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明細書 :物体の研磨方法及び物体の研磨装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5093474号 (P5093474)
公開番号 特開2009-101454 (P2009-101454A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月12日(2012.12.12)
公開日 平成21年5月14日(2009.5.14)
発明の名称または考案の名称 物体の研磨方法及び物体の研磨装置
国際特許分類 B24B   1/04        (2006.01)
FI B24B 1/04 D
請求項の数または発明の数 10
全頁数 17
出願番号 特願2007-274793 (P2007-274793)
出願日 平成19年10月23日(2007.10.23)
審査請求日 平成22年9月21日(2010.9.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
発明者または考案者 【氏名】水野 雅裕
個別代理人の代理人 【識別番号】100093148、【弁理士】、【氏名又は名称】丸岡 裕作
審査官 【審査官】金本 誠夫
参考文献・文献 特開平04-336954(JP,A)
特開昭48-094093(JP,A)
特開昭63-260752(JP,A)
実開平02-025077(JP,U)
特開平10-277985(JP,A)
調査した分野 B24B 1/00- 1/04, 9/00-19/28
B25J 1/00-21/02
特許請求の範囲 【請求項1】
研磨体を物体の表面に接触させ、該研磨体の先端の軌道がリサージュ図形を描くように微小振動させながら、該研磨体を該物体の表面に対して相対移動させて、当該物体の表面を研磨する物体の研磨方法において、
上記研磨体の先端の軌道を、平面から見て8の字形状であって、正面から見て8の字の交点が上記物体に接触する頂点となるU字形状にしたことを特徴とする物体の研磨方法。
【請求項2】
上記相対移動方向を正面から見て前後方向にしたことを特徴とする請求項1記載の物体の研磨方法。
【請求項3】
上記U字形状の上記頂点を通る主軸と上記物体の表面の法線とを一致させたことを特徴とする請求項1または2記載の物体の研磨方法。
【請求項4】
基台と、基台に設けられ物体が設置されるテーブルと、上記基台に設けられるスタンドと、上記物体の表面に接触させられる研磨体と、上記スタンドに支持され上記研磨体を保持するホルダと、上記研磨体を上記ホルダを介して微小振動させる振動手段と、該振動手段を上記研磨体の先端の軌道がリサージュ図形を描くように制御する制御手段と、上記研磨体を物体の表面に対して相対移動可能にする移動手段とを備えた物体の研磨装置において、
上記制御手段を、上記研磨体の先端の軌道が、平面から見て8の字形状であって、正面から見て8の字の交点が上記物体に接触する頂点となるU字形状になるように上記振動手段を制御する機能を備えて構成したことを特徴とする物体の研磨装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記相対移動方向を正面から見て前後方向になるよう移動手段を制御する機能を備えて構成したことを特徴とする請求項4記載の物体の研磨装置。
【請求項6】
上記振動手段を、一端がスタンドに設けた固定部材に固定され他端が上記ホルダに固定される複数の圧電アクチュエータで構成したことを特徴とする請求項4または5記載の物体の研磨装置。
【請求項7】
上記ホルダの上記物体側に対峙する一端面側に、該ホルダの中心軸と上記研磨体の中心軸とが同軸になるように該研磨体を取付ける取付部を設け、上記圧電アクチュエータを上記ホルダの他端面側に3以上設け、各圧電アクチュエータを上記ホルダの中心軸を中心として等角度関係に対称配置し、上記各圧電アクチュエータに夫々対応してコイルスプリングを設け、該各コイルスプリングを対応する圧電アクチュエータの軸線方向に上記ホルダを引張するように一端を該ホルダに固定し他端を上記固定部材に固定したことを特徴とする請求項6記載の物体の研磨装置。
【請求項8】
上記各圧電アクチュエータを、その軸線が上記ホルダから上記固定部材に向けて拡開するように設けたことを特徴とする請求項7記載の物体の研磨装置。
【請求項9】
上記ホルダに保持した研磨体を物体に対して近接,離間できるように上記固定部材を上記スタンドに対し移動可能にしたことを特徴とする請求項4乃至8何れかに記載の物体の研磨装置。
【請求項10】
