーム露光装置を示す概略要部断面図である。
【図2】上記電子ビーム露光装置に用いるMCPのマイクロチャネルにおける要部破断の斜視図である。
【図3】上記MCPの要部破断の斜視図である。
【図4】上記MCPの要部平面図である。
【図5】上記MCPの印加電圧とゲインとの関係を示すグラフである。
【図6(a)】上記電子ビーム露光装置の電子ビームレンズ部を示す斜視図である。
【図6(b)】上記電子ビーム露光装置の電子ビームレンズ部を示す正面図である。
【図7】上記MCPと電子レンズビーム部とにおける、光パターンから増幅電子ビームアレイが生成され、集束され、投影される状態を示す斜視図である。
【図8(a)】上記増幅電子ビームアレイが集束される状態を示す斜視図である。
【図8(b)】集束されて電子線レジスト上での上記増幅電子ビームアレイの状態を示す斜視図である。
【図8(c)】集束された上記増幅電子ビームアレイでの各電子ビーム間の相互作用を示す概略正面図である。
【図9(a)】上記増幅電子ビームアレイの各マイクロ電子ビーム間の相互作用を緩和するための一例を示し、上記増幅電子ビームアレイを生成するための光パターンを分割して形成した、互いに補間する各分割光パターンの例を示す平面図である。
【図9(b)】上記各分割光パターンを合わせたときの増幅電子ビームアレイを示す平面図である。
【図10(a)】上記MCPからの増幅電子ビームアレイを整形するためのグリッド状静電レンズ部を示す要部破断斜視図である。
【図10(b)】上記グリッド状静電レンズ部の断面図である。
【図11(a)】本発明の増幅電子ビームを示す概略正面図である。
【図11(b)】従来の電子ビームを示す概略正面図である。
【図12】半導体素子としてのDRAM、マイクロプロッセッサの最小加工寸法における、経年的で、一般的な減少の変化を示すグラフである。
【図13】X線露光、EUV露光、電子線露光における露光波長と解像度との関係を示すグラフである。
【図14(a)】従来の電子ビームでの露光の例を示す断面図である。
【図14(b)】図14(a)に示す従来の電子ビームでの露光の例の要部拡大断面図である。
【図15(a)】従来の電子ビームでの露光の他の例を示す断面図である。
【図15(b)】図15(a)に示す従来の電子ビームでの露光の他の例の要部拡大断面図である。
【図15(c)】上記他の例では不可能な、レチクルとしてのSi基板での空孔の例を示す正面図である。
【図16】本発明に係る実施の第二形態の電子ビーム露光装置を示す概略要部断面図である。
【図17】上記実施の第二形態の電子ビーム露光装置における、DMD(デジタルミラーデバイス、登録商標、マイクロミラーアレイ部)の要部斜視図である。
【図18】本発明に係る実施の第一形態および第二形態の電子ビーム露光装置におけるMCPのマイクロチャネルの一変形を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(実施の第一形態)
本発明に係る電子ビーム露光装置、半導体製造装置の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、上記電子ビーム露光装置を備えた半導体製造装置では、図1に示すように、内部での真空状態を維持できる箱状の真空チェンバー1が、その真空度を10-6Torr以下となるように設けられている。本実施の形態では、上記真空度を10-8Torrに設定した。
【0043】
真空チェンバー1内の底部には、露光される基板5を載置するためのステージ(載置台)2が、二次元の水平方向に移動可能に取り付けられている。真空チェンバー1の内部または外部には、ステージ2を移動駆動するためのメカニカルドライブ3が、後述するコントローラ17により制御可能に設けられている。また、上記ステージ2の位置(つまり移動位置)をモニタするためのステージ位置モニタ4が、そのモニタ位置を後述するコントローラ17に通知するように取り付けられている。
【0044】
上記ステージ2に載置される基板5の表面上には、半導体素子の回路を形成するための金属薄膜、半導体膜または絶縁膜といった薄膜6が形成されており、さらに、上記薄膜6の表面上においては電子線レジスト7が塗布されている。
【0045】