上記移動手段を、上記テーブルを基台に対し移動可能にする支持部と、上記テーブルを基台に対し移動させる駆動部とを備えて構成したことを特徴とする請求項4乃至9何れかに記載の物体の研磨装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ICパッケージ等を作成する微細で異形状の金型等の物体を研磨する物体の研磨方法及び物体の研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金型の形彫は形彫放電加工によって行われているが、放電加工によって得られる面は表面粗さが大きく、加工変質層がみられることも多い。そのため、金型の面として使用するためには、後工程としてさらに研磨加工が施されることが多い。また、異形状の金型の加工には回転工具が適用できないため、もっぱら手作業での研磨が行われているのが現状である。しかし、最近は、金型の微細化が急速に進み、手作業での微細研磨が極めて困難になってきている。
そこで、従来より、金型等の物体を研磨する物体の研磨装置として、例えば、特許文献1(特開平5-162064号公報)に掲載されたものが知られている。
これは、図15に示すように、物体100の表面101と平行で互いに直角な2方向と物体100の表面101に垂直な方向とに微小運動するように支持された研磨軸112の先端に、磁性球体111を回転可能に保持して研磨部110とし、この研磨部110と物体100の表面101との間に研磨材を磁界により保持させ、研磨部110と物体100の表面101とを接触させて、研磨部110を微小運動させることにより物体100の表面101を研磨している。
研磨軸112及び研磨部110を微小運動させるアクチュエータ120はピエゾ素子からなり、このピエゾ素子に電圧を印加することにより、研磨軸112及び研磨部110を物体100の表面101と平行で互いに直角な2方向に移動させる。これにより、研磨部110は円弧を描くように微小運動するようになる。また、研磨時には、研磨部110である磁性球体111が適宜に回転するようになっている。
この研磨部110の微小運動及び回転によって物体100の研磨を行なうものである。
【0003】

【特許文献1】特開平5-162064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の物体の研磨装置においては、直線的な振動や楕円振動を用いて研磨を行なう際、研磨方向が一方向となるが、研磨部110は単純な円を描くように微小運動するので、物体100の表面101に、筋状の条痕が残りやすく、研磨の仕上げ精度に劣るという問題があった。また、物体に凹所の角隅部がある場合、この角隅部の研磨が必ずしも十分に行なわれないことがあるという問題もあった。更に、これらの研磨装置が適用できる物体100の表面101の形状は、円筒面、平面、円弧面といった単純形状で、研磨領域が広い場合に限られていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、条痕が残りにくくして研磨の仕上げ精度を向上させるとともに、凹所の角隅部に対しても確実に微細な研磨を行なうことができるようにし、物体の表面を良好な仕上げ面にすることができる物体の研磨方法及び物体の研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明の物体の研磨方法は、研磨体を物体の表面に接触させ、該研磨体の先端の軌道がリサージュ図形を描くように微小振動させながら、該研磨体を該物体の表面に対して相対移動させて、当該物体の表面を研磨する物体の研磨方法において、上記研磨体の先端の軌道を、平面から見て8の字形状であって、正面から見て8の字の交点が上記物体に接触する頂点となるU字形状にした構成としている。
【0007】
これにより、物体の研磨を行なうときは、研磨体を物体の表面に接触させ、研磨体を微小振動させながら研磨する。この場合、研磨体の先端が、その軌道が平面から見て8の字を描き、この8の字の交点が物体の表面に接触し、即ち、研磨体の先端の軌道がクロスを描いて物体の表面と接触する。そして、研磨体を物体の表面に対して相対移動させることにより、物体の表面に、8の字の交点(クロス)が位相をずらして連続して描かれた状態、即ち、クロスハッチが連続して付与されて研磨が行なわれるようになる。そのため、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになるので、物体の表面に条痕等が残りにくくなり、物体の表面を良好な仕上げ面にすることができる。また、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになることから、凹所の角隅部に対しても確実に微細な研磨を行なうことができるようになる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記相対移動方向を正面から見て前後方向にした構成としている。これにより、研磨領域が広くても物体の表面全てにクロスハッチを整然と確実に付与することができる。
【0009】
更に、必要に応じ、上記U字形状の上記頂点を通る主軸と上記物体の表面の法線とを一致させた構成としている。これにより、物体の表面が傾斜あるいは凹凸になっていても、研磨体の先端が物体の表面に確実に接触し、そのため、微細な研磨を行なうことができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の物体の研磨装置は、基台と、基台に設けられ物体が設置されるテーブルと、上記基台に設けられるスタンドと、上記物体の表面に接触させられる研磨体と、上記スタンドに支持され上記研磨体を保持するホルダと、上記研磨体を上記ホルダを介して微小振動させる振動手段と、該振動手段を上記研磨体の先端の軌道がリサージュ図形を描くように制御する制御手段と、上記研磨体を物体の表面に対して相対移動可能にする移動手段とを備えた物体の研磨装置において、上記制御手段を、上記研磨体の先端の軌道が、平面から見て8の字形状であって、正面から見て8の字の交点が上記物体に接触する頂点となるU字形状になるように上記振動手段を制御する機能を備えて構成している。
【0011】
これにより、研磨を行なうときは、先ず、研磨する物体をテーブルの上に設置する。次に、研磨体を物体の表面に接触させる。この状態で、振動手段により、研磨体を微小振動させて研磨を行なう。このとき、制御手段により、研磨体の先端の軌道は、平面から見て8の字形状であって、正面から見て8の字の交点が物体に接触する頂点となるU字形状に制御されるので、研磨体の8の字の交点が物体の表面に接触し、即ち、研磨体の先端の軌道がクロスを描いて物体の表面と接触するようになる。そして、移動手段により、研磨体を物体の表面に対して相対移動させることによって、物体の表面に、8の字の交点(クロス)が位相をずらして連続して描かれた状態、即ち、クロスハッチが連続して付与されて研磨が行なわれるようになる。そのため、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになるので、物体の表面に条痕等が残りにくくなり、物体の表面を良好な仕上げ面にすることができる。また、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになることから、凹所の角隅部に対しても確実に微細な研磨を行なうことができるようになる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記制御手段は、上記相対移動方向を正面から見て前後方向になるよう移動手段を制御する機能を備えて構成している。これにより、研磨領域が広くても物体の表面全てにクロスハッチを整然と確実に付与することができる。
【0013】
また、必要に応じ、上記振動手段を、一端がスタンドに設けた固定部材に固定され他端が上記ホルダに固定される複数の圧電アクチュエータで構成している。圧電アクチュエータなので、振動機構を簡易に構成することができる。圧電アクチュエータに電圧を印加すると、電気エネルギーは機械的エネルギーに変換され、圧電アクチュエータが伸縮して振動するようになる。圧電アクチュエータの一端は、固定部材に固定されているので他端が振動させられる。即ち、ホルダが振動させられる。ホルダの振動により、研磨体が振動させられ、物体の表面を研磨することができる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記ホルダの上記物体側に対峙する一端面側に、該ホルダの中心軸と上記研磨体の中心軸とが同軸になるように該研磨体を取付ける取付部を設け、上記圧電アクチュエータを上記ホルダの他端面側に3以上設け、各圧電アクチュエータを上記ホルダの中心軸を中心として等角度関係に対称配置し、上記各圧電アクチュエータに夫々対応してコイルスプリングを設け、該各コイルスプリングを対応する圧電アクチュエータの軸線方向に上記ホルダを引張するように一端を該ホルダに固定し他端を上記固定部材に固定した構成としている。ホルダの中心軸と研磨体の中心軸とが同軸になるように取付けることにより、研磨体を物体の研磨すべき部分に接触させやすくなる。また、圧電アクチュエータをホルダの中心軸を中心として等角度関係に対称配置したので、ホルダの支持が確実になるとともに、ホルダ全体が均等に振動し、そのため、研磨体の先端の軌道を、上述の軌道を描くように移動制御させることが容易になる。更に、コイルスプリングを、対応する圧電アクチュエータの軸線方向にホルダを引張するように設けたので、コイルスプリングが圧電アクチュエータの他端に予圧を与えることができるとともに、研磨中ほぼ一定の予圧量を保つことができる。
研磨体をホルダに対して着脱可能にした場合には、研磨体が研磨作業によって磨耗して、その先端が変形した場合、新たな研磨体と交換することができる。
【0015】
そして、また、必要に応じ、上記各圧電アクチュエータを、その軸線が上記ホルダから上記固定部材に向けて拡開するように設けた構成としている。これにより、ホルダの振動付与が容易になり、振動制御を確実に行なうことができる。