電子線レジスト7としては、ポジ型レジスト、ネガ型レジストが挙げられる。上記ポジ型レジストとしては、主鎖に4級炭素を有する高分子が、電子線により主鎖切断の割合(放射線化学では100eV当たりの反応数を表すG値を用いる)が大きいので好ましい。ポジ型レジストの高分子の例は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヘキサフルオロブチルメタクリレート(FBM)、ポリ(トリフルオロ-α-クロロアクリレート)(EBR-9)などのハロゲン化ポリアクリレートや、それれとメチルアクリレートの共重合体が挙げられる。ポジ型レジストの高分子の他の例は、ポリ(ブテン-1-スルホン、1μC/cmと感度が高い)、DNQ-ノボラック樹脂が挙げられる。DNQ-ノボラック樹脂の例は、ポリメチルペンテンスルホン(PMPS)とノボラック樹脂からなるものである。ポジ型レジストのさらに他の例は、化学増幅系レジストである、酸触媒脱保護反応を利用したものが挙げられる。
【0046】
前記ネガ型レジストとしては、エポキシ基を含む高分子が電子線に対する、架橋の反応感度が高いことを利用したポリ(グリシジルメタクリレート)(PGMA)や、グリシジルメタクリレートとエチルアクリレートとの共重合体(COP)、ポリスチレン系レジストが挙げられる。ポリスチレン系レジストは、エポキシ基を含むモノマーと芳香環を含むモノマーとの共重合体である。上記各レジストには、感度向上のために、化学構造として、ハロゲンや、クロルメチル基、およびアリル基の少なくとも一つが導入されていてもよい。
【0047】
真空チェンバー1内の頂部近傍には、半導体素子の回路パターンに応じた二次元の光パターン13を生成するためのプロジェクター(光パターン発生部)8が、プロジェクター8の発光表面から上記光パターン13を外部に対して出射するように設けられている。
【0048】
上記プロジェクター8としては、透過型液晶方式と単板式DLP(Digital Light Processing)方式とが挙げられる。光パターン13のダーク部分に存在する微量の光子は、後述するMCP11により1000倍以上に増倍され、最終的に電子線レジスト7の被感光箇所を感光するため、コントラスト比が一般に高いとされる単板式DLP方式がより望ましい。
【0049】
プロジェクター8のコントラスト比が問題となる程度の十分な感光感度を持つレジスト材料を電子線レジスト7として使用する場合は、光を遮るマスクをMCP11の上面(光の入射側面)に配置し、プロジェクター8に代えて使用することも可能である。フォトマスク(液晶シャッター等含む)をMCP11の背面(光パターン13の入射側)に設置し、MCP11の背面に対し、全面光を照射することで、プロジェクター8を不必要となる。この場合、光パターン13毎にフォトマスクを設置する必要がある。最終的には、後述する電子ビームレンズ部12で、パターン化された増幅電子ビームアレイ14を集束させるため、フォトマスクに高い解像度は必要ない。
【0050】
また、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略記する)発光素子をマトリクス上に配置したEL発光部をプロジェクター8と後述のレンズ9の代わりに利用できる。この場合、EL発光部を後述する光電膜10と集積し、EL発光部から光パターン13を、直接、光電膜10に等倍投射して、上記光電膜10から上記光パターン13に応じた、パターン化された電子ビームアレイを後述するMCP11に入射することも考えられる。いずれにせよ、光パターン13を、後述する光電膜10に照射する段階(言い換えると、後述するMCP11への入射位置)では、上記光パターン13は、μmレベルの精度があれば充分である。
【0051】
上記光パターン13の光路上には、入射された光パターン13に基づく、パターン化された電子ビームアレイを生成し、その電子ビームアレイを数千倍から数千万倍までに増幅した、パターン化された増幅電子ビームアレイ14を出射するためのマイクロチャネルプレート(以下、MCPと略記する、電子増幅部)11が、上記増幅電子ビームアレイ14の光路を上記光パターン13の光路方向にほぼ沿うように設けられている。
【0052】