【0016】
また、必要に応じ、上記ホルダに保持した研磨体を物体に対して近接,離間できるように上記固定部材を上記スタンドに対し移動可能にした構成としている。これにより、研磨を行なうときは、固定部材を物体に近接させ、研磨体の先端を物体の表面に接触させれば良い。また、研磨終了後や研磨する物体を交換するとき等、研磨を行なわないときは、固定部材を物体から離間させ、研磨体の先端を物体の表面から離間させれば良い。そのため、物体に対する研磨体のセッティングを確実に行なうことができる。
【0017】
更に、必要に応じ、上記移動手段を、上記テーブルを基台に対し移動可能にする支持部と、上記テーブルを基台に対し移動させる駆動部とを備えて構成としている。支持部により、テーブルは、基台の平面に対して前後左右に自由に移動可能になり、物体を研磨体に対して容易に相対移動させることができる。また、駆動部を電動モータで構成した場合は、制御が容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、研磨体の先端の軌道が、平面から見て8の字を描き、この8の字の交点が物体の表面に接触し、即ち、研磨体の先端の軌道がクロスを描いて物体の表面と接触し、研磨体を物体の表面に対して相対移動させることにより、物体の表面に、クロスハッチが連続して付与されて研磨が行なわれるようになる。そのため、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになるので、物体の表面に条痕等が残りにくくなり、物体の表面を良好な仕上げ面にすることができる。また、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになることから、凹所の角隅部に対しても確実に微細な研磨を行なうことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る物体の研磨方法及び物体の研磨装置を説明する。本発明の実施の形態に係る物体の研磨方法は、本発明の物体の研磨装置によって実現されるので、本発明の物体の研磨装置の作用において説明する。
【0020】
図1乃至図10には、本発明の実施の形態に係る物体の研磨装置Sを示している。本研磨装置Sの基本的構成は、基台10と、テーブル20と、スタンド30と、研磨体40と、ホルダ50と、振動手段60と、制御手段70と、移動手段80とを備えてなる。本実施の形態において、研磨する物体1は、図1及び図2に示すように、矩形状の金型であり、その表面2に矩形状の凹所3が設けられている。
【0021】
基台10は、図1及び図10に示すように、矩形状に形成されている。
テーブル20は、図1及び図10に示すように、基台10と同型に形成され、基台10の上部に、図1中XsYs平面上を移動可能に設けられている。このテーブル20の上面21には、物体1が設置されている。実施の形態では、テーブル20の上面21に円柱状の設置台22を設け、この設置台22の上部に物体1を設置している。
【0022】
スタンド30は、図1に示すように、基台10の平面に対して垂直(図1中Zs軸方向)に延びて設けられている。また、このスタンド30には、固定部材31を介してホルダ50及び研磨体40が設けられている。固定部材31は、図1及び図4に示すように、研磨体40を物体1に対して近接,離間できるように、スタンド30に対してZs軸方向に相対移動可能に設けられている。このZs軸方向の移動は、後述の移動手段80と同様の機構により自動化できるようにしても良い。
【0023】
研磨体40は、図1,図3,図4及び図9に示すように、物体1の表面2に接触して凹所3を研磨するもので、角柱形に形成され、先端41が平面で矩形に形成されている。この研磨体40の先端41及び側面42には、砥粒43が設けられている。尚、外部から砥粒43を供給して研磨を行うようにしても良い。
【0024】
ホルダ50は、図1,図4乃至図6に示すように、研磨体40を保持するものであり、物体1に対峙する一端面側51は、円錐台状に形成され、その中心軸52には研磨体40を取付ける取付部53が設けられている。実施の形態では、取付部53は、コレットチャックで構成され、ホルダ50の中心軸52と研磨体40の中心軸44とが同軸になるように設けられている。また、実施の形態では、ホルダ50は、図1に示すように、基台10のZs軸方向に中心軸52の方向が沿うように、スタンド30に固定部材31を介して支持されている。更に、ホルダ50の他端面側54は、その上面が六角形に形成され、角錐台状に形成されている。
【0025】
振動手段60は、図1,図4乃至図6,図9に示すように、研磨体40をホルダ50を介して微小振動させるもので、圧電アクチュエータ61で構成されている。この圧電アクチュエータ61は、一端62が固定部材31の突設部55に固定され、他端63がホルダ50の他端面側54の角錐面56に固定されて接続されている。実施の形態では、圧電アクチュエータ61は3つ設けられ、ホルダ50の中心軸52を中心として等角度関係に対称配置されて、その軸線64がホルダ50から固定部材31に向けて拡開するように設けられている。例えば、圧電アクチュエータ61は、図9に示すように、各圧電アクチュエータ61の一端62で形成される平面を底面とし、この底面に対する圧電アクチュエータ61の軸線64の角度φが45°になるように設けられている。また、研磨体40は、その先端41が、圧電アクチュエータ61の軸線64で形成される三角錐の頂点に位置するように固定されている。
圧電アクチュエータ61の実施例として、例えば、NECトーキン製ASB510C801NP0(全長約78.4mm、推奨駆動電圧DC100V)が挙げられる。
【0026】
また、この各圧電アクチュエータ61の近傍には、夫々の圧電アクチュエータ61に対応するコイルスプリング65が設けられている。この各コイルスプリング65は、図1及び図4に示すように、夫々が対応する圧電アクチュエータ61の軸線64方向にホルダ50を引張するように、一端66がホルダ50に固定され、他端67が固定部材31の突設部55に固定されている。
【0027】
制御手段70は、図1,図7乃至図9に示すように、振動手段60を研磨体40の先端41の軌道がリサージュ図形を描くように制御するもので、例えば、図9に示すように、3つの圧電アクチュエータ61a,61b,61cに対し、XYZ直交座標系を用いた場合、研磨体40の先端41の軌道(DX,DY,DZ)が、下記の数式を満たすようにする。ωは角速度であり、tは時間である。
【0028】
【数1】
JP0005093474B2_000002t.gif

【0029】
即ち、制御手段70は、図7(A)に示すように、平面から見て8の字形状であって、図7(B)に示すように、正面から見て8の字の交点が物体に接触する頂点となるU字形状になり、図7(C)に示すように、側面からみると略楕円状になるように振動手段60を制御する機能を備えて構成されている。実施の形態では、正面(図7(B))が、図1に示す基台10のXsZs平面に合わせて設定されている。また、この制御手段70は、図8に示すように、研磨体40の相対移動方向を、正面(図7(B))から見て前後方向(図1中Ys軸方向)になるように後述の移動手段80を制御する機能を備えて構成されている。
【0030】
次に、制御手段70による制御の理論について、詳しく説明する。図9に示すように、3つの圧電アクチュエータ61a,61b,61cに対し、XYZ直交座標系を用いて説明する。
3つの圧電アクチュエータ61a,61b,61cの長さが中立のときの研磨体40の先端41の位置を、XYZ直交座標系の原点(0,0,0)とする。圧電アクチュエータ61aと圧電アクチュエータ61bとは、YZ平面に対して対称の位置関係にあり、圧電アクチュエータ61cの中心軸はYZ平面上にある。各圧電アクチュエータ61a,61b,61cの伸縮量を夫々δA,δB,δCとし、研磨体40の先端41の座標を(DX,DY,DZ)とすれば、各圧電アクチュエータ61の一端62で形成される平面を底面とし、この底面に対する圧電アクチュエータ61の軸線64の角度φが45°のとき、近似的に下記の数式の関係が成立する。
【0031】
【数2】
JP0005093474B2_000003t.gif

【0032】
次に、研磨体40の先端41に8の字形状の3次元振動を与えたときのδA,δB,δCについて説明する。8の字形状の3次元振動の基本振動形態を(DX,DY,DZ)=(Osinωt,Nsin2ωt,-Kcos2ωt)とする。ωは角速度であり、tは時間である。また、O,N,Kは正の定数である。この基本振動形態をX軸の周りに角度α,Y軸の周りに角度β,Z軸の周りに角度γ回転させたい場合、δA,δB,δCは下記の数式のように与えれば良い。
【0033】
【数3】
JP0005093474B2_000004t.gif

【0034】
移動手段80は、図1及び図10に示すように、研磨体40を物体1の表面2に対して相対移動可能にするもので、具体的には、テーブル20を基台10に対し、図1中XsYs平面上に移動可能にする支持部81と、テーブル20を基台10に対し移動させる駆動部90とを備えて構成されている。
【0035】
支持部81は、図1及び図10に示すように、基台10及びテーブル20と同型の形状に形成され基台10とテーブル20との間に設けられるベース部材82と、ベース部材82を転動体(図示せず)を介して基台10に対して一方向に移動させる第一レール83と、テーブル20を転動体(図示せず)を介してベース部材82に対して上記一方向に直交する他方向に移動させる第二レール84とを備えて構成されている。
【0036】
駆動部90は、図1及び図10に示すように、基台10とベース部材82との間に設けられる第一駆動部90aと、テーブル20とベース部材82との間に設けられる第二駆動部90bとを備えて構成されている。