上記プロジェクター8とMCP11との間の光路中には、必要に応じて、光パターン13をMCP11の入射側に効率よく入射するための凸または凹のレンズ9が設けられていてもよい。また、MCP11の入射側に、入射した光を電子に変換して出射する光電膜10が設けられていることが望ましい。
【0053】
上記光電膜10の素材としては、マルチアルカリ(Na-K-Sb-Cs)、バイアルカリ(Sb-Rb-Ce、Sb-K-Cs)、Ce-Te、Ag-O-Cs、GaAs、GaAsP等が代表的なものとして挙げられる。可視領域では、CdSが広く用いられ、感度を増すために一般に(Cu、Ag、Sb等)が添加される。本実施形態では、CdSを用いている。
【0054】
なお、上記光パターン13の光子がMCP11のマイクロチャネルにおける内面の半導体部の仕事関数を上回るエネルギーを持つ場合、光電膜10を省くことができる。また、200nm以下の短波長のUVによる光パターン13をMCP11の内側に照射した場合も、上記内面の半導体部から二次電子(secondary electron)が発生し、上記光パターン13に応じた増幅電子ビームアレイ14を得ることができるので、光電膜10は不必要となる。上記UVによる光パターン13の作製には、UVフォトマスクをMCP11の上面(光の入射側)に設置すればよい。
【0055】
次に、前記MCP11について説明する。MCP11は、図2および図3に示すように、電子を増幅する、筒状のマイクロチャネル11aが、マイクロチャネル11aの軸方向を、MCP11に向かって入射してくる前記光パターン13の光軸方向に対し沿うように、複数、それぞれ、前記光軸方向に対し直交する方向に互いに平行に隣り合って形成されている。上記筒状としては、円筒状や、四角筒状、六角筒状が挙げられるが、製作の容易さから、本実施形態では、円筒状が用いられている。
【0056】
MCP11の作製については、MCP11の1つのマイクロチャネル11aを取り上げて以下に説明する。まず、例えば鉛ガラス板の本体11bに、その厚さ方向に複数の筒状部を互いに平行に形成する。上記筒状部の直径は、1μm~100μmに、その直径に対する筒状部の長さの比(L/d)は、20~200、より好ましくは40~100に設定されている。本実施形態では、直径を2μ~10μm、比(L/d)を40~80に設定している。また、筒状部の軸方向は、鉛ガラス板の表面の法線方向に沿った平行としてもよいし、8°程度まで傾斜していてもよいが、本実施形態では平行としている。
【0057】
次に、各筒状部の内面に、一個の電子が衝突すると、上記衝突方向に沿った方向に複数の二次電子を放出する構造を備えた半導体部11cを形成する。上記半導体部11cは、本体11bを水素雰囲気下、250℃~450℃の高温での還元により本体11bの表面状に抵抗性の半導体部として形成される。上記半導体部11cの本体11bの厚さ方向での抵抗値は、10Ω~1010Ωに設定されている。
【0058】
なお、上記半導体部11cとしては、プラズマCVD(化学的気相成長法)により堆積されたダイモンドライクカーボン膜であってもよい。
【0059】
続いて、筒状の各半導体部11cが厚さ方向に形成された鉛ガラス板の本体11bの両表面に、ニクロムまたはインコネルの蒸着により各電極11d、11eをそれぞれ形成して、図4に示すようなマイクロチャネル11aが作製される。
【0060】
このようなマイクロチャネル11aでは、各電極11d、11e間に、電子の入射側をマイナス、電子の出射側をプラスとして、図5に示すように、600V~1100Vの直流電圧を印加しておくと、電子の入射側の電極11d側から、マイクロチャネル11a内の半導体部11cに一個の電子25が衝突すると、上記衝突方向に沿った方向に複数の二次電子27を放出し、その放出された各電子27が半導体部11cにそれぞれ衝突して、さらに多くの電子を放出することを繰り返すことにより、1個の電子25が5×10個~3×10個の電子ビーム29となって出射することになる。図5に示すCHEVRONとは、MCP11を二段に形成したものである。
【0061】
各マイクロチャネル11aからの各電子ビーム29の各電子は、MCP11の充放電特性から間欠的に出射するので、互いに隣り合うに各電子ビーム29の各電子が、上記各電子ビーム29の中心軸間の距離にて、互いに隣り合う確率は十分小さく、上記各電子ビーム29の各電子が互いに反発する斥力は小さい。
【0062】
よって、前述の増幅電子ビームアレイ14は、上記の各マイクロチャネル11aにそれぞれ対応した複数の各マイクロ電子ビームが集合したものである。複数の各マイクロ電子ビームは、互いに離間しており、かつ、前記光パターン13の光路方向、および上記の各マイクロチャネル11aの長手方向に沿ったものである。ただし、複数の各マイクロ電子ビームは、上記光路方向や長手方向に対して、必ずしも平行となっていなくともよく、電子線レジスト表面で集束すれば、傾斜していてもよい。
【0063】
なお、上述した光電膜10+MCP11の代用品としてHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)膜をアバランシュ型フォトコンダクタ膜として利用することができる。HARP膜とは、高圧を印加したアモルファスセレンの膜を意味する。HARP膜の表面に光が入射すると、HARP膜にて光電変換が起こり、さらに膜中で電荷がなだれ増幅し、電子を出射する。したがって、パターン光13をHARP膜の一方の表面に入射することで、パターン化された増幅電子ビームアレイ14がHARP膜の他方の表面から出射して得られる。
【0064】
また、本実施形態では、光パターン発生部8と光電膜10とMCP11との組み合わせに代えて、他のデバイスを用いることができる。上記他のデバイスとしては、電圧制御によりパターン化された増幅電子ビームアレイ14を生成し、レジストを感光させることができるものであればよい。上他のデバイスとして、表面伝導型電子放出素子(SED:Surface-conduction Electron-emitter)、シリコンやモリブデンから成る先端を尖らせた先端部を備えたマイクロディップアレイ、カーボンナノチューブアレイ、およびダイヤモンド薄膜等の電界放出ディスプレイ(FED,Field Emission Display)用電子放出源からなるデバイス群から選択された少なくとも一つを利用することが挙げられる。
【0065】
上記真空チェンバー1内においては、図1、図6および図7に示すように、MCP11から出射される、パターン化された増幅電子ビームアレイ14の光路に沿って、上記増幅電子ビームアレイ14を加速、集束、アライメント、および投影するための電子ビームレンズ部12が設けられている。
【0066】
電子ビームレンズ部12は、加速管部12a、集束レンズ部12b、アライメント用の多重極偏向電極部12c、および投影レンズ部12dを、それぞれ、上記増幅電子ビームアレイ14の進行方向に沿って有している。電子ビームレンズ部12では、少なくとも集束レンズ部12bが設けられていればよいが、必要に応じて、加速管部12a、アライメント用の多重極偏向電極部12c、および投影レンズ部12dの少なくとも何れかが設けられていてもよい。
【0067】
加速管部12aは、増幅電子ビームアレイ14を加速させ、その電子線の波長を短波長化させ、最終的に、電子線レジスト7での描画解像度を向上させるためのものである。集束レンズ部12bは、パターン化された増幅電子ビームアレイ14の光路方向に直交する面内方向において、パターンを集束させるためのものである。多重極偏向電極部12cは、集束レンズ部12bを通過後の増幅電子ビームアレイ14の歪みを補正するためのものである。投影レンズ部12dは、多重極偏向電極部12cの通過後の増幅電子ビームアレイ14を所望のサイズにて電子線レジスト7上に投影して増幅電子ビームアレイ14に対応する描画パターン14aを形成するためのものである。
【0068】
加速レンズまたは加速電極といった加速管部12aによって、増幅電子ビームアレイ14の電子線は100keVにおいて約波長0.01nm程度まで短波長化されるので、短波長化された上記増幅電子ビームアレイ14により、より微細な、5nmスケール以下の描画パターン14aを電子線レジスト7上に描いて上記電子線レジスト7を露光することが可能となる。以下、通常の半導体製造の工程により、微細パターンを有する高集積度の半導体素子が形成される。
【0069】
図1に示すように、プロジェクター8での二次元の光パターン13を発生させるたり、電子ビームレンズ部12を制御したり、また、前述のステージ2を移動駆動するメカニカルドライブ3を制御したりするためのコントローラ(補正部)17がコンピュータにより設けられている。コントローラ17には、表示出力部としてのディスプレイ18と、キーボードやマウス等の入力部19とが接続されている。