第一駆動部90aは、ベース部材82の下面に固定され基台10の上面を第一レール83と平行な方向に移動する第一移動部材91aと、第一移動部材91aを移動せしめる雄ネジ92を有した第一棒状体93aと、第一棒状体93aをその軸線を回転軸として回転させる第一原動部94aとを備えて構成されている。第一移動部材91aは、その略中央部に雌ネジ95が設けられ、この雌ネジ95と第一棒状体93aとが螺合するように形成されている。
第二駆動部90bは、テーブル20の下面に固定されベース部材82の上面を第二レール84と平行な方向に移動する第二移動部材91bと、第二移動部材91bを移動せしめる雄ネジ92を有した第二棒状体93bと、第二棒状体93bをその軸線を回転軸として回転させる第二原動部94bとを備えて構成されている。第二移動部材91bは、その略中央部に雌ネジ95が設けられ、この雌ネジ95と第二棒状体93bとが螺合するように形成されている。
【0037】
従って、この実施の形態に係る物体の研磨装置Sを用いて、物体1の研磨を行なうときは、以下のようにする。先ず、テーブル20の上面21上に設けた設置台22に研磨する物体1を設置する。また、研磨体40をホルダ50の取付部53に取付ける。取付けは、取付部53であるコレットチャックを開き、研磨体40を挿通して、その後コレットチャックを閉めることで行なえるので、比較的簡易に行なうことができる。
【0038】
次に、固定部材31を、スタンド30に対して研磨体40の先端41が物体1の表面2に接触する位置まで移動させる。このとき、研磨体40の先端41と物体1の表面2に設けられた凹所3とが接触するように物体の位置の微調整を行なう。コレットチャックはホルダ50の中心軸52上に設けられているので、ホルダ50の中心軸52と研磨体40の中心軸44とが同軸になるように取付けることができ、そのため、研磨体40を物体1の研磨する箇所に接触させやすくなる。研磨体40の先端41を研磨する箇所に接触させたら、研磨を開始する。
【0039】
先ず、3つの圧電アクチュエータ61に電圧を印加する。電圧を印加された圧電アクチュエータ61は、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換し、伸縮して振動するようになる。圧電アクチュエータ61の一端62は、固定部材31に固定されているので、他端63に接続されているホルダ50が振動する。また、各圧電アクチュエータ61に対応して設けられたコイルスプリング65により、圧電アクチュエータ61の他端63に予圧を与えることができるとともに、研磨中ほぼ一定の予圧量を保つことができる。
【0040】
ホルダ50が振動すると、ホルダ50に取付けられた研磨体40も振動するようになり、研磨体40の先端41及び側面42に設けられた砥粒43によって、物体1の凹所3が研磨される。このとき、制御手段70によって、圧電アクチュエータ61の伸縮具合が制御され、研磨体40の先端41の軌道は、平面から見て8の字形状であって、正面から見て8の字の交点が物体に接触する頂点となるU字形状になる。そのため、研磨を行なう際、研磨体40の先端41の軌道がクロスを描くように物体1の表面2と接触し、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨するようになるので、物体の表面に条痕等が残りにくくなり、物体の表面を良好な仕上げ面にすることができる。
【0041】
そして、研磨体40を移動させる。この場合、例えば、研磨体40を物体1の表面2に対して、例えば、先ず、正面(図7(B))から見て前方方向に移動させる。具体的には、第一駆動部90aを駆動させ、テーブル20を基台10に対して、一方向(図1中Ys軸方向)に移動させる。テーブル20の移動は、先ず、第一原動部94aを駆動させる。第一原動部94aが駆動すると、第一棒状体93aがその軸線を回転軸として回転する。これにより、第一棒状体93aが螺合されて挿通されている第一移動部材91aが、第一レール83と平行な方向に基台10の上面を雄ネジ92のピッチ分ずつ移動する。第一レール83上を車輪が回転してベース部材82が移動する。第一移動部材91aは、ベース部材82に固定されているので、ベース部材82が移動し、これによって、テーブル20が移動するようになる。研磨体40を物体1の表面2に対して、正面から見て前方方向に移動させることにより、図8に示すように、物体1の表面2に、クロスが位相をずらして連続して描かれた状態、即ち、クロスハッチを付与して研磨を行なうことができるので、物体1の表面2を良好な仕上げ面にすることができる。また、研磨体40を物体1の表面2に対して、正面から見て左右方向に相対移動させた場合と比較して研磨領域が広くても物体の表面全てにクロスハッチを整然と確実に付与することができる。
【0042】