【0070】
そして、コントローラ17は、加速、集束、アライメント、および投影された増幅電子ビームアレイ14によって描画される描画パターン14aに生じる歪を低減するように前記光パターン13を補正するための補正部としても機能するように設定されている。
【0071】
まず、上記補正の第一の例として、電子ビームレンズ部12における歪の補正が挙げられる。電子ビームレンズ部12により発生する電界は、空間的に強度分布を示すため、集束される、パターン化された増幅電子ビームアレイ14の中心付近とパターンの外郭付近では縮小率が異なる。これを解決するために、所望パターンに対する、電子ビームレンズ部12にて生じる歪の逆関数の積である入射光パターン(逆歪光パターン)を生成するように、コントローラ17はプロジェクター8を制御する。よって、コントローラ17は、逆歪光パターン生成部を備えていることになる。
【0072】
これにより、上記第一の例では、電子ビームレンズ部12において、増幅電子ビームアレイ14によって描画される描画パターン14aに生じる歪を、上記入射光パターンにより相殺できて、電子線レジスト7上に、通常の電子ビームの解像度で、所望する回路パターンに沿った二次元一括の、集束され投影された増幅電子ビームアレイ14によって描画される描画パターン14aが得られる。
【0073】
この結果、上記第一の例においては、上記増幅電子ビームアレイ14により描画される露光パターンである描画パターン14aを、光パターン13側から補正することで、高精度かつプログラマブルに描画することができる。それゆえ、たとえば最小加工寸法が5nm以下といった、より微細な加工が実現でき、5nmスケール以下の半導体素子を備えた超高密度LSIが高精度、低コストかつプログラマブルに製造できる。
【0074】
次に、上記補正の第二の例として、図8(a)および図8(b)に示すように、増幅電子ビームアレイ14が電子ビームレンズ部12により電子線レジスト7上に集束されて、電子線レジスト7に近づくに伴い、図8(c)に示すように、互いに隣り合うマイクロ電子ビーム14b間での相互作用力が大きくなり、上記相互作用力による散乱に起因した解像度が低下するという不都合を回避する例を挙げる。
【0075】
そこで、図9(a)に示すように、MCP11の各マトリクスである各マイクロチャネル11aに入射する光パターン13から、互いに補間し合う各ドットからなる複数の各分割光パターン11a-1~11a-3を、時分割的にそれぞれ生成するようにプロジェクター8がコントローラ17により制御される。各分割光パターン11a-1~11a-3は、互いに補間し合うように形成されているので、図9(b)に示すように、互いに重ねると元の光パターン13となるようになっている。よって、コントローラ17は、分割光パターン生成部を備えていることになる。
【0076】
このように補正の第二例においては、電子線レジスト7上に照射される、各分割光パターン11a-1~11a-3に基づくマイクロ電子ビーム14bは、互いの間隔が広くなるために、上記相互作用力による不都合をさらに抑制できる。この結果、補正の第二の例においても、解像度の低下を回避できるので、超高密度LSIが、より高精度、低コストかつプログラマブルに製造できる。
【0077】
なお、本実施の第一形態では、各分割光パターン11a-1~11a-3を3枚の例を挙げたが、それらを例えば100枚の各分割光パターンとしてもよい。上記各分割光パターンは光にて制御されることから、それら100枚を順次描写しても、その全描写時間をミリセカンドオーダーにできる。
【0078】
また、本発明の電子ビーム露光装置や半導体製造装置において、MCP11からの増幅電子ビームアレイ14の出射角度のバラツキに起因した解像度の低下を防止するために、図10(a)および図10(b)に示すように、MCP11の出射側にグリッド状静電レンズ部16を設けてもよい。
【0079】
グリッド状静電レンズ部16には、MCP11の各マイクロチャネル11aにそれぞれ対応したグリッド(格子)状の各空間部16aが各マイクロチャネル11aからの各増幅電子ビームの進行方向に沿った空間を備えるようにそれぞれ形成されている。これにより、上記グリッド状静電レンズ部16に電圧を印加しておくと、MCP11からの増幅電子ビームアレイ14に対し引力を発生し、加速化させた上記増幅電子ビームアレイ14をグリッド状の各空間部16a内を通過させることで、互いに平行化できて前記出射角度のバラツキを抑制して、上記バラツキに起因する解像度の低下を軽減でき、かつ、前述の光パターン13との相似性を向上できて、描画パターン14aの高精度化が可能となる。
【0080】
このように直径が10μmのマイクロチャネル11aを、互いに隣り合う各マイクロチャネル11aの中心間の間隔が12μmのMCP11を用いて、定格2keVをMCP11の各電極11d、11eに印加して露光電流の合計が20mAとすると、図11(a)に示すように、MCP11の1マイクロチャネル11a当たり0.5μAのマイクロ電子ビーム14bが得られるので、同じ露光電流を利用した従来の電子ビーム14cを用いたリソグラフィーの40000倍の露光速度になることが分かった。
【0081】
この数値はMCP11の各マイクロチャネル11aの形成数に相当し、さらに多数のマイクロチャネル11aを備えたMCPを利用すれば、露光速度(描画速度)はそれに比例して上昇すると考えられる。
【0082】
また、計算結果から、電子線レジスト7の感光に利用する全体の電子の総量と波長を同一と仮定した場合、従来の電子ビームリソグラフィの解像度の40000倍向上すると考えられる。これは、解像度つまり電子ビームの拡がりが電流の1次に比例しているという仮定に基づいている。以上の結果から、本発明の電子ビーム露光装置、半導体製造装置は、大きな可能性を備えていることが分かる。
【0083】
また、本発明は、光の波長限界を超えた微細な露光や加工が可能な電子ビームを用いるので、半導体素子やマイクロマシンの製造過程におけるレジストの露光や直接的な微細加工が可能となる。
【0084】
その上、本発明は、電子ビームの二次元パターンを一括照射することで、レチクルが不要となり、高速、かつプログラマブル露光や加工が実現できる。電子ビームは、その波長が加速電圧に依存するため、高圧を印加し、使用する電子線を加速させれば、その速度に応じて微細な加工が可能になる。本発明は、従来、実用化に至らせなかった課題を根本的に解決し得るものであり、LSI製造技術を大幅に進展させるものである。
【0085】
例えば、従来、180nm~150nmスケールのルールを用いた1GのDRAMの製造においては、エキシマレーザ・波長193nmを利用している。本発明による二次元一括露光では、理想的にはその1万分の1以下の露光波長で微細加工が可能となり(10TのDRAMが可能)、電子散乱を考慮しても大幅なLSI性能の向上が見込まれる。
【0086】
(実施の第二形態)
本発明の実施の第二形態に係る、電子ビーム露光装置を図16および図17に基づいて以下に説明する。なお、本実施の第二形態では、前記実施の第一形態と同様な機能を有する部材については、同一の部材番号を付与してそれらの説明を省いた。
【0087】
まず、前記実施の第一形態では、光電膜10を用いていた。光電膜10は、真空状態を維持する必要から、大気中に露出できないものである。このような光電膜10を用いていたため、真空チェンバー1や真空ポンプ等の装置全体の大型化を招来していた。
【0088】
そこで、本実施の第二形態においては、図16に示すように、光電膜10を省くために、プロジェクタ8に代えて、別の光パターン発生部21が設けられている。光パターン発生部21は、フェムト秒レーザ22と、上記フェムト秒レーザ22からのレーザ光を前記二次元の光パターンにて反射するためのマイクロミラーアレイ部23とを有している。
【0089】
フェムト秒レーザ22としては、例えば、繰り返し周波数が50MHzで、パルス幅が90fsec(フェムト秒)~180fsec、波長が可視部、例えば780nmのフェムト秒レーザであればよい。その具体例として、例えばチタン-サファイアレーザ、Yb:YAGレーザを用いることができる。また、フェムト秒レーザ22の出力としては、平均出力10mWから60mWまでのものが適用できる。
【0090】