また、本発明の物体の研磨方法は、8の字の交点(クロス)で物体の表面を研磨することから、凹所3の角隅部に対しても確実に微細な研磨を行なうことができるようになる。
【0043】
研磨体40の正面(図7(B))から見て前後方向の研磨が終了したら、研磨体40を物体1の表面2に対して、例えば、正面(図7(B))から見て右方向に僅かに移動させる。移動は、第二駆動部90bを駆動させ、テーブル20をベース部材82に対して一方向と直交する他方向(図1中Xs軸方向)に移動させることにより行なう。動作は、上記第一駆動部90aと同様である。
【0044】
それから、研磨体40を、正面(図7(B))から見て後方に向けて移動させ、上述の方法と同様に研磨を行なう。このような往復動作を繰り返して行ない、物体1の表面2に設けられた凹所3を研磨していく。
【0045】
研磨が終了したならば、固定部材31を、スタンド30に対して研磨体40の先端41が物体1の表面2から離間する位置まで移動させる。そして、次に研磨する物体を、テーブル20の上面21に設置して、上述の方法と同様に研磨を行なう。
【0046】
また、何度か研磨を行なうと、砥粒43の減量や研磨体40の先端41が磨耗によって変形する等、研磨の精度が減少することがある。この場合、研磨体40をホルダ50の取付部53から取り外し、新たな研磨体40と交換することができる。研磨体40の交換は、取付部53であるコレットチャックを開き、研磨体40を取外して、新たな研磨体40を挿通し、その後コレットチャックを閉めることで行なえるので、比較的簡易に行なうことができる。
【実験例】
【0047】
次に、上記の装置を用いて振動実験を行ない、研磨体40の先端41の振動を測定した。以下に、研磨体40の先端41の振動形態と測定結果について示す。この試験は、レーザドップラ式振動計(例えば、グラフテック社製AT0022及びAT3500)を用いて、X軸,Y軸,Z軸方向の振動成分を独立に測定して実験した。各測定値を合成することによって測定結果を得るものである。
【符号の説明】
【0048】
第一実験例として、目標振動として(DX,DY,DZ)=(Osinωt,Nsin2ωt,-Kcos2ωt)(O=N=K)を与えた。図11は、目標振動形態を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示している。また、図12は測定結果を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示している。
測定結果は、目標振動形態と比較してわずかに歪んでいるが、目標振動形態と略一致する結果となった。振動形態のひずみは、圧電アクチュエータのヒステリシスに起因するものと考えられる。
【0049】
第二実験例として、上記の振動形態をX軸周りに39.2°,Y軸周りに-24.1°,Z軸周りに-63.4°回転させて目標振動とした。図13は、目標振動形態を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示している。また、図14は測定結果を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示している。
測定結果は、目標振動形態と比較してわずかに歪んでいるが、目標振動形態と略一致する結果となった。
【0050】
尚、上記実施の形態において、基台10,テーブル20,ベース部材82を矩形状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような形状でも良く、適宜変更して差支えない。
また、上記実施の形態において、研磨体40を角柱形に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような形状でも良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態において、ホルダ50を上述の形状としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような形状でも良く、適宜変更して差支えない。
更にまた、上記実施の形態において、取付部53をコレットチャックで構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、研磨体を取付けることができれば良く、適宜変更して差支えない。
【0051】
尚また、上記実施の形態において、振動手段60を圧電アクチュエータ61で構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、制御手段で制御できるとともに振動しうるものであれば良く、適宜変更して差支えない。