マイクロミラーアレイ部23は、図17に示すように、基板23aと、基板23a上の複数の各駆動部23bと、各駆動複数によりそれぞれ駆動される各マイクロミラー23cと有している。マイクロミラーアレイ部23としては、デジタルミラーデバイス(登録商標)が挙げられる。
【0091】
各マイクロミラー23cは、可視部の光を反射する正方形板状のミラーであり、互いに隣り合って密にマトリクス状に、48万枚~131万枚配置されている。マトリクス状とは、碁盤目状に、互いに交差(好ましくは直交)する行方向と列方向とに配列されて2次元の前記光パターン13を形成できるものである。本実施の第二形態では、各マイクロミラー23cは、データ伝送単位ブロック(64×16枚)で分割された16×64ブロックのマイクロミラーアレイ部23が用いられている。
【0092】
また、各駆動部23bは、マイクロミラー23c毎にそれぞれ設けられ、例えば、各マイクロミラー23cを、行方向に沿った中心軸を回転軸として±12度程度回動駆動できるようになっている。さらに、各駆動部23bは、各マイクロミラー23cを、1秒間に数千回の回動駆動を繰り返せるように設定されている。
【0093】
このような各駆動部23bの制御は、液晶パネルでの画像表示制御と同様に以下の通りである。
【0094】
まず、前記光パターン13のための二次元パターンデータは、シフトレジスタにてラッチ(LATHES、データの同期をとるために保持すること)され、各マイクロミラー23cの行列のブロック毎にデータがロードされる。
【0095】
続いて、各マイクロミラー23cのための行復号機器(ROW DECODER)で指定された番地の行ブロック要素に、0または1(つまり、例えばマイナス12度またはプラス12度)の情報を伝送する。
【0096】
この情報により、各駆動部23bは、各マイクロミラー23cを、各マイクロミラー23c、または、各マイクロミラー23cというようにそれぞれ傾斜させる。
【0097】
その後、上記各マイクロミラー23c上に、フェムト秒レーザ22からのレーザ光22aを照射し、上記各マイクロミラー23cからの反射光を光パターン13としてMCP11の各マイクロチャネル11aに対し照射する。
【0098】
各マイクロチャネル11aにおける内面の半導体部11cでは、上記光パターン13の複数個の光子のエネルギーの総和が上記半導体部11cの仕事関数を上回るエネルギーであるので、多光子励起状態となって電子を、上記光子の進入方向に沿った方向に主に放出する。このように放出された電子は、前述したように、上記半導体部11cにおいて二次電子が発生し、以下、同様にパターン化された増幅電子ビームアレイ14を電子線レジスト7上に集束させて描画できる。
【0099】
本実施の第二形態では、増幅電子ビームアレイ14を電子線レジスト7上に5nm以下の線幅の描画パターン14aをプログラマブル露光により形成できると共に、真空状態の維持が必要な光電膜10を省くことができるので、露光装置の小型化や、真空ポンプの小型化ができ、低コスト化できる。
【0100】
また、本実施の第二形態では、マイクロミラーアレイ部23を用いたことにより、上記各マイクロミラー23cを個々に制御して、光パターン13の補正が前記実施の第一形態と同様に可能となる。
【0101】
なお、前記実施の第一形態および第二形態では、各マイクロチャネル11aの内面形状を、光の入射側から出射側まで内径が一定な直筒状の例を挙げたが、例えば図18の変形例に示すように、光の出射側端部を、末広がりの形状とした電子ビーム整形部11hとしてもよい。末広がりの形状とは、光の出射側端に向かって、順次、内径が大きくなるものである。
【0102】
このような末広がり形状の電子ビーム整形部11hにより、各マイクロチャネル11aから出射され電子ビームを、より各マイクロチャネル11aの中心軸方向に沿わせる、コリメート(平行化)することが可能となる。
【0103】
これにより、本変形例では、前述のグリッド状静電レンズ部16を省いても、それを設けた場合と同様な効果を発揮できて、小型化を図りながら、描画パターンの高精細化が可能となる。
【0104】
上記電子ビーム露光装置では、さらに、前記電子増幅部は、アバランシュ型フォトコンダクタ膜であってもよい。
【0105】
上記電子ビーム露光装置においては、前記光パターン発生部は、光源と、前記光源からの光により前記光パターンを生成するためのマスクパターンとを備えていてもよい。上記構成によれば、マスクパターンを用いることで、光パターン発生部を簡素化できて、全体でのコストダウンが可能となる。また、上記構成は、描画パターンに生じる歪が、ある程度まで予測できる場合、その予測に応じて補正されたマスクパターンを用いることで、上記歪を抑制できて、描画パターンの精度の向上を図ることが可能となる。
【0106】
本発明に係る半導体製造装置は、上記課題を解決するために、真空チェンバーと、前記真空チェンバー内に設けられた、上記の何れかに記載の電子ビーム露光装置と、前記真空チェンバー内に設けられ、前記増幅電子ビームアレイが表面上に集束される、電子線レジスト、および前記電子線レジストが表面上に形成された基板を載置する載置台とを有し、前記露光装置の光パターン発生部は、半導体素子の回路パターンに応じた二次元の光パターンを発生するようになっていることを特徴としている。
【0107】
上記構成によれば、本発明に係る電子ビーム露光装置を備えることで、光パターン発生部が、半導体素子の回路パターンに応じた二次元の光パターンを発生するようになっており、その光パターンからパターン化された電子ビームアレイを生成できる。その電子ビームアレイを、加速することにより、電子ビームアレイの電子線を極限まで短波長化させることが可能となる。これにより、上記構成は、例えば加工寸法が5nm以下といった、より微細な加工が実現でき、5nmスケール以下の半導体素子を備えた超高密度LSIが製造できる。
【0108】
上記半導体製造装置においては、さらに、前記基板に集束される前記増幅電子ビームアレイの照射方向に対し直交する方向に前記基板を移動させる基板移動部を有していることが望ましい。
【0109】
上記構成によれば、増幅電子ビームアレイの照射方向に対し直交する方向、例えば水平方向に基板(例えば100mm径や500mm径のウェハー)を移動させる基板移動部を設けたので、上記基板を移動させて、それぞれの回路パターンに応じた描画パターンを形成できて、大面積の基板上にも回路パターンに対応した描画パターンを形成できる。
【0110】
また、上記構成は、用いた露光装置に備えた補正部により、光パターン側に補正を加えることで、パターン化された電子ビームアレイによって描画されたパターンの歪みを低減させることができ、超高集積度の半導体素子の製造をより確実化および迅速化できる。
【0111】
本発明の半導体製造装置は、以上のように、本発明に係る電子ビーム露光装置を備え、光パターン発生部が、半導体素子の回路パターンに応じた二次元の光パターンを発生するようになっている構成である。
【0112】
それゆえ、上記構成は、前述したように、増幅電子ビームアレイにより描画される所望の回路パターンを、高分解能、高精度かつプログラマブルに描画して形成することができる。この結果、例えば最小加工寸法が5nm以下といった、より微細な加工が実現でき、5nmスケール以下の半導体素子を備えた超高密度LSIが製造できるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の電子ビーム露光装置は、より微細加工が可能な電子ビームを用いたパターン露光を迅速化できる。このことから、より微細加工されて性能が向上した半導体素子を低コストにて製造できる。
【0114】
この結果、本発明の電子ビーム露光装置は、より高精細な半導体素子の製造を容易化、迅速化できるので、半導体リソグラフィー装置、LSIといった半導体製造装置の分野や、上記LSIを使用する携帯電話などの通信機分野や上記LSIといった半導体素子を多用するコンピュータ分野に好適に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6(a)】
5
【図6(b)】
6
【図7】
7
【図8(a)】
8
【図8(b)】
9
【図8(c)】
10
【図9(a)】
11
【図9(b)】
12
【図10(a)】
13
【図10(b)】
14
【図11(a)】
15
【図11(b)】
16
【図12】
17
【図13】
18
【図14(a)】
19
【図14(b)】
20
【図15(a)】
21
【図15(b)】
22
【図15(c)】
23
【図16】
24
【図17】
25
【図18】
26