また、上記実施の形態において、圧電アクチュエータ61を3つ設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、幾つ設けても良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態において、圧電アクチュエータ61を上述の配置としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのように配置しても良く、適宜変更して差支えない。
更にまた、上記実施の形態において、各圧電アクチュエータ61の一端62で形成される平面を底面とし、この底面に対する圧電アクチュエータ61の軸線64の角度φを45°としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、何度でも良く、適宜変更して差支えない。
【0052】
また、上記実施の形態において、コイルスプリング65を設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、予圧を与えられればどのようなものでも良く、適宜変更して差支えない。また、特に設けなくても良い。
更に、上記実施の形態において、移動手段80を上述の構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばハンディタイプのもの等、物体を相対移動させられれば良く、適宜変更して差支えない。
更にまた、本発明に係る物体の研磨方法において、物体1の表面2が、傾斜や凹凸状になっている場合には、U字形状の頂点を通る主軸と物体1の表面2の法線とを一致させることにより、研磨体40の先端41が物体1の表面2に確実に接触し、そのため、微細な研磨を行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る物体の研磨装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る物体の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る研磨体を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエータをホルダ及び固定部材に固定した状態で示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエータをホルダに固定した状態で示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエータをホルダに固定した状態で示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る研磨体の先端の軌道を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る研磨体の先端の軌道を示し、研磨体を正面から見て前後方向に相対移動させた状態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る制御手段の制御理論を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る移動手段を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第一実験例に係る目標振動形態を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示す図である。
【図12】本発明の第一実験例に係る測定結果を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示す図である。
【図13】本発明の第二実験例に係る目標振動形態を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示す図である。
【図14】本発明の第二実験例に係る測定結果を示し、(A)はXY平面図,(B)はXZ平面図,(C)はYZ平面図を示す図である。
【図15】従来の物体の研磨装置の一例を示す図である。
【0054】
S 研磨装置
1 物体
2 表面
3 凹所
10 基台
20 テーブル
21 上面
22 設置台
30 スタンド
31 固定部材
40 研磨体
41 先端
42 側面
43 砥粒
44 中心軸
50 ホルダ
51 一端面側
52 中心軸
53 取付部
54 他端面側
55 突設部
56 角錐面
60 振動手段
61 圧電アクチュエータ
62 一端
63 他端
64 軸線
65 コイルスプリング
66 一端
67 他端
70 制御手段
80 移動手段
81 支持部
82 ベース部材
83 第一レール
84 第二レール
90 駆動部
90a 第一駆動部
90b 第二駆動部
91a 第一移動部材
91b 第二移動部材
92 雄ネジ
93a 第一棒状体
93b 第二棒状体
94a 第一原動部
94b 第二原動部
95 雌ネジ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14